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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】燃焼器及びこれを備えたガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/34 20060101AFI20221214BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20221214BHJP
   F23R 3/42 20060101ALI20221214BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
F23R3/34
F23R3/28 D
F23R3/42 A
F02C7/18 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018180019
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020051664
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井上 慶
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 圭司郎
(72)【発明者】
【氏名】市川 雄一
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-046333(JP,A)
【文献】特開2015-222022(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0297786(US,A1)
【文献】特開2012-077660(JP,A)
【文献】特開2014-077625(JP,A)
【文献】特開2011-153815(JP,A)
【文献】特開2010-156350(JP,A)
【文献】特開2015-36618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/34
F23R 3/28
F23R 3/42
F02C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を噴射するための燃料ノズルと、
前記燃料を燃焼させるための燃焼空間を取り囲むとともに、前記燃焼空間に連通する出口を有する複数の内部流路を有する燃焼筒と、
前記燃焼筒の前記内部流路の入口に接続され、燃料と圧縮空気との混合気体を前記内部流路に導くための混合気体ラインと、を備え、
前記燃焼筒は、前記内部流路を流れる前記混合気体によって冷却されるように構成され
前記混合気体ライン内における前記燃料の濃度は、可燃限界濃度以下である
燃焼器。
【請求項2】
前記圧縮空気が流れる圧縮空気ラインと、
前記圧縮空気ライン上に設けられ、前記圧縮空気ラインを流れる前記圧縮空気に対して前記燃料を供給するための燃料供給部と、を備え、
前記混合気体ラインは、前記燃料供給部から供給された前記燃料と前記圧縮空気ラインを流れる前記圧縮空気との前記混合気体を前記内部流路に導くように構成された
請求項1に記載の燃焼器。
【請求項3】
前記圧縮空気ラインは、
前記燃焼器を備えたガスタービンの圧縮機の中間段又は該ガスタービンの車室内空間から前記圧縮空気を抽気するように構成された
請求項2に記載の燃焼器。
【請求項4】
前記燃料供給部は、
前記圧縮空気ラインにおける前記圧縮空気の流れ方向における上流側に位置する前縁部と、
前記前縁部に対して前記流れ方向における下流側に位置するとともに、前記流れ方向の下流側に向けて前記燃料を噴射するための燃料噴射孔を有する後縁部と、
を含む翼型形状を有する
請求項2又は3に記載の燃焼器。
【請求項5】
前記圧縮空気ライン上に設けられた昇圧コンプレッサを備える
請求項2~4の何れか一項に記載の燃焼器。
【請求項6】
前記圧縮空気ライン上に設けられ、前記圧縮空気を冷却するための冷却器を備える
請求項2~5の何れか一項に記載の燃焼器。
【請求項7】
燃料を噴射するための燃料ノズルと、
前記燃料を燃焼させるための燃焼空間を取り囲むとともに、前記燃焼空間に連通する出口を有する複数の内部流路を有する燃焼筒と、
前記燃焼筒の前記内部流路の入口に接続され、燃料と圧縮空気との混合気体を前記内部流路に導くための混合気体ラインと、を備え、
