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  • 特許-ポリウレタンフォーム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/48 20060101AFI20221214BHJP
   A43B 13/04 20060101ALN20221214BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20221214BHJP
【FI】
C08G18/48 054
C08G18/48 004
A43B13/04 A
C08G101:00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018120858
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020002202
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】南 拓磨
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-038005(JP,A)
【文献】特開2018-003887(JP,A)
【文献】特開2017-105913(JP,A)
【文献】特開2015-074735(JP,A)
【文献】国際公開第2018/155372(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/48
A43B 13/04
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤、触媒、整泡剤を含むポリウレタン原料組成物からなるポリウレタンフォームであって、
前記ポリオール成分が、重量平均分子量が4000より大きく7000以下、平均官能基数が2、及び平均水酸基価が25mgKOH/g以上80mgKOH/g以下のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG(I))を含み、
且つ、重量平均分子量が1000以上4000以下、平均官能基数が2、及び平均水酸基価が80mgKOH/g以上175mgKOH/g以下のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG(II))を含み、
前記ポリオール成分を100質量部としたときの前記PTMG(I)の含有量は、30質量部以上70質量部以下であり、
前記イソシアネート成分は、変性MDIとイソシアネート基末端プレポリマーの含有比率が、イソシアネート基末端プレポリマーに対する変性MDIの質量比(変性MDI/イソシアネート基末端プレポリマー)で100/0から80/20の範囲であり、
前記発泡剤が、ポリオール成分100質量部に対し、0.2質量部以上0 .8質量部以下であり、
JIS K 6255に準拠して測定されたポリウレタンフォームの反発弾性率が75%以上であり、
JIS K 6251に準拠して測定されたポリウレタンフォームの引張強度が1.0MPa以上、引張伸びが150%以上であることを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項2】
JIS K 7312に準拠し、アスカーゴム硬度計C型を用いて測定されたポリウレタンフォームの硬度が40以上65以下であることを特徴とする請求項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記ポリウレタンフォームを直径29mm、厚み12.5mmの円柱状となるように切り出してなる試験片を準備し、該試験片に5.1kgの錘を50mmの高さから衝突させた場合に、試験片への最大衝撃荷重が1.0kN以下である、請求項1又は2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
モールド成型体である、請求項1からのいずれか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項5】
前記請求項1からのいずれか一項に記載のポリウレタンフォームを用いたことを特徴とする靴底部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高反発弾性を有するポリウレタンフォームであり、靴底部材の材料に好適なポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から靴底部材としてポリウレタンフォームやEVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)フォームなどの発泡体が使用されている。発泡体からなる靴底部材は、衝撃吸収性に優れており、一般使用のシューズはもちろん、ウォーキング用、ランニング用、トレッキング用などの運動用シューズの靴底部材としても使用されている。運動用シューズの場合では、さらに耐久性や軽量性、反発弾性などの物性に優れるものが求められている。
