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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】車高調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/005 20060101AFI20221214BHJP
   F16F 15/067 20060101ALI20221214BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B60G17/005
F16F15/067
F16F1/12 K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018220073
(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公開番号】P2020083030
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 宏友
(72)【発明者】
【氏名】近藤 卓宏
(72)【発明者】
【氏名】綿屋 茂男
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/049633(WO,A1)
【文献】特開2004-255559(JP,A)
【文献】特開2006-010009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 17/005
F16F 15/067
F16F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材と直動部材とを有して前記回転部材の回転運動を前記直動部材の直線運動に変換する運動変換部と、
複数のモータと、
前記各モータの動力を前記回転部材に伝達する伝達部と、
前記直動部材に連結されて車両の車体と車軸との間に介装される懸架ばねの一端を支承するばね受と、
前記各モータの一部または全部を短絡させる短絡回路とを備え
前記短絡回路は、二つの前記モータを組とし、組となる前記モータに前記回転部材側から回転が入力されると互いに逆向きのトルクを前記回転部材に与えるように前記組となる前記モータ同士を短絡する
ことを特徴とする車高調整装置。
【請求項2】
前記短絡回路は、前記組となるモータ以外のモータについては単独で短絡させる
ことを特徴とする請求項に記載の車高調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車高調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車高調整装置にあっては、たとえば、モータと、モータの回転動力で車両の車体を弾性支持する懸架ばねの一端を支持する上方ばね受を駆動する送り螺子機構とを備えるものがある(たとえば、特許文献1参照)。この車高調整装置では、モータを駆動して上方ばね受を上下動させて、車体に対して上方ばね受を接近或いは離間させて、車高を調整するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-253862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車高調整装置では、送り螺子機構を採用しており、送り螺子機構がモータ側からの回転動力に対しては上方ばね受を軸方向へ駆動するが、逆に、上方ばね受側からの荷重に対してはモータを回転駆動しないものを利用すれば、上方ばね受の位置を固定して車高を維持できる。
【0005】
しかしながら、送り螺子機構の逆効率が高い構成の場合、上方ばね受側からの荷重に対しモータが回転してしまう場合がある。
【0006】
送り螺子機構の逆効率が高くメカニカルロックとして機能しない場合、上方ばね受を所望する位置に固定するための機構が別途必要となって構造の複雑化、部品点数およびコスト増を招く。また、上方ばね受の位置を固定して車高を維持するためにモータに通電し続ける場合には、メカニカルロックのための機構は不要となるが、エネルギ消費が多く、ランニングコストが増えて不経済である。
【0007】
そこで、本発明は、メカニカルロックを必要とせず、かつ、経済的な車高調整装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、回転部材と直動部材とを有して回転部材の回転運動を直動部材の直線運動に変換する運動変換部と、複数のモータと、モータの動力を回転部材に伝達する伝達部と、直動部材に連結されて車両の車体と車軸との間に介装される懸架ばねの一端を支承するばね受と、モータを短絡させる短絡回路とを備え、短絡回路は、二つのモータを組とし、組となるモータに回転部材側から回転が入力されると互いに逆向きのトルクを回転部材に与えるように組となるモータ同士を短絡している。
