(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】インプリント装置および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20221214BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2018238651
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅田 邦彦
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-069918(JP,A)
【文献】特開2016-058735(JP,A)
【文献】特開2018-182300(JP,A)
【文献】特開2013-069919(JP,A)
【文献】特開2017-063111(JP,A)
【文献】特開2015-173271(JP,A)
【文献】特開2013-175604(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0029527(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のショット領域の上のインプリント材に型のパターン領域を接触させ前記ショット領域と前記パターン領域とをアライメントした後に前記インプリント材を硬化させ、これにより前記基板の上に前記インプリント材の硬化物からなるパターンを形成するインプリント装置であって、
前記インプリント材に光を照射する光照射部を備え、
前記光照射部は、前記ショット領域の上の前記インプリント材と前記パターン領域とが接触し前記パターン領域が平坦にされた状態で、前記インプリント材の粘弾性を高めるように前記インプリント材に光を照射する予備露光を行い、
前記予備露光では、前記光照射部は、前記インプリント材と前記パターン領域とが接触を開始した後、前記インプリント材と前記パターン領域とが最後に接触する最終接触領域における照度が前記最終接触領域とは異なる特定領域における照度よりも弱いように定められた照度分布で前記インプリント材に光を照射する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記予備露光では、更に、前記光照射部は、前記インプリント材と前記パターン領域とが接触を開始した接触開始領域における照度が前記接触開始領域とは異なる特定領域における照度よりも弱いように定められた照度分布で前記インプリント材に光を照射する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記接触開始領域は、前記ショット領域の中央部であり、前記最終接触領域は、前記ショット領域の周辺部である、
ことを特徴とする請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記パターン領域は、第1領域と第2領域を含み、前記第1領域に存在するパターンに対する前記インプリント材の充填性は、前記第2領域に存在するパターンに対する前記インプリント材の充填性よりも悪く、
前記照度分布は、更に、前記第1領域における照度が前記第2領域における照度より弱いように定められる、
ことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
基板のショット領域の上のインプリント材に型のパターン領域を接触させ前記ショット領域と前記パターン領域とをアライメントした後に前記インプリント材を硬化させ、これにより前記基板の上に前記インプリント材の硬化物からなるパターンを形成するインプリント装置であって、
前記インプリント材に光を照射する光照射部を備え、
前記光照射部は、前記ショット領域の上の前記インプリント材と前記パターン領域とが接触し前記パターン領域が平坦にされた状態で、前記インプリント材の粘弾性を高めるように前記インプリント材に光を照射する予備露光を行い、
前記パターン領域は、第1領域と第2領域を含み、前記第1領域に存在するパターンに対する前記インプリント材の充填性は、前記第2領域に存在するパターンに対する前記インプリント材の充填性よりも悪く、
前記予備露光では、前記光照射部は、前記第1領域における照度が前記第2領域における照度より弱いように定められた照度分布で前記インプリント材に光を照射する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項6】
前記第1領域にマークが配置されている、
ことを特徴とする請求項
4又は5に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記ショット領域は、第3領域と第4領域とを含み、前記パターン領域のうち前記第3領域に対面する領域に対する前記インプリント材の充填性は、前記パターン領域のうち前記第4領域に対面する領域に対する前記インプリント材の充填性よりも悪く、
前記照度分布は、更に、前記第3領域における照度が前記第4領域における照度より弱いように定められる、
ことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
基板のショット領域の上のインプリント材に型のパターン領域を接触させ前記ショット領域と前記パターン領域とをアライメントした後に前記インプリント材を硬化させ、これにより前記基板の上に前記インプリント材の硬化物からなるパターンを形成するインプリント装置であって、
前記インプリント材に光を照射する光照射部を備え、
前記光照射部は、前記ショット領域の上の前記インプリント材と前記パターン領域とが接触し前記パターン領域が平坦にされた状態で、前記インプリント材の粘弾性を高めるように前記インプリント材に光を照射する予備露光を行い、
前記ショット領域は、第3領域と第4領域とを含み、前記パターン領域のうち前記第3領域に対面する領域に対する前記インプリント材の充填性は、前記パターン領域のうち前記第4領域に対面する領域に対する前記インプリント材の充填性よりも悪く、
