(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】Notch阻害剤とPD-1またはPD-L1阻害剤との併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/55 20060101AFI20221214BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221214BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
A61K31/55
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2018560759
(86)(22)【出願日】2017-05-16
(86)【国際出願番号】 US2017032790
(87)【国際公開番号】W WO2017200969
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-05-18
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135943
【氏名又は名称】三橋 規樹
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ベンダー,マーク ハラス
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ホン
(72)【発明者】
【氏名】パテール,バルヴィン クマール
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527042(JP,A)
【文献】国際公開第2014/193898(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/026634(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/040880(WO,A1)
【文献】特表2013-532153(JP,A)
【文献】特表2014-525918(JP,A)
【文献】国際公開第2016/070051(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/193352(WO,A1)
【文献】LIPSON, Evan J. et al.,Clinical Cancer Research,2013年01月15日,Vol. 19, Issue 2,pp. 462-468,https://doi.org/10.1158/1078-0432.CCR-12-2625
【文献】聖マリアンナ医科大学雑誌,2016年,Vol.43,pp.237-243
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 ~ 33/44
A61P 35/00 ~ 35/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を含む、
大腸がんを治療する方法に使用するための組成物であって、前記方法が、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびアベルマブから選択されるPD-L1阻害剤と併用して投与することを含
む、組成物。
【請求項2】
アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびアベルマブから選択されるPD-L1阻害剤を含む、
大腸がんを治療する方法に使用するための組成物であって、前記方法が、前記PD-L1阻害剤を、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と併用して投与することを含
む、組成物。
【請求項3】
大腸がんの治療のために併用して使用するための、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびアベルマブから選択されるPD-L1阻害剤との組合せ物。
【請求項4】
前記がんの治療が、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、前記PD-L1阻害剤との、同
時投与によるものである、請求項1
もしくは2に記載の組成物、または、請求項
3に記載の組合せ物。
【請求項5】
前記がんの治療が、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、前記PD-L1阻害剤との、個別投与によるものである、請求項1もしくは2に記載の組成物、または、請求項3に記載の組合せ物。
【請求項6】
前記がんの治療が、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、前記PD-L1阻害剤との、逐次の投与によるものである、請求項1もしくは2に記載の組成物、または、請求項3に記載の組合せ物。
【請求項7】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の量が2.5mg~75mgである、請求項1、2、4
~6のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項3~
6のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項8】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の量が10mg~50mgである、請求項1、2、4~
7のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項3~
7のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項9】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物が、1日1回隔日で5日間にわたり投与し、続いて2日は投与せずにおく投薬スケジュール(T.I.W.)で使用される、請求項1、2、4~
8のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項3~
8のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項10】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物が、1日1回(QD)、1日2回(B.I.D.)、1日1回隔日(Q2D)または3日に1回(Q3D)で使用される、請求項1、2、4~
8のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項3~
8のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項11】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物が、経口投与用に処方されている、請求項1、2、4~
10のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項3~
10のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項12】
前記PD-L1阻害剤が、1mg/kg~3mg/kgで投与される、請求項1、2、4~1
1のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項3~1
1のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項13】
前記PD-L1阻害剤が、14~21日に1回使用される、請求項1、2、4~1
2のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項3~1
2のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項14】
前記PD-L1阻害剤が、非経口投与用に処方されている、請求項1、2、4~1
3のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項3~1
3のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項15】
非経口投与が点滴静注である、請求項1
4に記載の組成物または組合せ物。
【請求項16】
第1の医薬の製造のための、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の使用、ならびに第2の医薬の独立した製造のための、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびアベルマブから選択される、PD-L1阻害剤の使用であって
、大腸がんの治療に併用して使用するための、これらの使用。
【請求項17】
前記がんの治療が、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、前記PD-L1阻害剤との、同
時投与によるものである、請求
項16に記載の使用。
【請求項18】
前記がんの治療が、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、前記PD-L1阻害剤との、個別投与によるものである、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
前記がんの治療が、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、前記PD-L1阻害剤との、逐次の投与によるものである、請求項16に記載の使用。
【請求項20】
前記第1の医薬が、2.5mg~75mgの4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を含む、請求項1
6~1
9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記第1の医薬が、10mg~50mgの4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を含む、請求項1
6~
20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
前記第1の医薬が、1日1回隔日で5日間にわたり投与し、続いて2日は投与せずにおく投薬スケジュール(T.I.W.)で使用されるように処方される、請求項1
6~
21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記第1の医薬が、1日1回(QD)、1日2回(B.I.D.)、1日1回隔日(Q2D)または3日に1回(Q3D)で使用されるように処方される、請求項1
6~
21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記第1の医薬が、経口投与用に処方される、請求項1
6~2
3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
前記第2の医薬が、1mg/kg~3mg/kgで投与される、請求項1
6~2
4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
前記第2の医薬が、14~21日に1回使用される、請求項1
6~2
5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
前記第2の医薬が、非経口投与用に処方される、請求項1
6~2
6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
非経口投与が点滴静注である、請求項2
7に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物(化合物A)およびプログラム細胞死受容体1(PD-1)阻害剤またはプログラム細胞死受容体リガンド1(PD-L1)阻害剤によるがん治療に関し、組合せを用いて、がんを治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物は、Notch経路シグナル阻害化合物である。Notchシグナル伝達は、発達中および組織の恒常性において重要な役割を果たす。リガンドおよび/または受容体の突然変異、増幅または過剰発現によるNotchシグナル伝達の調節不全は、多くの悪性腫瘍に関連している。Notchシグナル伝達の阻害は、がん治療の発展に有望な標的である。T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、乳がん、卵巣がん、黒色腫、肺がん、膵がん、膠芽腫、大腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝がん、扁平上皮癌(口腔)、皮膚がんおよび髄芽腫の治療のためのものを含む、化合物Aならびにこの化合物を生成および使用する方法は、国際公開第2013/016081に、および平滑筋肉腫の治療については国際出願PCT/US2016/026119に開示されている。化合物Aは、Notch経路シグナル伝達に関連する突然変異、増幅または遺伝子発現の変性を示す特定の腫瘍型に対して特異的に認識される他の抗がん剤と併用して、第1相臨床試験および既定分子経路の変性または組織性の悪性腫瘍を有する拡大コホートにおいて、ならびにT細胞急性リンパ芽球性白血病またはT細胞リンパ芽球性リンパ腫(T-ALL/T-LBL)の患者を対象とした臨床試験において研究されている。
【0003】
腫瘍細胞は、様々な機序を通じた免疫系による検出および排除を逃れる。内因的には、免疫チェックポイント経路は、自己寛容の維持およびT細胞活性化の制御に利用される。PD-1リガンド、すなわちPD-L1およびPD-L2が、T細胞上に認められるPD-1受容体へ結合すると、T細胞の増殖およびサイトカインの産生が阻害される。いくつかの腫瘍でPD-1リガンドの上方制御が起こり、この経路を通じたシグナル伝達は、腫瘍が活性T細胞の免疫監視を阻害する一因となる。PD-1またはPD-L1を阻害することにより、免疫による腫瘍の破壊を回復させることが示されてきた。アンタゴニスト抗体を用いてPD-1またはPD-L1を標的とすることにより、抗腫瘍反応を含む免疫応答をPD-1経路による阻害から解放することが、臨床研究によって見出されてきた。
【0004】
Notch経路シグナル伝達は、活性化CD8+T細胞によるPD-1発現の調節因子であると、Mathieu et al, Immunology and Cell Biology, 2013, 91: 82-88において報告されている。がん患者のための治療の選択肢が複数存在するにもかかわらず、高い有効性および低い毒性の片方または両方をもたらす新たな異なる治療法が必要とされ続けている。現在の免疫療法は、がんの種類の一部において、および患者の一部のみにおいて効果を示している。