(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】接着剤塗布装置及び接着剤塗布方法
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20221214BHJP
B05C 1/02 20060101ALI20221214BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20221214BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20221214BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20221214BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20221214BHJP
B05D 7/22 20060101ALI20221214BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C1/02 101
B05C11/00
B05D1/26 Z
B05D1/28
B05D7/00 K
B05D7/22 Z
B05D7/24 301P
(21)【出願番号】P 2019054794
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】下津 久明
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-61344(JP,A)
【文献】特開2014-69095(JP,A)
【文献】特開2016-131955(JP,A)
【文献】特開平5-115824(JP,A)
【文献】特開2007-159361(JP,A)
【文献】特開2005-118647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
B05D 1/00-7/26
H02K 1/17-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平形状を有する穴が設けられたワークに対し、前記穴の内面に接着剤を塗布する装置であって、
前記ワークを保持するワーク保持部と、
薄板状をなす塗布用のヘラと、
前記ヘラを自在に移動させる移動機構と、
供給位置において前記ヘラの表面に接着剤を供給するディスペンサと、
前記各機構を制御して塗布作業を自動で実行させる制御装置とを備え、
前記ディスペンサは、多数個の吐出穴を面状に有する多孔ノズルを備え、該多孔ノズルからワンショットで所定量の接着剤を吐出することにより、前記ヘラの表面に対し、接着剤を所定面積で面状に供給する接着剤塗布装置。
【請求項2】
前記ヘラの表面を撮影する画像センサを備え、
前記制御装置は、前記ディスペンサによって接着剤が供給された後の前記画像センサの撮影画像から、接着剤の供給が適切に行われたかを確認する請求項1記載の接着剤塗布装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記ヘラによる接着剤の塗布作業終了後の、前記画像センサの撮影画像から、接着剤の塗布作業が適切に行われたかを確認する請求項2記載の接着剤塗布装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記ディスペンサによる前記ヘラの表面に対する接着剤の供給作業時に、前記多孔ノズルと該ヘラとの間で糸引き状態となる接着剤を切断する切断動作を実行させる請求項1から3のいずれか一項に記載の接着剤塗布装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記ディスペンサによる前記ヘラの表面に対する接着剤の供給作業を、該ヘラの両面に対して実行させ、
