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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】自動運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221214BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20221214BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20221214BHJP
   B60W 30/095 20120101ALI20221214BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G01C21/26 A
B60W30/10
B60W30/095
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018152230
(22)【出願日】2018-08-13
(65)【公開番号】P2020027459
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】金井 聡吾
(72)【発明者】
【氏名】藤森 晋平
(72)【発明者】
【氏名】香園 和也
(72)【発明者】
【氏名】荻野 修
(72)【発明者】
【氏名】田口 徳昭
【審査官】稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-98243(JP,A)
【文献】特開2008-287572(JP,A)
【文献】特開2018-106255(JP,A)
【文献】特開2008-217360(JP,A)
【文献】特開2017-220028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 10/30
30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方の走行環境情報を取得する前方走行環境情報取得手段と、
前記自車両の現在位置を推定する自車位置推定手段と、
前記自車位置推定手段で推定した前記自車両の現在位置と操作者がセットした目的地とに基づき記憶手段に記憶されている道路地図情報から目標進行路を設定する目標進行路設定手段と、
前記目標進行路設定手段で設定した前記目標進行路に沿って前記自車両を走行させる走行制御を行う走行制御手段と
を有する自動運転支援装置において、
前記走行制御手段は、
前記目標進行路設定手段で設定した前記目標進行路に基づき前方の交差点を左側通行が規定されている道路での左折方向又は右側通行が規定されている道路での右折方向へ進路転換するか否かを判定する進路転換判定手段と、
前記進路転換判定手段で進路転換を行うと判定した場合、前記前方走行環境情報取得手段で取得した前記走行環境情報或いは前記道路地図情報に基づき前記交差点の周辺情報を取得し、進路転換先の道路に進入する際の進路転換方向内側の路側を基準とする前記自車両の走行車線での横位置を求める横位置演算手段と、
前記前方走行環境情報取得手段で取得した前記走行環境情報或いは前記道路地図情報に基づき前記交差点の入り口の停止線で前記自車両を停車させるか否かを調べる停車判定手段と、
前記停車判定手段で前記自車両を前記停止線で停止させると判定した場合、前記横位置演算手段で求めた該自車両の横位置に基づき前記停止線で該自車両を停車させる際の停車横位置を算出する停止線停車横位置算出手段と
進路転換方向の道路への旋回が可能か否かを判定する旋回可能判定手段と
を有し、
前記横位置演算手段は、前記横位置と前記自車両の車幅とに基づいて旋回時外側横位置を求め、
前記旋回可能判定手段は、前記前方走行環境情報取得手段で取得した前記走行環境情報或いは前記道路地図情報に基づき前記自車両が走行している交差点手前の車線の車線幅を取得し、前記旋回時外側横位置が該車線幅以内の場合に旋回可能と判定する
ことを特徴とする自動運転支援装置。
【請求項2】
前記旋回可能判定手段は、前記旋回時外側横位置が前記車線幅を超えている場合は旋回不可と判定し、
前記目標進行路設定手段は、前記旋回可能判定手段で旋回不可と判定した場合、前記目標進行路を再演算する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動運転支援装置。