新規の治療法または併用法が、特定のがんに対する総合効果を向上させるのに、または現在、薬剤単独に対してでは反応性が低いがんへのこのような治療の拡大を促進するのに必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、薬剤単独により提供される治療効果と比較して、T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、トリプルネガティブ乳がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、肺がん、非小細胞肺がん、膵がん、膠芽腫、大腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝がん、口腔扁平上皮癌、皮膚がん、髄芽腫、肝細胞癌、肝内および肝外胆管癌、類腱腫、軟部組織肉腫ならびに腺様嚢胞癌に対する、化合物Aと、抗PD-1またはPD-L1モノクローナル抗体阻害作用との併用作用による有益な治療効果を提供すると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の一態様は、患者におけるT細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、トリプルネガティブ乳がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、肺がん、非小細胞肺がん、膵がん、膠芽腫、大腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝がん、口腔扁平上皮癌、皮膚がん、髄芽腫、肝細胞癌、肝内および肝外胆管癌、類腱腫、軟部組織肉腫または腺様嚢胞癌を治療する方法であって、有効量の4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびアベルマブから選択される、有効量のPD-1またはPD-L1阻害剤とを、治療を必要とする患者に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0007】
本発明のさらなる態様は、患者における大腸がんを治療する方法であって、有効量の4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびアベルマブから選択される、有効量のPD-1またはPD-L1阻害剤とを、治療を必要とする患者に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0008】
本発明の別の態様は、患者におけるT細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、トリプルネガティブ乳がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、肺がん、非小細胞肺がん、膵がん、膠芽腫、大腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝がん、口腔扁平上皮癌、皮膚がん、髄芽腫、肝細胞癌、肝内および肝外胆管癌、類腱腫、軟部組織肉腫または腺様嚢胞癌を治療する方法であって、有効量の4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびアベルマブから選択される、有効量のPD-1またはPD-L1阻害剤とを、治療を必要とする患者に同時に、個別に(separately)、または逐次に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0009】
本発明の別の態様は、患者における大腸がんを治療する方法であって、有効量の4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびアベルマブから選択される、有効量のPD-1またはPD-L1阻害剤とを、治療を必要とする患者に同時に、個別に、または逐次に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0010】
本発明のさらなる態様は、化合物、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、ならびにペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびアベルマブから選択される、PD-1またはPD-L1阻害剤であって、T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、トリプルネガティブ乳がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、肺がん、非小細胞肺がん、膵がん、膠芽腫、大腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝がん、口腔扁平上皮癌、皮膚がん、髄芽腫、肝細胞癌、肝内および肝外胆管癌、類腱腫、軟部組織肉腫または腺様嚢胞癌の治療において同時に、個別に、または逐次に使用するための、前記化合物および前記阻害剤を提供する。
【0011】
本発明の別の態様は、化合物、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、ならびにペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびアベルマブから選択される、PD-1またはPD-L1阻害剤であって、大腸がんの治療において同時に、個別に、または逐次に使用するための、前記化合物および前記阻害剤を提供する。
【0012】
本発明のさらなる態様は、医薬の製造のための、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の使用、ならびに医薬の製造のための、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびアベルマブから選択される、PD-1またはPD-L1阻害剤の使用であって、T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、トリプルネガティブ乳がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、肺がん、非小細胞肺がん、膵がん、膠芽腫、大腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝がん、口腔扁平上皮癌、皮膚がん、髄芽腫、肝細胞癌、肝内および肝外胆管癌、類腱腫、軟部組織肉腫または腺様嚢胞癌を同時に、個別に、または逐次に治療するための、これらの使用を提供する。
【0013】
本発明のさらなる態様は、医薬の製造のための、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の使用、ならびに
医薬の製造のための、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびアベルマブから選択される、PD-1またはPD-L1阻害剤の使用であって、
大腸がんを同時に、個別に、または逐次に治療するための、これらの使用を提供する。
【0014】
本発明の別の態様は、T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、トリプルネガティブ乳がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、肺がん、非小細胞肺がん、膵がん、膠芽腫、大腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝がん、口腔扁平上皮癌、皮膚がん、髄芽腫、肝細胞癌、肝内および肝外胆管癌、類腱腫、軟部組織肉腫または腺様嚢胞癌の治療における使用を目的として、同時に、個別に、または逐次に投与するための説明書と共に各治療薬の別々の組成物を含む商用パッケージである。
【0015】
本発明のまたさらなる態様は、大腸がんの治療における使用を目的として、同時に、個別に、または逐次に投与するための説明書と共に各治療薬の別々の組成物を含む商用パッケージである。
【0016】
化合物、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物(化合物A)は、CAS登録番号142138-81-4を有する。あるいは、この化合物は、N-[(1S)-2-[[(7S)-6,7-ジヒドロ-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-5H-ピリド[3,2-a][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソエチル]-4,4,4-トリフルオロブタンアミドと命名されている場合がある。他の名称を使用して、化合物Aを明白に識別してもよい。
