IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特許7194068モールド作製方法、および物品の製造方法
<>
  • 特許-モールド作製方法、および物品の製造方法 図1
  • 特許-モールド作製方法、および物品の製造方法 図2
  • 特許-モールド作製方法、および物品の製造方法 図3
  • 特許-モールド作製方法、および物品の製造方法 図4
  • 特許-モールド作製方法、および物品の製造方法 図5
  • 特許-モールド作製方法、および物品の製造方法 図6
  • 特許-モールド作製方法、および物品の製造方法 図7
  • 特許-モールド作製方法、および物品の製造方法 図8
  • 特許-モールド作製方法、および物品の製造方法 図9
  • 特許-モールド作製方法、および物品の製造方法 図10
  • 特許-モールド作製方法、および物品の製造方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】モールド作製方法、および物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20221214BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
H01L21/30 502M
B29C59/02 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019077873
(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公開番号】P2020177979
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 磨人
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101780(JP,A)
【文献】特開2007-140460(JP,A)
【文献】特開2015-138928(JP,A)
【文献】特開2007-190734(JP,A)
【文献】特開2013-21153(JP,A)
【文献】特開2019-41100(JP,A)
【文献】特開2008-116272(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0092599(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンとマークとを有するマスタモールドからレプリカモールドを作製するモールド作製方法であって、
前記マスタモールドの前記パターンと前記マークとを第1モールド上の組成物に転写する転写工程を経ることで、前記第1モールドに第1パターンおよび第1マークを形成する第1処理と、
前記第1モールドの前記第1マークが第2モールド上の組成物に転写されないように、前記第1モールドの前記第1パターンを前記第2モールド上の組成物に転写する転写工程を経ることで、前記第2モールドに第2パターンを形成する第2処理と、
を含み、
前記第2処理により前記第2パターンが形成された前記第2モールドが前記レプリカモールドとして得られる、ことを特徴とするモールド作製方法。
【請求項2】
前記第1処理では、前記マスタモールドの前記パターンと前記マークとを前記第1モールドの第1メサ領域上の組成物に転写する転写工程を経ることで、前記第1メサ領域に前記第1パターンおよび前記第1マークを形成する、ことを特徴とする請求項1に記載のモールド作製方法。
【請求項3】
前記第1モールドは、前記第1メサ領域以外の領域に形成された第1基準マークを有し、
前記第1処理は、前記マスタモールドの前記マークの位置の計測結果と前記第1モールドの前記第1基準マークの位置の計測結果とに基づいて、前記マスタモールドの前記パターンと前記第1モールドの前記第1メサ領域との位置合わせを行う工程を含む、ことを特徴とする請求項2に記載のモールド作製方法。
【請求項4】
前記第1処理は、前記マスタモールドの前記パターンと前記マークとが転写された前記第1モールド上の組成物をマスクとして、前記第1モールドを加工する工程を含む、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモールド作製方法。
【請求項5】
前記第2処理では、前記第1モールドの前記第1パターンを前記第2モールドの第2メサ領域上の組成物に転写する転写工程を経ることで、前記第2メサ領域に前記第2パターンを形成する、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のモールド作製方法。
【請求項6】
前記第2モールドの前記第2メサ領域は、前記第2処理において前記第1モールドの前記第1パターンを前記第2メサ領域上の組成物に接触させたときに、前記第1モールドの前記第1マークが前記第2メサ領域の外側に配置されるように構成されている、ことを特徴とする請求項5に記載のモールド作製方法。
【請求項7】
前記第2モールドは、前記第2メサ領域以外の領域に形成された第2基準マークを有し、
前記第2処理は、前記第1モールドの前記第1マークの位置の計測結果と前記第2モールドの前記第2基準マークの位置の計測結果とに基づいて、前記第1モールドの前記第1パターンと前記第2モールドの前記第2メサ領域との位置合わせを行う工程を含む、ことを特徴とする請求項5又は6に記載のモールド作製方法。
【請求項8】
前記第2処理は、前記第1モールドの前記第1パターンが転写された前記第2モールド上の組成物をマスクとして、前記第2モールドを加工する工程を含む、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のモールド作製方法。
【請求項9】
