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特許7194074形状保持機構、ストランド鉄筋籠の建て込み装置及びストランド鉄筋籠の建て込み方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】形状保持機構、ストランド鉄筋籠の建て込み装置及びストランド鉄筋籠の建て込み方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/34 20060101AFI20221214BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
E02D5/34 Z
E04G21/12 105B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019089988
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2020186538
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(74)【復代理人】
【識別番号】100156410
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 輝和
(72)【発明者】
【氏名】三室 恵史
(72)【発明者】
【氏名】亀井 良至
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 慎一
(72)【発明者】
【氏名】河野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】林 宏延
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕亮
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-283286(JP,A)
【文献】特開昭61-024768(JP,A)
【文献】特開平09-125379(JP,A)
【文献】特開平06-257142(JP,A)
【文献】特開2018-172868(JP,A)
【文献】特開2018-172869(JP,A)
【文献】特開2018-172870(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108411899(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22-5/80
E02D 7/00-13/10
E02D 27/00-27/52
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬時または建て込み時のストランド鉄筋籠の変形を抑制することが可能な形状保持機構であって、
前記ストランド鉄筋籠は、主筋が帯筋に対して回転可能となるように結合されていて、主筋を螺旋状にすることで縮小され、主筋を直線状にすることで伸展されるものであり、
前記ストランド鉄筋籠に内挿されるフレーム本体と、前記フレーム本体の一端に固定された梁部材とを有する内挿フレームと、
前記フレーム本体の長さ方向に垂直な径方向に、前記フレーム本体からの距離が可変であるように前記フレーム本体に連結され可動部材と、
前記梁部材に一端が連結され、前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部に他端が着脱可能である端部支持機構と、
を具備し、
前記フレーム本体は、前記梁部材が固定されていない前記フレーム本体の他端から、前記ストランド鉄筋籠の縮小・伸展方向に挿入されて前記ストランド鉄筋籠に内挿され、
前記可動部材を径方向に拡げることで、前記ストランド鉄筋籠の内面側から前記ストランド鉄筋籠の断面形状を円形に保持することが可能であり、
前記端部支持機構によって、前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部を前記梁部材に連結することで、前記ストランド鉄筋籠を伸展させていく際に、前記ストランド鉄筋籠の重量の一部を前記梁部材に支持させることが可能なことを特徴とする形状保持機構。
