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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】減速装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/03 20120101AFI20221214BHJP
   F16H 57/027 20120101ALI20221214BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20221214BHJP
   F16H 57/032 20120101ALI20221214BHJP
   F16H 1/32 20060101ALI20221214BHJP
   F16H 1/14 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
F16H57/03
F16H57/027
F16H57/04 E
F16H57/032
F16H1/32 A
F16H1/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018235146
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020097946
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】石塚 正幸
(72)【発明者】
【氏名】田村 光拡
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-084864(JP,A)
【文献】特開2017-150020(JP,A)
【文献】特開2017-067141(JP,A)
【文献】特開2015-093461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/03
F16H 57/027
F16H 57/04
F16H 57/032
F16H 1/32
F16H 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速機構を備える減速装置であって、
本減速装置を構成するとともに空洞部が設けられた構成部材を備え、
前記構成部材は、前記空洞部内に設けられ、前記空洞部内に空隙を形成する補強構造を備え
前記空洞部は、前記構成部材により隔てられる前記減速装置内の二つの空間を連通しないように構成される減速装置。
【請求項2】
前記空洞部は、前記構成部材の内部で閉じた閉空間を形成する請求項1に記載の減速装置。
【請求項3】
前記構成部材には、駆動装置から回転が伝達可能である請求項1または2に記載の減速装置。
【請求項4】
前記構成部材は、軸受が配置される軸受配置部を備え、
前記空洞部は、径方向から見て、前記軸受配置部と重なる位置に設けられる請求項1から3のいずれかに記載の減速装置。
【請求項5】
前記構成部材は、前記減速機構を収納するケーシングであり、
前記空洞部は、前記軸受配置部の径方向外側に設けられる請求項4に記載の減速装置。
【請求項6】
金属系素材により構成される金属部材と、
樹脂系素材により構成される樹脂素材と、を備え、
前記構成部材は、前記金属部材である請求項1から5のいずれかに記載の減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
減速装置では、減速装置を構成する構成部材に空洞部を設ける場合がある。たとえば、特許文献1の減速装置では、ケーシング内に給油するときに空気を抜き易くするための空洞部をケーシングに設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-193799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
減速装置の構成部材に空洞部を設けた場合、その構成部材の強度の低下が懸念される。本発明者は、このような空洞部が設けられた構成部材の強度を確保するうえで、新たな方策があるとの認識を得た。
【0005】
本発明のある態様は、こうした状況に鑑みてなされ、その目的の1つは、減速装置の構成部材に空洞部を設けつつ強度を確保できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、減速機構を備える減速装置であって、本減速装置を構成するとともに空洞部が設けられた構成部材を備え、前記構成部材は、前記空洞部内に設けられ、前記空洞部内に空隙を形成する補強構造を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、減速装置の構成部材に空洞部を設けつつ強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の出力部材の縦断面を含む減速装置の断面図である。
