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特許7193930回路基板及びそれを用いた半導体パッケージ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】回路基板及びそれを用いた半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20221214BHJP
   B32B 5/10 20060101ALI20221214BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20221214BHJP
   H01L 23/29 20060101ALN20221214BHJP
   H01L 23/31 20060101ALN20221214BHJP
【FI】
H05K1/03 610T
B32B5/10
H01L23/14 R
H01L23/30 R
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018099048
(22)【出願日】2018-05-23
(65)【公開番号】P2019036710
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】10-2017-0103228
(32)【優先日】2017-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】梁 承 烈
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-97297(JP,A)
【文献】特開2001-329449(JP,A)
【文献】特開昭57-31189(JP,A)
【文献】特開平7-273414(JP,A)
【文献】特開平8-294997(JP,A)
【文献】特開2000-208557(JP,A)
【文献】特開2004-26997(JP,A)
【文献】特開2005-126862(JP,A)
【文献】特開2007-318032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 5/00―5/32
H01L 23/12―23/14
H01L 23/28―23/31
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの半導体チップと、
前記少なくとも一つの半導体チップが実装される第1領域と前記第1領域以外の領域である第2領域を有する第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有するパッケージ基板と、
前記パッケージ基板の第1面を覆って前記少なくとも一つの半導体チップを封止するモールディング部と、を含み、
前記パッケージ基板は、
第1方向に配列された複数の第1繊維と、前記第1方向とほぼ垂直に交差する第2方向に配列された複数の第2繊維で製織された繊維層を含む少なくとも一つのプリプレグと、
前記少なくとも一つのプリプレグの両面のうち、少なくとも一面に配置された回路層と、
を含み、前記複数の第1繊維は緯糸を含み、前記複数の第2繊維は経糸を含み、
前記少なくとも一つのプリプレグの前記第1方向の熱膨張係数は、前記第2方向の熱膨張係数より大きく、
前記少なくとも一つの半導体チップの熱膨張係数は、前記パッケージ基板の熱膨張係数より小さく、
前記第1領域は、一方向に長い形状を有し、前記一方向は、前記第1方向に配置される、半導体パッケージ。
【請求項2】
前記少なくとも一つの半導体チップは、前記第1方向に離隔した複数の半導体チップを含み、前記第1領域は、前記第1方向に離隔した複数の領域を含む、請求項に記載の半導体パッケージ。
【請求項3】
前記複数の領域の各々は、互いに実質的に同一の面積を有する、請求項に記載の半導体パッケージ。
【請求項4】
前記複数の領域は、前記第2方向に互いに並列配置される、請求項又はに記載の半導体パッケージ。
【請求項5】
前記少なくとも一つのプリプレグは、前記複数の第1及び第2繊維の間に樹脂が塗布されて硬化した織物シートを含み、前記回路層は、前記織物シートと熱圧着される、請求項乃至のいずれか一項に記載の半導体パッケージ。
【請求項6】
前記少なくとも一つのプリプレグは、複数のプリプレグを含み、
前記複数のプリプレグは、互いに対応する領域が実質的に同一の熱膨張係数を有する、請求項乃至のいずれか一項に記載の半導体パッケージ。
【請求項7】
前記少なくとも一つのプリプレグは、複数のプリプレグを含み、
前記複数のプリプレグは、前記パッケージ基板の厚さ方向に積層される、請求項乃至のいずれか一項に記載の半導体パッケージ。
【請求項8】
前記モールディング部は、エポキシモールディングコンパウンド(EMC)を含む、請求項乃至のいずれか一項に記載の半導体パッケージ。
