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特許7194066演算モデル生成システム、摩耗量推定システムおよび演算モデル生成方法
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  • 特許-演算モデル生成システム、摩耗量推定システムおよび演算モデル生成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】演算モデル生成システム、摩耗量推定システムおよび演算モデル生成方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20221214BHJP
   B60C 11/24 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B60C19/00 Z
B60C11/24 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019069249
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020164126
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】石坂 信吉
(72)【発明者】
【氏名】中島 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】目黒 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉成 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】桑原 正
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-034826(JP,A)
【文献】特開2018-158722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0231932(US,A1)
【文献】特開2007-153034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの温度および圧力を含むタイヤデータを取得するタイヤ情報取得部と、
前記タイヤが装着された車両の位置データを取得する位置情報取得部と、
温度、圧力および位置に基づいてタイヤ摩耗量を算出する演算モデルを有し、前記タイヤデータおよび前記タイヤデータに対応する前記位置データを入力して前記演算モデルにより前記タイヤの溝毎の摩耗量を算出する摩耗量算出部と、
前記タイヤで計測される摩耗量と前記摩耗量算出部により算出された摩耗量とを比較し、前記演算モデルを更新する演算モデル更新部と、
を備えることを特徴とする演算モデル生成システム。
【請求項2】
前記タイヤ情報取得部は、タイヤの温度および圧力を取得した時刻を含む前記タイヤデータを取得し、
前記位置情報取得部は、車両の位置を取得した時刻を含む前記位置データを取得することを特徴とする請求項1に記載の演算モデル生成システム。
【請求項3】
前記タイヤデータおよび前記位置データは所定の時間差以内で取得されることを特徴とする請求項2に記載の演算モデル生成システム。
【請求項4】
前記摩耗量算出部は、前記タイヤデータおよび前記位置データのうち少なくとも一方について時刻に基づいてデータ補間することを特徴とする請求項2に記載の演算モデル生成システム。
【請求項5】
前記タイヤデータは、前記タイヤに配設された加速度センサで計測される加速度を含み、
前記摩耗量算出部は、前記加速度も含めて前記演算モデルに入力してタイヤ摩耗量を算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の演算モデル生成システム。
【請求項6】
前記摩耗量算出部は、前記位置データ又は気象データも含めて前記演算モデルに入力してタイヤ摩耗量を算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の演算モデル生成システム。
【請求項7】
タイヤの温度および圧力を含むタイヤデータを取得するタイヤ情報取得部と、
前記タイヤが装着された車両の位置データを取得する位置情報取得部と、
温度、圧力および位置に基づいてタイヤ摩耗量を算出する演算モデルを有し、前記タイヤデータおよび前記タイヤデータに対応する前記位置データを入力して前記演算モデルにより前記タイヤの溝毎の摩耗量を算出する摩耗量算出部と、
を備えることを特徴とする摩耗量推定システム。
【請求項8】
タイヤの温度および圧力を含むタイヤデータを取得するタイヤ情報取得ステップと、
前記タイヤが装着された車両の位置データを取得する位置情報取得ステップと、
温度、圧力および位置に基づいてタイヤ摩耗量を算出する演算モデルに基づき、前記タイヤデータおよび前記タイヤデータに対応する前記位置データを入力して前記演算モデルにより前記タイヤの溝毎の摩耗量を算出する摩耗量算出ステップと、
