IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーア株式会社の特許一覧

特許7193941シャント抵抗器およびそれを用いた電流検出装置
<>
  • 特許-シャント抵抗器およびそれを用いた電流検出装置 図1
  • 特許-シャント抵抗器およびそれを用いた電流検出装置 図2
  • 特許-シャント抵抗器およびそれを用いた電流検出装置 図3
  • 特許-シャント抵抗器およびそれを用いた電流検出装置 図4
  • 特許-シャント抵抗器およびそれを用いた電流検出装置 図5
  • 特許-シャント抵抗器およびそれを用いた電流検出装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】シャント抵抗器およびそれを用いた電流検出装置
(51)【国際特許分類】
   H01C 13/00 20060101AFI20221214BHJP
   H01C 3/00 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H01C13/00 J
H01C3/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018140647
(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公開番号】P2020017678
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】仲村 圭史
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 成浩
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-022396(JP,A)
【文献】特開2001-349907(JP,A)
【文献】特開2017-053015(JP,A)
【文献】国際公開第2009/123159(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/141047(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 13/00
H01C 3/00
G01R 15/00
G01R 15/14
C22C 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を主成分とし、さらに、ニッケルと亜鉛とを含むCu-Ni-Zn合金を、単体の抵抗体からなるシャント抵抗の抵抗体材料とし
前記Cu-Ni-Zn合金は、その含有量が、Niが1.5~10wt%であり、Znが0.1~12wt%であり、残部がCuである
ことを特徴とするシャント抵抗器。
【請求項2】
さらに、Siを0.3~0.9wt%含むことを特徴とする請求項1に記載のシャント抵抗器。
【請求項3】
さらに、
Sn,Mgの少なくとも1の金属を0.1~1wt%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のシャント抵抗器。
【請求項4】
前記Cu-Ni-Zn合金に、
さらに、Si,Sn,Mg,Tiのうちの少なくとも1の金属を0.1~1wt%含む請求項1に記載のシャント抵抗器。
【請求項5】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のシャント抵抗器であって、
前記単体の抵抗体からなる板体の一部を表面側に立ち上げて一対の電圧検出端子が形成されているシャント抵抗器。
【請求項6】
請求項に記載のシャント抵抗器と、
前記一対の電圧検出端子とそれぞれ接続される、一対の第1及び第2の電圧信号ラインによる信号によって電流を測定する電流測定回路と、を備えた電流測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャント抵抗器等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に使用される電流が例えば1kA程度と大電流化が進んでいる。この場合、回路がショートした際の安全を確保するため、短絡電流を制御する必要がある。このような制御をシャント抵抗器で実現しようとした場合、回路がショートした際の大電流に耐えるような構成が重要となり、また、短絡電流は瞬時に発生するために電流を瞬時に検出することも重要である。
【0003】