【請求項9】
前記複数の第1繊維のそれぞれの幅は、前記複数の第2繊維のそれぞれの幅より大きく、
前記複数の第1繊維のそれぞれ及び前記複数の第2繊維のそれぞれは、複数のフィラメントを含み、前記複数の第2繊維のそれぞれの前記複数のフィラメントの個数は、前記複数の第1繊維のそれぞれの個数より多いか又は少なく、
前記複数の第1繊維は、第1距離だけ互いに離隔し、前記複数の第2繊維は、第2距離だけ互いに離隔し、前記第1距離は前記第2距離より小さい、請求項乃至のいずれか一項に記載の半導体パッケージ。
【請求項10】
少なくとも一つの半導体チップと、
前記少なくとも一つの半導体チップが実装される領域を有するパッケージ基板と、を含み、
前記パッケージ基板は、緯糸を含む複数の第1繊維と、経糸を含む複数の第2繊維で製織された繊維層を含む少なくとも一つのプリプレグを含み、
前記第1繊維の長さ方向の熱膨張係数は、前記第2繊維の長さ方向の熱膨張係数より大きく、
前記少なくとも一つの半導体チップの熱膨張係数は、前記パッケージ基板の熱膨張係数より小さく、
前記少なくとも一つの半導体チップが実装される領域は、一方向に長い形状を有し、前記一方向は、前記複数の第1繊維の長さ方向と同一の方向に配置される、半導体パッケージ。
【請求項11】
前記少なくとも一つの半導体チップは、複数の半導体チップを含み、前記少なくとも一つの半導体チップが実装される前記領域は、複数の分割された領域を含み、前記複数の分割された領域は、前記複数の第2繊維の長さ方向に互いに並列配置される、請求項10に記載の半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明の技術的思想は、回路基板及びそれを用いた半導体パッケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体パッケージは、印刷回路基板(printed circuit board、PCB)上に実装された半導体チップを封止材で覆い、これを個々のパッケージ単位で切断して得ることができる。この際、印刷回路基板、半導体チップ及び封止材の間の熱膨張係数の差により、工程時に加わる熱が半導体パッケージに反り(warpage)を発生させることがある。最近では印刷回路基板の厚さ及び封止材の厚さが減少するにつれて、印刷回路基板に発生する反りの程度が大きく増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題の一つは、反りが減少した回路基板及び半導体パッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、第1方向に配列された複数の第1繊維と、上記第1方向とほぼ垂直に交差する第2方向に配列された複数の第2繊維で製織された繊維層を含む少なくとも一つのプリプレグ(prepreg)と、上記少なくとも一つのプリプレグの両面のうち、少なくとも一面に配置された回路層と、を含み、上記少なくとも一つのプリプレグは、上記第1方向への長さが上記第2方向への長さより大きく、上記複数の第1繊維は緯糸(filling yarn)からなるか、又は緯糸を含み、上記複数の第2繊維は経糸(warp yarn)からなるか、又は経糸を含む回路基板を提供する。
【0005】
本発明の一実施形態は、第1方向に配列された複数の第1繊維と、上記第1方向とほぼ垂直に交差する第2方向に配列された複数の第2繊維で製織された第1繊維層を含む少なくとも一つの第1プリプレグと、上記少なくとも一つの第1プリプレグの両面のうち、少なくとも一面に積層され、上記第1方向に配列された複数の第3繊維と、上記第2方向に配列された複数の第4の繊維で製織された第2繊維層を含む少なくとも一つの第2プリプレグと、上記少なくとも一つの第1及び第2プリプレグの両面のうち、少なくとも一面に配置された回路層と、を含み、上記少なくとも一つの第1及び第2プリプレグは、上記第1方向への長さが上記第2方向への長さより大きく、上記複数の第1繊維は緯糸からなるか、又は緯糸を含み、上記複数の第2繊維は経糸からなるか、又は経糸を含み、上記複数の第3繊維は経糸からなるか、又は経糸を含み、上記複数の第4の繊維は緯糸からなるか、又は緯糸を含む回路基板を提供する。
【0006】
本発明の一実施形態は、少なくとも一つの半導体チップと、上記少なくとも一つの半導体チップが実装される第1領域と、上記第1領域以外の領域である第2領域とを有する第1面と、上記第1面に対向する第2面とを有するパッケージ基板と、上記パッケージ基板の第1面を覆って上記少なくとも一つの半導体チップを封止するモールディング部と、を含み、上記パッケージ基板は、第1方向に配列された複数の第1繊維と、上記第1方向とほぼ垂直に交差する第2方向に配列された複数の第2繊維で製織された繊維層を含む少なくとも一つのプリプレグと、上記少なくとも一つのプリプレグの両面のうち、少なくとも一面に配置された回路層と、を含み、上記複数の第1繊維は緯糸からなるか、又は緯糸を含み、上記複数の第2繊維は経糸からなるか、又は経糸を含み、上記第1領域は、一方向に長い形状を有し、上記一方向は、上記第1方向に配置された半導体パッケージを提供する。
