(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】カニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤
(51)【国際特許分類】
A23L 17/40 20160101AFI20221214BHJP
A23B 4/06 20060101ALI20221214BHJP
A23B 4/07 20060101ALI20221214BHJP
A01K 61/59 20170101ALI20221214BHJP
A23K 50/80 20160101ALI20221214BHJP
【FI】
A23L17/40 A
A23B4/06 501B
A23B4/07 Z
A01K61/59
A23K50/80
(21)【出願番号】P 2018244877
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】藤原 綾子
(72)【発明者】
【氏名】玉井 秀行
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-170887(JP,A)
【文献】特開2018-174887(JP,A)
【文献】国際公開第2012/026339(WO,A1)
【文献】特開2016-202067(JP,A)
【文献】特開2003-070450(JP,A)
【文献】特開2005-307150(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109275801(CN,A)
【文献】Food Chemistry,2011年,Vol.127,pp.1594-1599
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23B
A23K
A01K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エノキタケ抽出物、酵母抽出物及び大麦抽出物からなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出物を含む、加熱調理されたカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤。
【請求項2】
前記抽出物を、前記悪化抑制剤の乾燥重量全体中、乾燥重量で50~100重量%含む、請求項1に記載の加熱調理されたカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤。
【請求項3】
エノキタケ抽出物、酵母抽出物及び大麦抽出物からなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出物を0.1~500ppm(乾燥重量)含有し、塩化ナトリウム濃度が2~3.5重量%である、活カニの浸漬処理用水溶液。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の加熱調理されたカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤を用いた請求項3に記載の水溶液。
【請求項5】
温度が1~35℃の範囲にある請求項3又は4に記載の水溶液中に、酸素が供給された状態で
活カニを50~20000分間浸漬
することを特徴とする、活カニ
の製造方法。
【請求項6】
エノキタケ抽出物、酵母抽出物及び大麦抽出物からなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出物を0.1~500ppm(乾燥重量)含有し、塩化ナトリウム濃度が2~3.5重量%、温度が1~35℃の範囲にある水溶液中に、酸素が供給された状態で活カニを50~20000分間浸漬し、その後該カニを加熱調理してから冷凍することを特徴とする、冷凍カニの製造方法。
【請求項7】
エノキタケ抽出物、酵母抽出物及び大麦抽出物からなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出物を0.1~500ppm(乾燥重量)含有し、塩化ナトリウム濃度が2~3.5重量%、温度が1~35℃の範囲にある水溶液中に、酸素が供給された状態で活カニを50~20000分間浸漬し、その後該カニを加熱調理してから冷凍して冷凍カニを得、該冷凍カニを解凍することを特徴とする、冷解凍カニの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理されたカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤、活カニの浸漬処理用水溶液、及び、該水溶液を用いたカニ又は冷凍カニの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カニは、カニ身の繊維感のあるジューシーな食感から非常に人気の高い食材であり、国内では主に、ズワイガニ、タラバガニ、毛ガニ、花咲ガニ、ワタリガニなどが消費されている。カニは生で食する場合を除いては、ほとんどが水揚げ後即座にボイルしてから殻付きのまま冷凍し流通される。