前記タイヤで計測される摩耗量と前記摩耗量算出ステップにより算出された摩耗量とを比較し、前記演算モデルを更新する演算モデル更新ステップと、
を備えることを特徴とする演算モデル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ摩耗量の演算モデル生成システム、摩耗量推定システムおよび演算モデル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤは走行状態や走行距離等に応じて摩耗が進行する。また昨今ではタイヤの圧力および温度を計測するセンサをタイヤに取り付け、計測した圧力および温度を表示する装置などが製品化されている。
【0003】
特許文献1には従来のタイヤ摩耗推定システムが記載されている。このタイヤ摩耗推定システムは、第1の予測変数を生成するためにタイヤに取り付けられた少なくとも1つのセンサと、第2の予測変数に関するデータを記憶するルックアップテーブルおよびデータベースの少なくとも一方と、少なくとも1つの乗物影響を含む予測変数のうちの一方と、予測変数を受け取り、少なくとも1つのタイヤに関する推定摩耗率を生成するモデルと、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-158722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のタイヤ摩耗推定システムは、例えばホイール位置およびドライブトレーンを乗物影響として用いてタイヤ摩耗を推定する。ホイール位置およびドライブトレーンによるタイヤ摩耗は、車両のタイプによって影響の多寡があり、例えばトラックなどの大型車両では必ずしも影響が大きい要因ではないことから、タイヤ摩耗の推定には改善の余地があることに本発明者は気づいた。すなわち、タイヤ摩耗の推定において、車両の走行時における旋回などの要因や、更に摩耗推定における各入力データの取得タイミングを考慮することが、より正確にタイヤ摩耗を推定する上で必要である。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タイヤ摩耗量を正確に推定することができる演算モデル生成システム、摩耗量推定システムおよび演算モデル生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は演算モデル生成システムである。演算モデル生成システムは、タイヤの温度および圧力を含むタイヤデータを取得するタイヤ情報取得部と、前記タイヤが装着された車両の位置データを取得する位置情報取得部と、温度、圧力および位置に基づいてタイヤ摩耗量を算出する演算モデルを有し、前記タイヤデータおよび前記タイヤデータに対応する前記位置データを入力して前記演算モデルにより前記タイヤの摩耗量を算出する摩耗量算出部と、前記タイヤで計測される摩耗量と前記摩耗量算出部により算出された摩耗量とを比較し、前記演算モデルを更新する演算モデル更新部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様は摩耗量推定システムである。摩耗量推定システムは、タイヤの温度および圧力を含むタイヤデータを取得するタイヤ情報取得部と、前記タイヤが装着された車両の位置データを取得する位置情報取得部と、温度、圧力および位置に基づいてタイヤ摩耗量を算出する演算モデルを有し、前記タイヤデータおよび前記タイヤデータに対応する前記位置データを入力して前記演算モデルにより前記タイヤの摩耗量を算出する摩耗量算出部と、を備える。
【0009】
本発明の別の態様は演算モデル生成方法である。演算モデル生成方法は、タイヤの温度および圧力を含むタイヤデータを取得するタイヤ情報取得ステップと、前記タイヤが装着された車両の位置データを取得する位置情報取得ステップと、温度、圧力および位置に基づいてタイヤ摩耗量を算出する演算モデルに基づき、前記タイヤデータおよび前記タイヤデータに対応する前記位置データを入力して前記演算モデルにより前記タイヤの摩耗量を算出する摩耗量算出ステップと、前記タイヤで計測される摩耗量と前記摩耗量算出ステップにより算出された摩耗量とを比較し、前記演算モデルを更新する演算モデル更新ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、タイヤ摩耗量を正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る演算モデル生成システムの機能構成を示すブロック図である。
図2】演算モデルの学習について説明するための模式図である。
図3】演算モデル生成システムによる演算モデル生成の手順を示すフローチャートである。
図4】実施形態2に係る摩耗量推定システムの機能構成を示すブロック図である。
