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特許7194036移載装置、検体処理システム及び搬送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】移載装置、検体処理システム及び搬送方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
G01N35/02 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019021519
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020128913
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 建大
(72)【発明者】
【氏名】奥野 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】藤木 邦裕
(72)【発明者】
【氏名】武山 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】伏見 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】片保 秀明
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-141732(JP,A)
【文献】特開2014-048215(JP,A)
【文献】特開2007-078363(JP,A)
【文献】特開2015-068727(JP,A)
【文献】米国特許第06220451(US,B1)
【文献】特開2011-242154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラック搬送用の基幹搬送ラインに接続されたU字形態を有するラック搬送用の搬送路と、
前記搬送路に並列接続され、移載元ラックから移載先ラック列へ複数の検体容器を仕分けながら移載する複数の移載ユニットと、
前記複数の移載ユニットを制御する制御部であって、前記検体容器ごとに当該検体容器内の検体に対して今後適用される処理の内容を示す情報に基づいて、前記検体容器の移載先として、前記移載先ラック列の中から特定の移載先ラックを選択する制御部と、
を含むことを特徴とする移載装置。
【請求項2】
請求項1記載の移載装置において、
前記基幹搬送ラインには上流側セクション及び下流側セクションが接続され、
当該移載装置は前記上流側セクションと前記下流側セクションとの間に設けられ、
前記上流側セクションから前記各移載ユニットへ前記基幹搬送ライン及び前記搬送路を介して前記移載元ラックが送り込まれ、
前記各移載ユニットから前記下流側セクションへ前記搬送路及び前記基幹搬送ラインを介して移載完了ラックが送り出される、
ことを特徴とする移載装置。
【請求項3】
請求項1記載の移載装置において、
前記複数の移載ユニットが並列動作する、
ことを特徴とする移載装置。
【請求項4】
請求項2記載の移載装置において、
前記下流側セクションは、検体検査を実行する検査セクョンの上流側に設けられて検体前処理を実行する前処理セクションであり、
前記今後適用される処理の内容には少なくとも前記検体前処理の内容が含まれる、
ことを特徴とする移載装置。
【請求項5】
請求項4記載の移載装置において、
前記移載先ラック列には、
前記検体前処理における複数の検体前処理類型に対応した複数の移載先ラックと、
前記検体検査における複数の検体検査類型に対応した複数の移載先ラックと、
が含まれ、
前記今後適用される処理の内容には更に検体検査の内容が含まれる、
ことを特徴とする移載装置。
【請求項6】
請求項2記載の移載装置において、
前記上流側セクションは検体前処理を実行する前処理セクションであり、
前記下流側セクションは検体検査を実行する検査セクションであり、
前記今後適用される処理の内容には前記検体検査の内容が含まれる、
ことを特徴とする移載装置。
【請求項7】
請求項2記載の移載装置において、
前記上流側セクションは検体検査を実行する検査セクションであり、
前記下流側セクションは検体後処理を実行する後処理セクションであり、
前記今後適用される処理の内容には少なくとも前記検体後処理の内容が含まれる、
ことを特徴とする移載装置。
【請求項8】
ラック搬送用の基幹搬送ラインと、
前記基幹搬送ラインに接続され、ラック搬送の上流側から下流側にかけて設けられた複数のセクションと、
前記基幹搬送ラインに接続され、複数のセクション間に設けられた複数の移載ステーションと、
を含み、
前記複数の移載ステーションの中の少なくとも1つの移載ステーションは、
前記基幹搬送ラインに接続されたU字形態を有するラック搬送用の搬送路と、
前記搬送路に並列接続され、上流側セクションから前記基幹搬送ライン及び前記搬送路を介して送り込まれた移載元ラックから移載先ラック列へ複数の検体容器を仕分けながら移載する複数の移載ユニットと、
を含み、
前記各移載ユニットでは、移載対象となった検体容器ごとに当該検体容器内の検体に対して今後適用される処理の内容を示す情報に基づいて、当該検体容器の移載先として、前記移載先ラック列の中から特定の移載先ラックが選択され、
前記各移載ユニットから下流側セクションへ前記搬送路及び前記基幹搬送ラインを介して移載完了ラックが搬送される、
ことを特徴とする検体処理システム。
【請求項9】
請求項8記載の検体処理システムにおいて、
前記複数のセクションには、複数の検体容器が搬入される搬入セクション、及び、検体前処理を実行する前処理セクションが含まれ、
前記複数の移載ステーションには、前記上流側セクションとしての前記搬入セクションと前記下流側セクションとしての前記前処理セクションとの間に設けられた第1移載ステーションが含まれる、
ことを特徴とする検体処理システム。
【請求項10】
請求項9記載の検体処理システムにおいて、
前記複数のセクションには、更に、検体検査を実行する検査セクションが含まれ、
前記複数の移載ステーションには、更に、前記上流側セクションとしての前記前処理セクションと前記下流側セクションとしての前記検査セクションとの間に設けられた第2移載ステーションが含まれ、
前記少なくとも1つの移載ステーションには前記第2移載ステーションが含まれる、
ことを特徴とする検体処理システム。
【請求項11】
請求項10記載の検体処理システムにおいて、
前記複数のセクションには、更に、検体後処理を実行する後処理セクションが含まれ、
前記複数の移載ステーションには、更に、前記上流側セクションとしての前記検査セクションと前記下流側セクションとしての前記後処理セクションとの間に設けられた第3移載ステーションが含まれ、
前記少なくとも1つの移載ステーションには更に前記第3移載ステーションが含まれる、
ことを特徴とする検体処理システム。
【請求項12】
ラック搬送用の基幹搬送ライン、前記基幹搬送ラインに接続された複数のセクションであって前記基幹搬送ラインの上流側から下流側にかけて設けられた複数のセクション、及び、前記基幹搬送ラインに接続された移載ステーションを含む検体処理システムにおける搬送方法であって、
前記移載ステーションは、
前記基幹搬送ラインに接続されたU字形態を有するラック搬送用の搬送路と、
前記搬送路に並列接続され、移載元ラックから移載先ラック列へ複数の検体容器を仕分けながら移載する複数の移載ユニットと、
を含み、
前記搬送方法は、
前記移載ステーションにおいて、上流側セクションから前記基幹搬送ライン及び前記搬送路を介して送り込まれた移載元ラックから移載先ラック列へ複数の検体容器を仕分けながら移載する工程と、
前記移載ステーションから下流側セクションへ前記搬送路及び前記基幹搬送ラインを介して移載完了ラックを搬送する工程と、
を含み、
前記仕分けながら移載する工程では、移載対象となった検体容器ごとに当該検体容器内の検体に対して今後適用される処理の内容に基づいて、当該検体容器の移載先として、前記移載先ラック列の中から特定の移載先ラックが選択される、
ことを特徴とする搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移載装置、検体処理システム及び搬送方法に関し、特に、検体を収容した検体容器を搬送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
検体処理システムは、人体から採取された血液、尿、便等の検体を処理するシステムである。典型的な検体処理システムは、検体前処理装置、検体検査装置、ラック搬送装置等により構成される。
【0003】
検体前処理装置は、検体の検査に先立って、検体に対して前処理を施す装置である。前処理として、遠心分離処理、開栓処理、分注処理、閉栓処理等があげられる。分注処理は、第1検体容器から第1検体を吸引し、それを1又は複数の第2検体容器へ吐出することにより、1又は複数の第2検体を作成するものである。第1検体容器は通常、親検体容器(又は元検体容器)と呼ばれ、そこに収容されている検体は通常、親検体(又は元検体)と呼ばれる。第2検体容器は通常、子検体容器と呼ばれ、そこに収容されている検体は通常、子検体と呼ばれる。検体ごとに、それに対して適用される検査の内容に応じて、検体に対する前処理の要否及びその内容が判断される。
