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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】排気ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/023 20060101AFI20221214BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
F01N3/023 K
F01N3/035 E
F01N3/035 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018181843
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020051342
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩野谷 哲史
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-245167(JP,A)
【文献】特開2015-075006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/023
F01N 3/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管に設けられ、粒子状物質を捕捉する第1フィルタと、
前記排気管における前記第1フィルタの上流側から分岐され、前記第1フィルタの上流側に接続された分岐管と、
前記分岐管に着脱自在に設けられ、前記第1フィルタよりも断面積が小さい第2フィルタと、
を備える排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記分岐管は、前記排気管における分岐箇所の上流側に接続される請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記排気管における前記第1フィルタの上流側に設けられた三元触媒を備え、
前記分岐管は、前記排気管における前記三元触媒の上流側に接続される請求項2に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記第1フィルタは、炭化水素、一酸化炭素、および、窒素酸化物を除去する機能を有する請求項2または3に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
前記第2フィルタは、粒子状物質の捕捉率が前記第1フィルタと等しい請求項1から4のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンから排気された排気ガスに含まれる、煤やオイル由来のアッシュ等の粒子状物質(PM)を取り除く車両用のフィルタとして、DPF(Diesel Particulate Filter)やGPF(Gasoline Particulate Filter)が知られている。このようなフィルタでは、フィルタに形成された孔で粒子状物質を捕捉することで、排気ガスから粒子状物質を取り除いている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-147931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルタに堆積した粒子状物質の量を精度よく把握できる技術の開発が希求されている。
【0005】
本発明は、フィルタに堆積した粒子状物質の量を高精度に把握することが可能な排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の排気ガス浄化装置は、排気管に設けられ、粒子状物質を捕捉する第1フィルタと、排気管における第1フィルタの上流側から分岐され、第1フィルタの上流側に接続された分岐管と、分岐管に着脱自在に設けられ、第1フィルタよりも断面積が小さい第2フィルタと、を備える。
【0007】
また、分岐管は、排気管における分岐箇所の上流側に接続されてもよい。
【0008】
また、排気管における第1フィルタの上流側に設けられた三元触媒を備え、分岐管は、排気管における三元触媒の上流側に接続されてもよい。
【0009】
また、第1フィルタは、炭化水素、一酸化炭素、および、窒素酸化物を除去する機能を有してもよい。
【0010】
また、第2フィルタは、粒子状物質の捕捉率が第1フィルタと等しくてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フィルタに堆積した粒子状物質の量を精度よく把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態にかかるエンジンシステムを説明する図である。
図2】排気ガス浄化装置を説明する図である。