前記ヘラによる接着剤の塗布動作を、前記ワークの穴の内面の対向する2面に対し夫々該ヘラの両面を押付けることにより連続的に実行させる請求項1から4のいずれか一項に記載の接着剤塗布装置。
【請求項6】
扁平形状を有する穴が設けられたワークに対し、前記穴の内面に接着剤を塗布するための方法であって、
薄板状をなす塗布用のヘラを移動機構により供給位置に移動させ、ディスペンサにより該ヘラの表面に接着剤を供給する接着剤供給工程と、
前記ヘラをワーク保持部に保持された前記ワークに移動させ、該ヘラを前記穴内に挿入して接着剤を塗布させる接着剤塗布工程と含むと共に、
前記接着剤供給工程においては、前記ディスペンサに設けられた多数個の吐出穴を面状に有する多孔ノズルから、ワンショットで所定量の接着剤を吐出することにより、前記ヘラの表面に対し接着剤を所定面積で面状に供給する接着剤塗布方法。
【請求項7】
前記ディスペンサによって前記ヘラの表面に供給された接着剤を画像センサで撮影し、その撮影画像から接着剤の供給が適切に行われたかを確認する第1の確認工程を実行する請求項6記載の接着剤塗方法。
【請求項8】
前記接着剤塗布工程後の前記ヘラの表面にを画像センサで撮影し、その撮影画像から、接着剤の塗布作業が適切に行われたかを確認する第2の確認工程を実行する請求項7記載の接着剤塗布方法。
【請求項9】
前記接着剤供給工程においては、前記ヘラの表面に対する接着剤の供給後に、前記多孔ノズルと該ヘラとの間で糸引き状態となる接着剤を切断する切断動作を実行する請求項6から8のいずれか一項に記載の接着剤塗布方法。
【請求項10】
前記接着剤供給工程においては、前記ディスペンサによる前記ヘラの表面に対する接着剤の供給作業を、該ヘラの両面に対して実行し、
前記接着剤塗布工程においては、前記ヘラによる接着剤の塗布動作を、前記ワークの穴の内面の対向する2面に対し夫々該ヘラの両面を押付けることにより連続的に実行する請求項6から9のいずれか一項に記載の接着剤塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、接着剤塗布装置及び接着剤塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば永久磁石式の回転電機の回転子は、回転子鉄心に軸方向に貫通するように設けられた複数の磁石挿入孔に対し、永久磁石を埋め込むように設けて構成される。この場合、前記磁石挿入孔の内面に接着剤が塗布され、永久磁石がその磁石挿入孔内に挿入されて接着により固定される。特許文献1には、回転子鉄心の磁石挿入孔内に自動で接着剤を塗布する接着剤塗布装置が開示されている。この接着剤塗布装置はロボットアームを備え、治具上に軸方向を上向きにしてセットされた回転子鉄心に対し、ロボットアームの先端のノズルを磁石挿入孔内に挿入して接着剤を塗布する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、この種の回転子として、回転子鉄心の外周部分に薄型の永久磁石を二層に配置したダブルレイヤタイプのものが開発されてきている。この場合、永久磁石を挿入する磁石挿入孔は薄型で扁平なものとなり、このような扁平形状の磁石挿入孔の内面に対して接着剤を塗布する必要が生ずる。上記特許文献1の接着剤塗布装置では、磁石挿入孔内にノズルを挿入しその外周のノズル穴から接着剤を吐出させて塗布することから、細いノズルの小さなノズル穴から接着剤を吐出させる構成になってしまう。そのため、磁石挿入孔の内面の広い範囲に対する接着剤の塗布を安定して行うことはできず、更に、ノズル穴が詰まりやすく接着剤の塗布量も一定にならない問題があった。
【0005】
また、上記のようなノズルを磁石挿入孔に挿入するものではなく、薄型で細長い形状のヘラを用いて、ヘラの上面に接着剤を載置状に供給し、そのヘラを、例えば水平に配置された磁石挿入孔内に挿入して接着剤の塗布作業を行うものも知られている。ところが、このものでは、ヘラの上面に接着剤を供給する際に、接着剤の粘度により、盛り上がった形態に載置されてしまい、ヘラを磁石挿入孔に挿入する際に、回転子鉄心の端面に接着剤を当てずに挿入することが難しい問題があった。
