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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】車両検知装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221214BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20221214BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G06T7/00 650B
G06T7/00 300F
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018141214
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020017184
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姚 志鵬
(72)【発明者】
【氏名】金子 修造
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】久保田 守
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-032082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面上を走行する自車両の周辺を撮像する撮像部により前記周辺を撮像して得られた画像に対して、他車両の特徴に基づくパターン認識を行い、前記他車両を検知する第1の車両検知部と、
前記撮像部が異なる時刻に撮像して得られた複数の画像の夫々に対して、前記自車両の上方の仮想視点から前記他車両を俯瞰するように視点変換した複数の俯瞰画像間の相関に基づいて、前記他車両を検知する第2の車両検知部と、
前記第1の車両検知部の確信度が予め定められた閾値を超え、且つ、前記第2の車両検知部の確信度が前記閾値以下となるとき、前記第1の車両検知部に前記他車両を検知させる制御を行い、前記第1の車両検知部の確信度が前記閾値以下で、且つ、前記第2の車両検知部の確信度が前記閾値を超えるとき、前記第2の車両検知部に前記他車両を検知させる制御を行う検知制御部と、を備え、
前記第2の車両検知部は、前記複数の俯瞰画像間の差分画像を前記撮像部から放射方向に延びる放射線で前記撮像部の位置を中心として所定の角度おきに分割した複数の立体物領域の中から、前記他車両の前記路面に対する鉛直性を評価し、その評価結果に基づいて、前記他車両を検知し、
前記差分画像の中に前記放射方向に沿って複数のエッジが存在している場合には、前記複数のエッジは前記他車両から抽出されたエッジ候補であると判定するエッジ候補判定部を備え、
前記第2の車両検知部は、前記エッジ候補判定部の判定結果に基づいて、前記他車両を検知し、
前記エッジ候補判定部で前記エッジ候補が複数個判定されたときは、前記撮像部を中心とした複数の前記エッジ候補間の角度が所定角度以上である場合に、複数の前記エッジ候補は前記他車両から抽出されたエッジであると判定するエッジ判定部を備え、
前記第2の車両検知部は、前記エッジ判定部の判定結果に基づいて、前記他車両を検知することを特徴とする車両検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両に接近する車両を検知する技術が求められている。そのような背景から、接近車両を検知する技術としてパターン認識が適用されることがある。このパターン認識の一例には、接近車両を正面から見た画像を特徴として予め記憶し、車載カメラで撮像されたカメラ画像の中に特徴と一致する部分が存在するか否かの判断を行うものがある。
【0003】
上述したパターン認識では、接近車両を正面から見た画像のみを用いて、接近車両か否かの認識が行われる。したがって、接近車両の向きが変わると、接近車両を検知できなくなることがある。
【0004】