【0009】
このように構成された車高調整装置では、モータでばね受を駆動して車高調整できるとともに、ばね受を所望する位置に固定する際に短絡回路でモータを短絡してモータに生じる逆起電力によってばね受を所望する位置に固定できる。
【0011】
また、このように構成された車高調整装置によれば、短絡回路が組となるモータ同士を短絡するので、モータの一方に生じる逆起電力でモータの他方を駆動して回転部材の回転を抑制してばね受を固定できる。
【0012】
さらに、車高調整装置は、組となるモータ以外のモータについては単独で短絡させてもよく、この場合、モータの設置数が奇数であっても全てのモータがばね受を固定する力を発揮できるようになるので、小型なモータを利用できるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車高調整装置によれば、メカニカルロックを必要とせず、かつ、経済的となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施の形態における車高調整装置の縦断面図である。
図2】一実施の形態における車高調整装置を横断面図である。
図3】一実施の形態における車高調整装置の回路図である。
図4】一実施の形態における車高調整装置の第一変形例の横断面図である。
図5】一実施の形態における車高調整装置の第一変形例の回路図である。
図6】一実施の形態における車高調整装置の第二変形例の回路図である。
図7】一実施の形態における車高調整装置の第三変形例の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の車高調整装置1を図に基づいて説明する。一実施の形態における車高調整装置1は、図1および図3に示すように、回転運動を直動部材の直線運動に変換する運動変換部2と、複数のモータM1,M2と、モータM1,M2の動力を回転部材に伝達する伝達部3と、運動変換部2によって駆動されるばね受7と、モータM1,M2を短絡する短絡回路5とを備えて構成されている。
【0016】
以下、車高調整装置1の各部について詳細に説明する。運動変換部2は、回転部材としての螺子軸2aと、直動部材としてのボールナット2bとを備えている。螺子軸2aは、外周に螺子溝が設けられており、外周にボールナット2bが螺着されている。よって、この運動変換部2にあっては、螺子軸2aが回転運動を呈するとボールナット2bが図1中上下方向へ直線運動を呈する。また、ボールナット2bの外周には、ばね受7に連結される筒状のホルダ6が装着されている。
【0017】
ホルダ6は、前述したように、筒状であって、図1中下端内周に螺子軸2aを軸支するブッシュ6aと、螺子軸2aの外周に摺接してホルダ6内をシールするダストシール6bとを備えている。
【0018】
螺子軸2aの図1中上端は、伝達部3を収容するハウジング8内に挿通されるとともに軸受9で支持されてハウジング8に対して軸周りに回転できるようになっている。
【0019】
ハウジング8は、車両の車体に取り付けられており、内部が中空であって伝達部3を収容するケースとなっているとともに、図1中下端であってホルダ6の外周とばね受7の筒部7aの内周との間に挿入されるガイド筒8aを備えている。そして、ガイド筒8aとばね受7の筒部7aとの間には、筒状のブッシュ10が挿入されており、ばね受7、ホルダ6およびボールナット2bは、ハウジング8のガイド筒8aによってガイドされて軸ぶれせずに図1中上下方向となる軸方向へ円滑に移動できる。また、ホルダ6が螺子軸2aの図1中下方を軸支するブッシュ6aを備えていて、ハウジング8に対してガイド筒8aによって偏心が抑制されており、螺子軸2aの上方がハウジング8に設けた軸受9によって軸支される。よって、螺子軸2aは、ハウジング8およびボールナット2bに対して偏心せずに円滑に回転運動できる。
【0020】
さらに、ガイド筒8aの内周には、図1中上下方向となる軸方向に沿ってキー溝8bが形成されており、キー溝8b内には、ホルダ6の図1中上端外周に装着されるキー6cが挿入されている。よって、ボールナット2bは、ハウジング8に対して回り止めされるので、螺子軸2aが回転駆動されると螺子軸2aと共回りせずに、確実に軸方向へ移動できる。
【0021】