【0006】
この場合、ヘラの上面に接着剤を供給した後、その盛り上がった接着剤を、広い範囲に塗りつけるようなスキージングを行い、その後塗布作業を行うことも考えられるが、それでは、スキージングを行うための時間がかかり、サイクルタイムが長くなる不具合が生ずる。
そこで、扁平形状を有する穴の内面に接着剤を塗布するものにあって、広い範囲に対する接着剤の塗布作業を安定して行うことができる接着剤塗布装置及び接着剤塗布方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る接着剤塗布装置は、扁平形状を有する穴が設けられたワークに対し、前記穴の内面に接着剤を塗布する装置であって、前記ワークを保持するワーク保持部と、薄板状をなす塗布用のヘラと、前記ヘラを自在に移動させる移動機構と、供給位置において前記ヘラの表面に接着剤を供給するディスペンサと、前記各機構を制御して塗布作業を自動で実行させる制御装置とを備え、前記ディスペンサは、多数個の吐出穴を面状に有する多孔ノズルを備え、該多孔ノズルからワンショットで所定量の接着剤を吐出することにより、前記ヘラの表面に対し、接着剤を所定面積で面状に供給する。
【0008】
実施形態に係る接着剤塗布方法は、扁平形状を有する穴が設けられたワークに対し、前記穴の内面に接着剤を塗布するための方法であって、薄板状をなす塗布用のヘラを移動機構により供給位置に移動させ、ディスペンサにより前記ヘラの表面に接着剤を供給する接着剤供給工程と、前記ヘラをワーク保持部に保持された前記ワークに移動させ、該ヘラを前記穴内に挿入して接着剤を塗布させる接着剤塗布工程と含むと共に、前記接着剤供給工程においては、前記ディスペンサに設けられた多数個の吐出穴を面状に有する多孔ノズルから、ワンショットで所定量の接着剤を吐出することにより、前記ヘラの表面に対し接着剤を所定面積で面状に供給する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態を示すもので、ワーク保持部を塗布ツールと共に示す斜視図
【
図4】接着剤が供給されたヘラ部分の外観を示す斜視図
【
図8】第2の実施形態を示すもので、接着剤が供給されたヘラの側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、回転子鉄心の磁石挿入孔に対する永久磁石の接着作業に適用した第1の実施形態について、
図1から
図7を参照しながら説明する。まず、
図7は、本実施形態において接着剤の塗布対象となるワークとしての、いわゆるダブルレイヤタイプの回転子鉄心1の外観構成を示している。この回転子鉄心1は、例えば電磁鋼板を所定の形状即ちほぼ円板状に打抜き、その打抜いた電磁鋼板を複数枚積層して構成されている。回転子鉄心1の中心部には、図示しない回転軸が挿入される軸孔1aが形成されている。
【0011】
そして、回転子鉄心1の外周寄り部分には、図示しない永久磁石が挿入されて接着固定される穴としての磁石挿入孔2、3が、軸方向に貫通して形成されている。具体的には、磁石挿入孔2は、扁平形状、つまり細長い形状を有し、2個が逆「ハ」の字形をなすような対となって、円周方向に均等に並んで例えば8組(8対)形成されている。磁石挿入孔3は、やはり扁平形状つまり細長い形状を有し、前記磁石挿入孔2の外周側に位置して、2個が逆「ハ」の字形をなすような対となって例えば8組(8対)形成されている。
【0012】
このとき、外周側の磁石挿入孔3は、内周側の磁石挿入孔2よりも小さく構成されている。ちなみに、磁石挿入孔2は、例えば、幅寸法が14mm、高さ(厚み)寸法が3mmとされている。これに対し、磁石挿入孔3は、例えば、幅寸法が9mm、高さ(厚み)寸法が2mmとされている。挿入・接着ざれる永久磁石は、それら磁石挿入孔2、3の寸法に対応した大きさに構成されていることは勿論である。
【0013】
次に、上記回転子鉄心1に形成された磁石挿入孔2、3の内面に対して、永久磁石を固定するための接着剤を塗布する、本実施形態に係る接着剤塗布装置11の構成について、