図3】GPFの構成を示す概略図である。
図4】サブフィルタを説明する図である。
図5】実施形態の粒子状物質の重量推定方法の処理の流れを説明するフローチャートである。
図6】第1の変形例にかかる排気ガス浄化装置を説明する図である。
図7】第2の変形例にかかる排気ガス浄化装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
[エンジンシステム100]
図1は、本実施形態にかかるエンジンシステム100を説明する図である。なお、図1中、信号の流れを破線の矢印で示す。
【0015】
図1に示すように、車両に搭載されるエンジンシステム100には、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含むマイクロコンピュータでなるECU(Engine Control Unit)10が設けられる。ECU10によりエンジンE全体が統括制御される。ただし、以下では、本実施形態に関係する構成や処理について詳細に説明し、本実施形態と無関係の構成や処理については説明を省略する。
【0016】
エンジンシステム100を構成するエンジンEは、シリンダブロック102と、クランクケース104と、シリンダヘッド106と、オイルパン110とを含む。クランクケース104は、シリンダブロック102と一体形成されている。シリンダヘッド106は、シリンダブロック102におけるクランクケース104とは反対側に接合される。オイルパン110は、クランクケース104におけるシリンダブロック102とは反対側に接合される。
【0017】
シリンダブロック102には、複数のシリンダボア112が形成されている。複数のシリンダボア112において、それぞれピストン114が摺動可能にコネクティングロッド116に支持されている。そして、エンジンEでは、シリンダボア112と、シリンダヘッド106と、ピストン114の冠面とによって囲まれた空間が燃焼室118として形成される。
【0018】
また、エンジンEでは、クランクケース104およびオイルパン110に囲まれた空間がクランク室120として形成される。クランク室120内には、クランクシャフト122が回転可能に支持されており、ピストン114がコネクティングロッド116を介してクランクシャフト122に連結される。
【0019】
シリンダヘッド106には、吸気ポート124および排気ポート126が燃焼室118に連通するように設けられる。吸気ポート124と燃焼室118との間には、吸気弁128の先端(傘部)が位置し、排気ポート126と燃焼室118との間には、排気弁130の先端(傘部)が位置している。
【0020】
また、シリンダヘッド106および不図示のヘッドカバーに囲まれた空間には、吸気用カム134a、ロッカーアーム134b、排気用カム136a、および、ロッカーアーム136bが設けられる。吸気弁128は、ロッカーアーム134aを介して、吸気用カムシャフトに固定された吸気用カム134aが当接されている。吸気弁128は、吸気用カムシャフトの回転に伴って、軸方向に移動し、吸気ポート124と燃焼室118との間を開閉する。排気弁130は、ロッカーアーム136bを介して、排気用カムシャフトに固定された排気用カム136aが当接されている。排気弁130は、排気用カムシャフトの回転に伴って、軸方向に移動し、排気ポート126と燃焼室118との間を開閉する。
【0021】
吸気ポート124の上流側には、吸気マニホールドを含む吸気管140が連通される。吸気管140内には、スロットル弁142、および、スロットル弁142より上流側にエアクリーナ144が設けられる。スロットル弁142は、アクセル(図示せず)の開度に応じてアクチュエータにより開閉駆動される。エアクリーナ144にて浄化された空気は、吸気管140、吸気ポート124を通じて燃焼室118に吸入される。
【0022】
シリンダヘッド106には、燃料噴射口が燃焼室118に開口するようにインジェクタ150が設けられるとともに、先端が燃焼室118内に位置するように点火プラグ152が設けられる。インジェクタ150から燃焼室118に噴射された燃料は、吸気ポート124から燃焼室118に供給された空気と混ざり混合気となる。そして、所定のタイミングで点火プラグ152が点火され、燃焼室118内で生成された混合気が燃焼される。かかる燃焼により、ピストン114が往復運動を行い、その往復運動が、コネクティングロッド116を通じてクランクシャフト122の回転運動に変換される。
【0023】
排気ポート126の下流側には、排気マニホールドを含む排気管160が連通される。排気管160内には、後述する排気ガス浄化装置200が設けられる。排気ガス浄化装置200は、排気ガスを浄化する。排気ガス浄化装置200によって浄化された排気ガスは、マフラ162を通じて外部に排気される。排気ガス浄化装置200については、後に詳述する。
【0024】
