(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】エステル化合物及びその製造方法、熱可塑性樹脂用可塑剤、並びに、熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 69/78 20060101AFI20221214BHJP
C07C 67/14 20060101ALI20221214BHJP
C07C 35/14 20060101ALI20221214BHJP
C07C 29/10 20060101ALI20221214BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20221214BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221214BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
C07C69/78 CSP
C07C67/14
C07C35/14
C07C29/10
C08L23/00
C08L101/00
C08K5/103
(21)【出願番号】P 2019058759
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高後 修
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 由之
【審査官】柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-534739(JP,A)
【文献】特表2011-506637(JP,A)
【文献】特表2012-502159(JP,A)
【文献】UNGNADE, Herbert E. et al.,J.Am.Chem.Soc.,1944年,66,118-122
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/00-69/96
C07C 29/00-29/94
C07C 35/00-35/52
C08L 23/00
C08L 101/00
C08K 5/103
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される、エステル化合物。
【化1】
(1)
[式(1)中、C
1,C
2は
一つの水素原子を有する炭素原子である。A
1は下記式(A1)で表される構造を示し、A
2は下記式(A2)で表される構造を示す。A
1とA
2の相対配置は、syn、anti、またはsynとantiの混合のいずれかを示す。
【化2】
(A1)
【化3】
(A2)
式(A1)、(A2)中、R
1~R
10は、互いに独立して水素原子、炭素原子数1~20の置換または無置換のアルキル基、炭素原子数6~20の置換または無置換のアリール基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、またはハロゲン原子である。また、R
1~R
10のうち隣接する任意の2つの基が結合して環を形成していてもよい。(C
1)および(C
2)はそれぞれ、式(1)のC
1およびC
2を示す。]
【請求項2】
A
1とA
2の相対配置がsynである、請求項1に記載のエステル化合物。
【請求項3】
R
1~R
10が、互いに独立して水素原子、炭素原子数1~20の置換または無置換のアルキル基である、請求項1または2に記載のエステル化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のエステル化合物を含む熱可塑性樹脂用可塑剤。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のエステル化合物と熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂である、請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物とを反応させる、請求項1に記載のエステル化合物の製造方法。
【化4】
(2)
【化5】
(3)
[式(2)中、C
1およびC
2にそれぞれ結合しているOH基の相対配置はsyn、anti、またはsynとantiの混合のいずれかを示す。式(3)中、R
11~R
15は、互いに独立して水素原子、炭素原子数1~20の置換または無置換のアルキル基,炭素原子数6~20の置換または無置換のアリール基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、またはハロゲン原子である。また、R
11~R
15のうち隣接する任意の2つの基が結合して環を形成していてもよい。Xはハロゲン原子である。]
【請求項8】
前記式(2)において、C
1およびC
2にそれぞれ結合しているOH基の相対配置がsynである、請求項7に記載のエステル化合物の製造方法。
【請求項9】
前記式(2)においてC
1およびC
2にそれぞれ結合しているOH基の相対配置がsynである化合物が、OH基をアセタール化する工程、立体構造がsynの化合物のみを単離する工程、アセタールを脱保護する工程と、を経る請求項8に記載のエステル化合物の製造方法。
【請求項10】
式(3)において、R
11~R
15が、互いに独立して水素原子、炭素原子数1~20の置換または無置換のアルキル基である、請求項7~9のいずれか1項に記載のエステル化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル化合物及びその製造方法、熱可塑性樹脂用可塑剤、並びに熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、樹脂添加用可塑剤にはアルコールとポリカルボン酸から合成したエステル化合物が用いられている。商業的に重要な例としては、炭素数8、炭素数9及び炭素数10のアルコールのアジピン酸エステルがあり、具体的には、ジ(2-エチルヘキシル)アジパート、ジイソノニルアジパート、ジイソデシルアジパートなどが挙げられる。また、炭素数8、炭素数9及び炭素数10のアルコールのフタル酸エステルも重要であり、具体的には、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレートなどが挙げられる。
