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▶ 黒崎播磨株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】コークス炉用れんが積体
(51)【国際特許分類】
   C10B 29/02 20060101AFI20221214BHJP
   F27D 1/04 20060101ALI20221214BHJP
   F27D 1/16 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
C10B29/02
F27D1/04 A
F27D1/16 Q
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019061248
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020158689
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】首藤 翔
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】梶原 定二
(72)【発明者】
【氏名】田尻 雅敬
(72)【発明者】
【氏名】西村 昂希
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-116144(JP,A)
【文献】特開2016-222758(JP,A)
【文献】特開昭54-104404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 29/02
F27D 1/04
F27D 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルタルを介して複数のれんがを接合してなるコークス炉用れんが積体であって、
通し目地とならないようにれんがが2段以上積み上げられているとともに、各段が2列以上の配列となっており、
各段のコーナー部のれんが欠落部に、各段全体の平面視が長方形となるようにスペーサーが装着され、各段の側面にバンドが巻かれて締め付けられている、コークス炉用れんが積体。
【請求項2】
バンドはれんがの上部と下部にそれぞれ掛かるように巻かれている、請求項1に記載のコークス炉用れんが積体。
【請求項3】
コークス炉のピラーウォールに使用される、請求項1又は請求項2に記載のコークス炉用れんが積体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉で使用されるれんが積体に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉では、れんがをライニングする際に、作業能率向上のためにあらかじめ複数のれんがをモルタル目地で接合したれんが積体が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、補修すべき壁体を複数の積層部分に分け、各積層部分と一致する形状に複数のれんがを組み合わせた耐火物集合体(れんが積体)を炉外で形成し、コークス炉の壁体補修部を解体除去した後、前記耐火物集合体で壁体を築造する補修方法が開示さている。
しかし、特許文献1の耐火物集合体は、コークス炉内に搬入して施工する際、その下面を、下側に配置される耐火物とモルタルを介して接合しなければならないため、吊り上げるときに下面全体を保持することが不可能である。一方、この耐火物集合体を例えば側面にフックを設けて吊り上げる場合には、複数の小形状の耐火物(れんが)が組み合わせられているため、耐火物間のモルタル目地が開いてしまい、耐火物集合体が変形したり、耐火物が脱落する可能性もある。
【0004】
また、特許文献2には、プレライニングブロック(れんが積体)の表面において目地部を含むように有機系のコーティング層を形成することが開示されている。このように有機系のコーティング層を形成することで、目地開きの防止効果は高くなるものの、高コストになる問題がある。
【0005】
また、特許文献3には、大型ブロック(れんが積体)の側面にバンドを巻くことが開示されている。
【0006】
ところで、コークス炉において、れんがどうしの間にはモルタル目地が介在するが、この目地に亀裂が発生しやすく、目地に亀裂が発生するとガスリークが発生する問題がある。このため、コークス炉ではれんが間の目地が通し目地にならないようにれんがが配列されている。ここで通し目地とは、れんが間の縦の目地が直線状に連続することをいう。そこで、前述のようにれんが積体を使用して通し目地を作らないようにコークス炉を築炉しようとすると、れんが積体のコーナー部(端部)が凹凸になる。
【0007】
一方、前述のようにれんが積体の炉内への搬入時などの吊り上げ時に、目地が開かないように特許文献3で開示されているようにバンドを使用する場合にはバンドを強く締め付けなければならない。ところが、れんが積体のコーナー部(端部)が凹凸になっている場合、れんが積体の側面にバンドを巻いて締め付けると、目地が開いたり、れんががずれてしまう問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-19968号公報
【文献】特開2016-223647号公報
【文献】特開2016-222758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、側面にバンドを巻いても目地の開きやれんがのずれを抑制することができるコークス炉用れんが積体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、モルタルを介して複数のれんがを通し目地とならないように2段以上積み上げたコークス炉用れんが積体において、各段を2列以上の配列としたときに生じる各段のコーナー部のれんが欠落部にスペーサーを挿入して側面にバンドを巻いて締め付けることで、れんが間の目地の開きやずれを抑制できることを知見した。
【0011】
すなわち、本発明の一観点によれば、次のコークス炉用れんが積体が提供される。
モルタルを介して複数のれんがを接合してなるコークス炉用れんが積体であって、
通し目地とならないようにれんがが2段以上積み上げられているとともに、各段が2列以上の配列となっており、