前記予備露光では、前記光照射部は、前記第3領域における照度が前記第4領域における照度より弱いように定められた照度分布で前記インプリント材に光を照射する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項9】
前記第3領域にマークが配置されている、
ことを特徴とする請求項
7又は8に記載のインプリント装置。
【請求項10】
前記光照射部は、前記基板と前記型とのアライメントが終了した後に、前記インプリント材に更に光を照射する本露光を行い、前記本露光では、前記インプリント材の前記硬化物と前記型との分離が可能になるように前記インプリント材に光が照射される、
ことを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項11】
基板のショット領域の上のインプリント材に型のパターン領域を接触させ前記ショット領域と前記パターン領域とをアライメントした後に前記インプリント材を硬化させ、これにより前記基板の上に前記インプリント材の硬化物からなるパターンを形成するインプリント装置であって、
前記インプリント材に光を照射する光照射部を備え、
前記光照射部は、前記ショット領域の上の前記インプリント材と前記パターン領域とが接触し前記パターン領域が平坦にされた状態で、前記インプリント材の粘弾性を高めるように前記インプリント材に光を照射する予備露光を行い、
前記予備露光では、前記光照射部は、前記インプリント材と前記パターン領域とが接触を開始した後、前記インプリント材と前記パターン領域とが最後に接触する最終接触領域における照射積算量が前記最終接触領域とは異なる特定領域における照射積算量よりも少なくなるように定められた条件で前記インプリント材に光を照射する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項12】
基板のショット領域の上のインプリント材に型のパターン領域を接触させ前記ショット領域と前記パターン領域とをアライメントした後に前記インプリント材を硬化させ、これにより前記基板の上に前記インプリント材の硬化物からなるパターンを形成するインプリント装置であって、
前記インプリント材に光を照射する光照射部を備え、
前記光照射部は、前記ショット領域の上の前記インプリント材と前記パターン領域とが接触し前記パターン領域が平坦にされた状態で、前記インプリント材の粘弾性を高めるように前記インプリント材に光を照射する予備露光を行い、
前記パターン領域は、第1領域と第2領域を含み、前記第1領域に存在するパターンに対する前記インプリント材の充填性は、前記第2領域に存在するパターンに対する前記インプリント材の充填性よりも悪く、
前記予備露光では、前記光照射部は、前記第1領域における照射積算量が前記第2領域における照射積算量より少なくなるように定められた条件で前記インプリント材に光を照射する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項13】
前記予備露光に用いられる前記光照射部は、空間光変調素子を含んでいることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項14】
請求項1乃至
13のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いて基板の上にパターンを形成する工程と、
前記工程において前記パターンが形成された基板の加工を行う工程と、
を含み、前記加工が行われた前記基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【請求項15】
基板のショット領域の上のインプリント材に型のパターン領域を接触させ前記ショット領域と前記パターン領域とをアライメントした後に前記インプリント材を硬化させ、これにより前記基板の上に前記インプリント材の硬化物からなるパターンを形成するインプリント方法であって、
前記ショット領域の上の前記インプリント材と前記パターン領域とが接触し前記パターン領域が平坦にされた状態で、前記インプリント材の粘弾性を高めるように前記インプリント材に光を照射する予備露光を行う工程を含み、
前記予備露光では、前記インプリント材と前記パターン領域とが接触を開始した後、前記インプリント材と前記パターン領域とが最後に接触する最終接触領域における照射積算量が前記最終接触領域とは異なる特定領域における照射積算量よりも少なくなるように定められた条件で前記インプリント材に光を照射する、
ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項16】
基板のショット領域の上のインプリント材に型のパターン領域を接触させ前記ショット領域と前記パターン領域とをアライメントした後に前記インプリント材を硬化させ、これにより前記基板の上に前記インプリント材の硬化物からなるパターンを形成するインプリント方法であって、
前記ショット領域の上の前記インプリント材と前記パターン領域とが接触し前記パターン領域が平坦にされた状態で、前記インプリント材の粘弾性を高めるように前記インプリント材に光を照射する予備露光を行う工程を含み、
前記パターン領域は、第1領域と第2領域を含み、前記第1領域に存在するパターンに対する前記インプリント材の充填性は、前記第2領域に存在するパターンに対する前記インプリント材の充填性よりも悪く、
前記予備露光では、前記第1領域における照射積算量が前記第2領域における照射積算量より少なくなるように定められた条件で前記インプリント材に光を照射する、
ことを特徴とするインプリント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント装置は、基板のショット領域の上のインプリント材に型(モールド)のパターン領域を接触させた状態でインプリント材を光照射によって硬化させてショット領域の上にパターンを形成する。インプリント装置では、ショット領域上のインプリント材と型とが接触した状態で、ショット領域とパターン領域とのアライメントがなされる。このアライメントは、アライメントスコープによって基板のショット領域と型のパターン領域とのアライメント誤差を検出しながら行われうる。
