(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】車両用レーダー装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20221214BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20221214BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20221214BHJP
H01Q 1/42 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
G01S7/40 143
G01S7/03 246
G01S13/931
H01Q1/42
(21)【出願番号】P 2019054583
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 親彦
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223948(JP,A)
【文献】特開2018-115943(JP,A)
【文献】登録実用新案第3082946(JP,U)
【文献】特開2014-218944(JP,A)
【文献】特開2004-193855(JP,A)
【文献】特開平02-034005(JP,A)
【文献】特開平10-206521(JP,A)
【文献】特開2017-077804(JP,A)
【文献】特開2006-003162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
H01Q 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開口を有するハウジングと、前記ハウジング内の後方側に配置され、前記開口を通過する電波を送信又は受信する車両用レーダーと、前記電波が透過可能であり、前記開口を塞ぐように配置され、前方側表面が外気に晒されるカバーと、を備える車両用レーダー装置であって、
前記ハウジング内で前記車両用レーダーよりも下側に配置され、自身周辺の気体を加熱する加熱装置を備え、
前記ハウジングは、その内部に、前記加熱装置が配置される加熱空間と、その上側で前記車両用レーダーを収容する主空間と、を隔てる加熱空間区画壁部を有し、
前記加熱空間区画壁部は、前方側となる前記カバー側において前記加熱空間と前記主空間とを連通させる連通孔を有し、前記加熱空間で熱せられた気体が当該連通孔を通過して前記カバーの背後空間へと導かれることを特徴とする車両用レーダー装置。
【請求項2】
前記ハウジング内で、前記車両用レーダーと前記カバーとの間に形成される前記電波の通過領域の外側に配置され、自身周辺の気体を加熱する補助加熱装置を備え、
前記ハウジングは、その内部に前記主空間と前記補助加熱装置が配置される補助加熱空間とを隔てる補助加熱空間区画壁部を有し、
前記補助加熱空間区画壁部は、前方側となる前記カバー側において前記主空間と前記補助加熱空間とを連通させる補助孔を有し、前記補助加熱空間で熱せられた気体が当該補助孔を通過して前記カバーの背後空間へと導かれる請求項1に記載の車両用レーダー装置。
【請求項3】
前記ハウジングには、前記主空間の上側から、前記車両用レーダー及び前記カバーとの間に形成される前記電波の通過領域の外側を通過して、前記加熱空間へと連通する回り込み空間が形成されている請求項1又は請求項2に記載の車両用レーダー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用レーダー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電波を送受信するレーダーを保護する車両用レドームについて記載がある。この車両用レドームは、レーダーの照射方向側を被うように配置され、その照射方向側に凹んだ凹状のカバーに対し蓋部を組み付けて内部に閉じた空間を形成している。そして、その空間を面状発熱体によって温めることで、カバー表面に付着する雪を溶かすことができる。この場合、レーダーが送受信する電波の透過をカバーが妨げることが無く、レーダーの検知感度を高く保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、車両用レーダー装置において融雪機能を付与するにあたり、その融雪効率を従来よりも高めることにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の車両用レーダー装置は、
