(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】電気機械変換器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02N 1/00 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
H02N1/00
(21)【出願番号】P 2019108709
(22)【出願日】2019-06-11
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100161089
【氏名又は名称】萩原 良一
(72)【発明者】
【氏名】池田 智夫
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/174077(WO,A1)
【文献】特開2009-232667(JP,A)
【文献】特開2018-098835(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062195(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/00- 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器であって、
固定基板と、
前記固定基板との間で一定の距離を保って前記固定基板に対して相対移動可能であり、前記固定基板との対向面に溝部を有し、前記溝部および前記溝部以外の部分である基台部が移動方向に交互に配置された可動部材と、
前記対向面における前記基台部上に配置され、前記移動方向における幅が前記基台部よりも大きく、前記移動方向における端部が前記溝部上に突出している帯電部と、
前記固定基板の前記可動部材との対向面に配置された対向電極と、
を有
し、
前記移動方向における前記基台部の両端で前記帯電部が前記溝部上に突出している、
ことを特徴とする電気機械変換器。
【請求項2】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器であって、
固定基板と、
前記固定基板との間で一定の距離を保って前記固定基板に対して相対移動可能であり、前記固定基板との対向面に溝部を有し、前記溝部および前記溝部以外の部分である基台部が移動方向に交互に配置された可動部材と、
前記対向面における前記基台部上に配置され、前記移動方向における幅が前記基台部よりも大きく、前記移動方向における端部が前記溝部上に突出している帯電部と、
前記固定基板の前記可動部材との対向面に配置された対向電極と、
前記可動部材を挟んで前記固定基板とは反対側に配置された第2の固定基板と、
前記第2の固定基板の前記可動部材との対向面に配置された第2の対向電極と、
前記可動部材の前記第2の固定基板との対向面における前記基台部上に配置された第2の帯電部と、を有
し、
前記溝部が前記可動部材を厚さ方向に貫通しており、
前記移動方向における前記第2の帯電部の端部が前記溝部上に突出しておらず、
前記帯電部と前記対向電極との距離が前記第2の帯電部と前記第2の対向電極との距離よりも大きい、
ことを特徴とする電気機械変換器。
【請求項3】
前記可動部材を挟んで前記固定基板とは反対側に配置された第2の固定基板と、
前記第2の固定基板の前記可動部材との対向面に配置された第2の対向電極と、
前記可動部材の前記第2の固定基板との対向面における前記基台部上に配置された第2の帯電部と、をさらに有し、
前記溝部が前記可動部材を厚さ方向に貫通しており、
前記移動方向における前記第2の帯電部の幅が前記基台部よりも大きく、前記移動方向における前記第2の帯電部の端部が前記溝部上に突出している、請求項1に記載の電気機械変換器。
【請求項4】
前記帯電部と前記対向電極との距離が前記第2の帯電部と前記第2の対向電極との距離と同じである、請求項3に記載の電気機械変換器。
【請求項5】
前記可動部材が回転部材であり、
前記溝部、前記基台部、前記帯電部および前記対向電極がそれぞれ前記回転部材の回転軸を中心として放射状に配置されており、
前記帯電部が前記基台部に対して前記回転部材の回転方向に突出している、請求項1~
4のいずれか一項に記載の電気機械変換器。
【請求項6】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器の製造方法であって、
帯電部となる被覆層を第1の基板の表面に形成する工程と、