ばね受7は、図示しない車両の車体と車輪との間に介装される懸架ばねSの車体側端である上端を支持しており、運動変換部2のボールナット2bが上下方向に駆動されるとともに上下動して図示しない車体に対して遠近する。よって、螺子軸2aを回転駆動してボールナット2bを上下方向に移動させるとばね受7が車体に遠近して車高を調整できる。なお、ばね受7は、底部に孔を備えた有底筒状の筒部7aと、筒部7aの図1中上端外周に設けたフランジ7bとを備えており、フランジ7bで懸架ばねSの上端を支持している。そして、ばね受7は、筒部7aの底にホルダ6の図1中下端が嵌合された状態でホルダ6に一体化されている。なお、懸架ばねSの下端は、車輪側のサスペンションメンバーに取付けられた下方ばね受40に支持されている。
【0022】
伝達部3は、本実施の形態では、図1および図2に示したように、螺子軸2aの上端外周に取付けられたウォームホイール3aと、ウォームホイール3aを直径方向に挟んでウォームホイール3aに歯合する一対のウォーム3b,3cとで構成されている。ウォームホイール3aは、螺子軸2aとともにハウジング8内で回転できる。ウォーム3bは、ハウジング8の図2中右方に固定されるモータM1の図示しないロータに連結されており、ウォーム3cは、同じくハウジング8の図2中右方に固定されるモータM2の図示しないロータに連結されている。
【0023】
本実施の形態では、ウォームホイール3aを図2中反時計回りに回転させる場合、モータM1で図2中上側のウォーム3bはモータM1側から見て左回りに、モータM2で図2中下側のウォーム3cはモータM2側から見て右回りに回転させるようになっている。反対に、ウォームホイール3aを図2中時計回りに回転させる場合、モータM1で図2中上側のウォーム3bはモータM1側から見て右回りに、モータM2で図2中下側のウォーム3cはモータM2側から見て左回りに回転させればよい。このようにウォームホイール3aを回転駆動すると、螺子軸2aがウォームホイール3aとともに回転してボールナット2bを上下方向に駆動でき、ボールナット2bの上下動によってばね受7が上下方向へ移動して車体に対して遠近する。よって、モータM1,M2を駆動するとばね受7と車体との相対距離を調節でき、これによって車高調整装置1は車両における車高を調節できる。なお、本書では、ウォーム3b,3cの回転方向は、常にモータM1,M2からウォーム3b,3cを見た場合の回転方向を指している。
【0024】
モータM1,M2は、本実施の形態では、同仕様のモータとされており、直流モータとされていて、端子aと端子bとを備え、端子aを電源に接続すると正回転してウォーム3b,3cをモータM1,M2側から見て右回りに駆動し、端子bを電源に接続すると逆回転してウォーム3b,3cをモータM1,M2側から見て左回りに回転させるようになっている。また、モータM1,M2の各端子a,bは、図3に示すように、電源Batに対して並列接続できるように回路Cを介して電源Batに接続されている。なお、モータM1,M2は、ともに同仕様のモータとされずとも良いが、同仕様のモータを利用すると、ウォーム3b,3cを等速で駆動する際の電流とトルクの管理が容易となる。
【0025】
回路Cは、図3に示すように、モータM1の端子aとモータM2の端子bとを接続する接続線5aとモータM1の端子bとモータM2の端子aとを接続する接続線5bとでなる短絡回路5と、電源BatとグランドGNDの一方を選択してモータM1の端子aとモータM2の端子bに接続するとともに、電源BatとグランドGNDの他方をモータM1の端子bとモータM2の端子aに接続するブリッジ回路Bとを含んで構成されている。
【0026】
この場合、回路Cは、電源Batに対してモータM1,M2を並列に接続するようにしているので、電源Batからの電力をブリッジ回路Bと短絡回路5を介してモータM1,M2へ与えるようになっている。また、モータM1,M2へ電源Batの電圧を印加しているので、モータM1,M2の出力トルクを大きくできる。
【0027】
ブリッジ回路Bは、四つのスイッチS1,S2,S3,S4を備えており、スイッチS1,S2間が接続線20を介して接続線5aに接続されるとともに、スイッチS3,S4間が接続線21を介して接続線5bに接続されている。そして、これらスイッチS1,S2,S3,S4の切換えによって、モータM1の端子aとモータM2の端子b、或いは、モータM1の端子bとモータM2の端子aのいずれかを電源Batに接続してモータM1,M2を駆動する。すると、モータM1,M2は、回路Cを介して電源Batから電力供給を受けると、互いにウォーム3b,3cを逆向きに回転駆動するので、ウォームホイール3aを回転させてばね受7を図1中上下動させる。
【0028】
また、ブリッジ回路Bの全スイッチS1,S2,S3,S4をオフにすると、電源BatとモータM1,M2との接続が絶たれて、短絡回路5によって、モータM1の端子aとモータM2の端子bとが接続されるとともにモータM1の端子bとモータM2の端子aとが接続される状態となる。
【0029】