前方に開口を有するハウジングと、前記ハウジング内の後方側に配置され、前記開口を通過する電波を送信又は受信する車両用レーダーと、前記電波が透過可能であり、前記開口を塞ぐように配置され、前方側表面が外気に晒されるカバーと、を備える車両用レーダー装置であって、
前記ハウジング内で前記車両用レーダーよりも下側に配置され、自身周辺の気体を加熱する加熱装置を備え、
前記ハウジングは、その内部に、前記加熱装置が配置される加熱空間と、その上側で前記車両用レーダーを収容する主空間と、を隔てる加熱空間区画壁部を有し、
前記加熱空間区画壁部は、前方側となる前記カバー側において前記加熱空間と前記主空間とを連通させる連通孔を有し、前記加熱空間で熱せられた気体が当該連通孔を通過して前記カバーの背後空間へと導かれることを特徴とする。
【0006】
上記本発明によれば、ハウジングとカバーとを有してなるレドームの内部に、加熱空間区画壁部によって隔てられた形で、加熱装置が配置される加熱空間と、車両用レーダーを収容する主空間と、が設けられ、その加熱空間区画壁部には、カバーに近い位置に連通孔が設けられる。このため、加熱空間で加熱された気体は、その連通孔から出た後にカバーにより近い位置を上昇するから、カバーを裏面から効率的に温めることができ、カバー表面(前方側表面)に積もった雪を溶かすことができる。また、上記本発明によれば、車両用レーダーは、連通孔から出る加熱された気体が上昇する通り道よりも後方側に配置されるから、加熱された気体に直接さらされにくく、急激な温度変化を避けて車両用レーダーの誤動作や検知感度の低下を防ぐことができる。
【0007】
上記本発明の車両用レーダー装置は、前方に開口を有し、車体に固定され又は車体の一部をなすハウジングと、前記ハウジング内の後方側に配置され、前記開口を通過する電波を送信又は受信する車両用レーダーと、前記電波が透過可能であり、前記開口を塞ぐように前記ハウジングに固定配置され、前方側表面が外気に晒されるカバーと、を備え、前記ハウジング及び前記カバーを含むレドーム内に前記車両用レーダーが収容される構成とすることができる。上述の特許文献1では、車両用レーダーがレドームとは別体をなしており、車体に組み付ける際には、車両用レーダーとレドームとをそれぞれ別で組み付けなければならなかった。上記構成によれば、車両用レーダーとレドームとを有してアセンブリ化された車両用レーダー装置において融雪機能を付与するにあたり、その融雪効率を従来よりも高めるという課題を解決することができる。
【0008】
上記本発明は、前記ハウジング内で、前記車両用レーダーと前記カバーとの間に形成される前記電波の通過領域の外側に配置され、自身周辺の気体を加熱する補助加熱装置を備え、前記ハウジングは、その内部に前記主空間と前記補助加熱装置が配置される補助加熱空間とを隔てる補助加熱空間区画壁部を有し、前記補助加熱空間区画壁部は、前方側となる前記カバー側において前記主空間と前記補助加熱空間とを連通させる補助孔を有し、前記補助加熱空間で熱せられた気体が当該補助孔を通過して前記カバーの背後空間へと導かれるように構成できる。この構成によれば、加熱空間で加熱された気体がカバーの背後空間を上昇していく中でそのカバーを温めて失っていく熱を、補助加熱空間で加熱された気体によって補うことができる。このため、カバーをより効率的に温めることができ、前方側表面に積もった雪をより効果的に溶かすことができる。また、補助加熱空間区画壁部に形成される補助孔も、加熱空間区画壁部と同様に主空間の前方側にあり、補助加熱空間で加熱された気体に車両用レーダーが直接さらされにくいため、車両用レーダーの急激な温度変化を避けることもできる。
【0009】
上記本発明における前記ハウジングには、前記主空間の上側から、前記車両用レーダー及び前記カバーとの間に形成される前記電波の通過領域の外側を通過して、前記加熱空間へと連通する回り込み空間を形成できる。この構成によれば、加熱空間で加熱された気体は、主空間の前方側を上昇しつつ主空間の前方側にあるカバーを背後から温めていくが、温めることで冷めていくが、その冷めた気体は、回り込み空間を通過する形で下降し、主空間の下側の加熱空間へと戻される。そして、冷めた気体が加熱空間にて再び熱を得て上昇してカバーを温めるという、効率的なサイクルを形成することができる。また、このような気体の流れの外に車両用レーダーが配置されるため、車両用レーダーの急激な温度変化を避けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の車両用レーダー装置を備えた車両の一例を模式的に示した正面図。
【
図2】
図1のII-II断面を簡略的に示した断面図。
【
図3】