前記被覆層が形成された側の面を下側に向けて前記第1の基板を台座上に載置し、前記第1の基板をプレス加工して、溝部および前記溝部以外の前記第1の基板の部分である基台部が一方向に交互に配置されるように前記第1の基板に溝部を形成することで、前記一方向における前記基台部上の前記被覆層の幅を前記基台部よりも大きくし、かつ前記一方向における前記被覆層の端部を前記溝部上に突出させる工程と、
前記被覆層を帯電させて前記第1の基板に帯電部を形成する工程と、
電極が配置された第2の基板の前記電極に前記帯電部を対向させ、前記第2の基板との間で一定の距離を保って前記第2の基板に対して前記一方向に相対移動可能に前記第1の基板を設置する工程と、
を有することを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械変換器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半永久的に電荷を保持するエレクトレットを利用することで発生する静電的な相互作用により電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器が知られている(例えば、特許文献1~3を参照)。こうした電気機械変換器は、例えば、固定基板(固定部材)と、固定基板との間で一定の距離を保って移動可能な可動部材と、可動部材の固定基板との対向面に移動方向に間隔を空けて配置された帯電部(エレクトレット)と、固定基板の可動部材との対向面に配置された対向電極(固定電極)と、帯電部および対向電極の間で発生した電力または動力を出力する出力部とを有する。帯電部は、例えば、可動部材となる基板の表面に被覆層を形成し、その被覆層を帯電させることで作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-157658号公報
【文献】特開2017-28910号公報
【文献】特開2014-131418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした電気機械変換器の変換効率を高めるためには、可動部材のうちで帯電部が形成されない領域を溝部として、可動部材を軽量化することが望ましい。しかしながら、溝部を有する可動部材では、その表面の被覆層を帯電させて帯電部を形成するときに、溝部内における可動部材の露出部(側面)に電荷が逃げてしまい、被覆層に電荷が取り込まれ難い(この点は
図5(A)を用いて後述する)。可動部材の表面(上面または下面)だけでなく溝部の内壁(側面)にも被覆層を形成しておけば、帯電工程の際に側面に逃げた電荷も帯電部に取り込むことはできる。しかしながら、可動部材の側面に帯電部を形成しても、その部分は対向電極に対向していないため、電気機械変換器の出力には寄与しない。
【0005】
そこで、本発明は、可動部材が軽量でかつ帯電部の帯電量が多い電気機械変換器およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器であって、固定基板と、固定基板との間で一定の距離を保って固定基板に対して相対移動可能であり、固定基板との対向面に溝部を有し、溝部および溝部以外の部分である基台部が移動方向に交互に配置された可動部材と、その対向面における基台部上に配置され、移動方向における幅が基台部よりも大きく、移動方向における端部が溝部上に突出している帯電部と、固定基板の可動部材との対向面に配置された対向電極とを有することを特徴とする電気機械変換器が提供される。
【0007】
可動部材を挟んで固定基板とは反対側に配置された第2の固定基板と、第2の固定基板の可動部材との対向面に配置された第2の対向電極と、可動部材の第2の固定基板との対向面における基台部上に配置された第2の帯電部とをさらに有し、溝部が可動部材を厚さ方向に貫通しており、移動方向における第2の帯電部の端部が溝部上に突出しておらず、帯電部と対向電極との距離が第2の帯電部と第2の対向電極との距離よりも大きいことが好ましい。
【0008】
可動部材を挟んで固定基板とは反対側に配置された第2の固定基板と、第2の固定基板の可動部材との対向面に配置された第2の対向電極と、可動部材の第2の固定基板との対向面における基台部上に配置された第2の帯電部とをさらに有し、溝部が可動部材を厚さ方向に貫通しており、移動方向における第2の帯電部の幅が基台部よりも大きく、移動方向における第2の帯電部の端部が溝部上に突出していることが好ましい。この場合、帯電部と対向電極との距離が第2の帯電部と第2の対向電極との距離と同じであることが好ましい。
【0009】
移動方向における基台部の両端で帯電部が溝部上に突出していることが好ましい。
【0010】