図2】第1実施形態の出力部材の横断面を含む減速装置の断面図である。
図3】第1実施形態の補強構造を模式的に示す断面斜視図である。
図4】第1変形例の補強構造の一部を模式的に示す図である。
図5】第2変形例の補強構造を模式的に示す断面斜視図である。
図6】第2実施形態の出力部材の縦断面を含む減速装置の断面図である。
図7】第3実施形態の出力部材の縦断面を含む減速装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の一例を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略したり、その寸法を適宜拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
【0010】
[第1の実施の形態]
図1は、第1実施形態の出力部材14の縦断面を含む減速装置10の断面図である。図2は、出力部材14の横断面を含む減速装置10の断面図である。減速装置10は、主に、入力部材12と、出力部材14と、減速機構16と、ケーシング18と、を備える。
【0011】
入力部材12には駆動装置(不図示)から回転が入力される。本実施形態の入力部材12は入力軸が構成する。駆動装置は、たとえば、モータ、ギヤモータ、エンジン等である。
【0012】
出力部材14は、被駆動装置(不図示)に回転を出力する。本実施形態の出力部材14は出力軸が構成する。
【0013】
減速機構16は、入力部材12から出力部材14に至る動力伝達経路に設けられ、入力部材12から入力される回転を減速して出力部材14に伝達する。本実施形態の減速機構16は、その動力伝達経路の前段側にある前段減速機構20と、その動力伝達経路の後段側にある後段減速機構22と、を備える。本実施形態の前段減速機構20は偏心揺動減速機構であり、後段減速機構22は直交軸歯車機構である。減速機構16は、複数の歯車により構成される歯車機構である。
【0014】
減速装置10は、入力部材12の回転により回転するクランク軸24を備える。本実施形態のクランク軸24は入力部材12が兼ねている。クランク軸24は、軸部24aの他に、軸部24aと一体的に回転可能な複数の偏心部24bを備える。偏心部24bは、軸部24aの回転中心線に対して自らの軸心が偏心しており、後述する外歯歯車28を揺動させることが可能である。本実施形態の偏心部24bは軸部24aと別体に構成されるが、軸部24aと同じ部材の一部として構成されてもよい。
【0015】
前段減速機構20は、クランク軸24の複数の偏心部24bに偏心軸受26を介して回転自在に支持される複数の外歯歯車28と、外歯歯車28と噛み合う内歯歯車30とを備える。本実施形態の内歯歯車30は、ケーシング18と一体化される内歯歯車本体32と、内歯歯車本体32の内周部に設けられるとともに内歯を構成する外ピン34とを備える。
【0016】
減速装置10は、前段減速機構20から出力される回転を後段減速機構22に伝達する中間軸36を備える。中間軸36は、外歯歯車28の回転が伝達されるキャリヤ38と、キャリヤ38と一体化される中間出力軸42と、中間出力軸42と一体化される中間入力軸44とを備える。キャリヤ38は、外歯歯車28を貫通する内ピン46と一体化されており、外歯歯車28の回転は内ピン46を介してキャリヤ38に伝達される。中間軸36は、前段減速機構20と後段減速機構22を連結する連結軸として機能する。中間軸36は、ケーシング18に複数の中間軸受48、50を介して回転自在に支持される。中間軸受48、50には、中間軸36の前段側部分を支持する第1中間軸受48と、中間軸36の後段側部分を支持する第2中間軸受50とが含まれる。
【0017】
後段減速機構22は、中間軸36に設けられるベベルピニオン52と、ベベルピニオン52と噛み合うベベルギヤ54とを備える。ベベルギヤ54は出力部材14と一体化されている。
【0018】
減速装置10は、減速機構16により回転する回転部材56を備える。本実施形態の回転部材56は中間軸36である。回転部材56の回転中心線に沿った方向を軸方向Xという。
【0019】
ケーシング18は、減速機構16を含む減速装置10の構成部材であって、ケーシング18とは別の構成部材を内部に収容する。本実施形態のケーシング18は、前段減速機構20を収容する第1収容部58と、後段減速機構22を収容する第2収容部60とを備える。第1収容部58は、ケーシング18の第2中間軸受50から前段減速機構20側の部分を構成し、第2収容部60は、ケーシング18の第2中間軸受50より後段減速機構22側の部分を構成する。
