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特許7193987井戸構造、地下水浄化システムおよび地下水浄化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】井戸構造、地下水浄化システムおよび地下水浄化方法
(51)【国際特許分類】
   E03B 3/12 20060101AFI20221214BHJP
   C02F 3/00 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
E03B3/12
C02F3/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018212225
(22)【出願日】2018-11-12
(65)【公開番号】P2020079488
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】篠原 智志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭二郎
(72)【発明者】
【氏名】河合 達司
(72)【発明者】
【氏名】酒井 学
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特表平05-508582(JP,A)
【文献】特開2010-138641(JP,A)
【文献】特開昭61-282513(JP,A)
【文献】特開昭60-184108(JP,A)
【文献】特開2012-125713(JP,A)
【文献】米国特許第05653288(US,A)
【文献】特開2005-087809(JP,A)
【文献】特開2005-046807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 3/12
C02F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内に設置された井戸を深度方向に2つの区間に分ける遮水材と、
前記井戸内に配置され、前記遮水材より上方にストレーナが設けられて下端部が前記遮水材の上面に位置する外管と、前記外管内に配置され、天端が前記外管の天端より低く前記遮水材より下方にストレーナが設けられた内管とを有し、前記外管の天端および前記内管の天端が開放された二重管と、
前記二重管の内部または外部に配置され、前記遮水材より上方の区間と下方の区間との間で水を移動させるポンプと、
を具備し、
前記内管が前記遮水材を貫通し、前記外管と前記内管との間の空間が前記遮水材の少なくとも一部によって塞がれることを特徴とする井戸構造。
【請求項2】
前記ポンプが、
前記上方の区間において前記外管の内部に配置された第1のポンプと、
前記下方の区間において前記内管の内部に配置された第2のポンプと、
からなり、
前記第1のポンプと前記第2のポンプのいずれかを運転することによって、前記上方の区間と前記下方の区間との間での水の移動方向を切り替えることを特徴とする請求項1記載の井戸構造。
【請求項3】
前記内管の天端より低い位置に、前記外管の内部と前記内管の内部とを連通させるための連通部が設けられ、前記第1のポンプまたは前記第2のポンプで揚水した水を移動させるための送水管が前記連通部に配置されたことを特徴とする請求項記載の井戸構造。
【請求項4】
前記ポンプが、前記二重管の天端より上方に配置され、
前記ポンプの運転方向を替えることによって、前記上方の区間と前記下方の区間との間での水の移動方向を切り替えることを特徴とする請求項1記載の井戸構造。
【請求項5】
地上に設置された薬剤注入ポンプをさらに具備し、
前記薬剤注入ポンプを用いて前記二重管内に薬剤が注入されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の井戸構造。
【請求項6】
地盤内に設置された井戸を深度方向に2つの区間に分ける遮水材と、
前記井戸内に配置され、前記遮水材より上方にストレーナが設けられて下端部が前記遮水材の上面に位置する外管と、前記外管内に配置され、天端が前記外管の天端より低く前記遮水材より下方にストレーナが設けられ下端部が前記井戸の底部に位置する内管とを有し、前記外管の天端および前記内管の天端が開放された二重管と、
前記二重管の内部または外部に配置され、前記遮水材より上方の区間と下方の区間との間で水を移動させるポンプと、
を具備し、
前記内管が前記遮水材を貫通し、前記外管と前記内管との間の空間が前記遮水材の少なくとも一部によって塞がれた井戸構造が前記地盤の複数個所に設置され、
複数の前記井戸構造の前記二重管内に薬剤を注入する薬剤注入ポンプが地上に設置され、
複数の前記井戸構造のポンプが、複数の前記井戸構造のうち一の井戸構造での水の移動方向と前記一の井戸構造に隣接する他の井戸構造での水の移動方向とが上下逆方向となるように制御されることを特徴とする地下水浄化システム。