【0007】
本発明の一実施形態は、少なくとも一つの半導体チップと、上記少なくとも一つの半導体チップが実装される領域を有するパッケージ基板と、を含み、上記パッケージ基板は、緯糸からなるか、又は緯糸を含む複数の第1繊維と、経糸からなるか、又は経糸を含む複数の第2繊維で製織された繊維層を含む少なくとも一つのプリプレグを含み、上記少なくとも一つの半導体チップが実装される領域は、一方向に長い形状を有し、上記一方向は、上記複数の第1繊維の長さ方向と同一の方向に配置される半導体パッケージを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の技術的思想による回路基板及びそれを用いた半導体パッケージは、製造過程において発生する反りを減少させることができる。
【0009】
但し、本発明の多様で有益な利点と効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程で、より容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による半導体パッケージの概略斜視図である。
図2図1のI方向から見た半導体パッケージの平面図である。
図3図2のII-II’線に沿って切開して見た側断面図である。
図4図3の‘A’領域を拡大した図である。
図5】本発明の一実施形態によるプリプレグの製織方向を示した図である。
図6A】基板において半導体チップが実装された領域を示した図である。
図6B】基板において半導体チップが実装された領域を示した図である。
図7A】本発明の一実施形態によるプリプレグの積層方向を示した図である。
図7B図7Aの変形例である。
図8A】比較例と本発明の一実施形態による半導体パッケージの平面図である。
図8B】比較例と本発明の一実施形態による半導体パッケージの平面図である。
図9A】比較例と本発明の一実施形態による半導体パッケージの反りの形態を示した図である。
図9B】比較例と本発明の一実施形態による半導体パッケージの反りの形態を示した図である。
図10A】比較例と本発明の一実施形態による半導体パッケージの反りの方向を示した側断面図である。
図10B】比較例と本発明の一実施形態による半導体パッケージの反りの方向を示した側断面図である。
図11】比較例と本発明の一実施形態による半導体パッケージの反りの程度を比較したグラフである。
図12】比較例と本発明の一実施形態による半導体パッケージの反りの大きさを比較したグラフである。
図13】本発明の一実施形態による印刷回路基板を用いて図1の半導体パッケージを製造する製造工程を概略的に示した平面図である。
図14】本発明の一実施形態による印刷回路基板を用いて図1の半導体パッケージを製造する製造工程を概略的に示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付された図面を参照して、本発明の多様な実施形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態による半導体パッケージの概略斜視図であり、図2図1のI方向から見た半導体パッケージの平面図である。図3図2のII-II’線に沿って切開して見た側断面図であり、図4図3の‘A’領域を拡大した図である。図5は本発明の一実施形態によるプリプレグの製織方向を示した図である。
【0013】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による半導体パッケージ10は、パッケージ基板100と、パッケージ基板100に実装される半導体チップ積層体(スタック)200、300と、半導体チップ積層体200、300を覆うモールディング部600と、を含むことができる。半導体パッケージ10は、下面に外部接続端子700をさらに含むことができる。一実施形態では、半導体チップ積層体200、300がワイヤ501~504(図2参照)によりパッケージ基板100に接続された場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、フリップチップ実装などのように、ワイヤを使用せずに直接パッケージ基板100に接続されることもできる。また、外部接続端子700は、半田ボール(solder ball)、半田パッド(solder pad)、半田ランド(solder land)、金属バンプ(metal bump)、又はピラー(pillar)のいずれか一つを含むことができる。本実施形態では、外部接続端子700が半田ボールであることができる。
【0014】