前述したとおり、本実施の形態では、ウォームホイール3aが時計回りに回転しても反時計回りに回転してもウォーム3b,3cは互いに反対方向に回転するようになっている。ここで、ボールナット2bに入力される荷重によってウォームホイール3aが図2中反時計回りに回転しようとするとウォーム3bは左回りに回転しようとする。すると、ウォーム3bの左回りの回転によってモータM1には、逆起電力が生じて、端子a側の電圧が高くなり端子b側の電圧が低くなる。他方のモータM2には、モータM1の逆起電力によってモータM1の端子aと接続される端子bに電圧が印加されるから、モータM2は、左回りに回転しようとする。反対にボールナット2bに入力される荷重によってウォームホイール3aが図2中時計回りに回転しようとするとウォーム3bは右回りに回転しようとする。すると、ウォーム3bの右回りの回転によってモータM1には、逆起電力が生じて、端子b側の電圧が高くなり端子a側の電圧が低くなる。他方のモータM2には、モータM1の逆起電力によってモータM1の端子bと接続される端子aに電圧が印加されるから、モータM2は、右回りに回転しようとする。よって、前述のように、短絡回路5によってモータM1とモータM2の端子a,bが短絡されると、外力によってウォームホイール3aが回転しようとすると、モータM1,M2に生じる逆起電力によって両者が共に同方向に回転しようとする。このようにモータM1,M2が同方向に回転しようとするので、ウォームホイール3aの外力による回転が抑制される。前述したように、車高調整装置1では、ウォームホイール3aが回転しようとするとモータM1,M2に生じる逆起電力によってウォームホイール3aの回転が抑制されるので、ウォームホイール3aが装着されている螺子軸2aの回転も抑制されてばね受7の移動も抑制される。そして、逆起電力によってモータM1,M2が発揮するトルクでウォームホイール3aを静止させる力と車高調整装置1の可動部位の摩擦力の合力が車重に起因するウォームホイール3aを回転させる力を上回るように、ウォームホイール3aとウォーム3b,3cのギヤ比が設定されれば、ばね受7を固定できる。
【0030】
なお、図4に示したように、伝達部3が、螺子軸2aの上端外周に取付けられたウォームホイール3aと、ウォームホイール3aを直径方向に挟んでウォームホイール3aに互いに逆向きに歯合するウォーム3b,3cとで構成される場合は、以下のようになる。ウォームホイール3aを図4中反時計回りに回転させる場合、モータM1,M2はともにウォーム3b,3cを右回りに回転させ、ウォームホイール3aを図4中時計回りに回転させる場合、モータM1,M2はともにウォーム3b,3cを左回りに回転させることになる。よって、この場合の短絡回路5は、図5に示すように、モータM1,M2の端子a,a同士を接続線5cで接続するとともにモータM1,M2の端子b,b同士を接続線5dで接続すればよい。そして、ブリッジ回路BにおけるスイッチS1,S2間を接続線23を介して接続線5dに接続し、スイッチS3,S4間を接続線22を介して接続線5cに接続すればよい。このようにすれば、外力によってウォームホイール3aが回転しようとすると、モータM1,M2に生じる逆起電力によって両者が共に逆方向に回転しようとするので、ウォームホイール3aの外力による回転が抑制される。
【0031】
また、前述したところでは、電源Batに対してモータM1,M2を並列接続しているが、モータM1,M2を直列に接続するようにしてもよい。具体的には、図2に示すように、ウォームホイール3aの回転に対してウォーム3b,3cが逆方向に回転する配置になっている場合には、電源BatをモータM1,M2に接続する回路C1は、図6に示すように構成されればよい。
【0032】
回路C1は、ブリッジ回路Bと、ブリッジ回路BのスイッチS1,S2間をモータM2の端子aに接続する接続線24と、ブリッジ回路BのスイッチS3,S4間をモータM1の端子aに接続する接続線25と、モータM1,M2の端子b,b同士を接続する接続線26と、短絡回路51とを備えている。短絡回路51は、モータM1の端子aをモータM2の端子bに接続されている接続線26に接続する接続線51aと、モータM1の端子bをモータM2の端子aに接続されている接続線24に接続する接続線51bと、接続線26と接続線51aの接続状態を切換えるスイッチ51cと、接続線51bと接続線24との接続と遮断とを切換えるスイッチ51dとを備えている。スイッチ51cは、切換によって、接続線26と接続線51aとを接続しつつ接続線26によるモータM1の端子bとモータM2の端子bとの接続を断つ状態、或いは、接続線26と接続線51aとを遮断しつつ接続線26によるモータM1の端子bとモータM2の端子bとの接続を有効とする状態のいずれか一方を採る。
【0033】