【請求項7】
地盤内に設置された井戸を深度方向に2つの区間に分ける遮水材と、
前記井戸内に配置され、前記遮水材より上方にストレーナが設けられて下端部が前記遮水材の上面に位置する外管と、前記外管内に配置され、天端が前記外管の天端より低く前記遮水材より下方にストレーナが設けられ下端部が前記井戸の底部に位置する内管とを有し、前記外管の天端および前記内管の天端が開放された二重管と、
前記二重管の内部または外部に配置され、前記遮水材より上方の区間と下方の区間との間で水を移動させるポンプと、
を具備し、
前記内管が前記遮水材を貫通し、前記外管と前記内管との間の空間が前記遮水材の少なくとも一部によって塞がれた井戸構造を用い、
複数の前記井戸構造を前記地盤に設置する工程aと、
薬剤注入ポンプを地上に設置する工程bと、
前記薬剤注入ポンプを用いて複数の前記井戸構造の前記二重管内に薬剤を注入しつつ、複数の前記井戸構造のポンプを、複数の前記井戸構造のうち一の井戸構造での水の移動方向と前記一の井戸構造に隣接する他の井戸構造での水の移動方向とが上下逆方向となるように制御する工程cと、
を具備することを特徴とする地下水浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸構造、地下水浄化システムおよび地下水浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、汚染された地下水を浄化する方法として、揚水井戸から地下水を汲み上げて地上の設備で浄化し、注水井戸から地下に戻すものが知られている。
【0003】
また、遮水材で深さ方向に上下に区分された井戸を地盤に複数設置し、各井戸に薬剤を注入するとともに、一の井戸では上部の地下水を下部に送水し、一の井戸に隣接する他の井戸では下部の地下水を上部に送水することによって、隣接する井戸同士の間に循環流を生じさせて地盤内に薬剤を均質に浸透させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5711519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の浄化方法では、井戸内を遮水材で仕切ることで井戸の下部が閉鎖領域となる。そのため、井戸の上部の地下水を下部に送水した時に閉鎖領域において水圧が上昇し、井戸構造の損壊や地下水の噴出、有害物質を含む地下水の漏洩などの危険性が増す可能性があった。
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、井戸内での水圧の上昇を防ぎ、地下水を安全かつ迅速に浄化できる井戸構造、地下水浄化システムおよび地下水浄化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために第1の発明は、地盤内に設置された井戸を深度方向に2つの区間に分ける遮水材と、前記井戸内に配置され、前記遮水材より上方にストレーナが設けられて下端部が前記遮水材の上面に位置する外管と、前記外管内に配置され、天端が前記外管の天端より低く前記遮水材より下方にストレーナが設けられた内管とを有し、前記外管の天端および前記内管の天端が開放された二重管と、前記二重管の内部または外部に配置され、前記遮水材より上方の区間と下方の区間との間で水を移動させるポンプと、を具備し、前記内管が前記遮水材を貫通し、前記外管と前記内管との間の空間が前記遮水材の少なくとも一部によって塞がれることを特徴とする井戸構造である。
【0008】
1の発明では、井戸内に設けられる二重管の外管の天端および内管の天端が開放され、井戸を深度方向に2つの区間に分ける遮水材を内管が貫通するので、遮水材の下方の区間が閉鎖領域とならない。そのため、ポンプを用いて上方の区間から下方の区間へ水を移動させる際に、井戸内での水圧の上昇を防ぐことができる。また、内管の天端が外管の天端より低いので、ポンプを用いて内管と外管との間で水を移動させる際に、移動先の管内の水位が上昇しても地上に漏水しない。さらに、遮水材を内管のストレーナより上部且つ外管のストレーナより下部に配置し、外管と内管との間の空間を遮水材の一部によって塞ぐことで、井戸の上方の区間と下方の区間との間で、ポンプからの送水以外の地下水の移動を遮断することができる。
【0009】
前記ポンプは、例えば、前記上方の区間において前記外管の内部に配置された第1のポンプと、前記下方の区間において前記内管の内部に配置された第2のポンプと、からなり、前記第1のポンプと前記第2のポンプのいずれかを運転することによって、前記上方の区間と前記下方の区間との間での水の移動方向を切り替える。
これにより、同一の井戸構造において二重管内での水の移動方向を容易に切り替えることが可能になる。
【0010】
ポンプが上記の構成のとき、前記内管の天端より低い位置に、前記外管の内部と前記内管の内部とを連通させるための連通部が設けられ、前記第1のポンプまたは前記第2のポンプで揚水した水を移動させるための送水管が前記連通部に配置されてもよい。
