(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】車両用アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20221214BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B60R11/02 A
H01Q1/22 A
(21)【出願番号】P 2019032370
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 暁
(72)【発明者】
【氏名】藤川 雄基
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-188048(JP,A)
【文献】特開2017-11324(JP,A)
【文献】特開2004-356891(JP,A)
【文献】特開2005-167666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/00 - 11/06
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材に結合されるケース部材と、
前記ベース部材および前記ケース部材に跨がるように形成されたアンテナ部材挿入孔と、
前記アンテナ部材挿入孔に挿入されるアンテナ部材と、
前記アンテナ部材挿入孔に連通するように前記ケース部材に形成されたガーニッシュ取付孔と、
前記ガーニッシュ取付孔に嵌合するガーニッシュと、を備え、
前記アンテナ部材には前記ケース部材に形成された第1係合溝に係合する第1係合突起が形成されてなり、前記ガーニッシュには前記第1係合突起に当接して前記アンテナ部材を抜け止めする係止突起が形成されてなることを特徴とする車両用アンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナ部材の挿入方向と、前記ガーニッシュの嵌合方向とは相互に直交することを特徴とする、請求項1に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナ部材には前記ベース部材に形成された第2係合溝に係合する第2係合突起が形成されてなることを特徴とする、請求項1に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項4】
前記第1係合溝および前記第1係合突起はT字状断面を有することを特徴とする、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項5】
前記ガーニッシュは、車両取付状態において、乗員より見た前記ケース部材の端に位置し、車室内意匠面より突出していることを特徴とする、請求項1に記載の車両用アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のミラーハウジング内のフレームにアンテナを固定するために、フレームにアンテナの長さ方向両端側への移動を規制する長さ規制部と、アンテナの幅方向両端側への移動を規制する幅規制部とを設け、長さ規制部および幅規制部間に嵌合して位置決めされたアンテナを、フレームに着脱自在に取り付けられる断面略C字状のフック部材で押さえて固定するものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記従来のものは、フレームにアンテナを固定するための専用のフック部材を必要とするため、フック部材の分だけ部品点数が増加してコストアップの要因となる問題があった。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ベース部材およびケース部材にアンテナ部材を簡単かつ確実に取り付けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、ベース部材と、前記ベース部材に結合されるケース部材と、前記ベース部材および前記ケース部材に跨がるように形成されたアンテナ部材挿入孔と、前記アンテナ部材挿入孔に挿入されるアンテナ部材と、前記アンテナ部材挿入孔に連通するように前記ケース部材に形成されたガーニッシュ取付孔と、前記ガーニッシュ取付孔に嵌合するガーニッシュと、を備え、前記アンテナ部材には前記ケース部材に形成された第1係合溝に係合する第1係合突起が形成されてなり、前記ガーニッシュには前記第1係合突起に当接して前記アンテナ部材を抜け止めする係止突起が形成されてなることを特徴とする車両用アンテナ装置が提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記アンテナ部材の挿入方向と、前記ガーニッシュの嵌合方向とは相互に直交することを特徴とする車両用アンテナ装置が提案される。
【0008】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記アンテナ部材には前記ベース部材に形成された第2係合溝に係合する第2係合突起が形成されてなることを特徴とする車両用アンテナ装置が提案される。
【0009】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1~請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記第1係合溝および前記第1係合突起はT字状断面を有することを特徴とする車両用アンテナ装置が提案される。