【0004】
検体検査装置は、検体の検査を実行する装置である。検体が血液である場合、その検査として、免疫検査、生化学検査、血球算定(血算)検査、血糖検査等があげられる。検体検査装置の中には、前処理で作成された子検体に対して検査を実行する検体検査装置、及び、前処理を経ない検体に対して検査を実行する検体検査装置が含まれる。
【0005】
ラック搬送装置は、複数の検体容器をラック単位で搬送する装置である。ラック搬送装置により、ラックが検体前処理装置に送られ、前処理後のラックが検体前処理装置から検体検査装置へ送られる。検査後のラックが後処理を行う装置へ送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-159635号公報
【文献】特開2017-120206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
検体処理システムにおいては、個々の検体容器の搬送先がラック単位で決定される。すなわち、あるラックに保持された複数の検体容器が一緒に搬送されるグループを構成する。換言すれば、それらの検体容器内の複数の検体が一緒に搬送されるグループ(以下、同送検体グループという。)を構成する。しかし、同送検体グループを構成する個々の検体に対する今後の処理の観点から見て、現在の同送検体グループの構成が適切でないこともある。それを原因として検体処理効率を高められない、ラック搬送が複雑化する、等の問題が生じる。特に、多数の装置を含む大規模な検体処理システムにおいては、その問題が顕著となる。
【0008】
なお、特許文献1には、複数のサブラインを備える大型前処理システムが開示されている。特許文献2には、検査項目に対応した搬送ラインに検体容器を仕分ける装置が記載されている。しかし、いずれの特許文献にも同送検体グループの構成を変更できる仕組みは開示されていない。
【0009】
本発明の目的は、検体処理効率を高められる検体容器搬送を実現することにある。あるいは、本発明の目的は、ラック単位で複数の検体がグルーピングされることを前提として、ある処理に先立ってその処理に適合した同送検体グループが構成されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る移載装置は、移載元ラックから移載先ラック列へ複数の検体容器を仕分けながら移載する容器移載機構と、前記容器移載機構を制御する制御部であって、前記検体容器ごとに当該検体容器内の検体に対して今後適用される処理の内容を示す情報に基づいて、前記検体容器の移載先として、前記移載先ラック列の中から特定の移載先ラックを選択する制御部と、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る検体処理システムは、ラック搬送の上流側から下流側にかけて設けられた複数のセクションと、複数のセクション間に設けられた複数の移載ステーションと、を含み、前記各移載ステーションは、上流側セクションから送り込まれた移載元ラックから移載先ラック列へ複数の検体容器を仕分けながら移載する容器移載機構を含み、前記各移載ステーションでは、移載対象となった検体容器ごとに当該検体容器内の検体に対して今後適用される処理の内容を示す情報に基づいて、当該検体容器の移載先として、前記移載先ラック列の中から特定の移載先ラックが選択され、前記各移載ステーションから下流側セクションへ移載完了ラックが搬送される、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る搬送方法は、ラック搬送の上流側から下流側にかけて設けられた複数のセクションを含む検体処理システムにおける搬送方法であって、少なくとも1つのセクション間に設けられた移載ステーションにおいて、上流側セクションから送り込まれた移載元ラックから移載先ラック列へ複数の検体容器を仕分けながら移載する工程と、前記移載ステーションから下流側セクションへ移載完了ラックを搬送する工程と、を含み、前記仕分けながら移載する工程では、移載対象となった検体容器ごとに当該検体容器内の検体に対して今後適用される処理の内容に基づいて、当該検体容器の移載先として、前記移載先ラック列の中から特定の移載先ラックが選択される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検体処理効率を高められる。あるいは、ラック単位で複数の検体がグルーピングされることを前提として、ある処理に先立ってその処理に適合した同送検体グループを構成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る検体処理システムにおける機器レイアウトの一例を示す平面図である。
図2】複数のラックの関係を示す概念図である。
図3】実施形態に係る検体処理システムを示すブロック図である。
図4】第1移載ステーションでの仕分け移載の一例を示す概念図である。
図5】移載ユニットの制御に関わる構成の一例を示すブロック図である。
図6】第1移載ステーションでの仕分け移載条件の一例を示す説明図である。
図7】双方向移載ユニットの一例を示す概念図である。
図8】第2移載ステーションでの仕分け移載の一例を示す概念図である。
図9】第2移載ステーションの制御に関わる構成の一例を示すブロック図である。
図10】第2移載ステーションの制御に際して参照される移載管理テーブルの一例を示す説明図である。
図11】第3移載ステーションでの仕分け移載条件の一例を示す説明図である。
図12】検体処理システムの動作例を示すフローチャートである。
図13】第1移載ステーションの変形例を示す図である。
図14】第2移載ステーションの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る移載装置は、容器移載機構、及び、制御部を備える。容器移載機構は、移載元ラックから移載先ラック列へ複数の検体容器を仕分けながら移載する機構である。制御部は、容器移載機構を制御する制御部であり、検体容器ごとに当該検体容器内の検体に対して今後適用される処理の内容を示す情報に基づいて、検体容器の移載先として、移載先ラック列の中から特定の移載先ラックを選択する。
【0017】
上記構成によれば、個々の検体に対して今後適用される処理の内容を考慮しつつ複数の検体容器を仕分けながら移載することが可能となる。典型的には、同じ処理が適用される又は部分的に共通性をもつ処理が適用される複数の検体がグルーピングされ、それらが一括して搬送される。つまり、上記構成によれば、同送検体グループの構成が最適化される。よって、ラック搬送効率を高めることができ、同時に、下流側セクションでの処理効率を高められる。
【0018】
移載先ラック列は、実施形態において、仕分け数に応じた複数の移載先ラックにより構成される。移載装置を構成する複数の移載ユニットが並列的に仕分け移載動作を行うようにしてもよい。その場合、個々の移載ユニットが仕分け移載全体の一部分を担当してもよい。容器移載機構は、後述する実施形態において、マニピュレータによって検体容器を搬送する機構である。他の方法により検体容器が移載されてもよい。検体に対して今後適用される処理の内容を示す情報には、上位システムからの指示情報、検体IDに紐付けられた処理コード、検体容器画像の解析結果から求まる情報、等が含まれる。
【0019】
実施形態において、移載装置は上流側セクションと下流側セクションとの間に設けられ、上流側セクションから移載装置へ移載元ラックが送り込まれ、移載装置から下流側セクションへ移載完了ラックが送り出される。この構成によれば、上流側セクションと下流側セクションとの間でラック間での仕分け移載を行って複数の検体容器を再度グルーピングすることが可能となる。すなわち、下流側セクションでの処理の内容に適合した同送検体グループを再構成できる。各セクションは検体を処理する単一の装置又は装置群により構成される。
【0020】
実施形態に係る移載装置は、上流側セクションと下流側セクションとの間に設けられた複数の移載ユニットを含み、各移載ユニットは容器移載機構を備え、複数の移載ユニットが有する複数の容器移載機構が並列動作する。この構成によれば、大量の検体容器に対する仕分け移載を短時間で行うことが可能となる。負荷に応じて、実際に稼働させる移載ユニット数が決定されてもよい。負荷は、例えば、単位時間当たり処理すべき検体容器数として特定され得る。
【0021】
実施形態において、下流側セクションは、検体検査を実行する検査セクョンの上流側に設けられて検体前処理を実行する前処理セクションであり、今後適用される処理の内容には少なくとも検体前処理の内容が含まれる。検体前処理は、検体検査に先立って、検体に対して分注処理等の必要な処理を施すものである。検体前処理に先立って仕分け移載を行えば、前処理セクションでの処理効率を高められる。その仕分け移載に際して、検体前処理が不要な検体容器がグルーピングされてもよいし、何からのエラーを伴う検体容器がグルーピングされてもよいし、マニュアルで検体検査が行われる検体容器がグルーピングされてもよい。