一方、パターン認識に別の画像処理を組み合わせて、接近車両を認識する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、カメラ画像の中に、背景に対する接近車両の動きが大きい第一領域と、背景に対する接近車両の動きが小さい第二領域とが設定される。第一領域では、エッジ等の特徴点の移動に基づいて接近車両が検知される。第二領域では、パターン認識で接近車両が検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-181557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術では、特徴点が時間の経過とともに移動することを利用して、接近車両が検知される。接近車両を正しく検知するには、接近車両の特徴点と、背景の特徴点とを区別して分類することが望ましい。そうすると、接近車両の特徴点のみならず、動きのない背景の特徴点もカメラ画像の中から抽出せざるを得ない。したがって、特徴点の数が増加し、システムに要求される処理負荷が高くなる問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、車載カメラで撮像した画像に基づく俯瞰画像を利用することで、処理負荷を軽減することのできる車両検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両検知装置は、路面上を走行する自車両の周辺を撮像する撮像部により前記周辺を撮像して得られた画像に対して、他車両の特徴に基づくパターン認識を行い、前記他車両を検知する第1の車両検知部と、前記撮像部が異なる時刻に撮像して得られた複数の画像の夫々に対して、前記自車両の上方の仮想視点から前記他車両を俯瞰するように視点変換した複数の俯瞰画像間の相関に基づいて、前記他車両を検知する第2の車両検知部と、前記第1の車両検知部の確信度が予め定められた閾値を超え、且つ、前記第2の車両検知部の確信度が前記閾値以下となるとき、前記第1の車両検知部に前記他車両を検知させる制御を行い、前記第1の車両検知部の確信度が前記閾値以下で、且つ、前記第2の車両検知部の確信度が前記閾値を超えるとき、前記第2の車両検知部に前記他車両を検知させる制御を行う検知制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、車載カメラで撮像した画像に基づく俯瞰画像を利用することで、システムに要求される処理負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の車両検知装置を適用した車両検知システムを構成するハードウェア要素を示すハードウェアブロック図である。
図2】他車両を正面から見た場合の特徴を示す説明図である。
図3】車両検知装置を左側通行の道路に適用する場面を示す説明図である。
図4】車両検知装置で行われる一連の処理の流れを示すフローチャートである。
図5】カメラが撮像した画像の一例を模式的に示す図である。
図6】車両検知処理の具体的な流れを示すフローチャートである。
図7】俯瞰画像の一例を模式的に示す図である。
図8】車体差分登録処理を説明するための図である。
図9】第1の車両検知部と第2の車両検知部の各検知結果が等しくなった状態を示す説明図である。
図10】確信度の一例を示す説明図である。
図11】車体差分登録処理の具体的な流れを示すフローチャートである。
図12】車体位置算出処理の具体的な流れを示すフローチャートである。
図13】他車両の車長の算出手順を示す説明図である。
図14】実施例1に係る車両検知装置の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両検知装置の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
(実施例1の構成の説明)
図1は、実施例1の車両検知装置100を適用した運転支援システム10を構成するハードウェア要素を示すハードウェアブロック図である。まず、車両検知装置100を適用したシステム構成について図1を用いて説明する。
【0013】
本実施例の運転支援システム10は、自車両1(図3)に実装される。運転支援システム10は、前方カメラ20F(撮像部)と、左側方カメラ20L(撮像部)と、右側方カメラ20R(撮像部)とを有する。なお以下、前方カメラ20F、左側方カメラ20L及び右側方カメラ20Rを特に区別して説明する必要がない場合、単にカメラ20という。
【0014】
自車両1のフロントバンパやフロントグリルには、自車両1の前方に向けて前方カメラ20Fが搭載される。自車両1の左ドアミラーには、自車両1の左側方に向けて左側方カメラ20Lが搭載される。自車両1の右ドアミラーには、自車両1の右側方に向けて右側方カメラ20Rが搭載される。
【0015】
カメラ20には、広角の魚眼カメラを備えたカメラが採用される。魚眼カメラは広角の画像を取得するために、既知の歪み補正関数に基づいて、歪み補正を行う。カメラ20で撮像された画像は、車両検知装置100に出力される。