可動部材が回転部材であり、溝部、基台部、帯電部および対向電極がそれぞれ回転部材の回転軸を中心として放射状に配置されており、帯電部が基台部に対して回転部材の回転方向に突出していることが好ましい。
【0011】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器の製造方法であって、帯電部となる被覆層を第1の基板の表面に形成する工程と、被覆層が形成された側の面を下側に向けて第1の基板を台座上に載置し、第1の基板をプレス加工して、溝部および溝部以外の第1の基板の部分である基台部が一方向に交互に配置されるように第1の基板に溝部を形成することで、一方向における基台部上の被覆層の幅を基台部よりも大きくし、かつ一方向における被覆層の端部を溝部上に突出させる工程と、被覆層を帯電させて第1の基板に帯電部を形成する工程と、電極が配置された第2の基板の電極に帯電部を対向させ、第2の基板との間で一定の距離を保って第2の基板に対して一方向に相対移動可能に第1の基板を設置する工程とを有することを特徴とする製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
上記の電気機械変換器およびその製造方法によれば、可動部材が軽量でかつ帯電部の帯電量が多くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】アクチュエータ10の模式的な斜視図および部分断面図である。
【
図3】回転部材12の例を示す平面図および部分断面図である。
【
図3-2】回転部材12の別の例を示す平面図である。
【
図4】プレス加工による回転部材の作製方法を説明するための部分断面図である。
【
図5】庇部14Eの効果を説明するための図である。
【
図7】アクチュエータ10’’の部分断面図である。
【
図8】エッチングによる回転部材の作製方法を説明するための部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、電気機械変換器およびその製造方法について説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0015】
図1は、電気機械変換器1の概略構成図である。
図1に示すように、電気機械変換器1は、アクチュエータ10および駆動部20を有する。アクチュエータ10は、回転軸11、回転部材12、固定基板13、帯電部14および対向電極15,16を有する。電気機械変換器1は、駆動部20に入力された電気信号をもとに、帯電部14と対向電極15,16との間の静電気力を利用して回転部材12を回転させることにより電力から動力を取り出す駆動装置(エレクトレットモータ)である。
【0016】
図2(A)および
図2(B)は、それぞれ、アクチュエータ10の模式的な斜視図および部分断面図である。
図2(A)に示すように、アクチュエータ10は、回転部材12の下面122と固定基板13の上面131とを対向させ、両者を平行に配置して構成される。
図2(B)では、回転部材12および固定基板13を円周方向に切断した断面を示しており、
図2(B)の横方向が
図2(A)の矢印C方向に相当する。
図1では、アクチュエータ10として、回転部材12の下面122と固定基板13の上面131を並べて示している。
【0017】
回転軸11は、回転部材12の回転中心となる軸であり、回転部材12の中心を貫通している。回転軸11の上下端は、軸受けを介して、図示しない電気機械変換器1の筐体に固定されている。
図2(B)では、簡単のため、回転軸11を図示していない。
【0018】
回転部材12は、可動部材の一例であり、金属、ステンレス鋼(SUS)、ガラスまたはシリコンなどで構成される。軽量化のために、回転部材12の基材はアルミニウムまたはその合金であることが好ましい。例えば、回転部材12の直径は5~20mm程度であり、厚さは100~500μm程度である。回転部材12は、例えば円盤形状を有し、その中心で回転軸11に接続している。回転部材12は、駆動部20に入力された電気信号に応じて帯電部14と対向電極15,16との間で発生する静電気力により、回転軸11の周りを
図2(A)の矢印C方向(時計回りおよび反時計回り)に回転可能である。すなわち、回転部材12は、固定基板13との間で一定の距離を保って、固定基板13に対して相対移動可能である。
【0019】
図2(B)に示すように、回転部材12には、軽量化のために、円周方向(回転部材12の回転方向、移動方向、矢印C方向)に沿って等間隔に、複数の溝部124が形成されている。すなわち、回転部材12には、溝部124および溝部124以外の部分である基台部が、円周方向に交互に、かつ回転軸11を中心として放射状に配置されている。溝部124は、回転部材12を厚さ方向に貫通しているが、