【請求項2】
前記可動部材は、前記ストランド鉄筋籠の挿入方向に平行な部材であり、
前記可動部材を移動させることにより、前記可動部材に平行であり前記フレーム本体の外周側に固定された非可動部材と前記可動部材とを含む外接円の径が拡縮することを特徴とする請求項1記載の形状保持機構。
【請求項3】
前記端部支持機構が、
前記梁部材から巻き出される線材と、
前記線材の端部に設けられた回転治具と、
前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部に固定され、前記回転治具に連結された枠材と、
からなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の形状保持機構。
【請求項4】
建て込み時のストランド鉄筋籠の変形を抑制することが可能なストランド鉄筋籠の建て込み装置であって、
前記ストランド鉄筋籠は、主筋が帯筋に対して回転可能となるように結合されていて、主筋を螺旋状にすることで縮小され、主筋を直線状にすることで伸展されるものであり、
ストランド鉄筋籠に内挿されるフレーム本体と、前記フレーム本体の一端に固定された梁部材とを有する内挿フレームと、前記フレーム本体の長さ方向に垂直な径方向に、前記フレーム本体からの距離が可変であるように前記フレーム本体に連結され可動部材と、前記梁部材に一端が連結され、前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部に他端が着脱可能である端部支持機構とからなる形状保持機構と、
一端が前記梁部材に固定され、他端がヒンジ部を介して台車に連結された支柱と、
前記ヒンジ部を中心として前記支柱を回転させる立て起こし手段と、
を具備し、
前記フレーム本体は、前記梁部材が固定されていない前記フレーム本体の他端から、前記ストランド鉄筋籠の縮小・伸展方向に挿入されて前記ストランド鉄筋籠に内挿され、
前記可動部材を径方向に拡げることで、前記ストランド鉄筋籠の内面側から前記ストランド鉄筋籠の断面形状を円形に保持することが可能であり、
前記端部支持機構によって、前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部を前記梁部材に連結することで、前記ストランド鉄筋籠を伸展させていく際に、前記ストランド鉄筋籠の重量の一部を前記梁部材に支持させることが可能なことを特徴とするストランド鉄筋籠の建て込み装置。
【請求項5】
建て込み時のストランド鉄筋籠の変形を抑制することが可能なストランド鉄筋籠の建て込み方法であって、
前記ストランド鉄筋籠は、主筋が帯筋に対して回転可能となるように結合されていて、主筋を螺旋状にすることで縮小され、主筋を直線状にすることで伸展されるものであり、
ストランド鉄筋籠に内挿されるフレーム本体と、前記フレーム本体の一端に固定された梁部材とを有する内挿フレームと、前記フレーム本体の長さ方向に垂直な径方向に、前記フレーム本体からの距離が可変であるように前記フレーム本体に連結され可動部材と、前記梁部材に一端が連結され、前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部に他端が着脱可能である端部支持機構とからなる形状保持機構と、
一端が前記梁部材に固定され、他端がヒンジ部を介して台車に連結された支柱と、
前記ヒンジ部を中心として前記支柱を回転させる立て起こし手段と、
を具備し、
前記フレーム本体は、前記梁部材が固定されていない前記フレーム本体の他端から、前記ストランド鉄筋籠の縮小・伸展方向に挿入されて前記ストランド鉄筋籠に内挿され、
前記可動部材を径方向に拡げることで、前記ストランド鉄筋籠の内面側から前記ストランド鉄筋籠の断面形状を円形に保持することが可能であり、
前記端部支持機構によって、前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部を前記梁部材に連結することで、前記ストランド鉄筋籠を伸展させていく際に、前記ストランド鉄筋籠の重量の一部を前記梁部材に支持させることが可能な建て込み装置を用い、
水平方向に配置された状態の前記フレーム本体を、前記ストランド鉄筋籠に内挿する工程aと、