【0016】
運転支援システム10は、さらに、車両状態検出部30と、車速制御部40と、ディスプレイ制御部50と、音声出力制御部60と、測距センサ70と、車両検知装置100とを有する。
【0017】
車両状態検出部30は、シフトレバーの状態、車輪速(車速)、駐車方式(並列駐車又は縦列駐車)などの車両状態を示す信号を車両検知装置100に出力する。
【0018】
車速制御部40は、自車両1のエンジン(不図示)やブレーキ(不図示)を制御して、自車両1を加速させたり減速させたりする。
【0019】
ディスプレイ制御部50は、第1の車両検知部101や第2の車両検知部102の検知結果をディスプレイ(不図示)に表示する制御を行う。
【0020】
音声出力制御部60は、第1の車両検知部101や第2の車両検知部102の検知結果に基づいて、音声警報を出力する。
【0021】
測距センサ70は、超音波センサやレーザレーダ等のセンサからなり、前方測距センサ70Fと、左側方測距センサ70Lと、右側方測距センサ70Rとで構成されている。測距センサ70のうち前方を向いている測距センサ70を前方測距センサ70Fという。測距センサ70のうち左側方を向いている測距センサ70を左側方測距センサ70Lという。測距センサ70のうち右側方を向いている測距センサ70を右側方測距センサ70Rという。なお以下、前方測距センサ70F、左側方測距センサ70L及び右側方測距センサ70Rを特に区別して説明する必要がない場合、単に測距センサ70という。
【0022】
自車両1の前部には、前方測距センサ70Fが搭載される。自車両1の左側部には、左側方測距センサ70Lが搭載される。自車両1の右側部には、右側方測距センサ70Rが搭載される。測距センサ70は、車両検知装置100からの指示に基づいて、自車両1の周辺に所定周波数の測定波を逐次照射する。測距センサ70は、その測定波の照射範囲内の物体に当たって反射した反射波を逐次受信する。
【0023】
(車両検知装置の概略構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る車両検知装置100の概略構成を示す。以下、図1を用いて車両検知装置100の概略構成を説明する。
【0024】
車両検知装置100は、第1の車両検知部101と、第2の車両検知部102と、検知制御部103と、エッジ候補判定部104と、エッジ判定部105と、記憶部106とを備える。
【0025】
車両検知装置100の内部には、例えば、周辺デバイスを含めたマイクロプロセッサ及びプログラム、必要な処理を実行するRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、画像処理や信号処理を行う専用ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のモジュールが実装されている。
【0026】
第1の車両検知部101は、カメラ20により自車両1の周辺を撮像して得られた画像に対して、他車両2(図3)の特徴に基づくパターン認識を行い、他車両2を検知する。
【0027】
第2の車両検知部102は、カメラ20が異なる時刻に撮像して得られた複数の画像の夫々に対して、自車両1の上方の仮想視点から他車両2を俯瞰するように視点変換した複数の俯瞰画像間の相関に基づいて、他車両2を検知する。
【0028】
検知制御部103は、第1の車両検知部101の確信度が予め定められた閾値を超え、且つ、第2の車両検知部102の確信度が閾値以下となるとき、第1の車両検知部101に他車両2を検知させる制御を行い、第1の車両検知部101の確信度が閾値以下で、且つ、第2の車両検知部102の確信度が閾値を超えるとき、第2の車両検知部102に他車両2を検知させる制御を行う。
【0029】
なお、エッジ候補判定部104、エッジ判定部105及び記憶部106の詳細は後述する。
【0030】
(車両検知装置100で行われる一連の処理の流れ)
次に、車両検知装置100で行われる一連の処理の流れを、図3に示す説明図と図4に示すフローチャートとを用いて説明する。図3は、車両検知装置100を左側通行の道路に適用する場面を示している。
【0031】
一連の処理は、図3に示すように、自車両1の後方から自車両1に他車両2が接近してくる場面に車両検知装置100(図1)を適用したものである。
【0032】