これにより、送水管が内管の天端を跨いで配置される場合と比べてポンプの揚程が小さくなる。そのため、能力の小さいポンプを用いることができ、コストを抑えることができる。
【0011】
前記ポンプは、前記二重管の天端より上方に配置され、前記ポンプの運転方向を替えることによって、前記上方の区間と前記下方の区間との間での水の移動方向を切り替えてもよい。
これにより、同一の井戸構造において二重管内での水の移動方向を容易に切り替えることが可能になる。また、ポンプが二重管の内部に配置される場合と比べて井戸の径を小さくすることができ、施工コストを低減できる。
【0012】
地上に設置された薬剤注入ポンプをさらに具備し、前記薬剤注入ポンプを用いて前記二重管内に薬剤が注入されてもよい。
これにより、井戸構造内を移動する水中に薬剤を拡散させることができる。
【0013】
の発明は、地盤内に設置された井戸を深度方向に2つの区間に分ける遮水材と、前記井戸内に配置され、前記遮水材より上方にストレーナが設けられて下端部が前記遮水材の上面に位置する外管と、前記外管内に配置され、天端が前記外管の天端より低く前記遮水材より下方にストレーナが設けられ下端部が前記井戸の底部に位置する内管とを有し、前記外管の天端および前記内管の天端が開放された二重管と、前記二重管の内部または外部に配置され、前記遮水材より上方の区間と下方の区間との間で水を移動させるポンプと、を具備し、前記内管が前記遮水材を貫通し、前記外管と前記内管との間の空間が前記遮水材の少なくとも一部によって塞がれた井戸構造が前記地盤の複数個所に設置され、複数の前記井戸構造の前記二重管内に薬剤を注入する薬剤注入ポンプが地上に設置され、複数の前記井戸構造のポンプが、複数の前記井戸構造のうち一の井戸構造での水の移動方向と前記一の井戸構造に隣接する他の井戸構造での水の移動方向とが上下逆方向となるように制御されることを特徴とする地下水浄化システムである。
【0014】
の発明では、第1の発明の井戸構造が地盤の複数個所に設置され、複数の井戸構造のうち一の井戸構造での水の移動方向と一の井戸構造に隣接する他の井戸構造での水の移動方向とが上下逆方向となるように制御されることにより、隣接する井戸同士の間に地下水の流れと略垂直となる循環流を生じさせることができる。また、薬剤注入ポンプから井戸構造の二重管内に薬剤が注入されるので、循環流によって薬剤を地盤内に拡散させることができる。
【0015】
の発明は、地盤内に設置された井戸を深度方向に2つの区間に分ける遮水材と、前記井戸内に配置され、前記遮水材より上方にストレーナが設けられて下端部が前記遮水材の上面に位置する外管と、前記外管内に配置され、天端が前記外管の天端より低く前記遮水材より下方にストレーナが設けられ下端部が前記井戸の底部に位置する内管とを有し、前記外管の天端および前記内管の天端が開放された二重管と、前記二重管の内部または外部に配置され、前記遮水材より上方の区間と下方の区間との間で水を移動させるポンプと、を具備し、前記内管が前記遮水材を貫通し、前記外管と前記内管との間の空間が前記遮水材の少なくとも一部によって塞がれた井戸構造を用い、複数の前記井戸構造を前記地盤に設置する工程aと、薬剤注入ポンプを地上に設置する工程bと、前記薬剤注入ポンプを用いて複数の前記井戸構造の前記二重管内に薬剤を注入しつつ、複数の前記井戸構造のポンプを、複数の前記井戸構造のうち一の井戸構造での水の移動方向と前記一の井戸構造に隣接する他の井戸構造での水の移動方向とが上下逆方向となるように制御する工程cと、を具備することを特徴とする地下水浄化方法である。
【0016】
の発明では、第1の発明の井戸構造を地盤の複数個所に設置し、複数の井戸構造のうち一の井戸構造での水の移動方向と一の井戸構造に隣接する他の井戸構造での水の移動方向とが上下逆方向となるように制御することにより、隣接する井戸同士の間に地下水の流れと略垂直となる循環流を生じさせることができる。また、薬剤注入ポンプで井戸構造の二重管内に薬剤を注入するので、循環流によって薬剤を地盤内に拡散させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、井戸内での水圧の上昇を防ぎ、地下水を安全かつ迅速に浄化できる井戸構造、地下水浄化システムおよび地下水浄化方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】井戸構造2を示す図。
図2】ポンプ運転時の井戸構造2周辺の水の移動状況を示す図。
図3】地下水浄化システム41を示す図。
図4】地下水浄化システム41aを示す図。
図5】地下水浄化システム41bを示す図。
図6】井戸構造2cを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の第1の実施形態を詳細に説明する。
【0020】