【0003】
前記ジ(2-エチルヘキシル)フタレートは、プラスチゾル(plastisol)及び乾式配合を介し、玩具、フィルム、履物、塗料、床材、手袋、壁紙、人造皮革、シーラント、ターポリン、車床コーティング剤、家具、発泡マット及び防音パネルの製造時に用いられ、かつPVCケーブルの外装及び絶縁、及び他のカレンダリングされた可塑性PVC製品の生産にも用いられる(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2017-509592号公報
【文献】特開2017-81833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、新規のエステル化合物を提供することである。
また、本発明の目的は、前記エステル組成物の製造方法を提供することである。
また、本発明の目的は、前記エステル化合物を含有し、優れた可塑化効率を有して樹脂の加工性及び物性を改善させることができる熱可塑性樹脂用の可塑剤、及び、当該可塑剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を達成するための具体的手段には、以下の様態が含まれる。
<1>下記式(1)で表される、エステル化合物。
【0007】
【0008】
[式(1)中、C1,C2は炭素原子である。A1は下記式(A1)で表される構造を示し、A2は下記式(A2)で表される構造を示す。A1とA2の相対配置は、syn、anti、またはsynとantiの混合のいずれかを示す。
【0009】
【0010】
【0011】
式(A1)、(A2)中、R1~R10は、互いに独立して水素原子、炭素原子数1~20の置換または無置換のアルキル基、炭素原子数6~20の置換または無置換のアリール基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、またはハロゲン原子である。また、R1~R10のうち隣接する任意の2つの基が結合して環を形成していてもよい。(C1)および(C2)はそれぞれ、式(1)のC1およびC2を示す。]
<2>A1とA2の相対配置がsynである、<1>に記載のエステル化合物。
【0012】
<3>R1~R10が、互いに独立して水素原子、炭素原子数1~20の置換または無置換のアルキル基である、<1>または<2>に記載のエステル化合物。
【0013】
<4><1>~<3>のいずれか1項に記載のエステル化合物を含む熱可塑性樹脂用可塑剤。
【0014】
<5><1>~<3>のいずれか1項に記載のエステル化合物と熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物。
【0015】
<6>熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂である、<5>に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0016】
<7>下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物とを反応させる、<1>に記載のエステル化合物の製造方法。
【0017】
【0018】
【0019】
[式(2)中、C1およびC2にそれぞれ結合しているOH基の相対配置はsyn、anti、またはsynとantiの混合のいずれかを示す。式(3)中、R11~R15は、互いに独立して水素原子、炭素原子数1~20の置換または無置換のアルキル基、炭素原子数6~20の置換または無置換のアリール基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、またはハロゲン原子である。また、R11~R15のうち隣接する任意の2つの基が結合して環を形成していてもよい。Xはハロゲン原子である。]
【0020】
<8>前記式(2)において、C1およびC2にそれぞれ結合しているOH基の相対配置がsynである、<7>に記載のエステル化合物の製造方法。
【0021】
<9>前記式(2)においてC1およびC2にそれぞれ結合しているOH基の相対配置がsynである化合物が、OH基をアセタール化する工程、立体構造がsynの化合物のみを単離する工程、アセタールを脱保護する工程と、を経る請求項8に記載のエステル化合物の製造方法。
【0022】
<10>式(3)において、R11~R15が、互いに独立して水素原子、炭素原子数1~20の置換または無置換のアルキル基である、<7>~<9>のいずれか1項に記載のエステル化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、新規のエステル系化合物が提供される。
また、本発明によれば、前記エステル化合物の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、前記エステル化合物を含有し、優れた可塑化効率を有して樹脂の加工性及び物性を改善させることができる熱可塑性樹脂用の可塑剤、及び、当該可塑剤を含有する熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施様態に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施様態に限定されるものではない。
【0025】