【0003】
インプリント材の粘弾性が高い場合、基板と型とはインプリント材によって結合された状態となり、基板と型との間の相対的な振動が低減される。したがって、インプリント材の粘弾性が高い場合、基板のショット領域と型のパターン領域とのアライメントが容易である。一方、インプリント材の粘弾性が低い場合、基板と型とが相互に独立して振動しうるので、基板のショット領域と型のパターン領域とのアライメントが困難になり、アライメント精度が低下しうる。
【0004】
特許文献1には、基板の上の樹脂(インプリント材)とモールドとの接触領域が中央から周辺に向かって広がってゆく際にモールドと樹脂とが接触している領域の拡大に応じて光の照射領域を変更することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、アライメントのためにインプリント材の粘弾性を高めることは、アライメントの精度を高めるために有利である。しかし、インプリント材の粘弾性を高めることは、型のパターン領域の凹部、あるいは、基板とパターン領域との間の空間に対するインプリント材の充填を阻害しうる。インプリント材の充填の阻害は、スループットの低下、および/または、歩留まりの低下をもたらしうる。
【0007】
本発明は、アライメント時にインプリント材の粘弾性を高めることによるスループットの低下および/または歩留まりの低下を抑制するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの側面は、基板のショット領域の上のインプリント材に型のパターン領域を接触させ前記ショット領域と前記パターン領域とをアライメントした後に前記インプリント材を硬化させ、これにより前記基板の上に前記インプリント材の硬化物からなるパターンを形成するインプリント装置に係り、前記インプリント装置は、前記インプリント材に光を照射する光照射部を備え、前記光照射部は、前記ショット領域の上の前記インプリント材と前記パターン領域とが接触し前記パターン領域が平坦にされた状態で、前記インプリント材の粘弾性を高めるように前記インプリント材に光を照射する予備露光を行い、前記予備露光では、前記光照射部は、前記インプリント材と前記パターン領域とが接触を開始した後、前記インプリント材と前記パターン領域とが最後に接触する最終接触領域における照度が前記最終接触領域とは異なる特定領域における照度よりも弱いように定められた照度分布で前記インプリント材に光を照射する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、アライメント時にインプリント材の粘弾性を高めることによるスループットの低下および/または歩留まりの低下を抑制するために有利な技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態のインプリント装置の構成を示す図。
【
図2】本発明の一実施形態のインプリント装置によって1又は複数の基板にインプリント材を用いてパターンを形成する処理の流れを例示する図。
【
図3】基板の上のインプリント材と型のパターン領域とを接触させる工程における調整機構による型の形状の調整および相対駆動機構による基板と型との相対位置の調整を例示する図。
【
図4】予備露光時の照度分布(比較例(a)、第1実施例(b)、第2実施例(c))を例示する図。
【
図5】第3実施例における型のパターン領域(a)、および、第3実施例における予備露光時の照度分布(b)を例示する図。
【
図6】基板の表面に存在する凹凸を説明するための図。
【
図7】第1乃至第3実施例を組み合わせた照度分布を例示する図。
【
図8】照射積算量を照度の調整によって調整する例を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明のその例示的な実施形態を通して説明する。
【0012】
図1には、本発明の一実施形態のインプリント装置100の構成が模式的に示されている。インプリント装置100は、基板Sの上のインプリント材IMに型Mのパターン領域PRを接触させ基板Sとパターン領域PRとをアライメントした後にインプリント材IMを硬化させる。これにより、基板Sの上には、インプリント材IMの硬化物からなるパターンが形成される。基板Sは、1又は複数のショット領域を有し、インプリント装置100は、基板Sのショット領域の上のインプリント材IMに型Mのパターン領域PRを接触させ該ショット領域とパターン領域PRとをアライメントした後にインプリント材IMを硬化させる。
【0013】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、光の照射により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0014】
本明細書および添付図面では、基板Sの表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御または駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸、Z軸の座標に基づいて特定されうる情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸、θZ軸の値で特定されうる情報である。位置決めは、位置および/または姿勢を制御することを意味する。アライメント(位置合わせ)は、基板Sのショット領域と型Mのパターン領域とのアライメント誤差(重ね合わせ誤差)が低減されるように基板Sおよび型Mの少なくとも一方の位置および/または姿勢の制御を含みうる。また、アライメントは、基板Sのショット領域および型Mのパターン領域の少なくとも一方の形状を補正あるいは変更するための制御を含みうる。
【0015】