【請求項3】
前記横位置演算手段は、前記前方走行環境情報取得手段で取得した前記走行環境情報或いは前記道路地図情報に基づき、進路転換方向の道路へ旋回させるために必要な旋回半径と前記自車両を旋回させた際の旋回方向外側前部コーナの旋回軌跡とに基づき前記横位置を求める
ことを特徴とする請求項1或いは2に記載の自動運転支援装置。
【請求項4】
前記横位置演算手段で取得する前記交差点の周辺情報は、進路転換先の道路幅、現在走行している車線と前記進路転換先の道路との交差角、前記進路転換先の道路に設けられた路側障害物である
ことを特徴とする請求項1~3何れか1項に記載の自動運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点入り口の停止線で自車両を停車させるに際し、交差点から左側通行が規定されている道路では左折方向(右側通行が規定されている道路では右折方向)へ進路転換させる場合、容易に進路転換できるように停止線での停車横位置を設定する自動運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の自動運転支援装置は、運転者(操作者)が目的地をセットすると、現在地から目的地までの走行ルートを道路地図上に設定し、その全部又は一部を運転者に代わって自動的に走行させるものである。一般道路における自動運転に際しては、カメラ等のセンシングデバイスにより自車両前方の走行環境を認識し、先行車や障害物の有無、点灯している信号機の灯色や矢印信号機の示している方向等を常時監視する。
【0003】
そして、自車両の進行路前方に先行車が検出された場合は、先行車との車間距離、相対車速等に基づき自車速を所定に制御する。又、交差点に設置されている信号機の点灯色が青色(青信号)の場合、或いは点灯色が赤色(赤信号)であっても矢印信号機の示す矢印方向が自車両の進行方向である場合には自車両を交差点に進入させ、直進、右左折等、走行ルートに沿って設定した目標進行路に沿って自車両を走行させる。
【0004】
例えば特許文献1(特開2017-1596号公報)には、地図データベースに記憶されている道路地図情報に基づき、走行予定経路上の交差点等のエリアを抽出し、当該交差点の信号機の点灯色をカメラで撮像した画像情情報に基づいて調べ、赤色(赤信号)の場合は、交差点入り口の停止線で自車両を停止させる技術が開示されている。
【0005】
又、自動運転において、自車両を交差点から左側通行が規定されている道路では左折方向(右側通行が規定されている道路では右折方向)に進路転換させる場合、自車両を交差点の手前から路側寄りに移動させ、この路側から一定の離間距離を維持した状態で交差点を通過させる走行制御が行われる。
【0006】
その際、例えば特許文献2(特開2010-143442号公報)に開示されているように、カメラ等により自車両の旋回方向内側を撮像することで、路側に対し一定の距離を維持した状態で自車両を旋回させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-1596号公報
【文献】特開2010-143442号公報
【文献】特開2017-220028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に開示されているように、カメラ等にて自車両の旋回方向内側を撮像することで、旋回方向内側と障害物との接触を防止するようにしたとしても、進路転換先の道路幅が狭い場合や進路転換先の道路が鋭角に交差している場合には、自車両を路側に沿って旋回させることが困難である。
【0009】
従って、このような場合は、例えば特許文献3(特開2017-220028号公報)に開示されているように、進路転換先の道路幅情報を道路地図データから読込み、進路転換先の道路幅狭い場合、大回りの旋回軌跡を設定し、自車両を交差点で先ず、外側へ膨らませた後、大回り旋回させて進路転換させることになる。
【0010】
ところで、自車両が交差点入り口の停止線で停車することなく交差点に進入して進路転換させる場合は、走行しながらの操舵であるため、上述した特許文献3に開示されているように交差点内で大回り旋回させて、進路転換先の道路に進入させることが可能となる。
【0011】
