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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】油入変圧器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/14 20060101AFI20221214BHJP
   H01F 27/02 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H01F27/14 D
H01F27/02 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019098225
(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2020194829
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】芥川 和樹
(72)【発明者】
【氏名】篠原 誠
(72)【発明者】
【氏名】久保田 圭亮
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】実公昭06-008513(JP,Y1)
【文献】実開昭53-164615(JP,U)
【文献】特開平07-172152(JP,A)
【文献】特開昭61-146130(JP,A)
【文献】特開2013-229631(JP,A)
【文献】実公昭39-023860(JP,Y1)
【文献】実開昭57-163721(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0118186(US,A1)
【文献】特開2019-124069(JP,A)
【文献】登録実用新案第3219610(JP,U)
【文献】特開2011-104791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/14
H01F 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心-コイル組立体と、前記鉄心-コイル組立体を収容し、絶縁油を封入したタンクとを備える油入変圧器であって、
タンク底板の底面は、水平な平面であり、
前記タンク底板の底面に、タンク底板の底面中心を通る直線状の、一端から他端に向けて次第に高さが低くなる傾斜構造の第一の排油溝を有し、
前記第一の排油溝と交差し、これと連通する複数の第二の排油溝を有し、
前記第一の排油溝の高さが低くなる傾斜下側に排油弁座を取り付けたことを特徴とする油入変圧器。
【請求項2】
請求項に記載の油入変圧器において、
前記複数の第二の排油溝は、前記第一の排油溝に向けて次第に高さが低くなる傾斜構造を有していることを特徴とする油入変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁油を封入するタンクを備えた油入変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に、従来構造の油入変圧器タンクの一例の全体図を示し、図5(a)は油入変圧器タンクの上面501aを、図5(b)は正面501bを示している。
【0003】
油入変圧器のタンクは、側壁を形成する放熱フィン502の上端をフランジ部材503に、そして、下端を底板504に、それぞれ溶接により接合している。底板504の側面には排油弁座を溶接により接合している。排油弁座は、排油弁505を取り付けるための座であり、排油弁505は絶縁油の交換等に使用される。排油弁505を操作することによりタンクから取り出す絶縁油の量を調整することができる。タンクの下部側面に排油弁を設けた油入変圧器が、特許文献1に開示されている。
【0004】
タンクには、鉄心-コイル組立体から成る変圧器本体を収容し、絶縁油が封入されている。絶縁油は絶縁機能や冷却機能を有し、変圧器を長年使用すると劣化によりこれらの能力が低下し、新しい絶縁油に交換する必要がある。その際は、排油弁から劣化した絶縁油を取り出す。一般的に絶縁油には鉱油が用いられるが、環境負荷低減の観点から生分解性を有するエステル油を用いる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-148707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
背景技術に記載した、油入変圧器のタンクは、絶縁油の交換等の排油時に、排油弁よりも下部の絶縁油を取り出すことができない構造である。変圧器内部のコイルに使用される絶縁紙に含浸している絶縁油に関しては取り出すことは不可能であるが、タンク下部に残る絶縁油は全て取り出すことが理想である。交換前の劣化した絶縁油が多量に残っている場合、絶縁油を交換しても絶縁機能や冷却機能が低下してしまう。また、交換後の絶縁油としてエステル油を用いる場合には、前記に加え生分解性の性能低下につながり、また難燃性のエステル油を用いる場合には更に引火点や燃焼点の低下につながってしまう。
【0007】
そこで本発明は、油入変圧器において、絶縁油の交換等の排油時に、劣化した絶縁油を効率良く取り出し、タンク下部に残る絶縁油を限りなく少量にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
【0009】
本発明の「油入変圧器」の一例を挙げるならば、鉄心-コイル組立体と、前記鉄心-コイル組立体を収容し、絶縁油を封入したタンクとを備える油入変圧器であって、タンク底板の底面は、水平な平面であり、前記タンク底板の底面に、タンク底板の底面中心を通る直線状の、一端から他端に向けて次第に高さが低くなる傾斜構造の第一の排油溝を有し、前記第一の排油溝と交差し、これと連通する複数の第二の排油溝を有し、前記第一の排油溝の高さが低くなる傾斜下側に排油弁座を取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、絶縁油の交換等の排油時に、劣化した絶縁油を効率良く取り出し、タンク下部に残る絶縁油を限りなく少量にすることができる。
【0011】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1に関わる油入変圧器のタンクの底板を示す図である。
図2】実施例2に関わる油入変圧器のタンクの底板を示す図である。
図3】実施例3に関わる油入変圧器のタンクの底板を示す図である。