【0022】
実施形態において、移載先ラック列には、検体前処理における複数の検体前処理類型に対応した複数の移載先ラックと、検体検査における複数の検体検査類型に対応した複数の移載先ラックと、が含まれ、今後適用される処理の内容には更に検体検査の内容が含まれる。この構成によれば、仕分け移載に際して、検体前処理類型及び検体検査類型に応じて複数の検体容器をグルーピングできる。例えば、前処理セクションの前段において、前処理セクションがスキップされる検体容器が検体検査類型ごとにグルーピングされてもよい。その場合、それらの検体容器を検体検査の直前で又は検体検査の段階で仕分ける必要がなくなる。
【0023】
実施形態において、上流側セクションは検体前処理を実行する前処理セクションであり、下流側セクションは検体検査を実行する検査セクションであり、今後適用される処理の内容には検体検査の内容が含まれる。この構成によれば、前処理セクションから送出された複数の検体容器に対して仕分け移載が適用される。これにより、検査セクションでの処理効率を高められる。この仕分け移載に対して、別のフロアにある他の検査セクションへ送られる検体容器、マニュアルで検査される検体容器、何らかのエラーを伴う検体容器、等が仕分けられてもよい。
【0024】
実施形態において、上流側セクションは検体検査を実行する検査セクションであり、下流側セクションは検体後処理を実行する後処理セクションであり、今後適用される処理の内容には少なくとも検体後処理の内容が含まれる。この構成によれば、検体後処理での処理効率を高められる。検体後処理の概念には、保管、返却等が含まれ得る。保管方法等を考慮して仕分け条件が定められてもよい。
【0025】
実施形態に係る検体処理システムは、ラック搬送の上流側から下流側にかけて設けられた複数のセクションと、複数のセクション間に設けられた複数の移載ステーションと、を含む。各移載ステーションは、上流側セクションから送り込まれた移載元ラックから移載先ラック列へ複数の検体容器を仕分けながら移載する容器移載機構を含む。各移載ステーションでは、移載対象となった検体容器ごとに当該検体容器内の検体に対して今後適用される処理の内容を示す情報に基づいて、当該検体容器の移載先として、移載先ラック列の中から特定の移載先ラックが選択される。各移載ステーションから下流側セクションへ移載完了ラックが搬送される。
【0026】
上記構成によれば、複数の移載ステーションがそれぞれインターフェイスとして機能し、段階的に存在する複数のセクション間で適時に複数の仕分け移載を行える。これにより、各セクションでの処理効率、及び、システム内でのラック搬送効率を高められる。特に、多種多様の装置を含む大規模検体処理システムにおいて、上記構成を採用するのが望ましい。
【0027】
複数のセクション及び複数のステーションは、望ましくは、基幹搬送ラインに接続される。複数のセクションの具体例として、搬入セクション、前処理セクション、検査セクション、及び、後処理セクションがあげられる。複数の移載ステーションの具体例として、第1移載ステーション、第2移載ステーション、及び、第3移載ステーションがあげられる。ここで、第1移載ステーションは、親検体容器の仕分け移載を行うものである。第2移載ステーションは、親検体容器及び子検体容器の両方又は一方の移載を行うものである。第3移載ステーションは、親検体容器の両方又は一方の移載を行うものである。検体処理システムの目的や具体的事情によって、各移載ステーションでの移載対象を適宜定め得る。
【0028】
実施形態に係る搬送方法は、ラック搬送の上流側から下流側にかけて設けられた複数のセクションを含む検体処理システムにおける搬送方法であって、少なくとも1つのセクション間に設けられた移載ステーションにおいて、上流側セクションから送り込まれた移載元ラックから移載先ラック列へ複数の検体容器を仕分けながら移載する工程と、前記移載ステーションから下流側セクションへ移載完了ラックを搬送する工程と、を含む。仕分けながら移載する工程では、移載対象となった検体容器ごとに当該検体容器内の検体に対して今後適用される処理の内容に基づいて、当該検体容器の移載先として、移載先ラック列の中から特定の移載先ラックが選択される。
【0029】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る検体処理システムにおける機器レイアウトが示されている。図示された検体処理システムは、医療機関から送られてきた多数の検体を処理する大規模検体処理システムである。もちろん、以下に説明する構成の全部又は一部が他の検体処理システム、例えば、小規模検体処理システム、検体前処理システム、検体検査システム、等に適用されてもよい。図示された検体処理システムにおいて、検体は、生体から採取された血液、尿、便等である。複数種類の検体が処理対象とされているが、一種類の検体(例えば血液)が処理対象とされてもよい。
【0030】
図1において、検体処理システムは、第1サブシステム10、第2サブシステム12及び基幹搬送機構14を有する。基幹搬送機構14を間において、その両側に、第1サブシステム10及び第2サブシステム12が設けられている。第1サブシステム10及び第2サブシステム12は、一部(具体的には搬入セクション22)を除いて、基本的に互いに同一の構成を有しており、それらが有するレイアウトは基本的に互いに対称である。
【0031】
処理負荷が高い場合、第1サブシステム10及び第2サブシステム12の両方が使用され、処理負荷が低い場合、第1サブシステム10及び第2サブシステム12の一方が使用される。これにより負荷に見合った合理的な稼働を実現できる。また、一方のサブシステムで障害が生じた場合でも、他方のサブシステムを稼働させることが可能であるから、検体処理システム全体に及ぶ稼働停止のリスクを低減できる。
【0032】
基幹搬送機構14は、図示の構成例において、第1基幹搬送ライン16及び第2基幹搬送ライン18からなる。第1基幹搬送ライン16には、第1サブシステム10内の複数のセクション及び複数の移載ステーションが接続されている。同様に、第2基幹搬送ライン18には、第2サブシステム12内の複数のセクション及び複数の移載ステーションが接続されている。基幹搬送機構14の終端は、後処理を行う後処理セクション20に接続されている。後処理セクション20には保管庫21が含まれる。
【0033】
以下においては、第1サブシステム10及び第2サブシステム12の内で、第1サブシステム10を代表させてその構成を説明し、第2サブシステム12についての説明を省略する。なお、X方向は、基幹搬送機構14によるラック搬送の方向であり、Y方向はX方向に直交する方向である。紙面右側がラック搬送の上流側であり、紙面左側がラック搬送の下流側である。
【0034】
図1において、第1サブシステム10は、上流側から下流側にかけて設けられた、搬入セクション22、第1移載ステーション24、前処理セクション26、第2移載ステーション28、検査セクション30、及び、第3移載ステーション32を有する。第3移載ステーション32の下流側に後処理セクション20が設けられている。以下、各部門について具体的に説明する。
【0035】
まず、搬入セクション22について説明する。搬入セクション22は、図示された構成例において、ループ状コンベア34及び移送ロボット群36を有する。作業者により、運搬トラックから複数の収容ボックスが降ろされ、それらがループ状コンベア34の搬送面上に載置される。ループ状コンベア34は、例えば、間欠的に回転動作する搬送装置である。それに代えて他の搬送装置が設けられてもよい。
【0036】
各収容ボックスは、医療機関から送られてきたものであり、その中には複数のラックが収容されている。個々のラックは例えば数十本の検体容器を保持する部材である。個々の検体容器内には、検査依頼対象としての検体が収容されている。それを管理するため個々の検体容器の外面には、バーコードラベルが貼付されている。それに代えてRF-ID等のチップが利用されてもよい。検体容器の代表例として、採血管があげられる。
【0037】
移送ロボット群36は、図示の構成例において、Y方向に並んだ複数の移送ロボット38により構成される。個々の移送ロボット38は、開梱状態にある収容ボックス内の複数のラックを順番に取り出して移送する機能を有する。各移送ロボット38により取り出された個々のラックが第1移載ステーション24に投入される。個々の移送ロボット38により収容ボックスの開梱が行われてもよい。
【0038】
図1に示す構成例において、第1サブシステム10及び第2サブシステム12に跨がって、Y方向に伸長する形態を有する搬送路40が設けられている。搬送路40におけるラック搬送方向は+Y方向である。搬送路40と平行に搬送路42が設けられている。搬送路42は、搬送路40と共に、第1サブシステム10内の第1移載ステーションをY方向へ横切っている。第2サブシステム12内の第1移載ステーションにも、搬送路42と同様の搬送路が設けられている。
【0039】