しかし、信号待ちや優先道路に進入する等のために交差点入り口の停止線で自車両を停車させるに際し、左側通行が規定されている道路では左折方向(右側通行が規定されている道路では右折方向)への進行方向の切換えに備えて、自車両を外側へ膨らます姿勢で停車させることは、走行車線を跨いだ状態で停車することになりかねず、後続車の進路を妨害することになる不都合がある。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、交差点入り口の停止線で停車した後、左側通行が規定されている道路では左折方向(右側通行が規定されている道路では右折方向)へ進路転換させるに際し、後続車の進路を妨害することなくスムーズに旋回させることのできる自動運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、自車両の前方の走行環境情報を取得する前方走行環境情報取得手段と、前記自車両の現在位置を推定する自車位置推定手段と、前記自車位置推定手段で推定した前記自車両の現在位置と操作者がセットした目的地とに基づき記憶手段に記憶されている道路地図情報から目標進行路を設定する目標進行路設定手段と、前記目標進行路設定手段で設定した前記目標進行路に沿って前記自車両を走行させる走行制御を行う走行制御手段とを有する自動運転支援装置において、前記走行制御手段は、前記目標進行路設定手段で設定した前記目標進行路に基づき前方の交差点を左側通行が規定されている道路での左折方向又は右側通行が規定されている道路での右折方向へ進路転換するか否かを判定する進路転換判定手段と、前記進路転換判定手段で進路転換を行うと判定した場合、前記前方走行環境情報取得手段で取得した前記走行環境情報或いは前記道路地図情報に基づき前記交差点の周辺情報を取得し、進路転換先の道路に進入する際の進路転換方向内側の路側を基準とする前記自車両の走行車線での横位置を求める横位置演算手段と、前記前方走行環境情報取得手段で取得した前記走行環境情報或いは前記道路地図情報に基づき前記交差点の入り口の停止線で前記自車両を停車させるか否かを調べる停車判定手段と、前記停車判定手段で前記自車両を前記停止線で停止させると判定した場合、前記横位置演算手段で求めた該自車両の横位置に基づき前記停止線で該自車両を停車させる際の停車横位置を算出する停止線停車横位置算出手段と、進路転換方向の道路への旋回が可能か否かを判定する旋回可能判定手段とを有し、前記横位置演算手段は、前記横位置と前記自車両の車幅とに基づいて旋回時外側横位置を求め、前記旋回可能判定手段は、前記前方走行環境情報取得手段で取得した前記走行環境情報或いは前記道路地図情報に基づき前記自車両が走行している交差点手前の車線の車線幅を取得し、前記旋回時外側横位置が該車線幅以内の場合に旋回可能と判定する
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、目標進行路に基づいて前方の交差点を、左側通行が規定されている道路での左折方向又は右側通行が規定されている道路での右折方向へ進路転換すると判定した場合、交差点の周辺情報に基づき進路転換先の道路に進入する際の進路転換方向内側の路側を基準とする自車両の走行車線での横位置を求め、交差点入り口の停止線で自車両を停車させる場合、自車両の横位置に基づき停止線で自車両を停車させる際の停車横位置を算出するようにしたので、交差点入り口の停止線で自車両を停車した後、左側通行が規定されている道路では左折方向(右側通行が規定されている道路では右折方向)へ進路転換させるに際し、旋回外側へ一旦膨らませる必要がなく、従って、後続車の進路を妨害することなくスムーズに旋回させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】自動運転支援装置の概略構成図
図2】左折制御処理ルーチンを示すフローチャート(その1)
図3】左折背魚処理ルーチンを示すフローチャート(その2)
図4】左折時外横位置演算サブルーチンを示すフローチャート
図5】目標進行路が交差点を左折する方向に設定されている状態を示す説明図
図6】路側に沿って自車両を左折させる状態を示す説明図
図7】左折先の道路に障害物が存在する場合の停止線での停車横位置を示す説明図
図8】左路側が交差点で直交して交差している場合の停止線での停車横位置を示す説明図
図9】左路側が鋭角に交差している場合の停止線での停車横位置を示す説明図