図1のIII-III断面を簡略的に示した断面図。
【
図4】
図1のIV-IV断面を簡略的に示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0012】
車両用レーダー装置1は、例えば
図1に示すように、車両100の正面側に位置するフロントグリル41の中央に一部が露出し、他の一部がフロントグリル41の裏側に隠れるように位置する。車両用レーダー装置1は、車両100の前方に電波を送信し、送信した電波に対する反射波を受信することで車両100の前方の走行車両や障害物等を検出する。
図2~
図4に示すように、車両用レーダー装置1は、車両用レーダー2と、カバー3と、ハウジング4と、を備える。カバー3及びハウジング4は、車両用レーダー2を保護するように内部に収容するレドーム10を形成する。
【0013】
車両用レーダー2は、
図2~
図4に示すように、電波を送受信する送信部及び受信部(図示なし)を有した周知のものである。ここでの車両用レーダー2は、送信部からミリ波を送信し、そのミリ波が対象物で反射された反射波を受信部で受信することにより、対象物との距離を測定する。車両100は、車両用レーダー2と接続する制御部(図示なし)を有しており、その制御部は、車両用レーダー2の測定結果に基づいて、車両100を制御する。例えば、その制御部は、車両100の前方を走行する走行車両に対する接近の警告出力や、当該走行車両との衝突を回避する回避制御等を実行する。車両用レーダー2は、前面2aにて車両100の前方側の所定範囲R内を通過するよう電波を送信し、その反射波を受信する。
【0014】
なお、本実施例の車両用レーダー2は、電波の送信及び受信の双方が可能であるが、送信及び受信の少なくとも一方のみが可能なものでもよい。また、図示されている車両用レーダー2は、直方体状に簡略的に図示されており、実際の形状とは異なっている。
【0015】
ハウジング4は、
図2~
図4に示すように、前方に開口4Hを有し、後方側に凹んだ凹状の収容体であり、車体に固定される、又は車体の一部をなすものである。ここでのハウジング4は、後述するように、フロントグリル41をなす前壁部材(以下、前壁部材41という)と、内側筐体部42と、外側筐体部43と、を有する。ハウジング4の内部には、開口4Hの後方側に、その開口4Hを通過する電波を送信及び受信する車両用レーダー2が配置される。カバー3は、前方側から開口4Hを塞ぐようにハウジング4に組み付けられ、表面3a(前方側表面)が外気に晒される意匠面となる。
【0016】
また、ハウジング4は、
図2及び
図3に示すように、その内部において、車両用レーダー2よりも下側に、自身周辺の気体を加熱する加熱装置5(主加熱装置)として例えば周知のヒーターが配置される。このため、ハウジング4の内部には、加熱装置5が配置される加熱空間S1(主加熱空間)と、その上側で車両用レーダー2を収容する主空間S2とが形成されている。そして、ハウジング4は、それら2空間S1、S2を隔てる下側区画壁部42A(加熱空間区画壁部)を有している。
【0017】
下側区画壁部42Aは、前方側である開口4H側(カバー3側)において、加熱空間S1と主空間S2とを連通させる連通孔P1を有する。加熱空間S1で熱せられた気体は、当該連通孔P1を通過して主空間S2の前方側(即ち、カバー3の背後空間)へと導かれ、カバー3を裏面3b(後方側表面)側から温める。これにより、カバー3の表面3a(前方側表面)に積もった雪を溶かすことができる。
【0018】
また、ハウジング4は、
図4に示すように、その内部において、加熱空間S1とは別の位置で、かつ車両用レーダー2とカバー3との間に形成される電波の通過領域Rの外側となる位置に、自身周辺の気体を加熱する補助加熱装置6として例えば周知のヒーターが配置される。ハウジング4の内部には、主空間S2とその下側の加熱空間S1(
図2及び
図3参照)と共に、補助加熱装置6が配置される補助加熱空間S5(
図4参照)が形成されている。そして、各補助加熱空間S5は、区画壁部42D(補助加熱空間区画壁部)によって、主空間S2との間が隔てられている。ここでの補助加熱空間S5は、車両用レーダー2よりも左右両側に設けられており、それぞれの内部に補助加熱装置6が配置され、それぞれが区画壁部42D、42D(左側区画壁部及び右側区画壁部)によって主空間S2と隔てられている。
【0019】
各区画壁部42Dは、前方側となる開口4H側(カバー3側)において主空間S2と補助加熱空間S5とを連通させる補助孔P5を有する。各補助加熱空間S5で熱せられた気体は、それぞれの補助孔P5を通過する形で左右両側からカバー3の背後空間へと導かれ、カバー3を裏面3b側から温める。下側の加熱空間S1で熱せられた気体は、カバー3を裏面3b側から温めつつその熱を減じていくが、各補助加熱空間S5からの熱によって補われる。これにより、カバー3の表面3a(前方側表面)に積もった雪をより効率的に溶かすことができる。