(1.井戸構造2)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る井戸構造2を示す図である。図1は、地盤1の鉛直方向の断面を示す。図1に示すように、井戸構造2は、井戸3、二重管5、遮水材23、第1のポンプ31-1、第2のポンプ31-2、薬剤注入ポンプ37等で構成される。
【0021】
井戸3は、地盤1に鉛直方向に掘削される。遮水材23は、井戸3を深度方向に2つの区間25-1、区間25-2に分ける。二重管5は、井戸3内に配置される外管7と、外管7内に配置される内管15とからなる。
【0022】
外管7は、下端部が遮水材23の上面に位置する。内管15は、遮水材23を貫通して配置され、下端部が井戸3の底部に位置する。すなわち、遮水材23は、内管15の外周面と井戸3の孔壁との間に設けられ、遮水材23の一部が外管7と内管15との間の空間8の下端部を塞ぐ。外管7の天端9は地盤1の表面付近に位置する。内管15の天端17は外管7の天端9より低い位置にある。外管7の天端9および内管15の天端17は開放されている。
【0023】
外管7は、遮水材23より上方の部分がストレーナ管13である。ストレーナ管13には複数の孔11が設けられる。内管15は、遮水材23より下方の部分がストレーナ管21である。ストレーナ管21には複数の孔19が設けられる。外管7のストレーナ管13より上方の部分の外周面と井戸3の孔壁との間には、遮水材24が設けられる。遮水材24は、地表からストレーナ管13付近への雨水等の流入を防止する。
【0024】
遮水材23の上方の区間25-1では、外管7の外周面と井戸3の孔壁との間に珪砂27が充填される。遮水材23の下方の区間25-2では、内管15の外周面と井戸3の孔壁との間に珪砂29が充填される。
【0025】
ポンプ31-1は、遮水材23の上方の区間25-1において外管7と内管15との間の空間8の下部に配置される。空間8の下部には水圧計33-1も配置される。ポンプ31-2は、遮水材23の下方の区間25-2において内管15内の空間16の下部に配置される。空間16の下部には水圧計33-2も配置される。ポンプ31-1、ポンプ31-2は、内管15の天端17を跨いで配置された送水管35に連結される。
【0026】
薬剤注入ポンプ37は、地盤1上に設置される。薬剤注入ポンプ37には薬剤注入管39の一端が連結され、薬剤注入管39の他端は二重管5の内部に配置される。
【0027】
井戸構造2を構築するには、まず地盤1に井戸3を掘削し、井戸3に内管15を建て込む。そして、内管15の外周面と井戸3の孔壁との間の空間に、所定の深さまで珪砂29を充填し、珪砂29の上方に遮水材23を設置する。次に、内管15の外側に外管7を建込む。その後、外管7の外周面と井戸3の孔壁との間の空間に、所定の深さまで珪砂27を充填し、珪砂27の上方に遮水材24を設置し、遮水材24の上方に珪砂27を充填する。
【0028】
また、外管7を建て込んだ後、空間8に送水管35およびポンプ31-1、水圧計33-1を設置し、空間16に送水管35およびポンプ31-2、水圧計33-2を設置する。さらに、地上に薬剤注入ポンプ37を設置し、薬剤注入管39を二重管5内に挿入する。
【0029】
図2は、ポンプ運転時の井戸構造2周辺の水の移動状況を示す図であり、地盤1の鉛直方向の断面を示す。図2(a)は、ポンプ31-1を運転している状態を示す図であり、ポンプ31-2、水圧計33-1は図示を省略している。図2(a)に示す例では、ポンプ31-1を運転して、空間8から揚水した水を送水管35で空間16に移動させる。すると、井戸構造2周辺では、矢印に示すように、水が地盤1から空間8に浸入すると同時に、空間16から地盤1に浸出する。
【0030】
このとき、水圧計33-2を用いて水圧を計測し、空間16内の水位が高くなりすぎないようにポンプ31-1の流量を調整する。また、薬剤注入管39を揚水の移動先である空間16内に配置して薬剤を注入し、水とともに地盤1に浸出させる。
【0031】
図2(b)は、ポンプ31-2を運転している状態を示す図であり、ポンプ31-1、水圧計33-2は図示を省略している。図2(b)に示す例では、ポンプ31-2を運転して、空間16から揚水した水を送水管35で空間8に移動させる。すると、井戸構造2周辺では、矢印に示すように、水が地盤1から空間16に浸入すると同時に、空間8から地盤1に浸出する。
【0032】
このとき、水圧計33-1を用いて水圧を計測し、空間8内の水位が高くなりすぎないようにポンプ31-2の流量を調整する。また、薬剤注入管39を揚水の移動先である空間8に配置して薬剤を注入し、水とともに地盤1に浸出させる。
【0033】
図2に示すように、井戸構造2では、ポンプ31-1とポンプ31-2のいずれかを運転することによって、区間25-1と区間25-2との間での水の移動方向が切り替えられる。
【0034】
(2.地下水浄化システム41)
図3は、地下水浄化システム41を示す図であり、地盤1の鉛直方向の断面を示す。地下水浄化システム41は、地盤1に設置された2つの井戸構造2、薬剤注入ポンプ37等からなる。
【0035】