図2図4を参照すると、パッケージ基板100は、回路層130と、該回路層130と積層構造を形成するプリプレグ110、120を含む。パッケージ基板100は、少なくとも一面に、外面を保護するための絶縁性樹脂層140が配置されることができる。また、パッケージ基板100は、半導体チップ積層体200、300にワイヤ501~504をボンディングするための接続パッド131aをさらに含むこともできる。
【0015】
図3を参照すると、パッケージ基板100は、半導体チップ積層体200、300が実装される第1面S1と、それとは反対側の第2面S2を有することができる。図6Aを参照すると、パッケージ基板100は、半導体チップ積層体200、300が実装される第1領域CA1、CA2及びその他の領域PA1を第1面S1に有することができる。パッケージ基板100は、リジッド印刷回路基板(rigid printed circuit board)、フレキシブル印刷回路基板(flexibleprinted circuit board)又はリジッド-フレキシブル印刷回路基板(rigid-flexible printed circuit board)であることができる。パッケージ基板100は、単層印刷回路基板(single-layer printed circuit board)及び多層印刷回路基板(multi-layer printed circuit board)からなることができる。
【0016】
回路層130は、銅箔のような導電性物質からなることができ、プリプレグ110、120上に配置される外部回路層131、133と、プリプレグ110、120の間に配置される内部回路層132を含むことができる。
【0017】
プリプレグ110、120は、ガラス繊維糸(glass yarn)で製織されたガラス織物(glass fabric)のような織物シート(fabric sheet)状の繊維層にエポキシ樹脂などを含浸した後、熱圧着することにより形成することができる。但し、これに限定されるものではなく、実施形態によっては、炭素繊維糸で製織された織物シート状の繊維層が適用されることもできる。上記プリプレグは、複数のプリプレグを含むことができ、複数のプリプレグは、パッケージ基板100の厚さ方向に積層されることができる。本発明の一実施形態では、上記プリプレグが第1及び第2プリプレグ110、120で構成された場合を例に挙げて説明した。但し、これに限定されるものではなく、上記プリプレグは単層からなることができ、3層以上からなることもできる。また、プリプレグ110、120は、パッケージ基板100の熱膨張係数を調整するために、エポキシ樹脂にアルミナ、シリカなどのフィラー(filler)を含むことができる。
【0018】
図5は第1プリプレグ110に含まれたガラス織物の製織形態を示した図である。ガラス織物は、第1方向D1に配列された複数の第1繊維111と、第2方向D2に配列された複数の第2繊維112を製織して形成されることができる。第1及び第2繊維111、112は、上述したガラス繊維糸であって、それぞれ、ガラス長繊維(long-glass fiber)であるフィラメント111a、112aの束からなる。図5に示されたように、第1及び第2繊維111、112は、それぞれ一つずつ上下に交差することができる。例えば、第1繊維111のうち一つは、第2繊維112のうち一つの上と、第2繊維112のうち隣接する一つの下を交差することができる。同様に、第2繊維112のうち一つは、第1繊維111のうち一つの上と、第1繊維111のうち隣接する一つの下を交差することができる。但し、これに限定されるものではなく、複数の第1及び第2繊維111、112の単位で交差することもできる。
【0019】
第1繊維111は緯糸からなるか、又は緯糸を含むことができ、第2繊維112は経糸からなるか、又は経糸を含むことができ、ガラス織物の第1方向D1には緯糸が配列され、第2方向D2には経糸が配列されることができる。以下では、緯糸が配列された方向を緯糸方向TDと定義し、経糸が配列された方向を経糸方向MDと定義する。
【0020】
第1及び第2繊維111、112は、マトリックス状に配置された複数の交差領域IAを有するように製織されることができる。経糸である第2繊維112は、製織過程において緯糸である第1繊維111に比べて高い引張力により引っ張られて製織されるため、第2繊維112の幅W2は、第1繊維111の幅W1に比べて狭い。また、経糸は緯糸に比べて相対的に高い引張力により引っ張られているため、熱が加わっても緯糸に比べて増加する幅が小さい。かかる理由により、緯糸の熱膨張係数(coefficient of thermal expansion、CTE)は、経糸の熱膨張係数に比べて大きくなる。したがって、緯糸と経糸により製織されたガラス織物を含むプリプレグに高温の熱が加わる場合、緯糸が配置された方向の増加幅が、経糸が配置された方向の増加幅に比べて大きくなる。
【0021】
