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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20221214BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20221214BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20221214BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20221214BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20221214BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20221214BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B01D39/20 D
B01D46/00 302
B01J32/00
B01J35/04 301E
B01J35/04 301B
B01J35/04 301A
B01J35/04 301K
F01N3/022 C
F01N3/035 A
F01N3/28 301P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018181616
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020049428
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】牧野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】寺西 慎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 匡人
(72)【発明者】
【氏名】大原 悦二
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-177612(JP,A)
【文献】特開2014-050793(JP,A)
【文献】特表2011-513059(JP,A)
【文献】特開2011-167641(JP,A)
【文献】特開2013-230462(JP,A)
【文献】特開2010-131586(JP,A)
【文献】特開2012-254440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/20、46/00、53/94
B01J 32/00、35/04
F01N 3/021-035、10-38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入端面から流出端面まで延びる複数のセルを取り囲むように配設された多孔質の隔壁を有する、柱状のハニカム基材と、
前記セルの前記流入端面側又は前記流出端面側のいずれか一方の端部に配設された目封止部と、を備え、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、
前記流出端面側の端部に前記目封止部が配設された流入セルの形状が、六角形であり、
前記流入端面側の端部に前記目封止部が配設された流出セルの形状が、六角形であり、
複数の前記セルは、前記流入セルの一辺と、隣接する前記流出セルの一辺とが平行となるよう、1つの前記流出セルの周囲を複数個の前記流入セルが取り囲む構造となっており、
前記隔壁は、前記流入セルと前記流出セルとの間に配設された第一隔壁と、前記流入セル同士の間に配設された第二隔壁と、を含み、
少なくとも1つの前記第一隔壁は、当該第一隔壁の厚さT1に対する、前記第二隔壁の厚さT2の比の値(T2/T1)が1.5より大きく、2.5未満となるように構成され、且つ、
前記第一隔壁の厚さT1が、70~228.6μmであり、
前記ハニカム基材の総開口率が、35%より大きく、95%以下であり、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、1つの前記流出セルの周囲を、六角形の6つの前記流入セルが取り囲む構造を有し、且つ、前記流入セルの水力直径が、前記流出セルの水力直径よりも大きい、ハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記第二隔壁は、当該第二隔壁の厚さT2が前記第一隔壁との接続部位に向かって薄く又は厚くなる、厚さ傾斜部を有する、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記流出セルの一辺の長さが、0.5~1.6mmである、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記隔壁の気孔率が、35~70%である、請求項1~のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記隔壁の気孔率が、50~70%である、請求項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記流入セルの形状が、正六角形以外の六角形である、請求項1~のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項7】
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記流入セルの形状が、対向する少なくとも1組の辺同士の長さが異なる六角形である、請求項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項8】