図5】変形例に係る摩耗量推定システムの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図1から図5を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る演算モデル生成システム100の機能構成を示すブロック図である。演算モデル生成システム100は、タイヤ10に配設されたセンサ20によって計測された空気圧および温度、並びに位置情報取得部32によって取得した位置情報に基づいて、演算モデル33bによってタイヤ摩耗量を算出する。演算モデル生成システム100は、演算モデルとして例えばニューラルネットワーク等の学習型モデルを用い、タイヤ10において実際に計測したタイヤ摩耗量を教師データとし、演算の実行と演算モデルの更新による学習を繰り返すことによって演算モデル33bの精度を高める。摩耗量推定装置30は、演算モデルに学習させた後、タイヤ摩耗量を推定する装置として機能する。
【0014】
演算モデル生成システム100は、ある仕様のタイヤ10について、タイヤ10(ホイールを含む)を装着した車両の走行によって演算モデルの学習を実行することができる。タイヤの仕様には、例えばメーカー、商品名、タイヤサイズ、タイヤ幅、扁平率、タイヤ強度、静的剛性、動的剛性、タイヤ外径、ロードインデックス、製造年月日など、タイヤの性能に関する情報が含まれる。
【0015】
演算モデル生成システム100は、タイヤ10の空気圧および温度に加えてタイヤ10で発生している加速度の計測データを入力とする演算モデル33bを構築するものであってもよい。タイヤ10で発生している加速度は、例えば、タイヤ10の径方向、軸方向および前後方向の3軸加速度であり、この3軸加速度を演算モデル33bに入力する。方向成分を出力する形式としてもよい。また、例えばタイヤ10の径方向および軸方向等の2軸加速度を演算モデル33bに入力するようにしてもよい。
【0016】
タイヤ10には、圧力ゲージ21、温度センサ22および加速度センサ23が配設されている。圧力ゲージ21および温度センサ22は、例えばタイヤ10のエアバルブに配設されており、それぞれタイヤ10の空気圧および温度を計測する。温度センサ22は、タイヤ10のインナーライナー等に配設されていてもよい。加速度センサ23は、例えばタイヤ10またはホイール等に配設されており、タイヤ10で発生している加速度を計測する。尚、タイヤ10は、各タイヤを識別するために、例えば固有の識別情報が付与されたRFID等が取り付けられていてもよい。
【0017】
摩耗量推定装置30は、タイヤ情報取得部31、位置情報取得部32、摩耗量算出部33、演算モデル更新部34およびを有する。摩耗量推定装置30は、例えばPC(パーソナルコンピュータ)等の情報処理装置である。摩耗量推定装置30における各部は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0018】
タイヤ情報取得部31は、無線通信等により圧力ゲージ21、温度センサ22および加速度センサ23からタイヤ10で計測された空気圧、温度、加速度および計測した時刻を含むタイヤデータを取得し、摩耗量算出部33へ出力する。位置情報取得部32は、GPS受信機等によって算出されるタイヤ10が装着された車両の位置、および算出した時刻を含む位置データを取得し、摩耗量算出部33へ出力する。
【0019】
摩耗量算出部33は、前処理部33aおよび演算モデル33bを有する。前処理部33aは、タイヤ情報取得部31により取得したタイヤデータ、および位置情報取得部32により取得した位置データについて、同じ時刻または所定の時間差内のデータを対応付ける。また、前処理部33aは、例えば取得したタイヤデータに含まれる時刻に相当する時刻における車両の位置を補完して求める。
【0020】
また、前処理部33aは、位置情報取得部32から入力された位置データに基づいて、車両の走行距離、速度、および旋回半径を算出する。前処理部33aは、位置情報取得部32から時々刻々に位置データを取得しており、走行開始から現在までの位置データに基づき走行距離を、位置データの時間変化に基づき速度および旋回半径を求めることができる。これに限られず、旋回半径は、ステアリング機構の舵角センサからの情報に基づいて計算してもよい。
【0021】
図2は演算モデル33bの学習について説明するための模式図である。演算モデル33bへの入力データは、空気圧、温度、および加速度を含むタイヤデータ、並びに位置データに基づき算出された走行距離、速度、および旋回半径が演算モデル33bへ入力する。入力データは、これらの他、気象データや、車両に搭載されたデジタルタコグラフのデータ、路面状況の情報を用いてもよい。気象データは、例えば走行地域の気温、降水量などを演算モデル33bへの入力データとして用いる。またデジタルタコグラフのデータは、例えば車重、速度データなどを演算モデル33bへの入力データとして用いる。また路面状況の情報は、例えば車両が走行している路面の凹凸、温度および乾湿等の状況を演算モデル33bへの入力データとして用いる。
【0022】