この場面における車両検知装置100の動作条件としては、自車両1が縦列駐車されて停車中の状態から例えば時速2km以下の低速度で白抜きの矢印F1で示す方向に発進する状態を想定している。この場面では、自車両1の後方から自車両1に向けて白抜きの矢印F2で示す方向に接近してくる他車両の速度は例えば時速25km以下を想定している。
【0033】
検知制御部103は、自車両1から他車両2までの距離が所定距離を超えるとき、第1の車両検知部101に他車両2を検知させる制御とし、自車両1から他車両2までの距離が所定距離以下となるとき、第2の車両検知部102に他車両2を検知させる制御とする。
【0034】
(第1の車両検知部101で行われる処理の説明)
まず、第1の車両検知部101で行われる処理について説明する。第1の車両検知部101は、他車両2のテンプレートと、対象画像に含まれる物体とが一致するか否かを判断する。例えば、第1の車両検知部101では、そのテンプレートと対象画像の特徴点を比較するパターンマッチング法が用いられる。パターンマッチング法に用いるテンプレートは、予め記憶部106に記憶されている。
【0035】
本実施例では、例えば、他車両2を正面から見た場合の特徴を、図2に示すように左右ライトとナンバープレートとフロントガラスとする(図2)。これらの特徴を含むテンプレートは、予め定義されて記憶部106に記憶されている。これにより、カメラ20が撮像した画像の中に、特徴と一致する部分が存在するか否かの判定が行われる。その判定の結果、特徴と一致する部分が存在する場合、他車両2が検知される。
【0036】
このように、第1の車両検知部101の検知動作は、他車両2を正面から見た場合の特徴を用いて行われる。したがって、他車両2の向きが正面向きから側面向きや背面向きに変わると、第1の車両検知部101は他車両2を正確に検知できない。だからといって、刻々と変化する他車両2の動きに応じてテンプレートを準備すると、記憶部106に記憶すべきテンプレートの情報量が増大する。
【0037】
そこで、本実施例では、自車両1から他車両2までの距離が所定距離を超える遠方に他車両2が存在する場合のみ、第1の車両検知部101の検知動作を行う。そして、自車両1から他車両2までの距離が所定距離以下となる近辺に他車両2が存在する場合には、第2の車両検知部102の検知動作を行う。第2の車両検知部102では、俯瞰画像のフレーム間の差分を利用して、他車両2の検知が行われる。具体的に、フレーム間で静止物(背景)には差分が無いのに対して、他車両2には差分があることに着目して、他車両2の検知が行われる。
【0038】
(第2の車両検知部102で行われる処理の説明)
この場面における第2の車両検知部102の検知領域は、第1の車両検知部101では他車両2の検知が困難とされる範囲に設定される。具体的に、第2の車両検知部102の検知領域は、自車両1の右側方に例えば二車線の幅寸法に相当する6mに設定されるとともに、自車両1の後方に例えば8m~15mに設定される。ここで、15mは、カメラで撮影した画像に基づいてパターンマッチング(第1の車両検知)による認識率が高くなる(90%以上)最長の検知距離を示し、ここからパターンマッチングによる車両検知が開始される。また、8mは、俯瞰差分画像による検知方法(第2の車両検知)の認識率が高くなる(約70%~85%)最長の検知距離を示し、ここから俯瞰差分画像のみによる車両検知が開始される。通常、1レーンの幅が3mくらいであるため、2レーン分(3m×2)の6mをカメラによる検知範囲(=カメラ設置位置からの距離)としている。
【0039】
図4に示す一連の処理は、例えば、ドライバのスイッチ操作により車両検知処理の実行開始を指示する入力が車両検知装置100に送られたときに開始される。
【0040】
(ステップS1)
まず、第1の車両検知部101は、右側方カメラ20Rが異なる時刻(t-Δt),(t)に自車両1の直近の路面を含む右側方観測範囲を撮像して得られた画像I(t-Δt),I(t)を取得する。図5は、画像Iの一例を模式的に示す図である。各画像I(t-Δt),I(t)は記憶部106に記憶される。なお以下、画像I(t-Δt),I(t)を特に区別して説明する必要がない場合、単に画像Iという。
【0041】
(ステップS2)
次に、第1の車両検知部101は、他車両2のテンプレートと、画像Iの中に存在する他車両2とが一致するか否かを検知する。両者が一致する場合、第1の車両検知部101において画像Iの中に他車両2が存在すると検知され、処理はステップS3に移行する。両者が一致しない場合、第1の車両検知部101において画像Iの中に他車両2が存在しないと検知され、車両検知装置100で行われる処理が終了する。