【0003】
例えば、反発弾性に優れる素材を靴底部材に用いたシューズは、蹴り出しをサポートしてくれ、足運びが容易となるので疲労がたまりにくく長時間のランニング、ウォーキングに適している。一般的に、反発弾性率が50%以上のものを高反発弾性としており、ポリウレタンフォームを靴底部材に用いる場合、反発弾性率は50~65%程度であるが、さらなる高反発弾性のポリウレタンフォームが求められている。
【0004】
このような高反発弾性を有するポリウレタンフォームとしては、例えば特許文献1や特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-171962号公報
【文献】特開2015-74735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2のポリウレタンフォームは、靴底部材と使用するには、引張強度及び引張伸びが不十分であった。引張強度及び引張伸びが劣ってしまうと、靴底部材として使用した場合に、成型時の割れ、或いは使用時の割れ、剥がれが生じ易く、長期使用に耐えられない可能性がある。しかも、本出願人によれば、反発弾性率が高くなるほど、引張強度や引張伸びが劣ることがわかった。
【0007】
そこで、本発明は、高反発弾性でありながら引張強度及び引張伸びに優れるポリウレタンフォームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願人は、特定のポリオールを用いることで、高反発弾性であって、引張強度及び引張伸びに優れるポリウレタンフォームが得られることを見出し、本発明にいたったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、以下を要旨とする;
(1)ポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤、触媒、整泡剤を含むポリウレタン原料組成物からなるポリウレタンフォームであって、
前記ポリオール成分が、重量平均分子量が4000より大きく7000以下、平均官能基数が2、及び平均水酸基価が25mgKOH/g以上80mgKOH/g以下のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG(I))を含み、
且つ、重量平均分子量が1000以上4000以下、平均官能基数が2、及び平均水酸基価が80mgKOH/g以上175mgKOH/g以下のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG(II))を含み、
前記ポリオール成分を100質量部としたときの前記PTMG(I)の含有量は、30質量部以上70質量部以下であり、
前記イソシアネート成分は、変性MDIとイソシアネート基末端プレポリマーの含有比率が、イソシアネート基末端プレポリマーに対する変性MDIの質量比(変性MDI/イソシアネート基末端プレポリマー)で100/0から80/20の範囲であり、
前記発泡剤が、ポリオール成分100質量部に対し、0.2質量部以上0 .8質量部以下であり、
JIS K 6255に準拠して測定されたポリウレタンフォームの反発弾性率が75%以上であり、
JIS K 6251に準拠して測定されたポリウレタンフォームの引張強度が1.0MPa以上、引張伸びが150%以上であることを特徴とするポリウレタンフォーム。
)JIS K 7312に準拠し、アスカーゴム硬度計C型を用いて測定されたポリウレタンフォームの硬度が40以上65以下であることを特徴とする上記(1)に記載のポリウレタンフォーム。
)前記ポリウレタンフォームを直径29mm、厚み12.5mmの円柱状となるように切り出してなる試験片を準備し、該試験片に5.1kgの錘を50mmの高さから衝突させた場合に、試験片への最大衝撃荷重が1.0kN以下である、上記(1)または(2)に記載のポリウレタンフォーム。
)モールド成型体である、上記(1)から(3)のいずれかに記載のポリウレタンフォーム。
)上記(1)から(4)のいずれかに記載のポリウレタンフォームを用いたことを特徴とする靴底部材。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、高反発弾性でありながら引張強度及び引張伸びに優れるポリウレタンフォーム、および靴底部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】落下衝撃試験で用いられた錘の形状を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤、触媒、整泡剤を含むポリウレタン原料組成物からなるポリウレタンフォームである。