従って、このような用途で用いられるシャント抵抗器は、例えば、100μΩ以下の低い抵抗値であることが求められる。そのような場合には、シャント抵抗器の電極と抵抗体との接続を可能な限り無くすことや、抵抗体の長さを可能な限り短くすることが考えられる。なお、電極と抵抗体との接続部を無くす構造として、電極と抵抗体とを同じ材料、例えばマンガニンで形成する構造も考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-116771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シャント抵抗器の電極と抵抗体とを同じ材料、例えば抵抗率の小さい銅で形成すると、抵抗は小さくなるが、TCRが大きくなってしまうという問題がある。
一方、シャント抵抗器の電極と抵抗体とを同じ材料、例えばTCRの小さいマンガニンやゼラニンで形成すると、TCRは小さくすることはできるが、余剰の抵抗(電圧測定端子より外側の部分の抵抗値)が大きくなり、電力消費が大きくなるという問題がある。
【0006】
また、電極と抵抗体とを異なる材料で形成すると、電極と抵抗体との間の接合部(例えば溶接部)において機械的強度が低下するという問題もある。
本発明は、抵抗体と電極とを同じ材料で形成したシャント抵抗器において、低抵抗かつ低TCR化を図ることを目的とする。
【0007】
また、本発明は、上記のようなシャント抵抗器を用いて、大電流の短絡電流の検出に適した電流検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、銅を主成分とし、さらに、ニッケルと亜鉛とを含むCu-Ni-Zn合金を、単体の抵抗体からなるシャント抵抗の抵抗体材料としたシャント抵抗器が提供される。
【0009】
前記Cu-Ni-Zn合金は、その含有量が、Niが1.5~10wt%であり、Znが0.1~12wt%であり、残部がCuであることが好ましい。
さらに、Siを0.3~0.9wt%含むことが好ましい。さらに、Sn,Mgの少なくとも1の金属を0.1~1wt%含むようにすると良い。
【0010】
前記Cu-Ni-Zn合金に、さらに、Si,Sn,Mg,Tiのうちの少なくとも1の金属を0.1~1wt%含むようにしても良い。
【0011】
本発明は、上記のいずれか1に記載のシャント抵抗器であって、前記単体の抵抗体からなる板体の一部を表面側に立ち上げて一対の電圧検出端子が形成されてもよい。
【0012】
本発明は、上記に記載のシャント抵抗器と、前記一対の電圧検出端子とそれぞれ接続される、一対の第1及び第2の電圧信号ラインによる信号によって電流を測定する電流測定回路と、を備えた電流測定装置であっても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、抵抗体と電極とを同じ材料で形成したシャント抵抗器において、低抵抗かつ低TCR化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態によるシャント抵抗器の一構成例を示す斜視図である。
図2】本発明の第2の実施の形態によるシャント抵抗器を用いた電流検出装置の一構成例を示す斜視図であり、回路基板にシャント抵抗器を実装する前の構成例を示す斜視図である。
図3】本実施の形態によるシャント抵抗器を用いた電流検出装置の一構成例を示す斜視図であり、回路基板にシャント抵抗器を実装した後の構成例を示す斜視図である。
図4図3のIIIa-IIIb線に沿う断面図であり、回路基板にシャント抵抗器を実装した後の構成例を示す図である。
図5】本実施の形態によるシャント抵抗器を用いた電流検出装置の一構成例を示す回路図(ブロック図)である。
図6】本発明の第3の実施の形態によるシャント抵抗器であって、Cu-Ni-Zn合金を板体(抵抗体)の材料として用いたシャント抵抗器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態によるシャント抵抗器およびそれを用いた電流検出装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態によるシャント抵抗器の一構成例を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態によるシャント抵抗器Aは、例えば後述するような組成を有し平板状の長尺な板体1からなるシャント抵抗器である。シャント抵抗器Aは、単体の抵抗体である平板状の板体1には、板体1の長さ方向に離れた一対の電圧検出端子11a,11bが形成されている。板体1を対向する2箇所の第1の辺を残して、他の3辺を切り抜き、2箇所の第1の辺を基準として表面側に立ち上げることで、一対の電圧検出端子11a,11bを簡単に形成することができる。