【0017】
本明細書で使用される用語「PD-1阻害剤」および「PD-L1阻害剤」は、任意選択で最適化した、完全ヒト型またはヒト化IgGモノクローナル抗体を意味する。
【0018】
PD-1阻害剤は、ニボルマブおよびペンブロリズマブを含む。ニボルマブ(Opdivo(登録商標)はまた、iMDX-1106、MDX-1106-04、ONO-4538またはBMS-936558として知られており、CAS登録番号946414-94-4を有する。ニボルマブは、PD-1を特異的にブロックする、完全ヒト型IgG4モノクローナル抗体である。PD-1に特異的に結合する、ニボルマブ(クローン5C4)および他のヒト型モノクローナル抗体は、米国特許第8,008,449号および国際公開第2006/121168号に開示されている。ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標)(かつては、ランブロリズマブ)は、Merck3745、MK-3475またはSCH-900475としても知られており、これは、PD-1に結合する、ヒト化IgG4モノクローナル抗体である。ペンブロリズマブは、Hamid, O. et al., New England Journal of Medicine, 2013, 369(2): 134-44、国際公開第2009/114335号および米国特許第8,354,509号に開示されている。他の抗PD-1抗体は、米国特許第8,609,089号、米国特許出願公開第2010/028330号および/または米国特許出願公開第2012/0114649号に開示されている。
【0019】
PD-L1阻害剤は、YW243.55.S70、MPDL3280A、MEDI-4736、MSB-0010718CおよびMDX-1105を含む。YW243.55.S70は、国際公開第2010/077634号および米国特許出願公開第2010/0203056号に記載されている、抗PD-L1抗体である。MDPL3280A(RG7446、RO5541267、アテゾリズマブ、Tecentriq(商標)としても知られる)は、PD-L1に結合する、Fc最適化完全ヒト化IgG1モノクローナル抗体である。PD-L1に対するMPDL3280Aおよび他のヒト型モノクローナル抗体は、米国特許第7,943,743号および米国特許出願公開第2012/0039906号に開示されている。MEDI-4736(デュルバルマブとしても知られる)は、PD-L1に対するFc最適化IgG1モノクローナル抗体であり、国際公開第2011/066389号に記載されている。MSB-0010718C(アベルマブとしても知られる)は、PD-L1に対する完全ヒト型IgG1モノクローナル抗体であり、国際公開第2013/079174号に記載されている。BMS-936559としても知られるMDX-1105は、国際公開第2007/005874号に記載される、完全ヒト型IgG4モノクローナル抗PD-L1抗体である。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「患者」は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。
【0021】
「治療有効量」または「有効量」は、患者における腫瘍細胞の増殖の阻害およびがんの進行の消失または緩徐化または抑止に必要な、化合物Aまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、あるいは化合物Aまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を含有する医薬組成物の用量と、PD-1もしくはPD-L1阻害剤、またはPD-1もしくはPD-L1阻害剤を含有する医薬組成物の用量とを意味する。化合物Aまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の用量は、2.5mg/患者~75mg/患者の範囲を1日1回隔日で5日間にわたり投与し、続いて2日は投与せずにおく(T.I.W.)。PD-1またはPD-L1阻害剤の用量は、表示に別段の記載がない限り、1~3mg/kgの範囲を14~21日に1回、30~60分超、点滴静注する。化合物Aまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の好ましい用量は、T.I.W.で10mg~50mgの範囲である。患者の治療に必要とされる正確な用量および治療期間は、個々の患者の疾患のステージおよび重症度ならびに特定のニーズおよび反応を考慮して医師により決定される。薬物投与は、患者により最適な治療効果をもたらし、任意の薬物関連毒性を管理または改善するように調整することができる。1日1回(QD)、1日2回(B.I.D.)、1日3回(T.I.D.);1日1回隔日(Q2D);または3日に1回(Q3D)等の代替的投薬スケジュールが、化合物Aにとって適切となり得る。PD-1またはPD-L1阻害剤の薬物投与は、薬物関連毒性を管理または改善するように、投与の保留またはさらなる投薬の恒久的な中止を含めて、調整することができる。
【0022】
本発明の併用療法は、T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、トリプルネガティブ乳がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、肺がん、非小細胞肺がん、膵がん、膠芽腫、大腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝がん、口腔扁平上皮癌、皮膚がん、髄芽腫、肝細胞癌、肝内および肝外胆管癌、類腱腫、軟部組織肉腫ならびに腺様嚢胞癌、好ましくは、軟部組織肉腫の治療を必要とする患者に、有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を、1日1回隔日で5日間にわたって、2日は投与せずに、これを毎週(7日)1サイクル28日にわたって、およびPD-1またはPD-L1阻害剤1~3mg/kgを、30~60分超、14~21日に1回投与することにより実施される。
【0023】
用語「治療」、「治療する」および「治療している」は、がんが実際には除去されていなくても、症状のうちの1または複数を緩和、緩徐化、停止または後退させ、がんの進行を遅延、停止または後退させる、化合物AおよびPD-1またはPD-L1阻害剤の投与等の、患者が患うがんのためのあらゆる介入を含むことを意味する。
【0024】
化合物Aまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物は、薬学的に許容される担体を使用して医薬組成物として処方され、種々の経路によって投与されることが好ましい。好ましくは、このような組成物は、経口投与用である。PD-1またはPD-L1阻害剤は、薬学的に許容される担体を使用して医薬組成物として処方され、非経口経路、好ましくは、点滴静注によって投与されることが好ましい。好ましくは、このような組成物は、凍結乾燥粉末または液体組成物でもよい。投薬を準備するための再溶解または希釈は、表示に従うか、または当分野の通常の技術による。このような医薬組成物およびこれらを調製するプロセスは、当分野において公知である。例えば、HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL EXCIPIENTS, 5th edition, Rowe et al., Eds., Pharmaceutical Press (2006)およびREMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY (Troy, et al., Eds., 21st edition, Lippincott Williams & Wilkins (2006)を参照されたい。