井戸構造2-1、2-2は、それぞれの井戸3を含む面が汚染地下水の流れの方向と略垂直となるように配置される。井戸構造2-1、2-2は、薬剤注入ポンプ37を共有し、井戸構造2-1には薬剤注入管39-1が挿入され、井戸構造2-2には薬剤注入管39-2が挿入される。
【0036】
地盤1の地下水を浄化する際、地下水浄化システム41では、図3に示すように、井戸構造2-1での水の移動方向と、井戸構造2-1に隣接する井戸構造2-2での水の移動方向とが上下逆方向となるようにポンプを制御する。例えば、井戸構造2-1(ポンプ31-2、水圧計33-1は図示省略)でポンプ31-1を運転し、井戸構造2-2(ポンプ31-1、水圧計33-2は図示省略)でポンプ31-2を運転する。
【0037】
すると、井戸構造2-1周辺では図2(a)に示したのと同様の水の動きが生じ、井戸構造2-2周辺では図2(b)に示したのと同様の水の動きが生じる。そして、図3に示すように、地盤1内で、井戸構造2-2の空間8から井戸構造2-1の空間8への水平方向の流れ、および、井戸構造2-1の空間16から井戸構造2-2の空間16への水平方向の流れによる循環流が生じる。
【0038】
また、地下水浄化システム41では、薬剤注入ポンプ37から、薬剤注入管39-1を介して井戸構造2-1の空間16に薬剤を注入し、薬剤注入管39-2を介して井戸構造2-2の空間8に薬剤を注入する。薬剤は、上記した図3の矢印に示す循環流によって、地盤1内に均質に拡散される。
【0039】
薬剤注入ポンプ37から注入される薬剤は、浄化の対象となる汚染物質に応じて選定される。例えば地盤1の地下水中の揮発性有機塩素化合物(VOC)が浄化の対称であれば、薬剤として嫌気性微生物を活性化させる活性剤を用いることが望ましい。地盤1内に嫌気性微生物を活性化させる活性剤を拡散すれば、嫌気性微生物の働きによって地下水中のVOCが分解される。
【0040】
地盤1の地下水中のベンゼンや油等が浄化の対象であれば、薬剤として栄養塩を用いるとともに、二重管5に空気を送って地下水中の溶存酸素濃度を上昇させることが望ましい。地盤1内に好気性微生物を活性化させる栄養塩や溶存酸素を拡散すれば、好気性微生物の働きによって地下水中のベンゼンや油等が分解される。
【0041】
地下水浄化システム41の運転中は、必要に応じて地下水中の薬剤の濃度を計測する。薬剤濃度を計測するには、井戸構造2-1、2-2でポンプ31-1、31-2を運転している状態で、薬剤注入ポンプ37を一旦停止して二重管5内の地下水を採取する。そして、図示しない計測装置を用いて地下水中の薬剤の濃度を計測する。このとき、浄化の対象となる汚染物質の濃度を合わせて計測してもよい。
【0042】
地下水浄化システム41では、必要に応じて、水の移動方向を切り替えてもよい。図3に示す状態から水の移動方向を切り替えるには、井戸構造2-1で図示を省略したポンプ31-2を運転し、井戸構造2-2で図示を省略したポンプ31-1を運転する。これにより、地盤1内で、井戸構造2-1の空間8から井戸構造2-2の空間8への水平方向の流れ、および、井戸構造2-2の空間16から井戸構造2-1の空間16への水平方向の流れによる循環流が生じる。
【0043】
このように、第1の実施形態で用いられる井戸構造2は、井戸3内に設けられる二重管5の外管7の天端9および内管15の天端17が開放され、井戸3を深度方向に2つの区間25-1、25-2に分ける遮水材23を内管15が貫通するので、遮水材23の下方の区間25-2が閉鎖領域とならない。そのため、ポンプ31-1を用いて区間25-1の空間8から区間25-2の空間16へ水を移動させた時に、井戸3内の区間25-2から地盤1に水が浸出しにくい条件であっても区間25-2での水圧の上昇を防ぐことができる。
【0044】
また、内管15の天端17を外管7の天端9より低くすることで、ポンプ31-1、31-2を用いた水の移動によって空間16や空間8内の水位が上昇しても地上に漏水することがなくなる。さらに、遮水材23を内管15のストレーナ管21より上部且つ外管7のストレーナ管13より下部に配置し、外管7と内管15との間の空間8を遮水材23の一部で塞ぐことで、区間25-1と区間25-2との間で送水管35を用いない水の移動を遮断することができる。
【0045】
第1の実施形態の地下水浄化システム41では、2つの井戸構造2を地盤1内に配置し、井戸構造2-1での水の移動方向と隣接する井戸構造2-2での水の移動方向とが上下逆方向となるようにポンプ31-1、31-2の運転を制御することにより、井戸構造2-1と井戸構造2-2との間の地盤1内に地下水の流れと略垂直となる循環流を発生させることができる。また、二重管5内に薬剤を注入することで、薬剤を循環流で地盤1内に均質に拡散させ、地下水を浄化することができる。
【0046】
なお、それぞれの井戸3において、ポンプ31-1とポンプ31-2の両者を配置するのではなく、一方のみであってもよい。この場合には、互いに隣り合う井戸3に対し、ポンプ31-1とポンプ31-2を交互に配置すればよい。このようにすれば、水の移動方向の切り替えはできないが、隣り合う井戸構造2-1と井戸構造2-2との間の地盤1内に地下水の流れと略垂直となる循環流を発生させることができる。