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記流入セルの形状が、対向する辺同士の長さがそれぞれ異なる六角形である、請求項に記載のハニカムフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。更に詳しくは、その使用時において低圧損を実現することが可能なハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業において、動力源として内燃機関が用いられている。一方で、内燃機関が燃料の燃焼時に排出する排ガスには、窒素酸化物等の有毒ガスと共に、煤や灰等の粒子状物質が含まれている。以下、粒子状物質を、「PM」ということがある。「PM」とは、「Particulate Matter」の略である。近年、ディーゼルエンジンから排出されるPMの除去に関する規制は世界的に厳しくなっており、PMを除去するためのフィルタとして、例えば、ハニカム構造を有するウォールフロー(Wall flow)型のフィルタが用いられている。
【0003】
ウォールフロー型のフィルタとしては、多孔質の隔壁によって流体の流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム基材と、複数のセルのいずれか一方の開口部に配設された目封止部と、を備えたハニカムフィルタが種々提案されている(例えば、特許文献1~7参照)。このようなハニカムフィルタにおいては、例えば、流出端面側に目封止部が配設された流入セルと、流入端面側に目封止部が配設された流出セルとが、隔壁を隔てて交互に配置され、多孔質の隔壁が、PMを除去する濾過体となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-209842号公報
【文献】特開2012-081415号公報
【文献】特許第4279497号公報
【文献】特許第4567674号公報
【文献】特開2014-200741号公報
【文献】特許第4282960号公報
【文献】特開昭58-196820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~7に記載されたような従来のハニカムフィルタにおいて、「流入セル同士の間に配設された隔壁」は、「流入セルと流出セルとの間に配設された隔壁」と比較して透過抵抗が高く、排ガスが流れ難いという傾向があった。このため、従来のハニカムフィルタでは、ハニカムフィルタ内の排ガスの流れが不均一となり、ハニカムフィルタの圧損が上昇してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明は、その使用時において低圧損を実現することが可能なハニカムフィルタを提供する。特に、本発明は、隔壁の表面にPMが堆積することによる圧損上昇を抑制し、より低圧損を実現することが可能なハニカムフィルタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下に示すハニカムフィルタが提供される。
【0008】
[1] 流入端面から流出端面まで延びる複数のセルを取り囲むように配設された多孔質の隔壁を有する、柱状のハニカム基材と、
前記セルの前記流入端面側又は前記流出端面側のいずれか一方の端部に配設された目封止部と、を備え、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、
前記流出端面側の端部に前記目封止部が配設された流入セルの形状が、六角形であり、
前記流入端面側の端部に前記目封止部が配設された流出セルの形状が、六角形であり、
複数の前記セルは、前記流入セルの一辺と、隣接する前記流出セルの一辺とが平行となるよう、1つの前記流出セルの周囲を複数個の前記流入セルが取り囲む構造となっており、
前記隔壁は、前記流入セルと前記流出セルとの間に配設された第一隔壁と、前記流入セル同士の間に配設された第二隔壁と、を含み、
少なくとも1つの前記第一隔壁は、当該第一隔壁の厚さT1に対する、前記第二隔壁の厚さT2の比の値(T2/T1)が1.5より大きく、2.5未満となるように構成され、且つ、
前記第一隔壁の厚さT1が、70~228.6μmであり、
前記ハニカム基材の総開口率が、35%より大きく、95%以下であり、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、1つの前記流出セルの周囲を、六角形の6つの前記流入セルが取り囲む構造を有し、且つ、前記流入セルの水力直径が、前記流出セルの水力直径よりも大きい、ハニカムフィルタ。
【0009】
[2] 前記第二隔壁は、当該第二隔壁の厚さT2が前記第一隔壁との接続部位に向かって薄く又は厚くなる、厚さ傾斜部を有する、[1]に記載のハニカムフィルタ。
【0012】
] 前記流出セルの一辺の長さが、0.5~1.6mmである、[1]又は[2]に記載のハニカムフィルタ。
【0013】
] 前記隔壁の気孔率が、35~70%である、[1]~[]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0014】
] 前記隔壁の気孔率が、50~70%である、[]に記載のハニカムフィルタ。
【0017】
] 前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記流入セルの形状が、正六角形以外の六角形である、[1]~[]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0018】
] 前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記流入セルの形状が、対向する少なくとも1組の辺同士の長さが異なる六角形である、[]に記載のハニカムフィルタ。
【0019】
] 前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記流入セルの形状が、対向する辺同士の長さがそれぞれ異なる六角形である、[]に記載のハニカムフィルタ。
【発明の効果】
【0020】
本発明のハニカムフィルタは、流入セルと流出セルとの間に配設された第一隔壁の厚さを厚さT1とし、流入セル同士の間に配設された第二隔壁の厚さを厚さT2とした際に、T2/T1の値が、1.5より大きく、2.5未満となるように構成されている。また、本発明のハニカムフィルタは、ハニカム基材の総開口率が、35%より大きく、95%以下である。本発明のハニカムフィルタは、従来のハニカムフィルタと比較して、排ガス中のPMを捕集するフィルタとして使用した際に、低圧損を実現することができるという効果を奏する。特に、本発明のハニカムフィルタは、隔壁の表面にPMが堆積した際の圧損上昇を有効に抑制し、より低圧損を実現することができるという顕著な効果を奏する。