図2(A)では簡単のため図示していない。
【0020】
図3(A)および
図3(B)は、回転部材12の例を示す平面図および部分断面図である。
図3-2(A)および
図3-2(B)は、回転部材12の別の例を示す平面図である。
図3(A)および
図3-2(A)では花弁型の回転部材12A,12A’について、
図3-2(B)では車輪型の回転部材12Bについて、帯電部14が形成されている下面122(
図2(A)を参照)を示している。
図3(B)では、
図3(A)、
図3-2(A)および
図3-2(B)のIIIB-IIIB線に沿った回転部材12A,12A’,12Bの断面を示している。この線に沿った断面は、回転部材12A,12A’,12Bのいずれも同じである。
図3(B)では、図の下側が回転部材の上面121(
図2(A)を参照)に、図の上側が回転部材の下面122にそれぞれ相当する。アクチュエータ10は、
図1~
図2(B)の回転部材12として、回転部材12A,12A’,12Bのいずれを有してもよい。
【0021】
図3(A)および
図3-2(A)に示す回転部材12A,12A’は、その面内で回転軸11を中心として放射状に突出する略台形の24本の突出部123Aを有する。突出部123Aは、互いに同じ形状および大きさを有し、回転部材12Aの円周方向に等間隔に配置されている。突出部123Aは回転部材12Aの基台部に相当し、突出部123A同士の間には、回転部材12Aを厚さ方向に貫通する溝部124A(
図2(B)の溝部124)が形成されている。回転軸11を中心とする同一円周上では、各突出部123Aと各溝部124Aの幅は同じである。
【0022】
図3-2(B)に示す回転部材12Bは、回転軸11を中心として放射状に形成された略台形の18個の貫通孔124Bを有する。貫通孔124Bは、互いに同じ形状および大きさを有し、回転部材12Bの円周方向に等間隔に配置されている。貫通孔124Bは回転部材12Bの溝部(
図2(B)の溝部124)に、貫通孔124B同士の間の部分である平坦部(スポーク部分)123Bは回転部材12Bの基台部に、それぞれ相当する。回転軸11を中心とする同一円周上では、各平坦部123Bと各貫通孔124Bの幅は同じである。
【0023】
帯電部14は、エレクトレット材料で構成された薄膜であり、固定基板13との対向面である回転部材12の下面122に形成されている。帯電部14は、静電荷を保持し、すべて同一の極性(例えば負)に帯電している。帯電部14のエレクトレット材料としては、例えば、CYTOP(登録商標)などの樹脂材料、ポリプロピレンもしくはポリエチレンテレフタレートなどの高分子材料、または、二酸化ケイ素もしくは窒化ケイ素などの無機材料が用いられる。帯電部14の厚さは、例えば15~25μm程度である。
【0024】
回転部材12Aの帯電部14は下面122全体を覆っている。回転部材12A’の帯電部14は、突出部123Aから回転軸11付近にまで延びる略台形の24個の部分領域で構成され、突出部123Aの下面を覆っている。回転部材12Bの帯電部14は、略台形の18個の部分領域で構成され、回転部材12Bの下面における平坦部123Bを覆っている。回転部材12A’,12Bでは、回転軸11を取り囲む円環状の中央部分121cには帯電部14は形成されていない。帯電部14は、回転部材12Aでは全体がひとつながりになっているのに対し、回転部材12A’,12Bでは複数個に分かれている。いずれの回転部材でも、突出部123Aまたは平坦部123Bがある外周側では、帯電部14は、回転軸11を中心として放射状に、かつ円周方向に溝部124Aまたは貫通孔124Bと交互に配置されている。突出部123Aまたは平坦部123Bの個数(すなわち、帯電部14の部分領域の個数)は、図示した24個または18個に限らず、何個でもよい。
【0025】
図2(B)および
図3(B)に符号14Eで示すように、円周方向(矢印C方向)における帯電部14の幅は基台部(突出部123Aまたは平坦部123B)の幅よりも大きく、円周方向における帯電部14の端部は溝部124上に突出している。すなわち、帯電部14は、円周方向における各突出部123Aまたは各平坦部123Bの両端で、基台部から庇状にはみ出て、基台部に対して円周方向に突出している。以下では、帯電部14のこの突出部のことを「庇部14E」という。例えば、回転部材12の厚さdは100μm程度、庇部14Eの幅wは10μm程度であり、この場合、庇部14Eは回転部材12の厚さdの10%程度側方に突出している。
