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<図1>
  • 特許-歩行台車 図1
  • 特許-歩行台車 図2
  • 特許-歩行台車 図3
  • 特許-歩行台車 図4
  • 特許-歩行台車 図5
  • 特許-歩行台車 図6
  • 特許-歩行台車 図7
  • 特許-歩行台車 図8
  • 特許-歩行台車 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】歩行台車
(51)【国際特許分類】
   E04D 15/04 20060101AFI20221214BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
E04D15/04 E
E04G21/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018211697
(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公開番号】P2020076281
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000175973
【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】藤丸 晃二
(72)【発明者】
【氏名】深田 伸一
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-059515(JP,A)
【文献】特開昭59-156877(JP,A)
【文献】特開昭63-138055(JP,A)
【文献】特開昭63-181843(JP,A)
【文献】特開昭63-181844(JP,A)
【文献】特開2001-010561(JP,A)
【文献】特開2001-107526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 15/00-15/04
E04G 21/14-21/16
B62D 57/032
B66C 1/28
B25J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向両側で且つ前後方向に沿う案内溝を有し且つ積載物を積載可能とする歩行ベースと、該歩行ベース上に設置される原動機と、下端に水平状の接地軸部が位置され前後方向両側に縦軸部が位置され上端に頂軸部を有すると共に前記歩行ベースの幅方向両側に配置される2つの第1枠状脚と、下端に水平状の接地軸部が位置され前後方向両側に縦軸部が位置され上端に頂軸部を有すると共に前記歩行ベースの幅方向両側に配置され、両該第1枠状脚よりも狭い間隔とした2つの第2枠状脚と、前記第1枠状脚と前記第2枠状脚とのそれぞれの接地と上方に円弧状軌道後の接地とのループ軌跡にしたがって交互に前方移動を繰り返して歩行作動させる第1リンク機構第2リンク機構とを備え、前記第1枠状脚と前記第2枠状脚との何れか一方が接地状態で前記第1リンク機構と前記第2リンク機構とは前記歩行ベースを常時一定の高さに維持させ、前記第1枠状脚と前記第2枠状脚のそれぞれの前記縦軸部の一部は前記案内溝に摺動可能に接触する構成としてなることを特徴とする歩行台車。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行台車において、前記歩行ベースの前記案内溝は前記歩行ベースの幅方向両側に前記第1枠状脚と第2枠状脚が挿入される第1案内溝及び第2案内溝を有してなることを特徴とする歩行台車。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の歩行台車において、前記第1枠状脚と前記第2枠状脚のそれぞれの前記縦軸部の前記案内溝に対する接触面は平坦面としてなることを特徴とする歩行台車。
【請求項4】
請求項1,2又は3の何れか1項に記載の歩行台車において、両前記第1枠状脚同士及び両前記第2枠状脚同士は連結されてなることを特徴とする歩行台車。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4の何れか1項に記載の歩行台車において、前記第1枠状脚は前記 案内溝の幅方向内方側面に接触し、前記第2枠状脚は前記案内溝の幅方向外方側面に接触してなることを特徴とする歩行台車。
【請求項6】