【0021】
本発明のハニカムフィルタは、第二隔壁の厚さT2を相対的に厚くすることで、第二隔壁内の細孔の総容積が相対的に増大し、第二隔壁の細孔内を排ガスが流れ易くなる。このため、第一隔壁の表面に煤等のPMが堆積して、第一隔壁の透過抵抗が増大した場合であっても、流入セル内に流入した排ガスが、第二隔壁の細孔内を経由して、流出セル内へと流れ易くなる。これにより、ハニカムフィルタの低圧損を実現することができる。特に、第一隔壁は、流入セルから流出セルへと流れる排ガスの主流となるため、煤等のPMが堆積し易い傾向にあり、PMの堆積に伴って透過抵抗が増大し易い。本発明のハニカムフィルタにおいては、第一隔壁の透過抵抗が増大した場合に、第二隔壁を排ガスの流路として極めて有効に活用することができる。
【0022】
また、第二隔壁は、第一隔壁に比して、使用初期状態における圧損上昇への寄与度が低い。このため、第二隔壁の厚さT2を相対的に一定量だけ厚くしたとしても、ハニカム基材の総開口率を上記した数値範囲とすることにより、使用初期状態におけるハニカムフィルタの過剰な圧損上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す流入端面側から見た斜視図である。
図2図1に示すハニカムフィルタの流入端面を模式的に示す平面図である。
図3図2に示す流入端面の一部を拡大した拡大平面図である。
図4図3における第一隔壁の厚さT1及び第二隔壁の厚さT2を説明するための模式図である。
図5図1に示すハニカムフィルタの流出端面を模式的に示す平面図である。
図6図2のA-A’断面を模式的に示す、断面図である。
図7】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。
図8図7に示す流入端面の一部を拡大した拡大平面図である。
図9】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態の流入端面の一部を拡大した拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。
【0025】
(1)ハニカムフィルタ:
本発明のハニカムフィルタの一の実施形態は、図1図6に示すようなハニカムフィルタ100である。ここで、図1は、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す流入端面側から見た斜視図である。図2は、図1に示すハニカムフィルタの流入端面を模式的に示す平面図である。図3は、図2に示す流入端面の一部を拡大した拡大平面図である。図4は、図3における第一隔壁の厚さT1及び第二隔壁の厚さT2を説明するための模式図である。図5は、図1に示すハニカムフィルタの流出端面を模式的に示す平面図である。図6は、図2のA-A’断面を模式的に示す、断面図である。
【0026】
ハニカムフィルタ100は、ハニカム基材4と、目封止部5を備えたものである。ハニカム基材4は、流入端面11及び流出端面12を有する柱状を呈するものである。ハニカム基材4は、流入端面11から流出端面12まで延びる複数のセル2を取り囲むように配設された、多孔質の隔壁1を有する。図1等に示すハニカム基材4においては、隔壁1を囲繞するように配設された外周壁3を更に有している。なお、本発明において、セル2とは、隔壁1によって取り囲まれた空間のことを意味する。
【0027】
目封止部5は、ハニカム基材4に形成されたセル2の流入端面11側又は流出端面12側のいずれか一方の端部に配設され、セル2の開口部を封止するものである。以下、流出端面12側の端部に目封止部5が配設されたセル2を、「流入セル2a」という。流入端面11側の端部に目封止部5が配設されたセル2を、「流出セル2b」という。
【0028】
ハニカムフィルタ100は、セル2の延びる方向に直交する断面において、セル2の各形状は、六角形である。即ち、セル2の延びる方向に直交する断面において、流入セル2aの形状が、六角形であり、且つ、流出セル2bの形状も、六角形である。以下、セル2の延びる方向に直交する断面における「セルの形状」を、「セルの断面形状」、又は、単に、「セルの形状」ということがある。本明細書において、「六角形」とは、六角形、六角形の少なくとも1つの角部が曲線状に形成された形状、及び六角形の少なくとも1つの角部が直線状に面取りされた形状を含むものとする。
【0029】
複数のセル2は、流入セル2aの一辺と、隣接する流出セル2bの一辺とが平行となるよう、1つの流出セル2bの周囲を複数個の流入セル2aが取り囲む構造となっている。図1図6に示すハニカムフィルタ100においては、1つの流出セル2bの周囲を、6つの流入セル2aが取り囲む構造となっている。本明細書において、上述した「平行」とは、後述する「略平行」のことを意味する。「略平行」とは、平行、及び平行な二辺のうちの一辺が±15°の範囲内において傾いた状態の二辺の位置関係のことを意味する。
【0030】
ハニカムフィルタ100において、流入セル2aと流出セル2bとの間に配設された隔壁1を「第一隔壁1a」とする。また、流入セル2a同士の間に配設された隔壁1を「第二隔壁1b」とする。そして、ハニカムフィルタ100は、第一隔壁1a及び第二隔壁1bの構成について重要な特徴を有している。即ち、第一隔壁1aのうちの少なくとも1つの第一隔壁1aは、当該第一隔壁1aの厚さT1に対する、第二隔壁1bの厚さT2の比の値である「T2/T1」の値が1.5より大きく、2.5未満となるように構成されている。以下、第一隔壁1aの厚さT1に対する、第二隔壁1bの厚さT2の比の値を、単に『「T2/T1」の値』ということがある。なお、「T2/T1」の値を求める際において、厚さT2を求める第二隔壁1bは、その少なくとも一端側が、厚さT1を求める第一隔壁1aに接続されているものとする。
【0031】
また、ハニカムフィルタ100は、ハニカム基材4の総開口率が、35%より大きく、95%以下である。ここで、ハニカム基材4の「総開口率」とは、ハニカム基材4のセル2の延びる方向に直交する断面積に対する、ハニカム基材4に形成されたセル2の総開口面積の比の百分率のことを意味する。なお、ハニカム基材4のセル2の延びる方向に直交する断面積については、ハニカム基材4の最外周に配置された外周壁3の面積を含まない値とする。