インプリント装置100は、定盤1、ダンパ3、フレーム2、相対駆動機構20、調整機構28、光照射部IRR、アライメントスコープ15、ディスペンサ25、パージガス供給部26、および、制御部11を備えうる。相対駆動機構20は、基板Sのショット領域と型Mのパターン領域PRとの相対位置を変更する。相対駆動機構20による相対位置の調整は、基板Sの上のインプリント材IMに対する型Mの接触、および、硬化したインプリント材IM(硬化物のパターン)からの型Mの分離のための駆動を含む。また、相対駆動機構20による相対位置の調整は、基板S(のショット領域)と型M(のパターン領域PR)とのアライメントを含む。相対駆動機構20は、基板S(のショット領域)を位置決めする基板位置決め機構21と、型M(のパターン領域PR)を位置決めする型位置決め機構7とを含みうる。
【0016】
基板位置決め機構21は、基板Sを保持する基板保持部5と、基板保持部5を駆動することによって基板Sを駆動する基板駆動機構4とを含みうる。基板保持部5および基板駆動機構4は、定盤1によって支持されうる。基板駆動機構4は、基板Sを複数の軸(例えば、X軸、Y軸、θZ軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。インプリント装置100は、基板Sまたは基板保持部5の位置を計測する計測器(例えば、干渉計またはエンコーダ)を備えることができ、該計測器の出力に基づいて基板保持部5の位置がフィードバック制御されうる。型位置決め機構7は、型Mを保持する型保持部(不図示)と、該型保持部を駆動することによって型Mを駆動する型駆動機構(不図示)とを含みうる。型位置決め機構7は、型Mを複数の軸(例えば、Z軸、θX軸、θY軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。
【0017】
インプリント装置100は、基板S上のインプリント材IMとパターン領域PRとが部分的に接触した後にインプリント材IMとパターン領域PRとの接触面積が拡大するように型Mの形状(Z軸に平行な面における形状)を調整する調整機構28を更に備えうる。調整機構28は、型Mの裏面(パターン領域PRとは反対側の面)の側に形成される空間SPの圧力を調整することによって、型Mの形状を調整しうる。型Mは、調整機構28によって、基板Sに向かって凸形状に膨らんだり、平坦形状になったりしうる。
【0018】
定盤1の上には、ダンパ3を介してフレーム2が設けられうる。ダンパ3は、定盤1からフレーム2への振動の伝達を低減する。型位置決め機構7は、フレーム2によって支持されうる。光照射部IRRは、基板Sのショット領域の上のインプリント材IMに光を照射(換言すると、インプリント材IMを露光)するように構成される。型位置決め機構7は、光を透過する一方で空間SPを規定する窓Wを有し、光照射部IRRは、窓Wを通してインプリント材IMに光を照射するように構成されうる。
【0019】
光照射部IRRは、例えば、光源12と、シャッタ14と、ミラー13a、13b、13cと、空間光変調器16とを含みうる。空間光変調器16は、制御部11からの指令に従って、基板Sのショット領域の上のインプリント材IMに照射される光の照度分布を制御しうる。空間光変調器16は、例えば、デジタル・ミラー・デバイスで構成されうる。デジタル・ミラー・デバイスは、個別に制御可能な複数のミラーを含み、該複数のミラーのそれぞれの角度によって、インプリント材IMに照射される光の照度分布を制御することができる。空間光変調器16の代わりに、例えば、液晶空間光変調器が使用されてもよい。
【0020】
基板Sのショット領域の上のインプリント材IMに対する光の照射、即ち、インプリント材IMの露光は、予備露光および本露光を含みうる。光照射部IRRは、互いに発光波長および/または発光強度が異なる複数の光源を有してもよい。例えば、予備露光には、それに対応する少なくも1つの光源が使用され、本露光には、それに対応する少なくとも1つの光源が使用されうる。この場合において、複数の光源に対して共通の空間光変調器が設けられてもよいし、複数の光源にそれぞれ対応するように複数の空間光変調器が設けられてもよい。
【0021】
アライメントスコープ15は、基板Sのショット領域と型Mのパターン領域PRとのアライメント誤差を検出するために用いられる。アライメントスコープ15を用いて、ショット領域に設けられたマークと、パターン領域PRに設けられたマークとの相対位置を検出することができる。複数のマーク対(各マーク対は、ショット領域に設けられたマークと、パターン領域PRに設けられたマークとで構成される)について相対位置を検出することによって、基板Sのショット領域と型Mのパターン領域PRとのアライメント誤差を検出することができる。インプリント装置100では、基板Sのショット領域と型Mのパターン領域PRとのアライメント方法として、ダイバイダイアライメント方式を用いられうる。
【0022】
ディスペンサ25(供給部)は、基板Sのショット領域の上にインプリント材IMを配置(供給)する。ディスペンサ25は、基板Sの複数のショット領域の上に対してインプリント材IMを配置するように構成あるいは制御されてもよい。インプリントIMは、基板位置決め機構21によって基板Sが走査あるいは駆動されながらディスペンサ25からインプリント材IMが吐出されることによって基板Sの上に配置されうる。インプリント材IMは、インプリント装置100の外部装置において基板Sの上に配置され、インプリント材IMが配置された基板Sがインプリント装置100に提供されてもよい。
【0023】
パージガス供給部26は、インプリント材IMの充填性を向上させ、かつ、酸素によるインプリント材IMの硬化の阻害を抑制するために、パージガスを基板Sの上に供給しうる。パージガスとしては、インプリント材の硬化を阻害しないガス、例えば、ヘリウムガス、窒素ガスおよび凝縮性ガス(例えば、ペンタフルオロプロパン(PFP))の少なくとも1つを含むガスが使用されうる。基板Sの上に供給されたパージガスは、基板Sの移動によって、型Mのパターン領域PRの下に移送されうる。
【0024】