かかるパッケージ基板100の緯糸方向TDと経糸方向MDの熱膨張係数の差により、半導体パッケージ10に発生する反り(warpage)にも影響を与えるようになる。一般的に、半導体パッケージは、モールディングした後に硬化する工程、半田ボールを付着した後に冷却する工程、又は半導体チップを実装した後に冷却する工程と同様に、加熱した後に冷却する工程を経るようになる。このような工程を経る過程において、半導体パッケージには熱膨張係数の不均一によって反りが発生する。また、半導体パッケージに実装される半導体チップも、製造工程中に反りが発生した状態で半導体パッケージに実装されるが、半導体パッケージの反りと、実装された半導体チップの反りが互いに異なる方向に発生した場合には、半導体パッケージの耐久性が低下する問題がある。したがって、反りが発生しても、半導体パッケージの反りと半導体チップの反りを同一の方向に発生させることが、半導体パッケージの耐久性を向上させる上で有利である。一実施形態の場合、半導体パッケージにおけるパッケージ基板100の緯糸方向TDと経糸方向MDの配列方向を調節することにより、半導体パッケージの反りを緩和させることができ、さらに反りが発生しても、半導体パッケージの反りと半導体チップの反りを同一の方向に発生させることができる。以下では、半導体パッケージに反りを発生させる工程のうち、モールディング部を形成する工程を中心に説明する。その他の工程で発生する反りを緩和させることも、モールディング部の形成工程で発生する反りを緩和させることと類似する構成により行われるため、説明の重複を避けるために省略する。
【0022】
交差領域IAにおいて、第1繊維111の幅W1は第2繊維112の幅W2に比べて1.1倍以上大きくなるように配置されることができる。実施形態によっては、第1及び第2繊維111、112の幅W1、W2がほぼ同一(0.9<W1/W2<1.1)となるように配置することにより、複数の交差領域IAが正四角形又は実質的に正四角形の形状を有することができる。かかる配置は、第1及び第2繊維111、112をなす複数のフィラメントの個数を調節することにより構成することもできる。例えば、第2繊維112をなすフィラメントの個数を、第1繊維111をなすフィラメントの個数より多くすることにより、第1繊維111の幅W1を第2繊維112の幅W2とほぼ同一となるように配置することができる。このように、第1繊維111の幅W1を第2繊維112の幅W2とほぼ同一となるように配置すると、緯糸方向TDと経糸方向MDの熱膨張係数の差を緩和させることができるという効果がある。
【0023】
上記複数の第1繊維111は、それぞれ第1距離W3だけ互いに離隔して平行に延在され、上記複数の第2繊維112は、それぞれ第2距離W4だけ互いに離隔して平行に延在されるように配置されることができる。この際、第1距離W3は、第2距離W4より小さくなるように、第1及び第2繊維111、112を配置することもできる。
【0024】
プリプレグが複数からなる場合、各プリプレグの緯糸方向TDと経糸方向MDは、互いに同一であるか、又は異なるように配列されることができる。図7A及び図7Bは、プリプレグが第1及び第2プリプレグ110、120又は120aを含む場合を例示したものである。ここで、図7Aは第1及び第2プリプレグ110、120の緯糸方向TDと経糸方向MDが互いに同一となるように配置された例であって、互いに対応する領域が実質的に同一の熱膨張係数を有するように配置されることができる。図7Bは第1及び第2プリプレグ110、120aの緯糸方向TDと経糸方向MDが互いに異なるように配置された例であって、第1及び第2プリプレグ110、120の間の熱膨張係数の差を互いに補償することにより、パッケージ基板100における熱膨張係数の不均一を緩和させることができる。
【0025】
図2及び図3を参照すると、パッケージ基板100に実装された第1及び第2半導体チップ積層体200、300は、それぞれ複数のチップ210、220、310、320を積層した構成を有することができる。第1及び第2半導体チップ積層体200、300は、パッケージ基板100にダイ接着フィルム(die adhesive film、DAF)401によって接着されることができる。また、第1及び第2半導体チップ積層体200、300に含まれた複数のチップ210、220、310、320の間も、ダイ接着フィルム402によって接着されることができる。
【0026】
上記複数のチップ210、220、310、320は、それぞれメモリチップ(memory chip)又はアプリケーションプロセッサ(application processor)を含むことができる。本発明の一実施形態の場合、第1又は第2半導体チップ積層体200又は300は、アプリケーションプロセッサ上にメモリチップが積層された構成を含むことができる。上記複数のチップ210、220、310、320は、ワイヤ501~504を用いてパッケージ基板100の接続パッド131aと電気的に接続されることができる。ワイヤ501~504は、銅(Cu)、金(Au)、又はアルミニウム(Al)を含むことができる。