図1~
図6を参照して述べる。全体としての図示は省略するが、接着剤塗布装置11は、上面が水平な台状をなすベース12(
図1、
図2参照)上に、保持部としての回転チャック機構13(
図1参照)、移動機構となるロボット14(
図2参照)、ディスペンサ15(
図3参照)を備えると共に、それらを制御する制御装置16(
図6にのみ図示)等を備えて構成される。
【0014】
前記回転チャック機構13は、
図1に示すように、前記回転子鉄心1をその中心軸Oが水平となるように保持すると共に、該回転子鉄心1を前記中心軸O周りに自在に回転させるように構成されている。前記ロボット14は、詳しくは後述するように、アームの先端に塗布ツール17を装着してなり、該塗布ツール17を回転子鉄心1の磁石挿入孔2、3に対し軸方向から挿入させて接着剤を塗布させる塗布動作を実行する。前記ディスペンサ15は、前記ベース12上の所定の供給位置に移動された前記塗布ツール17に対して、定量の接着剤を供給する機能を備える。尚、実施形態の説明では、回転チャック機構13により保持された回転子鉄心1の中心軸(回転軸)Oの延びる方向を前後方向とし、回転子鉄心1の前面側を前方と定義している。
【0015】
具体的には、前記回転チャック機構13は、
図4、
図5にも示すように、前記ベース12上の中央やや後部に前向きに設けられ、回転子鉄心1を保持するチャック部18と、このチャック部18を自在に回転させる回転機構部19とを備えている。前記チャック部18は、回転子鉄心1の後面側から中心孔1aに挿入され、例えばエアシリンダ等を駆動源として複数の保持板部を外周方向に拡げることによって、該回転子鉄心1を円周方向の位置決め状態で、回転可能に保持する。前記回転機構部19は、例えばサーボモータを駆動源とし、前記チャック部18ひいては回転子鉄心1を自在に回転させて所定の回転角度に停止させる。この場合、回転子鉄心1は、回転チャック機構13によって、複数の磁石挿入孔2、3のうち接着剤の塗布対象となる塗布対象面が上部に来て水平状態になるように回転される。
【0016】
前記ロボット14は、
図2に示すように、本実施形態では、例えば3軸以上この場合4軸の水平多関節形(スカラ形)ロボットから構成されている。このロボット14は、前記ベース12上に固定的に取付けられる基台20上に、水平に延びる第1アーム21の基端部が垂直軸J1を中心に回動(水平旋回)可能に連結されている。第1アーム21の先端部の上面には、第2アーム22の基端部が、垂直軸J1を中心に回動(水平旋回)可能に連結されている。第2アーム22の先端部には、シャフト状の上下アーム23が上下動及び同軸回転可能に連結されている。そして、上下アーム23の先端部即ち下端部の取付フランジ部23aに、前記塗布ツール17が装着されている。
【0017】
前記塗布ツール17は、
図3、
図4等にも示すように、金属製のホルダ部17aに、弾性材料例えば板バネ材から長方形板状に構成されたヘラ24を取付けて構成されている。このとき、
図4等に示すように、ホルダ部17aの先端部は、上下アーム23の下端から外周方向に突出し、前記ヘラ24は、その基端部が前記ホルダ部17aから直角に折曲がるように、水平状態に取付けられる。これにて、ヘラ24は、ホルダ部17aと共に水平方向にL字状に折曲った形態に設けられている。前記ロボット14は、前記塗布ツール17のヘラ24を、回転チャック機構13に保持された回転子鉄心1と、後述する供給位置との間を自在に移動させ、これにより、塗布ツール17による塗布動作の実行が可能とされる。
【0018】
図3に示すように、前記ディスペンサ15は、接着剤B(
図4参照)を貯留するシリンジ25や、その下端部に設けられた多孔ノズル26、図示しない押出し機構を備えており、この多孔ノズル26から、一定量ずつの接着剤Bを下向きに吐出するように構成されている。これにより、多孔ノズル26の真下の位置が、所定の供給位置とされ、各ロボット14は、前記塗布ツール17のヘラ24をその供給位置に移動させて、その上面に接着剤Bの供給を受けるようになっている。この多孔ノズル26の詳細については後述する。また図示はしないが、本実施形態では、ディスペンサ15は、先端の多孔ノズル26を垂直軸周りに回転させるための回転機構が設けられている。