図10】左折不可と判定したときの停止線での停車横位置を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1に示す自動運転支援装置1は、自車両M(図5図10参照)に搭載されている。この自動運転支援装置1は、自車位置を検出する手段としてのロケータユニット11と、前方走行環境情報取得手段としてのカメラユニット21と、走行制御手段としての車両制御ユニット23とが搭載されている。
【0017】
ロケータユニット11は、道路地図上の自車両Mの位置(自車位置)を推定すると共に、自車位置周辺の道路地図データを取得する。一方、カメラユニット21は自車両Mの前方の走行環境情報を取得して、走行車線の左右を区画する区画線、道路形状、先行車両の有無等を認識すると共に、区画線中央の道路曲率、先行車両との車間距離及び相対速度等を求める。更に、カメラユニット21は障害物を認識し、この障害物の形状及び自車両Mからの距離を求める。
【0018】
ロケータユニット11は、地図ロケータ演算部12と記憶手段としての高精度道路地図データベース16とを有している。この地図ロケータ演算部12、後述する前方走行環境認識部21d、及び車両制御ユニット23は、CPU,RAM,ROM等を備える周知のマイクロコンピュータ、及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやベースマップ等の固定データ等が予め記憶されている。
【0019】
又、地図ロケータ演算部12の入力側に、GNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)受信機13、自律走行センサ14、及び目的地情報入力装置15、及び後述するカメラユニット21の前方走行環境認識部21dが接続されている。GNSS受信機13は複数の測位衛星から発信される測位信号を受信する。又、自律走行センサ14は、トンネル内走行等GNSS衛生からの受信感度が低く測位信号を有効に受信することのできない環境において、自律走行を可能にするもので、車速センサ、ジャイロセンサ、及び前後加速度センサ等で構成されている。
【0020】
そして、地図ロケータ演算部12は、車速センサで検出した車速とジャイロセンサで検出した角速度、及び前後加速度センサで検出した前後加速度等に基づき移動距離と方位からローカライゼーションを行う。
【0021】
又、目的地情報入力装置15は、操作者である運転者が目的地情報(住所、電話番号、モニタに表示された登録一覧からの選択等)を入力すると、対応する位置座標(緯度、経度)を取得し、この位置座標を目的地として設定する。
【0022】
地図ロケータ演算部12は、自車位置推定手段としての自車位置推定演算部12a、道路地図情報取得部12b、目標進行路設定手段としての目標進行路設定演算部12cを備えている。自車位置推定演算部12aは、GNSS受信機13で受信した測位信号に基づき自車両Mの位置情報である位置座標(緯度、経度)を取得する。又、GNSS受信機13の感度低下により測位衛星からの有効な測位信号を受信することができない環境では、自律走行センサ14からの信号に基づいて自車両Mの位置座標を推定する。
【0023】
道路地図情報取得部12bは、自車両Mの位置座標と目的地情報入力装置15で設定した目的地の位置座標(緯度、経度)とを、高精度道路地図データベース16に記憶されている道路地図上にマップマッチングする。そして、両位置を特定し、現在の自車位置から目的地周辺の道路地図情報を目標進行路設定演算部12cに送信する。この高精度道路地図データベース16はHDD等の大容量記憶媒体であり、高精度な道路地図情報(ダイナミックマップ)が記憶されている。この高精度道路地図情報は、自動運転を行う際に必要とする道路データ(車線幅データ、車線中央位置座標データ、車線の進行方位角データ、制限速度、交差点や停止線の位置情報等)を保有しており、この道路データは、道路地図上の各車線に数メートル間隔で格納されている。
【0024】
目標進行路設定演算部12cは、先ず、道路地図情報取得部12bでマップマッチングした現在位置と目的地とを結ぶ走行ルートを道路地図上に作成する。次いで、この走行ルート上に、自車両Mを自動走行させるための目標進行路を設定する。この目標進行路は自車両Mの車幅方向中央に設定され、自車両Mは目標進行路に沿って走行するように操舵制御が行われる。又、目標進行路は道路のどの位置を走行させるかを示すもので、走行車線(左車線、中央車線、右車線等)、交差点からの右左折、走行車線内の横位置等を、自車両Mの前方、数百~数キロ先までを逐次設定し更新する。尚、この目標進行路の情報は車両制御ユニット23で読込まれる。