【0047】
以下、本発明の別の例について、第2~第4の実施形態として説明する。各実施形態はそれまでに説明した実施形態と異なる点について説明し、同様の構成については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。
【0048】
まず、第2の実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態の地下水浄化システム41aを示す図であり、地盤1の鉛直方向の断面を示す。地下水浄化システム41aは、地盤1に設置された2つの井戸構造2a、薬剤注入ポンプ37等からなる。
【0049】
井戸構造2aは、内管15の天端17より低い位置に、外管7と内管15の間の空間8と内管15内の空間16とを連通させるための連通部43が設けられ、ポンプ31-1、31-2で揚水した水を移動させるための送水管35aが連通部43に配置される点が第1の実施形態の井戸構造2と異なる。
【0050】
地下水浄化システム41aでは、井戸構造2a-1、2a-2は、それぞれの井戸3を含む面が汚染地下水の流れの方向と略垂直となるように配置される。井戸構造2a-1、2a-2は、薬剤注入ポンプ37を共有し、井戸構造2a-1には薬剤注入管39-1が挿入され、井戸構造2a-2には薬剤注入管39-2が挿入される。
【0051】
地盤1の地下水を浄化する際、地下水浄化システム41aでは、第1の実施形態と同様に、井戸構造2a-1での水の移動方向と、井戸構造2a-1に隣接する井戸構造2a-2での水の移動方向とが上下逆方向となるようにポンプを制御する。例えば、井戸構造2a-1(ポンプ31-2、水圧計33-1は図示省略)でポンプ31-1を運転し、井戸構造2a-2(ポンプ31-1、水圧計33-2は図示省略)でポンプ31-2を運転する。
【0052】
すると、図4に示すように、地盤1内で、井戸構造2a-2の空間8から井戸構造2a-1の空間8への水平方向の流れ、および、井戸構造2a-1の空間16から井戸構造2a-2の空間16への水平方向の流れによる循環流が生じる。
【0053】
また、地下水浄化システム41aでは、薬剤注入ポンプ37から、薬剤注入管39-1を介して井戸構造2a-1の空間16に薬剤を注入し、薬剤注入管39-2を介して井戸構造2a-2の空間8に薬剤を注入する。薬剤は、図4の矢印に示す循環流によって、地盤1内に均質に拡散される。
【0054】
地下水浄化システム41aでは、必要に応じて、水の移動方向を切り替えてもよい。図4に示す状態から水の移動方向を切り替えるには、井戸構造2a-1で図示を省略したポンプ31-2を運転し、井戸構造2a-2で図示を省略したポンプ31-1を運転する。これにより、地盤1内で、井戸構造2a-1の空間8から井戸構造2a-2の空間8への水平方向の流れ、および、井戸構造2a-2の空間16から井戸構造2a-1の空間16への水平方向の流れによる循環流が生じる。
【0055】
第2の実施形態で用いられる井戸構造2aでも、第1の実施形態の井戸構造2と同様の効果が得られる。また、井戸構造2aでは、送水管35aが内管15の天端17より低い位置の連通部43に配置されることにより、送水管35が内管15の天端17を跨いで配置される井戸構造2と比べてポンプ31-1、31-2の揚程が小さくなる。そのため、能力の小さいポンプ31-1、31-2を適用できコストを抑えることができる。
【0056】
第2の実施形態の地下水浄化システム41aでも、井戸構造2a-1での水の移動方向と隣接する井戸構造2a-2での水の移動方向とが上下逆方向となるようにポンプ31-1、31-2の運転を制御することにより、井戸構造2a-1と井戸構造2a-2との間の地盤1内に地下水の流れと略垂直となる循環流を発生させることができる。また、二重管5内に薬剤を注入することで、薬剤を循環流で地盤1内に均質に拡散させ、地下水を浄化することができる。
【0057】
次に、第3の実施形態について説明する。図5は、第3の実施形態の地下水浄化システム41bを示す図であり、地盤1の鉛直方向の断面を示す。地下水浄化システム41bは、地盤1に設置された2つの井戸構造2b、薬剤注入ポンプ37等からなる。
【0058】
井戸構造2bは、井戸3bが地盤1の表面に設けられた凹部45の下方に鉛直方向に掘削され、二重管5bの天端が凹部45の底面に位置し、ポンプ31bが凹部45内すなわち二重管5bの外部に設けられる点が第1の実施形態の井戸構造2と異なる。
【0059】
ポンプ31bには2本の送水管35bが連結される。2本の送水管35bのうち一方の送水管35bの下端部は空間8の底部付近に位置し、他方の送水管35bの下端部は空間16の底部付近に位置する。ポンプ31bは、空間8と空間16との間で水の移動方向の切り替えが可能である。
【0060】