【0027】
図6Aを参照すると、パッケージ基板100は、半導体チップ積層体200、300が実装される第1領域CA1、CA2及びその他の領域である第2領域PA1を有することができる。半導体チップ積層体200、300が実装される第1領域CA1、CA2は、実装される半導体チップ積層体200、300の個数に応じて、分割された複数の領域CA1、CA2を含むことができる。この際、分割された複数の領域CA1、CA2は、実質的に互いに同一の面積を有するように配置されることができる。また、第2方向D2に互いに並列配置されるように、第2方向D2に分割されることができる。本発明の一実施形態は、第1領域CA1、CA2が二つに分割された領域を含む場合を示したものである。
【0028】
第1領域CA1、CA2は、全体領域(CA1+CA2)の長さ方向(WB1+WB2)が、パッケージ基板の緯糸方向TDと同一となるように配置されることができる。全体領域(CA1+CA2)の長さ方向(WB1+WB2)は、パッケージ基板100の緯糸方向TDに延在されることができる。ここで、全体領域(CA1+CA2)の長さ方向とは、それぞれの半導体チップが実装された領域CA1、CA2のそれぞれの長さ方向ではなく、第1領域CA1、CA2を合わせた領域(CA1+CA2)の長さ方向を意味するものである。図6Aの場合、半導体チップ積層体200、300が実装された第1領域CA1、CA2の一方向WDは、他方向WB1、WB2の合計に比べて短いため、他方向WB1+WB2が、半導体チップ積層体200、300が実装された第1領域CA1、CA2の長さ方向に該当し、第1領域CA1、CA2の一方向WDは、幅方向に該当する。
【0029】
パッケージ基板100のうち、半導体チップ積層体200、300が実装された領域CA1、CA2は、実装された半導体チップ積層体200、300により、その他の領域PA1に比べて熱膨張係数が相対的に低くなる。したがって、パッケージ基板100の両方向D1、D2のうち半導体チップ積層体200、300が実装された領域の割合が高い部分が、その他の部分に比べて熱膨張係数が相対的に低くなる。
【0030】
したがって、半導体チップ積層体200、300が実装された領域の割合が高い方向にパッケージ基板100の緯糸方向TDを配列し、実装された領域の割合が低い方向にパッケージ基板100の経糸方向MDを配列すると、半導体チップが実装された領域CA1、CA2がその他の領域PA1に比べて熱膨張係数が小さいことから発生する半導体パッケージ10内の熱膨張係数の不均一を減少させることができる。さらに、半導体パッケージ10内の熱膨張係数の不均一により発生する半導体パッケージ10の反りも減少させることができる。図6Bは本発明の一実施形態の変形例であって、一つの半導体チップ積層体200aがパッケージ基板100aに実装された例を示したものである。半導体チップ積層体200aが実装された領域CA3の長さ方向WCLにパッケージ基板100aの緯糸方向TDが配列され、半導体チップ積層体200aが実装された領域CA3の幅方向WCSにパッケージ基板100aの経糸方向MDが配列されるように配置することにより、半導体パッケージにおける熱膨張係数の不均一を減少させて、半導体パッケージの反りを減少させることができる。
【0031】
図1を参照すると、モールディング部600は、パッケージ基板100上に第1及び第2半導体チップ積層体200、300の上面及び側面を覆うように形成されることができる。モールディング部600は、ワイヤ501~504を覆うように形成されることができる。本発明の一実施形態の場合、モールディング部600は、エポキシモールディングコンパウンド(epoxy molding compound、EMC)を含む物質からなることができる。
【0032】
モールディング部600を形成した後に硬化する過程において、モールディング部600の熱膨張係数とパッケージ基板100の熱膨張係数との差により、半導体パッケージ10に反りが発生し得る。一般的に、硬化するために冷却する過程において、モールディング部600が収縮する大きさよりパッケージ基板100が収縮する大きさが大きいため、半導体パッケージ10の周辺領域が下部方向に曲がる現象が発生する。本発明の一実施形態では、モールディング部600の熱膨張係数とパッケージ基板100の熱膨張係数との差を緩和させることにより、半導体パッケージ10の反りを減少させることができる。また、反りが発生しても半導体チップが曲がる方向と同一の方向に反りが発生して、半導体パッケージの耐久性を向上させることができる。これについては後述する。
【0033】