【0042】
(ステップS3)
次に、検知制御部103は、第1の車両検知部101における検知処理結果を記憶部106に記憶する。
【0043】
(ステップS4)
次に、第2の車両検知部102は、他車両2を検知する車両検知処理を行う。この車両検知処理の詳細な流れは後述する。
【0044】
(ステップS5)
次に、検知制御部103は、第2の車両検知部102における検知処理結果を記憶部106に記憶する。
【0045】
(ステップS6)
次に、検知制御部103は、第1の車両検知部101における検知処理結果と第2の車両検知部102における検知処理結果とに基づいて、他車両2を検知する。
【0046】
(車両検知処理の具体的な流れの説明)
次に、図4のステップS4に示した車両検知処理の具体的な流れについて、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0047】
(ステップS11)
まず、第2の車両検知部102は、画像I(t-Δt),I(t)の夫々に対して、自車両1の上方の仮想視点から他車両2を俯瞰するように視点変換し、俯瞰画像BI(t-Δt),BI(t)を生成する。なお以下、俯瞰画像BI(t-Δt),BI(t)を特に区別して説明する必要がない場合、単に俯瞰画像BIという。
【0048】
図7は、俯瞰画像BIの一例を模式的に示す図である。図7に示すように、画像I(図5)は、車体の鉛直部分のエッジがカメラ20から放射状に広がるように写像変換される。俯瞰画像BIを利用すれば、他車両2の位置の検知が容易になる。また、他車両2以外に複数の車両が存在したとしても、各車両の区別が容易になる。
【0049】
(ステップS12)
第2の車両検知部102は、俯瞰画像BI(t-Δt)に映り込んだ静止物(背景)と、俯瞰画像BI(t)に映り込んだ静止物(背景)との位置合わせを行う。その位置合わせの後、第2の車両検知部102は、俯瞰画像BI(t)から俯瞰画像BI(t-Δt)を減算する減算処理を施して差分画像DPを生成する。
【0050】
(ステップS13)
第2の車両検知部102は、右側方カメラ20Rから放射方向に延びる複数本の放射線RLを初期化する。初期化とは、ステップS14の車体差分登録処理を開始するために、複数本の放射線RLを消去することをいう。
【0051】
(ステップS14)
図8は車体差分登録処理を説明するための図である。第2の車両検知部102は、図8に示すように、差分画像DPを右側方カメラ20Rから放射方向に延びる複数本の放射線RLで右側方カメラ20Rの位置を中心として等角度(例えば、3度)おきに分割する。放射線RLは、差分画像DPの中に存在する他車両2の路面に対する鉛直性を示す指標となる。図8に示すように、俯瞰画像BIに含まれる他車両2は、6本の放射線RLによって6つの立体物領域に分割される。
【0052】
(ステップS15)
エッジ候補判定部104は、車体差分登録処理を行う。この車体差分登録処理の詳細な流れは後述する。
【0053】
(ステップS16)
エッジ候補判定部104は、車両位置算出処理を行う。この車両位置算出処理の詳細な流れは後述する。
【0054】
(ステップS17)
検知制御部103は、第1の車両検知部101の確信度が予め定められた閾値を超え、且つ、第2の車両検知部102の確信度が閾値以下となるとき、第1の車両検知部101に他車両2を検知させる制御を行い、第1の車両検知部101の確信度が閾値以下で、且つ、第2の車両検知部102の確信度が閾値を超えるとき、第2の車両検知部102に他車両2を検知させる制御を行う。検知制御部103は、第1の車両検知部101の検知領域と第2の車両検知部102の検知領域とが重なる結合領域(図10)に位置する他車両2を中心とする円CI(図9)を描く。ここで、結合領域とは、遠方から接近してくる他車両2の追跡を第1の車両検知部101から第2の車両検知部102に切り替えていくための区間である。図9は、第1の車両検知部と第2の車両検知部の各検知結果が等しくなった状態を示す説明図である。図10に示すように、第1の車両検知部101による検知結果の確信度(=検知確信度)は徐々に下がっていく。逆に、図10に示すように、第2の車両検知部102による検知結果の確信度(=検知確信度)は上がっていく。そして、図9において線が引かれた地点付近で、両者の検知結果の確信度が等しくなる。この区間では、接近してくる他車両2を両者の検知結果に基づき、例えば、確信度による重み付け加算して、他車両2の位置を求める。
【0055】