制御部11は、相対駆動機構20、調整機構28、光照射部IRR、アライメントスコープ15、ディスペンサ25およびパージガス供給部26を制御するように構成されうる。制御部11は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用又は専用のコンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。
【0025】
図2には、インプリント装置100によって1又は複数の基板Sの上に型Mを用いてインプリント材IMのパターンを形成する処理の流れが例示的に示されている。この処理は、制御部11によって制御される。工程S201では、制御部11は、不図示のメモリまたは装置から制御ファイルを読み込む。この制御ファイルは、例えば、基板Sの複数のショット領域の配列を示す情報、予備露光を制御する情報、本露光を制御する情報、ディスペンサ25によってインプリント材IMを配置する位置を特定する情報を含みうる。
【0026】
工程S202では、制御部11は、型Mがロード(搬入)され、型位置決め機構7の型保持部によって保持されるように、不図示の型搬送機構および型位置決め機構7を制御する。工程S203では、制御部11は、基板Sがロード(搬入)され、基板保持部5によって保持されるように、不図示の基板搬送機構および基板位置決め機構21を制御する。
【0027】
工程S204では、制御部11は、パターンを形成すべきショット領域の上にインプリント材IMが配置されるように、基板位置決め機構21およびディスペンサ25を制御する。インプリント材IMがインプリント装置100の外部装置で基板Sの上に配置される場合には、工程S204は不要である。工程S205では、制御部11は、パターンを形成すべきショット領域の上のインプリント材IMと型Mのパターン領域PRとが接触するように、相対駆動機構20および調整機構28を制御する。後述するように、工程S205は、パターンを形成すべきショット領域の上のインプリント材IMに対してパターンPRの一部分が接触した後に、インプリント材IMとパターン領域PRとが接触した領域が拡大するように制御されうる。
【0028】
工程S206では、制御部11は、パターンを形成すべきショット領域とパターン領域PRとのアライメント誤差をアライメントスコープ15を使って検出しながら該アライメント誤差が小さくなるように相対駆動機構20を制御する動作を開始する。工程S207では、制御部11は、予備露光を行うように光照射部IRRを制御する。予備露光によってインプリント材IMの粘弾性が高まり、これによって基板Sと型Mとがインプリント材IMによって結合された状態となり、型Mとインプリント材IMが接触した状態における基板Sと型Mとの間の相対的な振動が低減される。したがって、基板Sのショット領域と型Mのパターン領域PRとのアライメント精度が向上しうる。ここで、予備露光は、型Mのパターン領域PRの凹部、あるいは、基板Sとパターン領域PRとの間の空間に対するインプリント材IMの充填がショット領域の全域にわたって十分に行われる条件(例えば、照度分布)で実行される。このような予備露光の条件については、後述する。予備露光は、複数回に分割して実行されてもよい。
【0029】
工程S208では、制御部11は、工程S206で開始されたアライメントが終了したかどうかを判断し、終了したと判断したら、工程S209に進む。一方、制御部11は、アライメントが終了していないと判断したら、工程S206のアライメント動作を繰り返し、再び工程S208でアライメントの終了を判断する。ここで、制御部11は、例えば、アライメントスコープ15を使って検出されるアライメント誤差が許容値内に収まったことに応じてアライメントが終了したと判断しうる。あるいは、制御部11は、工程S206の開始時からの経過時間が所定時間に達した時にアライメントが終了したと判断してもよい。この場合、十分に高いアライメント精度が得られるように、該所定時間が設定されうる。
【0030】
工程S209では、制御部11は、インプリント材IMに更に光を照射する本露光を行うように光照射部IRRを制御する。本露光は、インプリント材IMの硬化物と型Mとの分離が可能になるように、例えば、インプリント材IMに対する光の照射量がショット領域の全域において規定照射量になるように、インプリント材IMに光が照射される。これにより、基板Sのパターンを形成すべきショット領域の上には、インプリント材IMの硬化物からなるパターンが形成される。工程S210では、制御部11は、インプリントIMの硬化物からなるパターンから型Mが分離されるように、相対駆動機構20を制御する。
【0031】
工程S211では、制御部11は、未処理のショット領域があるかどうかを判断し、未処理のショット領域がある場合には、その未処理のショット領域の1つに対して工程S204~S210を実行する。処理すべき全てのショット領域に対して処理が終了した場合には、工程S212において、制御部11は、基板Sが基板保持部5からアンロード(搬出)されるように、不図示の基板搬送機構および基板位置決め機構21を制御する。工程S213では、制御部11は、未処理の基板があるかどうかを判断し、未処理の基板がある場合には、その未処理の基板の1つに対して工程S203~S210を実行する。処理すべき全ての基板に対して処理が終了した場合には、工程S214において、制御部11は、型Mが型位置決め機構7の型保持部からアンロード(搬出)されるように、不図示の型搬送機構および型位置決め機構7を制御する。これにより、
図2に例示された一例の処理が終了する。
【0032】
図3(a)-(d)には、工程S205における調整機構28による型Mの形状(Z軸に平行な断面における形状)の調整および相対駆動機構20による基板Sと型Mとの相対位置の調整が例示されている。
図3(a)-(d)の各々の左側には、基板Sのショット領域SRの上のインプリント材IMと型Mのパターン領域PRとの接触領域が模式的に示されている。
図3(a)-(d)の各々の右側には、Z軸に平行な断面における型Mの形状、および、基板Sと型Mとの相対位置が模式的に示されている。
【0033】
まず、