前記可動部材を前記距離が大きくなるように移動させて前記ストランド鉄筋籠の断面形状を円形に保持し、前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部に前記端部支持機構の他端を取り付ける工程bと、
前記建て起こし手段で前記支柱を回転させることにより前記フレーム本体を鉛直方向に立て起こして、前記ストランド鉄筋籠を杭孔上に配置する工程cと、
前記ストランド鉄筋籠を前記杭孔内に伸展させ、前記端部支持機構による前記梁部材と前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部との連結を解除する工程dと、
を具備することを特徴とするストランド鉄筋籠の建て込み方法。
【請求項6】
前記工程bと前記工程cとの間に、前記台車を前記杭孔近傍に移動させることを特徴とする請求項5記載のストランド鉄筋籠の建て込み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストランド鉄筋籠の形状保持機構、ストランド鉄筋籠の建て込み装置及びストランド鉄筋籠の建て込み方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、場所打ち杭を構築する際には、補強筋として鉄筋籠が用いられている。杭の建設予定位置の上方の空間に制限がある場合には、主筋であるPC鋼より線を螺旋状に曲げて長さを縮めたストランド鉄筋籠を用い、ストランド鉄筋籠を杭孔付近で水平な状態から垂直な状態に回転させた後、杭孔内に伸展する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-283286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ストランド鉄筋籠はフレキシブルな性状を持つため、水平な状態から垂直な状態に立て起こす際に帯鉄筋の位置がずれて鉄筋籠が変形する場合がある。帯鉄筋の位置がずれると、ストランド鉄筋籠の伸展に支障が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、水平な状態から垂直な状態に立て起こす際にストランド鉄筋籠の形状を保持して変形を防止できる形状保持機構、ストランド鉄筋籠の建て込み装置及びストランド鉄筋籠の建て込み方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために第1の発明は、運搬時または建て込み時のストランド鉄筋籠の変形を抑制することが可能な形状保持機構であって、前記ストランド鉄筋籠は、主筋が帯筋に対して回転可能となるように結合されていて、主筋を螺旋状にすることで縮小され、主筋を直線状にすることで伸展されるものであり、前記ストランド鉄筋籠に内挿されるフレーム本体と、前記フレーム本体の一端に固定された梁部材とを有する内挿フレームと、前記フレーム本体の長さ方向に垂直な径方向に、前記フレーム本体からの距離が可変であるように前記フレーム本体に連結され可動部材と、前記梁部材に一端が連結され、前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部に他端が着脱可能である端部支持機構と、を具備し、前記フレーム本体は、前記梁部材が固定されていない前記フレーム本体の他端から、前記ストランド鉄筋籠の縮小・伸展方向に挿入されて前記ストランド鉄筋籠に内挿され、前記可動部材を径方向に拡げることで、前記ストランド鉄筋籠の内面側から前記ストランド鉄筋籠の断面形状を円形に保持することが可能であり、前記端部支持機構によって、前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部を前記梁部材に連結することで、前記ストランド鉄筋籠を伸展させていく際に、前記ストランド鉄筋籠の重量の一部を前記梁部材に支持させることが可能なことを特徴とする形状保持機構である。
【0007】
第1の発明の形状保持機構では、ストランド鉄筋籠にフレーム本体を内挿した状態で可動部材のフレーム本体からの距離を大きくすることによって、可動部材を用いてストランド鉄筋籠の断面形状を円形に保持することができる。また、端部支持機構の一端を梁部材に連結し、他端をストランド鉄筋籠の梁部材から遠い側の端部に取り付けることによって、ストランド鉄筋籠の梁部材から遠い側の端部を所定の位置に保持することができる。