【0019】
また、
図4などに示すように、前記ディスペンサ15の供給位置の斜め上方部分には、画像センサ27が設けられている。この画像センサ27は、例えばCCDカメラ等からなり、前記ヘラ24の上面部分を撮影するように構成されている。これにより、後述するように、画像センサ27の撮影画像に基づいて、ディスペンサ15によるヘラ24に対する接着剤Bの供給が適切に行われたかの確認や、塗布作業終了後における、接着剤Bの塗布作業が適切に行われたか、つまり塗布後のヘラ24上の接着剤残りはないかの確認等が行われる。尚、ヘラ24の表面が金属からなる銀色の光沢面であるのに対し、接着剤Bは例えば白色であるので、接着剤Bの画像認識は容易に行われる。
【0020】
さて、本実施形態では、前記ディスペンサ15の先端に設けられる多孔ノズル26は、
図5に示す構成を備えている。即ち、多孔ノズル26は、接着剤Bが通過する中空部を有する有底円筒状の本体の底部に、多数個の小孔からなる吐出穴26aを有して構成されている。このとき、吐出穴26aは、面状をなすようにしして例えば縦横にマトリクス状に形成されている。これにて、ディスペンサ15においては、多孔ノズル26の吐出穴26aから、ワンショットで所定量(必要量)の接着剤Bがドット状に吐出される。これにより、
図4に示すように、ヘラ24の上面には、接着剤Bが全体として面状、つまり四角形の広い範囲に全体的に比較的薄く供給されるのである。
【0021】
図6は、前記制御装置16を中心とした電気的構成を概略的に示している。ここで、前記制御装置16は、コンピュータを含んで構成され、回転チャック機構13を制御すると共に、ディスペンサ15を制御する。また、制御装置16は、ロボットコントローラ28を介して、ロボット14を制御する。制御装置16には、前記画像センサ27からの検知信号が入力される。制御装置16は、予め入力設定された制御プログラムや動作用データ、リアルタイムで入力されるセンサ信号等に基づいて、回転チャック機構13、ロボット14、ディスペンサ15等を制御して、回転子鉄心1に対する接着剤塗布の作業、即ち本実施形態に係る接着剤塗布方法の各工程を実行させる。
【0022】
本実施形態の接着剤塗布装置11においては、制御装置16により、以下のような1サイクルの動作が実行される。即ち、まず、ロボット14を動作させて塗布ツール17のヘラ24を、接着剤Bの供給位置に移動させ、ディスペンサ15により所定量の接着剤Bをヘラ24の上面に吐出させて供給させる(接着剤供給工程)。この場合、
図4に示すように、ヘラ24の上面には、ドット状の接着剤Bが四角形の広い範囲に全体として薄く供給されるようになる。
【0023】
このとき、ロボット14は、ヘラ24の真下に位置させ、接着剤Bが吐出された後に、ヘラ24を下降させる(多孔ノズル26を相対的に上昇させる)ように移動させるのであるが、接着剤Bの粘度によっては、その際に接着剤Bが多孔ノズル26の吐出口26aとヘラ24との間で糸引き状態となる。そこで、本実施形態では、例えば、ヘラ24の下降時に多孔ノズル26を回転させる(ひねる)ことにより、糸引き状態の接着剤Bにせん断力を付与して、糸引き状態となりそうな接着剤Bを切断する切断動作が実行される。
【0024】
また本実施形態では、接着剤供給工程が終了すると、ヘラ24の表面に供給された接着剤Bを画像センサ27で撮影し、その撮影画像から接着剤Bの供給が適切に行われたかを確認する第1の確認工程が実行される。もし、ヘラ24に対する接着剤Bの供給不良が発生したと判定された場合には、エラー報知或いは接着剤供給工程の再実行が行われる。撮影画像から接着剤Bの供給が適切に行われたと判定され、第1の確認工程が終了すると、ヘラ24の上向き状態を保ったまま、ロボット14を動作させて、塗布ツール17を、回転チャック機構13により保持されている回転子鉄心1の前側に移動させる。