上述のような構造の半導体パッケージ10は、パッケージ基板100の緯糸方向TDに、半導体チップ積層体200、300が実装された全体領域の長さ方向が配置される。パッケージ基板100のうち半導体チップ積層体200、300が実装された領域は、その他の部分に比べて熱膨張係数が小さい。したがって、熱膨張係数が相対的に大きい緯糸方向TDに、半導体チップ積層体200、300が実装された全体領域の長さ方向を配置すると、半導体パッケージ10の各領域における熱膨張係数のバランスが増加するため、半導体パッケージ10で発生する反りの大きさが減少することができる。以下では、本発明の比較例と対比して一実施形態による半導体パッケージの効果について説明する。
【0034】
図8A図12を参照して、本発明の一実施形態と比較例における高温での半導体パッケージの反りについて比較する。
【0035】
図8A及び図8Bは、本発明の比較例と一実施形態による半導体パッケージの平面図であり、図9A及び図9Bは本発明の比較例と一実施形態による半導体パッケージの反りの形態を示した図である。図10A及び図10Bは、本発明の比較例と一実施形態による半導体パッケージの反りの方向を示した側断面図である。図11は本発明の比較例と一実施形態による半導体パッケージの反りの程度を比較したグラフであり、図12は本発明の比較例と一実施形態による半導体パッケージの反りの大きさを比較したグラフである。
【0036】
本発明の比較例は、一実施形態におけるパッケージ基板100の緯糸方向TDと経糸方向MDを互いに変えたパッケージ基板100REFを採用した点で差異がある。
【0037】
したがって、図8Bのように、本発明の一実施形態による半導体パッケージは、半導体チップ積層体200、300が実装された領域が相対的に少ない方向、即ち、熱膨張係数が大きい方向CTEaにパッケージ基板100の経糸方向MDが配置され、緯糸方向TDに熱膨張係数が相対的に小さい方向CTEbが配置された。これに対し、図8Aのように、本発明の比較例は、半導体チップ積層体200、300が実装された領域が相対的に少ない方向、即ち、熱膨張係数が相対的に大きい方向CTEaにパッケージ基板100の緯糸方向TDが配置された点で差異がある。
【0038】
図9Aを参照すると、本発明の比較例の半導体パッケージは、熱膨張係数が大きい方向CTEaにパッケージ基板100REFの緯糸方向TDが配置されることにより、半導体パッケージにおいて熱膨張係数が大きい方向と、パッケージ基板において熱膨張係数が大きい部分が同一となる。したがって、図10Aのように、モールディング部600を冷却する過程において、モールディング部600が収縮する力F2よりパッケージ基板100REFが収縮する力F1が優勢であるため、全体的に半導体パッケージ10aの下部方向に反りWD2が発生したことが分かる。これは、半導体チップ積層体200に発生した反りWD1の方向と反対方向になって、半導体パッケージの耐久性を弱める要因として作用する。図面符号CLは、反りが発生していない半導体パッケージを示した基準線である。
【0039】
一方、図9Bを参照すると、一実施形態の半導体パッケージは、熱膨張係数が大きい方向CTEaにパッケージ基板100の経糸方向MDが配置されることにより、半導体パッケージにおいて熱膨張係数が大きい方向と、パッケージ基板において熱膨張係数が大きい部分がずれる。したがって、図10Bのように、パッケージ基板100が収縮する力F1よりモールディング部600が収縮する力F2が優勢であるため、全体的に半導体パッケージ10の上部方向に反りWD3が発生したことが分かる。これは、半導体チップ積層体200の反りWD1と同一の方向となるため、比較例に比べて半導体パッケージの耐久性を向上させることができる。
【0040】
図11は本発明の比較例REFと一実施形態G1に加わる温度と、その際の反りの平均値μmを製造工程の順に配列したものである。比較例REFの場合、240℃から260℃に上昇する段階で反りが急激に発生することが分かり、室温(30℃)に冷却されるまで反りの程度が持続的に維持されることが分かる。これに対し、同一の段階において実施形態G1の反りは緩和したことが分かる。下記表1は、図11の本発明の一実施形態G1と比較例REFの各温度による反りの平均値を調べたものであり、一実施形態G1の場合、比較例REFに比べて反りが緩和したことが分かる。
【0041】
【表1】
図12は高温状態で比較例REFと一実施形態G1に加わる温度と、その際の反りの最大値を製造工程の順に配列したものである。高温状態の全領域にわたって、比較例REFの反りの絶対値が一実施形態G1の絶対値に比べて大きいことが分かる。特に260℃からは、一実施形態G1と比較例REFとの間に約20μmという反りの絶対値の差が維持されることが分かる。下記表2は、図12の一実施形態G1と比較例REFの各温度による反りの最大値を製造工程の全般にわたって調べたものであり、一実施形態G1の場合、比較例REFに比べて反りの最大値が減少したことが分かる。
【0042】
【表2】