本開示において、「~」を用いて表される数字範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0026】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値または下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値または下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値または下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0027】
用語「syn」は、本明細書において使用される場合、その普通の意味を有し、式(1)に関連して、A1とA2がsp3混成(四面体)炭素中心であるC1ならびにC2にそれぞれ結合しており、A1とA2が、C1ならびにC2に対していずれも同じ向きへ突出していることを指示するために使用される。また、用語「anti」は、本明細書において使用される場合、その普通の意味を有し、式(1)に関連して、A1とA2がsp3混成(四面体)炭素中心であるC1ならびにC2にそれぞれ結合しており、A1とA2が、C1ならびにC2に対していずれも反対の向きへ突出していることを指示するために使用される。故に、これは、化合物を特定のキラル配置に限定することなく、A1とA2の相対配向を定義するための便利な手法として使用される。これは、本発明の化合物が特定の相対配向においてそのような基を有するが、該特定の相対配向のいずれかのエナンチオマーに限定されるわけではないという事実を反映している。したがって、光学活性として記載されていない限り、そのような化合物はラセミであってよいが、指定されている相対立体化学を有する2つのエナンチオマーのそれぞれも包含し得る。
<エステル化合物>
本発明のエステル化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
【0028】
【0029】
式(1)中、C1,C2は炭素原子であり、A1は下記式(A1)で表される構造を示し、A2は下記式(A2)で表される構造を示す。波線の結合軸は、この結合軸が置換したC1上の置換基A1の立体配置、及びC2上の置換基A2の立体配置に制限がないことを示す。A1とA2の相対配置は、syn、anti、またはsynとantiの混合のいずれでもよい。また、単一の鏡像異性体(エナンチオマー)でも、ラセミ体でもよい。好ましくは、相対配置がsynであるラセミ体であることが望ましい。
【0030】
【0031】
【0032】
前記式(A1)および式(A2)で、R1~R10は、互いに独立して水素原子、炭素原子数1~20の置換または無置換のアルキル基、炭素原子数6~20の置換または無置換のアリール基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、またはハロゲン原子である。
【0033】
また、R1~R10のうち隣接する任意の2つの基が結合して環を形成していてもよい。
置換アルキル基、及び置換アリール基における、置換基の具体例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基等が挙げられる。これらの置換基は、アルキル基、アリール基に1個だけでなく2個以上置換していてもよく、単独または異なる種類の置換基で置換していてもよい。
置換または無置換のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等の総炭素数1~20の直鎖脂肪族炭化水素;
イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、1-n-プロピルブチル基、1-iso-プロピルブチル基、1-iso-プロピル-2-メチルプロピル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、1-n-プロピルペンチル基、2-n-プロピルペンチル基、1-iso-プロピルペンチル基、2-iso-プロピルペンチル基、1-n-ブチルブチル基、1-iso-ブチルブチル基、1-sec-ブチルブチル基、1-tert-ブチルブチル基、2-tert-ブチルブチル基等の総炭素数1~20のモノアルキル置換脂肪族炭化水素;
【0034】
tert-ブチル基、tert-ペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3,4-ジメチルペンチル基、1-エチル-1-メチルブチル基、1-エチル-2-メチルブチル基、1-エチル-3-メチルブチル基、2-エチル-1-メチルブチル基、2-エチル-3-メチルブチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,2-ジメチルヘキシル基、1,3-ジメチルヘキシル基、1,4-ジメチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2,3-ジメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、3,4-ジメチルヘキシル基、3,5-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、4,5-ジメチルヘキシル基、1-エチル-2-メチルペンチル基、1-エチル-3-メチルペンチル基、1-エチル-4-メチルペンチル基、2-エチル-1-メチルペンチル基、2-エチル-2-メチルペンチル基、2-エチル-3-メチルペンチル基、2-エチル-4-メチルペンチル基、3-エチル-1-メチルペンチル基、3-エチル-2-メチルペンチル基、3-エチル-3-メチルペンチル基、3-エチル-4-メチルペンチル基、1-n-プロピル-1-メチルブチル基、1-n-プロピル-2-メチルブチル基、1-n-プロピル-3-メチルブチル基、1-iso-プロピル-1-メチルブチル基、1-iso-プロピル-2-メチルブチル基、1-iso-プロピル-3-メチルブチル基、1,1-ジエチルブチル基、1,2-ジエチルブチル基等の総炭素数1~20のジアルキル置換脂肪族炭化水素;