前記第1処理の転写工程では、前記マスタモールドを前記第1モールド上の組成物に接触させることで、前記マスタモールドの前記パターンと前記マークとを前記第1モールド上の組成物に転写する、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のモールド作製方法。
【請求項10】
前記第2処理の転写工程では、前記第1モールドを前記第2モールド上の組成物に接触させることで、前記第1モールドの前記第1パターンを前記第2モールド上の組成物に転写する、ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のモールド作製方法。
【請求項11】
前記マスタモールドには、凹形状に構成されたマークと凸形状に構成されたマークとを少なくとも1つずつ含むマークセットが前記マークとして形成されている、ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のモールド作製方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のモールド作製方法により作成されたレプリカモールドを用いて、基板上にパターンを形成する形成工程と、
前記形成工程でパターンが形成された基板を加工する加工工程と、を含み、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レプリカモールドを作製するモールド作製方法、および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の量産用リソグラフィ装置の1つとして、モールドを用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置が知られている。インプリント装置で用いられるモールドは、一般的に、微細なパターンを形成可能な電子線リソグラフィ技術により作製されうるが、電子線リソグラフィ技術は量産性で不利であり、モールドが高価になり易い。そのため、電子線リソグラフィ技術で作製されたモールドを半導体デバイスの製造に用いて当該モールドに破損や汚染が生じた場合には、非常に大きな損失が生じうる。したがって、電子線リソグラフィ技術で作製されたマスタモールドからレプリカモールドを作製し、レプリカモールドを半導体デバイスの製造に用いることが好ましい。特許文献1には、電子線リソグラフィ技術で作製されたマスタモールドの破損リスクを低減するため、インプリント技術により、マスタモールドからサブマスタモールドを作製し、更にサブマスタモールドからレプリカモールドを作製する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2011-513972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体デバイス等の製造に用いられるモールド(レプリカモールド)には、他の部分と比べて高さが異なるメサ領域が設けられており、当該メサ領域に、半導体ウェハ等の基板に転写すべき回路パターンが凹凸形状で形成される。このようなメサ領域には、近年における回路パターンの高集積化に伴い、レプリカモールドの作製に使用されるアライメントマークは形成されないことが好ましい。
【0005】
そこで、本発明は、レプリカモールドの作製に有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのモールド作製方法は、パターンとマークとを有するマスタモールドからレプリカモールドを作製するモールド作製方法であって、前記マスタモールドの前記パターンと前記マークとを第1モールド上の組成物に転写する転写工程を経ることで、前記第1モールドに第1パターンおよび第1マークを形成する第1処理と、前記第1モールドの前記第1マークが第2モールド上の組成物に転写されないように、前記第1モールドの前記第1パターンを前記第2モールド上の組成物に転写する転写工程を経ることで、前記第2モールドに第2パターンを形成する第2処理と、を含み、前記第2処理により前記第2パターンが形成された前記第2モールドが前記レプリカモールドとして得られる、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、レプリカモールドの作製に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】インプリント装置の構成を示す概略図
図2】マスタモールドMMの構成を示す概略図
図3】サブマスタモールドSMの作製処理を示すフローチャート
図4】サブマスタモールドSMを作製している様子を経時的に示す図
図5】レプリカモールドの作製処理を示すフローチャート
図6】レプリカモールドを作製している様子を経時的に示す図
図7】サブマスタモールドSMを作製している様子を経時的に示す図
図8】レプリカモールドを作製している様子を経時的に示す図
図9】凹状マークと凸状マークとを有するマスタモールドMMを示す図
図10】第1モールドのメサ領域の形状例を示す図
図11】物品の製造方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
本発明に係る第1実施形態のモールド作製方法について説明する。本実施形態のモールド作製方法は、半導体デバイス等を製造するためのインプリント装置に用いられるレプリカモールドを、インプリント技術を用いて作成する方法である。具体的には、本実施形態のモールド作製方法は、インプリント技術を用いてマスタモールドからサブマスタモールドを作製する処理(第1処理)と、インプリント技術を用いてサブマスタモールドからレプリカモールドを作製する処理(第2処理)とを含みうる。
【0012】
[インプリント装置の構成]