【0032】
ハニカムフィルタ100は、例えば、排ガス中のPMを捕集するフィルタとして好適に利用することができる。そして、ハニカムフィルタ100は、従来のハニカムフィルタと比較して、その使用時において低圧損を実現することができる。特に、隔壁1の表面にPMが堆積した際の圧損上昇を有効に抑制し、より低圧損を実現することができる。即ち、ハニカムフィルタ100においては、第二隔壁1bの厚さT2を相対的に厚くすることで、第二隔壁1b内の細孔の総容積が相対的に増大し、第二隔壁1bの細孔内を排ガスが流れ易くなる。このため、第一隔壁1aの表面に煤等のPMが堆積して、第一隔壁1aの透過抵抗が増大した場合であっても、流入セル2a内に流入した排ガスが、第二隔壁1bの細孔内を経由して、流出セル2b内へと流れ易くなる。これにより、ハニカムフィルタ100の低圧損を実現することができる。特に、第一隔壁1aは、流入セル2aから流出セル2bへと流れる排ガスの主流となるため、煤等のPMが堆積し易い傾向にあり、PMの堆積に伴って透過抵抗が増大し易い。ハニカムフィルタ100においては、第一隔壁1aの透過抵抗が増大した場合に、第二隔壁1bを排ガスの流路として極めて有効に活用することができる。
【0033】
また、第二隔壁1bは、第一隔壁1aに比して、使用初期状態における圧損上昇への寄与度が低い。このため、第二隔壁1bの厚さT2を相対的に厚くしたとしても、ハニカム基材4の総開口率を上記した数値範囲とすることにより、使用初期状態におけるハニカムフィルタ100の過剰な圧損上昇を抑制することができる。
【0034】
ハニカムフィルタ100は、流入セル2aと流出セル2bとの間に配設された全ての第一隔壁1aのうちの少なくとも1つの第一隔壁1aにおいて、「T2/T1」の値が1.5より大きく、2.5未満となるように構成されていればよい。なお、流入セル2aと流出セル2bとの間に配設された全ての第一隔壁1aにおいて、上記「T2/T1」の値が1.5より大きく、2.5未満となるように構成されていてもよい。「T2/T1」の値が、1.0以下であると、第二隔壁1bの細孔内を流れる排ガスの量を十分に確保することができず、圧損を低下させる十分な効果が得られ難くなることがある。一方、「T2/T1」の値が、2.5以上になると、相対的に第二隔壁1bの厚さが厚すぎて、圧損を低下させる十分な効果が得られ難くなることがある。なお、ハニカムフィルタ100において、全ての第一隔壁1aにおいて、上記「T2/T1」の値が1.5より大きく、2.5未満となるように構成されていてもよい。
【0035】
「T2/T1」の値は、1.5より大きく、2.4以下であることが好ましく、2.0以下であることが更に好ましい。また、参考例として、「T2/T1」の下限値は、1.05、及び1.10を挙げることができる。なお、第二隔壁1bの具体的な厚さについては特に制限はない。
【0036】
ここで、図4を参照しつつ、第一隔壁1aの厚さT1、及び第二隔壁1bの厚さT2の測定方法について説明する。まず、図4に示すように、測定対象となる第一隔壁1a及び第二隔壁1bを含むような測定範囲を決定する。より具体的には、測定対象となる第一隔壁1aによって一辺が区画された1つの流出セル2bと、この流出セル2bに隣接し且つ互いに隣接する2つの流入セル2aと、を含む範囲を測定範囲とする。このような範囲を測定範囲とすることで、当該測定範囲内に、測定対象となる第一隔壁1aと、この第一隔壁1aに接続された第二隔壁1bとが含まれることとなる。
【0037】
次に、図4に示すように、2つの流入セル2aのうちの一の流入セル2aの重心を重心O1とし、この一の流入セル2aに隣接する流出セル2bの重心を重心O2とする。更に、重心O1の流入セル2a及び重心O2の流出セル2bの双方と隣接する他の流入セル2aの重心を重心O3とする。第一隔壁1aの厚さT1は、重心O1と重心O2とを結ぶ第一線分上の第一隔壁1aの厚さ(図4中のT1)とする。第二隔壁1bの厚さT2は、重心O1と重心O3とを結ぶ第二線分上の第二隔壁1bの厚さ(図4中のT2)とする。
【0038】
第一隔壁1aの厚さT1、及び第二隔壁1bの厚さT2は、例えば、マイクロスコープ(microscope)を用いて測定することができる。マイクロスコープとしては、例えば、キーエンス社製のVHX-1000(商品名)を用いることができる。
【0039】
また、図4に示すような平面図において、下記する3つの線分によって囲われる仮想的な補助三角形を作図し、作図した補助三角形を利用することにより、流入セル2aの六角形状を構成する各辺の長さを、以下のように規定することができる。補助三角形を作図するための1つ目の線分は、重心O1と重心O2とを結ぶ第一線分である。2つ目の線分は、重心O1と重心O3とを結ぶ第二線分である。3つ目の線分は、重心O2を始点とし、第二線分を二等分する第三線分である。なお、第二線分のうち、補助三角形の作図に実際に利用される部分は、第三線分によって二等分された重心O1側の半分である。
【0040】
一の流入セル2aの六角形状を構成する6つの辺のうち、流出セル2bと隣り合って配置される辺の長さの半分の値が、図4における「z」で示される長さとなる。したがって、一の流入セル2aの六角形状を構成する6つの辺のうち、流出セル2bと隣り合って配置される辺の長さについて、「長さ2z」と示すことができる。
【0041】
一の流入セル2aの六角形状を構成する6つの辺のうち、もう1つの流入セル2aと隣り合って配置される辺の長さの半分の値が、図4における「x」で示される長さとなる。したがって、一の流入セル2aの六角形状を構成する6つの辺のうち、もう1つの流入セル2aと隣り合って配置される辺の長さについて、「長さ2x」と示すことができる。
【0042】
流入セル2aの六角形状を構成する6つの辺の長さについては、長さ2zと長さ2xが異なっていてもよい。なお、流入セル2aの六角形状を構成する辺の長さのうち、長さ2zと長さ2xが同じ場合には、例えば、その流入セル2aの形状は、正六角形となる。
【0043】
図4において、「y」で示される長さは、一の流入セル2aの重心O1から、第一隔壁1aまでの距離を示している。したがって、一の流入セル2aのセルピッチは、「セルピッチ2y」と示すことができる。
【0044】