【0035】
1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1,1,2-トリメチルブチル基、1,1,3-トリメチルブチル基、1,2,3-トリメチルブチル基、1,2,2-トリメチルブチル基、1,3,3-トリメチルブチル基、2,3,3-トリメチルブチル基、1,1,2-トリメチルペンチル基、1,1,3-トリメチルペンチル基、1,1,4-トリメチルペンチル基、1,2,2-トリメチルペンチル基、1,2,3-トリメチルペンチル基、1,2,4-トリメチルペンチル基、1,3,4-トリメチルペンチル基、2,2,3-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、2,3,4-トリメチルペンチル基、1,3,3-トリメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルペンチル基、3,3,4-トリメチルペンチル基、1,4,4-トリメチルペンチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、3,4,4-トリメチルペンチル基、1-エチル-1,2-ジメチルブチル基、1-エチル-1,3-ジメチルブチル基、1-エチル-2,3-ジメチルブチル基、2-エチル-1,1-ジメチルブチル基、2-エチル-1,2-ジメチルブチル基、2-エチル-1,3-ジメチルブチル基、2-エチル-2,3-ジメチルブチル基等の総炭素数1~20のトリアルキル置換脂肪族炭化水素;
【0036】
シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の総炭素数1~20の環状脂肪族炭化水素;
メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、1,2-ジメチルシクロヘキシル基、1,3-ジメチルシクロヘキシル基、1,4-ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基等の総炭素数1~20のアルキル置換環状脂肪族炭化水素;
ベンジル基、4-メチルベンジル基等の総炭素数1~20のアリール置換脂肪族炭化水素;
【0037】
フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロエチル基、クロロエチル基、ブロモエチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、テトラクロロエチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基等のハロゲン原子が一部または全て置換した総炭素数1~20のハロゲン化脂肪族炭化水素;が挙げられる。
置換または無置換のアリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アンスラニル基等の総炭素数20以下の芳香族炭化水素;
【0038】
2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2-エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、オクチルフェニル基、2-メチル-1-ナフチル基、3-メチル-1-ナフチル基、4-メチル-1-ナフチル基、5-メチル-1-ナフチル基、6-メチル-1-ナフチル基、7-メチル-1-ナフチル基、8-メチル-1-ナフチル基、1-メチル-2-ナフチル基、3-メチル-2-ナフチル基、4-メチル-2-ナフチル基、5-メチル-2-ナフチル基、6-メチル-2-ナフチル基、7-メチル-2-ナフチル基、8-メチル-2-ナフチル基、2-エチル-1-ナフチル基等の総炭素数20以下のモノアルキル置換アリール基;
【0039】
2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、3,6-ジメチルフェニル基等の総炭素数20以下のジアルキル置換アリール基;
【0040】
2,3,4-トリメチルフェニル基、2,3,5-トリメチルフェニル基、2,3,6-トリメチルフェニル基、2,4,5-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリメチルフェニル基等の総炭素数20以下のトリアルキル置換アリール基;
【0041】
ビフェニル基、スチリルフェニル基、スチルベニル基等の置換または無置換のアリール基で置換された総炭素数20以下のアリール基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-エトキシフェニル基、プロポキシフェニル基、ブトキシフェニル基、ヘキシルオキシフェニル基、シクロヘキシルオキシフェニル基、オクチルオキシフェニル基、2-メトキシ-1-ナフチル基、3-メトキシ-1-ナフチル基、4-メトキシ-1-ナフチル基、5-メトキシ-1-ナフチル基、6-メトキシ-1-ナフチル基、7-メトキシ-1-ナフチル基、8-メトキシ-1-ナフチル基、1-メトキシ-2-ナフチル基、3-メトキシ-2-ナフチル基、4-メトキシ-2-ナフチル基、5-メトキシ-2-ナフチル基、6-メトキシ-2-ナフチル基、7-メトキシ-2-ナフチル基、8-メトキシ-2-ナフチル基、2-エトキシ-1-ナフチル基等の炭素数10以下の置換または無置換のアルキルオキシが置換した総炭素数20以下のモノアルコキシアリール基;
【0042】