【0020】
また、ハウジング4には、
図2~
図4に示すように、主空間S2の上側から、加熱空間S1及び補助加熱空間S5とは別の領域で、かつ車両用レーダー2及びカバー3との間に形成される電波の通過領域Rの外側となる領域を通過する形で、加熱空間S1(主加熱空間)へと連通する回り込み空間S4が形成されている。
【0021】
ここでの回り込み空間S4は、車両用レーダー2の後方側において上下に延びる空間であり、回り込み用壁部42Cによって少なくとも主空間S2との間が隔てられている。回り込み用壁部42Cには、
図2及び
図3に示すように、その上側に、回り込み空間S4の上側と主空間S2の上側と連通させる上側回り込み孔P3が設けられ、その下側に、回り込み空間S4の下側と加熱空間S1と連通させる下側回り込み孔P4が設けられる。
【0022】
主空間S2の上側には、ここでは主空間S2の上側に位置する上側区画壁部42Bによって主空間S2との間を隔てられた上側空間S3がある。この上側空間S3は、上側区画壁部42Bによって主空間S2との間が隔てられているが、上側区画壁部42Bの前方側となる開口4H側(カバー3側)に形成された取込孔P2によって、主空間S2と連通している。この取込孔P2は、下側区画壁部42Aや左右側の区画壁部42Dにおいて前方側となる開口4H側(カバー3側)に形成された連通孔P1や補助孔P5から上昇してくる、加熱された気体を取り込む取り込み口として機能する。また、この上側空間S3は、回り込み用壁部42Cによって回り込み空間S4との間を隔てられているが、回り込み用壁部42Cに形成された上側回り込み孔P3によって、回り込み空間S4と連通している。上側空間S3に取り込まれた気体は、上側回り込み孔P3を通って回り込み空間S4に導かれ、下側回り込み孔P4を通って加熱空間S1へと送り込まれる。
【0023】
なお、本発明における主空間S2の上側とは、ここでは主空間S2の上側に位置し、回り込み空間S4の上側と連通する空間であればよく、上記の上側空間S3のように、主空間S2との間を壁部(上側区画壁部42B)で隔てられた空間に限らない。例えば、上側区画壁部42Bが無く、主空間が空間S2、S3全体であったとした場合、主空間S2の上側は、主空間をなす空間S2、S3の上側に位置する空間(S3)とすることができる。
【0024】
ここでの回り込み空間S4は、
図2及び
図3に示すように、主空間S2の上側(S3)と、加熱空間S1とを連通させる上下に延びる通路である。ここでの回り込み空間S4は、
図4に示すように、主空間S2の左右にそれぞれ位置する補助加熱空間S5とは非連通とされている。
【0025】
以下、本実施例におけるハウジング4とカバー3について詳細に説明する。
【0026】
本実施例のハウジング4は、前方側が開口する凹状の外側筐体部43と、外側筐体部43の開口外周を前方側から被覆する形で配置され、前方側で開口4Hの外周を取り囲む環状部を有した前壁部材41(フロントグリル)と、車両用レーダー2を設置した形で外側筐体部43の内部に配置され、外側筐体部43との対向間に回り込み空間S4を形成する内側筐体部42と、を有する。
【0027】
内側筐体部42は、上下左右に拡がる回り込み用壁部42Cを底壁部として有するとともに、その回り込み用壁部42Cの中央部を取り囲むように前方に突出する壁部42A、42B、42D、42D(下側区画壁部42A、上側区画壁部42B、左右側の区画壁部42D、42D)。を有する。壁部42A、42B、42D、42Dに取り囲まれた中央部には、車両用レーダー2が固定される。
【0028】
外側筐体部43は、
図2~
図4に示すように、前方側が開口する箱状をなしており、その内部に車両用レーダー2が固定された内側筐体部42が組み付けられる。内側筐体部42は、外側筐体部43の後方側の底部43Cに対し、回り込み用壁部42Cが前方側で対向するように位置して、それらの対向間に回り込み空間S4を形成する(
図3及び
図4参照)。ここでは、
図2に示すように、外側筐体部43の底部43Cから前方に突出する突出部43Eの先端と、回り込み用壁部42Cの裏面42bとが当接した状態で、それらがボルト7によって締結固定されることにより、外側筐体部43の後方側の底部43Cと、内側筐体部42の回り込み用壁部42Cとの間に、
図3のような回り込み空間S4が形成されている。
【0029】
外側筐体部43の上下側の外周面部43A、43Bは、