検知制御部103は、第1の車両検知部101の検知確信度が0になったか否かを判定する。第1の車両検知部101の検知確信度が0になった場合、第2の車両検知部102のみで他車両2が検知される。
【0056】
(ステップS18)
ステップS17で第1の車両検知部101の検知確信度が0になった場合(ステップS17におけるYES)、俯瞰画像BI(t-Δt)と俯瞰画像BI(t)との間における差分を利用して、第2の車両検知部102は他車両2を検知する。検知制御部103は、ステップS16でエッジ候補判定部104が算出した他車両2の位置を新規登録する。
【0057】
(ステップS19)
検知制御部103は、ステップS18で位置が新規登録された他車両2を追跡する。この追跡は、新規に登録された位置から例えば8m程度他車両2が進むまで行われる。
【0058】
(ステップS20)
一方、ステップS17で他車両2が円CI内に存在しない場合(ステップS17におけるNO)、検知制御部103は、第2の車両検知部102の検知処理による確信度fを算出する。図10は、確信度の一例を示す説明図である。
【0059】
(ステップS21)
検知制御部103は、ステップS20で算出した確信度fが予め定められた閾値H(図10)を超えるか否かを判定する。確信度fが閾値Hを超える場合、処理はステップS18に移行する。一方、確信度fが閾値H以下である場合、処理はステップS22に移行する。
【0060】
(ステップS22)
検知制御部103は、ステップS16の車両位置算出処理でエッジ候補判定部104が算出した他車両2の位置をノイズとして除去する。
【0061】
その後、処理はメインルーチン(図4)に戻る。
【0062】
(車体差分登録処理の具体的な流れの説明)
次に、図6のステップS15に示した車体差分登録処理の具体的な流れについて、図11のフローチャートを用いて説明する。
【0063】
(ステップS31)
エッジ候補判定部104は、右側方カメラ20Rの位置を中心として等角度おきに差分画像DPを走査し、右側方カメラ20Rから放射方向に沿って第1所定数を超える画素が並んでいるか否かを判定する。ここで、第1所定数とは、他車両をそれ以外の物体と区別するために予め設定された値であり、例えば、例えば7個~8個に設定されることが好ましい。
【0064】
ステップS31で第1所定数を超える画素が並んでいる場合(ステップS31におけるYES)、放射方向に並んだ画素が鉛直エッジと判断されて他車両2と重なったとみなされ、処理はステップS32に移行する。このとき、図8に示すように、右側方カメラ20Rを中心として複数の方位に直線(放射線)が引かれ、他車両2と重なった放射線との交点がマークされる。
【0065】
一方、ステップS31で第1所定数以下の画素が並んでいる場合(ステップS31におけるNO)、放射方向に並んだ画素はノイズと判断され、ステップS35で除去される。
【0066】
(ステップS32)
エッジ候補判定部104は、右側方カメラ20Rの位置を中心として等角度おきに差分画像DPを走査し、右側方カメラ20Rから放射方向に沿って少なくとも1つの画素が存在するか否かを判定する。放射線RLによって分割された立体物領域の数が図8に示すように例えば6である場合、エッジ候補判定部104は、ステップS32に相当する処理を、立体物領域の数(=6)に等しい回数だけ反復して実行する。
【0067】
少なくとも1つの画素が存在する場合(ステップS32におけるYES)、処理はステップ33に移行する。全く画素が存在しない場合(ステップS32におけるNO)、ステップS31で判断された鉛直エッジはノイズと判断され、ステップS35で除去される。
【0068】
(ステップS33)
エッジ候補判定部104は、右側方カメラ20Rから放射方向に沿って第2所定数を超える画素が並んでいるか否かを判定する。ここで、第2所定数とは、上述した第1所定数同様、他車両をそれ以外の物体と区別するために予め設定された値であり、例えば、例えば7個~8個に設定されることが好ましい。
【0069】
ステップS33で第2所定数を超える画素が並んでいる場合(ステップS33におけるYES)、放射方向に並んだ画素を鉛直エッジと判断し、処理はステップS34に移行する。一方、ステップS33で第2所定数以下の画素が並んでいる場合(ステップS33におけるNO)、処理はステップS36に移行する。
【0070】
(ステップS34)
エッジ候補判定部104は、ステップS31で第1所定数を超える画素であると判断された鉛直エッジと、ステップS33で第2所定数を超える画素であると判断された鉛直エッジとを記憶部106に記憶する。
【0071】