【0026】
固定基板13は、ガラスエポキシ基板などの周知の基板材料で構成される。
図2(A)に示すように、固定基板13は、例えば円盤形状を有し、回転部材12の下面122に対向して回転部材12の下側に配置されている。回転軸11が固定基板13の中心を貫通しているが、固定基板13は、回転部材12とは異なり、電気機械変換器1の筐体に固定されている。
【0027】
対向電極15,16は、それぞれ略台形の複数の電極で構成され、回転部材12との対向面である固定基板13の上面131において、円周方向に交互に、かつ回転軸11を中心として放射状に形成されている。対向電極15同士および対向電極16同士は、回転部材12の基台部および溝部と同様に、円周方向に間隔を空けて形成され、かつ等間隔に配置されている。回転軸11を中心とする同一円周上では、対向電極15および対向電極16の幅は同じであり、その大きさは回転部材12の基台部および溝部の幅と同じかほぼ同じであることが好ましい。また、帯電部14、対向電極15および対向電極16の個数も同じであることが好ましい。
【0028】
ただし、対向電極15,16も、回転部材12Aの帯電部14と同様に、それぞれ、略台形の部分領域同士が互いに連結されてひとつながりになっていてもよい。帯電部14および対向電極15,16の部分領域が放射状かつ円周方向に等間隔に配置されていることが重要であり、これらがそれぞれ複数個あることは必須ではない。
【0029】
駆動部20は、アクチュエータ10を駆動するための回路であり、クロック21および比較器22,23を有する。
図1に示すように、クロック21の出力は比較器22,23の入力に接続され、比較器22の出力は対向電極15に、比較器23の出力は対向電極16に、それぞれ電気配線を介して接続されている。比較器22,23は、それぞれクロック21からの入力信号の電位と接地電位とを比較し、その結果を2値で出力するが、比較器22,23の出力信号は互いに逆の符号である。クロック21からの入力信号がHのときには、対向電極15は+V、対向電極16は-Vの電位になり、入力信号がLのときには、対向電極15は-V、対向電極16は+Vの電位になる。
【0030】
駆動部20は、アクチュエータ10の駆動時に、一方の対向電極15には帯電部14の静電荷と同じ符号の電圧を印加し、他方の対向電極16には帯電部14の静電荷とは異なる符号の電圧を印加して、それらの電圧の符号を交互に反転させる。このように電圧が印加されると、帯電部14が作る電界と対向電極15,16が作る電界との相互作用により、帯電部14と対向電極15,16との間に引力または斥力が発生する。駆動部20は、極性が交互に切り替わる電圧を対向電極15,16に印加することで、帯電部14と対向電極15,16の間で発生する静電気力により回転部材12を回転させる。
【0031】
アクチュエータ10の製造時には、例えば、まず、回転部材12となる基板(第1の基板)の表面に帯電用の図示しない電極が形成され、さらにその上に、帯電部14となる樹脂膜(被覆層)が形成される。そして、その基板をプレス加工することで、基板上に互いに間隔を空けて複数の溝部124が形成される。ただし、基板の材料が金属のような導電性材料の場合には、基板自体を帯電用の電極として利用できるので、必ずしも基板上に電極を形成する必要はない。
【0032】
図4(A)~
図4(D)は、プレス加工による回転部材の作製方法を説明するための部分断面図である。
図4(A)における符号101~103は、それぞれ、プレス機のパンチ、パンチ101の受け側(下側)に配置されるダイ(ダイプレート、台座)、およびダイ102に形成された開口部を示す。符号71はプレス加工されて回転部材12になる基板(例えば、アルミ基板)を示し、符号72,72’は、それぞれ基板71の下面および上面に形成された樹脂膜を示す。回転部材12は下面122(片面)のみに帯電部14を有するが、
図4(A)~
図4(D)では、説明の便宜上、基板71の両面に樹脂膜が形成されている場合を示している。
【0033】
図4(A)~
図4(D)の順序でパンチ101を押下することで、開口部103に合った形状の部分が基板71から切り出される。基板71のうちで
図4(D)における下側に切り出された部分が回転部材12の1つの突出部123Aまたは平坦部123Bに相当し、その左右が溝部124に相当する。
図4(B)に符号72a,72bで示すように、パンチ101の押下により、パンチ101に近い上面側の樹脂膜72’は直ちに切り込まれるが、パンチ101から遠い下面側の樹脂膜72は切断前に引き伸ばされる。この引き伸ばされた部分は、プレス後も完全には戻りきらず、