このように構成された回路C1では、スイッチ51cを接続線26によるモータM1の端子bとモータM2の端子bとの接続を有効とするポジションとしつつ、スイッチ51dをオフすると、モータM1,M2がブリッジ回路Bの出力端に対して直列に接続される。そして、電源BatからモータM1,M2に電力供給すると、モータM1,M2は互いに逆回転するように回転駆動するので、スイッチS1,S2,S3,S4の切換えによってウォームホイール3aを所望する方向へ駆動でき、車高調整を行える。そして、ブリッジ回路Bの全スイッチS1,S2,S3,S4をオフして、短絡回路51におけるスイッチ51cを接続線51aと接続線26とを接続するポジションへ切換えるとともにスイッチ51dをオンすると、モータM1,M2が短絡回路51によって短絡される。短絡回路51による短絡状態では、モータM1の端子aとモータM2の端子bとが接続されるとともにモータM1の端子bとモータM2の端子aとが接続されるので、外力によってウォームホイール3aが回転しようとすると、モータM1,M2に生じる逆起電力によって両者が共に同方向に回転しようとするので、ウォームホイール3aの外力による回転が抑制される。
【0034】
さらに、モータM1,M2を直列に接続する場合であって、図4に示すように、ウォームホイール3aの回転に対してウォーム3b,3cが同方向に回転する配置になっている場合には、電源BatをモータM1,M2に接続する回路C2は、図7に示すように構成されればよい。
【0035】
回路C2は、ブリッジ回路Bと、ブリッジ回路BのスイッチS1,S2間をモータM2の端子bに接続する接続線27と、ブリッジ回路BのスイッチS3,S4間をモータM1の端子aに接続する接続線28と、モータM1の端子bとモータM2の端子aを接続する接続線29と、短絡回路52とを備えている。短絡回路52は、モータM1の端子aをモータM2の端子aに接続されている接続線29に接続する接続線52aと、モータM1の端子bをモータM2の端子bに接続されている接続線27に接続する接続線52bと、接続線29と接続線52aの接続状態を切換えるスイッチ52cと、接続線52bと接続線27との接続と遮断とを切換えるスイッチ52dとを備えている。スイッチ52cは、切換によって、接続線29と接続線52aとを接続しつつ接続線29によるモータM1の端子bとモータM2の端子aとの接続を断つ状態、或いは、接続線29と接続線52aとを遮断しつつ接続線29によるモータM1の端子bとモータM2の端子aとの接続を有効とする状態のいずれか一方を採る。
【0036】
このように構成された回路C2では、スイッチ52cを接続線29によるモータM1の端子bとモータM2の端子aとの接続を有効とするポジションとしつつ、スイッチ52dをオフすると、モータM1,M2がブリッジ回路Bの出力端に対して直列に接続される。そして、電源BatからモータM1,M2に電力供給すると、モータM1,M2は互いに同方向に回転するように回転駆動するので、スイッチS1,S2,S3,S4の切換えによってウォームホイール3aを所望する方向へ駆動でき、車高調整を行える。そして、ブリッジ回路Bの全スイッチS1,S2,S3,S4をオフして、短絡回路52におけるスイッチ52cを接続線52aと接続線29とを接続するポジションへ切換えるとともにスイッチ52dをオンすると、モータM1,M2が短絡回路52によって短絡される。短絡回路52による短絡状態では、モータM1の端子aとモータM2の端子aとが接続されるとともにモータM1の端子bとモータM2の端子bとが接続されるので、外力によってウォームホイール3aが回転しようとすると、モータM1,M2に生じる逆起電力によって両者が共に逆方向に回転しようとするので、ウォームホイール3aの外力による回転が抑制される。
【0037】
なお、短絡回路5,51,52は、二つのモータM1,M2の端子a,bを短絡しているが、一つのモータM1,M2毎に端子aと端子bとを短絡してもよい。つまり、モータM1の端子aと端子bとを短絡し、モータM2の端子aと端子bとを短絡してもよい。このようにしても、ウォームホイール3aが回転しようとしてウォーム3b,3cを回転させるとモータM1,M2は、自身に生じる逆起電力でウォーム3b,3cの回転を抑制する力を発揮するから、ウォームホイール3aの回転を抑制できる。
【0038】
前述したように、車高調整装置1では、ウォームホイール3aが回転しようとするとモータM1,M2に生じる逆起電力によってウォームホイール3aの回転が抑制されるので、ウォームホイール3aが装着されている螺子軸2aの回転も抑制される。
【0039】