【0003】
しかし、カニの冷凍保管中には水分昇華や解凍時のドリップなどによる冷凍障害が進行しやすい。そのため、たとえ冷凍期間が1週間程度でも、解凍後にカニ身がパサパサしてしまい繊維感のあるジューシーな食感が損なわれたり、殻からの身離れが悪くなったりして商品価値が著しく低下する。現状では、水槽に海水を入れて酸素を供給しながら活カニを生きたまま定温輸送する方法などの対処がなされているが、温度管理や酸素管理に大型装置を必要とし、経済効率の上で満足いくものではなかった。
【0004】
特許文献1では、カニ等の甲殻類を、生鮮状態で、グリシンナトリウム塩又はグリシンと水酸化ナトリウムを含む処理液に浸漬処理することで、加熱後においても甲殻類本来の食味を保ち、旨みを強化した甲殻類の加工方法が記載されている。しかし、前記処理液は有効成分が食品添加物であるため、これを活カニへ使用するとカニの商品価値が下がることになる。また、当該文献には、加熱調理されたカニを冷解凍した時の食感や身離れの悪化については言及されていない。更に、当該文献に記載の処理液では、加熱調理されたカニの冷解凍後の食感や身離れの悪化を抑制する効果は不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、食品添加物表示を必要としない有効成分を用いて、加熱調理及び冷解凍後において繊維感のあるジューシーな食感のカニ身を殻から身離れ良く食することができるカニを提供するために使用される、カニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤、活カニの浸漬処理用水溶液、及び、該水溶液を用いたカニ又は冷凍カニの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の抽出物を特定量含有した特定の塩化ナトリウム濃度の水溶液に、活カニを特定時間浸漬することで、その後の加熱調理及び冷解凍後に生じ得る食感及び身離れの悪化を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第一は、エノキタケ抽出物、酵母抽出物及び大麦抽出物からなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出物を含む、加熱調理されたカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤に関する。当該カニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤は、前記抽出物を、前記悪化抑制剤の乾燥重量全体中、乾燥重量で50~100重量%含むことが好ましい。
本発明の第二は、エノキタケ抽出物、酵母抽出物及び大麦抽出物からなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出物を0.1~500ppm(乾燥重量)含有し、塩化ナトリウム濃度が2~3.5重量%である、活カニの浸漬処理用水溶液に関する。当該水溶液は、前記カニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤を用いたものであってよい。
本発明の第三は、温度が1~35℃の範囲にある前記水溶液中に、酸素が供給された状態で50~20000分間浸漬された活カニに関し、また、前記活カニが加熱調理された後、冷凍された冷凍カニにも関する。さらに、前記冷凍カニが解凍された冷解凍カニにも関する。
本発明の第四は、エノキタケ抽出物、酵母抽出物及び大麦抽出物からなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出物を0.1~500ppm(乾燥重量)含有し、塩化ナトリウム濃度が2~3.5重量%、温度が1~35℃の範囲にある水溶液中に、酸素が供給された状態で活カニを50~20000分間浸漬し、その後該カニを加熱調理してから冷凍することを特徴とする、冷凍カニの製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従えば、食品添加物表示を必要としない有効成分を用いて、加熱調理及び冷解凍後において繊維感のあるジューシーな食感のカニ身を殻から身離れ良く食することができるカニを提供するために使用される、カニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤、活カニの浸漬処理用水溶液、及び、該水溶液を用いたカニ又は冷凍カニの製造方法を提供することができる。本発明によると、加熱調理後の冷解凍によるカニ身の食感及び殻からの身離れの悪化が抑制され、いわゆる冷凍障害を抑制することができる。また、本発明の冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤及び浸漬処理用水溶液は、異味を呈する成分を含む必要がないので、これらに由来する異味がカニに付着することも回避できる。