【0018】
上記のようにすることで、板体1のうち第1の辺の内側の領域(符号L1,L2)の内側の領域が電流検出における実効的な抵抗体3となり、その外側から両端までの領域が実効的な電極5a,5bとなる。
【0019】
図1に示すように、板体1を切り出して、そのまま曲げて立てることによって、電圧検出端子とすることで、間隔を短くすることが容易であり、かつ、長さも短い電圧検出端子を得ることができる。さらに、シャント抵抗器の持つインダクタンス値を小さくできる。
【0020】
なお、電圧検出端子は、図1に示す例の他に、別部材のピン状の端子を板体1に立設してもよい。板体1へのピン状の端子の固定は、板体1の表面にピン状の端子を溶接する方法や、板体1に孔を形成してこの孔にピン状の端子を挿入する等の方法がある。
【0021】
尚、図1に示すシャント抵抗器では、板体1の長さ方向に離れた位置に一対の孔部7a,7bが形成され、図示しないバスバーや配線基板などにボルトなどを用いて固定できるように構成されている。
次に、単体の抵抗体からなる板体1を形成する材料の組成について説明する。
板体1の材料を一般的な組成を有する例えば銅(100%)とすると、固有抵抗値(μΩ/cm)は、1.72程度と低いが、TCR(ppm/℃)は、3970程度と高い。
【0022】
一方、板体1の材料をマンガニン(登録商標)とすると、TCR(ppm/℃)は、±50程度と低いが、固有抵抗値(μΩ/cm)は、44程度と高い。また、ゼラニン30(登録商標)とすると、TCR(ppm/℃)は、29程度と低いが、固有抵抗値(μΩ/cm)は、29程度と高い。
【0023】
そこで、本実施の形態においては、以下の表に示すような、板体1の材料を用いた。本実施の形態による板体の固有抵抗値は4~5,TCRは1000~2000であった。すなわち、マンガニンに比べると、固有抵抗値が1/10程度となり、TCRは1000~2000とマンガニンよりは高いが、銅よりは低い値を得ることができる。
【0024】
【表1】
【0025】
表1は、本実施の形態による板体1の材料の一例を示す表である。表1に示すように、単体の抵抗体からなる板体1を形成する材料(合金材料)の主成分は、符号D1で示される銅であり、例えば、77~98.4wt%である。主成分である銅に加えて、本実施の形態では、符号B1で示される亜鉛(Zn)と、符号A1で示されるNiが含まれる。さらに、符号C1で示されるように、Si,Sn,Mg,Tiのうちの少なくともいずれかを0~1wt%含む。亜鉛(Zn)の量は、0.1から12wt%であり、Niの量は、1.5~10wt%である(総計で100wt%)。なお、本発明に係る合金材料には不可避不純物が含まれることがある。
【0026】
尚、マンガニンもNiを例えば2wt%程度含むことを考慮すると、固有抵抗値を低くすることが出来た理由は、Znを混合した合金としたことに起因すると推測できる。発明者の推測によれば、Znは酸化しやすく酸化膜ZnOを形成する。Cuを主成分とする合金において、少量のZnを混ぜることで、板体1を形成する合金の表面にZnO酸化膜が、バルクの低抵抗金属である銅の表面保護膜の役割を果たすことに加え、マンガニン等と同様にNiを含むことによるTCR低減の効果も得ることができる。以下、所定量のZnを加えた本実施の形態による板体用の合金を、Cu-Ni-Zn合金と称する。
【0027】
また、Cu-Ni-Zn合金に、Si,Sn,Mg,Tiのうちの少なくとも1の金属を0~1wt%加えても良い。このような合金も、Cu-Ni-Zn合金と称する。
【0028】
本実施の形態によるCu-Ni-Zn合金を用いると、高温での耐久性も良く、特性が安定している。例えば、175℃の高温下において、1000時間の高温放置試験を実施したところ、抵抗値変化量は±0.5%以内の小さな変動値を示した。
【0029】
通常、本実施の形態とは異なる銅及び銅合金は、高温での安定性は低く、酸化により、その抵抗値変化は±1%よりも大きい値を示すことから、本実施の形態によるCu-Ni-Zn合金は、特性が安定しており、耐久性にも優れているといえる。