【0025】
一方、カメラユニット21は、自車両Mの車室内前部の上部中央に固定されており、車幅方向中央を挟んで左右対称な位置に配設されているメインカメラ21a及びサブカメラ21bからなる車載カメラ(ステレオカメラ)と、画像処理ユニット(IPU)21c、及び前方走行環境認識部21dとを有している。このカメラユニット21は、両カメラ21a,21bで、自車両M前方の所定撮像領域If(図5参照)を撮像した走行環境画像情報をIPU21cにて所定に画像処理する。
【0026】
前方走行環境認識部21dは、IPU21cで画像処理された走行環境画像情報を読込み、この走行環境画像情報に基づき前方走行環境を認識する。この前方走行環境には、自車両Mが走行する進行路(自車進行路)の道路形状(左右を区画する区画線の中央の道路曲率[1/m]、及び左右区画線間の幅(車線幅))、交差点、信号機の点灯色、道路標識、及び路側障害物(電柱、電信柱、ガードレール、塀、駐車車両等)が含まれている。
【0027】
車両制御ユニット23は、右左折情報取得部23aと車両制御演算部23bとを備えており、入力側にカメラユニット21の前方走行環境認識部21dが接続されている。又、この車両制御ユニット23の出力側に、自車両Mを目標進行路に沿って走行させる操舵制御部31、強制ブレーキにより自車両Mを減速させるブレーキ制御部32、自車両Mの車速を制御する加減速制御部33、及び警報装置34が接続されている。更に、この車両制御ユニット23と地図ロケータ演算部12とが車内通信回線(例えばCAN:Controller Area Network)を通じて双方向通信自在に接続されている。
【0028】
右左折情報取得部23aは、地図ロケータ演算部12の目標進行路設定演算部12cで設定した目標進行路に右左折する交差点が設定されているかを調べる。そして、右左折する交差点が自車両Mの前方に設定されている場合、カメラユニット21の前方走行環境認識部21dで取得した情報、及び、道路地図情報取得部12bで取得した道路地図情報に基づき当該交差点の周辺情報を読込む。
【0029】
車両制御演算部23bは、操舵制御部31、ブレーキ制御部32、加減速制御部33を所定に制御して、GNSS受信機13で受信した自車位置を示す測位信号に基づき、自車両Mを目標進行路設定演算部12cで設定した道路地図上の目標進行路に沿って自動走行させる。その際、前方走行環境認識部21dで認識した前方走行環境に基づき、周知の追従車間距離制御(ACC:Adaptive Cruise Control)、及び車線維持制御(ALK:Active Lane Keep)を行い、先行車が検出された場合は先行車に追従し、先行車が検出されない場合は制限速度内で走行させる。
【0030】
又、この車両制御演算部23bは、右左折情報取得部23aで取得した情報に基づき、自車両Mの右左折制御処理を行う。尚、以下においては、左側通行が規定されている道路を例示して説明し、右側通行が規定されて道路では左折を右折と読み替えて適用する。又、本実施形態は、左側通行が規定されている道路における左折(右ハンドル車では助手席側に曲折)する際の自動運転支援に特徴を有している。従って、以下においては、左折時の自動運転支援制御に特化して説明する。
【0031】
右左折情報取得部23aで実行される左折制御処理は、具体的には、図2に示す左折制御処理ルーチンに従って実行される。このルーチンでは、先ず、ステップS1で、目標進行路設定演算部12cで設定した目標進行路とGNSS受信機13で受信した測位信号に基づいて推定した自車位置(緯度、経度)とを読込み、目標進行路上に自車位置をマップマッチングさせて、自車両Mの前方の交差点を左折方向へ進路転換(以下、単に「左折」と称する)するか否かを調べる。尚、このステップでの処理が本発明の進路転換判定手段に対応している。
【0032】
そして、直進、或いは右折の場合は、そのままルーチンを抜け、周知の直進走行制御、或いは右折走行制御を実行する。又、前方の交差点を左折すると判定した場合は、ステップS2へ進む。尚、この直進走行制御、或いは右折走行制御は従来通りであるため、説明は省略する。
【0033】