図4(D)に符号72Eで示すように、基板71の切り出された部分に対して側方に突出する。この突出部が、
図2(B)および
図3(B)に示す帯電部14の庇部14Eになる。すなわち、庇部14Eは、プレス加工によって必然的に形成される。
【0034】
したがって、庇部14E付きの帯電部14を有する回転部材12を作製するには、帯電部14を形成したい側の面をパンチ101とは反対側(ダイ102側、開口部103側)に向けて基板71をダイ102上に載置し、基板71を単にプレス加工すればよい。回転部材12を作製するには樹脂膜72,72’のうちの片方は不要であるから、樹脂膜が形成された側(樹脂膜72側)の面を下側に向けて基板71をダイ102上に載置し、プレス加工を行えばよい。これにより、片面の樹脂膜72に庇部72Eが容易に形成される。
【0035】
そして、切り出された基板71に回転軸11を取り付け、基板71上の樹脂膜72を帯電させることで帯電部14が形成される。帯電部14は、例えばコロナ放電により形成してもよい。その際は、例えば、基板が接地されるとともに、基板の樹脂膜に対向させて針電極が配置され、その針電極に例えば数千V程度の高電圧が掛けられる。こうして、針電極から基板に向けて電子を放出させることにより、樹脂膜が負に帯電して、帯電部14が形成される。帯電部14の形成後に回転部材12に回転軸11を取り付けてもよいが、その作業中に放電して帯電量が減ってしまう可能性があるので、回転軸11の取付け後に帯電部14を形成することが好ましい。
【0036】
以上の工程により、回転部材12が完成する。その後は、対向電極15,16が配置された固定基板13(第2の基板)の対向電極15,16と回転部材12の帯電部14とを対向させ、一定の間隔を空けて回転部材12と固定基板13が平行に配置される。これにより、アクチュエータ10が完成する。
【0037】
図5(A)および
図5(B)は、庇部14Eの効果を説明するための図である。これらの図では、回転部材12となる基板上の樹脂膜の帯電工程を示している。
図5(A)は、樹脂膜に庇部がなく、円周方向における樹脂膜の端部が回転部材12の端部と一致している帯電部14’が形成される場合(比較例)を示し、
図5(B)は、庇部14Eを有する帯電部14が形成される場合(実施例)を示す。回転部材12の形状はどちらも同じであり、回転部材12としては
図3(B)と同様の部分断面を示している。
【0038】
図5(A)の場合には、基板を接地し図示しない針電極と基板との間に高電圧を掛けたときに放出される電子Eのうちの一部は、符号E’で示すように、回転部材12の側面(溝部の内壁)に回り込み、帯電部14’に取り込まれずに逃げてしまう。これに対し、
図5(B)の場合には、庇部14Eがあることで、回転部材12の側面への電子Eの回り込みが妨げられ、帯電部14に取り込まれずに逃げてしまう電荷が少なくなる。このため、庇部14Eがある帯電部14では、庇部がない帯電部14’と比べて多くの電荷が取り込まれ、帯電量が増加する。
【0039】
庇部がある場合とない場合の帯電量を比較した実験結果によれば、回転部材12の厚さの10%程度側方に突出する庇部14Eがある場合の帯電量は、庇部がない場合と比べて20%程度増加すると見積もられる。この増加率は庇部がある場合とない場合の帯電部の面積比よりも大きいため、単に庇部14Eにより帯電部の面積が増えることで帯電量が増加するのではなく、回転部材12の側面への電荷の回り込みが抑えられることが影響していると言える。したがって、アクチュエータ10では、回転部材12に溝部124があることで回転部材12が軽量化され、帯電部14に庇部14Eがあることで帯電量が多くなり、その結果、軽量で静電気力の高いエレクトレットモータが実現される。
【0040】
円周方向における各突出部123Aまたは各平坦部123Bの片方の端部だけが庇部14Eを有しても、庇部がない場合と比べれば帯電量は増加する。しかしながら、
図2(B)および
図3(B)に示すように円周方向の両方の端部に庇部14Eがある方が、帯電量の増加の効果がより大きくなるため好ましい。また、帯電部14は、突出部123Aまたは平坦部123Bの径方向の全体にわたって庇部14Eを有することが好ましい。
【0041】
図6は、アクチュエータ10’の部分断面図である。アクチュエータ10’は、回転軸11(
図6では図示せず)、回転部材12’、固定基板13,13’、帯電部14,14’および対向電極15,16,15’,16’を有する。
図6では、
図2(B)と同様に、回転部材12’および固定基板13,13’を円周方向に切断した断面を示しており、
図6の横方向が
図2(A)の矢印C方向に相当する。