【0013】
本発明のポリオール成分としては、重量平均分子量が4000より大きく7000以下、平均官能基数が2、及び平均水酸基価が25mgKOH/g以上80mgKOH/g以下のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG(I))を含む。
【0014】
PTMG(I)の重量平均分子量が4000以下だったり、平均水酸基価が80mgKOH/gを超える場合には、得られるポリウレタンフォームの引張強度及び引張伸びが劣るものとなる。
一方、重量平均分子量が7000を超えたり、平均水酸基価が25mgKOH/g未満の場合では、ポリオールの粘度が上昇してしまい、成型が困難となる。
【0015】
本発明では、ポリオール成分としてPTMG(I)とは重量平均分子量が異なるPTMGを1種、又は2種以上混合して用いてもよい。
PTMG(I)以外のPTMGとしては、重量平均分子量が1000以上4000以下、平均官能基数が2、及び平均水酸基価が80mgKOH/g以上175mgKOH/g以下のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG(II))が使用できる。
【0016】
ポリオール成分としてPTMG(I)とPTMG(II)を含む場合、ポリオール成分を100質量部としたときのPTMG(I)の含有量は、30質量部以上70質量部以下が好ましい。
PTMG(I)の含有量が30質量部未満だと、反発弾性の高いポリウレタンフォームは得られるものの、引張強度や引張伸びが劣る傾向になる。また、PTMG(I)の含有量が多いほど、得られるポリウレタンフォームの反発弾性率、引張強度、及び引張伸びは良好となるが、PTMG(I)の含有量が70質量部を超えると、ポリウレタンフォーム表面のわずかなべた付き、欠けなどが発生しやすくなり、成型性に劣るおそれがあった。そのことから、好ましくは、ポリオール成分を100質量部に対し、PTMG(I)の含有量は30質量部以上70質量部以下である。
【0017】
本発明のポリオール成分として、本発明の効果を損ねない程度にPTMG(I)、(II)以外のポリオールを添加してもよい。例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオールが挙げられる。
【0018】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、アルキレンオキシドの開環重合により得られるポリエーテルポリオールが好適である。該アルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)、ブチレンオキシド等が挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。また、必要に応じて、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールを付加したポリエーテルポリオールでもよい。
【0019】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールとから重縮合して得られたものが使用できる。
【0020】
ポリマーポリオールとしては、ポリエーテルポリオールに、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-スチレン共重合体などをグラフト共重合させたものが使用できる。
【0021】
本発明では、ポリオール成分として、必要に応じて、架橋剤を添加してもよい。
架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレンエーテルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、ショ糖、ソルビトール、グルコース等のアルコール類が使用できる。特に、これらのうち、3官能以上のものが好ましい。
【0022】
本発明のイソシアネート成分として、芳香族イソシアネート類、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、イソシアネート基末端プレポリマーなどが挙げられる。
【0023】
より具体的に、ポリオールと反応させるためのイソシアネート成分としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4'-MDI)、ポリメリックMDI(クルードMDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)などの芳香族イソシアネート類、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加TDI、水素添加MDIなどの脂環族ジイソシアネート、或いはこれらをプレポリマー化したイソシアネート基末端プレポリマーなどが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0024】