演算モデル33bは、例えばニューラルネットワーク等の学習型モデルを用いる。演算モデル33bは、タイヤデータ、走行距離、速度、および旋回半径等を入力層のノードへ入力し、中間層への重みづけを設けた入力層からのパスによって演算を実行する。演算モデル33bは、中間層から出力層への重みづけを設けたパスによって更に演算を行い、出力層のノードからタイヤ摩耗量を出力する。ニューラルネットワーク等の学習モデルでは、線形演算に加えて、活性化関数などを用いて非線形演算を実行するようにしてもよい。
【0023】
演算モデル更新部34は、演算結果としてのタイヤ摩耗量と教師データとを比較して演算モデル33bを更新する。演算モデル更新部34は、摩耗量比較部34aおよび更新処理部34bを有する。摩耗量比較部34aは、演算モデル33bによって算出されたタイヤ摩耗量を、タイヤ計測装置40によって計測された教師データとしてのタイヤ摩耗量と比較し、誤差を更新処理部34bへ出力する。
【0024】
更新処理部34bは、演算モデル33bによって算出された摩耗量の誤差に基づいて、演算モデル上のパスの重みづけを更新する。演算モデル33bによるタイヤ摩耗量の演算、摩耗量比較部34aによる教師データとの比較、および更新処理部34bでの演算モデルの更新を繰り返すことによって、演算モデルの精度が高められる。
【0025】
タイヤ計測装置40は、タイヤ10のトレッドに設けられた溝の深さを直接計測する。作業者が計測器具やカメラ、目視等によって各溝の深さを計測し、タイヤ計測装置40は、作業者が入力する計測データを記憶するものであってもよい。また、タイヤ計測装置40は、機械的あるいは光学的な方法によって溝の深さを計測して記憶する専用の装置であってもよい。具体的には、タイヤ計測装置40は、例えば、タイヤの溝が4本あった場合に、幅方向の4か所で計測し、さらに同一溝の周方向、例えば120°間隔で、3か所計測する。これにより、タイヤの幅方向または周方向での偏摩耗データもタイヤ計測装置40に記憶される。なお、タイヤ計測装置40は、タイヤの摩耗で直径が変わるため、走行距離とタイヤの回転数・速度の情報から計算によって溝の深さを間接的に計測してもよい。加えて、溝の深さを直接計測するものに、走行距離とタイヤの回転数・速度から計算によって予測するもの、とを併用してもよい。
【0026】
次に演算モデル生成システム100の動作を説明する。図3は、演算モデル生成システム100による演算モデル生成の手順を示すフローチャートである。摩耗量推定装置30は、タイヤ情報取得部31によって圧力ゲージ21、温度センサ22および加速度センサ23から、タイヤ10で計測された空気圧、温度および加速度を含むタイヤデータの取得を開始する(S1)。また、位置情報取得部32によって位置データの取得を開始する(S2)。前処理部33aは、同じ時刻または所定の時間差内のタイヤデータと位置データとを各データに含まれる時刻情報に基づいて対応付け(S3)、位置データに基づいて走行距離、速度および旋回半径を算出する(S4)。
【0027】
前処理部33aはデータを所定期間に亘って蓄積する(S5)。所定期間は例えば車両の1回の走行期間としてもよいし、数日または一週間などとするが、これらに限られるものではない。前処理部33aは、所定期間経過後、演算モデル33bへ各データを入力し、タイヤ摩耗量を推定する(S6)。摩耗量比較部34aは、演算モデル33bによって算出されたタイヤ摩耗量と、タイヤ計測装置40によって計測された教師データとしてのタイヤ摩耗量とを比較する(S7)。摩耗量比較部34aは、比較の結果として演算モデル33bによって算出されたタイヤ摩耗量とタイヤ計測装置40によって計測されたタイヤ摩耗量との誤差を更新処理部34bへ出力する。
【0028】
更新処理部34bは、摩耗量比較部34aから入力されたタイヤ摩耗量の誤差に基づいて演算モデルを更新し(S8)、処理を終了する。摩耗量推定装置30は、これらの処理を繰り返すことによって、演算モデルを更新し、タイヤ摩耗量の推定の精度が高められる。
【0029】
上述のように、演算モデル生成システム100は、タイヤ10が装着された車両の位置データから車両の走行距離、速度および旋回半径等の走行状態を算出することができ、これらの走行状態はタイヤ摩耗量の推定において大きな要因となっている。演算モデル生成システム100は、タイヤ10の空気圧、温度および加速度、並びに車両の位置データに基づく走行距離、速度および旋回半径等によって、演算モデルを生成することで、タイヤ摩耗量を正確に推定する演算モデルを生成することができる。また、演算モデル生成システム100は、演算モデル33bに学習させる過程で、偏摩耗についても学習させている。このため、演算モデル生成システム100は、車両の走行距離だけでなく、位置データにも基づくことで走行経路や加減速などのデータも取得でき、各タイヤの偏摩耗の予測もできる。これにより、車両の各タイヤの偏摩耗の状況に応じてローテーションを提案することもできる。
【0030】