更には、本発明の冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤及び浸漬処理用水溶液は、食品添加物の表示が要請される材料を必須とするものではないので、食品添加物表示を避けることが可能である。本発明によると、加熱調理されたカニを長期間冷凍保存した後解凍しても、繊維感のあるジューシーな食感のカニ身を殻から身離れ良く食することができるので、良好な食感及び身離れを維持したカニを輸送可能なエリアを拡大することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明のカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤は、加熱調理後の冷解凍によって生じ得るカニ身の食感及び殻からの身離れの悪化を抑制するためのもので、特定の抽出物を含有する。本発明のカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤は、塩水に配合して使用されるもので、カニを加熱調理する前に、本発明のカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤を含む塩水に活カニを浸漬することで本発明の目的を達成することができる。
【0011】
本発明のカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤で使用する抽出物は、エノキタケ抽出物、酵母抽出物及び大麦抽出物からなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出物である。
【0012】
前記エノキタケ抽出物としては特に限定されないが、例えば、エノキタケの子実体を熱水及び/又はアルコール等の抽出溶媒で抽出した抽出物、酵素やアルカリ性の溶媒でエノキタケの子実体を分解してから熱水やアルコール等の抽出溶媒で抽出した抽出物、更にはこれら抽出物を濃縮した濃縮液、前記抽出物または前記濃縮液を乾燥して得られた粉末等が挙げられる。これら抽出物は、消費者の安心安全志向から、水や天然由来エタノール以外の溶媒を用いない抽出物が好ましい。但し、コスト面を考えると、水がより好ましい。
【0013】
抽出時の抽出溶媒の温度は、抽出溶媒の種類によって好適な温度幅が変動し得るが、一般に、抽出溶媒の大気圧下での沸点(℃)-20℃~抽出溶媒の大気圧下での沸点(℃)が好ましい。抽出時の抽出溶媒の温度が、該抽出溶媒の大気圧下での沸点(℃)-20℃より低いと、加熱調理されたカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化を抑制する効果が弱くなる場合があり、大気圧下での沸点(℃)より高くなると、特殊な加圧設備が必要となるため、抽出方法が複雑になる場合がある。
【0014】
前記エノキタケは、タマバリタケ科のキノコの一種であるFlammulina属velutipes種のことをいう。特に限定されないが、人工的に栽培した白色かつもやし状の市販エノキタケを使用することができる。かかる市販エノキタケは、一般に食用とされており、容易に入手可能である。
【0015】
前記酵母抽出物としては特に限定されないが、例えば、酵母を熱水やアルコール等の抽出溶媒で抽出した抽出物、酵素やアルカリ性の溶媒で酵母を分解してから熱水やアルコール等の抽出溶媒で抽出した抽出物、更にはこれら抽出物を濃縮した濃縮液、前記抽出物または前記濃縮液を乾燥して得られた粉末等が挙げられる。これら抽出物は、消費者の安心安全志向から、水や天然由来エタノール以外の溶媒を用いない抽出物が好ましい。但し、コスト面を考えると、水がより好ましい。
【0016】
抽出時の抽出溶媒の温度は、抽出溶媒の種類によって好適な温度幅が変動し得るが、一般に、抽出溶媒の大気圧下での沸点(℃)-20℃~抽出溶媒の大気圧下での沸点(℃)が好ましい。抽出時の抽出溶媒の温度が、該抽出溶媒の大気圧下での沸点(℃)-20℃より低いと、加熱調理されたカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化を抑制する効果が弱くなる場合があり、大気圧下での沸点(℃)より高くなると、特殊な加圧設備が必要となるため、抽出方法が複雑になる場合がある。
【0017】
前記酵母は、嫌気環境下で発酵する際に、糖を資化してアルコールを生成する微生物のことをいう。具体例として、サッカロミセス(Saccharomyces)属に属する酵母や、キャンディダ(Candida)属に属する酵母等が挙げられるが、特に限定されない。食経験が豊富である観点から、前記酵母は、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)であってもよく、研究等で知見が多い観点から、前記酵母は、キャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)であってもよい。