前記燃焼筒は、前記内部流路を流れる前記混合気体によって冷却されるように構成されるガスタービンの燃焼器であって、
前記混合気体ラインは、前記燃焼器を備えた前記ガスタービンの翼環の内部を通過する翼環冷却ラインを含
焼器。
【請求項8】
前記混合気体ラインは、前記翼環冷却ラインをバイパスするバイパスラインをさらに含み、
前記翼環冷却ラインと前記バイパスラインとの間で、前記混合気体が流れる流路を切換可能に構成された流路切換弁をさらに備える
ことを特徴とする請求項7に記載の燃焼器。
【請求項9】
前記内部流路は、前記燃焼空間における燃焼ガスの流れ方向とは反対方向に前記混合気体が前記内部流路を流れるように、前記混合気体を導くように構成された
請求項1~8の何れか一項に記載の燃焼器。
【請求項10】
前記燃焼筒の軸方向において、前記内部流路の前記出口は前記燃料ノズルの下流端よりも下流側に位置する
請求項1~9の何れか一項に記載の燃焼器。
【請求項11】
前記内部流路は、前記燃焼筒の軸方向に延在する複数本の直線流路を含む
請求項1~10の何れか一項に記載の燃焼器。
【請求項12】
前記圧縮空気を生成するための圧縮機と、
請求項1~11の何れか一項に記載の燃焼器と、
前記燃焼器からの燃焼ガスによって駆動されるように構成されたタービンと、
を備えることを特徴とするガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼器及びこれを備えたガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンに用いられる燃焼器では、高温部品を確実に冷却することが望まれる。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧縮機で生成された圧縮空気の一部を抽気し、この抽気空気を昇圧した後、燃焼筒に形成された冷却空気通路に導くことにより、燃焼筒を抽気空気で冷却するように構成した燃焼器が記載されている。
なお、特許文献2には、燃焼筒の冷却を目的とするものではないが、ディフューザ壁に隣接して流れる空気を抽気し、この抽気空気に対して燃料を噴射して得られる混合気体を燃燃料ノズルよりも下流側において燃焼筒に供給するようにした燃焼器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-77660号公報
【文献】特開2011-153815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、圧縮機から供給される圧縮空気の一部を燃焼筒の冷却のために用いる場合、燃焼筒の冷却に用いる分だけ燃料ノズル出口に供給される圧縮空気供給量が減少するため、燃料ノズル出口付近における燃空比が高まる。その結果、燃料ノズル出口付近における火炎温度が高くなり、大気汚染物質であるNOが生成される虞があった。
【0006】
よって、本発明の幾つかの実施形態は、燃料ノズル出口付近における火炎温度の上昇を抑制し、NOの生成を抑制することが可能な燃焼器及びこれを備えたガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る燃焼器は
燃料を噴射するための燃料ノズルと、
前記燃料を燃焼させるための燃焼空間を取り囲むとともに、前記燃焼空間に連通する出口を有する内部流路を有する燃焼筒と、
前記燃焼筒の前記内部流路の入口に接続され、前記燃料と圧縮空気との混合気体を前記内部流路に導くための混合気体ラインと、を備え、
前記燃焼筒は、前記内部流路を流れる前記混合気体によって冷却されるように構成されている。
【0008】
上記(1)の構成によれば、燃焼筒を冷却するための冷媒として、圧縮空気に燃料が混合された混合気体が用いられる。よって、燃焼筒を冷却するための冷媒が圧縮空気のみである場合と比較して、燃料ノズル出口に供給される燃料量、および、燃料ノズル出口における燃空比が相対的に少なくなる。その結果、燃料ノズル出口付近における火炎温度の上昇を抑制することができるので、NOの発生を抑制することができる。
なお、燃焼筒を冷却するための冷媒が圧縮空気のみの場合は、燃料を含まない冷媒(圧縮空気)の混入によって燃焼反応の進行が妨げられ、燃焼器から流出する燃焼ガス中のCO濃度が増大してしまう可能性がある。この点、上記(1)の構成によれば、燃焼筒の内部流路から燃焼空間に供給される混合気体が燃料を含むので、燃焼空間内における燃焼反応が促進され、燃焼器から流出する燃焼ガス中のCO濃度を低減することができる。このことは、未燃分であるCOが発生しやすい低負荷運転時において有用である。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記燃焼器は、