【0010】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記ガーニッシュは、車両取付状態において、乗員より見た前記ケース部材の端に位置し、車室内意匠面より突出していることを特徴とする車両用アンテナ装置が提案される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の構成によれば、車両用アンテナ装置は、ベース部材と、ベース部材に結合されるケース部材と、ベース部材およびケース部材に跨がるように形成されたアンテナ部材挿入孔と、アンテナ部材挿入孔に挿入されるアンテナ部材と、アンテナ部材挿入孔に連通するようにケース部材に形成されたガーニッシュ取付孔と、ガーニッシュ取付孔に嵌合するガーニッシュとを備える。
【0012】
アンテナ部材にはケース部材に形成された第1係合溝に係合する第1係合突起が形成されており、ガーニッシュには第1係合突起に当接してアンテナ部材を抜け止めする係止突起が形成されるので、装飾部材であるガーニッシュを利用してアンテナ部材を簡単かつ確実に抜け止めすることが可能となり、しかも特別の抜け止め部材が不要になって部品点数が削減される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】スイッチモジュールの斜視図である。(第1の実施の形態)
【
図2】
図1の2方向矢視図(スイッチモジュールの正面図)である。(第1の実施の形態)
【
図3】
図2の3方向矢視図(スイッチモジュールの下面図)である。(第1の実施の形態)
【
図4】
図2の4-4線拡大断面図である。(第1の実施の形態)
【
図5】
図4の5-5線拡大断面図である。(第1の実施の形態)
【
図6】アンテナ部材の斜視図である。(第1の実施の形態)
【
図7】ガーニッシュの正面図および背面図である。(第1の実施の形態)
【
図8】
図2の3方向矢視図(スイッチモジュールの下面図)である。(第2の実施の形態)
【発明を実施するための形態】
【第1の実施の形態】
【0014】
以下、
図1~
図7に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0015】
図1~
図3に示すように、自動車のダッシュボード11(
図3に太い二点鎖線で図示)に取り付けられるスイッチモジュール12の外郭は、ベース部材13(
図3に太い破線で図示)とケース部材14とを有する。ケース部材14は、ベース部材13に被せるように嵌合する。なお、以下の説明において、スイッチモジュール12を車体に取り付けた際の車室内に臨む側を正面側とし、その反対側を背面側とし、乗員から見た上下左右をそれぞれスイッチモジュール12の上下左右方向とする。
【0016】
ケース部材14はダッシュボード11の開口部11aに嵌合するように位置決めされ、ケース部材14の外周に突設された6個の取付ブラケット14aがダッシュボード11に締結される。
【0017】
ケース部材14の正面には、1個のダイヤル15と3個のプッシュスイッチ16~18とが配置されており、そのうち1個のプッシュスイッチ18の右側に装飾用のガーニッシュ20が取り付けられる。ガーニッシュ20は、ケース部材14の正面に開口するガーニッシュ取付孔14bに嵌合し、図示せぬ係止爪で抜けないように固定される。
【0018】
図3に示すように、ガーニッシュ20により覆われたケース部材14の内部には略直方体状のアンテナ部材21が収納される。アンテナ部材21は、例えばそれに対して近づけられたスマートフォンとの間で近距離無線通信(Near-field-communication)を行うためのものである。
図7に示すように、ガーニッシュ20の正面には意匠が施されるとともに、背面には左右方向に延びる板状の係止突起20aが突設される。
【0019】
図6に示すように、アンテナ部材21は、正面21a、背面21b、上面21c、下面21dおよび左右の側面21e,21fを備える概略直方体状の部材であり、その下面21dからコネクタ22付のケーブル23が延びている。アンテナ部材21の正面21aの中央部には、上下方向に見てT字状の一定断面を有する第1係合突起21gが突設されるとともに、アンテナ部材21の左右の側面21e,21fには、上下方向に直線状に延びる第2係合突起21h,21iが突設される。
【0020】
図3~
図5に示すように、ベース部材13およびケース部材14の内部には、ケース部材14の下面に開口するアンテナ部材挿入孔24が上下方向に形成されており、このアンテナ部材挿入孔24はケース部材14のガーニッシュ取付孔14bに連通する。
【0021】
アンテナ部材挿入孔24の壁面を構成するケース部材14にはアンテナ部材21の第1係合突起21gが係合可能なT字状断面の第1係合溝14cが形成されるとともに、アンテナ部材挿入孔24の壁面を構成するベース部材13にはアンテナ部材21の一対の第2係合突起21h,21iがそれぞれ係合可能な一対の直線状の第2係合溝13a,13bが形成される。
【0022】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0023】
スイッチモジュール12に対してアンテナ部材21を組み付けるには、一体に結合したベース部材13およびケース部材14にダイヤル15およびプッシュスイッチ16~18を組み付けた状態で、ケース部材14の下面に開口するアンテナ部材挿入孔24にアンテナ部材21を挿入する。このとき、アンテナ部材21のT字状断面の第1係合突起21gはケース部材14のT字状断面の第1係合溝14cに嵌合した状態で摺動しながら案内され、かつアンテナ部材21の一対の第2係合突起21h,21iはベース部材13の一対の第2係合溝13a,13bに嵌合した状態で摺動しながら案内される。