まず、レプリカモールドを作製するためのインプリント技術を適用したインプリント装置100について説明する。インプリント装置100は、基板上に供給されたインプリント材(組成物)と型とを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。例えば、インプリント装置100は、基板上にインプリント材を供給し、凹凸のパターンが形成された型を基板上のインプリント材に接触させた状態で当該インプリント材を硬化させる。そして、型と基板との間隔を広げて、硬化したインプリント材から型を剥離(離型)することで、基板上のインプリント材に型のパターンを転写することができる。このような一連の処理を、以下では「インプリント処理」と呼ぶことがある。
【0013】
本実施形態の場合、「型」としては、半導体デバイス等の回路パターンを規定する凹凸形状のメインパターン(凹凸パターン)が形成されたモールドが用いられうる。また、「基板」としては、メインパターンが形成される前のモールド(ブランクモールド)が用いられうる。なお、以下で説明するインプリント装置100は、レプリカモールドを作製するために用いられるだけでなく、半導体デバイス等を製造するためにも用いられてもよい。即ち、作製されたレプリカモールドにより、半導体ウェハ等の基板にインプリント材のパターンを形成するために用いられてもよい。
【0014】
インプリント材には、硬化用のエネルギが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギとしては、電磁波、熱等が用いられる。電磁波としては、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などの光である。
【0015】
硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物である。このうち、光により硬化する光硬化性組成物は、重合成化合物と光重合開始材とを少なくとも含有し、必要に応じて非重合成化合物または溶剤を含有してもよい。非重合成化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマ成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0016】
インプリント材は、スピンコータやスリットコータにより基板上に膜状に付与される。あるいは、液体噴射ヘッドにより、液滴状、あるいは複数の液滴が繋がってできた島状または膜状となって基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0017】
図1は、インプリント装置100の構成を示す概略図である。インプリント装置100は、例えば、インプリントヘッド110と、ステージ120と、供給部130(吐出部)と、硬化部140と、第1計測部150と、第2計測部160と、制御部170とを含みうる。制御部170は、例えばCPUやメモリなどを有するコンピュータによって構成され、インプリント装置100の各部を制御してインプリント処理を制御する。ここで、Z方向は、インプリントヘッド110により保持されたマスタモールドMM(サブマスタモールドSM)と、ステージ120により保持されたブランクモールドBMとを、インプリント材Rを介して互いに接触させるために相対的に移動させる方向である。また、X方向およびY方向は、Z方向に垂直な面内において互いに直交する方向である。
【0018】
インプリントヘッド110は、メインパターンが形成されたマスタモールドMM(またはサブマスタモールドSM)を保持するとともに、マスタモールドMMをZ方向に駆動可能に構成される。このような構成により、ステージ120により保持されたブランクモールドBM上のインプリント材RにマスタモールドMMを接触させたり、硬化したインプリント材RからマスタモールドMMを剥離したりする処理を行うことができる。また、本実施形態のインプリントヘッド110は、Z方向に限られず、XY方向およびθ方向(Z軸周りの回転方向)にマスタモールドMMを駆動可能に構成されてもよい。
【0019】
ステージ120は、メインパターンを転写する対象のブランクモールドBMを保持するとともに、ブランクモールドBMをXY方向に駆動可能に構成される。このようなステージ120の構成により、インプリントヘッド110により保持されたマスタモールドMMに対して、ブランクモールドBMの位置合わせ(XY方向)を行うことができる。また、本実施形態のステージ120は、XY方向に限られず、Z方向およびθ方向にブランクモールドBMを駆動可能に構成されてもよい。
【0020】
供給部130は、ステージ120により供給部130の下方に配置されたブランクモールドBMに向けてインプリント材R(組成物)を吐出することにより、当該ブランクモールドBM上にインプリント材Rを供給する。硬化部140は、マスタモールドMMとブランクモールドBM上のインプリント材Rとが接触している状態で、当該インプリント材RにマスタモールドMMを介して光(例えば紫外線)を照射することにより、当該インプリント材Rを硬化させる。
【0021】
第1計測部150は、例えば、マスタモールドMM(またはサブマスタモールドSM)に形成されたアライメントマークAM(以下、マークAMと呼ぶことがある)を検出するスコープを有し、当該マークAMの位置を計測する。第1計測部150は、マスタモールドMMに形成されたマークAMの数に応じて、複数設けられてもよい。また、本実施形態の場合、マスタモールドMMにおけるメインパターンとマークAMとの位置関係を示す情報が事前に取得されている。そのため、第1計測部150で計測されたマークAMの位置に基づいてメインパターンの位置を特定(決定)し、メインパターンの位置決めを行うことができる。
【0022】