地下水浄化システム41bでは、井戸構造2b-1、2b-2は、それぞれの井戸3を含む面が汚染地下水の流れの方向と略垂直となるように配置される。井戸構造2b-1、2b-2は、薬剤注入ポンプ37を共有し、井戸構造2b-1には薬剤注入管39-1が挿入され、井戸構造2b-2には薬剤注入管39-2が挿入される。
【0061】
地盤1の地下水を浄化する際、地下水浄化システム41bでは、井戸構造2b-1での水の移動方向と、井戸構造2b-1に隣接する井戸構造2b-2での水の移動方向とが上下逆方向となるように、ポンプ31bを運転する。例えば、井戸構造2b-1では送水管35bで空間8から水を揚水して空間16に移動させるようにポンプ31bを運転し、井戸構造2b-2では送水管35bで空間16から水を揚水して空間8に送水させるようにポンプ31bを運転する。
【0062】
すると、井戸構造2b-1周辺では、水が地盤1から空間8に浸入すると同時に空間16から地盤1に浸出する。井戸構造2b-2周辺では、水が地盤1から空間16に浸入すると同時に空間8から地盤1に浸出する。そして、図5に示すように、地盤1内で、井戸構造2b-2の空間8から井戸構造2b-1の空間8への水平方向の流れ、および、井戸構造2b-1の空間16から井戸構造2b-2の空間16への水平方向の流れによる循環流が生じる。
【0063】
このとき、井戸構造2b-1では水圧計33-2を用いて水圧を計測し、空間16内の水位が高くなりすぎないようにポンプ31bの流量を調整する。井戸構造2b-2では水圧計33-1を用いて水圧を計測し、空間8内の水位が高くなりすぎないようにポンプ31bの流量を調整する。
【0064】
また、地下水浄化システム41bでは、薬剤注入ポンプ37から、薬剤注入管39-1を介して井戸構造2b-1の空間16に薬剤を注入し、薬剤注入管39-2を介して井戸構造2b-2の空間8に薬剤を注入する。薬剤は、図5の矢印に示す循環流によって、地盤1内に均質に拡散される。
【0065】
地下水浄化システム41bでは、必要に応じて、水の移動方向を切り替えてもよい。図5に示す状態から水の移動方向を切り替えるには、井戸構造2b-1、井戸構造2b-2のそれぞれでポンプ31bの運転方向を切り替える。これにより、地盤1内で、井戸構造2b-1の空間8から井戸構造2b-2の空間8への水平方向の流れ、および、井戸構造2b-2の空間16から井戸構造2b-1の空間16への水平方向の流れによる循環流が生じる。
【0066】
第3の実施形態で用いられる井戸構造2bでも、第1の実施形態の井戸構造2と同様の効果が得られる。また、井戸構造2bでは、ポンプ31bが二重管5bより上方の凹部45内に配置されることにより、ポンプ31-1、31-2が二重管5の内部に配置される井戸構造2と比べて井戸3bの径を小さくすることができる。そのため、施工コストを低減できる。
【0067】
第3の実施形態の地下水浄化システム41bにおいても、井戸構造2b-1での水の移動方向と隣接する井戸構造2b-2での水の移動方向とが上下逆方向となるようにポンプ31bの運転を制御することにより、井戸構造2b-1と井戸構造2b-2との間の地盤1内に地下水の流れと略垂直となる循環流を発生させることができる。また、二重管5b内に薬剤を注入することで、薬剤を循環流で地盤1内に均質に拡散させ、地下水を浄化することができる。
【0068】
次に、第4の実施形態について説明する。図6は、第4の実施形態の井戸構造2cを示す図であり、地盤1の鉛直方向の断面を示す。図6に示すように、井戸構造2cは、井戸3、二重管5c、遮水材23c、第1のポンプ31-1、第2のポンプ31-2等で構成される。
【0069】
井戸構造2cは、遮水材23cが遮水材23c-1、23c-2に分割されている点、二重管5cが井戸3内に配置される外管7cと、外管7c内に配置される内管15とからなる点が第1の実施形態の井戸構造2と異なる。
【0070】
外管7cは、内管15と同様に遮水材23cを貫通して配置され、下端部が井戸3の底部に位置する。すなわち、遮水材23cは、内管15の外周面と井戸3の孔壁との間に設けられ、遮水材23cのうち、外側の遮水材23c-1は外管7cの外周面と井戸3の孔壁との間を塞ぎ、内側の遮水材23c-2は、外管7cと内管15との間の空間8を塞ぐ。外管7cの天端9は、内管15の天端17より高い地盤1の表面付近に位置し、開放されている。
【0071】
外管7cは、遮水材23cより上方の部分がストレーナ管13であり、遮水材23cより下方の部分がストレーナ管13cである。ストレーナ管13には複数の孔11が、ストレーナ管13cには複数の孔11cが設けられる。外管7cのストレーナ管13より上方の部分の外周面と井戸3の孔壁との間には、遮水材24が設けられる。
【0072】
遮水材23の上方の区間25-1では、外管7cの外周面と井戸3の孔壁との間に珪砂27が充填される。遮水材23cの下方の区間25-2では、外管7cの外周面と井戸3の孔壁との間に珪砂29が充填される。
【0073】