(ステップS36)
エッジ候補判定部104は、ステップS34の2つの鉛直エッジに挟まれた画素で構成された領域を車体エッジとして記憶部106に記憶する。
【0072】
その後、処理はメインルーチン(図6)に戻る。
【0073】
(車両位置算出処理の具体的な流れの説明)
次に、図6のステップS16に示した車両位置算出処理の具体的な流れについて、図12のフローチャートを用いて説明する。
【0074】
(ステップS41)
エッジ判定部105は、所定角度内において鉛直エッジを走査して、鉛直エッジが存在するか否かを判定する。ここで、所定角度とは、他車両とそれ以外の物体とを区別するために予め設定された値であり、例えば30度に設定されることが好ましい。
【0075】
ステップS41で所定角度内に鉛直エッジが存在する場合(ステップS41におけるYES)、処理はステップS42に移行する。一方、ステップS41で所定角度内に鉛直エッジが存在しない場合(ステップS41におけるNO)、図11に示すステップS34で記憶部106に記憶された鉛直エッジ及び図11に示すステップS36で記憶部106に記憶された車体エッジがステップS52でノイズとして除去される。
【0076】
(ステップS42)
エッジ判定部105は、所定角度内に少なくとも2つの鉛直エッジが存在するか否かを判定する。2つの鉛直エッジが存在しない場合(ステップS42におけるNO)、処理はステップS43に移行する。一方、2つの鉛直エッジが存在する場合(ステップS42におけるYES)、処理は、ステップS53で鉛直エッジが除去された後、ステップS52に移行する。
【0077】
(ステップS43)
エッジ判定部105は、所定角度内に車体エッジが含まれるか否かを判定する。車体エッジが含まれない場合(ステップS43におけるNO)、処理はステップS44に移行する。一方、車体エッジが含まれる場合(ステップS43におけるYES)、処理はステップS47に移行する。
【0078】
(ステップS44)
エッジ判定部105は、所定角度内を例えば反時計まわりの方向に移動しながら放射線を走査する。
【0079】
(ステップS45)
エッジ判定部105は、放射線の走査が完了したか否かを判定する。放射線の走査が完了した場合(ステップS45におけるYES)、処理はステップS52に移行する。一方、放射線の走査が未完了の場合(ステップS45におけるNO)、処理はステップS46に移行する。
(ステップS46)
エッジ判定部105は、放射線上に車体エッジが存在するか否かを判定する。車体エッジが存在する場合(ステップS46におけるYES)、処理はステップS43に移行する。一方、車体エッジが存在しない場合(ステップS46におけるNO)、処理はステップS52に移行する。
【0080】
(ステップS47)
エッジ判定部105は、車体エッジをグループ内に正式登録する。この車体エッジのグルーピングには、車体エッジの位置情報を用いて、互いに近接している車体エッジを同じグループに分類する方法がある。また、車体エッジの特性、すなわち、車体エッジの方向又は強度に基づいて、車体エッジをグループ分けする方法がある。また、車体エッジの抽出対象として指定された幾何学図形に対するマッチングの度合いによって、車体エッジをグループ分けすることもできる。
【0081】
(ステップS48)
エッジ判定部105は、周知の手法を用いて、他車両2の車長を算出する。車長とは、例えば、車体エッジのうち鉛直エッジに最も近い最近隣エッジの先頭部(図13)同士を最短距離で結んだ線の長さのことをいう。
【0082】
(ステップS49)
エッジ判定部105は、ステップS48で算出した車長が予め定められた閾値を超えるか否かを判定する。車長が閾値を超える場合(ステップS49におけるYES)、処理はステップS50に移行する。一方、車長が閾値以下である場合(ステップS49におけるNO)、処理はステップS51に移行する。
【0083】
(ステップS50)
エッジ判定部105は、例えば、互いに近接している車体エッジを同じグループに分類して記憶部106に記憶する。具体的に、エッジ判定部105は、車体エッジ同士の距離を比較し、距離が所定範囲内にある車体エッジをグループ化する。
【0084】
(ステップS51)
エッジ判定部105は、ステップS47でグループ内に正式登録した車体エッジを削除する。
【0085】
(ステップS52)