図2及び
図3に示すように、回り込み用壁部42Cの上下側の端部に対し、隙間を挟んで対向しており、その隙間が上側回り込み孔P3及び下側回り込み孔P4となっている。また、外側筐体部43の左右側の外周面部43Dは、
図4に示すように、回り込み用壁部42Cの左右側の端部に対し、ほぼ隙間の無い状態で対向しており、連通する孔が非形成とされている。
【0030】
前壁部材41は、
図2及び
図3に示すように、下側が前方、上側がそれよりも後方に位置するように斜めに傾斜した形で、外側筐体部43の外周面部43A、43B、43D、43D(
図2~
図4参照)の前方側に係合して組付けられる。前壁部材41と外側筐体部43の組み付け構造については周知であるため説明を省略する。ここでの連通孔P1は、前壁部材41が上記のように傾斜していることで、取込孔P2よりも前方に位置しており、このため加熱空間S1で温められた気体は、連通孔P1から上方に出ると、傾斜したカバー3の裏面3bをなぞるようにして上昇して、取込孔P2から上側空間S3内に入っていく。ここでの連通孔P1及び取込孔P2は、前壁部材41に形成された開口4Hの上下の内縁と、内側筐体部42の上側区画壁部42A及び下側区画壁部42Bの先端との間の隙間として形成されており、それら上側区画壁部42A及び下側区画壁部42Bが存在することで、カバー3の裏面3bをなぞるように上昇する加熱された気体が、車両用レーダー2側に近づきにくくなっている。上側空間S3内に入った気体は、取込孔P2から順次取り込まれてくる気体に押し出される形で、外側筐体部43の上側の外周面部43Bに沿って後方へと導かれ、車両用レーダー2の背後の空間である回り込み空間S4を通って加熱空間S1に戻される。このように、加熱空間S1で温められた気体によって、車両用レーダー2の前方側を上方へ、上方から後方へ、後方から下方へ、下方から再び前方へと流れる気流を形成できる。そして、回り込み空間S4を下方へ流れる気体は、カバー3を熱することで熱を奪われた気体であり、その気体が車両用レーダー2の背後を通過することで、車両用レーダー2の加熱抑止の効果も期待ができる。
【0031】
カバー3は、前壁部材41の中央に形成された開口4Hに組み付く部材であり、車両用レーダー2が送受信する電波(ここではミリ波)が透過可能な電波透過性を有する素材(例えば、ポリカーボネート、AES樹脂等)で形成される。ここでのカバー3は、ベース部30と、ベース部30に対しその表面側を被うように組付くカバー体31と、を有する。ベース部30は、黒色の樹脂成形体である。カバー体31は、その裏面側にエンブレム形状の凹部が形成された透光性の樹脂成形体であり、その凹部には、インジウム等の蒸着が施されている。これにより、ここでのカバー3は、表面3a(前方側表面)側から車両のエンブレムとして視認される。
【0032】
以上、本発明の第一実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。例えば上記第一実施例において一部の構成要件を省略する、さらには他の構成要件を追加する等、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【0033】
以下、本発明の他の実施例及び変形例について説明する。なお、上記実施例と共通の機能部や同様の機能部については、同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。また、上記実施例と下記実施例及び変形例は、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。
【0034】
上記実施例の車両用レーダー装置1は、カバー3とハウジング4とからなるレドーム10内に車両用レーダー2を収容した形で構成され、ハウジング4の前壁部材41がフロントグリルそのものであるが、ハウジング4の前壁部材41は必ずしもフロントグリルでなくともよい。例えば、ハウジング4の前壁部材41を、それとは別体のフロントグリルに対し組み付く部位としてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 車両用レーダー装置
10 レドーム
2 車両用レーダー
3 カバー
4 ハウジング
4H 開口
42A 下側区画壁部(加熱空間区画壁部)
42B 上側区画壁部
42C 回り込み用壁部
42D 区画壁部(補助加熱空間区画壁部)
5 加熱装置
6 補助加熱装置
S1 加熱空間
S2 主空間
S3 上側空間
S4 回り込み空間
S5 補助加熱空間
P1 連通孔
P2 取込孔
P3 上側回り込み孔
P4 下側回り込み孔
P5 補助孔
R 電波の通過領域