請求項1,2,3,4又は5の何れか1項に記載の歩行台車において、前記歩行ベースには荷台が設けられてなることを特徴とする歩行台車。
【請求項7】
請求項1,2,3,4,5又は6の何れか1項に記載の歩行台車において、前記第1リンク機構及び第2リンク機構は、原動リンクと、伝動リンクと、主中間リンクと、副中間リンクと、主脚リンクと、副脚リンクと、連結リンクとを有し、前記主脚リンクと前記副脚リンクは前記第1枠状脚及び前記第2枠状脚の前記頂軸部に枢支連結され、前記主中間リンクと前記副中間リンクと前記連結リンクによって平行四辺形の4節リンクを構成してなることを特徴とする歩行台車。
【請求項8】
請求項7に記載の歩行台車において、前記原動リンク,前記伝動リンク及び前記主中間リンクは、チェビシェフリンク機構を構成してなることを特徴とする歩行台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山部と谷部とからなる凹凸状の折板タイプの金属屋根の施工現場において、部品,道具等を所定の位置まで、荷台が上下にほとんど振幅することなく、安定した状態で搬送することができる歩行台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の大型面積の折板タイプの屋根板材からなる金属屋根を施工現場では、梁となる構造材上に、屋根板材を設置するための受具が取り付けられ、次いで構造材上に取り付けられた受具の位置まで屋根板材を運搬し、受具に屋根板材を設置するものである。折板タイプの屋根板材には馳締タイプ,嵌合タイプ或いは重合タイプ等種々存在するものであるが、いずれのタイプの折板屋根板材であっても、折板屋根は山部と谷部と交互に連続する凹凸状のものである。
【0003】
そして、屋根施工予定範囲においてある程度、屋根の施工が進むと、屋根板材が施工されていない未施工の領域まで屋根板材を運搬しなければならない。この施工完了領域では凹凸状の面が部品及び道具の搬送路となる。さらに、建築現場において、屋根板材及びその部品を搬送するために、作業員の人力では、到底運べないものも存在する。そのため、このような凹凸の路面に対して、作業員が部品及び道具等を所定の位置まで持ち運ぶための搬送装置が開発されており、これらが開示されたものとして特許文献1及び特許文献2等が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭59-65158号公報
【文献】実開平5-73135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、車輪が備わった台車タイプのもので、車輪は空気タイヤが使用されている。折板屋根の凹凸は高低差が大きく、タイヤでの歩行は、谷部のみを歩行することを除いて、山部を横切るようにして移動することは不可能である。そのために、折板屋根の山部間に足場板等の板材をレールとしての役目を持たせ、これら板材を敷設し、この足場板上に沿って台車を移動させるものである。
【0006】
しかも、一般の足場板は、脱輪のおそれがあり、そのために脱輪防止壁のある専用のレールが使用されることもある。そして、部品や道具を搬送する位置が、これらをストックする位置から遠ざかるにしたがってレール材も増加することになり、そのための作業における段取が必要となる。通常は、施工が進むにつれて、部品や道具の搬送距離も比例して大きくなり、大きな屋根の施工現場ではレール材の個数も多数となり、これらをストックする場所も必要となる。
【0007】
また、特許文献2における搬送施工具として、台車の本体部分となる基台の下面の3乃至5列のローラ列が設けられたものであり、それぞれの列のローラ配列が互い違いとし、個々の列におけるロール間に、他の列のロールが位置するようにして、ロール配列を密状態としたものである。これによって折板屋根の山部の頂部上を基台が移動できるようにしたものである。
【0008】
この種の搬送装置では、重合タイプの折板屋根では、移動が可能であるが、馳締タイプのように山部の頂部に馳締のための突起条が形成されるものでは、歩行時に大きなガタツキが生じることになり、安定した歩行ができない。特に長尺な屋根板材を複数の搬送装置によって移動するものであるが、各搬送装置に上下動が起こり、また常に同等高さの上下動とはならないので、搬送される屋根板材も安定した状態になり難いものである。さらに、特許文献1及び特許文献2は、その歩行において人力にたよるものであり、自動的な歩行には不向である。