2,3-ジメトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、2,5-ジメトキシフェニル基、2,6-ジメトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、3,6-ジメトキシフェニル基、4,5-ジメトキシ-1-ナフチル基、4,7-ジメトキシ-1-ナフチル基、4,8-ジメトキシ-1-ナフチル基、5,8-ジメトキシ-1-ナフチル基、5,8-ジメトキシ-2-ナフチル基等の炭素数10以下の置換または無置換のアルキルオキシが置換した総炭素数20以下のジアルコキシアリール基;
【0043】
2,3,4-トリメトキシフェニル基、2,3,5-トリメトキシフェニル基、2,3,6-トリメトキシフェニル基、2,4,5-トリメトキシフェニル基、2,4,6-トリメトキシフェニル基、3,4,5-トリメトキシフェニル基等の炭素数10以下の置換または無置換のアルキルオキシが置換した総炭素数20以下のトリアルコキシアリール基;
【0044】
クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、トリクロロフェニル基、ブロモフェニル基、ジブロモフェニル基、ヨードフェニル基、フルオロフェニル基、クロロナフチル基、ブロモナフチル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等のハロゲン原子が置換した総炭素数20以下のアリール基;
【0045】
トリフルオロメチルフェニル基、トリクロロメチルフェニル基等の炭素数10以下で一部または全てがハロゲン置換されたアルキル基が置換した総炭素数20以下のハロゲン化アルキルアリール基等が挙げられる。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
R1~R10のうち隣接する任意の2つの基が結合して環を形成する環の具体例としては、脂肪族環、芳香族環が挙げられる。
【0046】
R1~R10で表される置換基が置換または無置換のアルキル基の場合は、炭素原子数が1~20が好ましく、より好ましくは1~5である。また、R1~R10で表される置換基が置換または無置換のアリール基である場合は、炭素原子数6~20であることが好ましく、より好ましくは6~10である。
R1~R10で表される置換基は、R1~R10がいずれも水素原子であることが更に好ましい。
【0047】
本発明の前記式(1)で表されるエステル化合物の具体例としては、以下の(6)~(59)で表される化合物が挙げられる。ただしこれらに限定されるわけではない。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
<エステル化合物の製造方法>
本発明の式(1)で表されるエステル化合物は、例えば、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物との縮合反応により製造される。
【0054】
【0055】
式(2)において、破線の結合軸は、この結合軸が置換したC1上のOH基の立体配置、及びC2上のOH基の立体配置に制限がないことを示す。C1およびC2にそれぞれ結合しているOH基の相対配置はsyn、anti、またはsynとantiの混合のいずれかを示す。OH基の相対配置はsynであることが好ましい。
【0056】
【0057】
式(3)において、R11~R15は、互いに独立して水素原子、炭素原子数1~20の置換または無置換のアルキル基、炭素原子数6~20の置換または無置換のアリール基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、またはハロゲン原子である。また、R11~R15のうち隣接する任意の2つの基が結合して環を形成していてもよい。Xはハロゲン原子である。
【0058】
式(3)における、R11~R15としては、上記式(A1)および(A2)における、R1~R10と同様のものが挙げられる。
【0059】
式(3)で表される化合物の具体例としては、ベンゾイルクロリド、2-メチルベンゾイルクロリド、3-メチルベンゾイルクロリド、4-メチルベンゾイルクロリド、2-エチルベンゾイルクロリド、3-エチルベンゾイルクロリド、4-エチルベンゾイルクロリド、4-ブチルベンゾイルクロリド、4-へキシルベンゾイルクロリド、4-デカニルベンゾイルクロリド、4-イソプロピルベンゾイルクロリド、4-ターシャリーブチルベンゾイルクロリド、2,4-ジメチルベンゾイルクロリド、3,5-ジメチルベンゾイルクロリド、2,4,6-トリメチルベンゾイルクロリド、2,4,6-トリイソプロピルベンゾイルクロリド、3-フェニルベンゾイルクロリド、4-フェニルベンゾイルクロリド、4-(4´-エチルフェニル)ベンゾイルクロリド、4-オクチル-4´-ビフェニルカルボン酸クロリド、4-メトキシベンゾイルクロリド、4-ヘプチルオキシベンゾイルクロリド、4-デカニルオキシベンゾイルクロリド、2-クロロベンゾイルクロリド、3-クロロベンゾイルクロリド、4-クロロベンゾイルクロリド、2-ブロモベンゾイルクロリド、3-フロロベンゾイルクロリド、2,4-ジクロロベンゾイルクロリド、2,6-ジクロロベンゾイルクロリド、3,5-ジクロロベンゾイルクロリド、2,6-ジフロロベンゾイルクロリド、1-ナフトイルクロリド、2-ナフトイルクロリド、ベンゾイルブロミド、2-メチルベンゾイルブロミド、3-メチルベンゾイルブロミド、4-メチルベンゾイルブロミド、2-エチルベンゾイルブロミド、3-エチルベンゾイルブロミド、4-エチルベンゾイルブロミド、ベンゾイルヨージド等の化合物が挙げられる。