図示の構成例において、例えば、搬送路40上に、移送ロボット群36により移送された複数のラックが載置される。搬送路40を経由して、複数のラックが移載装置を構成する移載ユニット群44に分配される。必要に応じて、搬送路40を利用して、一部又は全部のラックが第1サブシステム10から第2サブシステム12へ送られる。なお、第1サブシステム10内及び第2サブシステム12内において、搬送路40,42に隣接して、それらと平行に、ラック分配専用の搬送路を設けるようにしてもよい。
【0040】
第1サブシステム10内に、複数の移送ロボット38により移送された複数のラックが一時的に置かれる複数のバッファエリアが設けられてもよい。あるいは、複数の移送ロボット38から複数の移載ユニット46へ複数のラックが直接的にわたされてもよい。複数の移送ロボット38に代えて、他の複数の移送機構が利用されてもよい。なお、検体処理システム内の個々の搬送路においては、コンベアベルト、ローラー列、送り爪等により個々のラックが搬送される。
【0041】
次に、第1移載ステーション24について説明する。第1移載ステーション24は、上流側の搬入セクション22と下流側の前処理セクション26の間に設けられている。第1移載ステーション24は、既に説明したように、移載装置を構成する移載ユニット群44を有する。移載ユニット群44は、Y方向に並んだ複数の移載ユニット46により構成され、複数の移載ユニット46は互いに独立して並列動作する。個々の移載ユニット46は、後に詳述するように、移載元ラックから移載先ラック列へ複数の検体容器を仕分け移載する機能を有する。すなわち、検体容器の移載に際して、当該検体容器内の検体に対して今後適用される処理の内容(具体的には前処理の内容及び検査の内容)に応じて、当該検体容器の移載先が選択される。
【0042】
複数の検体容器に対する仕分けは、見方を変えれば、複数の検体容器に対する再度のグルーピングである。これにより、後段の処理に適した同送検体グループが構成される。上記の移載先ラック列は、複数の仕分け類型(又は複数の仕分け項目)に対応した複数の移載先ラックにより構成される。検体容器の仕分け移載は、容器移載機構によって行われ、具体的には、マニピュレータを有する容器搬送装置によって行われる。なお、実施形態においては、複数の移載ユニット46が互いに同一の機能を有するが、一部の移載ユニット46の機能を他の一部の移載ユニット46が有する機能と異ならせてもよい。
【0043】
個々の移載ユニット46において、移載元ラックは、それが空になった段階で排出される。その空ラックは、例えば、図示されていない回収用搬送路へ送り出され、あるいは、搬送路40を介して、図示されていない回収ステーションへ送られる。その後、搬送路40から、複数の検体容器を保持した新しいラックが取り込まれ、そのラックが新たな移載元ラックとなる。個々の移載先ラックは、満載状態に至った場合又はタイムアウト条件が満たされた場合に、移載完了ラックとして、搬送路42へ送り出され、その後、第1基幹搬送ライン16へ送り出される。移載完了ラックの排出後、それに代わる空ラックが新たな移載先ラックとして補充される。各移載ユニット46の構成及び動作については後に図4図6を用いて詳述する。
【0044】
実施形態においては、個々の移載ユニット46での仕分け移載の過程において、各検体容器が撮像され、容器画像が取得される。容器画像は容器種別の判定(つまり処理類型の判定)で利用され、またエラー検体の識別で利用される。また、仕分け移載の過程において、各検体容器に貼付されたバーコードラベルの向きが揃えられ、それが光学的に読み取られる。なお、上述した搬送路40の一部分及び搬送路42は、それぞれ、第1移載ステーション24の構成要素として捉え得る。搬入セクション22及び第1移載ステーション24はそれら両者を合わせて受け付け部として観念される。各ラックにはバーコードラベルが貼付されており、搬送過程において、そのバーコードラベルが読み取られる。
【0045】
次に、前処理セクション26について説明する。前処理セクション26は、個々の検体の検査に先立って、個々の検体に対して前処理を適用するものである。図示の構成例において、前処理セクション26は、第1基幹搬送ライン16に対して並列に接続された複数の前処理装置48~54を有する。それらは櫛状に並列設置されており、それらの台数は例えば10台である。但し、本願明細書に記載する数値はいずれも例示である。
【0046】
複数の前処理装置48~54には、互いに異なる構成を有する多様な前処理装置が含まれ、また、同一構成を有する複数の前処理装置からなる前処理装置群が含まれる。例えば、図1に示す構成例において、前処理装置48と前処理装置50は同一の構成を有し、それらは独立して並列動作する。前処理装置52は、それ固有の構成を有し、前処理装置54もそれ固有の構成を有する。同一の構成を有する複数の前処理装置を並列設置することにより、負荷に応じて稼働させる前処理装置数を可変することが可能となる。また、ある前処理装置で故障が生じた場合に、それと同じ構成を有する他の前処理装置でバックアップすることが可能となる。
【0047】
個々の前処理装置48~54は、Y方向に並んだ複数のユニットにより構成され、それらの複数のユニットはY方向に伸長した装置内搬送路に接続されている。装置内搬送路はY方向にラックを搬送するものであり、往路の方向が-Y方向であり、復路の方向が+Y方向である。例えば、前処理装置52は、Y方向へ並ぶ複数のユニット56により構成され、それらは装置内搬送路58に接続されている。個々のユニットにより、特定の処理が実行される。特定の処理として、遠心分離処理、開栓処理、分注処理、性状解析処理、閉栓処理、等があげられる。例えば、同じ前処理を実行する複数のユニットが設けられ、それらを並列動作させてもよい。
【0048】
遠心分離処理では、検体容器としての採血管が遠心機にセットされ、遠心機により、採血管内の検体に対して遠心力が与えられる。その結果、採血管内において、分離剤を間において、その上側に血清層が生じ、その下側に血餅層が生じる。検体容器には栓が設けられている場合、それに対して分注処理に先だって、開栓処理が施される。すなわち、栓が取り除かれ、又は、検体容器内に分注ノズルを挿入可能なように栓が加工される。栓としてはゴム栓、シール栓等があげられる。
【0049】
分注処理では、分注ノズルにより検体容器から検体が吸引され、その検体が1又は複数の他の容器へ吐出される。先述したように、分注前の検体は親検体と呼ばれ、分注により生成された検体は子検体と呼ばれる。個々の子検体が検査の対象となる。但し、一部の検査は、前処理を経ない検体に対して適用される。分注処理においては、複数の子検体容器を保持した子検体ラックが作成される。その子検体ラックは、装置内搬送路から第1基幹搬送ライン16へ送られる。
【0050】
閉栓処理では、分注処理後の検体容器に対して栓が取り付けられる。これは残余の親検体を保管する過程での異物混入等を防止するためである。一連の処理を経た複数の親検体を保持した親検体ラックが装置内搬送路から第1基幹搬送ライン16へ送られる。
【0051】
第1基幹搬送ライン16と複数の前処理装置48~54との間には、複数の双方向移載ユニット60が設けられている。各双方向移載ユニット60は、送り移載を行う機能及び戻し移載を行う機能を有している。
【0052】
送り移載においては、第1基幹搬送ライン16により搬送されてきたラックが移載元ラックとなり、装置内搬送路へ送り出されるラックが移載先ラックとなる。双方向移載ユニット60により、移載元ラックから移載先ラックへ複数の検体容器が順次搬送される。戻し移載においては、装置内搬送路から送られてきたラックが移載元ラックとなり、第1基幹搬送ライン16へ送り出すラックが移載先ラックとなる。双方向移載ユニット60により、移載元ラックから移載先ラックへ複数の検体容器が順次搬送される。双方向移載ユニット60の構成及び動作については後に図7を用いて詳述する。
【0053】
実施形態においては、例えば、前処理セクション26と第2移載ステーション28との間に、作業者が通る通路が設けられている。その通路を跨ぐように、基幹搬送機構14の途中にブリッジが設けられる。ブリッジは、2つの垂直搬送機構とそれらを繋ぐ水平搬送機構により構成される。通路を通じた作業者の行き来を前提として、作業者の動線を短くする観点から、複数の前処理装置48~54の全長(Y方向の長さ)が-X方向に行くに従って徐々に短くなるように、複数の前処理装置48~54の配置順序が定められている。廃棄物の回収作業の負担を軽減するため、各前処理装置48~54の-Y方向端部(又はその付近)にディスポーザブルチップ等の廃棄物が自動的に集積されるように構成してもよい。
【0054】
次に、第2移載ステーション28について説明する。第2移載ステーション28は、上流側の前処理セクション26と下流側の検査セクション30の間に設けられている。具体的には、第2移載ステーション28は、U字形態を有する外搬送路62、同じくU字形態を有する内搬送路、及び、移載装置を構成する移載ユニット群、により構成される。外搬送路62及び内搬送路64は、図1において反時計回り方向に複数のラックを搬送するものである。
【0055】