【0025】
化合物Aは、多くの無機および有機対イオンと反応して、薬学的に許容される塩を形成することができる。このような薬学的に許容される塩および、これらを調製する共通方法論は、当分野において公知である。例えば、P. Stahl, et al., HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS: PROPERTIES, SELECTION AND USE, (VCHA/Wiley-VCH, 2002)、S.M. Berge, et al., "Pharmaceutical Salts," Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol. 66, No. 1, January 1977を参照されたい。
【0026】
本発明の併用療法の有効性は、腫瘍退縮、腫瘍重量またはサイズの縮小、無増悪期間、全生存期間、無増悪生存期間、奏効率、効果持続期間、腫瘍退縮のない転移拡散の阻害およびPET/CT造影を含むがこれに限定されない、がん治療の評価に一般的に用いられる種々の評価項目によって測定することができる。
【0027】
用語「併用」、「治療薬の併用」および「医薬の併用」とは、用量が一定でない組合せを指すが、個々の治療薬、すなわち化合物Aまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物およびPD-1またはPD-L1阻害剤を、独立に同時に、または治療薬が協同効果を発揮できる時間間隔内に、個別に投与できる場合には、任意選択で併用投与のための説明書が一緒に包装される組合せを指す。
【0028】
用語「同時」投与は、化合物AおよびPD-1またはPD-L1阻害剤それぞれを、1回の動作で、患者へ投与することを意味し、したがって、この場合、化合物AおよびPD-1またはPD-L1阻害剤のそれぞれを、化合物AおよびPD-1またはPD-L1阻害剤が協同治療効果を示すことができる時間内に、実質的に同時に、または個別に、独立して投与する。
【0029】
用語「個別」投与は、化合物AおよびPD-1またはPD-L1阻害剤のそれぞれを、用量が一定でない投薬形態から、同時に、実質的に同時発生的にまたは任意の順序で逐次に、患者に投与することを意味する。化合物AおよびPD-1またはPD-L1阻害剤のそれぞれを投与するための特定の時間間隔があってもよいし、なくてもよい。
【0030】
用語「逐次」投与は、化合物AおよびPD-1またはPD-L1阻害剤のそれぞれを、用量が一定でない(個別の)投薬形態から、個別の動作で、患者に投与することを意味する。2回の投与動作は、特定の時間間隔によって連係してもよいし、しなくてもよい。例えば、T.I.W.での化合物Aの投与、および14~21日に1回等、特定の期間にわたるPD-1またはPD-L1阻害剤の投与である。
【0031】
句「と併用して」は、化合物AおよびPD-1またはPD-L1阻害剤のそれぞれを、治療を必要とするがん患者、特に大腸がん患者に、同時に、個別に、および逐次に投与することを含む。
【0032】
用語「共投与」または「併用投与」は、治療薬を一人の患者に投与することを包含し、異なる投与経路で、または異なる期間に薬剤を投与し得る治療計画を含む。
【0033】
一人の患者において、単独で投与される各薬剤の単純な相加作用よりも大きい効果を生み出す2つの治療薬の有益な作用は、例えば、シグモイドEmaxの式(Holford and Scheiner, Clin. Pharmacokinet., 1981, 6: 429-453)、ロエベ相加性の式(Loewe and Muischenk, Arch. Exp. Pathol. Pharmacol., 1926, 114: 313-326)、Median-effectの式(Chou and Talalay, Adv. Enzyme Regul., 1984, 22: 27-55)およびBliss独立法または既知の等価法等、当分野で知られた適切な方法を使用して算出することができる。各式に実験データを当てはめて、薬物併用の効果を、相加的の生物学的に適切な範囲内で相加的、相加的より小さい、または相加的より大きいものとして評価するのに役立つ、対応するグラフを作成することができる。
【0034】
Notchが発がんの役割を有することは、Notch1細胞内ドメインのT細胞受容体-βプロモーター領域への移行に関与し、Notch1細胞内ドメインの過剰発現を生じる、ヒトT細胞白血病において最初に報告された(Grabher et al. Nature Review Cancer, 2006(6):347-359、Weng et al. Science, 2004(306):269-271)。マウスの造血前駆細胞におけるNotch1細胞内ドメインの過剰発現は、マウスがヒト同様のT細胞急性リンパ芽球性白血病を示す原因となった。T細胞急性リンパ芽球性白血病に加えて、受容体の増幅ならびにリガンドおよび/または受容体の過剰発現を含む複数の機序によって、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病(Rosati et al, Blood, 2009(113): 856-865)、急性骨髄性白血病(Sliwa et al. Int J Clin Exp Pathol, 2014(7(3)): 882-889)、慢性骨髄性白血病(Nakahara et al. Blood, 2010(115(14)): 2872-2881)および赤白血病(Robert-Moreno et al, Leukemia, 2007(21): 1496-1503)を含む他のがんにおいて、Notchシグナルが発がん性であるという証拠が増えている。突然変異またはリガンドおよび/もしくは受容体の過剰発現による異常に恒常的なNotchシグナル伝達はまた、トリプルネガティブ乳がん(Stoeck et al, Cancer Discovery, 2014(4): 1154-1167)、乳がん、卵巣がん(Park et al. Cancer Research, 2006(66):6312-6318)、黒色腫(Gast et al. Genes, Chromosomes & Cancer, 2010(49):733-745)、肺がん、非小細胞肺がん(Westhoff et al. PNAS, 2009(106):22293-22298)、膵がん、膠芽腫、大腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝がん、扁平上皮癌(口腔)皮膚がんおよび髄芽腫(Rangathan et al., Nature Review Cancer, 2011(11):338-351 and Supplementary information S1 (table))を含む多くの固形悪性腫瘍と関連している。突然変異またはリガンドおよび/もしくは受容体の過剰発現による異常に恒常的なNotchシグナル伝達はまた、血管肉腫(Ravi et al, J Clin Oncol, 2007, (25(18S, June 20 Supplement)): Abstract 10030)、横紋筋肉腫(Belyea et al, Clin Cancer Res, 2011(17(23)): 7324-7336、Roma et al, Clin Cancer Res, 2011(17(3)): 505-513)、脂肪肉腫(J Clin Oncol, 2009, (27(15S, Supplement)): Abstract 10526)、悪性線維性組織球腫(Wang et al, Cancer Res, 2012, (72): 1013-1022)、肝細胞癌(Villanueva et al, Gastroenterology, 2012, (143): 1660-1669)、肝内および肝外胆管癌(Wu et al, Int J Exp Pathol, 2014, (7(6)): 3272-3279、Sekiya et al, J Clin Invest, 2012, (122(11)): 3914-3918、Yoon et al, World J Gastroenterol, 2011, (17(35)): 4023-4030)ならびに腺様嚢胞癌(Bell et al, Annals of Diagnostic Pathology, 2014, (18): 10-13、Stoeck et al, Cancer Discov, 2014, (4): 1154-1167)と関連している。