なお、伝達部3は、前述したところでは、ウォームホイール3aとウォーム3b,3cとで構成されているが、他の歯車機構で構成されてもよい。また、伝達部3は、歯車機構以外にも、螺子軸2aに装着される従動側摩擦車とモータM1,M2のロータにそれぞれ装着されて従動側摩擦車に当接する駆動側摩擦車とで構成されてもよいし、螺子軸2aに装着される従動側プーリとモータM1,M2のロータにそれぞれ装着される駆動側プーリと、従動側プーリと駆動側プーリとに架け渡されるベルトとで構成されてもよい。
【0040】
このように車高調整装置1は、螺子軸(回転部材)2aとボールナット(直動部材)2bとを有して螺子軸(回転部材)2aの回転運動をボールナット(直動部材)2bの直線運動に変換する運動変換部2と、複数のモータM1,M2と、モータM1,M2の動力を螺子軸(回転部材)2aに伝達する伝達部3と、ボールナット(直動部材)2bに連結されて車両の車体と車軸との間に介装される懸架ばねの一端を支承するばね受7と、モータM1,M2を短絡させる短絡回路5とを備えている。
【0041】
このように構成された車高調整装置1では、モータM1,M2でばね受7を駆動して車高調整できるとともに、ばね受7を所望する位置に固定する際に短絡回路5でモータM1,M2を短絡できる。このようにモータM1,M2が短絡回路5によって短絡されると、モータM1,M2に生じる逆起電力によって螺子軸(回転部材)2aの回転が抑制される。よって、本発明の車高調整装置1では、ばね受7に車体に対して遠近する方向への外力が作用してもモータM1,M2に生じる逆起電力によってばね受7を所望する位置に固定できる。したがって、本発明の車高調整装置1では、ばね受7を駆動する駆動源であるモータM1,M2を利用してばね受7を固定できるから、メカニカルロックが不要である。
【0042】
以上より、本発明の車高調整装置1によれば、モータM1,M2を利用してばね受7を固定できるから、メカニカルロックが不要となり、部品点数およびコストの増加を回避できるので経済的である。
【0043】
なお、運動変換部2は、回転部材を螺子軸2aとして直動部材をボールナット2bとしているが、回転部材をボールナット2bとして伝達部3に接続し、直動部材を螺子軸2aとしてばね受7に連結してもよい。また、運動変換部2は、台形螺子と台形螺子に螺合するナットとで構成されもよく、その場合でも、台形螺子とナットの一方を回転部材として他方を直動部材とすればよい。
【0044】
また、短絡回路5,51,52は、二つのモータM1,M2を組とし、組となるモータM1,M2に螺子軸(回転部材)2a側から回転が入力されると互いに逆向きのトルクを螺子軸(回転部材)2aに与えるように組となるモータM1,M2同士を短絡する。このように短絡回路が組となるモータM1,M2同士を短絡するので、モータM1,M2の一方に生じる逆起電力でモータM1,M2の他方を駆動して螺子軸(回転部材)2aの回転を抑制してばね受7を固定できる。
【0045】
なお、伝達部3がウォームホイール3aに対して歯合する3以上のウォームを備えており、各ウォームを駆動するモータがそれぞれ設置される場合、二つのモータを組として、各組におけるモータ同士を短絡回路で前述のように短絡すればよく、モータ数が奇数個であって組を作れないモータについては、モータの端子aと端子bを短絡すればよい。
【0046】
このように、モータが三つ以上設けられる場合、組となるモータM1,M2以外のモータについては単独で短絡させると、モータの設置数が奇数であっても全てのモータがばね受7を固定する力を発揮できるようになるので、小型なモータを利用できるようになる。
【0047】
さらに、モータの逆起電力を利用して伝達部3が運動変換部2側からの外力の入力で駆動させられるのを抑制するだけの力を発揮できればよいので、複数個のモータのうち、一部のモータのみを単独或いは組として短絡回路5,51,52で短絡してもよいし、全部のモータを短絡してもよい。
【0048】
なお、短絡回路5,51,52は、二つのモータM1,M2の端子a,bを短絡しているが、一つのモータM1,M2毎に端子aと端子bとを短絡してもよい。つまり、モータM1の端子aと端子bとを短絡し、モータM2の端子aと端子bとを短絡してもよい。このようにしても、ウォームホイール3aが回転しようとしてウォーム3b,3cを回転させるとモータM1,M2は、自身に生じる逆起電力でウォーム3b,3cの回転を抑制する力を発揮するから、ウォームホイール3aの回転を抑制できる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・車高調整装置、2・・・運動変換部、2a・・・螺子軸(回転部材)、2b・・・ボールナット(直動部材)、3・・・伝達部、5,51,52・・・短絡回路、7・・・ばね受、M1,M2・・・モータ、S・・・懸架ばね
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7