【0024】
アンテナ部材21をアンテナ部材挿入孔24の行き止まりまで挿入した後、ケース部材14のガーニッシュ取付孔14bにガーニッシュ20を嵌合させ、不図示の係止爪でガーニッシュ取付孔14bに固定する。その結果、ガーニッシュ20の背面に設けた係止突起20aがアンテナ部材挿入孔24の内部に突出し、アンテナ部材21の第1係合突起21gの下面に当接することで、アンテナ部材21がアンテナ部材挿入孔24から脱落するのが防止される(
図3~
図5参照)。このようにして組み立てられたスイッチモジュール12は、ダイヤル15、プッシュスイッチ16~18およびガーニッシュ20が車室内に臨むようにダッシュボード11の開口部11aに位置決めされ、ケース部材14の取付ブラケット14aによりダッシュボード11に固定される。
【0025】
以上のように、本実施の形態によれば、アンテナ部材挿入孔24に挿入したアンテナ部材21を装飾部材であるガーニッシュ20を利用して脱落不能に固定するので、アンテナ部材21を固定するための特別の部材が不要になって部品点数が削減される。このとき、アンテナ部材21は下側から上側に向けて挿入され、ガーニッシュ20は正面側から背面側に向けて挿入される。すなわちアンテナ部材21の挿入方向とガーニッシュ20の挿入方向とは相互に直交することになる。これにより、ケーブル23が引っ張られたりしてアンテナ部材21に抜け方向の荷重が作用しても、ガーニッシュ20がガーニッシュ取付孔14bから脱落せず、アンテナ部材21の抜け止めが確実なものとなる。
【0026】
本実施の形態によれば、アンテナ部材21の第1係合突起21gがケース部材14の第1係合溝14cに係合し、かつアンテナ部材21の第2係合突起21h,21iがベース部材13の第2係合溝13a,13bに係合することで、ケース部材14およびベース部材13がアンテナ部材21を介して相互に位置決めされる。
【0027】
また、ベース部材13およびケース部材14は基本的にそれらの外周部で結合されているが、ケース部材14において、部分的にベース部材13の外周部と接続されていない部分が存在する。そのため、接続されていない部分の剛性が低下して撓みやすくなることがある。しかし、本実施の形態によれば、ケース部材14におけるベース部材13の外周部と接続されていない部分とベース部材13とがアンテナ部材21を介して一体化されることで、ケース部材14の剛性が高められて撓みにくくなる。
【0028】
特に、第1係合突起21gおよび第1係合溝14cはT字状断面を有するので、ケース部材14およびアンテナ部材21は上下方向および左右方向の二つの方向に相対移動不能に精度良く位置決めされ、ケース部材14に対してアンテナ部材21を一層強固に結合することができる。
【第2の実施の形態】
【0029】
以下、
図8に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0030】
第2の実施の形態はベース部材13およびケース部材14が第1の実施の形態よりも小型になっており、ガーニッシュ20はケース部材14の一方の端部に近い位置に設けられる。ケース部材14の正面はダッシュボード11の意匠面から車室内に突出しており、したがってガーニッシュ20もダッシュボード11の意匠面から車室内に突出している。
【0031】
本実施の形態によれば、アンテナ部材21を覆うガーニッシュ20がケース部材14の端部に近い位置に設けられ、かつガーニッシュ20がダッシュボード11の意匠面から車室内に突出しているので、運転席もしくは助手席に座る乗員がスマートフォンを手に持って近づけたときに指がダッシュボード11の意匠面に当たり難くなって操作性が向上する。
【0032】
なお、スマートフォンに限らず外部と通信可能な携帯端末であればICカードやスマートウオッチ等のウェアラブルデバイス等でも同様の効果を得ることができる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0034】
例えば、実施の形態ではダッシュボード11にスイッチモジュール12を取り付けているが、スイッチモジュール12の取り付け相手は任意である。
【0035】
また実施の形態ではダイヤル15やプッシュスイッチ16~18を備えるスイッチモジュール12のベース部材13およびケース部材14にアンテナ部材21を設けているが、専用のベース部材13およびケース部材14にアンテナ部材21を設けても良い。
【0036】
また第1係合突起21gおよび第1係合溝14cの数は各1個に限定されるものではなく、第2係合突起21h,21iおよび第2係合溝13a,13bの数は各2個に限定されるものではない。
【0037】
またアンテナ部材21の挿入方向およびガーニッシュ20の嵌合方向は必ずしも相互に直交している必要はなく、相互に交差していれば良い。
【0038】
また第1係合突起21gおよび第1係合溝14cの断面形状は必ずしもT字状である必要はなく、L字状、Y字状、X字状等の他の形状であっても良い。
【0039】
またアンテナ部材21の通信規格は近距離無線通信(Near-field-communication)に限るものではなく、例えばBluetooth(登録商標)等のその他種々の無線通信規格でも良い。
【符号の説明】
【0040】
13 ベース部材
13a 第2係合溝
13b 第2係合溝
14 ケース部材
14b ガーニッシュ取付孔
14c 第1係合溝
20 ガーニッシュ
20a 係止突起
21 アンテナ部材
21g 第1係合突起
21h 第2係合突起
21i 第2係合突起
24 アンテナ部材挿入孔