EGR管170は、排気管160における、排気ガス浄化装置200(後述の三元触媒210)の上流側と、吸気管140におけるスロットル弁142の下流側とに接続される。EGR管170は、排気管160を流通する排気ガスの一部を吸気管140に還流させる(以下、還流させた排気ガスを「EGRガス」と称する)。
【0025】
EGR管170には、EGRクーラ172が設けられており、EGRクーラ172で冷却されたEGRガスは、吸気管140、吸気ポート124を通じて燃焼室118に還流する。EGRバルブ174は、EGR管170におけるEGRクーラ172の下流側に設けられる。EGRバルブ174は、EGR管170を開閉して流路幅を調整することで、EGR管170を流れるEGRガスの流量を制御する。EGR管170を介して吸気管140に流入したEGRガスは、スロットル弁142を通過した吸気とともに燃焼室118に供給される。
【0026】
また、エンジンシステム100には、吸入空気量センサ180、スロットル開度センサ182、クランク角センサ184、アクセル開度センサ186が設けられる。
【0027】
吸入空気量センサ180は、エンジンEに流入する吸入空気量を検出する。スロットル開度センサ182は、スロットル弁142の開度を検出する。クランク角センサ184は、クランクシャフト122のクランク角を検出する。アクセル開度センサ186は、アクセル(図示せず)の開度を検出する。
【0028】
吸入空気量センサ180、スロットル開度センサ182、クランク角センサ184、および、アクセル開度センサ186は、ECU10に接続されており、検出値を示す信号をECU10に出力する。
【0029】
ECU10は、吸入空気量センサ180、スロットル開度センサ182、クランク角センサ184、および、アクセル開度センサ186から出力された信号を取得してエンジンEを制御する。ECU10は、エンジンEを制御する際、信号取得部12、駆動制御部14、バルブ制御部16として機能する。
【0030】
信号取得部12は、吸入空気量センサ180、スロットル開度センサ182、クランク角センサ184、および、アクセル開度センサ186が検出した値を示す信号を取得する。また、信号取得部12は、クランク角センサ184から取得したクランク角を示す信号に基づいてエンジンEの回転数(クランクシャフトの回転数)を導出する。また、信号取得部12は、吸入空気量センサ180から取得した吸入空気量を示す信号に基づいてエンジンEの負荷(エンジン負荷)を導出する。かかる吸入空気の圧力からエンジン負荷を求める技術は、既存の様々な技術を利用可能なので、ここではその説明を省略する。
【0031】
駆動制御部14は、信号取得部12が取得した信号に基づいて、スロットル弁用アクチュエータ(図示せず)、インジェクタ150、点火プラグ152を制御する。
【0032】
バルブ制御部16は、エンジンEの回転数およびエンジン負荷に応じて、不図示のアクチュエータを駆動させ、EGRバルブ174を開閉制御する。具体的に説明すると、不図示のメモリは、エンジンEの回転数およびエンジン負荷(吸入空気量)と、EGRバルブ174の開度とが関連付けられたEGRマップを保持しており、バルブ制御部16は、EGRマップを参照して、EGRバルブ174の開度を決定する。そして、バルブ制御部16は、決定した開度となるように、EGRバルブ174を開閉制御する。
【0033】
このように、EGRガスを燃焼室118に還流させることにより、燃焼室118内の酸素濃度を低下させることができ、燃焼温度を低減することが可能となる。これにより、燃焼室118内における窒素酸化物の生成を抑制することができ、また、燃費を向上させることが可能となる。
【0034】
[排気ガス浄化装置200]
図2は、排気ガス浄化装置200を説明する図である。排気ガス浄化装置200は、三元触媒210と、GPF220と、分岐管230と、サブフィルタ240とを含む。
【0035】
三元触媒(Three-Way Catalyst)210は、排気管160内に設けられる。三元触媒210は、例えば、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の触媒成分を含む。三元触媒210は、排気ポート126から排出された排気ガス中の炭化水素(HC:Hydro Carbon)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物を除去する。
【0036】
GPF(Gasoline Particulate Filter)220(第1フィルタ)は、排気管160内における三元触媒210の下流側に設けられる。GPF220は、排気ポート126から排気された排気ガス中の粒子状物質(煤、および、アッシュ)を捕捉する。GPF220は、例えば、ウォールフロー型のフィルタである。本実施形態においてGPF220は、粒子状物質を捕捉する機能を有するとともに、排気ガスを浄化する触媒成分(例えば、三元触媒210と同様の、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物を除去する触媒成分)を含む。