【0020】
ケーシング18は、第1中間軸受48が配置される第1軸受配置部62と、第2中間軸受50が配置される第2軸受配置部64とを備える。第1軸受配置部62や第2軸受配置部64はケーシング18の第1収容部58の内周部に設けられる。
【0021】
ケーシング18には、第1軸受配置部62と第2軸受配置部64の間にケーシング18の外内を連通する貫通孔66が形成される。本実施形態では、回転部材56の回転中心線を円中心とする円周方向を周方向というとき、貫通孔66は、周方向に間隔を空けて複数(本例では4つ)形成される。貫通孔66は栓部材68により閉塞され、その栓部材68を取り外すことで給油孔として使用可能である。ケーシング18内には貫通孔66を通して給油アセンブリ70から潤滑油が給油される。
【0022】
以上の減速装置10の動作を説明する。駆動装置から入力部材12に回転が伝達されると、クランク軸24が回転し、その偏心部24bにより外歯歯車28が揺動する。外歯歯車28は、自らの軸心がクランク軸24の回転中心線周りを回転するように揺動する。外歯歯車28が揺動すると、外歯歯車28と内歯歯車30の噛合位置が順次に周方向にずれる。この結果、クランク軸24(入力部材12)が一回転する毎に、外歯歯車28と内歯歯車30との歯数差に相当する分、外歯歯車28及び内歯歯車30の一方の自転が発生する。本実施形態ではケーシング18を介して内歯歯車30が外部部材に固定されており、外歯歯車28の自転が発生する。外歯歯車28が自転すると、外歯歯車28の自転成分が内ピン46を介して中間軸36に伝達され、中間軸36が回転する。
【0023】
中間軸36が回転すると、中間軸36と一体的にベベルピニオン52が回転し、ベベルピニオン52と噛み合うベベルギヤ54が回転する。ベベルギヤ54が回転すると、ベベルギヤ54と一体的に出力部材14が回転し、出力部材14から被駆動装置に回転が出力される。このとき、入力部材12の回転は、減速機構16の減速比で減速されたうえで出力部材14から出力される。
【0024】
図2を参照する。本実施形態の減速装置10は、減速装置10を構成するとともに空洞部72が設けられた構成部材74を備える。本実施形態の構成部材74はケーシング18である。構成部材74の空洞部72は、構成部材74で本来はソリッド(中実)な箇所に設けられる。空洞部72は、構成部材74とは別の構成部材を収容する空間とは別の箇所に設けられることになる。空洞部72は、構成部材74とは別の構成部材の収容に用いられないともいえる。
【0025】
本実施形態の空洞部72は、第1収容部58内の第1空間58aと第2収容部60内の第2空間60aを連通する。本実施形態の空洞部72は、中間軸36を鉛直方向に沿うように縦向きに配置した状態でケーシング18内に潤滑油を給油するとき、第1空間58aから第2空間60aに潤滑油を給油する給油通路として機能する。また、本実施形態の空洞部72は、このときに、第2空間60aから第1空間58aに第2空間60a内の空気を抜く空気抜き通路としても機能する。
【0026】
図3は、次に説明する第1実施形態の補強構造76を模式的に示す断面斜視図である。空洞部72が設けられた構成部材74は、空洞部72内に設けられ、空洞部72内に空隙78を形成する補強構造76を備える。図2では補強構造76にダブルハッチングを付して示す。補強構造76は、構成部材74の補強に用いられる。
【0027】
補強構造76は、複数の補強材80を組み合わせて構成される。補強構造76は、図3の例では、複数の線状の補強材80を組み合わせた格子構造が構成する。このような格子構造として、本例では、複数の補強材80により形成される四角形を基本単位として、その集合体により構成されるラーメン構造を示す。
【0028】
図4は、第1変形例の補強構造76の一部を模式的に示す図である。補強構造76は、図4の例でも、複数の線状の補強材80を組み合わせた格子構造が構成する。このような格子構造として、本例では、複数の補強材80により形成される三角形を基本単位として、その集合体により構成されるトラス構造を示す。これらの例のように、補強構造76は、複数の線状の補強材80を規則的に組んだ格子構造が構成してもよいし、複数の線状の補強材80を不規則的に組んだ格子構造が構成してもよい。
【0029】
図5は、第2変形例の補強構造76を模式的に示す断面斜視図である。補強構造76は、図5の例では、複数の補強材80を組み合わせた多孔質構造が構成する。このような多孔質構造として、本例では、複数の面状の補強材80により形成される所定の形状(本例では六角形)を基本単位として、その集合体により構成されるハニカム構造が構成する。この基本単位となる形状は、六角形に限らず、四角形等でもよい。このように補強構造76は、たとえば、複数の線状又は面状の補強材80を組み合わせて構成されてもよい。