【0008】
前記可動部材は、前記ストランド鉄筋籠の挿入方向に平行な部材であり、前記可動部材を移動させることにより、前記可動部材に平行であり前記フレーム本体の外周側に固定された非可動部材と前記可動部材とを含む外接円の径が拡縮することが望ましい。
非可動部材と可動部材とを含む外接円の径を縮めれば、ストランド鉄筋籠にフレーム本体を容易に内挿することができる。また、非可動部材と可動部材とを含む外接円の径を広げれば、非可動部材と前記可動部材とでストランド鉄筋籠の断面形状を確実に円形に保持することができる。
【0009】
前記端部支持機構が、前記梁部材から巻き出される線材と、前記線材の端部に設けられた回転治具と、前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部に固定され、前記回転治具に連結された枠材と、からなることが望ましい。
このような端部支持機構を用いれば、ストランド鉄筋籠の梁部材から遠い側の端部の回転が妨げられない。
【0010】
第2の発明は、建て込み時のストランド鉄筋籠の変形を抑制することが可能なストランド鉄筋籠の建て込み装置であって、前記ストランド鉄筋籠は、主筋が帯筋に対して回転可能となるように結合されていて、主筋を螺旋状にすることで縮小され、主筋を直線状にすることで伸展されるものであり、ストランド鉄筋籠に内挿されるフレーム本体と、前記フレーム本体の一端に固定された梁部材とを有する内挿フレームと、前記フレーム本体の長さ方向に垂直な径方向に、前記フレーム本体からの距離が可変であるように前記フレーム本体に連結され可動部材と、前記梁部材に一端が連結され、前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部に他端が着脱可能である端部支持機構とからなる形状保持機構と、一端が前記梁部材に固定され、他端がヒンジ部を介して台車に連結された支柱と、前記ヒンジ部を中心として前記支柱を回転させる立て起こし手段と、を具備し、前記フレーム本体は、前記梁部材が固定されていない前記フレーム本体の他端から、前記ストランド鉄筋籠の縮小・伸展方向に挿入されて前記ストランド鉄筋籠に内挿され、前記可動部材を径方向に拡げることで、前記ストランド鉄筋籠の内面側から前記ストランド鉄筋籠の断面形状を円形に保持することが可能であり、前記端部支持機構によって、前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部を前記梁部材に連結することで、前記ストランド鉄筋籠を伸展させていく際に、前記ストランド鉄筋籠の重量の一部を前記梁部材に支持させることが可能なことを特徴とするストランド鉄筋籠の建て込み装置である。
【0011】
第2の発明の建て込み装置では、第1の発明の形状保持機構を用いてストランド鉄筋籠の形状を保持した状態で、形状保持機構に固定された支柱をヒンジ部を中心として回転させる。これにより、ストランド鉄筋籠の断面形状の変形を防止しつつ、ストランド鉄筋籠を水平な状態から垂直な状態に立て起こすことができる。
【0012】
第3の発明は、建て込み時のストランド鉄筋籠の変形を抑制することが可能なストランド鉄筋籠の建て込み方法であって、前記ストランド鉄筋籠は、主筋が帯筋に対して回転可能となるように結合されていて、主筋を螺旋状にすることで縮小され、主筋を直線状にすることで伸展されるものであり、ストランド鉄筋籠に内挿されるフレーム本体と、前記フレーム本体の一端に固定された梁部材とを有する内挿フレームと、前記フレーム本体の長さ方向に垂直な径方向に、前記フレーム本体からの距離が可変であるように前記フレーム本体に連結され可動部材と、前記梁部材に一端が連結され、前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部に他端が着脱可能である端部支持機構とからなる形状保持機構と、一端が前記梁部材に固定され、他端がヒンジ部を介して台車に連結された支柱と、前記ヒンジ部を中心として前記支柱を回転させる立て起こし手段と、を具備し、前記フレーム本体は、前記梁部材が固定されていない前記フレーム本体の他端から、前記ストランド鉄筋籠の縮小・伸展方向に挿入されて前記ストランド鉄筋籠に内挿され