【0025】
一方、上記接着剤供給工程の実行中において、回転チャック機構13により、水平に保持されている回転子鉄心1の接着剤塗布の対象となる磁石挿入孔2、3の内面のうち接着剤Bを塗布する面が水平下向き即ち上面となるように、回転子鉄心1を中心軸O周りに回転させる。上記ロボット14の動作により、塗布ツール17のヘラ24は、先端を後ろ向きにした状態で、回転子鉄心1の塗布対象となる磁石挿入孔2、3の水平方向前方に移動される。
【0026】
引続き、ロボット14により、前記塗布ツール17のヘラ24を磁石挿入孔2、3に対し軸方向から水平に挿入させて接着剤Bを塗布させる接着剤塗布工程が実行される。この接着剤塗布工程では、磁石挿入孔2、3に対してヘラ24を挿入した後、ヘラ24を若干だけ上昇させながら磁石挿入孔2、3から引出すといった動作がなされることにより、ヘラ24が保持していた接着剤Bが磁石挿入孔2、3内の上面に転写されて塗布されるようになる。接着剤塗布工程の後は、ロボット14は、次の塗布のための接着剤Bを得るために、塗布ツール17のヘラ24を再び供給位置に移動させる。
【0027】
このとき、次の接着剤供給工程を実行する前に、前記ヘラ24の表面を画像センサ27で撮影し、その撮影画像から、接着剤Bの塗布作業が適切に行われたかを確認する第2の確認工程が実行される。この場合、ヘラ24の表面に接着剤Bが残存していない場合には、磁石挿入孔2、3の内面に対する接着剤Bの塗布が適切に行われたと判断でき、接着剤Bの残存が見られた場合には、接着剤塗布工程で、接着剤Bの塗布不良が発生した、即ち、接着剤Bの転写がうまく行われなかったと考えらえる。従って、接着剤Bの残存が見られた場合には、エラー報知或いは接着剤塗布工程の再実行が行われる。
【0028】
第2の確認工程において、接着剤Bの塗布が適切に行われたことが確認された場合には、上記した接着剤供給工程が繰返され、次の磁石挿入孔2、3に対する接着剤Bの塗布が実行される。このように、ロボット14並びにディスペンサ15及び回転チャック機構13により、上記工程を順に繰返して実行させることにより、回転子鉄心1の複数の磁石挿入孔2、3に対する接着剤の塗布動作が実行される。尚、ここでは特に説明しなかったが、複数台のロボット14を用いて上記作業を行うことも可能である。この場合、一台のロボット14において接着剤供給工程が実行されているときに、別のロボット14において接着剤塗布工程が実行されている等の効率的な作業が可能となる。
【0029】
このような本実施形態の接着剤塗布装置11及び接着剤塗布方法によれば、次のような作用、効果を得ることができる。即ち、接着剤供給工程では、薄板状のヘラ24をロボット14により供給位置に移動させ、ディスペンサ15によりヘラ24の表面に接着剤Bを供給することが行われる。接着剤塗布工程では、回転チャック機構13に保持された回転子鉄心1に対し、前記ヘラ24を移動させ、そのヘラ24を扁平形状を有する磁石挿入孔2、3に挿入し、その内面に接着剤Bを塗布することが行われる。
【0030】
このとき、薄型のヘラ24を用い、その上面に供給される接着剤Bも、高さ寸法は小さく済むので、接着剤塗布の対象となる磁石挿入孔2、3が薄型となる事情があっても、接着剤Bを回転子鉄心1の端面に当てることなく、ヘラ24を穴に挿入することができる。そして、接着剤Bは、ヘラ24に面状に供給されているので、磁石挿入孔2、3の内面の広い範囲に接着剤Bを容易に塗布することができる。
【0031】
従って、本実施形態によれば、回転子鉄心1の扁平形状を有する各磁石挿入孔2、3の内面に、永久磁石を接着するための接着剤Bを塗布するものにあって、広い範囲に対する接着剤Bの塗布作業を安定して行うことができるという優れた効果を得ることができる。しかも、接着剤供給工程においては、ディスペンサ15に設けられた多数個の吐出穴26aを面状に有する多孔ノズル26から、ワンショットの吐出で接着剤Bを面状に供給することができるので、スキージングを行う場合等と比較して、接着剤Bの供給作業を短時間で済ませることができる。