【0037】
図3は、GPF220の構成を示す概略図である。図3(a)は、GPF220の斜視図を示し、図3(b)はGPF220の正面図を示し、図3(c)は図3(a)のYZ断面図を示す。なお、図3(a)中、排気ガスの流れを白抜き矢印で示し、図3(c)中、排気ガスの流れを矢印で示す。また、本実施形態にかかる図3、および、後述する図4では、垂直に交わるX軸、Y軸(排気ガスの流れ方向、すなわち、排気管160の延在方向)、Z軸を図示の通り定義している。
【0038】
図3(a)~図3(c)に示すように、GPF220は、ウォールフロー型の装置であり、フィルタユニット222と、上流プラグ部224と、下流プラグ部226とを含む。
【0039】
フィルタユニット222は、円筒形状の外筒222aと、排気ガスを通過させるフィルタ壁222bとを含む。フィルタ壁222bには、担体および触媒成分(金属元素)の混合物がコーティングされている。なお、フィルタ壁222bへの混合物のコーティングは、例えば、ディップコートによって為される。
【0040】
フィルタ壁222bは、第1壁222baと、第2壁222bbとを含む。第1壁222baは、図3中、XY面と平行な面上に設けられるとともに、Y軸方向に延在する。第2壁222bbは、YZ面と平行な面上に設けられるとともに、Y軸方向に延在する。図3(b)に示すように、2つの第1壁222baと、2つの第2壁222bbに囲繞された空間、もしくは、第1壁222ba、第2壁222bb、外筒222aに囲繞された空間がセル228として形成される。
【0041】
したがって、複数のセル228は、外筒222a(フィルタユニット222)内において、軸方向(図3中、Y軸方向)に延在するとともに、軸方向と直交する方向(図3中、X軸方向およびZ軸方向)に並列して形成される。なお、セル228の数に限定はない。
【0042】
そして、図3(c)に示すように、セル228のうち、第1セル群に分類されるセル228Aは、上流側の上流開口部228aが上流プラグ部224で封止されている。また、セル228のうち、上流プラグ部224で封止されたセル228とは異なるセル228(第2セル群に分類されるセル228B)は、下流側の下流開口部228bが下流プラグ部226で封止されている。
【0043】
フィルタユニット222では、セル228Aとセル228Bとが交互に配置されているため、フィルタユニット222(GPF220)に到達した排気ガスは、セル228Bに導入され、セル228Bを区画するフィルタ壁222bを通過して、セル228Aに導入される。この際、フィルタ壁222bの通過過程において、排気ガスに含まれる粒子状物質がフィルタ壁222bで捕捉されることとなる。そして、セル228Aに導入された排気ガスは、セル228Aの下流側の開口を通じてマフラ162(図2参照)に導かれることとなる。
【0044】
排気ガス浄化装置200は、排気管160にGPF220を備える構成により、GPF220に粒子状物質を堆積させて、排気ガスから除去することができる。そして、GPF220に堆積した粒子状物質(煤(炭素))は、燃焼(酸化反応)によってGPF220から除去され、GPF220が再生される(再生処理)。
【0045】
このように、三元触媒210およびGPF220によって浄化された排気ガスは、マフラ162を通じて外部に排気される。
【0046】
図2に戻って説明すると、分岐管230は、排気管160におけるGPF220の上流側から分岐された管である。本実施形態において、分岐管230は、排気管160における三元触媒210とGPF220との間から分岐され、三元触媒210の上流側(EGR管170の接続箇所と三元触媒210との間)に接続される。
【0047】
サブフィルタ240は、分岐管230内に着脱自在に設けられる。図4は、サブフィルタ240を説明する図である。図4に示すように、サブフィルタ240は、ケーシング242と、フランジ部244と、フィルタ部246とを含む。
【0048】
ケーシング242は、円筒形状の部材である。フランジ部244は、ケーシング242の両端に設けられる。フランジ部244は、ケーシング242から径方向外方に突出している。フランジ部244は、分岐管230に設けられたフランジ232と対向しており、不図示の締結部材によって、フランジ部244およびフランジ232がバンド締結される。締結部材は、Vバンドカップリング、または、Gカップリングで構成される。
【0049】
フィルタ部246(第2フィルタ)は、ケーシング242内に設けられる。フィルタ部246は、上記GPF220と同様のウォールフロー型の装置であり、フィルタユニット222と、上流プラグ部224と、下流プラグ部226とを含む。なお、本実施形態において、フィルタ部246を構成するフィルタ壁222bには、担体のみがコーティングされている。つまり、フィルタ部246は、触媒機能(炭化水素、一酸化炭素、および、窒素酸化物を除去する機能)を有しない。