ここで、マスタモールドMMにおけるメインパターンとマークAMとの位置関係を示す情報は、外部の計測装置を用いて当該位置関係を事前に計測することによって取得されうるが、それに限られるものではない。例えば、メインパターンとマークAMとが共通の設計データで規定されている場合、メインパターンおよびマークAMは、当該設計データに基づいて、電子線リソグラフィ技術等により並行して(一括に)マスタモールドMMに形成されうる。この場合、マスタモールドMMにおけるメインパターンとマークAMとの位置関係を示す情報を、当該設計データから取得することができる。
【0023】
第2計測部160は、例えば、ブランクモールドBMに形成された基準マークRMを検出するスコープを有し、当該基準マークRMの位置を計測する。第2計測部160は、ブランクモールドBMに形成された基準マークRMの数に応じて、複数設けられてもよい。また、本実施形態の場合、ブランクモールドBMに形成されたメサ領域と基準マークRMとの位置関係を示す情報が事前に取得されている。そのため、第2計測部160で計測された基準マークRMの位置に基づいてメサ領域の位置を特定(決定)し、メサ領域の位置決めを行うことができる。つまり、第1計測部150での計測結果と第2計測部160での計測結果とに基づいて、マスタモールドMMのメインパターンとブランクモールドBMのメサ領域MRとの位置合わせを行うことができる。
【0024】
ここで、メサ領域と基準マークRMとの位置関係を示す情報は、外部の計測装置を用いて当該位置関係を事前に計測することによって取得されうるが、それに限られるものではない。例えば、メサ領域と基準マークRMとが共通の設計データに規定されている場合、メサ領域および基準マークRMは、当該設計データに基づいて並行して(一括に)形成されうる。この場合、メサ領域と基準マークRMとの位置関係を示す情報を、当該設計データから取得することができる。
【0025】
[マスタモールドの構成]
次に、マスタモールドMMの構成について説明する。図2は、マスタモールドMMの構成を示す概略図である。マスタモールドMMの母材1としては、硬化部140から射出される光(例えば紫外線)を透過可能な石英等の材料が用いられうる。また、マスタモールドMMは、パターン2(メインパターン)が形成されたパターン領域4と、パターン領域4の周囲においてマーク3が形成された周囲領域5とを含む。
【0026】
パターン2は、半導体デバイス等の回路パターンを規定する凹凸形状のパターン(凹凸パターン)であり、母材1の表面(図2では下面)から掘り込んで形成された複数の凹部によって構成されうる。また、マーク3は、パターン2の位置決めを行うために第1計測部150によって位置が計測されるマークAMであり、半導体デバイス等の製造時には使用されない。当該マーク3は、母材1の表面(図2では下面)から掘り込んで形成された凹部によって構成されうる。パターン2およびマーク3は、電子線リソグラフィ技術を用いて高精度に形成される。
【0027】
[サブマスタモールドの作製]
次に、マスタモールドMMからサブマスタモールドSMを作製する処理(第1処理)について、図3図4を参照しながら説明する。図3は、サブマスタモールドSMの作製処理を示すフローチャートである。また、図4は、サブマスタモールドSMを作製している様子を経時的に示す図であり、図3に示すフローチャートの各工程を説明するために用いられる。なお、図4では、説明に必要な構成要素のみを図示しており、その他の構成要素の図示を省略している。
【0028】
本実施形態におけるサブマスタモールドSMの作製処理では、メサ領域16(第1メサ領域)と当該メサ領域以外の領域に形成された基準マーク17(第1基準マーク)とを有する第1モールド10がブランクモールドBMとして用いられる。第1モールド10のメサ領域16は、マスタモールドMMのパターン2が転写されて第1パターン12が形成されるパターン領域14と、マスタモールドMMのマーク3が転写されて第1マーク13が形成される周囲領域15とを含みうる。第1モールド10の母材11としては、硬化部140から射出される光(例えば紫外線)を透過可能な石英等の材料が用いられうる。
【0029】
第1モールド10のメサ領域16は、その周囲の母材11がエッチング処理等により掘り込まれることで、当該周囲より突出した凸形状に構成された領域である。第1モールド10のメサ領域16は、マスタモールドMMのパターン2およびマーク3を転写することができる寸法(XY方向)で構成されうる。また、第1モールド10の基準マーク17は、メサ領域16の位置決めを行うために第2計測部160によって位置が計測される基準マークRMであり、メサ領域16の形成時に作成されうる。具体的には、第1モールド10の基準マーク17は、メサ領域16の周囲の母材11を掘り込む際に当該周囲の一部を残すことにより第1モールド10に形成されうる。
【0030】
以下に、図3に示すフローチャートを参照して、本実施形態におけるサブマスタモールドSMの作製処理の各工程について説明する。S11~S17は、ブランクモールドBMとしての第1モールド10にインプリント処理を行い、マスタモールドMMのパターン2とマーク3とを第1モールド10上のインプリント材Rに転写する工程である。S11~S17の工程では、インプリント装置100において、マスタモールドMMがインプリントヘッド110により保持され、ブランクモールドBMとしての第1モールド10がステージ120によって保持される。また、S11~S17の各工程は、インプリント装置100の制御部170によって制御されうる。
【0031】
S11では、図4(a)に示すように、第1計測部150によりマスタモールドMMのマーク3の位置(XY方向)を計測し、その計測結果に基づいて、マスタモールドMMのパターン2の位置(XY方向)を特定する。本実施形態では、上述したように、マスタモールドMMにおけるパターン2とマーク3との位置関係を示す情報(以下、マスタモールドMMの位置関係情報)が、設計データや外部の計測装置などにより事前に取得されている。したがって、マスタモールドMMのマーク3の位置を第1計測部150で計測することにより、その計測結果とマスタモールドMMの位置関係情報とに基づいて、マスタモールドMMのパターン2の位置を特定することができる。