イソシアネート成分は、変性MDIが好ましい。変性MDIの具体例としては、ポリメリック体(クルードMDI)、ウレタン変性体、ウレア変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体などが挙げられ、常温で液体であるものが好適である。前述のポリオール成分との反応後の分子(架橋)構造が優れる点からは、変性MDIとして、ポリメリック体(クルードMDI)あるいはカルボジイミド変性体が選択されることが好ましい。
【0025】
変性MDIとしては、イソシアネート基含有率が25質量%以上のものを好ましく用いられる。これは、このような変性MDIが常温で液体であることから、イソシアネート成分の粘度を下げることができるためである。
【0026】
イソシアネート基含有率が25質量%未満の変性MDIだと、得られるポリウレタンフォームは発泡しづらく、成型時に欠けなどの不良が発生しやすくなる。
【0027】
また、イソシアネート成分として、変性MDIとイソシアネート基末端プレポリマーとを併用してもよい。変性MDIとイソシアネート基末端プレポリマーを併用すると、得られるポリウレタンフォームの反発弾性率が向上する傾向にあるが、イソシアネート基末端プレポリマーの割合が多すぎると、発泡性が悪くなりポリウレタンフォーム表面のべた付き、欠けなどの成型不良が発生してしまう。そのため、変性MDIとイソシアネート基末端プレポリマーの含有比率は、イソシアネート基末端プレポリマーに対する変性MDIの質量比(変性MDI/イソシアネート基末端プレポリマー)で100/0から30/70の範囲であることが好ましい。
【0028】
イソシアネート基末端プレポリマーとしては、数平均分子量が500以上4000以下、平均官能基数が2以上3以下、イソシアネート基含有率が3質量%以上10質量%以下のものを用いることが好ましい。より好ましくは、数平均分子量が500以上2000以下である。
【0029】
イソシアネート基末端プレポリマーが、数平均分子量が4000を超えている、及び/又は、イソシアネート基含有率が3質量%未満である場合、得られるポリウレタンフォームは発泡しづらく硬くなりすぎてしまい、粘度が大きく、他の材料との混合が困難になりやすい。イソシアネート基末端プレポリマーが、数平均分子量が500未満である、及び/又は、イソシアネート基含有率が10質量%を超えている場合、得られるポリウレタンフォームは発泡しやすく柔らかくなりすぎてしまい、所望の硬度、反発弾性、及び衝撃吸収性が得られない虞がある。
【0030】
上記イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリオールとイソシアネートとを、イソシアネート基(NCO基)が過剰となるように反応させて得ることができる。
【0031】
イソシアネートに反応させるポリオールの例としては、次の(α)、(β)、(γ)に示すもの等を挙げることができる。
【0032】
(α):ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール。
(β):ポリマーポリオール(例えば、ポリエーテルポリオールに、ポリアクリロニトリ
ル、アクリロニトリル-スチレン共重合体などをグラフト共重合させたもの)。
(γ):前記架橋剤の例として挙げたアルコール類のうち、2官能のもの。
【0033】
イソシアネートに反応させるポリオールについて、上記(α)、(β)、(γ)に示すものは単独でまたは2種以上混合したものでもよい。イソシアネートに反応させるポリオールは、上記(α)、(β)、(γ)に示すものの中でも、ポリエーテルポリオールが好ましく、より好ましくはポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、これをPTMG(III)と言う)である。なお、PTMG(III)の範囲には、前記PTMG(I),(II)が含まれる。
【0034】
イソシアネート基末端プレポリマーを形成するためのイソシアネートは、上記のイソシアネート成分の例に挙げたように、芳香族イソシアネート類、脂肪族ジイソシアネート、または脂環族ジイソシアネートを好ましく利用できるが、上述した化合物の中でも、4,4’-MDIが好ましい。
【0035】
したがって、イソシアネート成分を構成するイソシアネート基末端プレポリマーとしては、PTMG(III)に、4,4’-MDIを反応させて得られるものが好ましい。イソシアネート基末端プレポリマーが、PTMG(III)に4,4’-MDIを反応させてなるプレポリマーであれば、PTMGの部分の結晶性が高いため、反発弾性の高いウレタンフォームが得られやすいうえ、イソシアネート成分として、変性MDIと併用する際の馴染み性が良好である。