具体的に説明すると、外搬送路62及び内搬送路64は、それぞれ、Y方向に伸長した形態を有する2つの直線部分、及び、それらの遠位端部(-Y方向端部)を繋ぐ連絡部分を有する。実施形態において、外搬送路62は、前処理により作成された子検体ラック及び前処理を経た特定の親検体ラックを搬送する搬送路であり、内搬送路64は、検査セクション30へ送られる子検体ラック及び親検体ラックを搬送する搬送路である。但し、両者の役割を逆転させてもよい。仕分け移載後に生じる空ラックは、例えば、外搬送路62により搬送される。空ラックが内搬送路64により搬送されてもよい。あるいは、空ラックが回収用の別の搬送路により搬送されてもよい。
【0056】
外搬送路62が有する2つの端部(+Y方向端部)の内で、少なくとも上流側の端部が第1基幹搬送ライン16に接続されている。それらの端部の両方が第1基幹搬送ライン16に接続されてもよい。内搬送路64が有する2つの端部(+Y方向端部)の内で、少なくとも下流側の端部が第1基幹搬送ライン16に接続されている。それらの端部の両方が第1基幹搬送ライン16に接続されてもよい。実施形態においては、第1基幹搬送ライン16から外搬送路62へ仕分け移載前の複数の検体ラックが送り込まれ、内搬送路64から第1基幹搬送ライン16へ仕分け移載後の複数の検体ラックが送り出される。
【0057】
移載ユニット群66は、前列68及び後列70に大別され、前列68及び後列70はそれぞれY方向に並ぶ複数の移載ユニット72により構成される。複数の移載ユニット72はそれぞれ同じ構成を有している。すなわち、各移載ユニット72は、移載元ラックから移載先ラック列へ複数の検体容器を仕分け移載するものである。その点において、第2移載ステーション28内の各移載ユニット72は、第1移載ステーション24内の各移載ユニット46と同じ機能を有している。
【0058】
もっとも、第2移載ステーション28においては、例えば180個の仕分け類型が数十台の移載ユニット72に割り当てられており、複数の移載ユニット72の相互間に着目した場合、それらの役割は同じではない。1つの仕分け類型が複数の移載ユニット72に割り当てられてもよく、また、ある移載ユニット72において1つの仕分け類型が複数の移載先ラックに割り当てられてもよい。移載ユニット72の構成及び動作については後に図8図10を用いて詳述する。
【0059】
なお、前処理後の各親検体ラックは、一部を除いて、第1基幹搬送ライン16により、第2移載ステーション28に取り込まれることなく、第3移載ステーションへ送られる。例えば、前処理セクション26がスキップされた親検体ラック(後述する図6中の類型6及び類型7に対応する親検体ラック)は、第2移載ステーション28もスキップされて、検査セクション30へ送られる。一方、前処理セクション26から排出された一部の親検体ラック(後述する図6中の類型5に対応する親検体ラック)は、第2移載ステーション28に取り込まれて移載対象となる。システムの目的や具体的事情に応じて、各移載ステーションでの移載対象が適宜定められる。後に図2を用いてラック相互の関係及びラック搬送についての基本事項を整理する。
【0060】
次に、検査セクション30について説明する。検査セクション30は、複数の機器集合体としての複数のサブセクション78~84を有する。それらは第1基幹搬送ライン16に対して並列に接続されており、その意味において、それらは櫛状の配列を有する。複数のサブセクション78~84の個数は例えば7個又は8個である。作業の容易化や作業者の動線を短くする観点から、及び、スペースの有効活用の観点から、複数のサブセクション78~84の配列や配置順序が定められる。
【0061】
複数のサブセクション78~84は、それぞれ、複数の検査装置及びサブセクション内搬送路を有する。例えば、サブセクション78は、Y方向に並ぶ複数の検査装置86を有し、個々の検査装置86はX方向に連結された複数のユニット90により構成される。図示された構成例において、サブセクション78には、検体の本検査に先立って検体を事前に予備検査する複数の検査装置92も含まれる。複数の検査装置86,92は、サブセクション内搬送路88に接続されている。サブセクション内搬送路88は、双方向移載ユニット94を介して、第1基幹搬送ライン16に接続されている。
【0062】
サブセクション80は、図示の構成例において、Y方向に整列した複数の検査装置98と、それらが接続されたサブセクション内搬送路96と、により構成される。サブセクション内搬送路96は、双方向移載ユニット100を介して、第1基幹搬送ライン16に接続されている。サブセクション82は、基本的に、サブセクション80と同じような構成を有する。サブセクション84は、複数の検査装置102及びサブセクション内搬送路104を有する。各検査装置102は複数のユニット106により構成される。サブセクション82,84においても、サブセクション内搬送路が、双方向移載ユニットを介して、第1基幹搬送ラインに接続されている。
【0063】
血液の検査としては、例えば、血球算定検査、血糖検査、生化学検査、免疫検査等があげられる。尿の検査としては、糖検査、たんぱく検査、pH検査、潜血検査等があげられる。便の検査としては、潜血検査、ウイルス検査、細菌検査等があげられる。例示した検査には自動的に実行される検査と手作業で行う検査とが含まれる。
【0064】
実施形態においては、第2移載ステーション28での仕分け移載により、多数の検査類型(又は検査項目)を構成する個々の検査類型ごとに、ラック単位で、複数の検体容器がグルーピングされる。また、第1移載ステーション24での仕分け移載により、幾つかの検査類型を構成する個々の検査類型ごとに、ラック単位で、複数の検体容器がグルーピングされる。それらによって構成された各ラックは、検査セクション30において、サブセクション78~84の中の特定のサブセクションへ送られる。その後、それらのラックが更に他のサブセクションに送られることはない。もっとも、複数のサブセクションを段階的に経由させながらラックが搬送されてもよい。
【0065】
次に、第3移載ステーション32について説明する。第3移載ステーション32は、上流側の検査セクション30と下流側の後処理セクション20との間に設けられている。第3移載ステーション32は、基本的に、第2移載ステーションと同様の構成を備えている。具体的には、第3移載ステーション32は、外搬送路108、内搬送路110、及び、移載ユニット群112を有する。移載ユニット群112は、前列114と後列116とに大別され、前列114及び後列116はそれぞれ複数の移載ユニット118により構成される。図示の構成例では、第3移載ステーション32における移載ユニット118の台数は、第2移載ステーション28における移載ユニット72の台数よりも少ない。
【0066】
各移載ユニット118は、個々の検体に対する後処理類型に応じて、移載元ラックから移載先ラック列へ複数の検体を仕分け移載するものである。移載元ラックは、前処理過程を経たラックであり、又は、前処理過程を経ないで検査過程へ送られその検査過程を経たラックである。実施形態においては、検査セクション30においてエラーが判定された子検体容器も第3移載ステーション32での移載対象となっており、そのような子検体容器を保持したラックも移載元ラックになり得る。各移載ユニット118では、検体ごとの後処理類型に応じて、各検体容器が仕分け移載される。後処理類型は、例えば、保管方式(冷蔵保管又は冷凍保管)、返送対象か否か、エラーの有無、等に応じて定められる。第3移載ステーション32での仕分け移載の条件については、後に図11を用いて詳述する。
【0067】
後処理セクション20は、検体容器の保管を自動的に行う保管庫21を備える。保管庫21には、冷蔵保管庫及び冷凍保管庫が含まれる。返却対象となった検体は、別途回収され、依頼元の医療機関に返却される。エラー検体も別途回収される。
【0068】
第1移載ステーション24、第2移載ステーション28、及び、第3移載ステーションに対しては、複数の空ラックが供給される。実施形態においては、第1基幹搬送ライン16及び第2基幹搬送ライン18がそれぞれ地下搬送路を有しており、それらの地下搬送路を利用して、複数の空ラックが-X方向へ搬送され、それらが各移載ステーション24,28,32へ供給される。例えば、第1移載ステーション24における搬送路42の直下には、空ラック搬送用の地下搬送路が設けられている。第2移載ステーション28及び第3移載ステーション32における内搬送路64,110の直下にも、空ラック搬送用の地下搬送路が設けられている。第1基幹搬送ライン16及び第2基幹搬送ライン18の下流側には、それらが有する地下搬送路へ複数の空ラックを供給するステーションが設けられているが、その図示は省略されている。
【0069】
図1に示した構成において、複数のラックのバッファリング又は一時保管が必要となる場所に、ラック待機エリアが設けられる。例えば、検査セクション30と第3移載ステーション32の間に、一時保管ステーションが設けられてもよい。
【0070】