図3(a)に模式的に示されるように、調整機構28によって、型Mのパターン領域PRが基板Sに向かって凸形状に膨らむように、空間SPの圧力が制御(増加)されうる。次いで、
図3(b)に模式的に示されるように、基板Sの上のインプリント材IMとパターン領域PRとが部分的に接触するように、相対駆動機構20によって基板Sと型Mとの相対位置が調整される。基板Sの上のインプリント材IMとパターン領域PRとが接触を開始する接触開始領域は、例えば、ショット領域の中央部である。
【0034】
次いで、
図3(c)に模式的に示されるように、調整機構28によって、型Mのパターン領域PRの凸形状の膨みが小さくなるように、空間SPの圧力が制御(減少)されうる。これと並行して、相対駆動機構20によって、ショット領域の全域においてインプリント材IMとパターン領域PRとが接触するように、相対駆動機構20によって基板Sと型Mとの相対位置(距離)が制御されうる。基板Sの上のインプリント材IMとパターン領域PRとが最後に接触する最終接触領域は、例えば、ショット領域の周辺部である。
【0035】
最後に、
図3(d)に模式的に示されるように、調整機構28は、基板Sとパターン領域PRとが平行になるように、即ち、パターン領域PRが平坦になるように、空間SPの圧力を制御する。パターン領域PRが平坦になった状態で、パターン領域PRの凹部、および、基板Sのショット領域とパターン領域PRとの間の空間の全域にインプリント材IMが充填されてゆく。
【0036】
工程S206(アライメントの開始)は、
図3(a)の状態で実行されてもよいし、
図3(b)の状態で実行されてもよいし、
図3(c)の状態で実行されてもよいし、
図3(d)の状態で実行されてもよい。工程S207(予備露光)は、ショット領域の上のインプリント材IMとパターン領域PRとが接触しパターン領域PRが平坦にされた状態で実行されうる。あるいは、工程S207(予備露光)は、インプリント材とパターン領域PRとの接触が開始した後、基板Sと型Mとのアライメントが終了する前に実行されうる。
【0037】
パターン領域PRの凹部、および、基板Sのショット領域とパターン領域PRとの間の空間へのインプリント材IMの充填不良は、接触開始領域(例えば、中央部)および最終接触領域(例えば、周辺部、特に4隅)において発生しやすい傾向がある。以下、この理由について説明する。ここでは、説明の具体化のために、接触開始領域をショット領域SRの中央部として説明を行うが、接触開始領域は、ショット領域SRの中央部以外(例えば、周辺部)であってもよい。
【0038】
まず、接触開始領域で充填不良が発生しやすい理由を説明する。ショット領域SRの中央部でインプリント材IMとパターン領域PRとの接触を開始させる場合、基板Sとパターン領域PRとの間に存在するパージガスは、中央部から放射状に押し出されうる。しかし、中央部を取り囲む位置に配置されているインプリント材IMは、そのパージガスの移動を妨げうる。パージガスによる気泡は、例えば、インプリント材IM中に溶解したり、凝縮したりすることによって減少しうるが、インプリント材IMとパターン領域PRとの接触後の待ち時間を短くすると、気泡の一部が残存しうる。そのため、インプリント材IMとパターン領域PRとの接触後の待ち時間を短くすると、接触開始領域において充填不良が発生しやすく、歩留まりが低下しうる。また、待ち時間を長くすると、スループットが低下しうる。
【0039】
次に、最終接触領域において充填不良が発生しやすい理由を説明する。最終接触領域は、インプリント材IMとパターン領域PRとの接触が最も遅い領域である。最終接触領域は、パージガスの押し出し、インプリント材IMへのパージガスの溶解、パージガスの凝縮による気泡の消滅のために費やすことができる時間がショット領域の中で最も短い領域である。そのため、インプリント材IMとパターン領域PRとの接触後の待ち時間を短くすると、接触開始領域において充填不良が発生しやすく、歩留まりが低下しうる。また、待ち時間を長くすると、スループットが低下しうる。
【0040】
接触開始領域および最終接触領域における充填不良を低減するために、基板Sの上のインプリント材IMに対する型Mの押し付け力を強くする方法がある。しかし、そのような方法では、最終接触領域以外の領域においてインプリント材IMに加わる圧力が過剰に高くなり、既に充填が完了した領域からインプリント材IMが移動してしまう可能性がある。インプリント材の移動がショット領域からインプリント材IMが溢れ出すように起こると、インプリント材IMは、基板Sの上で異物として作用し、欠陥の原因や、型Mの破壊を引き起こす原因となりうる。
【0041】
また、充填不良は、型Mのパターン領域PRが有するパターン群の特徴にも依存しうる。パターン群は、複数のデバイスパターンの他、アライメントマーク等の複数のマークを含みうる。基板Sのショット領域SRは、相互にスクライブラインによって隔てられた複数のチップ領域を有し、該スクライブラインに複数のマークが配置されうる。同様に、型Mのパターン領域PRも、相互にスクライブラインによって隔てられた複数のチップ領域を有し、該スクライブラインに複数のマークが配置されうる。デバイスパターンとマークとでは、密度が互いに異なることが多い。また、デバイスパターン同士でも密度が高いに異なることがある。このような密度差は、インプリント材IMの充填に影響を与えうる。
【0042】
基板Sの表面もまた、既に存在するパターン群によって形成される凹凸を有し、この凹凸に密度差が存在しうる。このような密度差は、インプリント材IMの充填に影響を与えうる。
【0043】
予備露光は、インプリント材IMの粘弾性または硬度を高めるので、インプリント材IMの充填性を低下させる。換言すると、予備露光は、アライメント精度の向上に寄与する一方で、インプリント材の充填性を低下させ充填不良を引き起こす原因になりうる。そこで、本実施形態では、基板Sのショット領域SRあるいは型Mのパターン領域PR内における充填性の分布を考慮した条件(例えば、照度分布)の下で予備露光が行われる。
【0044】
図4(a)には、比較例における予備露光時の照度分布が模式的に示されている。