、前記可動部材を径方向に拡げることで、前記ストランド鉄筋籠の内面側から前記ストランド鉄筋籠の断面形状を円形に保持することが可能であり、前記端部支持機構によって、前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部を前記梁部材に連結することで、前記ストランド鉄筋籠を伸展させていく際に、前記ストランド鉄筋籠の重量の一部を前記梁部材に支持させることが可能な建て込み装置を用い、水平方向に配置された状態の前記フレーム本体を、前記ストランド鉄筋籠に内挿する工程aと、前記可動部材を前記距離が大きくなるように移動させて前記ストランド鉄筋籠の断面形状を円形に保持し、前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部に前記端部支持機構の他端を取り付ける工程bと、前記建て起こし手段で前記支柱を回転させることにより前記フレーム本体を鉛直方向に立て起こして、前記ストランド鉄筋籠を杭孔上に配置する工程cと、前記ストランド鉄筋籠を前記杭孔内に伸展させ、前記端部支持機構による前記梁部材と前記ストランド鉄筋籠の前記梁部材から遠い側の端部との連結を解除する工程dと、を具備することを特徴とするストランド鉄筋籠の建て込み方法である。
【0013】
第3の発明では、第2の発明の建て込み装置を用いてストランド鉄筋籠の断面形状を保持した状態でフレーム本体を水平な状態から垂直な状態に立て起こして、ストランド鉄筋籠を杭孔内に伸展させる。これにより、ストランド鉄筋籠の断面形状の変形を防止しつつ、ストランド鉄筋籠を立て起こして杭孔内に円滑に伸展させることができる。
【0014】
前記工程bと前記工程cとの間に、前記台車を前記杭孔近傍に移動させることが望ましい。
これにより、充分な作業空間を確保できる場所でストランド鉄筋籠を形状保持機構に挿通した後、ストランド鉄筋籠を杭孔近傍に移動させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水平な状態から垂直な状態に立て起こす際にストランド鉄筋籠の形状を保持して変形を防止できる形状保持機構、ストランド鉄筋籠の建て込み装置及びストランド鉄筋籠の建て込み方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】建て込み装置1を示す図。
図2】建て込み装置1にストランド鉄筋籠27を設置する前の状態を示す図。
図3】建て込み装置1にストランド鉄筋籠27を設置した状態を示す図。
図4】ストランド鉄筋籠27を杭孔33上に配置した状態を示す図。
図5】ストランド鉄筋籠27の伸展を開始した状態を示す図。
図6】ストランド鉄筋籠27の伸展が完了した状態を示す図。
図7】ストランド鉄筋籠27を吊鉄筋37で受け替えた状態を示す図。
図8】建て込み装置1を退避させた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は建て込み装置1を示す図である。図1(a)は、建て込み装置1の側面図、図1(b)は、建て込み装置1を図1(a)の右方向から見た立面図である。
【0019】
図2は、建て込み装置1にストランド鉄筋籠27を設置する前の状態を示す図である。図2(a)は、建て込み装置1およびストランド鉄筋籠27の側面図、図2(b)はストランド鉄筋籠27を図2(a)の右方向から見た図である。
【0020】
図3は、建て込み装置1にストランド鉄筋籠27を設置した状態を示す図である。図3(a)は建て込み装置1およびストランド鉄筋籠27の側面図、図3(b)は建て込み装置1およびストランド鉄筋籠27を図3(a)の右方向から見た図である。
【0021】
図2図3に示すように、主筋であるPC鋼より線等と帯筋とが、主筋が帯筋に対して回転可能となるように結合されたものであり、主筋を螺旋状にすることにより帯筋の配筋間隔が縮められて縮小される。ストランド鉄筋籠27は、主筋を直線状にすることにより帯筋の配筋間隔が拡げられて伸展される。ストランド鉄筋籠27の内部には、補剛のための補強鋼材29が配置される。
【0022】
図1から図3に示すように、建て込み装置1は、形状保持機構3、支柱9、シリンダ13、ウインチ15、ワイヤロープ17、台車23等からなる。
【0023】