次に、本発明の一実施形態による回路基板及び半導体パッケージの製造工程について説明する。図13及び図14は本発明の一実施形態による回路基板を用いて、図1の半導体パッケージを製造する主要製造工程を概略的に示した平面図である。一実施形態の回路基板は、上述したパッケージ基板を製造するためのものであり、回路基板に半導体チップ積層体を実装し、その上にモールディング部を形成した後、個々の半導体チップに分割して半導体パッケージを製造するため、上述したパッケージ基板は回路基板を分割したものに該当する。したがって、説明の重複を避けるために、回路基板に関する説明のうちパッケージ基板に関する説明と重複する部分は省略する。
【0043】
まず、図13を参照すると、半導体パッケージのパッケージ基板を製造するための回路基板Pを設ける。回路基板Pは、少なくとも一つのプリプレグと回路層が積層された構造を有する。プリプレグは、ガラス繊維糸で製織されたガラス織物のような織物シート状の繊維層にエポキシ樹脂などを含浸した後、熱圧着して製造する。
【0044】
具体的に、図13に示されたように、回路基板Pは長さ方向PLに長い板材の形状を有する。上述したパッケージ基板のように、回路基板Pは、少なくとも一つのプリプレグを含み、プリプレグは、回路基板Pの長さ方向PLに配列された複数の第1繊維111と、これとほぼ垂直に交差する幅方向PSに配列された複数の第2繊維112を製織した繊維層を含む。上記複数の第1繊維111は、それぞれ緯糸からなるか、又は緯糸を含むことができ、複数の第2繊維112は、それぞれ経糸からなるか、又は経糸を含むことができる。したがって、回路基板Pは、長さ方向PLが緯糸方向TDに配列されることができ、幅方向PSは、経糸方向MDに配列されることができる。
【0045】
上述したパッケージ基板と同様に、複数の第1繊維111と複数の第2繊維112は、マトリックス状に配置された複数の交差領域IAを有するように製織される。上記複数の第1繊維111は緯糸からなり、上記複数の第2繊維112は経糸からなるため、複数の第1繊維111の幅W1は、複数の第2繊維112の幅W2に比べて大きい。したがって、複数の交差領域IAは、それぞれ長さ方向PLの大きさが第2繊維112の幅W2に該当し、幅方向PSの大きさが第1繊維111の幅W1に該当するため、長さ方向PLの大きさが幅方向PSの大きさより小さくなるように配置される。
【0046】
また、上述したパッケージ基板のように、上記プリプレグの両面のうち少なくとも一面には回路層が配置される。
【0047】
次に、図14に示されたように、回路基板Pの個々の半導体チップ実装領域P2にそれぞれ半導体チップ積層体200、300を実装するとともに、半導体チップ積層体200、300を実装した領域を合わせた全体領域の長さ方向CTEbが回路基板Pの緯糸方向TDに配置されるように実装する。上述したように、半導体チップ積層体200、300を実装した領域は、その他の部分に比べて熱膨張係数が小さいため、半導体チップ積層体200、300を実装した領域を合わせた領域の長さ方向を緯糸方向TDに配置すると、回路基板Pにおいて熱膨張係数が大きい緯糸方向TDの増加幅を減少させることができる。
【0048】
半導体パッケージの製造工程のうち、モールディングした後に硬化する工程や半田ボールを付着した後に冷却する工程、及び半導体チップを実装した後に冷却する工程と同様に、加熱した後に冷却する工程において、回路基板は高温の状態に露出して回路基板に熱膨張が発生する。熱膨張係数が大きい方向は、そうでない方向に比べて増加する幅が大きいため、熱膨張係数が大きい方向により多くの反りが発生する。一実施形態では、熱膨張係数が大きい緯糸方向TDに、熱膨張係数が小さい半導体チップ実装体の実装領域をより多く配置することにより、熱膨張係数が大きい方向と熱膨張係数が小さい方向との差を減少させることができる。また、半導体パッケージに反りが発生しても、半導体パッケージが半導体チップと同様に上部方向に曲がる形状となるようにすることで、半導体チップ積層体に発生する反りの不均一を減少させることができる。
【0049】
次に、半導体チップ積層体200、300が実装された面を覆うようにモールディング部を塗布し、個々の半導体チップ実装領域P2単位でダイシングすると、図1の半導体パッケージが製造される。
【0050】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0051】
10 半導体パッケージ
100 基板
110 第1プリプレグ
111、121 第1繊維
111a フィラメント
112、122 第2繊維
112a フィラメント
113、123 樹脂層
120 第2プリプレグ
130 回路層
140 絶縁層
200 第1半導体チップ積層体
300 第2半導体チップ積層体
401、402 ダイ接着フィルム
600 モールディング部
700 外部接続端子
MD 経糸方向
TD 緯糸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14