各段のコーナー部のれんが欠落部に、各段全体の平面視が長方形となるようにスペーサーが装着され、各段の側面にバンドが巻かれて締め付けられている、コークス炉用れんが積体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、目地開きやれんがのずれが生じにくいコークス炉用れんが積体を低コストで提供することができる。また、本発明のコークス炉用れんが積体を使用することで、コークス炉のガスリークのリスクを低減することができる。さらに、れんがの施工直後にモルタルが十分硬化していない段階でもれんが積体を移動することができるため、一つの作業場で多くのれんが積体を製造することができ、作業能率が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1a】本発明の一実施例に係るコークス炉用れんが積体の正面図。
図1b図1aに示すコークス炉用れんが積体の右側面図。
図1c図1aに示すコークス炉用れんが積体の4段目のみの平面図。
図1d図1aに示すコークス炉用れんが積体の3段目のみの平面図。
図1e図1aに示すコークス炉用れんが積体の2段目のみの平面図。
図1f図1aに示すコークス炉用れんが積体の1段目のみの平面図。
図2図1dにおいてスペーサーを使用していない状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を実施例に基づき説明する。なお、以下の説明では「コークス炉用れんが積体」を単に「れんが積体」という。
【0015】
図1a~fに示すれんが積体1は、コークス炉のピラーウォール用のれんが積体で、両側が4段の階段状になっており、各段は1列目19と2列目20の2列の配列となっている。最も下になる1段目には9個のれんが11、2段目には7個のれんが11、3段目には5個のれんが11、4段目には3個のれんが11がそれぞれ使用され、れんが11どうしはモルタル14で接合されている。
なお、れんが11間のモルタル目地厚みが3mmで設計されている。また、各れんがには凸ダボ15と凹ダボ16とを有しており、これらのダボどうしが嵌合して接合しているため、水平目地は直線状になっていない。
【0016】
一方、縦の目地は、図1a及び図1bに示すように、通し目地にならないように各れんがが配置されており、その結果、各段のコーナー部(端部)は凹凸になっている。すなわち、各段のコーナー部(2列目20の両側)はれんが欠落部となっており、このれんが欠落部にスペーサー21が装着されている。そして、各段のれんがの側面にはバンド2が巻かれて締め付け固定されている。
【0017】
具体的に説明すると、図1cは最上段である4段目のみの平面図であるが、2列目20のれんが11の両側がれんが欠落部になっているため、そのれんが欠落部に木製のスペーサー21を装着して4段目のれんがの側面をバンド2で巻いて締め付けている。スペーサー21の形状は、図1cにおいて左側のスペーサー21は平面視がL型をした柱状で、右側のスペーサー21は平面視が長方形の直方体状で、これら2個のスペーサー21は、4段目のれんが全体の平面視が長方形になるように配置されている。
【0018】
3段目~1段目を示す図1d~図1fにおいても図1cと同様に、2列目20のれんが11の両側のれんが欠落部に直方体状のスペーサー21を装着して各段のれんがの側面をバンド2で巻いて締め付けている。
【0019】
このれんが積体1は、コークス炉内において、これと同じれんが積体1の1段目の1列目19の端部のどうしが揃うように所定の間隔をあけて配置し、これら2つのれんが積体どうしのスペースには人手によってれんが積作業を行うことでピラーウォールを構築する。これにより、ピラーウォール全体で通し目地のないようにれんがを配列することができる。このようにれんが積体を設計することで、コークス炉内の施工体を通し目地のない状態とすることができる。なお、れんが積体1を炉内へ搬入する際には、最下段である1段目のれんがを含むように長辺側を挟持して炉内へ搬入することができる。そして、バンド2及びスペーサー21は、れんが積体1を炉内へ搬入後、モルタルを塗布する前にすべて外す。
【0020】
このように本発明では、各段のコーナー部のれんが欠落部にスペーサーを装着してバンドを締め付ける。これにより、バンドによる力でモルタル目地が開いたりれんががずれたりすることを抑制することができる。
これに対して、例えば3段目を示す図1dにおいてスペーサー21を使用せずにれんがの側面にバンド2を巻いて締め付けた場合、図2に示すように、1列目の両端部のれんが11に矢印方向への回転モーメントが働き、この力によってれんがの目地が開いたり、れんがが矢印方向へずれたりしてしまう。
【0021】
さらに、モルタルが十分乾燥して強度が発現するまでには、室温で1週間程度要するが、スペーサーを入れることで、バンドで強く締めることができるので、モルタルの強度が十分発現する前にれんが積体を移動することができ、作業場で次のれんが積体の製造にすぐに取り掛かることが可能となる。このため作業能率を大幅に向上することができる。
すなわち、次のれんが積体を製造するために作業場では、定盤、作業台、自動化の場合にはれんが積ロボットなどから、れんが積体を移動する必要があるが、本発明では、モルタルの強度が発現する前にれんが積体を移動することができることから、作業場で次のれんが積体の製造にすぐに取り掛かることが可能となり、作業能率が大幅に向上する。
【0022】
なお、本実施例ではバンドはれんがの中央部に巻くようにしたが、れんがの上部と下部にそれぞれ掛かるように巻くことで、れんが積体の安定性をより向上することができる。また、れんが積体を運搬用のパレットと一体化するために、適宜箇所にバンドを巻くこともできる。
また、本実施例ではれんが積体の各段が2列の配列であったが、3列以上の配列であっても適用可能である。
また、れんが積体やれんが積体に使用するれんがの大きさに特に制約はなく、れんがが大きな場合には公知のれんが把持装置を利用することができる。
また、本実施例ではれんが積体の両側を階段状としたが、コークス炉のバックステーと接する部位に設置されるれんが積体では片側のみを階段状とすることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 れんが積体
2 バンド
11 れんが
12 溝
14 モルタル
15 凸ダボ
16 凹ダボ
19 1列目
20 2列目
21 スペーサー
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図2