【0032】
S12では、供給部130によってインプリント材R(組成物)を第1モールド10のメサ領域16上に供給する。本実施形態では、例えば図4(b)に示すように、インプリント材Rを、メサ領域16の上面の全体にわたって塗布しているが、それに限られず、メサ領域16の上面に複数の液滴として供給してもよい。
【0033】
S13では、第2計測部160により第1モールド10の基準マーク17の位置(XY方向)を計測し、その計測結果に基づいて、第1モールド10のメサ領域16の位置(XY方向)を特定する。本実施形態では、上述したように、ブランクモールドBMとしての第1モールド10におけるメサ領域16と基準マーク17との位置関係を示す情報(以下、第1モールドの位置関係情報)が、設計データや外部の計測装置などにより事前に取得されている。そのため、第1モールド10の基準マーク17の位置を第2計測部160で計測することにより、その計測結果と第1モールド10の位置関係情報とに基づいて、第1モールド10のメサ領域16の位置を特定することができる。
【0034】
S14では、図4(b)に示すように、マスタモールドMMの下方に第1モールド10を配置し、マスタモールドMMのパターン2と第1モールド10のメサ領域16との位置合わせを行う。当該位置合わせは、S11で特定されたマスタモールドMMのパターン2の位置と、S13で特定された第1モールド10のメサ領域16の位置とを示す情報に基づいて行われる。
【0035】
S15では、マスタモールドMMと第1モールド10とをZ方向に相対的に駆動し、マスタモールドMMと第1モールド10(メサ領域16)上のインプリント材Rとを接触させる。第1モールド10のメサ領域16は、上述したように、マスタモールドMMのパターン2およびマーク3を転写することができる寸法で構成されている。したがって、本工程では、図4(c)に示すように、第1モールド10のメサ領域上のインプリント材Rに、マスタモールドMMのパターン2とマーク3とを接触させることができる。
【0036】
S16では、マスタモールドMMと第1モールド10(メサ領域16)上のインプリント材Rとが接触している状態で、硬化部140により当該インプリント材Rに光を照射し、当該インプリント材Rを硬化させる。また、S17では、硬化したインプリント材RからマスタモールドMMを剥離する(マスタモールドMMと第1モールド10の間隔を広げる)。これにより、図4(d)に示すように、第1モールド10のメサ領域16上のインプリント材Rに、マスタモールドMMのパターン2とマーク3とを転写することができる。
【0037】
S18は、公知のエッチング装置などの加工装置を用いて、S11~S17の工程を経た第1モールド10を加工する工程である。具体的には、S11~S17の工程によりマスタモールドMMのパターン2とマーク3とが転写されたインプリント材Rをエッチングマスクとして、公知のエッチング装置等により第1モールド10にエッチング処理を行う。これにより、図4(e)に示すように、第1モールド10のメサ領域16に第1パターン12と第1マーク13とを形成することができる。このように第1パターン12と第1マーク13とが形成された第1モールド10は、サブマスタモールドSMとして、レプリカモールドを作製するために使用されうる。
【0038】
ここで、特開2009-38085号公報に開示されている加工処理をS18の工程に適用すると、マスタモールドMMのパターン2およびマーク3とそれぞれ同様の構成の第1パターン12および第1マーク13を第1モールド10に形成することができる。即ち、マスタモールドMMのパターン2およびマーク3と同様の凹凸形状を有する第1パターン12および第1マーク13を、第1モールド10に形成することができる。
【0039】
特開2009-38085号公報に開示されている加工処理は、例えば、モールドを用いて基板上のインプリント材に形成された凹凸パターンの凹部に反転層を埋め込み、当該反転層をマスクとして基板のエッチングを行う処理である。これにより、モールドのパターンの凹凸形状と同様の凹凸形状を有するパターンを基板に形成することができる。当該加工処理は「反転プロセス」とも呼ばれる。以下では、当該加工処理を「反転プロセス」と呼ぶことがある。
【0040】
[レプリカモールドの作製]
次に、サブマスタモールドSMからレプリカモールドを作製する処理(第2処理)について、図5図6を参照しながら説明する。図5は、レプリカモールドの作製処理を示すフローチャートである。また、図6は、レプリカモールドを作製している様子を経時的に示す図であり、図5に示すフローチャートの各工程を説明するために用いられる。なお、図6では、説明に必要な構成要素のみを図示しており、その他の構成要素の図示を省略している。
【0041】
本実施形態におけるレプリカモールドの作製処理では、第1パターン12と第1マーク13とが形成された第1モールド10がサブマスタモールドSMとして用いられる。また、メサ領域26(第2メサ領域)と当該メサ領域以外の領域に形成された基準マーク27(第2基準マーク)とを有する第2モールド20がブランクモールドBMとして用いられる。第2モールド20のメサ領域26は、サブマスタモールドSMとしての第1モールド10の第1パターン12が転写されて第2パターン22が形成されるパターン領域24を含みうる。第2モールド20の母材21としては、硬化部140から射出される光(例えば紫外線)を透過可能な石英等の材料が用いられうる。
【0042】