前記圧縮空気が流れる圧縮空気ラインと、
前記圧縮空気ライン上に設けられ、前記圧縮空気ラインを流れる前記圧縮空気に対して前記燃料を供給するための燃料供給部と、を備え、
前記混合気体ラインは、前記燃料供給部から供給された前記燃料と前記圧縮空気ラインを流れる前記圧縮空気との前記混合気体を前記内部流路に導くように構成されてもよい。
【0010】
上記(2)の構成によれば、圧縮空気ラインから供給された圧縮空気に対して燃料供給部により燃料が供給され、圧縮空気と燃料との混合気体が生成される。こうして得られた混合気体を燃焼筒の冷却に用いることにより、上記(1)で述べた原理に基づき、燃焼筒を冷却するための冷媒が圧縮空気のみである場合と比較して、燃料ノズル出口付近における火炎温度の上昇を抑制することができるから、NOの生成を抑制することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記圧縮空気ラインは、
前記燃焼器を備えたガスタービンの圧縮機の中間段又は該ガスタービンの車室内空間から前記圧縮空気を抽気するように構成されてもよい。
【0012】
上記(3)の構成によれば、ガスタービンの圧縮機で生成した圧縮空気を利用して、燃焼筒を冷却することができる。また、燃焼筒の冷却に用いる冷媒として、抽気された圧縮空気に燃料を加えた混合気体を用いることにより、上記(1)で述べた原理に基づき、燃焼筒を冷却するための冷媒が圧縮空気のみである場合と比較して、燃料ノズル出口付近における火炎温度の上昇を抑制することができるから、NOの生成を抑制することができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)の構成において、
前記燃料供給部は、
前記圧縮空気ラインにおける前記圧縮空気の流れ方向における上流側に位置する前縁部と、
前記前縁部に対して前記流れ方向における下流側に位置するとともに、前記流れ方向の下流側に向けて前記燃料を噴射するための燃料噴射孔を有する後縁部と、
を含む翼型形状を有していてもよい。
【0014】
上記(4)の構成によれば、燃料供給部の後縁部の下流側において、燃料を含む圧縮空気(燃料含有空気)の低流速領域が形成されることを抑制できる。その結果、圧縮空気ライン内における燃料含有空気への着火を防止することができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)~(4)の何れか一つに記載の構成において、
前記燃焼器は、前記圧縮空気ライン上に設けられた昇圧コンプレッサを備えていてもよい。
【0016】
上記(5)の構成によれば、圧縮空気ラインに送給された空気を昇圧することができる。その結果、圧力が低い空気が圧縮空気ラインに送給されても、混合気体を燃焼筒の内部流路に供給するのに適した圧力まで圧縮空気ラインにおける空気を昇圧することが出来る。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)~(5)の何れか一つに記載の構成において、
前記燃焼器は、前記圧縮空気ライン上に設けられ、前記圧縮空気を冷却するための冷却器を備えていてもよい。
【0018】
上記(6)の構成によれば、冷却器によって、圧縮空気を冷却することが出来る。その結果、より冷却に適した温度の圧縮空気を生成することが出来る。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)~(6)の何れか一つに記載の構成において、
前記混合気体ラインは、前記燃焼器を備えた前記ガスタービンの翼環の内部を通過する翼環冷却ラインを含んでいてもよい。
【0020】
上記(7)の構成によれば、混合気体を冷媒として用いて、燃焼筒だけでなく、ガスタービンの翼環も冷却することができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)に記載の構成において、
前記混合気体ラインは、前記翼環冷却ラインをバイパスするバイパスラインをさらに含み、
前記翼環冷却ラインと前記バイパスラインとの間で、前記混合気体が流れる流路を切換可能に構成された流路切換弁をさらに備えていてもよい。
【0022】