また、第一隔壁1aの厚さT1に直交する方向における第一隔壁1aの長さ、及び第二隔壁1bの厚さT2に直交する方向における第二隔壁1bの長さを、以下のように規定することができる。まず、図4に示すように、作図した補助三角形の中に、第一隔壁1aの厚さT1の中点を通り、第一線分に垂直な第一補助線を更に作図する。また、作図した補助三角形の中にも、第二隔壁1bの厚さT2の中点を通り、第二線分に垂直な第二補助線を更に作図する。
【0045】
そして、図4に示すように、第一補助線と第二補助線の交点から、第一線分に平行な第三補助線を作図する。更に、第一補助線と第二補助線の交点から、第二線分に平行な第四補助線を作図する。図4において、第一線分と第三補助線との距離を「a/2」としている。また、第二線分と第四補助線との距離を「b/2」としている。
【0046】
図4において、「a/2」で示される長さを、第一隔壁1aの長さの半分の値を示すものとする。したがって、図4において、第一隔壁1aの長さは、「長さa」と表すことができる。図4において、「b/2」で示される長さを、第二隔壁1bの長さの半分の値を示すものとする。したがって、図4において、第二隔壁1bの長さは、「長さb」と表すことができる。
【0047】
ハニカム基材4の総開口率は、35%より大きく、95%以下である。ハニカム基材4の総開口率の下限値は、47%であることが好ましく、53%であることが更に好ましい。また、ハニカム基材4の総開口率の上限値は、77%であることが好ましく、72%であることが更に好ましい。
【0048】
第一隔壁1aの厚さT1は、70~350μmであり、100~325μmであることが好ましく、130~300μmであることが特に好ましい。このように構成することによって、アイソスタティック強度(Isostatic strength)を維持しつつ、低圧損のハニカムフィルタ100とすることができる。
【0049】
ハニカムフィルタ100においては、流入セル2aの水力直径が、流出セル2bの水力直径よりも大きい。このように構成することによって、アイソスタティック強度を維持しつつ、低圧損を実現するという効果がより発現し易くなる。ここで、水力直径とは、各セル2の断面積及び周長に基づき、4×(断面積)/(周長)によって計算される値である。
【0050】
流入セル2aの水力直径は、0.5~1.5mmであることが好ましく、0.6~1.4mmであることが更に好ましく、0.7~1.3mmであることが特に好ましい。また、流入セル2aの水力直径が、流出セル2bの水力直径に対して、1.0~1.7倍であることが好ましく、1.3~1.7倍であることが更に好ましい。
【0051】
流出セル2bの一辺の長さが、0.5~1.6mmであることが好ましく、0.5~1.3mmであることが更に好ましく、0.5~1.0mmであることが特に好ましい。このように構成することによって、耐熱衝撃性を向上させつつ、低圧損を実現するという効果が発現し易くなる。
【0052】
ハニカム基材4の隔壁1の気孔率が、35~70%であることが好ましく、40~65%であることが更に好ましい。隔壁1の気孔率が35%未満であると、圧損が増大することがある。隔壁1の気孔率が70%を超えると、ハニカム基材4の強度が不十分となり、排ガス浄化装置に用いられる缶体内にハニカムフィルタ100を収納する際に、ハニカムフィルタ100を十分な把持力で保持することが困難となる。隔壁1の気孔率は、水銀ポロシメータ(Mercury porosimeter)によって計測された値とする。水銀ポロシメータとしては、例えば、Micromeritics社製のAutopore 9500(商品名)を挙げることができる。
【0053】
セル2の延びる方向に直交する断面において、流入セル2a及び流出セル2bの形状は、それぞれ六角形である。ハニカムフィルタ100において、流入セル2aの形状は正六角形であり、流出セル2bの形状も正六角形である。そして、流入セル2aの形状と、流出セル2bの形状とは、その大きさが異なる相似形となっている。
【0054】
隔壁1の材料は、強度、耐熱性、耐久性等の観点から、主成分が酸化物又は非酸化物の各種セラミックスや金属等であることが好ましい。具体的には、セラミックスとしては、例えば、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素、窒化珪素、チタン酸アルミニウムから構成される材料群より選択された少なくとも1種を含む材料からなることが好ましい。金属としては、Fe-Cr-Al系金属及び金属珪素等が考えられる。これらの材料の中から選ばれた1種又は2種以上を主成分とすることが好ましい。高強度、高耐熱性等の観点から、アルミナ、ムライト、チタン酸アルミニウム、コージェライト、炭化珪素、及び窒化珪素から構成される材料群より選ばれた1種又は2種以上を主成分とすることが特に好ましい。また、セラミックス材料としては、例えば、炭化珪素の粒子を、コージェライトを結合材として結合した複合材料であってもよい。また、高熱伝導率や高耐熱性等の観点からは、炭化珪素又は珪素-炭化珪素複合材料が特に適している。ここで、「主成分」とは、その成分中に、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上存在する成分のことを意味する。
【0055】
目封止部5の材料については特に制限はないが、上記した隔壁1の材料として挙げたものを好適に用いることができる。
【0056】
ハニカムフィルタ100の全体形状については特に制限はない。ハニカムフィルタ100の全体形状は、流入端面11及び流出端面12の形状が、円形、又は楕円形であることが好ましく、特に、円形であることが好ましい。また、ハニカムフィルタ100の大きさは、特に限定されないが、流入端面11から流出端面12までの長さが、50~300mmであることが好ましい。また、ハニカムフィルタ100の全体形状が円柱状の場合、流入端面11及び流出端面12の直径が、100~400mmであることが好ましい。
【0057】
ハニカムフィルタ100は、内燃機関の排ガス浄化用の部材として好適に用いることができる。ハニカムフィルタ100は、ハニカム基材4の隔壁1の表面及び隔壁1の細孔のうちの少なくとも一方に、排ガス浄化用の触媒が担持されたものであってもよい。
【0058】
次に、本発明のハニカムフィルタの他の実施形態について、図7及び図8を参照しつつ説明する。図7は、本発明のハニカムフィルタの他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。図8は、図7に示す流入端面の一部を拡大した拡大平面図である。