【0030】
複数の補強材80は、構成部材74の空洞部72の内壁面と同じ部材により一体に形成される。全ての補強材80は、空洞部72の内壁面に直接に繋がっていなくともよく、他の補強材80を介して繋がっていてもよい。補強構造76は、空洞部72内に空隙78を形成しつつ空洞部72内を部分的に埋めるように設けられる。この空隙78は、空洞部72の内壁面と補強材80の間や、複数の補強材80の間に形成される。前述の第1空間58aと第2空間60aは空隙78を通して連通される。
【0031】
このような補強構造76を備える構成部材74は、3Dプリンタを用いた立体造形により成形される。この立体造形の具体例は特に限定されず、たとえば、レーザー焼結方式、熱熔解積層方式等が用いられてもよい。このような立体造形により構成部材74を成形するうえで、構成部材74の素材も特に限られず、たとえば、金属系素材、樹脂系素材が用いられてもよい。本実施形態の構成部材74(ケーシング18)は金属系素材により構成される。本明細書での「金属系素材」には、たとえば、鋳鉄、鋼を含む鉄系素材、アルミニウム合金を含むアルミニウム系素材が含まれる。本明細書での「樹脂系素材」には、エンジニアリングプラスチック等の他、炭素繊維強化樹脂、硝子繊維強化樹脂等の複合材料が含まれる。
【0032】
図2に戻る。構成部材74の空洞部72は軸方向Xに延びるように設けられる。本実施形態の空洞部72は、周方向に間隔を空けた位置に複数(本例では2つ)設けられる。空洞部72は、この他にも、回転部材56の回転中心線の周りで環状に連続するように設けられてもよい。ここで説明した条件は、補強構造76、空隙78も同様に満たす。
【0033】
本実施形態の空洞部72は、径方向から見て、第2軸受配置部64と重なる位置に設けられる。本実施形態の空洞部72は、第2軸受配置部64の径方向外側に設けられる。ここでの「径方向」とは、軸受配置部64に配置される軸受(中間軸受50)の径方向をいう。この径方向は、回転部材56の回転中心線を円中心とする半径方向でもある。本実施形態の空洞部72は、径方向から見て、第2軸受配置部64よりも軸方向Xに延びるように設けられる。ここで説明した条件は、補強構造76や空隙78と第2軸受配置部64の間でも満たされる。
【0034】
以上の減速装置10の効果を説明する。
【0035】
(A)減速装置10を構成する構成部材74の空洞部72内には補強構造76が設けられる。よって、構成部材74の空洞部72内に補強構造76を設けない場合と比べ、構成部材74の強度の向上を図れる。このため、構成部材74に空洞部72を設けつつ強度を確保できる。特に、構成部材74に空洞部72を設けることで構成部材74の軽量化を図りつつ、構成部材74の強度を確保できる利点がある。
【0036】
補強構造76により補強される構成部材74はケーシング18である。ケーシング18は、通常、減速装置の他の構成部材より大体積となり易い。よって、このようなケーシング18に空洞部72を設けることで、ケーシング18の軽量化を効果的に図れる。
【0037】
本実施形態では、補強構造76により強度を確保しつつ、空洞部72の内部空間(空隙78)の容積を大きくする設計が許容される。よって、空洞部72の内部空間の容積を大きくすることで、構成部材74の補強構造76により強度を確保しつつも第1空間58aと第2空間60aの間で流体を流動させ易くできる。これにより、本実施形態では、ケーシング18内に給油する場合に、構成部材74の強度を確保しつつも、構成部材74の空洞部72を通して第1空間58aから第2空間60aに潤滑剤を流し易くしたり、第2空間60aから第1空間58aから空気を抜き易くできる。
【0038】
(B)構成部材74の空洞部72は、径方向から見て、軸受配置部64と重なる位置に設けられる。このような空洞部72がある箇所の周囲には、軸受(中間軸受50)から軸受配置部64を介して大荷重が伝達されるため、通常、設計上で要求される要求強度が大きくなる。本実施形態によれば、このような空洞部72内に補強構造76を設けているため、その周囲の箇所での要求強度を容易に確保できる。
【0039】
[第2の実施の形態]
図6は、第2実施形態の出力部材14の縦断面を含む減速装置10の断面図である。本実施形態において、前述した減速機構16により回転する回転部材56は出力部材14である。
【0040】
本実施形態の減速機構16は偏心揺動減速機構である。減速機構16は、入力部材12(クランク軸24)の複数の偏心部24bに偏心軸受26を介して回転自在に支持される複数の外歯歯車28と、外歯歯車28と噛み合う内歯歯車30とを備える。本実施形態の内歯歯車30は、ケーシング18と一体化される内歯歯車本体32を備え、内歯歯車本体32の内周部に内歯が設けられる。
【0041】