上記(8)の構成によれば、翼環冷却ラインとバイパスラインとを切換可能である。その結果、例えばガスタービンの運転状況に応じて翼環冷却ラインとバイパスラインのどちらを用いるかを選択して、冷媒としての混合気体を効果的に冷却に用いることが出来る。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)~(8)の何れか一つに記載の構成において、
前記混合気体ライン内における前記燃料の濃度は、可燃限界濃度以下であってもよい。
【0024】
上記(9)の構成によれば、燃焼筒の内側の燃焼空間以外での混合気体の着火を防止することが出来る。また、混合気体が燃焼空間内に導入されて燃焼する際、燃焼空間への混合気体の供給位置近傍において火炎の局所的温度が高くなることを抑制することができる。その結果、燃焼筒内におけるNOの生成を抑制することができる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)~(9)の何れか一つに記載の構成において、
前記燃焼筒の軸方向において、前記内部流路の前記出口は前記燃料ノズルの下流端よりも下流側に位置していてもよい。
【0026】
上述のとおり、燃焼筒の内部流路を通過後に燃焼空間に供給される混合気体には燃料が含まれる。
上記(10)の構成によれば、燃料を含む混合気体の燃焼空間への供給位置(即ち、燃焼筒の内部流路の出口位置)を、燃焼筒の軸方向において燃料ノズルの下流端よりも下流側に設定したので、混合気体に含まれる燃料が、燃料ノズル出口付近における燃空比を高めることにならない。その結果、上記(1)で述べた原理に基づき、燃焼筒を冷却するための冷媒が圧縮空気のみである場合と比較して燃料ノズル出口付近における火炎の燃焼温度を低く抑えることができるから、NOの生成を抑制することができる。
【0027】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)~(10)の何れか一つに記載の構成において、
前記内部流路は、前記燃焼筒の軸方向に延在する複数本の直線流路を含んでいてもよい。
【0028】
上記(11)の構成によれば、複数本の内部流路に冷媒としての混合気体が流れることで、より効率的に燃焼筒を冷却することが出来る。
【0029】
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンは、
前記圧縮空気を生成するための圧縮機と、
上記(1)~(11)の何れか一つに記載の燃焼器と、
前記燃焼器からの燃焼ガスによって駆動されるように構成されたタービンと、
を備えている。
【0030】
上記(12)の構成によれば、上記(1)で述べた原理に基づき、燃焼筒を冷却するための冷媒が圧縮空気のみである場合と比較して燃料ノズル出口付近における火炎の温度を低く抑えることができるから、NOの生成を抑制することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の幾つかの実施形態によれば、ノズル出口付近における火炎温度の上昇を抑制して、NOの生成を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係るガスタービンを示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る燃焼器を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態における燃焼筒の一部を切り取って示す部分断面図である。
図4】本発明の一実施形態における燃焼筒の冷却系統の構成例を示す概略図である。
図5】本発明の一実施形態における燃料供給部の概略図であり、(a)は燃焼筒の冷却系統に組み込まれる燃料供給部の斜視概略図、(b)は燃料供給部の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
ただし、本発明の範囲は以下実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係るガスタービン1を示す概略構成図である。
図1に示すように、一実施形態に係るガスタービン1は、圧縮空気Gを生成するための圧縮機2と、圧縮空気G及び燃料Fを用いて燃焼ガスを発生させるための燃焼器4と、燃焼ガスによって駆動され回転するように構成されたタービン6と、を備えている。圧縮機2の回転軸とタービン6の回転軸とは互いに連結されており、これらの回転軸により図1に示すガスタービン1のロータ8が構成される。そして、燃焼ガスによりタービン6が駆動されると、タービン6の回動力がロータ8を介して圧縮機2に伝達され、圧縮機2が駆動される。発電用のガスタービン1の場合、ロータ8のタービン6側又は圧縮機2側に不図示の発電機が連結され、タービン6の回転エネルギーによって発電が行われる。