また演算モデル生成システム100は、演算モデル33bへの入力データについて、同じ時刻または所定の時間差内のタイヤデータと位置データとを各データに含まれる時刻情報に基づいて対応づける。例えば、タイヤデータを取得した時刻と、位置データを取得した時刻との時間差が1秒あり、車両が時速60kmで走行していたとすると、1秒の時間差のうちに車両が16.7m進んでおり、タイヤデータおよび位置データの所得タイミングがずれてしまう。
【0031】
車両の平均的な走行速度にも依存するが、タイヤデータおよび位置データは、例えば0.1秒程度の時間差内で取得されることが好ましい。演算モデル生成システム100は、同じ時刻または所定の時間差内のタイヤデータと位置データとを各データに含まれる時刻情報に基づいて対応づけることで、タイヤデータおよび位置データの取得タイミングを合わせることができる。
【0032】
また、演算モデル生成システム100は、タイヤデータおよび位置データが同じ時刻または所定の時間差内で取得できない場合、タイヤデータおよび位置データのうち少なくとも一方について、時刻に基づいてデータ補間するようにしてもよい。演算モデル生成システム100は、各データを取得した時刻に基づいてデータ補間することで、タイヤデータおよび位置データのタイミンングを合わせ、より正確にタイヤ摩耗量を推定する演算モデルを生成することができる。
【0033】
(実施形態2)
図4は、実施形態2に係る摩耗量推定システム110の機能構成を示すブロック図である。上述のように実施形態1に係る演算モデル生成システム100によってタイヤ摩耗量を推定する演算モデル33bが生成された後、演算モデル33bを備える摩耗量推定装置30を構成することができる。摩耗量推定システム110は、センサ20および摩耗量推定装置30を備え、演算モデル生成システム100によって生成された演算モデル33bを用いて、車両に装着されたタイヤ10の摩耗量を正確に推定する。
【0034】
摩耗量推定装置30は、タイヤ情報取得部31、位置情報取得部32、摩耗量算出部33および報知部35を備え、車両に搭載して用いることができる。タイヤ情報取得部31および位置情報取得部32は、実施形態1における構成および作用と同等であり、簡潔化のため説明を省略する。
【0035】
摩耗量算出部33は、演算モデル33bとして実施形態1に係る演算モデル生成システム100によって生成された演算モデルを使用する。摩耗量算出部33は、タイヤ情報取得部31および位置情報取得部32により取得した各データを所定期間蓄積した後、タイヤ摩耗量を算出してもよいし、取得したタイミングで時々刻々タイヤ摩耗量を算出するようにしてもよい。
【0036】
前処理部33aは、実施形態1における構成および作用と同等であり、位置データから車両の走行距離、速度および旋回半径等の走行状態を算出し、演算モデル33bへの入力データとする。また前処理部33aは、同じ時刻または所定の時間差内のタイヤデータと位置データとを各データに含まれる時刻情報に基づいて対応づけ、必要に応じて各データを取得した時刻に基づいてデータ補間する。
【0037】
報知部35は、車両の運転者等の搭乗者に対して、現在のタイヤ摩耗量を知得させるべく、表示装置51による表示やスピーカ52による音声出力等によって、タイヤ摩耗量を報知する。また、報知部35は車両に搭載された車両制御装置53に対して現在のタイヤ摩耗量を報知するようにしてもよい。車両制御装置53では、現在のタイヤ摩耗量に基づいて自動運転や衝突回避などの車両制御を行うことができる。
【0038】
(変形例)
図5は変形例に係る摩耗量推定システム110の機能構成を示すブロック図である。変形例に係る摩耗量推定システム110は、車両に搭載された通信部555により通信ネットワーク9と通信し、センサ20で計測されたタイヤデータおよびGPS受信機54により取得した車両の位置データを送信する。摩耗量推定装置30は、通信ネットワーク9を介して、車両から送信されたタイヤデータおよび位置データを受信し、タイヤ摩耗量を推定する。
【0039】
摩耗量推定装置30は、上述の実施形態2における構成および作用と同等であるが、タイヤ情報取得部31は受信データからタイヤデータを取得し、位置情報取得部32は受信データから位置データを取得する。タイヤ情報取得部31および位置情報取得部32は、タイヤデータおよび位置データを取得する情報取得部として統合されていてもよい。
【0040】
変形例に係る摩耗量推定システム110では、摩耗量推定装置30を車両から離れた装置として配置し、例えば複数の車両におけるタイヤ摩耗量を推定することができる。また、摩耗量推定装置30は、現在のタイヤ摩耗量を車両や、運送会社などで車両を管理している運行管理者へ通知するようにしてもよい。車両側では、摩耗量推定装置30から送信されるタイヤ摩耗量を受信し、車両の運転者等の搭乗者に知得させることや、車両制御装置に通知することができる。
【0041】