ケーシング18は、減速機構16を含む減速装置10の構成部材を内部に収容する。本実施形態のケーシング18は、軸方向Xの入力側に設けられる第1ケーシング部材82と、その軸方向Xで反対側の反入力側に設けられる第2ケーシング部材84とを備える。第1ケーシング部材82や第2ケーシング部材84は内歯歯車本体32とボルト86により一体化される。
【0042】
減速装置10は、外歯歯車28に対して軸方向Xの入力側に設けられる第1キャリヤ88と、外歯歯車28に対して軸方向の反入力側に設けられる第2キャリヤ90とを備える。第1キャリヤ88は第1入力軸受92を介してクランク軸24を回転自在に支持し、第2キャリヤ90は第2入力軸受93を介してクランク軸24を回転自在に支持する。第1キャリヤ88は第1入力軸受92が配置される第1軸受配置部96を備え、第2キャリヤ90は、第2入力軸受93が配置される第2軸受配置部97を備える。軸受配置部96、97はこれらの内周部に設けられる。
【0043】
減速装置10を支持するために外部部材に固定される部材を被固定部材98という。本実施形態の出力部材14は第2キャリヤ90であり、被固定部材98はケーシング18である。出力部材14は、被固定部材98に主軸受94を介して回転自在に支持される。
【0044】
本実施形態の内ピン46は第2キャリヤ90の一部と同じ部材が構成する。本実施形態のように第2キャリヤ90が出力部材14となる場合、内ピン46は、外歯歯車28の自転成分を受けて第2キャリヤ90に伝達する。一方、キャリヤ90が被固定部材98となる場合、内ピン46は、外歯歯車28の自転成分を受けて、その外歯歯車28の自転を拘束する。
【0045】
以上の減速装置10の動作を説明する。駆動装置から入力部材12に回転が伝達されると、第1実施形態と同様、外歯歯車28及び内歯歯車30の一方の自転が発生する。第2キャリヤ90が出力部材14となり、ケーシング18が被固定部材98となる場合、外歯歯車28の自転が発生する。一方、ケーシング18が出力部材14となり、キャリヤ90が被固定部材98となる場合、内歯歯車30の自転が発生する。出力部材14は、外歯歯車28又は内歯歯車30の自転成分と同期して回転することで、その自転成分を被駆動装置に出力する。
【0046】
本実施形態の減速装置10は、金属系素材により構成される金属部材100と、樹脂系素材により構成される樹脂部材102とを備える。樹脂部材102は、本実施形態では、ケーシング18、外歯歯車28、内歯歯車30であり、金属部材100は、これらとは他の構成部材である。詳しくは、金属部材100には、入力部材12(クランク軸24)と、キャリヤ88、90と、が含まれる。このように減速装置10の構成部材の一部を樹脂部材102とすることで、その構成部材を金属部材にする場合と比べ、減速装置10の軽量化を図れる。キャリヤ90が出力部材14となる場合、キャリヤ90が被駆動装置に連結される。このキャリヤ90を金属部材100とすることで連結強度を確保できる。
【0047】
本実施形態の減速装置10も、第1実施形態と同様、減速装置10を構成するとともに空洞部72が設けられる構成部材74を備える。本実施形態の構成部材74は第1キャリヤ88と第2キャリヤ90である。本実施形態の構成部材74(キャリヤ88、90)も空洞部72内に設けられる補強構造76を備える。このような補強構造76を備える構成部材74(キャリヤ88、90)は、本実施形態では、前述の通り、金属部材100である。
【0048】
第1キャリヤ88の空洞部72は軸方向Xに延びるように設けられる。空洞部72内の補強構造76、空隙78(図示はしない)も同様である。本実施形態の第1キャリヤ88の空洞部72は、第1キャリヤ88の外部の空間と連通しておらず、第1キャリヤ88の内部で閉じた閉空間を形成するように設けられる。第2キャリヤ90の空洞部72も同様である。
【0049】
第1キャリヤ88の空洞部72は、径方向から見て、第1キャリヤ88の第1軸受配置部96と重なる位置に設けられる。本実施形態の空洞部72は、第1軸受配置部96の径方向外側に設けられる。本実施形態の空洞部72は、径方向から見て、第1軸受配置部96よりも軸方向Xに延びるように設けられる。ここで説明した条件は、補強構造76や空隙78と第1軸受配置部96の間でも満たされる。
【0050】
第2キャリヤ90の空洞部72は、径方向から見て、第2キャリヤ90の第2軸受配置部97と重なる位置に設けられる。本実施形態の空洞部72は、第2軸受配置部97の径方向外側に設けられる。本実施形態の空洞部72は、径方向から見て、第2軸受配置部97から内ピン46の内部に至るまでの範囲で軸方向Xに延びるように設けられ、ここで説明した条件は、補強構造76や空隙78と第2軸受配置部97の間でも満たされる。
【0051】
以上の減速装置10によっても、前述した(A)、(B)で説明した効果を得られる。