【0035】
次に、図1を用いて、一実施形態に係るガスタービン1の各部位の構成について説明する。
圧縮機2は、圧縮機車室10と、圧縮機車室10の入口側に設けられ、空気を取り込むための空気取入口12と、圧縮機車室10内に配置された各種の翼と、を備えている。各種の翼は、空気取入口12側に設けられた入口案内翼14と、圧縮機車室10側に固定された複数の静翼16と、静翼16に対して交互に配列されるようにロータ8に設けられた複数の動翼18と、を含む。なお、圧縮機2は、不図示の抽気室など他の構成要素を備えていてもよい。
このような圧縮機2において、空気取入口12から取り込まれた空気は、複数の静翼16及び複数の動翼18を通過して圧縮され、高温高圧の圧縮空気Gとなる。この圧縮空気Gは、圧縮機2から、後段の燃焼器4に送られる。
【0036】
燃焼器4は、ケーシング20内に配置される。図1に示すように、燃焼器4は、ロータ8の中心軸周りに複数配置されていてもよい。この燃焼器4には、燃料Fと圧縮機2で生成された圧縮空気Gとが供給されるようになっており、供給された燃料Fを燃焼させることにより、タービン6の作動流体である燃焼ガスが発生する。そして、発生した燃焼ガスは燃焼器4から後段のタービン6に送られる。なお、燃焼器4の詳細な構成は後述する。
【0037】
タービン6は、タービン車室22と、タービン車室22内に配置された複数の静翼24及び複数の動翼26と、静翼24を保持するために静翼24の径方向外側に設けられる翼環27と、を備えている。静翼24は翼環27を介してタービン車室22側に固定されており、動翼26は静翼24に対して交互に配列されるようにロータ8に設けられている。
上記タービン6は、燃焼ガスが複数の静翼24及び複数の動翼26を通過することでロータ8が駆動され回転するように構成されている。これにより、ロータ8に連結された不図示の発電機が駆動される。
タービン車室22の下流側には、排気車室28を介して排気室30が連結されている。このように、タービン6は、当該タービン6を駆動した後の燃焼ガスが、排気車室28及び排気室30を介して外部に排出されるようになっている。
【0038】
次に、図2図5を参照して、一実施形態に係る燃焼器4の詳細な構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る燃焼器4を示す断面図である。図3は、本発明の一実施形態における燃焼筒80の一部を切り取って示す部分断面図である。図4は、本発明の一実施形態における燃焼筒80の冷却系統の構成例を示す概略図である。図5(a)は、燃焼筒80の冷却系統に組み込まれる燃料供給部350の斜視概略図であり、図5(b)は、燃料供給部350の断面概略図である。
【0039】
図2に示すように、燃焼器4は、少なくとも1本のバーナ(50,60)と、バーナ(50,60)の下流側においてケーシング20により画定される車室内空間40に設けられた燃焼筒(燃焼器ライナ)80と、を含む。図2に示す例示的な実施形態では、燃焼器4は、パイロット燃焼バーナ50と複数の予混合燃焼バーナ60と、を含む。
なお、燃焼器4は、燃焼ガスをバイパスさせるための不図示のバイパス管などの他の構成要素を備えていてもよい。
【0040】
パイロット燃焼バーナ50は、メインバーナとしての上記予混合燃焼バーナ60に点火乃至着火するための口火(種火)バーナであり、燃料ポート52に連結された燃料ノズル54と、該燃料ノズル54の下流側に配置されたパイロットコーン56と、を含む。
【0041】
予混合燃焼バーナ60は、パイロット燃焼バーナ50の周囲に複数本設けられる。各々の予混合燃焼バーナ60は、燃料ポート62に連結されたメインノズル64(燃料ノズル)を含む。
【0042】
燃焼筒80は、内筒46Aと、該内筒46Aの先端部に篏合する尾筒(トランジションピース)46Bと、を含む。燃焼筒80の内部であって、該燃焼筒80を構成する筒状壁の内周面で囲まれた中空部には燃焼空間82が形成される。
【0043】
上記構成を有する燃焼器4において、圧縮機2で生成された圧縮空気Gは車室入口42から車室内空間40内に供給され、さらに、車室内空間40から予混合燃焼バーナ60に導かれる。この予混合燃焼バーナ60に導かれた圧縮空気Gと、燃料ポート62から供給された燃料Fとが予混合燃焼バーナ内で予め混合された後、予混合気としてメインノズル64から燃焼筒80内に噴射される。