分岐搬送路74は、第1サブシステム10内の第2移載ステーション28、及び/又は、第2サブシステム12内の第2移載ステーションから排出された複数のラックの内で、検査セクション30以外の他の検査セクションへ搬送すべき複数のラックを搬送するための搬送路である。他の検査セクションは例えば別フロアに設けられる。その場合、複数のラックが昇降機構によって垂直方向に搬送される。第1基幹搬送ライン16と第2基幹搬送ライン18との間に、1又は複数の連絡ライン76を設け、それらの基幹搬送ライン16,18間で、ラックを自由に行き来できるように構成してもよい。
【0071】
図2には、複数の検体ラックの関係が模式的に示されている。検体ラック400は、医療機関から運ばれてきたラックである。第1移載402により、検体ラック400に保持された複数の検体容器が仕分けられる。これにより生じた複数の検体ラックの内の1つが検体ラック404として図示されている。検体ラック404には、そのまま検査セクションへ送られるものと(符号412を参照)、前処理408の対象になるものとがある。第1移載402で生じた空ラックは回収される(符号406を参照)。
【0072】
前処理408により、検体ラック404に保持された複数の親検体から複数の子検体が生成され、それらを保持した子検体ラック418が生成される。続く第2移載416により、子検体ラック410に保持された複数の検体容器が仕分けられる。これにより生じた複数の子検体ラックの内の1つが子検体ラック418である。子検体ラック418は検査セクションへ送られる。符号420は第2移載で生じた空ラックを示している。
【0073】
前処理後の検体ラック(親検体ラック)は、一部を除いて、第3移載ステーションへ直接的に送られる(符号414を参照)。前処理408を経ずに検査セクションでの検査422を経た検体ラックも、第3移載ステーションへ送られる。それらのラックが検体ラック404Aとして示されている。前処理後の一部の親検体ラックが第2移載ステーションへ送られているが、その図示は省略されている。検査422で生じた空ラックは回収される。検査422後の一部の子検体ラックが第3移載ステーションへ送られているが、その図示は省略されている。第3移載426により、検体ラック404Aに保持された複数の検体容器が仕分けられる。これにより生じた複数の検体ラックが生じる。その内の1つが検体ラック428として図示されている。第3移載426で生じた空ラックは回収される(符号430を参照)。検体ラック428に対しては後処理が適用される。図2に示した検体ラック404,410,418,404A,428におけるラックそれ自体を同一のものとしてもよい。もちろん、それらを互いに異ならせてもよい。親検体容器と子検体容器を同一の容器で構成してもよいし、異なる容器で構成してもよい。
【0074】
実施形態によれば、個々のセクション間での仕分け移載により、同送検体グループの構成を次の処理に適合させることができるので、次の処理での処理効率を高められ、また搬送効率を高められる。特に、実施形態の構成によれば、様々な検査要求しかも大量の検査要求に対して、柔軟に対処することが可能となる。
【0075】
図3には、実施形態に係る検体処理システムの構成がブロック図として示されている。図示された構成は単なる例示であり、様々な構成を採用し得る。
【0076】
ラック搬送の上流側から下流側にかけて、搬入セクション22、前処理セクション26、検査セクション30、等が設けられている。検査セクション30の後段には後処理セクションが設けられている。複数のセクション間に複数の移載ステーションが設けられており、具体的には、第1移載ステーション24、第2移載ステーション28及び第3移載ステーション32が設けられている。複数のセクション22,26,30及び複数の移載ステーション24,28,32は、基幹搬送機構14に接続されている。
【0077】
医療機関から上位システム120へ検査依頼情報121が送られる。検査依頼情報121の全部、又は、その内でシステム制御に必要な部分が、システム制御部122にわたされる。
【0078】
システム制御部122は、複数のセクション制御部124,128,132を介して複数のセクション22,26,30を制御し、また、複数のステーション制御部126,130,134を介して複数の移載ステーション24,28,32を制御する。更に、システム制御部122は、搬送制御部136を介して、基幹搬送機構14を制御する。実際には、システム制御部122は、データベースを有しており、各制御部124~136によりデータベースが参照される。これにより各制御において必要な情報が取得される。例えば、データベース上において、検体識別子としての検体IDごとに、依頼機関情報、患者情報、検査内容を特定する情報(処理コード、検査コード等)、等が管理される。データベース内の情報に基づいて、後述する制御用の各管理テーブルが動的に構成されてもよい。なお、第2サブシステム12は、第1サブシステム10と同様の構成を有する。
【0079】
次に、図4図6を用いて、第1移載セクションでの仕分け移載について具体的に説明する。なお、既に説明した要素には同一符号を付し、その説明を省略する。このことは図5以降の各図についても同様である。
【0080】
図4には、搬送路40、搬送路42、移載ユニット群44等が模式的に示されている。図示の構成例では、移送ロボットにより移送されたラックが搬送路40により搬送され、また、仕分け移載後の空ラックが搬送路40により搬送される。搬送路42により移載完了ラックが搬送される。
【0081】
各移載ユニット46においては、搬送路40からラックが引き込まれ、それが移載元ラック138となる。移載元ラック138は所定のポジションに位置決められる。各移載ユニット46には、複数の移載先ポジションP1~P8が定められており、それらに移載先ラック列142が位置決められる。移載先ラック列142は、複数の移載先ラック144により構成される。その個数は例えば8個である。マニピュレータ145により、移載元ラック138から検体容器が取り出され、その検体容器が移載先ラック列142へ搬送される。マニピュレータ145は、検体容器を掴む掴み機構及び掴み機構を三次元搬送する機構を有する。掴み機構は、複数のフィンガ及び複数のフィンガを開閉駆動する機構を有する。
【0082】
その搬送経路の途中には、カメラ150及びバーコードリーダー148が設けられている。バーコードリーダー148は、図示の構成例において、検体容器を収容する孔及びそこに収容された検体容器を回転させる機構を有する。検体容器に貼付されたバーコードラベルが所定の向きとなるように、検体容器の向きが調整される。それと共に、バーコードラベルに対する光ビームスキャンにより、バーコードが読み取られる。その読み取り情報には検体IDが含まれる。バーコードが画像として読み取られてもよい。
【0083】
バーコードラベルの読み取りの前又は後に、カメラ150によって、検体容器が撮影され、これにより容器画像が取得される。容器画像の解析により、検体容器の種別が特定される。画像の解析により、検体の性状が解析されてもよいし、内容量の少ない検体容器等のエラー検体容器が識別されてもよい。破線146は、移載元ラックからバーコードリーダー148までの搬送経路を示している。破線152は、バーコードリーダー148から移載先ラックまでの搬送経路を示している。
【0084】
個々の検体容器から取得された検体IDに基づいて処理コードが特定される。その処理コードに基づいて、検体を処理する類型が特定される。あるいは、容器画像の解析により特定された検体容器の種別から検体を処理する類型が特定される。その類型は仕分け情報となるものである。仕分け移載に際しては、個々の検体容器ごとの仕分け情報に基づいて、その検体容器を移載する先が選択される。図示の構成例では、8個の移載先ラック144の中から、特定の1つの移載先ラックが選択され、そこに検体容器が差し込まれる。このような過程が個々の検体容器ごとに実行される。
【0085】
いずれかの移載先ラックにおいて、満載状態が生じた場合、あるいは、タイムアウト条件が満たされた場合、その移載先ラックが移載完了ラックとして、搬送路42へ送り込まれる(符号154を参照)。移載元ラック138が空になった場合、その空ラックは例えば搬送路40へ送り込まれる。その後、搬送路40から複数の検体容器を保持したラックが移載ユニット46に取り込まれ、それが新しい移載元ラック138となる。
【0086】
搬送路40の直下には地下搬送路が設けられており、それを利用して各移載ユニット46へ複数の空ラックが供給される。各移載ユニット46にも地下搬送路156が形成されており、その奥側端にはエレベータ158が設けられている。地下搬送路156及びエレベータ158によって空ラックが供給され、それが空き移載先ポジションへ送り込まれる(符号160を参照)。
【0087】
各ラックは上方から見て長方形の形態を有し、各ラックは長手方向及び短手方向を有する。搬送路40及び搬送路42においては、長手方向を搬送方向に平行にしつつ各ラックが搬送される。搬送路42と第1基幹搬送ラインの間には、ターンユニット162が設けられている。ターンユニット162は、そこに到着したラックを90度回転させる機構である。回転後のラックが第1基幹搬送ラインへ送り込まれる(符号164を参照)。
【0088】