これらのうち、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、4-メチルベンゾイルクロリド、4-ブチルベンゾイルクロリド、4-へキシルベンゾイルクロリド、4-イソプロピルベンゾイルクロリド、4-ターシャリーブチルベンゾイルクロリド、3,5-ジメチルベンゾイルクロリド、2,4,6-トリメチルベンゾイルクロリド、2,4,6-トリイソプロピルベンゾイルクロリド、4-フェニルベンゾイルクロリド、4-オクチル-4´-ビフェニルカルボン酸クロリド、4-メトキシベンゾイルクロリド、4-クロロベンゾイルクロリド、2,4-ジクロロベンゾイルクロリドが好ましく、ベンゾイルクロリド、4-ブチルベンゾイルクロリド、3,5-ジメチルベンゾイルクロリド、2,4,6-トリメチルベンゾイルクロリド、2,4,6-トリイソプロピルベンゾイルクロリド、4-フェニルベンゾイルクロリドがより好ましく用いられる。
【0060】
式(1)で表されるエステル化合物は、上述の通り、例えば、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物と、の縮合反応により製造される。
反応条件としては、特に限定されるわけではないが、反応溶媒はクロロホルム等のハロゲン系溶媒や炭化水素系溶媒がよく用いられ、反応温度は40℃以下、反応時間は20~30時間程度で反応が完結する。
【0061】
上記反応の具体例としては、反応を促進するために3級アミン類を添加してもよい。
3級アミン類としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。これらのうち、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジンが好ましく用いられる。
反応終了後、得られた反応物を水で洗うことにより副生した塩類を除去し、必要に応じてシリカゲルカラム等で精製することで、式(1)で表される化合物を得ることができる。なお、式(1)で表されるエステル化合物の製造方法はこの方法に限定されるものではない。
【0062】
本発明の式(1)中、C1およびC2にそれぞれ結合しているA1とA2の相対配置がsynのエステル化合物は、例えば、式(2)中、C1およびC2にそれぞれ結合している二つのOH基の相対配置がsynのジオール化合物と、式(3)で表される化合物との縮合反応により製造することができる。ここで、式(2)中の、C1およびC2にそれぞれ結合している二つのOH基の相対配置がsynのジオール化合物は、例えば、式(2)で表されるジオール化合物のうち、相対配置がsynのジオール化合物のみをアセタール化して単離後、アセタール部を脱離させることにより製造することができる。ただし、式(1)中、C1およびC2にそれぞれ結合しているA1とA2の相対配置がsynのエステル化合物の製造方法はこの方法に限定されるわけではない。
<熱可塑性樹脂用可塑剤>
【0063】
本発明の熱可塑性樹脂用可塑剤は、上記式(1)で表されるエステル化合物を含む。当該熱可塑性樹脂用可塑剤は、必要に応じて他の成分を含んでもよい。
【0064】
上記式(1)で表されるエステル化合物を、熱可塑性樹脂用の可塑剤として用いることにより、熱可塑性樹脂に対して、可塑剤としての高い性能を発現する。
<熱可塑性樹脂組成物>
【0065】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記式(1)で表されるエステル化合物と熱可塑性樹脂とを含み、必要に応じて他の成分を含んでもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂の具体例としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、等の汎用熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、環状ポリオレフィン、等の熱可塑性エンジニアリングプラスチック、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、等の熱可塑性スーパーエンジニアリングプラスチック酢酸、セルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、等の熱可塑性セルロース系樹脂、ポリ-L-乳酸、ポリ-D-乳酸、ポリ-DL-乳酸、等のポリ乳酸系樹脂が挙げられる。
【0066】
ただし、熱可塑性樹脂は、これらに限定されるものではない。
熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよいし、複数を併用して用いてもよい。
【0067】
上記式(1)で表されるエステル化合物と熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、エステル化合物と熱可塑性樹脂との両者を溶解可能な溶媒に溶解させて均一化した後に、溶媒を除去する方法や、エステル化合物と熱可塑性樹脂とを溶融混合し、均一化する方法が挙げられる。
【0068】
溶媒に溶解させて均一化する方法としては、具体的には、上記式(1)で表されるエステル化合物と熱可塑性樹脂のそれぞれを適量秤量して容器に装入し、そこに溶媒を装入して撹拌し溶解する。必要に応じて加熱して撹拌してもよい。溶解したことを確認した後、エバポレーター等を用いて溶媒を留去させ、上記式(1)で表されるエステル化合物と熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0069】
十分に溶媒を除けない場合は、得られた熱可塑性樹脂組成物を粉砕して真空乾燥機等で溶媒を除去してもよい。
【0070】
溶融混合し均一化する方法としては、具体的には、上記式(1)で表されるエステル化合物と熱可塑性樹脂のそれぞれを適量秤量して容器に装入し、加熱混合して均一化した後、冷却して目的の熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。この際、その後に熱可塑性樹脂組成物を取り扱いやすくするために、押し出し機等を用いてペレット化してもよい。
【0071】
ただし、該熱可塑性樹脂組成物の製造方法はこれら方法に限定されるわけではない。
【0072】