【0050】
フィルタ部246は、GPF220よりも断面積(流路断面積、図3図4中、XZ断面積)が小さい。つまり、フィルタ部246のセル228の断面積は、GPF220のセル228と等しいが、フィルタ部246は、GPF220よりもセル228の数が少ない。
【0051】
また、フィルタ部246は、排気ガスの流れ方向の長さ(図3図4中、Y軸方向の長さ)が、GPF220と等しい。さらに、フィルタ部246は、GPF220とエンジンEからの距離が等しい。したがって、フィルタ部246は、フィルタ壁222bおよび下流プラグ部226に捕捉される、単位断面積あたりの粒子状物質の量を、GPF220と等しくすることができる。つまり、フィルタ部246は、GPF220と粒子状物質の捕捉率(透過度)が等しい。なお、GPF220とフィルタ部246の粒子状物質の捕捉率が等しいとは、捕捉率が完全に一致していなくてもよく、実質的に等しい、あるいは略等しい場合も含む。
【0052】
図2に戻って説明すると、排気管160から分岐管230に分流され、サブフィルタ240を通過した排気ガスは、分岐管230を通じて、排気管160における三元触媒210に返送される。
【0053】
[粒子状物質の重量推定方法]
続いて、排気ガス浄化装置200を用いた粒子状物質の重量推定方法について説明する。図5は、本実施形態の粒子状物質の重量推定方法の処理の流れを説明するフローチャートである。粒子状物質の重量推定方法は、例えば、車両の点検時等において実施される。
【0054】
図5に示すように、粒子状物質の重量推定方法は、取り外し工程S110と、乾燥工程S120と、計測工程S130と、判定工程S140と、交換工程S150と、再設置工程S160とを含む。以下、各工程について説明する。
【0055】
[取り外し工程S110]
取り外し工程S110は、締結部材を外し、分岐管230からサブフィルタ240を取り外す工程である。
【0056】
[乾燥工程S120]
乾燥工程S120は、サブフィルタ240を電気炉等によって所定温度(例えば、100℃以上)で所定時間加熱して、サブフィルタ240を乾燥させる工程である。
【0057】
[計測工程S130]
計測工程S130は、サブフィルタ240の重量(乾燥重量)を計測(秤量)する工程である。
【0058】
[判定工程S140]
判定工程S140は、まず、計測工程S130で計測したサブフィルタ240の重量から、予め定められた初期重量を減算して、サブフィルタ240に堆積した粒子状物質の重量(PM重量)を算出する。なお、初期重量は、車両を出荷する前(初期状態、排気ガスを通過させる前)のサブフィルタ240の重量である。そして、サブフィルタ240に堆積したPM重量が、所定の閾値以上であるか否かを判定する。その結果、PM重量が閾値以上であると判定した場合(判定工程S140におけるYES)には、交換工程S150に処理を移す。一方、PM重量が閾値以上ではない(閾値未満である)と判定した場合(判定工程S140におけるNO)には、再設置工程S160に処理を移す。
【0059】
なお、閾値は、サブフィルタ240に堆積したPM重量から推定されるGPF220のPM重量と、吸気管140と排気管160との差圧とに基づいて決定される。具体的に説明すると、まず、EGRガスの還流量が設計値の最大値となる、吸気管140と排気管160との差圧を算出する。続いて、算出した差圧となるGPF220のPM重量(PM堆積量)を算出する。そして、算出したGPF220のPM重量に相当するサブフィルタ240に堆積したPM重量を閾値とする。
【0060】
[交換工程S150]
交換工程S150は、GPF220およびサブフィルタ240を、新たなGPF220およびサブフィルタ240に交換する工程である。
【0061】
[再設置工程S160]
再設置工程S160は、計測工程S130を遂行した後のサブフィルタ240を、そのまま分岐管230に再設置する工程である。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の排気ガス浄化装置200は、GPF220に加えて、着脱自在なサブフィルタ240を備える。これにより、サブフィルタ240を計測するだけで、GPF220における粒子状物質の堆積量を推定することができる。したがって、GPF220の差圧、エンジンEの運転条件、または、エンジンEの運転時間(走行距離)によって、GPF220における粒子状物質の堆積量を推定する従来技術と比較して、GPF220における粒子状物質の堆積量を精度よく把握することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態のサブフィルタ240は、GPF220よりも断面積が小さい。これにより、フィルタ部246(サブフィルタ240)の着脱を容易に行うことができる。
【0064】
さらに、本実施形態のサブフィルタ240は、粒子状物質の捕捉率がGPF220と略等しい。これにより、GPF220における粒子状物質の堆積量を高精度に推定することが可能となる。