第1基幹搬送ラインにおいては、そこでの搬送方向に対して長手方向が平行になるように、各ラックが搬送される。第1基幹搬送ラインは複数の搬送路を有している。それについては後に図7を用いて説明する。図示の構成例において、搬送路40に送り込まれた空ラックは回収ステーションへ送られる(符号166を参照)。
【0089】
各移載ユニット46において、同時に複数の移載元ラックが取り込まれてもよい。すなわち、移載元ラック列と移載先ラック列142との間で、検体容器ごとに仕分け移載が行われてもよい。また、相互の干渉を防止できる限りにおいて、複数のマニピュレータを並列動作させてもよい。
【0090】
図5には、移載ユニットの制御に関わる構成が示されている。例えば、移載ユニットごとにユニット管理部168が設けられる。図3に示したステーション制御部126は、複数の移載ユニットの動作を制御する複数のユニット管理部168により構成される。
【0091】
図5に示された構成例において、ユニット管理部168は、画像解析部170及び移載先選択部172を有している。画像解析部170は、容器画像を解析し、検体容器の種別を特定する。また、エラー検体であるか否かを判断する。検体の性状に問題のある場合、検体量が少ない場合、等においてはエラーが判定される。エラーの判定がなされた検体がエラー検体である。画像解析部170から移載先選択部172にわたされる情報には、検体容器の種別を特定する情報、エラー検体であるか否かを特定する情報、等が含まれる。エラーが判定された場合、それを示す情報178がエラー処理部へ送られる。
【0092】
移載先選択部172は、検体容器の種別に基づいて検体に対して今後適用される処理の類型を特定し、複数の移載先の中から、特定された処理の類型に対応する移載先を選択する。移載先選択部172において、システム制御部から検体IDに対応する処理コードの情報180を得て、複数の移動先の中から、その処理コードにより特定される移載先を選択してもよい。検体容器の種別及び処理コードの両方に基づいて、移載先が選択されてもよい。移載先選択部184から容器搬送機構188へ移載先を示す情報が送られる。容器搬送機構188は上記のマニピュレータを含む機構である。なお、容器搬送機構188によりラック搬送が制御されてもよいし、ユニット管理部168内の他の制御部によりラック搬送が制御されてもよい。移載管理テーブル182には、移載先を選択する際に、移載先選択部172により参照される情報が格納されている。
【0093】
図6には、仕分け移載条件が例示されている。類型1~8が移載先ラックの番号#1~#8に対応している。処理コード192により、前処理の有無及びその内容を特定でき、また、検査の内容を特定できる場合、処理コード192に基づいて移載先ラック194が選択され得る。その場合、処理コード192と移載先ラック194を対応付けたテーブルを上記移載管理テーブルとして用意すればよい。その場合でも、エラー検体を移載先ラック#8へ移載するために、エラーの有無を示す情報196,206が利用される。
【0094】
一方、処理コードに依らずに、前処理セクションでの前処理の内容及び検査セクションでの処理の内容を特定できる場合、それらの内容を示す情報198,200に基づいて、移載先ラック194を選択し得る。例えば、上記のように、容器種別から処理類型を特定できる場合には、容器種別から移載先ラック194を選択し得る。
【0095】
具体的には、遠心分離処理の要否、及び、分注方式に応じて、また、検査セクションでの検査類型に応じて、移載先ラック194として#1~#7のいずれかが選択される。分注方式として、1:1分注方式、及び、1:N分注方式がある。前者の分注方式は1つの親検体から1つの子検体を作成する方式であり、後者の分注方式は1つの親検体から任意数Nの子検体を作成する方式である。Nは2以上の整数である。検査類型としては、ここでは、血球算定検査及び血糖検査が例示されている。それらの検査に際しては、検体容器が前処理セクションを経由せず、直接的に検査セクションへ送られる。よって、最初の仕分け移載の段階で、それらの検査に向けられた検体容器が仕分けられる。
【0096】
図示された以外の条件に従って、各検体容器が仕分けられてもよい。容器種別、又は、処理内容(前処理内容及び検査内容)から検体容器の仕分けを行う場合、例えば、移載管理テーブルとして、符号190で示した情報に符号194で示した情報を対応付けることにより構成されるテーブルが利用される。
【0097】
図7には、双方向移載ユニット60の構成例が示されている。第1基幹搬送ライン16は、第1基幹搬送路208及び第2基幹搬送路210により構成される。第1基幹搬送路208は、いずれかの前処理装置へ向けられた複数のラックを搬送する搬送路である。第2基幹搬送路210は、前処理が完了したラック、及び、直接的に検査セクションへ送られるラックを搬送する追い越し搬送路である。もっとも、2つの基幹搬送路208,210の役割は、事情に応じて、適宜定め得る。
【0098】
図示された構成例では、第1基幹搬送路208と平行に、バッファ搬送路212及びフロント搬送路214が設けられている。符号216,218,220はそれぞれ横送り機構を示している。第1基幹搬送路208から横送り機構216を経由してバッファ搬送路212へラックが送られる。バッファ搬送路212は複数のラックを待機させ得るバッファとして機能するものである。バッファ搬送路212からフロント搬送路214へ横送り機構218を介してラックが送られる。フロント搬送路214において複数のラックが保持される。その中には、移載元ラック224及び移載先ラック232が含まれる。それらのラック224,232はいずれも子検体ラックである。横送り機構216,218,220は、それぞれ、当初の進行方向対して垂直方向にラックを搬送するトラバーサ(搬送路上のラックを別の搬送路に移す装置)等により構成される。
【0099】
一方、前処理装置側に設けられた搬送台222には、受け取りポジションP10及び送り出しポジションP12が定められている。受け取りポジションP10には移載先ラック226が位置決められており、送り出しポジションには移載元ラック230が位置決められている。第1基幹搬送ライン16により搬送されるラックは、例えば、5×10本の検体容器を収容したラックである。搬送台222及び前処理装置により搬送されるラックは、例えば、1×10本の検体容器を収容したラックである。
【0100】
第1基幹搬送ライン16においては大量の検体容器を搬送する必要があるために大型のラックが用いられている。一方、個々の前処理装置においては大形ラックの取り回しが困難であるために、小型又は細身のラックが用いられている。検査セクション内においても同様である。もっとも、そこで使用するラックを前処理セクションで使用するラックに一致させる必要はない。個々の前処理装置及び個々の検査装置において専用ラックが利用されてもよい。
【0101】
実施形態においては、双方向移載ユニット60が2台のマニピュレータを有している。
それらによって双方向の移載が同時進行で実施される。第1のマニピュレータは、符号228で示すように、移載元ラック224から移載先ラック226へ複数の検体容器を送り移載するものである。第2のマニピュレータは、符号234で示すように、移載元ラック230から移載先ラック232へ複数の検体容器を戻し移載するものである。送り移載の完了により生じた空ラックが次の移載先ラック232として利用される。移載先ラック232が満載状態となった場合又はタイムアウト条件が満たされた場合、符号236で示されているように、移載先ラック232が、移載完了ラックとして、第2基幹搬送路210へ送られる。
【0102】
以上のように、双方向移載ユニット60によれば、ラックを交換することができるので、基幹搬送ラインについて求められる搬送条件、及び、前処理装置において求められる搬送条件の両方を満たすことが可能となる。
【0103】
なお、符号228で示した送り移載後の復路において戻し移載を行うようにしてもよい。同様に、符号234で示した送り移載後の復路において送り移載を行うようにしてもよい。その場合には、フロント搬送路214上に、2つの移載元ラック及び2つの移載先ラックを設けるようにしてもよい。そのような構成によれば、単位時間当たりの移載本数を引き上げられる。
【0104】
次に、図8図10を用いて第2移載ステーションについて詳述する。図8には、外搬送路62、内搬送路64、移載ユニット群66等が示されている。図示された構成例においては、第1基幹搬送ラインから外搬送路62へ、前処理セクションから来た特定の複数のラックが引き込まれる。それらのラックが外搬送路62により移載ユニット群66へ分配搬送される。内搬送路64により、第2移載ステーションでの仕分け移載が完了した複数の移載完了ラックが搬送される。なお、第1基幹搬送ラインと外搬送路62の接続箇所にはターンユニットが設けられている。この他、第1基幹搬送ライン上には、必要に応じて、1又は複数のターンユニットが設けられる。
【0105】