【0009】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、且つ屋根等の施工現場で部品,道具,装置等を所定の位置まで簡易且つ迅速に搬送し、しかも載置された積載物を振動を与えることなく極めて安定した状態で搬送できる歩行台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、幅方向両側で且つ前後方向に沿う案内溝を有し且つ積載物を積載可能とする歩行ベースと、該歩行ベース上に設置される原動機と、下端に水平状の接地軸部が位置され前後方向両側に縦軸部が位置され上端に頂軸部を有すると共に前記歩行ベースの幅方向両側に配置される2つの第1枠状脚と、下端に水平状の接地軸部が位置され前後方向両側に縦軸部が位置され上端に頂軸部を有すると共に前記歩行ベースの幅方向両側に配置され、両該第1枠状脚よりも狭い間隔とした2つの第2枠状脚と、前記第1枠状脚と前記第2枠状脚とのそれぞれの接地と上方に円弧状軌道後の接地とのループ軌跡にしたがって交互に前方移動を繰り返して歩行作動させる第1リンク機構第2リンク機構とを備え、前記第1枠状脚と前記第2枠状脚との何れか一方が接地状態で前記第1リンク機構と前記第2リンク機構とは前記歩行ベースを常時一定の高さに維持させ、前記第1枠状脚と前記第2枠状脚のそれぞれの前記縦軸部の一部は前記案内溝に摺動可能に接触する構成としてなる歩行台車としたことにより、上記課題を解決した。
【0011】
請求項2の発明を、請求項1に記載の歩行台車において、前記歩行ベースの前記案内溝は前記歩行ベースの幅方向両側に前記第1枠状脚と第2枠状脚が挿入される第1案内溝及び第2案内溝を有してなる歩行台車としたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2に記載の歩行台車において、前記第1枠状脚と前記第2枠状脚のそれぞれの前記縦軸部の前記案内溝に対する接触面は平坦面としてなる歩行台車としたことにより、上記課題を解決した。
【0012】
請求項4の発明を、請求項1,2又は3の何れか1項に記載の歩行台車において、両前
記第1枠状脚2同士及び両前記第2枠状脚3同士は連結されてなる歩行台車としたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項1,2,3又は4の何れか1項に記載の歩行台車において、前記第1枠状脚は前記案内溝の幅方向内方側面に接触し、前記第2枠状脚は前記案内溝の幅方向外方側面に接触してなる歩行台車としたことにより、上記課題を解決した。請求項6の発明を、請求項1,2,3,4又は5の何れか1項に記載の
歩行台車において、前記歩行ベースには荷台が設けられてなる歩行台車としたことにより、上記課題を解決した。
【0013】
請求項7の発明を、請求項1,2,3,4,5又は6の何れか1項に記載の歩行台車に
おいて、前記第1リンク機構及び第2リンク機構は、原動リンクと、伝動リンクと、主中間リンクと、副中間リンクと、主脚リンクと、副脚リンクと、連結リンクとを有し、前記主脚リンクと前記副脚リンクは前記第1枠状脚及び前記第2枠状脚の前記頂軸部に枢支連結され、前記主中間リンクと前記副中間リンクと前記連結リンクによって平行四辺形の4節リンクを構成してなる歩行台車としたことにより、上記課題を解決した。請求項8の発明を、請求項7に記載の歩行台車において、前記原動リンク,前記伝動リンク及び前記主中間リンクは、チェビシェフリンク機構を構成してなる歩行台車としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明では、本発明の歩行台車は、屋根施工現場において屋根施工完了箇所の折板屋根板上を極めて安定した状態で歩行することができ、積載物を積載可能とした歩行ベースは、常時略同一の高さを維持し、上下方向にほとんどがたつくことがなく、屋根板材等の資材,道具等の積載物を搬送することができる。また、走行ベースを常時略同一高さで移動できることにより、本発明の歩行ベースを複数台を列状に備え長尺の屋根板材を搬送するときに、極めて安定した状態で搬送することができる。
【0015】
また、歩行ベースの幅方向における2つの第1枠状脚同士及び2つの第2枠状脚同士は、その間隔を略一定に維持することができ、安定した歩行にすることができる。特に、前記第1枠状脚と前記第2枠状脚のそれぞれの前記縦軸部の一部は、前記案内溝に摺動可能に接触する構成とすることで、歩行ベースの案内溝が第1枠状脚及び第2枠状脚の歩行時の動作を歩行ベースの幅方向に振れることを防止し、或いは最小限に抑えることができることにより、第1枠状脚と第2枠状脚の歩行動作を極めて安定したものにできる。