【0065】
また、本実施形態のサブフィルタ240は、担体のみを備え、触媒機能を有しない。これにより、サブフィルタ240における粒子状物質の捕捉率をGPF220と等しくでき、かつ、サブフィルタ240を低コストで製造することが可能となる。
【0066】
さらに、分岐管230は、排気管160における三元触媒210の上流側に接続される。これにより、サブフィルタ240を通過した排気ガスを、三元触媒210において確実に浄化することができる。
【0067】
また、本実施形態の粒子状物質の重量推定方法は、乾燥工程S120を含む。これにより、計測工程S130において、PM重量を高精度に算出することができる。
【0068】
さらに、本実施形態の粒子状物質の重量推定方法は、判定工程S140を含む。アッシュおよび燃え残った煤等がGPF220に蓄積すると、排気管160におけるGPF220よりも上流側の圧力が増加してしまう。そうすると、排気管160におけるGPF220よりも上流側と、吸気管140との差圧が上昇し、設計値を上回る量のEGRガスがエンジンEに流入してしまう。これにより、エンジンEが失火等を起こすおそれがある。そこで、判定工程S140を遂行することにより、エンジンEが失火等を起こす前に、GPF220を確実に交換することができる。また、不必要にGPF220を交換してしまう事態を回避することが可能となる。
【0069】
[第1の変形例]
図6は、第1の変形例にかかる排気ガス浄化装置300を説明する図である。排気ガス浄化装置300は、三元触媒210と、GPF220と、分岐管330と、サブフィルタ240とを含む。なお、上記排気ガス浄化装置200と等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
第1の変形例において、分岐管330は、排気管160における三元触媒210とGPF220との間から分岐され、分岐箇所の上流側であって三元触媒210の下流側に接続される。
【0071】
これにより、サブフィルタ240を通過した排気ガスを、GPF220において確実に浄化することができる。
【0072】
[第2の変形例]
図7は、第2の変形例にかかる排気ガス浄化装置400を説明する図である。排気ガス浄化装置400は、三元触媒210と、GPF220と、分岐管430と、サブフィルタ440とを含む。なお、上記排気ガス浄化装置200と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
第2の変形例において、分岐管430は、排気管160における三元触媒210とGPF220との間から分岐され、排気管160におけるGPF220の下流側(GPF220とマフラ162との間)に接続される。
【0074】
サブフィルタ440は、サブフィルタ240と同様に、ウォールフロー型の装置で構成されるフィルタ部446を備える。また、フィルタ部446は、GPF220と粒子状物質の捕捉率が等しい。
【0075】
しかし、フィルタ部446は、フィルタ部246とは異なり、担体および触媒成分がフィルタ壁422bにコーティングされている。つまり、サブフィルタ440のフィルタ部446は、触媒機能(炭化水素、一酸化炭素、および、窒素酸化物を除去する機能)を有する。これにより、サブフィルタ440において排気ガスを浄化することができる。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0077】
なお、上記実施形態および変形例において、GPF220が触媒を含む構成を例に挙げて説明したが、GPF220は粒子状物質を捕捉できればよく、触媒を含まずともよい。
【0078】
また、上記実施形態および変形例において、エンジンEとしてガソリンエンジンを例に挙げて説明した。エンジンEは、ディーゼルエンジンであってもよい。この場合、第1フィルタとして、GPF220に代えて、DPF(Diesel Particulate Filter)が排気管160に設けられる。
【0079】
また、上記実施形態および変形例において、フィルタ部246、446が、GPF220と粒子状物質の捕捉率が等しい場合を例に挙げて説明した。しかし、フィルタ部246、446は、GPF220と粒子状物質の捕捉率が異なっていてもよい。この場合、判定工程S140において、PM重量に所定の係数を乗算して閾値と比較したり、PM重量と所定の係数を乗算した閾値とを比較したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、排気ガス浄化装置に利用できる。
【符号の説明】
【0081】
200、300、400 排気ガス浄化装置
210 三元触媒
220 GPF(第1フィルタ)
230、330、430 分岐管
246、446 フィルタ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7