【0059】
図7及び図8に示すハニカムフィルタ200は、ハニカム基材24と、目封止部25を備えたものである。ハニカム基材24は、流入端面31及び流出端面(図示せず)を有する柱状を呈するものである。ハニカム基材24は、流入端面31から流出端面(図示せず)まで延びる複数のセル22を取り囲むように配設された、多孔質の隔壁21を有する。図7に示すハニカム基材24においては、隔壁21を囲繞するように配設された外周壁23を更に有している。
【0060】
ハニカムフィルタ200は、セル22の延びる方向に直交する断面において、流入セル22aの形状が、六角形であり、流出セル22bの形状が、六角形である。複数のセル22は、流入セル22aの一辺と、隣接する流出セル22bの一辺とが平行となるよう、1つの流出セル22bの周囲を複数個の流入セル22aが取り囲む構造となっている。図7に示すハニカムフィルタ200においては、1つの流出セル22bの周囲を、6つの流入セル22aが取り囲む構造となっている。
【0061】
ハニカムフィルタ200において、流入セル22aと流出セル22bとの間に配設された隔壁21を「第一隔壁21a」とする。また、流入セル22a同士の間に配設された隔壁21を「第二隔壁21b」とする。ハニカムフィルタ200は、第一隔壁21aのうちの少なくとも1つの第一隔壁21aは、当該第一隔壁21aの厚さT1に対する、第二隔壁21bの厚さT2の比の値である「T2/T1」の値が1.5より大きく、2.5未満となるように構成されている。
【0062】
ハニカムフィルタ200は、ハニカム基材24の総開口率が、35%より大きく、95%以下である。
【0063】
これまでに説明した図1図5に示すハニカムフィルタ100に対して、図7及び図8に示すハニカムフィルタ200は、流入セル22aの形状が異なっている。即ち、ハニカムフィルタ200は、セル22の延びる方向に直交する断面において、流入セル22aの形状が、正六角形以外の六角形となっている。流入セル22aの形状が、正六角形以外の六角形である場合には、流入セル22aの形状が、対向する少なくとも1組の辺同士の長さが異なる六角形であることが好ましい。なお、「対向する少なくとも1組の辺」とは、流入セル22aの形状を構成する六角形における、対向する少なくとも1組の辺のことである。なお、流入セル22aの形状については、六角形の対向する辺同士の長さがそれぞれ異なる六角形であることが更に好ましい。流入セル22aの形状を、上述したような六角形とすることにより、「T2/T1」の値を1.5より大きくした場合において、ハニカム基材24の総開口率の過度に小さくなってしまうことを有効に抑制することができる。このため、「T2/T1」の値を1.5より大きくした場合に、総開口率の低下による圧損上昇の影響を受け難くなり、より低圧損を実現することができる。
【0064】
次に、本発明のハニカムフィルタの更に他の実施形態について、図9を参照しつつ説明する。図9は、本発明のハニカムフィルタの他の実施形態の流入端面の一部を拡大した拡大平面図である。
【0065】
図9に示すハニカムフィルタ300は、ハニカム基材44と、目封止部45を備えたものである。ハニカム基材44は、流入端面51及び流出端面(図示せず)を有する柱状を呈するものである。ハニカム基材44は、流入端面51から流出端面(図示せず)まで延びる複数のセル42を取り囲むように配設された、多孔質の隔壁41を有する。
【0066】
図9に示すハニカムフィルタ300は、セル42の延びる方向に直交する断面において、流入セル42aの形状が、正六角形以外の六角形であり、流出セル42bの形状が、正六角形である。ハニカムフィルタ300においては、1つの流出セル42bの周囲を、6つの流入セル42aが取り囲む構造となっている。
【0067】
ハニカムフィルタ300においても、「T2/T1」の値が1.5より大きく、2.5未満となるように構成されている。また、ハニカムフィルタ300は、ハニカム基材4の総開口率が、35%より大きく、95%以下である。
【0068】
ハニカムフィルタ300においては、第二隔壁41bは、この第二隔壁の厚さT2が第一隔壁41aとの接続部位に向かって薄く又は厚くなる、厚さ傾斜部46を有する。ハニカムフィルタ300は、第二隔壁の厚さT2が第一隔壁41aとの接続部位に向かって厚くなる厚さ傾斜部46と、第二隔壁の厚さT2が第一隔壁41aとの接続部位に向かって薄くなる厚さ傾斜部46の双方を有している。
【0069】
例えば、第二隔壁の厚さT2が第一隔壁41aとの接続部位に向かって厚くなる厚さ傾斜部46を有することにより、ハニカムフィルタ300の耐熱衝撃性を向上させることができる。即ち、第二隔壁41bと第一隔壁41aとの接続部位は、相対的に応力が発生し易いため、第二隔壁41bと第一隔壁41aとの接続部位を相対的に更に厚くすることで、ハニカムフィルタの構造的な強度を向上させることができる。これにより、ハニカムフィルタ300にて捕集したPMを燃焼除去する再生工程時の耐熱衝撃性を向上させることができる。
【0070】
一方、第二隔壁の厚さT2が第一隔壁41aとの接続部位に向かって薄くなる厚さ傾斜部46を有することにより、ハニカムフィルタ300をより低圧損のものとすることができる。
【0071】
(2)ハニカムフィルタの製造方法:
次に、本発明のハニカムフィルタを製造する方法について説明する。
【0072】
まず、ハニカム基材を作製するための可塑性の坏土を作製する。ハニカム基材を作製するための坏土は、原料粉末として、前述の隔壁の好適な材料群の中から選ばれた材料に、適宜、バインダ等の添加剤、及び水を添加することによって作製することができる。
【0073】
次に、作製した坏土を押出成形することにより、複数のセルを区画形成する隔壁、及び最外周に配設された外周壁を有する、柱状のハニカム成形体を得る。押出成形においては、押出成形用の口金として、坏土の押出面に、成形するハニカム成形体の反転形状となるスリットが形成されたものを用いることができる。得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥してもよい。
【0074】