【0016】
請求項2の発明では、歩行ベースの案内溝は歩行ベースの幅方向両側に第1枠状脚と第2枠状脚が挿入される第1案内溝及び第2案内溝を有するようにしたことで、第1枠状脚
と第2枠状脚とが歩行動作を行うときに、接触することなく、干渉することを防止でき歩行性能を向上させることができる。
【0017】
請求項3の発明では、第1枠状脚と第2枠状脚のそれぞれの縦軸部の案内溝に対する接触面は平坦面とすることにより、より一層良好な動作を実現できる。請求項4の発明では、第1枠状脚同士及び両前記第2枠状脚同士は連結されたことにより、より一層良好な動作を実現できる。請求項5の発明では、第1枠状脚は案内溝の幅方向内方側面に接触し、前記第2枠状脚は前記案内溝の幅方向外方側面に接触してなる構成により、歩行ベースの歩行安定性を向上できる。請求項6の発明では、前記歩行ベースには荷台が設けられてなる構成としたことにより、積載物の積載を行いやすくすることができる。請求項7の発明及び請求項8では、歩行台車の歩行性の向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)は本発明の平面図、(B)は(A)のY1-Y1矢視断面図、(C)は(A)の第1枠状脚を示すX1-X1矢視断面図、(D)は(A)の第2枠状脚を示すX2-X2矢視断面図である。
図2】(A)は歩行ベースの略示斜視図、(B)は第1枠状脚の略示斜視図、(C)は第2枠状脚の略示斜視図である。
図3】(A)は歩行ベースと第1枠状脚と第2枠状脚との要部拡大平面図、(B)は歩行ベースと第1枠状脚と第2枠状脚との要部拡大縦断正面図、(C)は(B)の(α)部拡大図、(D)は(B)の(α)部の別の実施形態の拡大図である。
図4】(A)は本発明の別の実施形態の略示平面図、(B)は(A)のY2-Y2矢視断面図である。
図5】本発明の別の実施形態の歩行ベースにおける側面図である。
図6】(A)乃至(E)は本発明における歩行台車の歩行状態を示す行程図。
図7】本発明の歩行台車にて屋根の施工を行う状態を示す略示図である。
図8】(A)乃至(C)は本発明の歩行台車によって屋根板材を搬送する行程を示す略示図である。
図9】(D)乃至(F)本発明の歩行台車によって屋根板材を搬送する行程を示す略示図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。本発明の説明において、歩行台車の方向を示す文言として前後方向と、幅方向とが存在する。前後方向とは、歩行台車が歩行動作により移動可能な方向のことであり、幅方向は前述した前後方向に平面上で直交する方向のことをいう。前後方向及び幅方向は、図中に記載されている。
【0020】
本発明の歩行台車は、主に歩行ベース1と、第1枠状脚2と、第2枠状脚3とを備えたものである(図1参照)。歩行ベース1上には、原動機7が設置されている。歩行ベース1の幅方向の一方側には、第1枠状脚2及び第2枠状脚3とが、それぞれ配置されており、両前記第1枠状脚2と前記第2枠状脚3が一組となって、歩行ベース1の幅方向両側に配置されている。
【0021】
歩行ベース1は、前方側に沿って長方形状で且つ平坦状な構造物である。歩行ベース1の構造の一例としては、前後方向両側に縦枠軸13,13が設けられ、幅方向両側に複数の横枠軸14,14,…が設けられており、これらによって長方形のベースが構成される。そして、後述する案内溝1Aは、隣接する横枠軸14,14間に構成されるものである。また、歩行ベース1の幅方向中間箇所から前後方向に延在するベース板部15が設けられており、該ベース板部15の上面に原動機7が設置されている〔図1(A),(B),図2(A)等参照〕。
【0022】
歩行ベース1の幅方向両側のそれぞれの第1枠状脚2と第2枠状脚3とは、原動機7によって所定の作動軌跡にしたがって、交互の歩行運動を行うことができるように構成されている(図6参照)。原動機7の実施形態としては、電動モータ或いは内燃機関(エンジン)等の動力部71と変速機72と駆動軸73から構成され、動力部71により変速機72が駆動され、変速機72に備えられた駆動軸73の回転により第1枠状脚2及び第2枠状脚3を作動させるものである(図1参照)。原動機7の電源は、歩行ベース1に載置されたり、歩行ベース1の外部から電線を用いて稼動させてもよい。
【0023】