【0035】
がんの性質は、多因子性である。適切な状況下では、様々な作用機序を有する治療薬を併用し得る。しかし、異なる作用機序を有する治療薬の併用を検討するだけで、有益な効果を有する組合せが必ずしももたらされるわけではない。1種のみの治療薬を用いる単剤療法と比較して、実証された有益な効果(高い有効性および/または低い毒性等の治療効果)を提供する特定の治療薬が好ましい。
【0036】
本発明の組合せは、T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、トリプルネガティブ乳がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、肺がん、非小細胞肺がん、膵がん、膠芽腫、大腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝がん、口腔扁平上皮癌、皮膚がん、髄芽腫、肝細胞癌、肝内および肝外胆管癌、類腱腫、軟部組織肉腫ならびに腺様嚢胞癌の治療に適し、標準的治療に成功しなかった軟部組織肉腫患者の治療に特に適すると考えられる。これは、単剤療法に耐性を示すか、または本発明のものとは異なる組合せに耐性を示すがんを有する患者を含む。
【0037】
用語「完全奏効」(CR)、「部分奏効」(PR)、「進行性病態」(PD)、「安定病態」(SD)、「客観的奏効」(OR)は、RECIST vl.1, Eisenhauer et al., European Journal of Cancer, 2009, 45, 228-247による定義に従って使用される。
【0038】
用語「無増悪期間」(TTP)は、初期治療の時点から、がんの進行まで、週または月単位で一般的に測定される期間を指し(RECIST vl.1 definition for progressive diseaseを参照)、このがんの進行は、試験での最小合計値を基準として考えると(ベースラインの合計値が試験での最小値である場合、この最小合計値はベースラインの合計値を含む)、標的病変径の合計が少なくとも20%の増加であるとする。20%の相対的増加に加えて、この合計値がまた、少なくとも5mmの絶対的増加を示している必要がある。また、1または複数の新病変の出現も進行と考えられる。このような進行は、熟練した臨床医によって評価される。
【0039】
用語「TTPの延長」は、i)治療を受けない患者またはii)化合物AおよびPD-1またはPD-L1阻害剤のいずれか一方で治療を受けた患者と比較して、治療を受けた患者の無増悪期間が増加することを指す。
【0040】
用語「生存」は、患者が生命を維持していることを指し、全生存期間ならびに無増悪生存期間を含む。
【0041】
用語「全生存期間」は、患者が、診断または治療した時点から1年、5年等、特定の期間、生命を維持していることを指す。
【0042】
用語「無増悪生存期間」は、患者のがんが進行することなく、生命を維持していることを指す。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「生存の延長」は、i)治療を受けない患者、ii)化合物AおよびPD-1もしくはPD-L1阻害剤のいずれか一方で治療を受けた患者またはiii)対照治療プロトコルによる対照と比較して、治療を受けた患者の全生存期間または無増悪生存期間を延長することを意味する。生存は、がんの治療開始後または初期診断後、1カ月、6カ月、1年、5年または10年等、特定の期間モニターされる。
【0044】
用語「原発腫瘍」または「原発病変」は、最初のがんを意味し、別の組織、臓器または患者の体内の別の部位に位置する転移性腫瘍または病変を意味しない。
【0045】
一実施形態では、化合物Aの用量は、最大耐容量に到達するまで段階的に増加し、本発明のPD-1またはPD-L1阻害剤を一定用量投与する。あるいは、化合物Aを一定用量投与し、PD-1またはPD-L1阻害剤の用量を段階的に増加してもよい。各患者は、化合物Aおよび/またはPD-1もしくはPD-L1阻害剤の投与を、毎日または断続的に受けることができる。治療の有効性は、例えば、12、18または24週間後等の試験において、6週間ごとの症状スコアの評価によって判定することができる。
【0046】
化合物Aは、国際公開第2013/016081号に記載の方法によって調製することができる。
【0047】
PD-1またはPD-L1阻害剤は、米国特許第8,008,449号および国際公開第2006/121168号;Hamid, O. et al., New England Journal of Medicine, 2013, 369(2): 134-44;国際公開第2009/114335号および米国特許第8,354,509号;米国特許第8,609,089号、米国特許出願公開第2010/028330号および/もしくは米国特許出願公開第2012/0114649号;国際公開第2010/077634号;米国特許出願公開第2010/203056号;米国特許第7,943,743号;米国特許出願公開第2012/0039906号;国際公開第2011/066389号;国際公開第2013/079174号;ならびに国際公開第2007/005874号に記載の方法によって、または当業者に公知の、日常的に使用される方法によって調製することができる。
【0048】
以下の実施例は、化合物A単独、PD-1阻害剤単独またはPD-L1阻害剤単独、ならびに化合物AおよびPD-1またはPD-L1阻害剤の併用のそれぞれの作用を例示する。
【実施例】
【0049】
[生物学的実施例1]
in-vivo試験
in-vivo試験では、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)0.2mL中、1×106個のCT26細胞(ATCC(登録商標)CRL2639(商標))大腸がん細胞株を、6~8週齢のBALB/C雌マウス(Harlan Laboratories)の後肢に、皮下注射によって移植する。マウスは、通常の固形飼料を適宜与えられる。1%カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)の0.25%Tween(登録商標)80溶液中に溶解した化合物Aの経口投与(胃管栄養)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のマウス抗PD-L1抗体(10F.9G2、Bio X Cell、カタログ#BE0101)の腹腔内注射もしくはPBS中のマウス抗PD-1(CD279)抗体(クローン:RMP1-14、Bio X Cell#BP0146-R)の腹腔内注射、または、これらそれぞれの媒体0.2mL量の投与により、腫瘍移植から6日目に治療を開始する。8mg/kgの化合物Aを月、水、金曜日のスケジュールで2週間投与し、250μg/回/動物の10F.9G2およびRMP-14を月、木曜日のスケジュールで2週間投与する。
【0050】