【0018】
前記大麦抽出物としては特に限定されないが、例えば、大麦を熱水やアルコール等の抽出溶媒で抽出した抽出物、酵素やアルカリ性の溶媒で大麦を分解してから熱水やアルコール等の抽出溶媒で抽出した抽出物、更にはこれら抽出物を濃縮した濃縮液、前記抽出物または前記濃縮液を乾燥して得られた粉末等が挙げられる。これら抽出物は、消費者の安心安全志向から、水や天然由来エタノール以外の溶媒を用いない抽出物が好ましい。但し、コスト面を考えると、水がより好ましい。
【0019】
抽出時の抽出溶媒の温度は、抽出溶媒の種類によって好適な温度幅が変動し得るが、一般に、抽出溶媒の大気圧下での沸点(℃)-20℃~抽出溶媒の大気圧下での沸点(℃)が好ましい。抽出時の抽出溶媒の温度が、該抽出溶媒の大気圧下での沸点(℃)-20℃より低いと、加熱調理されたカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化を抑制する効果が弱くなる場合があり、大気圧下での沸点(℃)より高くなると、特殊な加圧設備が必要となるため、抽出方法が複雑になる場合がある。
【0020】
前記大麦は、中央アジア原産のイネ科の植物で、学名をHordeum vulgareといい、二条大麦と六条大麦、皮麦とはだか麦、うるち種ともち種に分類されるものをいう。
【0021】
本発明のカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤は、エノキタケ抽出物、酵母抽出物及び大麦抽出物からなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出物を、該悪化抑制剤の乾燥重量全体に対し乾燥重量で50~100重量%含有することが好ましい。より好ましくは70~100重量%であり、さらに好ましくは90~100重量%である。50重量%よりも少ないと、加熱調理されたカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化を抑制する効果を発揮できない場合がある。当該悪化抑制剤に含まれ得る前記抽出物以外の固形分としては特に限定されず、天然由来の固形分であれば何を含有しても良い。
【0022】
本発明のカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤の形状は特に限定されず、水溶液等の液体の形状であってもよいし、粉末状、顆粒状、ブロック状等の固形の形状であってもよい。
【0023】
本発明のカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化抑制剤は、これを真水、海水、または塩水に添加することで、次に説明する本発明の活カニの浸漬処理用水溶液を調製するために使用することができる。また、収穫した活カニを一時的に飼育している生け簀に、当該悪化抑制剤を投入することで、加熱調理されたカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化を抑制する効果を得ることもできる。
【0024】
本発明の活カニの浸漬処理用水溶液は、前記抽出物を含有するものである。該水溶液に活カニを浸漬することで使用され、この使用後に、活カニを前記水溶液から取り出して加熱調理し、次いで冷凍保存、更に解凍した際に、カニ身の食感及び殻からの身離れの悪化を抑制することができる。
【0025】
本発明の活カニの浸漬処理用水溶液は、前記抽出物を乾燥重量で0.1~500ppm含有することが好ましい。当該含有量は、1~500ppmがより好ましく、10~450ppmが更に好ましく、50~400ppmが特に好ましく、100~400ppmが最も好ましい。0.1ppmより少ないと、加熱調理されたカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化を抑制する効果を発揮できない場合がある。500ppmを越えると前記抽出物に由来する色素成分がカニに付着したり、カニの風味や食感が損なわれる場合がある。
【0026】
本発明の活カニの浸漬処理用水溶液の塩化ナトリウム濃度は、2~3.5重量%が好ましく、2.3~3.5重量%がより好ましく、2.3~3.2重量%がさらに好ましく、2.5~3重量%が特に好ましい。塩化ナトリウム濃度が2重量%未満、又は3.5重量%を超えると、該水溶液中でカニが生育できず、却ってカニの風味や食感が損なわれる場合がある。
【0027】
本発明の活カニの浸漬処理用水溶液は、上記塩化ナトリウム濃度を満足する限り、塩化ナトリウム以外の塩類を含有していてもよい。しかし、塩化ナトリウム以外の塩類の含有量は、塩化ナトリウム重量に対して1/3の重量までに制限することが好ましい。塩化ナトリウム以外の塩類の種類としては食品添加物として使用し得る塩類であれば特に限定されない。
【0028】