各移載ユニット72は、一部の構成を除いて、図4に示した各移載ユニット46が有する構成と同じ構成を有している。図8において、符号140Aで示されているように、外搬送路62から取り込まれたラックが所定のポジションに位置決められる。そのラックが移載元ラック138Aとなる。一方、移載ユニット72には、複数の移載先ポジションP1~P8が定められており、それらに移載先ラック列142Aが位置決められる。図示されていないマニピュレータにより、移載元ラック138Aから、選択された移載先ラックへ、検体容器が搬送される(符号152Aを参照)。その際、バーコードリーダー148Aにより、検体容器に貼付されたバーコードラベルが読み取られる。これにより検体IDが特定される。検体IDに基づいて、その検体容器内の検体に対して今後適用される処理の内容、具体的には検査の内容が特定される。検査の内容に従って、具体的には検査の内容を示す検査コードに従って、検体容器の仕分け先が選択される。そのような制御を行うに当たっては、例えば、システム制御部内のデータベースが参照され、あるいは、後述する移載管理テーブルが参照される。図示の例では、1つの移載ユニット72当たり、8個の仕分け先(移載先)がある。
【0106】
既に説明したように、移載ユニット群66の全体に対して、例えば180個の仕分け先が割り当てられる。なお、第2の仕分け移載において、複数の移載ユニット72へ同じラックを搬送しなくてもよいように、第1の仕分け移載の条件が定められている。
【0107】
符号154Aで示されるように、満載となった移載先ラック又はタイムアウト条件を満たした移載先ラックが移載完了ラックとして内搬送路64へ送り出される。移載元ラック138Aが空になった場合、空ラックが外搬送路62に送り込まれ(符号141Aを参照)、又は、空ラックが内搬送路64に送り込まれ(符号141Bを参照)、又は、空ラックが専用の回収路へ送り込まれる(符号141Cを参照)。
【0108】
内搬送路64と第1基幹搬送ラインとの間には、ターンユニット162Aが設けられている。ターンユニット162Aはラックの向きを90度変える機構である。向きが変えられたラックが第1基幹搬送ラインによって搬送され(164Aを参照)、検査セクションへ送られる。
【0109】
図9には、第2移載ステーションの動作を制御するステーション制御部238が示されている。ステーション制御部238は、図3に示したステーション制御部130に相当するものである。
【0110】
図9に示されたステーション制御部238は、図示された構成例において、仕分け移載制御部240及び移載管理テーブル242を有している。例えば、システム制御部122から検査コードを示す情報が仕分け移載制御部240へ与えられる。仕分け移載制御部240は、移載管理テーブルを参照することにより、検査コードに対応する移載ユニットを判定し、及び、その検査コードに対応する移載先ラックを選択する。判定された移載ユニットを特定する情報及び選択された移載先ラックを特定する情報が移載ユニット群244へ送られる。個々の移載ユニットごとに、仕分け移載制御部を設けるようにしてもよい。
【0111】
図10には、移載管理テーブルの構成例が示されている。検査コード246ごとに、担当移載ユニットを特定する情報248及び移載先ラックを特定する情報250が管理されている。ここで、担当移載ユニットは、検査コード246で特定される検査が適用される検体容器に対して仕分け移載を担当する移載ユニットである。例えば、検査コードとして180種類が存在する。その内で一部252に対応する検査が検査セクションにおいて実施される。残りの一部254に対応する検査は他の検査セクションにおいて実施される。
【0112】
第3移載ステーションは、第2移載ステーションが有する構成と同一の構成を有する。もっとも、既に説明したように、第3移載ステーションが有する移載ユニットの台数は、第2移載ステーションが有する移載ユニットの台数よりも少ない。第3移載ステーションにおいては、後処理の内容に応じて、複数の検体容器が仕分け移載される。仕分け数は例えば6である。もっとも、第3移載ステーションにおける仕分け数は状況に応じて定めればよい。
【0113】
図11には、第3の移載ステーションにおける個々の移載ユニットでの仕分け移載条件が例示されている。類型1~類型8が移載先ラック#1~#8に対応している。仕分け移載に際しては、後処理コード256が参照され、それが示す後処理の類型に対応する移載先ラックが選択される。例えば、保管方式262及び他の処理の有無に基づいて、後処理類型が規定される。保管方式262としては冷蔵及び冷凍がある。他の処理としては、保管前の処理、保管後の処理等があげられる。また、返却の要求が出ている検体容器及びエラーが生じた検体容器については、それぞれ、その検体容器を収容する移載先ラックが割り当てられている。
【0114】
上記仕分け移載条件によると、例えば、移載先ラック#1,#2が保管庫における冷蔵庫に搬送される。移載先ラック#3,#4は保管庫における冷凍庫に搬送される。移載先ラック#5は返送ステーションへ搬送される。移載先ラック#6はエラー処理部へ送られる。
【0115】
以上のような仕分け移載条件によれば、後処理の内容に応じて、前処理後の又は検査後の複数の検体容器をグルーピングして、後処理効率を高めることが可能となる。図11に示した仕分け移載条件は例示であり、それ以外の仕分け移載条件を採用してもよい。
【0116】
図12には、検体処理システムの動作例が示されている。S10では、第1サブシステム及び第2サブシステムでエラーが発生したか否かが判断される。エラーが発生した場合、S18においてエラーが発生していない正常サブシステムのみを稼働させる制御が実行される。S10でエラーが発生していないと判断された場合、S12において、負荷が所定値よりも大きいか否かが判断される。負荷が所定値よりも大きい場合、S14において、全部のサブシステムを稼働させる制御が実行される。S12において、負荷が所定値よりも小さい場合、S16において、一部のサブシステム、具体的には、いずれか一方のサブシステムのみを稼働させる制御が実行される。S20において終了が判断されるまで、S10以降の各工程が繰り返し実行される。
【0117】
実施形態に係る検体処理システムによれば、対称関係を有し互いに独立して稼働する第1サブシステム及び第2サブシステムが設けられているので、システム全体が停止してしまうリスクを軽減できる。また、負荷状況に応じて稼働部分を適応的に変更できる。
【0118】
図13には、第1移載ステーションに設けられる移載ユニット46の変形例が示されている。搬送路278及び搬送路280においては、ラック短手方向を搬送方向に平行にしつつ各ラックが搬送される。搬送路278から取り込まれたラックが移載元ラック282となる。移載元ラック282から移載先ラック列283へ各検体容器が仕分け移載される。移載元ラック282の短手方向は搬送路278,280の搬送方向と平行である。移載先ラック列283は、二次元配列された8個の移載先ラックからなる。それらの短手方向も搬送路278,280の搬送方向と平行である。
【0119】
移載完了ラックが搬送路280へ送り出される。その後、移載完了ラックは、その短手方向を搬送方向と平行にしつつ搬送され、符号286に示されているように、搬送路280から第1基幹搬送ラインへ送り出される。この変形例によると、搬送路280と第1基幹搬送ラインとの間にターンユニットを設ける必要がなくなる。なお、図4に示した搬送態様は縦方向搬送又は長手方向搬送と呼ばれるものであり、図13に示した搬送態様は横方向搬送又は短手方向搬送と呼ばれるものである。
【0120】
図14には、第2移載ステーション28の変形例が示されている。移載ユニット群66は前列68及び後列70に大別され、それらはそれぞれ複数の移載ユニット72により構成される。第2移載ステーション28はU字状の形態を有する外搬送路62及び同じくU字状の形態を有する内搬送路64を有する。外搬送路62は、直線路266、円弧路268及び直線路270により構成される。同様に、内搬送路64は、直線路272、円弧路274及び直線路276により構成される。円弧路268,274においては、ラックが円弧状に搬送される。
【0121】
この変形例によれば、外搬送路62及び内搬送路64でのラック搬送において、横送り機構を設ける必要がないので構成を簡易化でき、特に、搬送過程においてラックの向きを自然に維持できる。これにより、前列68を構成する複数の移載ユニット72の構成と、後列70を構成する複数の移載ユニット72の構成とを同一にできるという利点が得られる。
【0122】
上記実施形態においては、大規模検体処理システムが構成されていたが、移載ステーション又は移載装置が小規模検体処理システムに設けられてもよい。検体前処理システムや検査システムにおける機器間に移載ステーション又は移載装置が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0123】
10 第1サブシステム、12 第2サブシステム、14 基幹搬送装置、16 第1基幹搬送ライン、18 第2基幹搬送ライン、20 後処理セクション、21 保管庫、22 搬入セクション、24 第1移載ステーション、26 前処理セクション、28 第2移載ステーション、30 検査セクション、32 第3移載ステーション。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14