次に、ハニカム成形体の製造に用いた材料と同様の材料で、セルの開口部を目封止することで目封止部を形成する。目封止部を形成する方法については、従来公知のハニカムフィルタの製造方法に準じて行うことができる。
【0075】
次に、得られたハニカム成形体を焼成することにより、ハニカムフィルタを得る。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。なお、本発明のハニカムフィルタを製造する方法は、これまでに説明した方法に限定されることはない。
【実施例
【0076】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0077】
(実施例1)
まず、ハニカム基材を作製するための坏土を調製した。実施例1では、坏土を調製するための原料粉末として、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを、80:20の質量割合で混合した混合粉末を準備した。この混合粉末に、バインダ、造孔材、及び水を添加して、成形原料とした。次に、成形原料を混練して円柱状の坏土を作製した。
【0078】
次に、ハニカム成形体作製用の口金を用いて坏土を押出成形し、全体形状が円柱状のハニカム成形体を得た。
【0079】
次に、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。
【0080】
次に、乾燥したハニカム成形体に、目封止部を形成した。具体的には、まず、ハニカム成形体の流入端面に、流入セルが覆われるようにマスクを施した。その後、マスクの施されたハニカム成形体の端部を、目封止スラリーに浸漬し、マスクが施されていない流出セルの開口部に目封止スラリーを充填した。その後、ハニカム成形体の流出端面についても、上記と同様の方法で、流入セルの開口部に目封止スラリーを充填した。その後、目封止部を形成したハニカム成形体を、更に、熱風乾燥機で乾燥した。
【0081】
次に、目封止部を形成したハニカム成形体を脱脂し、焼成してハニカムフィルタを得た。
【0082】
実施例1のハニカムフィルタは、図7及び図8に示すハニカムフィルタ200に示すように、流入セル22aの形状が、正六角形以外の六角形であり、流出セル22bの形状が、正六角形であった。そして、実施例1のハニカムフィルタは、図7及び図8に示すように、正六角形の流出セル22bの周囲を、6個の六角形の流入セル22aが取り囲むように配置されたセル構造を有するものであった。なお、流入セル22aの形状としての六角形は、六角形の対向する辺同士の長さがそれぞれ異なる六角形であった。
【0083】
実施例1のハニカムフィルタは、隔壁の気孔率が41%であった。端面の直径が266.7mm、セルの延びる方向における長さが254.0mmであった。隔壁の気孔率は、水銀ポロシメータによって測定した値である。また、実施例1のハニカムフィルタは、図8に示す第一隔壁21aの厚さT1が、152.4μmであり、第二隔壁21bの厚さT2が、160.0μmであった。したがって、実施例1のハニカムフィルタは、第一隔壁の厚さT1に対する、第二隔壁の厚さT2の比の値(T2/T1)が、1.05であった。表1に、「第一隔壁の厚さT1(μm)」、「第二隔壁の厚さT2(μm)」、及び「T2/T1」の値を示す。以下、実施例1の記載を、参考例1と読み替える。
【0084】
また、実施例1のハニカムフィルタについて、図4に示すような「第一隔壁の長さa」及び「第二隔壁の長さb」の値を求めた。結果を、表2の「第一隔壁の長さa(mm)」及び「第二隔壁の長さb(mm)」の欄に示す。また、「第一隔壁の長さa(mm)」を「第二隔壁の長さb(mm)」で除算した値を、表2の「a/b」の欄に示す。実施例1のハニカムフィルタのセル密度を、表2の「セル密度(個/cm)」の欄に示す。また、実施例1のハニカムフィルタについて、図4における「x」で示される長さ、及び「z」で示される長さを求めた。結果を、表2の「x(mm)」及び「z(mm)」の欄に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
実施例1のハニカムフィルタについて、以下の方法で、「圧損性能評価」の試験を行った。結果を表1に示す。
【0088】
[圧損性能評価]
圧損性能評価においては、同一条件で測定された「基準となるハニカムフィルタ」の圧損の値を基準値として、各実施例のハニカムフィルタの圧損性能評価を行った。具体的には、大型風洞装置を用いて、10m/分の風量における圧損を測定した。なお、圧損の測定においては、それぞれのハニカムフィルタに6g/Lの煤が堆積している状態の圧損を測定した。そして、基準となるハニカムフィルタの圧損の値をPとし、各実施例のハニカムフィルタの圧損の値をPとした場合、「P/P」にて算出される値を、圧損性能評価の結果とした。結果を、表1の「圧損比」の欄に示す。
【0089】
なお、圧損性能評価において、基準となるハニカムフィルタは、以下の通りである。
実施例1~4において、基準となるハニカムフィルタを、比較例1とする。
実施例5~8において、基準となるハニカムフィルタを、比較例2とする。
実施例9~12及び比較例4において、基準となるハニカムフィルタを、比較例3とする。
実施例13~16において、基準となるハニカムフィルタを、比較例5とする。
実施例17~21及び比較例7~9において、基準となるハニカムフィルタを、比較例6とする。
実施例22~25において、基準となるハニカムフィルタを、比較例10とする
実施例26~29において、基準となるハニカムフィルタを、比較例11とする。
【0090】
(実施例2~12、比較例1~4)
「第一隔壁の厚さT1(μm)」、「第二隔壁の厚さT2(μm)」、「第一隔壁の長さa(mm)」、「第二隔壁の長さb(mm)」等を、表1及び表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でハニカムフィルタを作製した。実施例2~12及び比較例4のハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、「圧損性能評価」の試験を行った。結果を表1に示す。比較例1~3のハニカムフィルタは、第一隔壁の厚さT1と、第二隔壁の厚さT2とが同じ値となるハニカムフィルタである。以下、実施例2,5,6,9、10,11,12の記載を、参考例2,5,6,9、10,11,12と読み替える。