また、歩行ベース1には、荷台16が設置される。該荷台16は、後述する屋根板材91或いは道具,発電装置等の種々のものが載置される。荷台16の積載物が載置される上面は、第1枠状脚2及び第2枠状脚3の歩行状態における最上位置よりもさらに上方に位置する高さとしている。また荷台16は四本脚を備えたテーブル状としたもので、歩行ベース1上の原動機7の上に設置することが好ましい。これによって、原動機7及びその他機器を外部から保護することもできるという利点を有する。
【0024】
第1枠状脚2及び第2枠状脚3は、略同一構成を有している。第1枠状脚2は、接地軸部21と,前後方向両側の縦軸部22,22と,頂軸部23によって略方形状に構成されている〔図1(C),図2参照〕。そして、接地軸部21上に2本の縦軸部22,22が所定の間隔をおいて配置固着され、両縦軸部22,22の頂部に頂軸部23が配置固着されている。
【0025】
同様に、第2枠状脚3は、接地軸部31と,前後方向両側の縦軸部32,32と,頂軸部33によって略方形状に構成されている〔図1(D),図2参照〕。そして、接地軸部31上に2本の縦軸部32,32が所定の間隔をおいて配置固着され、両縦軸部32,32の頂部に頂軸部33が配置固着されている。そして、歩行ベース1の幅方向両側で第1枠状脚2,2同士が二股状に配置され、同様に歩行ベース1の幅方向両側で第2枠状脚3,3同士が二股状に配置される〔図1(A),(B)参照〕。
【0026】
歩行ベース1の幅方向において、2つの第1枠状脚2,2同士の間隔は、2つの第2枠状脚3,3同士の間隔よりも大きくなるように構成されており、歩行ベース1の幅方向に対して2つの第1枠状脚2,2の内方に2つの第2枠状脚3,3が入り込むように構成されている〔図1(A),(B),図3(B)参照〕。2つの第1枠状脚2,2は、頂軸部23同士に連結部材24が設けられ、2つの第1枠状脚2,2同士が連結されている。該連結部材24は、略角門形状に形成されたものである〔図1(B),図2(B)参照〕。また、2つの第2枠状脚3,3は、接地軸部31,31同士に略板状の連結部材34が設けられ、2つの第2枠状脚3,3同士が連結されている〔図1(B),図2(B)参照〕。
【0027】
歩行ベース1,第1枠状脚2及第2枠状脚3を構成する接地軸部21,31、縦軸部22,32、頂軸部23,33は、それぞれが断面略方形状の角軸にて形成されている(図2参照)。しかし、これに限定されることなく、種々の断面円形状等の鋼管或いは鋼材を使用してもよい。また、歩行ベース1は、前述したような縦枠軸13及び横枠軸14によって構成されるものではなく、単にフラットな板状部材(例えば木製板等)に後述する案内溝1A,1Aを形成したものでもよい。
【0028】
第1枠状脚2は、第1リンク機構4と前記原動機7とによって歩行動作を行い、第2枠状脚3は、第2リンク機構5と前記原動機7とによって歩行動作を行う。第1リンク機構4は、原動リンク41と、伝動リンク42と、主中間リンク43と、副中間リンク44と、主脚リンク45と、副脚リンク46と連結リンク47とを有している〔図1(C),図2(B)参照〕。原動リンク41は、その長手方向一端が前記原動機7の駆動軸73に直結され、その一端を回転中心として回転する〔図1(C)参照〕。
【0029】
そして、主脚リンク45は、伝動リンク42に対して長手方向に一体的に形成されたものである。主中間リンク43と副中間リンク44とは、歩行ベース1に枢支連結されている。主脚リンク45及び副脚リンク46は、第1枠状脚2の頂軸部23に枢支連結されている〔図1(C)参照〕。
【0030】
第1リンク機構4の動作は、まず原動機7の駆動軸73に直結された原動リンク41が原動機7の始動によって回動すると主脚リンク45は、原動リンク41と主中間リンク43との合成された軌跡により所定の軌跡に沿う揺動動作を行う。また、副脚リンク46は、副中間リンク44と連結リンク47とによって、前記主脚リンク45と同期的に揺動する。これによって、第1枠状脚2が所定の歩行動作を行う(図6図8図9等参照)。
【0031】
第2リンク機構5は、第1リンク機構4の構成と略同様であり、原動リンク51と、伝動リンク52と、主中間リンク53と、副中間リンク54と、主脚リンク55と、副脚リンク56と連結リンク57とを有している〔図1(D)参照〕。主中間リンク53と副中間リンク54とは、歩行ベース1に枢支連結されている。主脚リンク55及び副脚リンク56は、第2枠状脚3の頂軸部33に枢支連結されている〔図1(D)参照〕。原動リンク51は、その長手方向一端が前記原動機7の駆動軸73に直結され、その一端を回転中心として回転する〔図1(D)参照〕。そして、主脚リンク55は伝動リンク52に対して長手方向に一体的に形成されたものである。