井戸構造2cを構築するには、まず地盤1に井戸3を掘削し、井戸3に内管15および外管7cからなる二重管5cを建て込む。そして、外管7cの外周面と井戸3の孔壁との間の空間に、所定の深さまで珪砂29を充填し、珪砂29の上方に遮水材23c-1を設置する。その後、遮水材23c-1の上方に所定の深さまで珪砂27を充填し、珪砂27の上方に遮水材24を設置し、遮水材24の上方に珪砂27を充填する。
【0074】
また、二重管5cを建て込んだ後、内管15の外周面と外管7cの内周面との間に遮水材23c-2を設置し、空間8に送水管35およびポンプ31-1、水圧計33-1を設置し、空間16に送水管35およびポンプ31-2、水圧計33-2を設置する。また、地上に図示しない薬剤注入ポンプを設置し、図示しない薬剤注入管を二重管5c内に挿入する。
【0075】
井戸構造2cのポンプ31-1を運転して、空間8から揚水した水を送水管35で空間16に移動させると、区間25-2では、水が空間16から孔19を介してストレーナ管13cとストレーナ管21との間の空間8cにも移動する。井戸構造2c周辺では、水が地盤1から空間8に浸入すると同時に、空間16から空間8cを通って地盤1に浸出する。
【0076】
井戸構造2cのポンプ31-2を運転して、空間16から揚水した水を送水管35で空間8に移動させると、区間25-2では、水が空間8cから孔19を介して空間16に移動する。井戸構造2c周辺では、水が地盤1から空間8cを通って空間16に浸入すると同時に、空間8から地盤1に浸出する。
【0077】
井戸構造2cでは、ポンプ31-1とポンプ31-2のいずれかを運転することによって、区間25-1と区間25-2との間での水の移動方向が切り替えられる。
【0078】
図6に示す井戸構造2cを地下水浄化システムに用いる場合にも、一の井戸構造2cでの水の移動方向と、一の井戸構造2cに隣接する他の井戸構造2cでの水の移動方向とが上下逆方向となるようにポンプ31-1、31-2の運転を制御する。また、図示しない薬剤注入ポンプから井戸構造2cの二重管5c内に薬剤を注入する。
【0079】
すると、第1の実施形態の地下水浄化システム41と同様に、隣接する2ケ所の井戸構造2cの間の地盤1内に循環流が生じ、循環流によって薬剤が地盤1内に均質に拡散される。
【0080】
第4の実施形態の井戸構造2cでも、第1の実施形態の井戸構造2と同様の効果が得られる。また、井戸構造2cでは、外管7cが区間25-2にも配置されるので、ポンプ31-1で揚水して空間8から空間16に水を移動させた時に空間8cにも水が入っていく。そのため、区間25-2に内管15のみが配置される井戸構造2と比べて、内管15の水位上昇を抑制することができる。
【0081】
第4の実施形態の井戸構造2cを用いて地下水浄化システムを構築した場合でも、一の井戸構造2cでの水の移動方向と一の井戸構造2cに隣接する他の井戸構造2cでの水の移動方向とが上下逆方向となるようにポンプ31-1、31-2の運転を制御することにより、2つの井戸構造2cの間の地盤1内に地下水の流れと略垂直となる循環流を発生させることができる。また、二重管5c内に薬剤を注入することで、薬剤を循環流で地盤1内に均質に拡散させ、地下水を浄化することができる。
【0082】
なお、第1から第3の実施形態では、図2から図5に示すように、ポンプで揚水された水の移動先の空間に薬剤を注入したが、薬剤は二重管内に注入されればよい。例えば、水の移動元の空間(ポンプで揚水される側の空間)に薬剤を注入した場合も、二重管内で水を移動させることによって薬剤が均一に拡散されるので同じ効果が得られる。
【0083】
また、地下水浄化システムに用いる井戸構造は、2つに限らず3つ以上であってもよい。この場合も、一の井戸構造と、一の井戸構造に隣接する他の井戸構造とで、水の移動方向が上下逆となるようにポンプの運転を制御することにより、隣接する井戸構造同士の間の地盤内に循環流を発生させて、より広範囲の地盤の地下水を浄化することができる。
【0084】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0085】
1………地盤
2、2-1、2-2、2a、2a-1、2a-2、2b、2b-1、2b-2、2c………井戸構造
3、3b………井戸
5、5b、5c………二重管
7、7c………外管
9、17………天端
8、8c、16………空間
11、11c、19………孔
13、13c、21………ストレーナ管
15………内管
23、23c、23c-1、23c-2、24………遮水材
25-1、25-2………区間
27、29………珪砂
31-1、31-2、31b………ポンプ
33-1、33-2………水圧計
35、35a、35b………送水管
37………薬剤注入ポンプ
39、39-1、39-2………薬剤注入管
41、41a、41b………地下水浄化システム
43………連通部
45………凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6