【0044】
また、車室内空間40から予混合燃焼バーナ60を介さずに燃焼筒80内に導かれた圧縮空気Gと、燃料ポート52から供給されて燃料ノズル54から噴射された燃料Fとが燃焼筒80内で混合されて混合気体となり、該混合気体の燃焼により所謂パイロット火炎が形成される。このとき、パイロット燃焼バーナ50によって形成される火炎(パイロット火炎)により、上述した予混合燃焼バーナ60からの予混合気が着火されて燃焼筒80内部の燃焼空間82で安定的に燃焼し、燃焼ガスが発生する。
燃焼空間82で生成された燃焼ガスは、燃焼筒80内を通り、燃焼ガス流れの下流側に配置されたタービン6に供給される。
【0045】
なお、燃料ポート52及び燃料ポート62から供給される燃料Fは、気体であっても液体であってもよく、その種類も特に限定されない。また、燃料ポート52に供給される燃料Fと燃料ポート62に供給される燃料Fとを異なる種類の燃料Fにしてもよい。例えば、燃料ポート52に油燃料が供給され、燃料ポート62に天然ガス等のガス燃料が供給されてもよい。
【0046】
上記構成の燃焼器4において、燃焼筒80は、ガスタービン1の運転中に高温となる。このため、図2及び図3に示すように、燃焼筒80は、当該燃焼筒80を冷却するための内部流路100を有している。
図4に示すように、内部流路100の入口には、後述する混合気体ライン200が接続される。これにより、燃料Fと圧縮空気Gとの混合気体Hが、混合気体ライン200から内部流路100に供給される。一方、図2図3に示すように、内部流路100の出口102は、燃焼筒80の内側の燃焼空間82に連通している。このため、内部流路100を流れて燃焼筒80を冷却した後の混合気体Hは、燃焼空間82に流入する。
ここで、燃焼筒80を冷却するための冷媒が圧縮空気Gのみである場合は、燃焼筒80に供給される燃料Fの全量が燃料ノズル54出口及びメインノズル64出口に供給されるため、燃焼筒80冷却用の冷媒として、圧縮空気Gに燃料F(全量のうち一部)を混合した混合気体Hを用いる場合に比べて、燃料ノズル54出口及びメインノズル64出口に供給される燃料Fの量、並びに、燃料ノズル54出口及びメインノズル64出口における燃空比が相対的に高くなる。この点、上記構成のように、燃焼筒80を冷却するための冷媒として、圧縮空気Gに燃料Fが混合された混合気体Hが用いられることで、燃焼筒80を冷却するための冷媒が圧縮空気Gのみである場合と比較して、燃料ノズル54出口及びメインノズル64出口に供給される燃料Fの量、並びに、燃料ノズル54出口及びメインノズル64出口における燃空比(ここでは圧縮空気Gに対する燃料Fの比率)が相対的に少なくなる。その結果、燃料ノズル54の出口付近及びメインノズル64の出口付近における火炎温度の上昇が抑制される。燃料等を燃焼させる過程で生ずるNOxは、燃焼温度が高温になるほど発生量が多くなることが知られている。従って、上記のように燃料ノズル54の出口付近及びメインノズル64の出口付近における火炎温度の上昇を抑制することにより、NOの発生を抑制することができるのである。
なお、混合気体ライン200から内部流路100に供給される混合気体Hは、任意の燃料Fと、圧縮機2で生成された車室内空間40における圧縮空気Gとの混合気体であってもよい。混合気体Hに含まれる燃料Fは、少なくとも一本のバーナ(50,60)に供給される燃料Fと同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、混合気体Hは、図2に示すように、内部流路100において、燃焼空間82内における燃焼ガスの流れ方向とは反対方向に流れてもよい。なお、図2に示すように、内部流路100の出口102は複数箇所設けられていてもよい。また、内部流路100の出口102が複数設けられる場合、燃焼筒80の軸方向において互いに異なる位置に設けられてもよい。
【0047】
内部流路100の具体的構成は特に限定されないが、内部流路100は、例えば、燃焼筒80を構成する筒状壁の内部に形成される直線流路100aを含んでいてもよい。
図3に示す例示的な実施形態では、内部流路100は、燃焼筒80の内周面と外周面との間に存在する上記筒状壁の内部において周方向に配列された複数の直線流路100aを含む。各々の直線流路100aは、燃焼筒80の軸方向に延在している。
複数の直線流路100aは、周方向に均等ピッチで設けられていてもよい。複数の内部流路100(直線流路100a)が設けられることで、内部流路100を流れる冷媒(混合気体H)と燃焼筒80とが接する面積が拡大し、より効率的に燃焼筒80を冷却することが出来る。