第2モールド20のメサ領域26は、その周囲の母材21がエッチング処理等により掘り込まれることで、当該周囲より突出した凸形状に構成された領域である。第2モールド20のメサ領域26は、第1モールド10のメサ領域16より一回り小さく構成され、第1モールド10の第1パターン12は転写されるが、第1モールド10の第1マーク13は転写されない寸法(XY方向)で構成される。ここで、後述する工程を経てレプリカモールドとして作製された第2モールド20は、半導体デバイスの作製時において、半導体ウェハ等の基板における複数のショット領域の各々に対してインプリント処理を行う際に用いられる。そのため、第2モールド20のメサ領域26は、1つのショット領域の寸法と同じ寸法(XY方向)で構成されるとよい。
【0043】
第2モールド20の基準マーク27は、メサ領域26の位置決めを行うために第2計測部160によって位置が計測される基準マークRMであり、メサ領域26の形成時に作成されうる。具体的には、第2モールド20の基準マーク27は、メサ領域26の周囲の母材21を掘り込む際に当該周囲の一部を残すことにより第2モールド20に形成されうる。
【0044】
以下に、図5に示すフローチャートを参照して、本実施形態におけるレプリカモールドの作製処理の各工程について説明する。S21~S27は、ブランクモールドBMとしての第2モールド20にインプリント処理を行い、サブマスタモールドSMとしての第1モールド10の第1パターン12を第2モールド20上のインプリント材Rに転写する工程である。S21~S27の工程では、サブマスタモールドSMとしての第1モールド10がインプリントヘッド110により保持され、ブランクモールドBMとしての第2モールド20がステージ120によって保持される。また、S21~S27の各工程は、インプリント装置100の制御部170によって制御されうる。
【0045】
S21では、図6(a)に示すように、第1計測部150により第1モールド10の第1マーク13の位置(XY方向)を計測し、その計測結果に基づいて、第1モールド10の第1パターン12の位置(XY方向)を特定する。第1モールド10の第1パターン12および第1マーク13は、マスタモールドMMのパターン2およびマーク3を一括に転写する工程を経て形成されている。そのため、第1モールド10における第1パターン12と第1マーク13との位置関係は、マスタモールドMMのパターン2とマーク3との位置関係と同様になる。本実施形態では、上述したように、マスタモールドMMにおけるパターン2とマーク3との位置関係を示す情報(マスタモールドMMの位置関係情報)が事前に取得されている。したがって、第1モールド10の第1マーク13の位置を第1計測部150で計測することにより、その計測結果とマスタモールドMMの位置関係情報とに基づいて、第1モールド10の第1パターン12の位置を特定することができる。
【0046】
S22では、供給部130によってインプリント材R(組成物)を第2モールド20のメサ領域26上に供給する。本実施形態では、例えば図6(b)に示すように、インプリント材Rを、メサ領域26の上面の全体にわたって塗布しているが、それに限られず、メサ領域26の上面に複数の液滴として供給してもよい。
【0047】
S23では、第2計測部160により第2モールド20の基準マーク27の位置(XY方向)を計測し、その計測結果に基づいて、第2モールド20のメサ領域26の位置(XY方向)を特定する。本実施形態では、上述したように、ブランクモールドBMとしての第2モールド20におけるメサ領域26と基準マーク27との位置関係を示す情報(以下、第2モールドの位置関係情報)が、設計データや外部の計測装置などにより事前に取得されている。そのため、第2モールド20の基準マーク27の位置を第2計測部160で計測することにより、その計測結果と第2モールド20の位置関係情報とに基づいて、第2モールド20のメサ領域26の位置を特定することができる。
【0048】
S24では、図6(b)に示すように、第1モールド10の下方に第2モールド20を配置し、第1モールド10の第1パターン12と第2モールド20のメサ領域26との位置合わせを行う。当該位置合わせは、S21で特定された第1モールドの第1パターンの位置と、S23で特定された第2モールドのメサ領域の位置とを示す情報に基づいて行われる。
【0049】
S25では、第1モールド10と第2モールド20とをZ方向に相対的に駆動し、第1モールド10と第2モールド20(メサ領域26)上のインプリント材Rとを接触させる。第2モールド20のメサ領域26は、上述したように、第1モールド10の第1パターン12は転写されるが、第1モールド10の第1マーク13は転写されない寸法で構成される。つまり、第2モールド20のメサ領域26は、第1モールド10の第1パターン12を第2モールド20のメサ領域26上のインプリント材Rに接触させたときに、第1モールド10の第1マーク13が当該メサ領域26の外側に位置するように構成されている。したがって、本工程では、図6(c)に示すように、第2モールド20のメサ領域上のインプリント材Rに、第1モールド10の第1パターン12のみを接触させることができる。
【0050】
S26では、第1モールド10と第2モールド20(メサ領域26)上のインプリント材Rとが接触している状態で、硬化部140により当該インプリント材Rに光を照射し、当該インプリント材Rを硬化させる。また、S27では、硬化したインプリント材Rから第1モールド10を剥離する(第1モールド10と第2モールド20の間隔を広げる)。これにより、図6(d)に示すように、第2モールド20のメサ領域26上のインプリント材Rに、第1モールド10の第1パターン12を転写することができる。
【0051】