【0036】
本発明の整泡剤としては、ウレタンフォームで使用できるものであれば特に限定されない。例えば、ポリシロキサン鎖およびポリオキシアルキレン鎖を有するシリコーン系化合物を含有するものが好ましく用いられる。シリコーン系化合物中のポリシロキサン鎖およびポリオキシアルキレン鎖は、ブロック型構造を有していてもよいし、主鎖のポリシロキサン鎖にポリオキシアルキレン鎖がグラフトしたグラフト型構造を有していてもよい。また、これらが混在した構造を有していてもよい。シリコーン系化合物のポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖等の単一のオキシアルキレン基から構成されるもの、または、オキシエチレンオキシプロピレンブロック鎖、オキシエチレンオキシプロピレンランダム鎖等の複数種のオキシアルキレン基から構成されるものが挙げられ、これらの組み合わせから構成されていてもよい。
【0037】
整泡剤として添加するシリコーン系化合物の添加量は、前述のポリオール成分100質量部に対して、0.5質量部以上9質量部以下とされることが好ましい。シリコーン系化合物の添加量が0.5質量部未満であると、整泡作用が弱く、得られるポリウレタンフォームのセルサイズは大きく不均一化し、反発弾性が低く、所望の衝撃吸収性が得られにくい。シリコーン系化合物の添加量が9質量部を超えると、得られるポリウレタンフォームが反発弾性に劣るものとなりやすくなってしまうだけでなく、フォーム表面から整泡剤が染み出すブリードアウトが生じ、他部材との接着を阻害するおそれもあるため、取扱い性に劣るものとなる虞がある。特に、シリコーン系化合物の添加量が5質量部を超えると、目的とする反発弾性、衝撃吸収性は得られるものの、使用には問題ない程度にタック感(ベタベタ感)が生じる傾向がある。この点を考慮すれば、シリコーン系化合物の添加量は、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0038】
本発明の発泡剤としては、水(イオン交換水)を好ましく用いることができる。ポリウレタン原料組成物における発泡剤の添加量は、前述のポリオール成分100質量部に対し、0.2質量部以上0.8質量部以下が好ましい。添加量が0.2質量部未満であると、発泡が不十分となり、成型不良が発生しやすくなる。添加量が0.8質量部を超えると、得られるポリウレタンフォームは、高い反発弾性が得られにくく、衝撃吸収性にも劣るものとなる。
【0039】
本発明の触媒としては、ポリウレタンフォームを製造するために使用可能なものであればよく、特に限定されるものではない。触媒として、従来から使用されているものとしては、例えば、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミンなどのアミン系触媒、ビスマス触媒などの金属触媒が挙げられる。ポリウレタン原料組成物における触媒の添加量は、前述のポリオール成分100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下が好ましい。
【0040】
本発明のポリウレタンフォームを製造するためのポリウレタン原料組成物には、ポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤、触媒、整泡剤の他に、必要に応じて、さらに他の添加剤が添加されてもよい。他の添加剤としては、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、脱泡剤、相溶化剤、着色剤、安定剤、紫外線吸収剤などポリウレタンフォームの製造に際して一般的に使用可能な添加剤をあげることができる。他の添加剤の添加量は、本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜選択されてよい。
【0041】
本発明のポリウレタンフォームの物性について、以下に説明する。
【0042】
〔反発弾性〕
本発明のポリウレタンフォームは、JIS K 6255に準拠して測定した反発弾性率が75%以上であることが好ましい。ポリウレタンフォームの反発弾性率が75%以上であることで、靴底部材として好適な高反発弾性を備えたものが得られる。
【0043】
〔引張強度・引張伸び〕
本発明のポリウレタンフォームは、JIS K 6251に準拠し、ダンベル状2号形試験片を用い、標線間距離20mm、チャック間距離70mmとし、当該試験片を引張試験機にて200mm/minの速度で引張り、試験片が破断するまでの最大引張強度、及び破断時の標線間距離を測定し、所定の式によって算出した引張強度が1.0MPa以上、引張伸びが150%以上である。これらの物性を備えたポリウレタンフォームであれば、成型時の割れ、或いは使用時の割れ、剥がれが生じ難く、長期使用に耐えることができ、靴底部材として好適である。