形状保持機構3は、内挿フレーム5、可動部材7a、非可動部材7b、端部支持機構31(図2(b)参照)等からなる。また、図1(a)に示すように、内挿フレーム5は、ストランド鉄筋籠27に内挿されるフレーム本体5aと、フレーム本体5aの一端に固定された梁部材5bとからなる。フレーム本体5aは、ストランド鉄筋籠27を縮めた時の長さより長い。
【0024】
可動部材7aは、ストランド鉄筋籠27の挿入方向すなわち内挿フレーム5のフレーム本体5aの長さ方向に平行な部材であり、水平な状態のフレーム本体5aの下面側にピン7c(図1(b)参照)によって連結される。非可動部材7bは、可動部材7aに平行な部材であり、水平な状態のフレーム本体5aの上面側に固定される。可動部材7a、非可動部材7bは、例えば断面が円形の鋼材である。
【0025】
1本の可動部材7aと2本の非可動部材7bとを含む外接円の径は、ピン7cを中心として可動部材7aを回転移動させてフレーム本体5aからの可動部材7aの距離を変化させることによって拡縮する。すなわち図3(b)において可動部材7aが点線で示す位置にある時は前記の外接円の径を縮めた状態であり、可動部材7aが実線で示す位置にある時は前記の外接円の径を拡げた状態である。可動部材7aにはフレーム本体5aとの距離(可動部材7aの位置)を固定するための図示しない固定装置が設けられる。
【0026】
図3(a)、図3(b)に示すように、端部支持機構31は、ワイヤロープ17、チェーン固定枠31a、チェーン31b、回転治具31cからなる。ワイヤロープ17は、内挿フレーム5の梁部材5bに連結され、梁部材5bから巻き出される線材である。チェーン固定枠31aは、フレーム本体5aが内挿されたストランド鉄筋籠27の梁部材5bから遠い側の端部(図3参照)の補強鋼材29に固定された枠材である。回転治具31cは、ワイヤロープ17の端部に設けられる。チェーン31bは、一端が回転治具31cに、他端がチェーン固定枠31aに対して着脱可能である。チェーン31bは、例えば遠隔操作可能な図示しないロック機構によって回転治具31cに連結される。
【0027】
補強鋼材29は、形鋼を円形に加工したものであり、ストランド鉄筋籠27内に複数段配置される。複数の補強鋼材29の内径は、図3(b)に示すように1本の可動部材7aと2本の非可動部材7bとを含む外接円の径を拡げた状態において可動部材7aおよび非可動部材7bが複数の補強鋼材29を同程度の力で保持するように統一しておくことが好適である。
【0028】
図1に示すように、支柱9は、一端が形状保持機構3の内挿フレーム5の梁部材5bに固定される。支柱9の他端は、ヒンジ部11を介して台車23に連結される。支柱9のヒンジ部11側の端部には、支柱9と直交する方向の部材である支持台10が固定される。
【0029】
シリンダ13は、ヒンジ部11を中心として支柱9を回転させる立て起こし手段である。シリンダ13は、一端がピン13aによって台車23上に連結され、他端がピン13bによって支柱9に連結される。
【0030】
ウインチ15は、台車23上に設置される。端部支持機構31と連結されたワイヤロープ17は、梁部材5bに設けられた滑車19bで方向転換されて台車23上に設けられた滑車19aに引っ掛けられ、ウインチ15に接続される。台車23には車輪25が設けられる。
【0031】
次に、ストランド鉄筋籠27の建て込み方法について説明する。
【0032】
ストランド鉄筋籠27を建て込むには、建て込み装置1をストランド鉄筋籠27の保管場所近傍に配置する。このとき、図1(a)に示すように、建て込み装置1の内挿フレーム5のフレーム本体5aを水平方向に配置し、支柱9をヒンジ部11と台車23上に設置された架台21とで支持する。また、図1(b)に示すように、建て込み装置1の可動部材7aとフレーム本体5aとの距離小さくし、前記した図示しない固定装置によって可動部材7aの位置を固定する。
【0033】
そして、図2(a)に示すように、図示しないクレーンの吊り治具26を縮めた状態のストランド鉄筋籠27の内部に通し、ストランド鉄筋籠27を吊り下げる。このとき、図2(a)に示すストランド鉄筋籠27の右側の端部には、図2(b)に示すように、帯筋に補強鋼材29が一体化され、補強鋼材29に端部支持機構31のチェーン固定枠31aが固定されている。
【0034】