【0032】
特に本実施形態では、接着剤供給工程においてディスペンサ15によってヘラ24の表面に供給された接着剤Bを画像センサ27で撮影し、その撮影画像から接着剤Bの供給が適切に行われたかを確認する第1の確認工程を実行するようにした。これにより、ヘラ24の表面に対する接着剤Bの供給が適切に行われたかを確認することができる。ヘラ24に対する接着剤Bの供給不良が発生した場合は、そのまま接着剤塗布工程に移行してしまうことを未然に防止することができ、適切な塗布作業を確実に行うことができる。
【0033】
また本実施形態では、接着剤塗布工程後のヘラ24の表面を画像センサ27で撮影し、その撮影画像から、接着剤Bの塗布作業が適切に行われたかを確認する第2の確認工程を実行するようにした。これにより、画像センサ27による撮影画像に基づいて、ヘラ24の表面に接着剤Bが残存していないかどうかを確認でき、着剤Bの塗布が適切に行われたかどうかを判断することができる。接着剤Bの残存を確認することに基づき、接着剤Bの塗布不良の発生を判断することができ、塗布不良のまま次の工程に移行してしまうことを未然に防止することができる。
【0034】
更に、本実施形態では、接着剤供給工程において、ヘラ24の表面に対する接着剤Bの供給後に、多孔ノズル26(吐出穴26a)と該ヘラ24との間で糸引き状態となる接着剤Bを切断する切断動作を実行する構成とした。これにより、切断動作を実行することによって、接着剤Bの糸引きが大きくなることが未然に防止される。この結果、接着剤Bがヘラ24の表面の高くまで持ち上がった状態となることはなく、扁平な磁石挿入孔2、3の通過に支障をきたすことはない。
【0035】
図8は、第2の実施形態を示している。この第2の実施形態が上記第1の実施形態と異なるところは、接着剤供給工程においては、ディスペンサ15によるヘラ24の表面に対する接着剤Bの供給作業を、該ヘラ24の両面に対して実行する点にある。そして、接着剤塗布工程においては、前記ヘラ24による接着剤Bの塗布動作が、回転子鉄心1の磁石挿入孔2、3の上下に位置する内面(両面)に対し、ヘラ24の上下両面を夫々押付けることにより連続的に実行される。
【0036】
これによれば、ヘラ24の表面に接着剤Bを薄く供給することができるので、ヘラ24の両面に対して接着剤Bを供給した場合でも、全体としての厚み寸法を小さく抑えることができる。従って、磁石挿入孔2、3内の上下2面に対して連続して、つまりヘラ24を磁石挿入孔2、3から一旦抜出すといったことなく、接着剤Bの塗布作業を行うことができるようになり、作業性の大幅な向上を図ることができる。
【0037】
尚、上記各実施形態においては、接着剤の塗布の対象として回転子鉄心1を例にあげたが、ワークとしてはそれに限定されるものではなく、様々な変更が可能である。また、接着剤塗布装置におけるロボット(移動機構)としても、4軸の水平多関節形ロボットに限定されるものではなく、3軸の水平多関節形ロボットや垂直多関節形のロボット等であっても良い。ヘラの形状や材質などについても様々なものを採用することができる。ディスペンサの構成等についても様々な変更が可能である。
【0038】
その他、画像センサを用いた確認の工程は必要に応じて設ければ良い。また、切断動作としても、ノズルとヘラとを急激に離間させるといった動作でも良く、長い糸引き状態とならない接着剤であれば、切断動作を省略しても良い。以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
図面中、1は回転子鉄心(ワーク)、2、3は磁石挿入孔(穴)、11は接着剤塗布装置、12はベース、13は回転チャック機構(ワーク保持部)、14はロボット(移動機構)、15はディスペンサ、16は制御装置、1は塗布ツール、24はヘラ、26は多孔ノズル、26aは吐出穴、27は画像センサ、Bは接着剤を示す。