【0044】
〔硬度〕
本発明のポリウレタンフォームについて、JIS K 7312に準拠し、アスカーゴム硬度計C型を用いて測定されたポリウレタンフォームの硬度が40以上65以下である。ポリウレタンフォームの硬度が40以上65以下であることで、そのポリウレタンフォームを靴底部材として用いた靴の履き心地を優れたものとすることができる。
【0045】
〔衝撃吸収性〕
ポリウレタンフォームの衝撃吸収性は、最大衝撃荷重によって特定することができる。本発明のポリウレタンフォームにおいては、最大衝撃荷重が1.0kN以下であることが好適である。最大衝撃荷重は、次に示す落下衝撃試験によって特定することができる。最大衝撃荷重の値は小さいほど衝撃が吸収されていることを示す。ポリウレタンフォームへの最大衝撃荷重が1.0kN以下であることで、靴底部材として利用できる程度の衝撃吸収性を有するポリウレタンフォームが得られる。
【0046】
〔落下衝撃試験〕
厚みが12.5mmとなるように形成されたポリウレタンフォームを準備して、これを試験片とする。ポリウレタンフォームの試験片に5.1kgの錘を50mmの高さから衝突させる。錘としては、図1に示すような砲弾状の錘Wが利用されてよい。そして、その際の最大衝撃荷重が特定される。最大衝撃荷重は、例えば、Instron社製、商品名 dynatup GRC8200 等を用いて測定することができる。
【0047】
〔密度〕
本発明のポリウレタンフォームは、JIS K 7222に準拠して測定されたポリウレタンフォームの見かけ密度が0.35g/cm以上0.60g/cm以下である。
【0048】
ポリウレタンフォームは、上述したポリウレタン原料組成物を、モールド成形や射出成形、押出成形など従来の成形方法で形成することができるが、モールド成形で反応させてなることが好ましい。ここに、モールド成形とは、上記ポリウレタン原料(原液)をモールド(成形型)内に注入し、モールド内で発泡硬化させ、その後に脱型してフォームを得る方法である。
【0049】
ポリウレタンフォームが、ポリウレタン原料組成物をモールド成形することで製造されることで、発泡時の圧縮効果により、セルサイズを均一に細かくすることができる。また、ポリウレタン原料組成物をモールド成形する場合には、モールド内の容積に対するポリウレタン原料組成物の注入量によって、得られるポリウレタンフォームの密度の調整を容易に行うことができる。
【0050】
本発明のポリウレタンフォームは、高反発弾性でありながら引張強度及び引張伸びに優れるので、例えば、靴底部材として好適に利用することができる。靴底部材として使用される場合、ポリウレタンフォームは、アウトソール、ミッドソール、インソールのいずれについても利用することが可能である。ポリウレタンフォームを靴底部材に利用する場合、靴底全面に本発明のポリウレタンフォームを設けることはもちろんのこと、他の材料で形成したミッドソールに凹部を形成し、そこに本発明のポリウレタンフォームを挿入するなど、部分的に配置することも可能である。また、靴底としては、ミッドソールに本発明のポリウレタンフォームを使用し、その接地面側に防滑性を有するゴム素材からなるアウトソールを積層させてもよい。その場合、アウトソールは、ミッドソール接地面側の任意の箇所に配置してもよく、或いは、アウトソールの一部を切り欠くなどして接地面側のミッドソールを部分的に露出させてもよい。
【0051】
本発明のポリウレタンフォームは、靴底部材の他にも、ヘルメット内部、プロテクター、車両用の緩衝材料、床材など、衝撃吸収性、反発弾性などが必要な用途に好適に使用することができる。
【実施例
【0052】
実施例10、参考例1~2、11~12、比較例1~5
所定形状のモールドを準備し、表1及び表2に示すように、ポリオール成分、イソシアネート成分、触媒、発泡剤、および整泡剤を、スクリューを用いて撹拌することでそれらを混合しながらモールド内に注入した。モールド内に注入したポリウレタン原料組成物の量は、密度が0.45±0.05g/cm3になるよう調整した。ポリウレタン原料組成物は、スクリューを用いたポリオール成分、イソシアネート成分、触媒、発泡剤、および整泡剤の混合により形成される。モールド内にポリウレタン原料組成物が注入された後、モールド温度40℃の条件下でポリウレタン原料組成物を反応させた。反応後、脱型してポリウレタンフォームを得た。なお、表1,2中の材料の配合を示す数値の単位は、質量部である。
【0053】
なお、表1及び表2中におけるポリオール成分、イソシアネート成分、触媒、発泡剤、および整泡剤については、以下に示すとおりである。
【0054】
〔ポリオール成分〕
ポリオール(I)