次に、吊り治具26で吊り下げたストランド鉄筋籠27を図2に示す矢印の方向に移動させて、図3に示すように、水平方向に配置された状態のフレーム本体5aをストランド鉄筋籠27に内挿する。そして、吊り治具26をストランド鉄筋籠27から抜き取る。
【0035】
フレーム本体5aをストランド鉄筋籠27に内挿したら、可動部材7aの位置の固定を解除する。そして、図3(b)に示すようにピン7cを中心に可動部材7aを回転移動させて可動部材7aのフレーム本体5aからの距離を大きくし、前記した図示しない固定装置によって可動部材7aを移動後の位置に固定する。これにより、1本の可動部材7aと2本の非可動部材7bを含む外接円の径がストランド鉄筋籠27の内部に配置された補強鋼材29の内径と同等程度に拡大し、可動部材7aおよび非可動部材7bによってストランド鉄筋籠27の断面形状が円形に保持される。このとき、可動部材7aおよび非可動部材7bは、補強鋼材29の内周面に対して強く押し付けられないものとする。
【0036】
また、ストランド鉄筋籠27の梁部材5bから遠い側の端部すなわち図3(a)に示す右側の端部に固定されたチェーン固定枠31aに、端部支持機構31のチェーン31bを取り付ける。これにより、ストランド鉄筋籠27の梁部材5bから遠い側の端部の位置が保持される。
【0037】
次に、建て込み装置1の台車23を走行させて、ストランド鉄筋籠27の保管場所近傍から杭孔33近傍に移動させる。ストランド鉄筋籠27の保管場所近傍から杭孔33近傍までの地盤2上には図示しないレールが敷設されており、台車23は例えば図示しないウインチで牽引することでレール上を走行する。台車23の車輪25が図示しないレール上の所定の位置に到達したら、移動を完了して建て込み装置1の位置を固定する。台車23は、図3に示す所定の位置に到達した状態で、少なくとも杭孔33の直上に対応する位置に切欠きを有する。
【0038】
図4は、ストランド鉄筋籠27を杭孔33上に配置した状態を示す図である。建て込み装置1を杭孔33近傍に移動させたら、図4に示すように、シリンダ13を伸長してヒンジ部11を中心として支柱9を回転させることにより、フレーム本体5aを鉛直方向に立て起こしてストランド鉄筋籠27を杭孔33上に配置する。このとき、支持台10は台車23の上面に接触して支柱9を支える。
【0039】
図5は、ストランド鉄筋籠27の伸展を開始した状態を示す図、図6は、ストランド鉄筋籠27の伸展が完了した状態を示す図である。ストランド鉄筋籠27を杭孔33上に配置したら、ウインチ15を用いてワイヤロープ17を巻き出して、図5に示すようにストランド鉄筋籠27を杭孔33の所定の深さまで吊り下ろす。そして、ストランド鉄筋籠27の上端と内挿フレーム5の梁部材5bとをチェーン35で連結することにより、ストランド鉄筋籠27の上端の位置を固定する。このとき、ストランド鉄筋籠27の重量は主に端部支持機構31を介して梁部材5bで支持されている。
【0040】
ストランド鉄筋籠27の上端の位置をチェーン35で固定したら、ワイヤロープ17をさらに巻き出す。ストランド鉄筋籠27は、下端がチェーン31bを介して回転治具31cに連結されているので、上端を固定した状態でワイヤロープ17をさらに巻き出すと、下端側が回転しつつ自重によって杭孔33内に伸展していく。そして、図6に示すように主筋が直線状になったら伸展が完了する。図6に示す伸展完了時、ストランド鉄筋籠27の重量は主にチェーン35を介して梁部材5bで支持される。
【0041】
ここで、ストランド鉄筋籠27が伸展している間、形状保持機構3の可動部材7aは、可動部材7aと非可動部材7bとを含む外接円の径がストランド鉄筋籠27の内部に配置された補強鋼材29の内径と同等程度となる位置に固定されたままである。上記したように、可動部材7aおよび非可動部材7bは補強鋼材29の内周面に対して強く押し付けられないので、伸展中に可動部材7aおよび非可動部材7bからストランド鉄筋籠27に力が作用することはない。そのため、ストランド鉄筋籠27は形状保持機構3によって断面形状が保持された状態で円滑に伸展される。
【0042】