【0052】
(C)本実施形態で補強構造76により補強される構成部材74は金属部材100である。よって、減速装置10の構成部材の一部を樹脂部材102とすることで減速装置10の軽量化を図りつつ、金属部材100に空洞部72を設けることで、金属部材100も軽量化を図りつつ強度を確保できる。
【0053】
[第3の実施の形態]
図7は、第3実施形態の出力部材14の縦断面を含む減速装置10の断面図である。本実施形態において、前述した減速機構16により回転する回転部材56は出力部材14である。
【0054】
本実施形態の入力部材12は剛性を持つ筒状の起振体104が構成する。起振体104は、中間軸部104aと、中間軸部104aより入力側にある入力側軸部104bと、中間軸部104aより反入力側にある反入力側軸部104cとを備える。中間軸部104aは、その回転中心線に直交する断面の外周形状が楕円状をなす。入力側軸部104bや反入力側軸部104cは、その回転中心線に直交する断面の外周形状が円状をなす。本明細書での「楕円」とは、幾何学的な厳密な楕円に限定されず、略楕円も含まれる。
【0055】
本実施形態の減速機構16は撓み噛み合い式減速機構である。本実施形態の減速機構16は、いわゆる筒型の撓み噛み合い式減速機構である。減速機構16は、起振体104の中間軸部104aの外周側に配置される外歯歯車106と、外歯歯車106と噛み合う内歯歯車108、110とを備える。
【0056】
外歯歯車106は、可撓性を持つ筒状部材である。外歯歯車106は、外歯歯車106の外周部に形成された入力側の第1外歯部106a及び反入力側の第2外歯部106bを備える。
【0057】
内歯歯車108、110は、起振体104の回転に追従して変形しない程度の剛性を持つ環状部材である。本実施形態の内歯歯車108、110は、第1外歯部106aと噛み合う減速用内歯歯車108と、第2外歯部106bと噛み合う出力用内歯歯車110とを含む。減速用内歯歯車108の内歯数は第1外歯部106aの外歯数より多く、出力用内歯歯車110の内歯数は第2外歯部106bの外歯数と同数である。出力用内歯歯車110は、減速用内歯歯車108を主軸受112を介して回転自在に支持する環状の支持部材114と一体化されている。本実施形態において、出力用内歯歯車110や第2軸受ハウジング122(後述する)は出力部材14を構成する。
【0058】
減速用内歯歯車108は、起振体104を第1入力軸受116を介して回転自在に支持する環状の第1軸受ハウジング118と一体化されている。出力用内歯歯車110は、起振体104を第2入力軸受120を介して回転自在に支持する環状の第2軸受ハウジング122と一体化されている。起振体104は、第1入力軸受116が配置される第1軸受配置部124と、第2入力軸受120が配置される第2軸受配置部126を備える。起振体104の軸受配置部124、126は起振体104の外周部に設けられる。
【0059】
本実施形態のケーシング18は、減速機構16を含む減速装置10の構成部材を内部に収容する。本実施形態のケーシング18は、前述の減速用内歯歯車108、出力用内歯歯車110、第1軸受ハウジング118及び第2軸受ハウジング122が構成する。
【0060】
以上の減速装置10の動作を説明する。駆動装置から入力部材12に回転が伝達されると、起振体104が回転する。起振体104が回転すると、内歯歯車108、110との噛合位置を周方向に変えつつ、起振体104の中間軸部104aの形状に合うように外歯歯車106が連続的に撓み変形させられる。これにより、外歯歯車106は、起振体104が一回転する毎に、減速用内歯歯車108と第1外歯部106aの歯数差に相当する分、減速用内歯歯車108に対して相対回転(自転)する。出力用内歯歯車110は、外歯歯車106の第2外歯部106bと歯数が同じであるため、起振体104が一回転した前後で第2外歯部106bとの相対的な噛合位置が変わらないまま、外歯歯車106と同じ自転成分で同期して回転する。この出力用内歯歯車110の回転は出力部材14としての出力用内歯歯車110から被駆動装置に伝達される。このとき、起振体104の回転は、減速機構16の減速比で減速されて出力部材14から出力される。
【0061】
本実施形態の減速装置10も、第2実施形態と同様、金属部材100と樹脂部材102を備える。樹脂部材102は、本実施形態では、ケーシング18、外歯歯車106、内歯歯車108、110であり、金属部材100は、これらとは他の構成部材である。詳しくは、金属部材100には、起振体104が含まれる。
【0062】
本実施形態の減速装置10も、第1実施形態と同様、減速装置10を構成するとともに空洞部72が設けられる構成部材74を備える。本実施形態の構成部材74は起振体104である。本実施形態の構成部材74(起振体104)も空洞部72内に設けられる補強構造76を備える。このような補強構造76を備える構成部材74(起振体104)は、本実施形態では、前述の通り、金属部材100である。