前記浸漬処理用水溶液は、上記塩化ナトリウム濃度を満足する限り、真水に食塩を添加して製造されたものであってもよいし、海水を利用して、又は、海水の塩化ナトリウム濃度を調整したものを利用して製造されたものであってもよい。
【0029】
カニを加熱調理及び冷凍する前に、本発明の活カニの浸漬処理用水溶液に活カニを浸漬し一定時間保持することで、カニ身の食感及び殻からの身離れの悪化が抑制されたカニを製造することができる。当該製造の具体的態様の一例は以下のとおりである。必要に応じ前記水溶液を殺菌した後、該水溶液の温度を、好適には1~35℃の範囲とし、該水溶液に酸素を供給しつつ活カニを浸漬して、好適には50~20000分間保持する。その後、該水溶液から活カニを取り出し、さらにカニの加熱調理及び冷解凍を行うことで、カニ身の食感及び殻からの身離れの悪化が抑制されたカニを得ることができる。水溶液の殺菌方法としては特に限定されず、例えば、紫外線照射による殺菌、オゾン殺菌、塩素殺菌などを行なえばよい。
【0030】
前記水溶液の温度はカニが生育できる温度域にあればよく、具体的には、1~35℃の範囲でコントロールすることが好ましい。該温度が1℃より低い又は35℃より高いと、前記水溶液中で活カニの活動が低下して、加熱調理されたカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化を抑制する効果を発揮できない場合がある。より好ましい温度範囲は、本発明を適用するカニの種類によって異なる。例えば、毛ガニの場合、前記水溶液の温度は1~15℃が好ましく、ズワイガニ又はタラバガニの場合、前記水溶液の温度は1~10℃が好ましく、ワタリガニの場合、前記水溶液の温度は7~35℃が好ましい。
【0031】
前記水溶液への酸素の供給方法としては、カニの生育に必要な溶存酸素濃度を確保できれば、どのような方法であってもよい。
【0032】
活カニを前記水溶液中に浸漬する時間は、50~20000分間が好ましく、50~9000分間がより好ましく、50~7200分間が更に好ましく、100~6000分間が特に好ましく、150~6000分間が極めて好ましい。浸漬時間が50分間より短いと浸漬処理時間が不足し、加熱調理されたカニの冷解凍後の食感及び身離れの悪化を抑制する効果を発揮できない場合がある。また20000分間より長いとカニの風味や食感が損なわれる場合がある。
【0033】
以上で説明した本発明の活カニの浸漬処理用水溶液への活カニの浸漬処理は、静置した水槽で行なってもよいし、水槽ごと輸送しつつ行なってもよい。輸送しながら該浸漬処理を行う場合であっても、本発明の方法によると、水溶液の温度が前述した範囲内にあれば厳格な温度管理を行なう必要がないので、従来の魚介類を生きたまま輸送する方法と比較して輸送コストを抑制することができる。
【0034】
浸漬処理後の活カニは、殻をむかずに殻付きで、常法により加熱調理に付される。加熱調理は公知の方法であってよく、特に限定されないが、熱水に投入してボイルしたり、蒸したりする方法が挙げられる。このように加熱調理されたカニを冷凍することで、冷凍カニを製造することができる。該冷凍カニは、殻付きのまま冷凍で1週間~24カ月間程度保存後に解凍しても、繊維感のあるジューシーな食感を保持しており、また、殻から身離れ良く食することができる。
【0035】
また、従来は、加熱調理された雌のズワイガニやワタリガニを冷解凍すると、内子(卵巣)及び外子(卵)の風味又は食感が低下する傾向があったが、本発明によると、冷解凍による内子及び外子の風味又は食感の低下を抑制し、粒感のあるプチプチとした食感が維持されたカニの内子及び外子を得ることができる。
【0036】
本発明を適用可能なカニの種類は、殻をむいてカニ身を食することができるカニであれば、特に限定されない。具体例としては、ズワイガニ、紅ズワイガニ、毛ガニ、ワタリガニなどのカニ下目のカニや、タラバガニ、花咲ガニなどのヤドカリ下目のカニが挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0038】
(製造例1) エノキタケ抽出物の作製
市販のエノキタケ(子実体)100gに100℃に加熱した熱水200mlを加え、2時間保持した。その後固形分を濾別して、固形分量が0.6重量%のエノキタケ抽出物を得た。得られたエノキタケ抽出物の0.5重量%(W/W)固形分濃度の水溶液の粘度は17mPa・sであった。
【0039】
(製造例2) 酵母抽出物の作製
パン酵母(株式会社カネカ製「カネカイーストGA」)100gに100℃に加熱した熱水200mlを加え、2時間保持した。その後固形分を濾別して、固形分量が1.0重量%の酵母抽出物を得た。得られた酵母抽出物の0.5重量%(W/W)固形分濃度の水溶液の粘度は8mPa・sであった。
【0040】
(製造例3) 大麦抽出物の作製
大麦粉(石橋工業株式会社製「大麦粉」)100gに100℃に加熱した熱水200mlを加え、2時間保持した。その後固形分を濾別して、固形分量が0.5重量%の大麦抽出物を得た。得られた大麦抽出物の0.5重量%(W/W)固形分濃度の水溶液の粘度は5mPa・sであった。