図4】実施例4に関わる油入変圧器のタンクの底板を示す図である。
図5】従来構造の油入変圧器タンクの一例の全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1の油入変圧器タンクの底板を示し、図1(a)は平面図、図1(b)は正面図である。
【0015】
タンク底板101は、底面(底面部)103と、側面部と、底面と側面部とを接続する接続部を備えている。なお、タンク底板101の上には、図5に示すように、放熱フィン502を形成するタンクの側壁が設けられる。そして、タンクには、鉄心-コイル組立体から成る変圧器本体を収容し、絶縁油が封入される。
【0016】
本実施例では、タンク底板101の底面103が僅かな傾斜構造を有している。タンク底面は平板から構成され、図に示すように、右側から左側にかけて次第に高さが低くなるように傾斜している。そして、排油弁座102が、タンク底板101の底面103の、高さが低くなる傾斜下側103aに設けられている。排油弁座102の取り付けは、例えば溶接にて接合すればよい。排油弁座102は、図に示すように、底板の傾斜下側103aとなる側面の中央に設けるのが好ましいが、これに限られるものではなく、中央からずらした位置に設けてもよい。
【0017】
本実施例によれば、絶縁油の交換等の排油時には、絶縁油は底板103の傾斜に沿って流れ、底板103の高さが低くなる傾斜下側103aの排油弁座102に集積するため、タンク下部の絶縁油を限りなく少量にすることが可能となる。また、タンク底板の底面が平板であるので、構造が簡単である。
【実施例2】
【0018】
図2は、本発明の実施例2の油入変圧器タンクの底板を示し、図2(a)は底板の上面を示す平面図、図2(b)は底板の正面を示す正面図である。
【0019】
本実施例では、タンク底板201の底面203に傾斜構造を有する排油溝204を有している。排油溝204は、図に示すように、タンク底板の底面203の中心に設けた直線状の溝であり、右側から左側にかけて次第に高さが低くなるように傾斜している。そして、排油弁座102が、排油溝204の高さが低くなる傾斜下側204aに設けられている。排油弁座102の取り付けは、例えば溶接にて接合すればよい。なお、タンク底板201の底面203は、水平に設けられている。
【0020】
本実施例によれば、絶縁油の交換等の排油時には、底面203上の絶縁油は排油溝204に流れ込み、排油溝204の傾斜に沿って流れ、排油溝204の高さが低くなる傾斜下側204aの排油弁座102に集積するため、タンク下部の絶縁油を限りなく少量にすることが可能となる。また、変圧器本体を設置するタンク底板の底面203は水平面であるので、変圧器本体の取り付けが容易である。
【実施例3】
【0021】
図3は、本発明の実施例3の油入変圧器タンクの底板を示し、図3(a)は底板の上面を示す平面図、図3(b)は底板の正面を示す正面図である。
【0022】
本実施例では、タンク底板301の底面303に傾斜構造を有する主排油溝(第一の排油溝)304を有するとともに、主排油溝304と交差し連通する複数の副排油溝(第二の排油溝)305を有している。主排油溝304は、図に示すように、タンク底板の底面303の中心に設けた直線状の溝であり、右側から左側にかけて次第に高さが低くなるように傾斜している。副排油溝305は、図に示すように、例えば主排油溝304と直交するように設けた複数の排油溝であり、底板の側面部から主排油溝に向かって直線状に設けられている。なお、図では、副排油溝305を主排油溝と直交するように設けたが、排油弁座102側で主排油溝304と交わるように傾斜させて設けてもよい。副排油溝305は、一定の深さでもよいが、側面部から主排油溝に向かって次第に高さが低くなるような傾斜構造を備えていれば、より好ましい。そして、排油弁座102が、主排油溝304の高さが低くなる傾斜下側304aに設けられている。排油弁座102の取り付けは、例えば溶接にて接合すればよい。なお、タンク底板301の底面303は、水平に設けられている。
【0023】
本実施例によれば、絶縁油の交換等の排油時には、底面303上の絶縁油は近くの副排油溝305に流れ込み、副排油溝305に沿って流れ、主排油溝304へ流れ込む。そして、主排油溝304の高さが低くなる傾斜下側304aの排油弁座102に集積するため、タンク下部の絶縁油を限りなく少量にすることが可能となる。また、主排油溝およびこれに交差し連通する複数の副排油溝を備えているので、絶縁油を効率よく、早く取り出すことができる。さらに、変圧器本体を設置するタンク底板の底面303は水平面であるので、変圧器本体の取り付けが容易である。
【実施例4】
【0024】
図4は、本発明の実施例4の油入変圧器タンクの底板を示し、図4(a)は底板の上面を示す平面図、図4(b)は底板の正面を示す正面図である。
【0025】
本実施例では、タンク底板401の底面403に底面中心405が傾斜下側となるような僅かな傾斜構造を有している。タンク底板401は4つの側面部を備える方形状であり、図に示すように、底面403は各側面部を一辺とし底面中心405を頂点とする4つの三角形の組み合わせから構成されている。そして、各三角形の部分は、側面部から底面中心405に向かって次第に高さが低くなるように傾斜している。そして、底板の底面中心405には孔が空けられ、排油弁座102が設けられている。排油弁座102の取り付けは、例えば溶接にて接合すればよい。タンク底板の製造は、例えば平板状の鋼板を、折り曲げ部404で折れ曲がるようにプレス等で加工することにより製造できる。
【0026】
本実施例によれば、絶縁油の交換等の排油時には、底面403上の絶縁油は底面403の傾斜にしたがって底面中心405へ流れ、高さが低くなる傾斜下側の排油弁座102に集積するため、タンク下部の絶縁油を限りなく少量にすることが可能となる。また、排油弁座が底板の底面中心に設けられているので、絶縁油を効率よく、早く取り出すことができる。
【符号の説明】
【0027】
101…タンク底板
103…タンク底板の底面
103a…底面の傾斜下側
102…排油弁座
201…タンク底板
203…タンク底板の底面
204…排油溝
204a…排油溝の傾斜下側
301…タンク底板
303…タンク底板の底面
304…主排油溝
304a…主排油溝の傾斜下側
305…副排油溝
401…タンク底板
403…タンク底板の底面
404…折り曲げ部
405…底面中心
501a…タンクの平面
501b…タンクの正面
502…フィン
503…フランジ部材
504…タンクの底板
505…排油弁
図1
図2
図3
図4
図5