腫瘍増殖および体重を経時的にモニターして、有効性および毒性徴候を評価する。腫瘍の2次元測定を週2回実施し、次式に基づいて腫瘍体積を算出する。(腫瘍体積)=[(L)×(W2)×(π/6)]式中、Lは中軸長であり、Wは中軸幅である。腫瘍体積データを対数スケールに変換して、期間および治療群にわたる分散を均等化する。対数体積データは、SAS(商標)ソフトウェア(バージョン8.2)のMIXED(商標)プロシジャを使用して、期間および治療による反復測定2元配置分散分析で分析する。反復測定の相関モデルは、空間検出力である。腫瘍体積スケールを真数とした、反復測定分析の最小2乗平均値を表1に示す。試験20日目の群の各対を比較するためのp値を表2に示す。試験群は、以下のとおりである。
1 1%CMC/0.25%Tween(登録商標)80/0.05%消泡剤、月-水-金×2、PO/PBS、月-木×2、IP
2 化合物A、8mg/kg、月-水-金×2、PO
3 化合物B(PD-L1)、250μg/回、月-木×2、IP
4 化合物C(PD-1)、250μg/回、月-木×2、IP
5 化合物A、8mg/kg、月-水-金-×2、PO/化合物B(PD-L1)、250μg/回、月-木×2、IP
6 化合物A、8mg/kg、月-水-金-×2、PO/化合物C(PD-1)、250μg/回、月-木×2、IP
【0051】
腫瘍増殖および体重を経時的にモニターして、有効性および毒性徴候を評価する。腫瘍の2次元測定を週2回実施し、次式に基づいて腫瘍体積を算出する。(腫瘍体積)=[(L)×(W2)×(π/6)]式中、Lは中軸長であり、Wは中軸幅である。腫瘍体積データを対数スケールに変換して、期間および治療群にわたる分散を均等化する。対数体積データは、SAS(商標)ソフトウェア(バージョン8.2)のMIXED(商標)プロシジャを使用して、期間および治療による反復測定2元配置分散分析で分析する。反復測定の相関モデルは、空間検出力である。治療を受けた群を各時点で対照群と比較する。各治療群について、各時点での補正後の平均値および標準誤差を算出するのに、MIXED(商標)プロシジャをまた、個別に使用する。双方の分析により、各動物中での自己相関および大型腫瘍を有する動物が試験から早期に除外される場合に起こるデータの欠損が説明される。補正後の平均値および標準誤差は、各治療群について期間に対してプロットする。抗腫瘍作用は、治療対対照(%T/C)についての腫瘍体積の割合として表され、治療群の腫瘍体積を媒体で処置した群の腫瘍体積と比較することによって算出される。治療群のT/Cの割合および統計学的に有意な値(p値)は、基本的に上記のとおり測定し、表2にまとめる。
【0052】
【0053】
【0054】
表2は、化合物AとPD-L1の併用(群5)が、この試験中、化合物A(群2)およびPD-L1単独(群3)のそれぞれを上回って統計学的に有意な腫瘍増殖阻害結果を実証したことを示す。化合物AおよびPD-1の併用(群6)は、化合物A(群2)単独を上回る統計学的に有意な増殖阻害結果を示したが、PD-1(群4)単独については示さなかった。
【0055】
併用分析
前述の反復測定分析を用いて、試験20日目に相互作用効果を試験するのにCONTRASTステートメントを使用し、ここでは、2つの特定の治療(化合物AおよびPD-L1)を併用した。この試験は、p=0.008により統計学的に有意であり、併用群の推定平均腫瘍体積(298mm3)が、Bliss独立法による推定相加腫瘍体積(1134×1069/1448=837mm3)未満であるため、相加活性よりも優れ、または相乗活性を実証している。
【0056】
前述の反復測定分析を用いて、試験20日目に相互作用効果を試験するのにCONTRASTステートメントを使用し、ここでは、2つの特定の治療(化合物AおよびPD-1)を併用した。この試験は、p=0.769により統計学的に有意ではなく、併用群の推定平均腫瘍体積(431mm3)が、Bliss独立法による推定相加腫瘍体積(526×1069/1448=389mm3)に近いため、相加作用を示している。
【0057】
機序分析
機序分析では、20日目、化合物Aの最後の投与から1時間後にCT-26腫瘍を切除する。約30mgの小片を切り出し、遺伝子発現分析用にRNALater中に保存した。この腫瘍の残りは、フローサイトメトリー分析用に処理する。
【0058】
フローサイトメトリー
腫瘍を秤量し、次いで4℃で5mLの完全培地(CM;RPMI-1640/10%ウシ胎仔血清(FBS))中で100μmストレーナに通してホモジナイズして、単一細胞の懸濁液を生成する。細胞を466×g、4℃で5分間遠心分離し、ペレットを新たなCM(ペレットの量に応じて0.5~3mL)に再懸濁し、Vi-CellXR(Beckman Coulter)を使用して細胞を計数する。1腫瘍あたり等数の総細胞(10×106)を96ウェルでV字底のマイクロプレート(Fisher Scientific)に移す。細胞を遠心分離し(700×g、3分間、4℃)、CM中の100μL、1μg/mLのFc block(抗CD16/32(クローン2.4G2)、Tonbo Biosciences)に氷冷下で30分間再懸濁する。細胞を遠心分離し(700×g、3分間、4℃)、固定可能な生体染色色素(eBioscience)を含有する、100μLの蛍光色素結合表面マーカー抗体混合物のいくつかのうちの1つ[抗CD3(クローン145-2C11)、抗Ly-6G(クローン1A8)、抗CD11c(クローンHL3)、抗CD45(クローン30-F11)(BD Biosciences)、抗CD8(クローン53-6.7)(Biolegend)、抗CD11b(クローンM1/70)、抗CD3(クローン145-2C11)、抗F4/80(クローンBM8)、抗CD4(クローンRM4-5)(eBioscience)]に再懸濁し、氷冷下で遮光して30分間培養する。細胞を200μLのCMで2回洗浄し、遠心分離する(700×g、3分間、4℃)。2回目の洗浄後、細胞を固定し、透過処理し、記載された改変を有するメーカーの指示に従って、Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Set(eBioscience)を使用してKi67(クローンSolA15)(eBioscience)について細胞内染色する。簡潔に言えば、細胞を100μL/ウェルで30分間固定し、次いで、100μL/ウェルの透過処理バッファで、細胞内染色ありまたはなしで(使用する染色パネルに応じて)30分間固定する。細胞を200μL、1Xの透過処理バッファで2回洗浄し、遠心分離し(700×g、3分間、4℃)、次いで、2%のFBSを添加したPBSに再懸濁する。デブリを除く1×106のイベントを、各試料について、10チャンネルのLSR IIサイトメーター(BD Biosciences)を使用して収集し、FlowJo V.10.0.8ソフトウェアを使用して分析する。データは、腫瘍細胞に対するパーセントとして表されるが、記載された例外は母集団に対するパーセントとして表される。ANOVAによる事後t検定を媒体および治療群の間の統計分析に使用する。結果を表3にまとめる。
【0059】
【0060】
【0061】
表3のデータは、腫瘍内CD4+Ki67+(活性CD4+T細胞)、CD8+Ki67+(活性CD8+T細胞)、CD11b+(骨髄細胞)、CD11b+F4/80+(マクロファージ)、CD11c+(樹状細胞)およびCD11b+Ly-6G+F4/80-(好中球)により実証される炎症反応の上昇を示す。
【0062】
遺伝子発現分析