【0030】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図2図3は、本実施の形態によるシャント抵抗器を用いた電流検出装置の一構成例を示す斜視図であり、図2は、回路基板にシャント抵抗器を実装する前の構成例を示す斜視図である。図3は、回路基板にシャント抵抗器を実装した後の構成例を示す斜視図である。図4は、図3のIIIa-IIIb線に沿う断面図であり、回路基板にシャント抵抗器を実装した後の構成例を示す図である。図5は、本実施の形態によるシャント抵抗器を用いた電流検出装置の一構成例を示す回路図(ブロック図)である。
【0031】
図2図3に示すように、第1の実施の形態によるCu-Ni-Zn合金を板体(抵抗体)1の材料として用いたシャント抵抗器Aを、電流測定回路、例えば増幅回路Bを含む回路に接続して電流測定装置Xを形成する。増幅回路Bは、シャント抵抗器Aからの出力信号を増幅するための回路である。
【0032】
シャント抵抗器Aと増幅回路Bとの接続は、シャント抵抗器Aに立設した電圧検出端子11a,11aを、増幅回路Bの回路基板21に形成されたスルーホール(貫通孔)23a,23bに挿入する。増幅回路Bが形成されるプリント基板などの回路基板21には、シャント抵抗器Aからの出力信号を増幅するための増幅回路(基板)が設けられている。尚、符号35は増幅回路Bから他の制御機器等に信号を出力するための端子部である。
【0033】
回路基板21のスルーホール23a,23bを用いて、電圧検出端子11a,11bとはんだ接続して繋ぐことで、回路基板21上の増幅器などの回路部品とシャント抵抗器Aとの距離を近接させて接続することができる。
【0034】
また、図4に示す電流検出回路の断面図によれば、シャント抵抗器Aの板体1を切りだして、そのまま曲げて立てることによって電圧検出端子11a,11bとすることで、一対の電圧検出端子11a、11bの間隔が短く、長さも短い端子を形成することができる。さらに、シャントの持つインダクタンス値を小さくでき、耐久性も確保できる。
【0035】
図5に示すように、増幅回路Bは、例えば、フォトカップラや静電カップリングコンデンサーCなどによるΔΣ変換アナログ絶縁アンプ25を備える。ΔΣ変換アナログ絶縁アンプ25の出力側には、配線L13を介してA/D変換器27が設けられる。シャント抵抗器Aの第1の信号出力端子11aと第2の信号出力端子11bとは、増幅回路の2つの入力端子にそれぞれ配線L11,L12により接続されている。
【0036】
増幅回路Bは、入力端子を有し、それぞれ、抵抗などを介してΔΣ変換アナログ絶縁アンプ25に接続されている。また、入力端子からの配線L11,L12間には、コンデンサCが設けられる。これにより、ノーマルモードノイズなどのΔΣ変換アナログ絶縁アンプ25への入り込みを抑制することができる。ΔΣ変換アナログ絶縁アンプ25の正電源端子はVccに接続され、負電源端子はGND31に接続されている。
【0037】
フォトカップラや静電カップリングコンデンサーなどによるΔΣ変換アナログ絶縁アンプ25を用いることで、入力側と出力側とを、電気的に絶縁することができる。従って、ノイズが、信号を増幅するために電流測定装置Xに設けた増幅回路に接続される一対の電圧信号ライン(配線L11,L12)に与える影響を低減することができる。
【0038】
尚、本実施の形態によれば、出力信号はデジタル出力とすることができる。シャント抵抗器AのTCR特性から、高精度の電流検出が必要な用途へは適していないため、出力信号もデジタル信号とすることで制御機器側の処理負担を軽減することが好ましい。
【0039】
電流値が規定値を超えた場合に、Highレベルを出力し、電流値が規定値以内ではLowレベルを出力するようにする。用いられるデジタル回路は、コンパレータ等を使用した簡易的な回路とすることができる。そして、回路の絶縁機能は、上記のようなフォトカップラなどの簡易な部品で実現することが可能である。
【0040】
加えて、本実施の形態による電流検出回路を、他の検出回路に付加することも可能である。例えば、電圧検出回路などを設けて電圧検出などにも利用することができる。
【0041】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、シャント抵抗器の別の形態を含む。図6は、本実施の形態によるシャント抵抗器であって、Cu-Ni-Zn合金を板体(抵抗体)1の材料として用いたシャント抵抗器の斜視図である。
【0042】