ステップS2へ進むと、地図ロケータ演算部12の目標進行路設定演算部12cで取得した交差点周辺の道路地図情報を読込む。更に、ステップS3で、前方走行環境認識部21dで認識した前方走行環境情報を読込む。そして、ステップS4へ進み、ステップS2,S3で読込んだ交差点周辺の道路地図情報、及び前方走行環境情報に基づき、旋回時外側横位置である左折時外横位置Waを求める。図6に示すように、左折時外横位置Waは、進路転換方向内側の路側である左路側(路側帯、及び路肩)41を基準とし、この左路側41から自車両Mの右側面までの距離に右余裕幅Wαを加算した値である。尚、図において、Wiは左折する際に必要とする左路側41からの横位置(必要内輪横位置)、Wmは自車両Mの左右後輪の外幅である。又、右余裕幅Wαは省略しても良い。
【0034】
このステップS4での処理は、図4に示す左折時外横位置演算サブルーチンに従って実行される。尚、このサブルーチンでの処理が本発明の横位置演算手段に対応している。
【0035】
このサブルーチンでは、先ず、ステップS21で、地図ロケータ演算部12の目標進行路設定演算部12cで取得した左折先(進路転換先)の道路地図情報(道路幅、車線幅等)を読込む。次いで、ステップS22へ進み、前方走行環境認識部21dで認識した前方走行環境情報から交差点の周辺情報を取得する。この交差点の周辺情報は、左路側41の情報(位置、形状、高さ、交差角θ等)、電柱、電信柱、ガードレール、塀、駐車車両等の路側障害物42の情報(位置、形状、大きさ等)等である。尚、この交差点の周辺情報は、道路地図情報取得部12bで取得した道路地図情報から得るようにしても良い。
【0036】
その後、ステップS23へ進み、自車両Mの情報(自車情報)を読込む。この自車情報は、車両固有情報(最小回転半径、車幅Wm、前後長、旋回方向内側後輪である左後輪から旋回方向外側前部コーナである右前部コーナまでの長さ及び傾斜角度等)、及び走行情報(自車位置、自車速、舵角)等である。
【0037】
そして、ステップS24で、ステップS21~S23で読込んだ各種情報に基づき、自車両Mを左折先の道路方向へ旋回させるために必要な左後輪の旋回半径(必要左後輪旋回半径)Rを算出する。自車両Mを交差点から左折させる場合、図5に示すように、基本的には、目標進行路を、直進路で走行している車線中央から交差点手前で左路側41寄りに移動させ、左路側41に沿って交差点に進入させて左折させる。
【0038】
従って、図6に示すように、左折時の目標進行路は、車幅Wmを左右後輪の外幅とし、左後輪から左路側41までの予め設定されている基本寄せ幅(例えば、10~100[cm])をWoとした場合、左路側41からWo+Wm/2の距離に設定される。そして、ここの基本寄せ幅Woに沿って旋回する際の半径を必要左後輪旋回半径Rとして設定する。又、図7図9に示すように、現在走行している直進路と左折先の道路とが大きな曲率(小さい半径)で交差している場合、この必要左後輪旋回半径Rは自車両Mの最小回転半径に設定される。
【0039】
次いで、ステップS25へ進み、自車両Mを必要左後輪旋回半径Rで旋回させた際の、右前部コーナの旋回軌跡Rfを、必要左後輪旋回半径Rと左後輪から右前部コーナまでの長さ及び傾斜角度に基づいて求める。そして、ステップS26へ進み、左路側41から自車両Mの左後輪までの距離(必要内輪横位置)Wiを算出する。
【0040】
すなわち、図7に示すように、左折先の道路幅が狭く、しかも、電柱等の路側に存在する障害物(路側障害物)42が認識された場合、自車両Mを左路側41に沿って、基本寄せ幅Wo(例えば、10~100[cm])を確保した状態のまま旋回軌跡Rfで旋回すると、一点鎖線で囲った枠に示すように、右前部コーナが路側障害物42に接触してしまう可能性がある。
【0041】
同様に、図8に示すように現在の走行している車線と左折方向の道路との左路側41の交差部分が大きな曲率(小さい半径)交差している場合、自車両Mの左後輪を左路側41に対し、基本寄せ幅Woだけ近接した状態のまま左折すると、一点鎖線で囲った上枠に示すように、自車両Mの左側面が左路側41に接触し易くなる。このような場合、一点鎖線で囲った下枠に示すように、左後輪が左路側41の交差部分に達した付近でハンドルを切ることになるが、自車両Mの前部が左折先の道路に大きくはみ出すため、幅の狭い道路では回りきれない可能性がある。
【0042】