【0041】
(製造例4) 昆布抽出物の作製
真昆布(株式会社くらこん製「真昆布」)100gに100℃に加熱した熱水200mlを加え、2時間保持した。その後固形分を濾別して、固形分量が2.0重量%のコンブ抽出物を得た。得られたコンブ抽出物の0.5重量%(W/W)固形分濃度の水溶液の粘度は120mPa・sであった。
【0042】
<カニ身の食感の評価>
実施例および比較例において得たカニ身の食感は、訓練された10名(男性5人、女性5人)のパネラーにカニ身を食してもらい、以下の基準により評価した。10人の各評価点の平均値を評価値とした。但し、以下に示した評価基準は毛ガニを用いた実施例に関するものである。ズワイガニを用いた実施例においては、下記評価基準中の「実施例9」を「実施例13」に読み替えた評価基準を使用し、タラバガニを用いた実施例においては、下記評価基準中の「実施例9」を「実施例15」に読み替えた評価基準を使用し、ワタリガニを用いた実施例においては、下記評価基準中の「実施例9」を「実施例17」に読み替えた評価基準を使用した。
5点:実施例9のカニ身よりも非常に良く、繊維感がありジューシーな食感を非常に強く感じる。
4点:実施例9のカニ身よりも良く、繊維感がありジューシーな食感を強く感じる。
3点:実施例9のカニ身と同等で、繊維感がありややジューシーな食感を感じる。
2点:実施例9のカニ身よりも悪く、繊維感はやや感じるが、パサパサしていてジューシーな食感を感じ難い。
1点:実施例9のカニ身よりも非常に悪く、繊維感が感じられず、パサパサしておりジューシーな食感も全く感じない。
【0043】
<カニ身の殻からの身離れの良さの評価>
実施例および比較例におけるカニ身の殻からの身離れの良さは、訓練された10名(男性5人、女性5人)のパネラーによって、以下の基準により評価した。10人の各評価点の平均値を評価値とした。但し、以下に示した評価基準は毛ガニを用いた実施例に関するものである。ズワイガニを用いた実施例においては、下記評価基準中の「実施例9」を「実施例13」に読み替えた評価基準を使用し、タラバガニを用いた実施例においては、下記評価基準中の「実施例9」を「実施例15」に読み替えた評価基準を使用し、ワタリガニを用いた実施例においては、下記評価基準中の「実施例9」を「実施例17」に読み替えた評価基準を使用した。
5点:実施例9のカニ身よりも非常に良く、非常に身離れがよく殻から取り出し易い。
4点:実施例9のカニ身よりも良く、かなり身離れがよく殻から取り出し易い。
3点:実施例9のカニ身と同等で、身離れが良く殻から取り出し易い。
2点:実施例9のカニ身よりも悪く、やや身離れが悪く、殻から取り出しにくい。
1点:実施例9のカニ身よりも非常に悪く、かなり身離れが悪く、殻から非常に取り出しにくい。
【0044】
<総合評価>
カニ身の食感の評価、及び、カニ身の殻からの身離れの良さの評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りである。
A:カニ身の食感の評価、及び、カニ身の殻からの身離れの良さの評価が全て4.5点以上5.0点以下を満たしているもの。
B:カニ身の食感の評価、及び、カニ身の殻からの身離れの良さの評価が全て4.0点以上5.0点以下であって、且つ4.0以上4.5未満が少なくとも一つあるもの。
C:カニ身の食感の評価、及び、カニ身の殻からの身離れの良さの評価が全て3.0点以上5.0点以下であって、且つ3.0以上4.0未満が少なくとも一つあるもの。
D:カニ身の食感の評価、及び、カニ身の殻からの身離れの良さの評価が全て2.0点以上5.0点以下であって、且つ2.0以上3.0未満が少なくとも一つあるもの。
E:カニ身の食感の評価、及び、カニ身の殻からの身離れの良さの評価において、2.0未満が少なくとも一つあるもの。
【0045】
(実施例1)
表1の配合に従い、製造例1で得られたエノキタケ抽出物1重量%と、食塩3重量%を配合した水溶液200リットルを水槽に調製し、水温を5℃にコントロールした。該水槽に、活毛ガニ10体を浸漬し、酸素を供給しながら、360分間保持した後、水揚げした。水揚げ後速やかに脚を縛り、沸騰した3%の食塩水中で20分間ボイルした。その後、冷水中で荒熱を取り、水気を切った後に包装し、-20℃で冷凍した。その温度で1週間冷凍保存した後、カニを冷凍庫から取り出し、5℃の恒温槽に1日静置して、自然解凍させた。解凍後のカニの殻をむいてカニ身の殻からの身離れの良さを評価し、また、得られたカニ身の食感について評価した。それらの結果を表1に示した。
【0046】
【0047】
(実施例2)
表1の配合に従い、前記エノキタケ抽出物の代わりに、製造例2で得られた酵母抽出物を配合した以外は、実施例1と同様にしてカニを得た。得られたカニについて、殻からの身離れの良さ、及び、食感の各評価を行った。それらの結果を表1に示した。
【0048】
(実施例3)
表1の配合に従い、前記エノキタケ抽出物の代わりに、製造例3で得られた大麦抽出物を配合した以外は、実施例1と同様にしてカニを得た。得られたカニについて、殻からの身離れの良さ、及び、食感の各評価を行った。それらの結果を表1に示した。