上記式(1)で表されるエステル化合物と熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物における、エステル化合物の組成比としては、熱可塑性樹脂組成物全体に対して該エステル化合物が0.01質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0073】
エステル化合物の組成比が50質量%以下であると、熱可塑性樹脂組成物のメルトフローレートが高くなりすぎない範囲に保持することができる。逆に、エステル化合物の組成比が0.01質量%以上であると、熱可塑性樹脂組成物のメルトフローレートの低減効果、即ち、可塑機能が良好に発現する。エステル化合物の組成比のより好ましい範囲は、0.01質量%以上30質量%以下であり、更に好ましい範囲は0.01質量%以上20質量%以下である
【0074】
本発明の式(1)で表されるエステル化合物と熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物は、該樹脂よりもメルトフローレートが高くなるため、メルトフローレートが低く成形が困難な樹脂の場合は、上記式(1)で表される本発明のエステル化合物は有用な可塑剤となる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の実施形態を実施例により更に具体的に説明するが、本実施形態はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]:式(2)の化合物(C1およびC2にそれぞれ結合しているOH基の相対配置はsynとantiの混合)の合成
200mLのナスフラスコ中に水酸化ナトリウム8.00g、水20mLを装入し撹拌した(溶解)。発熱したため水浴で冷却した。室温に戻した後、2-アセチルシクロヘキサノン14.02gを装入し撹拌した(固化)。次いでエタノール50mLを装入し撹拌した(溶解、オレンジ色透明液)。これを氷浴で冷却し撹拌。ここに水素化ホウ素ナトリウム5.67gを徐々に装入した。1時間撹拌後室温に戻し更に2時間撹拌した。再度氷浴で冷却し、36%塩酸25gをゆっくり滴下しながら中和した(発泡、均一透明溶液)。氷浴下で更に10分撹拌した(pH=7)。飽和食塩水40mLを加え混合し、分液漏斗に移液し、酢酸エチル40mLで3回抽出を行った。無水硫酸マグネシウムを用いて酢酸エチル層を脱水後、濃縮し、目的物である化合物7.74gを得た(収率:53.7%)。
[実施例2]:式(6)で表される化合物の合成
【0076】
200mLのナス型フラスコ中に塩化ベンゾイル9.03g(64.2mmol)、クロロホルム50mL、及び実施例1で合成した式(2)(C1およびC2にそれぞれ結合しているOH基の相対配置はsynとantiの混合)の化合物3.86g(26.8mmol)を装入し、窒素雰囲気下で撹拌した。均一溶液になったところで、5℃以下に冷却後、4-ジメチルアミノピリジン0.94g(7.7mmol)を装入した。均一溶液になったところで、トリエチルアミン7.80g(77.0mmol)を90分かけて滴下装入した。室温に戻した後、22時間撹拌した。
【0077】
この反応液を分液漏斗に移液した後、蒸留水100mLを加え振とうしてから静置し、生じた2層のうち上層を除き、下層を取り出した。この操作(水洗い作業)を更に2回繰り返した。取り出した下層に無水硫酸マグネシウム約20gを加え振とうした後、ろ過して固体成分を除き、得られたろ過液を濃縮して無色透明の液を得た。
この液を、展開溶媒としてn-ヘキサンと酢酸エチルを用いてシリカゲルカラム精製を行い、下記式(6)で表されるエステル化合物5.65g(16.0mmol)を得た(収率:59.8%)。
【0078】
【0079】
この化合物の元素分析値(単位:原子%)は下記に示す通りであった。なお、C%は化合物中の炭素原子の割合を表し、H%は化合物中の水素原子の割合を表す。
【0080】
C % H %
--------------------
計算値: 74.98 6.86
実測値: 74.93 6.88
--------------------
また、マススペクトルの結果は下記の通りであった。
【0081】
---------
計算値:352
実測値:352
---------
また、1H-NMR(500MHz、溶媒CDCl3)は以下の通りとなった。
δ 1.23-1.40ppm(m,3H),1.35-1.97ppm(m,8H),2.15-2.28ppm(m,1H),4.92-5.22ppm(m,1H),5.34-5.51ppm(m,1H),7.31-7.48ppm(m,4H),7.48-7.59ppm(m,2H),7.90-8.12ppm(m,4H)
[実施例3]:式(60)で表される化合物の合成
200mLナスフラスコ中に実施例1で合成した式(2)(C1およびC2にそれぞれ結合しているOH基の相対配置はsynとantiの混合)の化合物6.66g(46.3mmol)、DMF40mLを装入し室温で撹拌した(溶解した)。撹拌停止後、200℃オーブンで12時間乾燥させたモレキュラーシーブ10gをナスフラスコ中に装入し、蓋をして3日間静置した。別の200mLナスフラスコ中にこの溶液の上澄み液を移液し、そこにp-トルエンスルホン酸0.99gを加え窒素雰囲気下で撹拌した(均一液)。ここに2,2-ジメトキシプロパン20.0g(192mmol)を1時間かけて滴下装入した。7時間撹拌後に飽和食塩水80mLを加えて撹拌し、分液漏斗に移液後、酢酸エチル30mLで3回抽出した。得られた酢酸エチル溶液を蒸留水50mLで2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、n-ヘキサン/酢酸エチル系でシリカゲルカラム精製を実施し、目的物である下記式(60)で表される化合物1.50g(8.15mmol)を得た(収率17.6%)。