【0063】
起振体104の空洞部72は軸方向Xに延びるように設けられる。空洞部72内の補強構造76、空隙78(図示はしない)も同様である。本実施形態の空洞部72も、第2実施形態と同様、起振体104の外部の空間と連通しておらず、起振体104の内部で閉じた閉空間を形成するように設けられる。
【0064】
起振体104の空洞部72は、径方向から見て、起振体104の第1軸受配置部124と重なる位置に設けられる。本実施形態の空洞部72は、第1軸受配置部124の径方向内側に設けられる。本実施形態の空洞部72は、径方向から見て、第1軸受配置部124よりも軸方向Xに延びるように設けられる。ここで説明した条件は、補強構造76と第2軸受配置部126の間でも満たされる。
【0065】
以上の減速装置10によっても、前述した(A)、(B)、(C)で説明した効果を得られる。
【0066】
各構成要素の変形例を説明する。
【0067】
減速機構の種類は特に限られない。たとえば、減速機構は、偏心揺動減速機構、直交軸歯車機構、撓み噛み合い型減速機構の他に、遊星歯車機構、平行軸歯車機構等の何れかでもよい。第1実施形態、第2実施形態ではセンタークランクタイプの偏心揺動減速機構を例に説明したが、その種類は特に限られない。たとえば、複数のクランク軸24が配置される振り分けタイプの偏心揺動減速機構でもよい。また、第3実施形態では筒型の撓み噛み合い型減速機構を例に説明したが、撓み噛み合い型減速装置の種類は特に限られない。たとえば、内歯歯車が一つのカップ型又はシルクハット型の撓み噛み合い型減速機構でもよい。また、第2実施形態の減速装置10の出力部材14はケーシング18であり、被固定部材98はキャリヤ88、90でもよい。
【0068】
補強構造76を備える構成部材74の具体例は実施形態の例に限られない。補強構造76を備える構成部材74は、ケーシング18、キャリヤ、起振体104の他にも、たとえば、内歯歯車、外歯歯車等でもよい。また、補強構造76が内部に設けられる空洞部72は、軸受配置部とは無関係の箇所にて構成部材74に設けられていてもよい。
【0069】
補強構造76は、空洞部72内に空隙78を形成しつつ空洞部72を補強できるものであればよく、その具体例は実施形態の例に限られない。補強材80は、たとえば、線状又は面状の補強材80とは別の補強材80を組み合わせて構成されてもよい。
【0070】
空洞部72が連通する第1空間58aと第2空間60aの具体例は特に限られない。実施形態では第1空間58aに前段減速機構20、第2空間60aに後段減速機構22が収容されたが、その空間58a、60a内の収容物は特に限られないということである。
【0071】
構成部材74がケーシング18の場合、構成部材74の空洞部72は、ケーシング18の外部空間と内部空間を連通させなければ、どのような箇所に開口していてもよい。たとえば、構成部材74の空洞部72は、第1実施形態では、ケーシング18の内部の複数箇所で開口する例を説明した。詳しくは、第1実施形態の構成部材74の空洞部72は、第1収容部58の内壁面と第2収容部60の内壁面に開口している。この他にも、ケーシング18の外部の複数箇所で開口していてもよい。また、構成部材74がケーシング18の場合、構成部材74の空洞部72はケーシング18に開口していなくともよい。構成部材74がケーシング18以外の場合、構成部材74の空洞部72の開口箇所は特に限られない。
【0072】
金属部材100と樹脂部材102の具体的な組み合わせは実施形態の例に限られない。ケーシング18、外歯歯車、内歯歯車、キャリヤ、入力部材12等の何れが金属部材100、樹脂部材102であってもよい。また、減速装置10の全ての構成部材が金属部材100及び樹脂部材102の何れかでもよい。
【0073】
以上、本発明の実施形態や変形例について詳細に説明した。前述した実施形態や変形例は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態や変形例の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との記載を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【符号の説明】
【0074】
10…減速装置、16…減速機構、18…ケーシング、58a…第1空間、60a…第2空間、64/96/124…軸受配置部、72…空洞部、74…構成部材、76…補強構造、78…空隙、100…金属部材、102…樹脂部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7