更に、図9に示すように交差点において左路側41が鋭角な交差角θで交差している場合、一点鎖線で囲った枠に示すように、上述した図8の場合よりも、左側面が左路側41に接触する可能性が更に高くなる。
【0043】
図7図9に示す態様において、自車両Mを旋回軌跡Rfで旋回させて左折先の道路にスムーズに進入させるには、必要内輪横位置Wiを、現在走行している車線の中央方向へ設定する必要がある。その際、図8図9の態様では、自車両Mの左後輪が基本寄せ幅Woを保持した状態で左路側41の交差部分を通過させるようにする。
【0044】
又、例えば、図10に示すように、左折先の道路が狭く、自車両Mを左折させるために、自車両Mを走行車線の右寄りに移動させても、一点鎖線で囲った枠に示すように、回りきれない場合は、自車両Mを交差点で一旦、対向車線側へ大きく膨らませた後、旋回させる必要がある。その結果、必要内輪横位置Wiは車線中央側へ大きく移動させた位置に設定される。
【0045】
その後、ステップS27へ進み、左路側41から自車両Mの右側面における必要横位置(左折時外横位置)Waを算出して、ルーチンを抜け、図2のステップS5へ進む。
【0046】
この左折時外横位置Waは、自車両Mが左折するに際し、走行車線をはみ出すことなく左折できるか否かを調べるために算出するものであり、必要内輪横位置Wiと自車両Mの車幅Wmと右余裕幅Wαとを加算して求める。
【0047】
図2のステップS5へ進むと、左折時外横位置Waと現在走行している車線(走行車線)の車線幅Wlとを比較し、走行車線を外側へはみ出すことなく左折(旋回)可能か否かを判定する。尚、この車線幅Wlは、ステップS2で読込んだ交差点周辺の道路地図情報、或いはステップS3で読込んだ前方走行環境情報から取得する。又、このステップS5での処理が本発明の旋回可能判定手段に対応している。
【0048】
そして、Wa>Wlの場合は左折不可と判定し、ステップS6へ進む。又、Wa≦Wlの場合は、左折かと判定し、ステップS8へジャンプする。
【0049】
ステップS6へ進むと、左折制御を中止し、ステップS7で目標進行路を再度演算してルーチンを抜ける。例えば、図10に示すように、自車両Mを左折先の道路に進入させるためには、自車両Mを一旦対向車線側に大きく膨らませる必要がある場合、交差点手前において、Wa>Wlとなるため、目標進行路を左折以外の走行ルートで再演算させる。その際、目標進行路が直進の場合、自車両Mは走行車線の中央(Wl/2)を走行して交差点に進入される。
【0050】
一方、Wa≦Wlと判定されてステップS8へジャンプすると、交差点に信号機が設置されているか否かを調べる。この信号機の有無は、前方走行環境情報に基づき、パターンマッチング等の手法により認識しても良いが、交差点周辺の道路地図情報に基づいて認識するようにしても良い。そして、交差点に信号機が設置されていないと判定した場合はステップS9へ分岐し、又、信号機が設置されていると判定した場合はステップS10へ進む。
【0051】
ステップS9へ分岐すると、前方交差点の入り口に停止線Lsがあるか否かを調べる。停止線Lsの有無は、ステップS2で読込んだ交差点周辺の道路地図情報、或いはステップS3で読込んだ前方走行環境情報に基づいて判定する。そして、停止線Lsなしと判定された場合はステップS12へジャンプし、一方、停止線Lsありと判定された場合はステップS13へジャンプする。
【0052】
又、ステップS10へ進むと、ステップS3で読込んだ前方走行環境情報に基づいて、信号機の点灯色が青色(青信号)か否か調べる。そして、黄色(黄信号)、或いは赤色(赤信号)の場合はステップS11へ分岐する。又、青色(青信号)の場合はステップS12へ進む。
【0053】
ステップS11へ進むと、左折矢印信号機が点灯しているか否かを調べる。そして、左矢印信号機が消灯している、或いは左折矢印信号機は検出(設置)されていない場合、信号機は停止信号であるため、自車両Mを交差点手前で停止させるべくステップS13へ分岐する。又、左折矢印信号機が点灯していると判定した場合はステップS12へ進む。尚、前方走行環境認識部21dで実行される信号機の点灯色、及び点灯している矢印信号を認識する処理については、本出願人が先に提出した特許第5852637号公報等で既に知られているため、ここでの説明は省略する。又、上述したステップS8~S11での処理が本発明の停車判定手段に対応している。
【0054】
そして、ステップS9~S11の何れかからステップS12へ進むと、左折制御を継続させる指令を車両制御演算部23bに送信してルーチンを抜ける。