【0082】
【0083】
[実施例4]:式(2)の化合物(C1およびC2にそれぞれ結合しているOH基の相対配置がsyn)の合成
200mLナスフラスコ中に実施例3で合成した式(60)で表される化合物1.50g(8.15mmol)、3N塩酸20gを装入し室温で15時間撹拌した。2N水酸化ナトリウム水溶液で中和を行いpH=7にした。分液漏斗に移液した後、酢酸エチル20mLで3回抽出を行った。得られた酢酸エチル溶液を無水硫酸マグネシウムで脱水後、濃縮し、目的物である式(2)の化合物(C1およびC2にそれぞれ結合しているOH基の相対配置がsyn)1.10g(7.64mmol)を得た(収率93.0%)。
[実施例5]:式(33)で表される化合物の合成
200mLナスフラスコ中に実施例4で合成した式(2)で表される化合物(C1およびC2にそれぞれ結合しているOH基の相対配置がsyn)1.10g(7.64mmol)、ベンゾイルクロリド2.58g(18.3mmol)、クロロホルム30mLを装入し撹拌した(均一液)。5℃以下に冷却後、4-ジメチルアミノピリジン0.26g(2.20mmoL)を装入した(溶解)。滴下漏斗を用いてトリエチルアミン2.22g(22.0mmoL)を30分かけて滴下装入した(黄変)。滴下後、滴下漏斗に付着したトリエチルアミンをクロロホルム10mLで洗い流しフラスコに装入した。室温に戻し15時間撹拌後、分液漏斗に移液し水30mLで3回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水後、ろ過、濃縮し、黄色高粘度液2.7gを得た。この液を展開溶媒n-ヘキサン/酢酸エチル系でシリカゲルカラム精製を行い、目的物である式(33)で表される化合物2.38g(6.76mmol)を得た(収率88.4%)。
【0084】
【0085】
この化合物の元素分析値(単位:原子%)は下記に示す通りであった。なお、C%は化合物中の炭素原子の割合を表し、H%は化合物中の水素原子の割合を表す。
【0086】
C % H %
--------------------
計算値: 74.98 6.86
実測値: 74.95 6.87
--------------------
また、マススペクトルの結果は下記の通りであった。
【0087】
---------
計算値:352
実測値:352
---------
また、1H-NMR(500MHz、溶媒CDCl3)は以下の通りとなった。
δ 1.28-1.39ppm(m,3H),1.40-1.95ppm(m,8H),2.10-2.28ppm(m,1H),4.93-5.08ppm(m,0.3H),5.08-5.23(m,0.7),5.39-5.48ppm(m,0.3H),5.48-5.52ppm(m,0.7H),7.34-7.49ppm(m,4H),7.50-7.60ppm(m,2H),7.98-8.14ppm(m,4H)
[実施例6]:式(6)で表される化合物の可塑剤としての使用
200mLナス型フラスコ中にポリプロピレンペレット(熱可塑性樹脂;株式会社プライムポリマー製J105)4.5g、実施例2で合成した式(6)で表される化合物0.50g、キシレン50.0gを装入し115℃~120℃で撹拌し均一液にした。この溶液を濃縮してキシレンを除いた後、得られた固体を粉砕し、更に濃縮してキシレンを除き、ポリプロピレンと式(6)で表される化合物の混合物粉体(熱可塑性樹脂組成物)を得た。
【0088】
次に、株式会社島津製作所製フローテスター(CFT-500D)を使用し、この混合物のメルトフローレートを測定したところ、585g/10minであった。
【0089】
測定条件は、以下の通りである。
<測定条件>
・測定温度:200℃
・シリンダ圧力:4.903×106Pa
・予熱時間:300秒
・ダイ穴径:1.0mm
・ダイ長さ:10.0mm
・せん断応力:1.226×105Pa
[実施例7]:式(6)で表される化合物の可塑剤としての使用
ポリプロピレンペレット(熱可塑性樹脂;株式会社プライムポリマー製J105)4.95g、及び、式(6)で表される化合物0.05gを使用した以外は、実施例6に準じて混合物粉体(熱可塑性樹脂組成物)を得、更に試験を行った。
【0090】
得られた混合物のメルトフローレートは、214g/10minであった。メルトフローレートは、実施例6に記載の測定条件に準じて測定した。
[実施例8]:式(6)で表される化合物の可塑剤としての使用
ポリプロピレンペレット(熱可塑性樹脂;株式会社プライムポリマー製J105)4.98g、及び、式(6)で表される化合物0.02gを使用した以外は、実施例6に準じて混合物粉体(熱可塑性樹脂組成物)を得、更に試験を行った。
【0091】
得られた混合物のメルトフローレートは、201g/10minであった。メルトフローレートは、実施例6に記載の測定条件に準じて測定した。
[比較例1]
200mLのナス型フラスコ中にポリプロピレンペレット(株式会社プライムポリマー製J102.0g、キシレン20.0gを装入し115~120℃で撹拌し均一溶液にした。この溶液を濃縮してキシレンを除いた後、得られた固体を粉砕し、更に濃縮してキシレンを除き、ポリプロピレンの粉体を得た。
【0092】
実施例2の方法に準拠し、このポリプロピレン粉体のメルトフローレートを測定したところ190g/10minであった。メルトフローレートは、実施例6に記載の測定条件に準じて測定した。
【0093】
本比較例で使用したポリプロピレンのメルトフローレートは190g/10minであるのに対し、実施例6~8と比較例1の対比より、式(6)の化合物を加えるとその量に応じてメルトフローレートが向上することが分かった。この結果から、式(6)で表される化合物は、可塑剤としての高い性能を有しているといえる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、例えば熱可塑性樹脂用の可塑剤として好適に利用される。