【0032】
第2リンク機構5の動作は、まず原動機7によって原動リンク51が回動すると主脚リンク55は、原動リンク51と主中間リンク53との合成された軌跡により所定の軌跡に沿う揺動動作を行う。また、副脚リンク56は副中間リンク54と連結リンク57とによって、前記主脚リンク55と同期的に揺動する。これによって、第2枠状脚3が所定の歩行動作を行う(図6図8図9等参照)。
【0033】
第1リンク機構4の原動リンク41と、第2リンク機構5の原動リンク51は、共に同一の原動機7の駆動軸73に相互に位相がずれて直結されたものである。そして、原動リンク41と原動リンク51は、共に位相がずれた状態で回動し、これによって、第1枠状脚2と第1枠状脚2とは、あたかも人が歩行するようにして、歩行動作を行うものである(図6図8図9参照)。
【0034】
第1枠状脚2と第2枠状脚3とは、第1リンク機構4及び第2リンク機構5によって、交互に歩行動作を行うものである。そして、第1枠状脚2と第2枠状脚3とによる歩行動作によって、歩行ベース1は、歩行方向に沿って、略一定の高さを維持しつつ、移動することができる。
【0035】
このように略一定の高さを維持して移動するために、つまり、僅かな上下動にて移動できるために、第1リンク機構4及び第2リンク機構5には、具体的に、チェビシェフリンク機構が組み込まれていることが好ましい。具体的には、第1リンク機構4では、原動リンク41,伝動リンク42及び主中間リンク43がチェビシェフリンク機構を構成しており、主脚リンク45と第1枠状脚2との枢支連結部分は略円弧状と水平状とからなるループ軌跡に沿って動作する。
【0036】
また、第2リンク機構5では、原動リンク51,伝動リンク52及び主中間リンク53がチェビシェフリンク機構を構成しており、主脚リンク55と第2枠状脚3との枢支連結部分は略円弧状と水平状とからなるループ軌跡に沿って動作する。前記チェビシェフリンク機構はホーキンスリンク機構と称することもある。
【0037】
この動作は、第1枠状脚2を歩行動作させるものである。第2枠状脚3も第2リンク機構5によって第1枠状脚2と同等の動作を行うことができる(図6参照)。第1リンク機構4と第2リンク機構5においてそれぞれの一部にチェビシェフリンク機構或いはホーキンスリンク機構が含まれることによって、本発明の歩行台車が前進或いは後進歩行するときには、歩行ベース1は第1枠状脚2の接地軸部21及び第2枠状脚3の接地軸部31が歩行時に接地する歩行面(接地面)からの高さ方向の寸法Haは、常時一定に維持され、歩行時における上下方向の振動をほとんど防止することができる(図8図9参照)。
【0038】
ここで、歩行面(接地面)とは屋根施工現場における屋根施工完了領域における屋根頂部の高さ位置のことである。さらに、歩行ベース1に荷台16が設けられたときには、該荷台16の高さ方向の寸法Hbも歩行ベース1と共に常時一定に維持され、荷台16に載置された屋根板材91等の積載物を安定した状態で搬送できる(図8図9参照)。つまり、前述したように、歩行ベース1は歩行面(接地面)からの高さ方向の寸法Haは、常時一定に維持され、不変(略不変も含まれる)であり、したがって、荷台16の高さ方向の寸法Hbも不変(略不変も含まれる)である。
【0039】
ここで、歩行ベース1における歩行面(接地面)からの高さ方向の寸法Ha及び荷台16の高さ方向の寸法Hbが不変(略不変も含まれる)であるということは、第1リンク機構4第2リンク機構5とによる歩行状態で歩行ベース1と荷台16とを常時一定の高さに維持させることと同一の趣旨(内容)である。
【0040】
また、前述したように、荷台16の積載物が載置される上面の位置は、第1枠状脚2及び第2枠状脚3の歩行状態において、それぞれが最上位置に到達したときの位置よりも、さらに上方に位置する高さとしている〔図1(B),図3(B)参照〕。これによって、荷台16に載置された積載物が、歩行ベース1の幅方向端部から突出した場合であっても、第1枠状脚2及び第2枠状脚3と接触しないようにすることができる。
【0041】
特に、屋根板材91は十数メートルから数十メートルの長さであり、複数の歩行台車で屋根板材91を橋渡し状態で搬送するため、本発明の歩行台車の歩行ベース1及び荷台16のように歩行時において高さ方向の寸法が一定に維持されることにより、長尺の屋根板材91を極めて安定した状態で搬送できると共に、歩行時に屋根板材91が第1枠状脚2と第2枠状脚3に接触することを防止できる(図7参照)。