【0091】
(実施例13)
実施例13においては、実施例1にて調製した坏土と同様の方法で調製した坏土を用いて、図2及び図3に示すようなセル構造のハニカムフィルタを作製した。即ち、実施例13のハニカムフィルタは、図2及び図3に示すハニカムフィルタ100に示すように、流入セル2aの形状が、正六角形であり、流出セル2bの形状も正六角形であった。そして、実施例13のハニカムフィルタは、図2及び図3に示すように、正六角形の流出セル2bの周囲を、6個の正六角形の流入セル2aが取り囲むように配置されたセル構造を有するものであった。
【0092】
実施例13のハニカムフィルタは、隔壁の気孔率が41%であった。端面の直径が266.7mm、セルの延びる方向における長さが254.0mmであった。隔壁の気孔率は、水銀ポロシメータによって測定した値である。また、実施例13のハニカムフィルタは、図3に示す第一隔壁1aの厚さT1が、152.4μmであり、第二隔壁1bの厚さT2が、160.0μmであった。したがって、実施例13のハニカムフィルタは、第一隔壁の厚さT1に対する、第二隔壁の厚さT2の比の値(T2/T1)が、1.05であった。表3に、「第一隔壁の厚さT1(μm)」、「第二隔壁の厚さT2(μm)」、及び「T2/T1」の値を示す。
【0093】
実施例13のハニカムフィルタについて、図4に示すような「第一隔壁の長さa」及び「第二隔壁の長さb」の値を求めた。結果を、表4の「第一隔壁の長さa(mm)」及び「第二隔壁の長さb(mm)」の欄に示す。また、「第一隔壁の長さa(mm)」を「第二隔壁の長さb(mm)」で除算した値を、表4の「a/b」の欄に示す。実施例13のハニカムフィルタのセル密度を、表4の「セル密度(個/cm)」の欄に示す。また、実施例13のハニカムフィルタについて、図4における「x」で示される長さ、及び「z」で示される長さを求めた。結果を、表4の「x(mm)」及び「z(mm)」の欄に示す。
【0094】
(実施例14~21、比較例5~9)
「第一隔壁の厚さT1(μm)」、「第二隔壁の厚さT2(μm)」、「第一隔壁の長さa(mm)」、「第二隔壁の長さb(mm)」等を、表3及び表4に示すように変更したこと以外は、実施例13と同様の方法でハニカムフィルタを作製した。実施例14~20及び比較例7~9のハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、「圧損性能評価」の試験を行った。結果を表3に示す。比較例5~6のハニカムフィルタは、第一隔壁の厚さT1と、第二隔壁の厚さT2とが同じ値となるハニカムフィルタである。以下、実施例13~21の記載を、参考例13~21と読み替える。
【0095】
(実施例22~25、比較例10)
実施例22~25、比較例10においては、ハニカム基材を作製するための坏土の調製において、実施例1にて調製した坏土に対して造孔材の添加量を変更して、隔壁の気孔率が63%となるハニカムフィルタを製造した。実施例22~25、比較例10のハニカムフィルタの「第一隔壁の厚さT1(μm)」、「第二隔壁の厚さT2(μm)」、「第一隔壁の長さa(mm)」、「第二隔壁の長さb(mm)」等については、表5及び表6に示す通りである。実施例22~25のハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、「圧損性能評価」の試験を行った。結果を表5に示す。比較例10のハニカムフィルタは、第一隔壁の厚さT1と、第二隔壁の厚さT2とが同じ値となるハニカムフィルタである。以下、実施例22,23の記載を、参考例22,23と読み替える。
【0096】
(実施例26~29、比較例11)
実施例26~29、比較例11においては、ハニカム基材を作製するための坏土として、以下のような坏土を調製して、コージェライト質のハニカム基材を作製した。坏土を調製するための原料粉末として、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネルなどの混合粉末を準備した。この混合粉末に、バインダ、造孔材、及び水を添加して、成形原料とした。次に、成形原料を混練して円柱状の坏土を作製した。以下、実施例26,27の記載を、参考例26,27と読み替える。
【0097】
実施例26~29、比較例11のハニカムフィルタの「第一隔壁の厚さT1(μm)」、「第二隔壁の厚さT2(μm)」、「第一隔壁の長さa(mm)」、「第二隔壁の長さb(mm)」等については、表5及び表6に示す通りである。実施例26~29のハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、「圧損性能評価」の試験を行った。結果を表5に示す。比較例11のハニカムフィルタは、第一隔壁の厚さT1と、第二隔壁の厚さT2とが同じ値となるハニカムフィルタである。
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【0102】
(結果)
実施例1~29のハニカムフィルタは、基準となるハニカムフィルタに対して、低圧損のものであった。即ち、「T2/T1」が1.0より大きく、2.5未満となるように構成され、且つ、総開口率が、35%より大きく、95%以下であるハニカムフィルタは、低圧損を実現できることが確認された。なお、「T2/T1」が2.5以上となる比較例4,7~9については、圧損が高いものであった。なお、比較例9は、総開口率も35%なっており、圧損が著しく高いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明のハニカムフィルタは、排ガスを浄化するためのフィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1,21,41:隔壁、1a,21a,41a:第一隔壁、1b,21b,41b:第二隔壁、2,22,42:セル、2a,22a,42a:流入セル、2b,22b,42b:流出セル、3,23:外周壁、4,24,44:ハニカム基材、5,25,45:目封止部、46:厚さ傾斜部、11,31,51:流入端面、12:流出端面、100,200,300:ハニカムフィルタ、T1:第一隔壁の厚さ、T2:第二隔壁の厚さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9