また、直線流路100aの軸方向における長さは特に限定されず、軸方向において同一の長さであってもよいし、図3に示すように、互いに長さが異なる複数種の直線流路100aが設けられていてもよい。図3に示す例では、流路長が長い直線流路100aの出口102が、燃焼筒80の軸方向において、流路長が短い直線流路100aの出口102よりも上流側に位置している。このように、内部流路100の出口102を、軸方向において複数箇所に分散配置する場合、混合気体Hに含まれる燃料Fが燃焼される位置が軸方向において分散することになる。これにより、燃焼空間82内での発熱量分布が軸方向において均一化され、燃焼器4の燃焼振動を抑制することができる。
【0048】
また、燃焼筒80の軸方向において、上述した内部流路100の出口102は、燃料ノズル54の下流端55よりも燃焼ガス流れの下流側に位置する。
例えば、燃料ノズル54の下流端55より下流側の燃焼筒80の円筒部分(図2に示す例では、燃焼筒80のうち、尾筒46Bの下流側の非円筒部分を除く部位)の全長をLとしたとき、燃料ノズル54の下流端55と内部流路100の出口102(出口102が複数存在する場合には、燃焼ガス流れの最も上流側に位置する出口102)との間の燃焼筒80の軸方向における距離dは、d≧0.2×Lを満たしてもよい。
上記構成によれば、冷媒が圧縮空気Gと燃料Fを含む混合気体Hである場合、燃焼空間82への混合気体Hの流出位置(即ち、燃焼筒80の内部流路100の出口102位置)を、燃焼筒80の軸方向において燃料ノズル54の下流端55よりも下流側に設定したので、混合気体Hに含まれる燃料Fが、燃料ノズル54の出口付近における燃空比を高めることにならない。その結果、燃焼筒を冷却するための冷媒が圧縮空気のみである場合と比較して、燃料ノズル54の出口付近における火炎の燃焼温度を低下させることができるので、NOの生成を抑制することができる。
【0049】
上記構成の内部流路100の入口には、図4に示すように、燃料Fと圧縮空気Gとの混合気体Hを内部流路100に導くための混合気体ライン200が接続される。
【0050】
上述した混合気体ライン200は、図4に示すように、タービン6の翼環27の内部を通過する翼環冷却ライン210を含んでいてもよい。この場合、冷媒としての混合気体Hは、最初に翼環冷却ライン210を通って翼環27を冷却し、次に内部流路100を通って燃焼筒80を冷却して、最後に内部流路100の出口102から燃焼筒80の燃焼空間82に流入する。上記構成によれば、混合気体Hを、燃焼筒80の冷却に加えて、ガスタービン1の翼環27の冷却にも用いることができる。
【0051】
図4に示すように、一実施形態に係る混合気体ライン200は、上述した翼環冷却ライン210に加えて、翼環冷却ライン210をバイパスするバイパスライン220をさらに含んでいてもよい。また、翼環冷却ライン210とバイパスライン220との間で、混合気体Hが流れる流路を切り換えることができるように構成された流路切換弁230をさらに備えていてもよい。
上記流路切換弁230によって、例えばガスタービン1の運転状況に応じて翼環冷却ライン210とバイパスライン220とのどちらを用いるかを選択して、冷媒としての混合気体Hを効果的に冷却に用いることが出来る。
例えばガスタービン1の起動時は、翼環27が高温となっていない。よって、バイパスライン220を選択して、混合気体Hを燃焼筒80の冷却のみに用いることが出来る。一方、ガスタービン1の定格負荷時には、起動時に比べて翼環27も高温となる。よって、翼環冷却ライン210を選択して、混合気体Hを、燃焼筒80の冷却及び翼環27の冷却に用いることが出来る。
【0052】
図4に示す一実施形態に係る燃焼器4は、圧縮空気Gを混合気体ライン200へと導く圧縮空気ライン300と、圧縮空気ライン300上に設けられ、圧縮空気Gに対して燃料Fを供給するための燃料供給部350と、をさらに含んでいてもよい。燃料供給部350から供給された燃料Fと圧縮空気ライン300を流れる圧縮空気Gは、混合気体Hとして混合気体ライン200に流入する。
【0053】
さらに、圧縮空気Gを導く圧縮空気ライン300は、種々の場所から圧縮空気Gを抽気できるように構成されてもよい。
例えば、図1に示す圧縮機2の中間段から圧縮空気Gを抽気してもよいし、図2に示す車室内空間40から圧縮空気Gを抽気してもよい。
【0054】