本実施の形態によるシャント抵抗器Dは、第1の実施の形態と同様に、Cu-Ni-Zn合金を長尺の板体1として用い、例えばその中央付近をプレスすることにより、中央の抵抗体3領域を上方に持ち上げた持ち上げ構造を有している。その他の構造は図1と同様である。このような折り曲げ構造を備えたシャント抵抗器Dを、回路上に面実装して用いることができる。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態に比べて、シャント抵抗器のより一層の小型化が可能である。
【0043】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態によるシャント抵抗器について説明する。シャント抵抗器の基本的な構造は第1から第3までのいずれかの実施の形態の場合と同様で良い。
表2は、表1に示した各金属材料の組成比のより具体的な一例を示す図である。
【0044】
【表2】
【0045】
表2に示すCu-Ni-Zn合金のうち実施例1-1で示される例では、例えば、Niが1.5~4.0wt%、Znが0.1~0.5wt%,Siが0.3~0.9wt%、Sn,Mgの少なくとも1の金属が0.1~1wt%、残部がCu(93.6~98wt%)である(総計で100wt%)。
この例では、固有抵抗値は4~5μΩ・cm,TCRが1000~2000程度である。
【0046】
一方、実施例1-2で示される例では、例えば、Niが1.6wt%、Znが0.4wt%,Siが0.4wt%、Snが0.5wt%、残部がCu(約97.1wt%)である。
この例では、固有抵抗値は4.3μΩ・cm,TCRが1500程度である。
【0047】
すなわち、表1におけるCuの割合が高いケースに相当するため、固有抵抗値はマンガニンやゼラニン30よりも低く、一方、TCRはマンガニンやゼラニン30よりも高い値を示す。従って、固有抵抗値を低くする必要性が高い場合に有効である。
【0048】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態によるシャント抵抗器について説明する。シャント抵抗器の基本的な構造は第1の実施の形態と同様で良い。
表3は、表1に示した各金属材料の組成比のより具体的な一例を示す図である。
【0049】
【表3】
【0050】
表3に示すCu-Ni-Zn合金のうち実施例2-1で示される例では、例えば、Niが5~10wt%、Znが5~12wt%,Siおよび/またはTiが0~1wt%、残部がCu(約77~90wt%)である。
この例では、固有抵抗値は10~15μΩ・cm,TCRが200~1000程度である。
【0051】
一方、実施例2-2で示される例では、例えば、Niが6wt%、Znが11wt%、残部がCu(約83wt%)である。
この例では、固有抵抗値は11.5μΩ・cm,TCRが600程度である。
【0052】
すなわち、表1におけるCuの割合が低いケースに相当するため、固有抵抗値はマンガニンやゼラニン30よりも低いが表2のケースよりは高く、一方、TCRはマンガニンやゼラニン30よりも高いが表2のケースよりは低い値を示す。従って、抵抗値を低くするがTCRをあまり高くしたくない場合に有効である。
【0053】
以上のように、マンガニンやゼラニン30には含めないZnを合金中に含めることで、低抵抗化および低TCR化が可能である。
【0054】
第4及び第5の実施の形態によれば、銅よりも低TCRかつマンガニンよりも低抵抗のシャント抵抗器を実現することができる。
従って、本実施の形態によれば、抵抗体と電極とを同じ材料で形成したシャント抵抗器において、低抵抗を実現し、且つ、TCRも良好な特性を得ることができる。
【0055】
また、添加する元素の割合を調整することで、表2と表3を比較すればわかるように、ある程度所望の特性値を有するシャント抵抗器を製造することができる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、その様な材料組成を決定して、短絡電流を検出するために最適なシャントの構造を提供することができる。
加えて、電流検出部も接続することによって、短絡電流検出可能なシステム実現することができる。
【0057】
上記の実施の形態において、図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、シャント抵抗器に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
A シャント抵抗器
B 増幅回路
X 電流測定装置
1 板体
3 抵抗体
5a,5b 電極
11a,11b 電圧検出端子
21 回路基板
23a,23b スルーホール(貫通孔)
25 ΔΣ変換アナログ絶縁アンプ
27 A/D変換器
図1
図2
図3
図4
図5
図6