S28は、公知のエッチング装置などの加工装置を用いて、S21~S27の工程を得た第1モールド10を加工する工程である。具体的には、S21~S27の工程により第1モールド10の第1パターン12が転写されたインプリント材Rをエッチングマスクとして、公知のエッチング装置等により第2モールド20にエッチング処理を行う。これにより、図6(e)に示すように、第2モールド20のメサ領域26に第2パターン22を形成することができる。また、上述したように、第2モールド20のメサ領域26上のインプリント材Rには、第1モールド10の第1マーク13が転写されず、本工程を経た第2モールド20のメサ領域26には、第1モールド10の第1マーク13に対応するマークが形成されない。このように第2パターン22が形成された第2モールド20は、レプリカモールドとして、半導体ウェハ等の基板にインプリント処理を行うために使用されうる。
【0052】
ここで、特開2009-38085号公報に開示されている加工処理(反転プロセス)をS28の工程に適用すると、第1モールド10の第1パターン12と同様の構成の第2パターン22を第2モールド20に形成することができる。即ち、第1モールド10の第1パターン12と同様の凹凸形状を有する第2パターン22を、第2モールド20に形成することができる。
【0053】
上述したように、本実施形態のモールド作製方法は、マスタモールドMMからサブマスタモールドSMを作製する第1処理と、サブマスタモールドSMからレプリカモールドを作製する第2処理とを含む。レプリカモールドを用いて基板に半導体デバイス等のパターンを形成する。これにより、電子線リソグラフィ技術等を用いて作成された高価なマスタモールドMMの破損リスクを低減することができる。
【0054】
また、第1処理では、ブランクモールドBMとしての第1モールド10に、マスタモールドMMのパターン2だけでなくマーク3も転写して、第1モールド10に第1パターン12および第1マーク13を形成する。これにより、第1モールド10をサブマスタモールドSMとして使用した場合に、第1モールド10の第1マーク13の位置の検出結果に基づいて、第1モールド10の第1パターン12の位置を特定することができる。
【0055】
さらに、第2処理では、ブランクモールドBMとしての第2モールド20に、サブマスタモールドSMとしての第1モールド10の第1パターン12を転写して、第2モールド20に第2パターン22を形成する。このとき、第1モールド10の第1マーク13は、第2モールド20に転写されない。即ち、半導体デバイス等の製造時に使用されない第1マーク13が第2モールド20のメサ領域26に転写されない。そのため、半導体デバイス等の回路パターンの高集積化に応じて、第2モールド20のメサ領域26に形成される第2パターン22の高集積化を図ることができる。
【0056】
<第2実施形態>
本発明に係る第2実施形態のモールド作製方法について説明する。本実施形態では、サブマスタモールドSMの作製処理(第1処理)、およびレプリカモールドの作製処理(第2処理)において、特開2009-38085に開示された加工処理(以下、反転プロセスと呼ぶ)を用いない例について説明する。
【0057】
まず、本実施形態におけるサブマスタモールドSMの作製処理(第1処理)について説明する。本実施形態におけるサブマスタモールドSMの作製処理は、図3のフローチャートに従って行われるが、S18の工程において反転プロセスを用いない点で第1実施形態と異なる。
【0058】
図7は、本実施形態におけるサブマスタモールドSMを作製している様子を経時的に示す図である。図7(a)~(d)は、第1実施形態で説明した図4(a)~(d)と同様であり、図3のフローチャートにおけるS11~S17の工程を示している。具体的には、インプリント装置100を用いて、ブランクモールドBMとしての第1モールド10にインプリント処理を行い、マスタモールドMMのパターン2とマーク3とを第1モールド上のインプリント材Rに転写する工程である。
【0059】
また、図7(e)は、図3のフローチャートの各工程を経て第1パターン12と第1マーク13とが形成された第1モールド10を示している。本実施形態の場合、S18の工程において反転プロセスが適用されない。そのため、S18の工程後の第1モールド10には、図7(e)に示すように、マスタモールドMMのパターン2およびマーク3の凹凸形状が反転した凹凸形状を有する第1パターン12および第1マーク13が形成される。ここで、凹凸形状の反転とは、例えば、マスタモールドMMのパターン2の凹部が、第1モールド10に凸部として形成され、マスタモールドMMのパターン2の凸部が、第1モールド10に凹部として形成されることである。
【0060】
図8は、本実施形態におけるレプリカモールドを作製している様子を経時的に示す図である。図8(a)~(d)は、図5のフローチャートにおけるS21~S27の工程を示している。具体的には、インプリント装置100を用いて、ブランクモールドBMとしての第2モールド20にインプリント処理を行い、サブマスタモールドSMとしての第1モールド10の第1パターン12を第2モールド上のインプリント材Rに転写する工程である。図8(a)~(d)は、第1実施形態で説明した図6(a)~(d)に対応しているが、第1モールド10の第1パターン12および第1マーク13の凹凸形状が、マスタモールドMMのパターン2およびマーク3の凹凸形状に対して反転している点で異なる。
【0061】
また、図8(e)は、図5のフローチャートの各工程を経て第2パターン22が形成された第2モールド20を示している。本実施形態の場合、S28の工程において反転プロセスが適用されない。そのため、S28の工程後の第2モールド20には、図8(e)に示すように、サブマスタモールドSMとしての第1モールド10の第1パターン12の凹凸形状が反転した凹凸形状を有する第2パターン22が形成される。即ち、本実施形態では、第1モールド10には、マスタモールドMMのパターン2の凹凸形状が反転した第1パターン12が形成され、第2モールド20には、第1モールド10の第1パターン12の凹凸形状が反転した第2パターン22が形成される。したがって、結果として、第2モールド20の第2パターン22の凹凸形状を、マスタモールドMMのパターン2の凹凸形状と同様にすることができる。