【0049】
(比較例1)
表1の配合に従い、前記エノキタケ抽出物の代わりに、製造例4で得られた昆布抽出物を配合した以外は、実施例1と同様にしてカニを得た。得られたカニについて、殻からの身離れの良さ、及び、食感の各評価を行った。それらの結果を表1に示した。
【0050】
表1から明らかなように、抽出物の0.5%(W/W)固形分濃度の水溶液の粘度が3~50mPa・sの範囲にあるエノキタケ抽出物(製造例1)、酵母抽出物(製造例2)、又は、大麦抽出物(製造例3)を含む食塩水に浸漬し、加熱調理及び冷解凍して得られたカニ(実施例1~3)は、いずれも、繊維感がありジューシーな食感が強く感じられ、また、身離れが良く殻から取り出し易かった。一方、抽出物の0.5%(W/W)固形分濃度の水溶液の粘度が120mPa・sの昆布抽出物(製造例4)を含む食塩水に浸漬し、加熱調理及び冷解凍して得られたカニ(比較例1)は、身離れの良さは比較的良好な評価であったものの、パサパサしていてジューシーな食感を感じ難いものであった。
【0051】
(実施例4及び5、比較例2)
表2の配合に従い、エノキタケ抽出物の配合量を1.0重量%から、0.1重量%(実施例4)、5.0重量%(実施例5)、又は、10.0重量%(比較例2)に変更した以外は、実施例1と同様にしてカニを得た。得られたカニについて、殻からの身離れの良さ、及び、食感の各評価を行った。それらの結果を表2に示した。
【0052】
【0053】
(比較例3)
表2の配合に従い、エノキタケ抽出物を配合せずに調製した水溶液を使用した以外は、実施例1と同様にしてカニを得た。得られたカニについて、殻からの身離れの良さ、及び、食感の各評価を行った。それらの結果を表2に示した。
【0054】
表2から明らかなように、水溶液中のエノキタケ抽出物の固形分量が0.1~500ppmの範囲にある食塩水に浸漬し、加熱調理及び冷解凍して得られたカニ(実施例1、4、及び5)は、いずれも、繊維感がありジューシーな食感が感じられ、また、身離れが良く殻から取り出し易かった。特に前記固形分量が300ppmの食塩水に浸漬したカニ(実施例5)の食感及び身離れの良さは極めて良好な評価であった。一方、エノキタケ抽出物の固形分量が600ppmの食塩水に浸漬し、加熱調理及び冷解凍して得られたカニ(比較例2)は、パサパサしていてジューシーな食感を感じ難いものであった。また、エノキタケ抽出物を含有しない食塩水に浸漬し、加熱調理及び冷解凍して得られたカニ(比較例3)は、繊維感が感じられず、パサパサしておりジューシーな食感を全く感じなかったことに加え、身離れがかなり悪く、殻から非常に取り出しにくかった。
【0055】
(実施例6)
表3の条件に従い、塩を含む水溶液の種類を食塩水から海水へ変更した以外は、実施例1と同様にしてカニを得た。得られたカニについて、殻からの身離れの良さ、及び、食感の各評価を行った。それらの結果を表3に示した。
【0056】
【0057】
(比較例4)
この比較例は、特許文献1(特開2000-201653号公報)の実施例2に記載された処理液の配合に準拠したものである。表3の配合に従い、エノキタケ抽出物を配合せず、食塩の配合量を2重量%に変更し、更に、グリシン1重量%と水酸化ナトリウム1重量%を配合して水の量を調整した以外は、実施例1と同様にして活カニを浸漬した後、水揚げした。
【0058】
表3から明らかなように、エノキタケ抽出物を含み塩化ナトリウムの含有量が2~3.5重量%の範囲にある水溶液に浸漬し、加熱調理及び冷解凍して得られたカニ(実施例1、及び6)は、いずれも、繊維感がありジューシーな食感が強く感じられ、また、かなり身離れが良く殻から取り出し易かった。一方、塩化ナトリウムを含有するが、エノキタケ抽出物を含有せず、特許文献1に記載のようにグリシンと水酸化ナトリウムを含有する水溶液に活カニを浸漬すると、360分間の浸漬によってカニが活力を失い、その後加熱調理及び冷解凍して得られたカニ(比較例4)は、繊維感が感じられず、パサパサしておりジューシーな食感を全く感じなかったことに加え、身離れがかなり悪く、殻から非常に取り出しにくかった。
【0059】
(実施例7及び8)
表4の条件に従い、水溶液の水温を5℃から、2℃(実施例7)、又は、15℃(実施例8)にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にしてカニを得た。得られたカニについて、殻からの身離れの良さ、及び、食感の各評価を行った。それらの結果を表4に示した。
【0060】
【0061】
表4から明らかなように、エノキタケ抽出物を含み水温が1~35℃の食塩水に浸漬し、加熱調理及び冷解凍して得られたカニ(実施例1、7、及び8)は、いずれも、繊維感がありジューシーな食感が感じられ、また、身離れが良く殻から取り出し易かった。
【0062】
(実施例9及び10、比較例5及び6)