図7は、ストランド鉄筋籠27を吊鉄筋37で受け替えた状態を示す図、図8は、建て込み装置1を退避させた状態を示す図である。ストランド鉄筋籠27の伸展が完了したら、前記した図示しないロック機構を遠隔操作して回転治具31cからチェーン31bを取り外すことによって、端部支持機構31による梁部材5bとストランド鉄筋籠27の下端部との連結を解除する。そして、ウインチ15でワイヤロープ17を巻き取って回転治具31cを杭孔33内から回収する。チェーン31bはチェーン固定枠31aに連結されたままストランド鉄筋籠27とともに杭孔33内に残置される。
【0043】
また、可動部材7aをフレーム本体5aに近づく方向に移動させて、可動部材7aと非可動部材7bとを含む外接円の径を縮める。そして、ストランド鉄筋籠27の上端に設けた吊鉄筋37でストランド鉄筋籠27を受け替えて図6に示すチェーン35を撤去し、ストランド鉄筋籠27を杭孔33内に吊り下ろして、図7に示すように地盤2上に設けたかんざし39で吊鉄筋37を支持する。
【0044】
次に、シリンダ13を縮めてヒンジ部11を中心として支柱9を回転させることにより、図8に示すようにフレーム本体5aを水平方向に寝かせる。そして、建て込み装置1の位置の固定を解除し、台車23を走行させて杭孔33近傍から退避させる。
【0045】
このように、本実施形態では、可動部材7aのフレーム本体5aからの距離を小さくして、可動部材7aと非可動部材7bとを含む外接円の径を縮めることにより、ストランド鉄筋籠27にフレーム本体5aを円滑に内挿することができる。また、可動部材7aのフレーム本体5aからの距離を大きくして、可動部材7aと非可動部材7bとを含む外接円の径を広げることにより、可動部材7aと非可動部材7bとでストランド鉄筋籠27の断面形状を円形に保持することができる。
【0046】
本実施形態では、建て込み装置1の形状保持機構3を用いてストランド鉄筋籠27の断面形状を保持することにより、ストランド鉄筋籠27を水平な状態から垂直な状態に立て起こす際や杭孔33内に伸展する際に、ストランド鉄筋籠27の変形を防止することができる。また、回転治具31cを有する端部支持機構31を用いて梁部材5bとストランド鉄筋籠27の下端部とを連結することにより、ストランド鉄筋籠27の自重の一部を支持しつつ下端部を回転させて、長尺のストランド鉄筋籠27を円滑に伸展することができる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0048】
例えば、形状保持機構3はフレーム本体5aの外周側に可動部材7aを有すればよく、非可動部材7bの設置は必須ではない。また、可動部材7aは、フレーム本体5aからの距離が可変であるようにフレーム本体5aに連結されていればよい。本実施形態では可動部材7aをピン7cによって回転移動させたが、可動部材7aをスライド移動させてフレーム本体5aからの距離を変化させてもよい。
【0049】
端部支持機構31の構成は上記したものに限らず、建て起こした状態のストランド鉄筋籠27の下端部の回転を妨げないようなものであればよい。また、支柱9を回転して起こす建て起こし手段はシリンダ13に限らず、クレーン等で内挿フレーム5を吊り上げてもよい。
【0050】
台車23は図示しないレール上を牽引されるものでなく、自走式でもよい。また、ストランド鉄筋籠27の外周面にスペーサをあらかじめ設けておき、ストランド鉄筋籠27を杭孔33内に吊り下ろして伸展する際にスペーサによって平面視における杭孔33に対するストランド鉄筋籠27の位置を決定してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1………建て込み装置
2………地盤
3………形状保持機構
5………内挿フレーム
5a………フレーム本体
5b………梁部材
7a………可動部材
7b………非可動部材
7c、13a、13b………ピン
9………支柱
10………支持台
11………ヒンジ部
13………シリンダ
15………ウインチ
17………ワイヤロープ
19a、19b………滑車
21………架台
23………台車
25………車輪
26………吊り治具
27………ストランド鉄筋籠
29………補強鋼材
31………端部支持機構
31a………チェーン固定枠
31b………チェーン
31c………回転治具
33………杭孔
35………チェーン
37………吊鉄筋
39………かんざし
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8