【0042】
アクチュエータ10’の回転軸11、固定基板13、帯電部14および対向電極15,16は、上記したアクチュエータ10のものと同じである。回転部材12’は、回転部材12’を貫通する溝部124同士の間における下面に帯電部14を、溝部124同士の間における上面に帯電部14’をそれぞれ有し、帯電部14’が追加されている点のみがアクチュエータ10の回転部材12とは異なる。回転部材12’は、
図3(A)~
図3-2(B)に示した回転部材12A,12A’,12Bのいずれの形状を有してもよい。固定基板13’は固定基板13と同じものであり、回転部材12’を挟んで固定基板13とは反対側に配置されている。アクチュエータ10’は、固定基板13’、回転部材12’および固定基板13をこの順に互いに一定の間隔を空けて平行に配置して構成される。
【0043】
帯電部14’は、帯電部14と同様のものであるが、帯電部14とは反対側である回転部材12’の固定基板13’との対向面に配置されており、庇部を有していない点が帯電部14とは異なる。すなわち、回転部材12’の円周方向における帯電部14’の端部は、溝部124上に突出しておらず、回転部材12’の端部と一致している。
図4(A)~
図4(D)を用いて説明したように、両面に樹脂膜72,72’を有する基板71をプレス加工すると、片面のみに庇部72Eが形成されるので、必然的に、庇部14Eのある帯電部14と庇部のない帯電部14’とを有する回転部材12’が得られる。
【0044】
対向電極15’,16’は、対向電極15,16と同じものであり、固定基板13’の回転部材12’との対向面に配置されている。対向電極15’,16’には、対向電極15,16とそれぞれ同じ電圧が印加される。これにより、アクチュエータ10’では、回転部材12’の下面側では帯電部14と対向電極15,16の間で、回転部材12’の上面側では帯電部14’と対向電極15’,16’の間でそれぞれ静電気力が発生するので、取り出される動力がアクチュエータ10と比べて大きくなる。
【0045】
図5(A)および
図5(B)を用いて説明したように、帯電部14の方が帯電部14’よりも帯電量が多い。このため、アクチュエータ10’では、固定基板13と固定基板13’の中間に回転部材12’を配置すると、帯電部14と対向電極15,16との間の方が、帯電部14’と対向電極15’,16’との間よりも静電気力が強くなる。この場合、回転部材12’の上面側と下面側で電気機械変換器1の出力が不均一になり、また、帯電部と対向電極の間の引力が上面側と下面側で打ち消し合わず、回転部材12’が一方に引き付けられて回転の妨げとなる。
【0046】
そこで、アクチュエータ10’では、帯電部14と対向電極15,16との間の距離d1を、帯電部14’と対向電極15’,16’との間の距離d2よりも大きくするとよい。すなわち、d1>d2を満たす範囲内で帯電量の差に応じて距離d1,d2を調整し、帯電部14を帯電部14’よりも対向電極から遠ざけるとよい。これにより、回転部材12’の上面側と下面側で帯電量に差があっても、上面側と下面側の出力が均一化され、帯電部と対向電極の間の引力が上面側と下面側で打ち消される。
【0047】
あるいは、アクチュエータ10’の製造時において、帯電部14,14’の帯電工程よりも前に、回転部材12’の側面(各溝部124の内壁)を例えば金属の酸化物や樹脂などの絶縁層で被覆してもよい。こうすると、帯電工程の際に、庇部がない帯電部14’の側でも回転部材12’の側面への電荷の回り込みが抑えられるので、側面を被覆しない場合と比べて帯電部14,14’の帯電量の差が少なくなる。帯電部14と帯電部14’では庇部14Eの分だけ面積が異なるので、側面への電荷の回り込みがなくても帯電量の差は生じ得るが、この面積差は小さいため、面積差に起因する帯電量の差は無視できる。
【0048】
回転部材12’に回転軸11を取り付けてから帯電工程を行う場合、コロナ放電の発生源となる針電極から帯電部14,14’までの距離が回転軸11の長さだけ遠くなり、帯電量が少なくなる。例えば、機構設計上、両面に帯電部14,14’が形成され、回転軸11が一方の面側に長く突き出なければならない場合には、回転軸11が長く突き出る側を庇部14Eがある側にすることで、帯電量の減少を抑えることができ、その結果、両面の帯電部14,14’の帯電量を揃えることができる。
【0049】
図7は、アクチュエータ10’’の部分断面図である。アクチュエータ10’’は、その回転部材12’’の上面側の帯電部14’も下面側の帯電部14と同じ庇部14E’を有し、固定基板13と固定基板13’の中間に回転部材12’’が配置されている点のみが