【0062】
ここで、第1モールド10の第1マーク13が、マスタモールドMMのマーク3に対して反転して形成された場合、第1計測部150の特性に起因して、第1計測部150による第1マーク13の位置の計測が困難になることがある。その対処方法の1つとして、例えば、図9に示すように、マスタモールドMMに、凹形状に構成されたマーク(凹状マーク3a)と凸形状に構成されたマーク(凸状マーク3b)とを含むマークセットをマーク3として形成するとよい。図9は、マスタモールドMMをZ方向から見た図である。図9に示す例では、パターン領域4が矩形形状を有しており、周囲領域5では、凹状マーク3aおよび凸状マーク3bを少なくとも1つずつ含むマークセットが、パターン領域4の四隅のそれぞれに対してマーク3として形成されている。周囲領域5内における各マークセットの配置、および、各マークセット内における凹状マーク3aおよび凸状マーク3bの配置は、図9に示す例に限られるものではなく、任意に設定することができる。
【0063】
このように凹状マーク3aと凸状マーク3bとを含むマークセットを用いることで、第1計測部150により、第1モールド10の第1マーク13の位置の測定を精度よく行うことができる。例えば、第1計測部150が、凹状マーク3aの方が凸状マーク3bより精度よく位置の測定を行うことができる場合を想定する。この場合において、マスタモールドMMを用いる際には、第1計測部150により凹状マーク3aの位置を計測することができる。一方、第1モールド10には、マスタモールドMMの凸状マーク3bが反転した凹状の第1マーク13が形成される。そのため、第1モールド10をサブマスタモールドSMとして用いる際には、第1計測部150により、当該凹状の第1マーク13の位置を計測することができる。
【0064】
<第3実施形態>
本発明に係る第3実施形態について説明する。本実施形態では、第1モールド10のメサ領域16の形状について説明する。図10(a)は、第1モールド10をZ方向から見た図であり、図10(b)~(e)は、第1モールド10のメサ領域16の形状例を示す図である。図10(b)~(c)に示す例では、第1モールド10のメサ領域16は、矩形形状を有しており、第1パターン12が形成されるパターン領域14と、第1マーク13が形成される周囲領域15とが含まれる。また、図10(d)~(e)に示す例では、第1モールド10のメサ領域16は、矩形形状のパターン領域14と、パターン領域14の四隅にそれぞれ配置された島状の周囲領域15とを含みうる。
【0065】
<物品の製造方法の実施形態>
本発明の実施形態にかかる物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品の製造方法は、基板に供給(塗布)されたインプリント材に上記のインプリント装置を用いてパターンを形成する形成工程と、形成工程でパターンが形成された基板を加工する工程とを含む。形成工程では、インプリント装置に適用されるモールドとして、上記のモールド作製方法により作製されたレプリカモールドが用いられ、基板として、半導体ウェハやガラスプレートなどが用いられうる。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0066】
インプリント装置を用いて成形した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0067】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0068】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。図11(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウェハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0069】
図11(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図11(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギとして光を型4zを通して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0070】
図11(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0071】
図11(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図11(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0072】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0073】
MM:マスタモールド、1:母材、2:パターン、3:マーク、4:パターン領域、5:周囲領域
SM:サブマスタモールド、BM:ブランクモールド
10:第1モールド、11:第1母材、12:第1パターン、13:第1マーク、14:第1パターン領域、15:第1周囲領域、16:第1メサ領域、17:第1基準マーク
20:第2モールド、21:第2母材、22:第2パターン、24:第2パターン領域、26:第2メサ領域、27:第2基準マーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11