腫瘍からのRNAの単離では、約30mgの組織を切り出す。RNAをRNeasyプロトコル(2002年1月版)によって、RNeasy96ウェルカラムプレート(Qiagen、Valencia、CA;Cat#74182)およびQiaVac96真空マニホールドを15psiの真空で使用して抽出する。簡潔に言えば、2mLのLysing Matrix-D(登録商標)チューブ(MP Biomedicals、Solon、OH;Cat#6913-500、Lot#6913-500-120156)中、1%のβ-メルカプトエタノールを含有する800μLのバッファ-RLTで、FP120(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA;Cat#6001-120)またはFastPrep-24(MPBiomedicals;Cat#116003500)を使用して、2回の混合について速度6.0で各30秒、組織をホモジナイズする。チューブを毎分14,000回転(RPM)で30分間遠心分離にかける。400~600μLの上清を取り出し、等量の70%エタノール(Decon Labs、King of Prussia、PA;Cat#2401)と混合し、96ウェルのRNeasyプレート上に移す。供給元のプロトコルに従ってDNase-I消化酵素(Qiagen、Cat#79254)をカラム上へ添加することにより、潜在的に混入しているDNAをすべて除去する。全RNAを、DNase/RNaseを含まない水の40μLアリコート2つに抽出する。全RNA濃度を、Nanodrop ND-1000分光光度計(Thermo Scientific)を使用して、260nMの吸光度により推定する。全RNAを、cDNA合成に必要とするまで-80℃で保存する。
【0063】
High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems、Framingham、MA;Cat#4368813)を使用して、3μgの全RNAを、96ウェルPCRプレート(Molecular Bioproducts、San Diego、CA;Cat#3419)中、最終量100μLに逆転写する。このとき、GeneAmp PCRシステム9700(Applied Biosystems)を、次のパラメータで使用する:25℃で10分間、37℃で2時間および4℃で無限に(for infinity)。長期の保存には、cDNAは-30℃で保存し、全RNAは-80℃で保存する。
【0064】
Taqman法のために、cDNA100μLを、96ウェルのClear Optical Reaction Plate(Applied Biosystems、Cat#4306737)中、RNase/DNaseを含まない水200μLで希釈し、RNase/DNaseを含まない2mLのチューブ(Ambion、Cat#AM12475)に移す。2×ユニバーサルバッファ(Applied Biosystems、Cat#4318157)を使用して、Taqman反応を実施し、384ウェルのClear Optical Reaction Plate(Applied Biosystems、Cat#4309849)中、最終量20μLとする。Tecan自動ピペットワークステーション(Tecan US Inc.、Durham、NC;モデル:Freedom Evo-100またはEvo-150)で試料を分注し、ABI Prism9700HT SDSプレートリーダーで、次のプロトコル設定によりプレートを読み取る:50℃で2分間、95℃で10分間ならびに95℃で15秒間および60℃で1分間を40サイクル。絶対CT値は、検量線ベースの方法に基づいて標準化する。すべての計算は、Microsoft Excelスプレッドシートテンプレートで行い、阻害率(%)は、対照値から算出する。統計学的有意性は、バージョン11のJMPソフトウェア(SAS、Cary、NC)で分析する。結果は、媒体対照と比較した倍率変化として表4に記載する。≧1.5倍(1.5×)の統計学的に有意な値を示す。化合物AおよびPD-L1単独の治療群において、遺伝子発現の有意な変化は確認されなかった。データは、化合物AをPD-L1またはPD-1抗体と併用した場合、腫瘍内の炎症およびT細胞活性と関連する遺伝子発現の増加を示す。以下に列挙するTaqmanプライマーおよびプローブはすべて、Applied Biosystems Inc.(ABI)から購入し、これらのカタログ番号をABI#として、結果の要約と共に表に記載する。
【0065】
【表4】
また、本発明は以下を提供する。
[1]
患者におけるT細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、トリプルネガティブ乳がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、肺がん、非小細胞肺がん、膵がん、膠芽腫、大腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝がん、口腔扁平上皮癌、皮膚がん、髄芽腫、肝細胞癌、肝内および肝外胆管癌、類腱腫、軟部組織肉腫または腺様嚢胞癌である、がんを治療する方法であって、有効量の4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびアベルマブから選択される、有効量のPD-1またはPD-L1阻害剤とを、治療を必要とする患者に投与するステップを含む、方法。
[2]
前記がんが大腸がんである、[1]に記載の方法。
[3]
がんの治療を必要とする患者におけるT細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、トリプルネガティブ乳がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、肺がん、非小細胞肺がん、膵がん、膠芽腫、大腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝がん、口腔扁平上皮癌、皮膚がん、髄芽腫、肝細胞癌、肝内および肝外胆管癌、類腱腫、軟部組織肉腫または腺様嚢胞癌である、がんを治療する方法であって、有効量の4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびアベルマブから選択される、有効量のPD-1またはPD-L1阻害剤とを同時に、個別に、または逐次に投与するステップを含む、方法。
[4]
前記がんが大腸がんである、[3]に記載の方法。
[5]
T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、トリプルネガティブ乳がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、肺がん、非小細胞肺がん、膵がん、膠芽腫、大腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝がん、口腔扁平上皮癌、皮膚がん、髄芽腫、肝細胞癌、肝内および肝外胆管癌、類腱腫、軟部組織肉腫または腺様嚢胞癌の治療に同時に、個別に、または逐次に使用するための、化合物、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、ならびにペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびアベルマブから選択される、PD-1またはPD-L1阻害剤。
[6]
前記がんが大腸がんである、[5]に記載の使用。
[7]
医薬の製造のための、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の使用、ならびに医薬の独立した製造のための、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよびアベルマブから選択される、PD-1またはPD-L1阻害剤の使用であって、T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、トリプルネガティブ乳がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、肺がん、非小細胞肺がん、膵がん、膠芽腫、大腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝がん、口腔扁平上皮癌、皮膚がん、髄芽腫、肝細胞癌、肝内および肝外胆管癌、類腱腫、軟部組織肉腫または腺様嚢胞癌を同時に、個別に、または逐次に治療するための、これらの使用。
[8]
前記がんが大腸がんである、[7]に記載の使用。