【0055】
一方、ステップS9、或いはステップS11からステップS13へ進むと、自車両Mを停止線Lsで停車させる際の横位置(停止線停車横位置)Wyを
Wy←Wi+Wm/2
から算出し、ステップS14へ進む。 この停止線停車横位置Wyは左路側41から自車両Mの車幅方向中央までの距離であり、この停止線停車横位置Wyに目標進行路が設定される。尚、このステップS13での処理が本発明の停止線停車横位置算出手段に対応している。
【0056】
ステップS14では、自車両Mを停止線Lsで停車させる停止線停車制御指令を車両制御演算部23bに送信してルーチンを抜ける。
【0057】
車両制御演算部23bは、右左折情報取得部23aから左折制御継続の指令を受けた場合、各制御部31~33を駆動させて、図5に示すように、自車両Mを、交差点手前の直進路を走行中に左路側41側へ所定に幅寄せし、左路側41に沿って交差点に進入して左折させる。その際、図7に示すように、左折先の道路が狭く、且つ、路側障害物42が検出されている場合は、徐行しながら自車両Mを交差点で外側へやや膨らませ、自車両Mの右前部コーナが路側障害物42に接触しないように旋回させて、左折先の道路に進入させる。
【0058】
又、図8に示すように、左路側41が左折先の道路と小さい曲率で交差している場合は、上述と同様、徐行しながら自車両Mを交差点で外側へやや膨らませ、自車両Mの左後輪が左路側41の交差部に対し、基本寄せ幅Woだけ離間した位置を通過させて左折先の道路に進入させる。更に、図9に示すように、左路側41が左折先の道路と鋭角に交差している場合も、図8と同様、自車両Mの左後輪が左路側41の交差部に対し、基本寄せ幅Woだけ離間した位置を通過させる。
【0059】
一方、車両制御演算部23bが、右左折情報取得部23aから停止線停車制御指令を受けた場合、各制御部31~33を駆動させて、直進路を走行中の自車両Mを左路側41から、上述した左折制御処理ルーチンのステップS13で設定した停止線停車横位置Wyへ移動させる。同時に、道路地図情報、或いは前方走行環境情報に基づき自車両Mから停止線Lsまでの距離を測定し、自車両Mが停止線Lsの直前で停車するように車速制御を行う(図7図9参照)。
【0060】
このように、自車両Mが停止線Lsで停車するに際しては、左折方向の道路環境に対応して設定した停止線停車横位置Wyで停車しているため、発進に際し、自車両Mを右方向へ一度膨らませる等の操舵制御が不要となり、スムーズに左折旋回させることができる。又、発進時に自車両Mを右方向へ膨らませる操舵が不要となるため、後続車の進路を妨害することもない。
【0061】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば、左側通行が規定されている道路において、自車両Mを左折させるべく、交差点手前の停止線Lsで右寄りに停車させた場合、その後の発進の際に、左路側41と自車両Mとの間をすり抜けようとする自転車、自動二輪等の車両が検出された場合、当該車両が通過するまで停車状態を維持させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0062】
1…自動運転支援装置、
11…ロケータユニット、
12…地図ロケータ演算部、
12a…自車位置推定演算部、
12b…道路地図情報取得部、
12c…目標進行路設定演算部、
13…GNSS受信機、
14…自律走行センサ、
15…目的地情報入力装置、
16…高精度道路地図データベース、
21…カメラユニット、
21a…メインカメラ、
21b…サブカメラ、
21c…画像処理ユニット(IPU)、
21d…前方走行環境認識部、
23…車両制御ユニット、
23a…右左折情報取得部、
23b…車両制御演算部、
31…操舵制御部、
32…ブレーキ制御部、
33…加減速制御部、
34…警報装置、
41…左路側、
42…路側障害物、
If…所定撮像領域、
Ls…停止線、
M…自車両、
R…必要左後輪旋回半径、
Rf…旋回軌跡、
Wa…左折時外横位置、
Wi…必要内輪横位置、
Wl…車線幅、
Wm…車幅、
Wo…基本寄せ幅、
Wy…停止線停車横位置、
Wα…右余裕幅、
θ…交差角
図1
図2
図3
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図7
図8
図9
図10