ポリオール1:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(重量平均分子量4644、 水酸基価57.2mgKOH/g、平均官能基数2)
ポリオール2:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(重量平均分子量6861、 水酸基価39.1mgKOH/g、平均官能基数2)
ポリオール(II)
ポリオール3:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(重量平均分子量1993、 水酸基価113.1mgKOH/g、平均官能基数2)
ポリオール4:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(重量平均分子量2000、 水酸基価57mgKOH/g、平均官能基数2)
ポリオール5:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(重量平均分子量1000、 水酸基価113mgKOH/g、平均官能基数2)
ポリオール6:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(重量平均分子量1050、 水酸基価170.2mgKOH/g、平均官能基数2)
〔触媒〕 トリエチレンジアミン(東ソー(株)製、商品名TEDA-L33)
〔整泡剤〕 シリコーン系整泡剤(東レ・ダウコーニング社製、商品名「SZ3601」)
〔発泡剤〕 イオン交換水
〔イソシアネート成分〕
変性MDI:カルボジイミド変性体(平均官能基数2、イソシアネート基含有率29.0%)
イソシアネート末端基プレポリマー:ポリテトラメチレンエーテルグリコールと4,4’-MDIを反応させたプレポリマー(数平均分子量1000、平均官能基数2、イソシアネート基含有率7.99%)
【0055】
実施例10、参考例1~2、11~12および比較例1~4で得られたポリウレタンフォームについて、JIS K 7312に準拠しアスカーゴム硬度計C型を用いてポリウレタンフォームの硬度を測定した。また、実施例10、参考例1~2、11~12および比較例1~4で得られたポリウレタンフォームを適宜裁断して試験片を作成し、試験片を用いて以下に示す測定を行った。結果は、表1、表2に示すとおりである。
なお、比較例5は成型不可であったため、各測定を行っていない。
【0056】
(見かけ密度)
ポリウレタンフォームから縦15mm、横15mm、厚み10mmの直方体を切り出して密度測定用試験片とし、この密度測定用試験片を用いてJIS K 7222に準拠して見かけ密度(g/cm)が測定された。
【0057】
(反発弾性率)
ポリウレタンフォームから直径29mm、厚み12.5mmの円柱状に切り出して反発弾性率測定用試験片とし、反発弾性率測定試験片を用いてJIS K 6255に準拠して反発弾性率(%)が測定された。
【0058】
(引張強度・引張伸び)
JIS K 6251に準拠し、ポリウレタンフォームからダンベル状2号形に切り出して試験片とし、標線間距離20mm、チャック間距離70mmとして、当該試験片を引張試験機にて200mm/minの速度で引張り、試験片が破断するまでの最大引張強度、及び破断時の標線間距離が測定され、所定の式によって引張強度(MPa)及び引張伸び(%)が算出された。
【0059】
(最大衝撃荷重)
ポリウレタンフォームから縦70mm、横60mm、厚み12.5mmの直方体状に切り出して衝撃荷重測定用試験片とし、衝撃荷重測定用試験片を用いて落下衝撃試験により最大衝撃荷重が測定された。落下衝撃試験は、「dynatup GRC8200(Instron社製)」を用いて、図1に示すような砲弾状の錘w(鉄製、5.1kg)を50mmの高さから衝撃荷重測定用試験片に衝突させた際の最大衝撃荷重(kN)を特定することで実施された。
【0060】
(成型性)
脱型後のポリウレタンフォームにおいて、触感及び目視にて以下の基準に基づき評価した。

○:表面のべた付き、及び欠けが無く、良品である。
△:表面のわずかなべた付き、及び欠けが発生するが、製品としては問題ない。
×:表面のべた付き、及び欠けが発生し、製品として使用できない(成型不可
)。
【0061】
実施例10、参考例1~2、11~12によれば、反発弾性率が75%以上と高いものでありながら、引張強度及び引張伸びに優れる本発明のポリウレタンフォームを得ることができた。また、実施例3~7より、重量平均分子量の異なる特定のPTMGを併用することで、成型性に優れるものが得られた。
【0062】
一方、比較例1~5は、本発明で使用するPTMG以外を用いた例であって、高い反発弾性率が得られない、或いは高い反発弾性であっても、引張強度及び引張伸びが劣る結果となった。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】

【符号の説明】
【0065】
W 錘
図1