さらに、図4に示す実施形態のように、燃焼器4は、圧縮空気ライン300上に設けられた冷却器302と、圧縮空気ライン300上に設けられた昇圧コンプレッサ304とを備えてもよい。図4に示す例示的な燃焼器4では、圧縮空気Gの流れ方向における冷却器302の下流側に、昇圧コンプレッサ304が設けられている。上記燃焼器4において、冷却器302により、冷却に適した温度の圧縮空気Gを生成することが出来る。また、外気等の圧力が低い空気が圧縮空気ライン300に送給されても、昇圧コンプレッサ304により、燃焼筒80の内部流路100に供給するのに適した圧力まで圧縮空気ライン300における空気を昇圧することが出来る。
【0055】
上述した圧縮空気ライン300と、冷却器302と、昇圧コンプレッサ304と、燃料供給部350とは、ケーシング20外に設けられていてもよい。この構成によると、燃料Fを含んだ圧縮空気Gは、ケーシング20外の圧縮空気ライン300から、ケーシング20内の混合気体ライン200へと導かれる。
一方、燃料供給部350は、ケーシング20内の混合気体ライン200に設けられていてもよい。例えば、混合気体ライン200のうち翼環冷却ライン210より下流側に燃料供給部350が設けられていてもよい。この場合、翼環27を冷却した後の圧縮空気Gに、燃料Fが供給される。
【0056】
図5(a)は、燃料供給部350の斜視概略図であり、図5(b)は、燃料供給部350の断面概略図である。
これまで、燃焼器4の全体構成について述べてきた。
以下、図5を用いて、本発明の一実施形態にかかる燃焼器4における燃料供給部350の構成について説明する。
圧縮空気Gに対して燃料Fを供給する燃料供給部350は、図5に示すように、圧縮空気ライン300における圧縮空気Gの流れ方向における上流側に位置する前縁部352と、前縁部352に対して流れ方向における下流側に位置するとともに、流れ方向の下流側に向けて燃料Fを噴射するための燃料噴射孔360を有する後縁部354と、を含む翼型形状を有していてもよい。このような燃料供給部350は、前縁部352と後縁部354とを結ぶコードに対して一方の面と他方の面とが非対称であってもよいし対称であってもよい。つまり、燃料供給部350は、圧縮空気Gの流れ方向において少なくとも燃料噴射孔360より後流側に渦を発生させない流線形、すなわち、流れの中に置かれたときに周りに渦を発生せず、流れから受ける抵抗が最も小さくなる曲線(或いは曲面)で構成される形であってもよい。具体的には、燃料供給部350は、圧縮空気Gの流れ方向に沿った断面が細長く(或いは、薄く)て先端が丸く、後端が流れの下流に向けて先鋭となる尖った形状を有していてもよい。燃料供給部350を上記構成とすることで、燃料供給部350の後縁部354の下流側において、燃料Fを含む圧縮空気G(燃料含有空気)の低流速領域が形成されることを抑制することができる。その結果、圧縮空気ライン300内における燃料含有空気への着火又は保炎を防止することができる。
なお、燃料供給部350内部には、燃料Fを流すための燃料流路356が設けられていてもよい。また、燃料Fは、外部燃料流路358から燃料流路356に供給され、燃料噴射孔360より噴射されるように構成されていてもよい。さらに、外部燃料流路358上には、燃料Fの供給量を調整する燃料調整弁359が設けられていてもよい。
【0057】
また、幾つかの実施形態では、混合気体ライン200内における燃料Fの濃度は、可燃限界濃度以下であってもよい。燃料Fの濃度を調整するために、例えば上記燃料調整弁359において燃料Fの供給量を調整してもよい。燃料Fの濃度を可燃限界濃度以下にすることにより、燃焼筒80の内側の燃焼空間82以外で混合気体Hが着火されることを防止することが出来る。また、混合気体Hが燃焼空間82内に導入されて燃焼する際、燃焼空間82への混合気体Hの供給位置近傍において局所的に火炎温度が高くなることを抑制することができる。その結果、燃焼筒80内におけるNOの生成を抑制することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 ガスタービン
2 圧縮機
4 燃焼器
6 タービン
27 翼環
40 車室内空間
54 燃料ノズル
80 燃焼筒
100 内部流路
102 出口
200 混合気体ライン
210 翼環冷却ライン
220 バイパスライン
230 流路切換弁
300 圧縮空気ライン
302 冷却器
304 昇圧コンプレッサ
350 燃料供給部
352 前縁部
354 後縁部
F 燃料
G 圧縮空気
図1
図2
図3
図4
図5