【0042】
歩行ベース1には、幅方向両側で且つ長手方向に沿って案内溝1A,1Aが形成されている〔図1(A),図2(A)参照〕。該案内溝1Aは、前述したように、歩行ベース1を構成する複数の横枠軸14,14,…において隣接する横枠軸14,14間の空隙の部位となる〔図1(A),(B),図2(A),図3等参照〕。
【0043】
2つの前記第1枠状脚2,2及び2つの前記第2枠状脚3,3が歩行ベース1の案内溝1A,1Aに挿入されている〔図1(A),(B),図2(A),図3等参照〕。それぞれの案内溝1Aは、2つの溝からなり、第1案内溝11と第2案内溝12とを有している。第1案内溝11は、第2案内溝12よりも歩行ベース1の幅方向外方側に位置しており、第1案内溝11に第1枠状脚2が挿入し、第2案内溝12に第2枠状脚3が挿入する〔図1(A),(B),図3等参照〕。
【0044】
そして、歩行ベース1の幅方向両側の第1案内溝11,11には、両第1枠状脚2,2の両縦軸部22,22が接触する。この接触状態には、略近接状態も含まれる。さらに具体的には、第1案内溝11の内周溝壁面11aの幅方向で歩行ベース1の外方側となる面に第1枠状脚2の縦軸部22が接触する。つまり、両第1枠状脚2,2は、両第1案内溝11,11の幅方向外方側の内周溝壁面11a,11aによって挟持状態に保持され、両第1枠状脚2,2は等間隔を維持しながら安定した歩行動作を行うことができる〔図3(A),(B),(C)参照〕。
【0045】
同様に、歩行ベース1の幅方向両側の第2案内溝12,12には、第2枠状脚3の両縦軸部32,32が接触する。この接触状態についても、略近接状態も含まれる。さらに具体的には、第2案内溝12の内周溝壁面12aの幅方向で歩行ベース1の内方側となる面に第2枠状脚3の縦軸部32が接触する。つまり、両第2枠状脚3,3は、両第2案内溝12,12における幅方向内方側の内周溝壁面12a,12aによって、両第2枠状脚3,3は等間隔を維持しながら安定した歩行動作を行うことができる〔図3(A),(B),(C)参照〕。
【0046】
つまり、第1枠状脚2,第2枠状脚3のそれぞれの縦軸部22,32の一部は、案内溝1Aの内周面に摺動可能に接触する構成とすることにより、歩行ベース1の案内溝1Aが第1枠状脚2及び第2枠状脚3の歩行時の動作を歩行ベース1の幅方向に振れることを防止したり或いは最小限に抑えることができる。これにより、第1枠状脚2と第2枠状脚3の歩行動作は振れの少ない極めて安定したものにできる。
【0047】
また、案内溝1Aは、第1案内溝11と第2案内溝12とに分けられず、一本の溝とすることもある〔図4(A),(B)参照〕。また、前記第1枠状脚2の縦軸部22,22と、前記第2枠状脚3の縦軸部32,32には、円滑性のある摺動部材8が設けられることもある〔図4(A),(B)参照〕。
【0048】
本発明における歩行台車は、特に屋根施工における建築現場においての使用に極めて好適である(図7図8図9参照)。屋根施工現場において、屋根9は、馳締方式或いはキャップ材を被せる嵌合方式等の折板タイプの金属屋根であり、屋根板材91から構成される。構造材92には、屋根の受具93が装着されている。
【0049】
本発明の歩行台車は、屋根施工現場で、屋根施工が完了した領域を歩行することに好適なものであり、現場において施工するための屋根板材91をストックする場所から、屋根板材91を取り付ける位置まで屋根板材91を搬送するものである。この搬送作業において、本発明の歩行台車を搬送する方向に対して直交する方向に複数台を列状に配置し、長尺な屋根板材91を複数の歩行台車の荷台16上に橋渡し状に載置して目的の位置まで搬送する(図6図7参照)。
【符号の説明】
【0050】
1…歩行ベース、1A…案内溝、11…第1案内溝、12…第2案内溝、
16…荷台、2…第1枠状脚、3…第2枠状脚、21,31…接地軸部、
22,32…縦軸部、23,33…頂軸部、4…第1リンク機構
5…第2リンク機構、41,51…原動リンク、42,52…伝動リンク、
43,53…主中間リンク、44,54…副中間リンク、
45,55…主脚リンク、46,56…副脚リンク、47,57…連結リンク、
7…原動機。
図1
図2
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図9