表5の条件に従い、水溶液へのカニの浸漬時間を360分間から、90分間(実施例9)、17280分間(実施例10)、30分間(比較例5)、又は、23040分間(比較例6)に変更した以外は、実施例1と同様にしてカニを得た。得られたカニについて、殻からの身離れの良さ、及び、食感の各評価を行った。それらの結果を表5に示した。
【0063】
【0064】
表5から明らかなように、エノキタケ抽出物を含む食塩水に50~20000分間浸漬し、加熱調理及び冷解凍して得られたカニ(実施例1、9、及び10)は、いずれも、繊維感がありジューシーな食感が感じられ、また、身離れが良く殻から取り出し易かった。一方、浸漬時間を30分間としたカニ(比較例5)、及び、浸漬時間を23040分間としたカニ(比較例6)は、いずれも、パサパサしておりジューシーな食感を感じ難かったことに加え、身離れがやや悪く、殻から取り出しにくかった。
【0065】
(実施例11及び12)
表6の条件に従い、冷凍保存期間を1週間から、3カ月間(実施例11)、又は、1日(実施例12)に変更した以外は実施例1と同様にして、カニを得た。得られたカニについて、殻からの身離れの良さ、及び、食感の各評価を行った。それらの結果を表6に示した。
【0066】
【0067】
(比較例7)
表6の条件に従い、-20℃で1週間の冷凍による保存条件を、4℃で1週間の冷蔵による保存条件に変更した以外は実施例1と同様にして、カニを得た。得られたカニについて、殻からの身離れの良さ、及び、食感の各評価を行った。それらの結果を表6に示した。
【0068】
(参考例)
実施例1の浸漬処理を行わず、活毛ガニの脚を縛り、沸騰した3%の食塩水中で20分間ボイルした。その後、冷水中で荒熱を取り、水気を切った後、包装や冷凍保存をせず直ちに、殻をむいてカニ身の殻からの身離れの良さを評価し、また、得られたカニ身の食感について評価した。それらの結果を表6に示した。
【0069】
表6から明らかなように、エノキタケ抽出物を含む食塩水に浸漬し、加熱調理した後、1日~3カ月間冷凍保存後のカニ(実施例1、11及び12)は、いずれも、繊維感がありジューシーな食感が強く感じられ、また、身離れが良く殻から取り出し易かった。特に、冷凍保存期間を1日としたカニ(実施例12)の食感及び身離れの良さは極めて良好な評価であり、浸漬処理も冷解凍も行っていないカニ(参考例)と同等の評価であった。一方、エノキタケ抽出物を含有しない食塩水に浸漬し、加熱調理した後、1週間冷凍保存後のカニ(比較例3)は、繊維感が感じられず、パサパサしておりジューシーな食感を全く感じなかったことに加え、身離れがかなり悪く、殻から非常に取り出しにくかった。また、エノキタケ抽出物を含む食塩水に浸漬し、加熱調理した後、1週間冷蔵保存後のカニ(比較例8)は、繊維感が感じられず、パサパサしておりジューシーな食感を全く感じなかったことに加え、身離れがやや悪く、殻から取り出しにくかった。
【0070】
(実施例13)
表7の条件に従い、毛ガニの代わりにズワイガニを使用し、水溶液へのカニの浸漬時間を360分間から90分間に変更した以外は、実施例1と同様にしてカニを得た。得られたカニについて、殻からの身離れの良さ、及び、食感の各評価を行った。それらの結果を表7に示した。
【0071】
【0072】
(実施例14)
表7の条件に従い、水溶液へのカニの浸漬時間を90分間から360分間に変更した以外は、実施例13と同様にしてカニを得た。得られたカニについて、殻からの身離れの良さ、及び、食感の各評価を行った。それらの結果を表7に示した。
【0073】
(実施例15)
表7の条件に従い、毛ガニの代わりにタラバガニを使用し、水溶液へのカニの浸漬時間を360分間から90分間に変更した以外は、実施例1と同様にしてカニを得た。得られたカニについて、殻からの身離れの良さ、及び、食感の各評価を行った。それらの結果を表7に示した。
【0074】
(実施例16)
表7の条件に従い、水溶液へのカニの浸漬時間を90分間から360分間に変更した以外は、実施例15と同様にしてカニを得た。得られたカニについて、殻からの身離れの良さ、及び、食感の各評価を行った。それらの結果を表7に示した。
【0075】
(実施例17)
表7の条件に従い、毛ガニの代わりにワタリガニを使用し、水溶液の水温を5℃から20℃に変更し、水溶液へのカニの浸漬時間を360分間から90分間に変更した以外は、実施例1と同様にしてカニを得た。得られたカニについて、殻からの身離れの良さ、及び、食感の各評価を行った。それらの結果を表7に示した。
【0076】
(実施例18)
表7の条件に従い、水溶液へのカニの浸漬時間を90分間から360分間に変更した以外は、実施例17と同様にしてカニを得た。得られたカニについて、殻からの身離れの良さ、及び、食感の各評価を行った。それらの結果を表7に示した。
【0077】
表7から明らかなように、エノキタケ抽出物を含む食塩水に浸漬し、加熱調理及び冷解凍して得られたカニ(実施例1、及び13~18)は、カニの種類に関わらず、繊維感がありジューシーな食感が感じられ、また、身離れが良く殻から取り出し易かった。