図4(a)の比較例では、ショット領域SR(パターン領域PR)内で均一な照度を有する照度分布で予備露光(インプリント材IMへの光の照射)が行われる。
【0045】
図4(b)には、第1実施例における予備露光時の照度分布が模式的に示されている。濃い色の網掛けが付された領域は、高照度の領域であり、薄い色の網掛けが付された領域は、低照度の領域である。
図4(b)の第1実施例では、制御部11は、例えば、ショット領域SRの上のインプリント材とパターン領域PRとが接触しパターン領域PRが平坦にされた状態で予備露光が行われるように光照射部IRRを制御しうる。また、
図4(b)の第1実施例では、制御部11は、接触開始領域(ここでは中央部)の照度がそれ以外の領域より低いように照度分布を定めて、そのような照度分布で予備露光(インプリント材IMへの光の照射)が行われるように光照射部IRRを制御する。換言すると、第1実施例では、光照射部IRRは、インプリント材とパターン領域PRとが接触を開始した接触開始領域における照度が該接触開始領域とは異なる特定領域における照度よりも弱いように定められた照度分布でインプリント材に光を照射する。これにより、接触開始領域における充填性を改善することができる。
【0046】
図4(c)には、第2実施例における予備露光時の照度分布が模式的に示されている。
図4(b)の第2実施例では、制御部11は、ショット領域SRの上のインプリント材とパターン領域PRとが接触しパターン領域PRが平坦にされた状態で予備露光が行われるように光照射部IRRを制御しうる。また、
図4(c)の第2実施例は、最終接触領域(ここでは周辺部あるいは4隅)の照度がそれ以外の領域より低いように照度分布を定めて、そのような照度分布で予備露光(インプリント材IMへの光の照射)が行われるように光照射部IRRを制御する。換言すると、第2実施例では、光照射部IRRは、インプリント材とパターン領域PRとが最後に接触する最終接触領域における照度が該最終接触領域とは異なる特定領域における照度よりも弱いように定められた照度分布でインプリント材に光を照射する。これにより、最終接触領域における充填性を改善することができる。
【0047】
第1、第2実施例では、光照射部IRRは、インプリント材とパターン領域PRとの接触が開始した後、基板Sと型Mとのアライメントが終了する前に予備露光を行うように制御部11によって制御されてもよい。つまり、第1、第2実施例において、制御部11は、ショット領域SRの上のインプリント材とパターン領域PRとが接触しパターン領域PRが平坦にされる前に予備露光が行われるように光照射部IRRを制御してもよい。第1、第2実施例は、調整機構28がインプリント材IMと型Mのパターン領域PRとの接触面積を拡大させる処理に応じて照度分布が定められる処理の一例としても理解されうる。
【0048】
図5(a)には、第3実施例における型Mのパターン領域PRが例示されている。パターン領域PRには、複数のデバイスパターン(不図示)の他、複数のマークMKが配置されている。例えば、パターン領域PRは、複数のチップ領域にそれぞれ対応する複数のチップパターン領域と、それらを相互に隔てるスクライブ領域とを有し、そのスクライブ領域にマークMKが配置されうる。パターン領域PRは、第1領域R1および第2領域R2を含む。ここで、第1領域R1に存在するパターンに対するインプリント材の充填性は、マークMKの存在に起因して、第2領域R2に存在するパターンに対するインプリント材の充填性よりも悪い。
【0049】
図5(b)には、第3実施例における予備露光時の照度分布が模式的に示されている。
図5(b)の第3実施例の照度分布は、
図5(a)のパターン領域PRに応じて定められたものである。濃い色の網掛けが付された領域は、高照度の領域であり、薄い色の網掛けが付された領域は、低照度の領域である。
図5(b)の第3実施例では、制御部11は、ショット領域SRの上のインプリント材とパターン領域PRとが接触しパターン領域PRが平坦にされた状態で予備露光が行われるように光照射部IRRを制御しうる。また、制御部11は、第1領域R1における照度が第2領域R2における照度より弱いように照度分布を定めて、そのような照度分布で予備露光(インプリント材IMへの光の照射)が行われるように光照射部IRRを制御する。換言すると、第3実施例では、光照射部IRRは、第1領域R1における照度が第2領域R2における照度より弱いように定められた照度分布でインプリント材に光を照射する。
【0050】
光照射部IRRは、インプリント材とパターン領域PRとの接触が開始した後、基板Sと型Mとのアライメントが終了する前に、インプリント材の粘弾性を高めるようにインプリント材に光を照射する予備露光を行うように制御部11によって制御されてもよい。つまり、第3実施例において、制御部11は、ショット領域SRの上のインプリント材とパターン領域PRとが接触しパターン領域PRが平坦にされる前に予備露光が行われるように光照射部IRRを制御してもよい。予備露光では、光照射部IRRは、パターン領域PRのパターンに応じて定められた照度分布でインプリント材に光を照射しうる。
【0051】
第3実施例の変形例では、基板Sのショット領域SRの凹凸に応じて予備露光時の照度分布が定められる。ここで、ショット領域SRは、第3領域および第4領域を含むものとする。また、型Mのパターン領域PRのうち第3領域に対面する領域に対するインプリント材IMの充填性は、型Mのパターン領域PRのうち第4領域に対面する領域に対するインプリント材IMの充填性よりも低いものとする。この場合において、制御部11は、第3領域における照度が第4領域における照度より弱いように照度分布を定めて、そのような照度分布で予備露光(インプリント材IMへの光の照射)が行われるように光照射部IRRを制御する。換言すると、変形例では、光照射部IRRは、第3領域における照度が第4領域における照度より弱いように定められた照度分布でインプリント材IMに光を照射する。
【0052】
ここで、
図6を参照しながら基板Sの表面に存在する凹凸の例を説明する。
図6(a)には、基板Sにおける複数のショット領域SRの配置例が示されている。