ステップS46で車体エッジが存在しないと判断された場合(ステップS46におけるNO)や、ステップS50の処理又はステップS51の処理が終了した場合には、エッジ判定部105は、記憶部106に記憶されている各グループに属する車両エッジの中心点を算出する。具体的に、エッジ判定部105は、例えば移動平均法又は指数平滑法を用いて、各車両エッジの長さ方向の中心点を算出する。エッジ判定部105は、その算出した車両エッジの中心点を他車両2の中心とみなす。
【0086】
その後、処理はメインルーチン(図6)に戻る。
【0087】
上述した実施例1では、検知制御部103は、第1の車両検知部101の確信度が予め定められた閾値を超え、且つ、第2の車両検知部102の確信度が閾値以下となるとき、第1の車両検知部101に他車両2を検知させる制御を行い、第1の車両検知部101の確信度が閾値以下で、且つ、第2の車両検知部102の確信度が閾値を超えるとき、第2の車両検知部102に他車両2を検知させる制御を行う。
【0088】
上述した実施例1では、自車両1から他車両2までの距離が所定距離を超える遠方に他車両2が存在する場合には、第1の車両検知部101によるパターンマッチング法を用いた他車両2の検知が行われる。自車両1から他車両2までの距離が所定距離以下となる近辺に他車両2が存在する場合には、俯瞰画像の視界と実際にカメラ20が撮像した画像の視界とが異なることを利用して、俯瞰画像の差分を用いて他車両2が検知される。こうして、第1の車両検知部101によるパターンマッチング法では検知できない他車両2が第2の車両検知部102により検知される。これにより、カメラ20で撮像した画像に基づく俯瞰画像を利用して、俯瞰画像の差分をとることで、動きのない背景の部分を無くすことができる。すなわち、俯瞰画像を利用することで、動きのない背景部分を処理する必要がない。その結果、処理負荷を軽減することができる。
【0089】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであるため、本発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【0090】
なお、上述した実施例1では、車両位置算出処理において所定角度内の鉛直エッジを走査する際に、所定角度を30度に設定する例を説明した。本発明はこの態様に限らず、例えば、他車両よりも小さい歩行者や自転車を他車両と区別するために、所定角度を3度に設定してもよい。これにより、エッジ判定部105は、所定角度が3度以下となる範囲において、複数個のエッジが存在する場合、このエッジは歩行者や自転車から抽出されたエッジであると判定することができる。
【0091】
なお、上述した実施例1では、車両検知装置100を左側通行の道路に適用する例を説明した。本発明はこの態様に限らず、例えば、車両検知装置100を右側通行の道路に適用してもよい。
【0092】
なお、上述した実施例1では、第2の車両検知部102は、俯瞰画像BI(t)から俯瞰画像BI(t-Δt)を減算する減算処理を施して差分画像DPを生成する例を説明した。本発明はこの態様に限らず、例えば、第2の車両検知部102は、俯瞰画像BI(t-Δt)から俯瞰画像BI(t)を減算する減算処理を施して差分画像DPを生成してもよい。
【0093】
なお、上述した実施例1では、自車両1が縦列駐車されて停車中の状態から発進する場面に車両検知装置100を適用する例を示した。本発明はこの態様に限らず、図13に示すように、例えば、自車両1が並列駐車されて停車中の状態から発進する場面に車両検知装置100を適用してもよい(図14)。この場合、前方カメラ20F(撮像部)が異なる時刻に撮像して得られた複数の画像の夫々に対して、視点変換した複数の俯瞰画像間の相関に基づいて、他車両2の検知が行われる。この場面における車両検知装置100の動作条件としては、自車両1が例えば時速2km以下の低速度で白抜きの矢印F1で示す方向に発進する状態を想定している。この場面では、自車両1の右側方から自車両1に向けて白抜きの矢印F2で示す方向に接近してくる他車両の速度は例えば時速25km以下を想定している。
【符号の説明】
【0094】
1・・・自車両
2・・・他車両
20・・・カメラ(撮像部)
20F・・・前方カメラ(撮像部)
20L・・・左側方カメラ(撮像部)
20R・・・右側方カメラ(撮像部)
100・・・車両検知装置
101・・・第1の車両検知部
102・・・第2の車両検知部
103・・・検知制御部
BI、BI(t-Δt)、BI(t)・・・俯瞰画像
DP・・・差分画像
I、I(t-Δt)、I(t)・・・画像
RL・・・放射線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14