また、上述の各実施形態および変形例において、タイヤ10毎に特有の情報を加味して演算モデル33bを構築してもよい。タイヤ10は、仕様としてタイヤサイズ、タイヤ幅、扁平率、タイヤ強度、静的剛性、動的剛性、タイヤ外径、ロードインデックス等の特有の情報を有しており、これらを演算モデル33bにおけるパラメータとして入力してタイヤ摩耗量を推定する。
【0042】
次に各実施形態および変形例に係る演算モデル生成システム100、摩耗量推定システム110および演算モデル生成方法の特徴について説明する。
演算モデル生成システム100は、タイヤ情報取得部31、位置情報取得部32、摩耗量算出部33および演算モデル更新部34を備える。タイヤ情報取得部31は、タイヤ10の温度および圧力を含むタイヤデータを取得する。位置情報取得部32は、タイヤ10が装着された車両の位置データを取得する。摩耗量算出部33は、温度、圧力および位置に基づいてタイヤ摩耗量を算出する演算モデル33bを有し、タイヤデータおよびタイヤデータに対応する位置データを入力して演算モデル33bによりタイヤ10の摩耗量を算出する。演算モデル更新部34は、タイヤ10で計測される摩耗量と摩耗量算出部33により算出された摩耗量とを比較し、演算モデル33bを更新する。これにより、演算モデル生成システム100は、タイヤ摩耗量を正確に推定する演算モデルを生成することができる。
【0043】
またタイヤ情報取得部31は、タイヤ10の温度および圧力を取得した時刻を含むタイヤデータを取得する。位置情報取得部32は、車両の位置を取得した時刻を含む位置データを取得する。これにより、演算モデル生成システム100は、タイヤデータおよび位置データに含まれる時刻の情報に基づいてタイヤデータおよび位置データの時間的に対応づけることができる。
【0044】
またタイヤデータおよび位置データは、所定の時間差以内で取得される。これにより、演算モデル生成システム100は、タイヤ摩耗量をより正確に推定する演算モデルを生成することができる。
【0045】
また摩耗量算出部33は、タイヤデータおよび位置データのうち少なくとも一方について時刻に基づいてデータ補間する。これにより、演算モデル生成システム100は、各データの取得タイミングがずれていてもデータ補間によってタイミングを合わせ、演算モデル33bへの入力データとして用いることができる。
【0046】
またタイヤデータは、タイヤ10に配設された加速度センサ23で計測される加速度を含み、摩耗量算出部33は、タイヤ10で計測された加速度も含めて演算モデル33bに入力してタイヤ摩耗量を算出する。これにより、演算モデル生成システム100は、路面の凹凸などの影響を考慮したタイヤ摩耗量を推定する演算モデルを生成することができる。
【0047】
また演算モデル33bは、タイヤ10の偏摩耗量を算出する。これにより、演算モデル生成システム100は、タイヤローテーションのために、タイヤ10の偏摩耗量を推定する演算モデルを提供することができる。
【0048】
また摩耗量算出部33は、位置データ又は気象データも含めて演算モデルに入力してタイヤ摩耗量を算出する。これにより、演算モデル生成システム100は、気象データを入力データとして含み、タイヤ摩耗量を推定する演算モデルを生成することができる。
【0049】
摩耗量推定システム110は、タイヤ情報取得部31、位置情報取得部32および摩耗量算出部33を備える。タイヤ情報取得部31は、タイヤ10の温度および圧力を含むタイヤデータを取得する。位置情報取得部32は、タイヤ10が装着された車両の位置データを取得する。摩耗量算出部33は、温度、圧力および位置に基づいてタイヤ摩耗量を算出する演算モデル33bを有し、タイヤデータおよびタイヤデータに対応する位置データを入力して演算モデル33bによりタイヤ10の摩耗量を算出する。これにより、摩耗量推定システム110は、例えば車両の位置データに基づき算出される走行距離、速度および旋回半径等に基づいて、正確にタイヤ摩耗量を推定することができる。
【0050】
演算モデル生成方法は、タイヤ情報取得ステップ、位置情報取得ステップ、摩耗量算出ステップおよび演算モデル更新ステップを備える。タイヤ情報取得ステップは、タイヤ10の温度および圧力を含むタイヤデータを取得する。位置情報取得ステップは、タイヤ10が装着された車両の位置データを取得する。摩耗量算出ステップは、温度、圧力および位置に基づいてタイヤ摩耗量を算出する演算モデル33bに基づき、タイヤデータおよびタイヤデータに対応する位置データを入力して演算モデル33bによりタイヤ10の摩耗量を算出する。演算モデル更新ステップは、タイヤ10で計測される摩耗量と摩耗量算出ステップにより算出された摩耗量とを比較し、演算モデル33bを更新する。この演算モデル生成方法によれば、タイヤ摩耗量を正確に推定する演算モデルを生成することができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0052】
10 タイヤ、 31 タイヤ情報取得部、 32 位置情報取得部、
33 摩耗量算出部、 33b 演算モデル、 34 演算モデル更新部、
100 演算モデル生成システム、 110 摩耗量推定システム。
図1
図2
図3
図4
図5