図6(b)には、1つのショット領域SRが模式的に示されている。各ショット領域SRは、スクライブラインによって相互に隔てられた複数のチップ領域を有し、スクライブラインにマークMK1、MK2が配置されている。例えば、インプリント装置100を使ってパターンを形成する際には、アライメントのためにマークMK1が使用され、次の層のパターンを形成する際には、アライメントのためにマークMK2が使用されうる。このように、工程や使用される装置に応じて、使用されるマークが異なる可能性があり、そのために多数のマークが存在しうる。このようなマークは、相応の凹凸を有し、インプリント材の充填を阻害する代表例である。
【0053】
上記の第1乃至第3実施例に代表されるようなインプリント材IMの充填性を考慮した照度分布は、相互に組み合わせて用いられうる。
図7には、
図4(b)に例示された第1実施例と、
図4(c)に例示された第2実施例と、
図5(b)に例示された第3実施例とを組み合わせた照度分布が例示されている。例えば、制御部11は、高照度の単位領域を0、低照度の単位領域を1として、単位領域毎にOR演算をすることによって、第1乃至第3実施形態を組み合わせた照度分布を得ることができる。あるいは、制御部11は、高照度の単位領域を1、低照度の単位領域を0として、単位領域毎にAND演算をすることによって、第1乃至第3実施形態を組み合わせた照度分布を得ることができる。単位領域は、例えば、空間光変調器16の最小分解能によって定義されうる。換言すると、単位領域は、空間光変調器16によって照度を制御可能な最小領域でありうる。空間光変調器16が中間照度(0以外に複数の照度)を生成できる場合には、第1乃至第3実施例の各単位領域における照度の和等に基づいて各単位領域の照度を定めてもよい。空間光変調器16として中間照度を生成できない場合には、そのような和等を誤差拡散法等によって二値化してもよい。
【0054】
第1乃至第3実施例のうち任意の2つの実施例を組み合わせてもよいし、更に、別の基準に従って生成された照度分布を組み合わせてもよい。
【0055】
予備露光における光の照射量の空間的な積算量(ショット領域の全域における照度の合計値(空間的な積分値))である照射積算量が予め決定されていてもよい。このような照射積算量は、インプリント材の組成や、インプリント装置の振動状態、ショット領域の面積など、の複数の要因によって決定されうる。このような場合において、予備露光における照度を部分的に低下させることによって照射積算量が基準積算量より小さくなるので、充填性が良好な領域の照度を増加させてもよい。
【0056】
照射積算量は、例えば、照射面積、照度、照射時間の積で計算されうる。インプリント材によっては、更に、インプリント材と照射される光の波長などによって変化する反応速度など、他の成分が係数として考慮されてもよい。以下、照射積算量を調整する方法として、照度で調整する例と、照射時間を調整する例について説明する。
【0057】
まず、
図8を参照しながら照射積算量を照度の調整によって調整する例を説明する。まず、以下の式(1)に従って照射積算量を計算する。
【0058】
照射積算量=照射面積(縦×横)×照度×照射時間・・・式(1)
ここでは、一例として、照射面積を20とし、ショット領域を縦に5分割、横に4分割した例を説明する。
図8(a)では、分割された各領域に与える照度を5とし、照射時間を1とした場合の説明図であり、この場合、式(1)に当てはめて計算すると、照射積算量は100となる。
【0059】
ここで、一例として、
図8(b)に例示されるように、第1実施例に従って接触開始領域である中央部の照度を5から3に低下させるものとする。これにより、照射積算量は、100から96に変化し、つまり、4減少する。
【0060】
そこで、
図8(c)に例示されるように、照射積算量の減少分4を照射領域の全体に割り振ると、照射積算量を100にすることができる。あるいは、接触開始領域の照度を3以上にしたくない場合は、
図8(d)に例示されるように、接触開始領域以外の領域に照射積算量の減少分4を割り振ってもよい。
【0061】
次に、照射積算量を照射時間の調整によって調整する例を説明する。照射時間は、例えば、式(2)に従って調整されうる。
【0062】
照射時間(調整後)=(照射積算量(最適値)÷照射積算量(現値))×照射時間(現値)・・・(2)
照射積算量(最適値)は、基準積算量であり、上記の例では100である。照射積算量(現値)は、上記の例では96である。照射時間(現値)は、上記の例では1である。式(2)によれば、照射時間(調整後)は1.04となる。
【0063】
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0064】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0065】
次に、インプリント装置によって基板にパターンを形成し、該パターンが形成された基板を処理し、該処理が行われた基板から物品を製造する物品製造方法について説明する。
図9(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0066】
図9(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。
図9(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1と型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0067】
図9(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0068】
図9(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図9(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
100:インプリント装置、S:基板、M:型、IRR:光照射部、11:制御部