図6のアクチュエータ10’とは異なる。帯電部14,14’の両方に庇部14E,14E’があれば、両者の帯電量も同等になるため、帯電部14と対向電極15,16との間の距離は、帯電部14’と対向電極15’,16’との間の距離と同じ(d3)でもよい。この場合、
図7における距離d3を、
図6における距離d1,d2の平均として、d1>d3>d2の大小関係を満たすように設定することができる。
【0050】
図8(A)~
図8(D)は、エッチングによる回転部材の作製方法を説明するための部分断面図である。
図7の回転部材12’’のように両面の帯電部14,14’に庇部14E,14E’がある回転部材は、以下のようにエッチングにより作製することができる。
【0051】
例えば、まず、
図8(A)に示すように、基板71の上面と下面に、塗布またはスプレーコートにより樹脂膜72,72’がそれぞれ形成され、フォトリソグラフィにより、樹脂膜72,72’の上にレジストのマスク層73がそれぞれ形成(パターニング)される。続いて、
図8(B)に示すように、アッシング法により、マスク層73が形成されていない部分の樹脂膜72,72’を除去することで、樹脂膜72,72’がパターニングされる。
【0052】
さらに、
図8(C)に示すように、ウェットエッチングにより、マスク層73が形成されていない部分の基板71を削り取ることで、基板71を厚さ方向に貫通する溝部が形成される。その際、符号71Eで示すように、各溝部においてマスク層73の端部よりも基板71の面方向(図の横方向)の内側まで基板71が削り取られ(オーバエッチング)、これにより樹脂膜72,72’の端部が庇部72E,72E’になる。続いて、
図8(D)に示すように、マスク層73が除去される。その後、樹脂膜72,72’を帯電させれば、両面に庇部14E,14E’がある回転部材12’’が得られる。
【0053】
回転部材12’’を作製するには、レジストを使わずに、帯電部となる樹脂膜を印刷やレーザ加工でパターニングして、その樹脂膜をマスク層として利用し、基板をウェットエッチングしてもよい。回転部材の溝部は、プレス加工の場合には(パンチを貫通させないと庇部ができないので)貫通孔になるが、エッチングの場合には必ずしも基板を貫通していなくてもよい。回転部材12のように片面のみに帯電部14を有する回転部材も同様にエッチングで作製してもよく、この場合、溝部124は、少なくとも回転部材12の固定基板13との対向面に形成されていればよい。
【0054】
図9は、電気機械変換器2の概略構成図である。
図9に示すように、電気機械変換器2は、発電部30および蓄電部40を有する。発電部30は、アクチュエータ10と同様に、回転軸11、回転部材12、固定基板13、帯電部14および対向電極15,16を有する。電気機械変換器2は、外部環境の運動エネルギーを用いて回転部材12を回転させ、発電部30内で静電誘導により静電気を発生させることで動力から電力を取り出す発電装置(エレクトレット発電機)である。
【0055】
回転軸11、回転部材12、固定基板13、帯電部14および対向電極15,16はアクチュエータ10のものと同じであるが、発電部30では、回転部材12または回転部材12とは別に、重量バランスの偏りを有する図示しない回転錘が取り付けられる。発電部30では、例えば電気機械変換器2を携帯する人体の運動または電気機械変換器2が取り付けられた機械などの振動を動力源として、回転錘が回転することで回転部材12がその円周方向に回転する。回転部材12が回転すると、それに伴い、帯電部14と対向電極15,16の間の重なり面積が増減する。例えば、帯電部14の内面に負電荷が保持されているとすると、回転部材12の回転に伴い、対向電極15,16に引き寄せられる正電荷が増減して、対向電極15と対向電極16の間に交流電流が発生する。このようにして電流を発生させることにより、発電部30は静電誘導を利用した発電を行う。
【0056】
蓄電部40は、整流回路41および二次電池42を有し、回転部材12の回転に応じて帯電部14と対向電極15,16との間の静電誘導により発生した電力を蓄積する。電気機械変換器2の対向電極15,16は、電気配線を介して整流回路41に接続され、整流回路41は二次電池42に接続されている。整流回路41は、4個のダイオードを有するブリッジ式の回路であり、対向電極15と対向電極16の間で生成された電流を整流する。二次電池42は、リチウム二次電池などの充放電可能な電池であり、発電部30によって発電された電力を蓄積し、図示しない駆動対象の回路にその電力を供給する。
【0057】
発電部30でも、回転部材12として、
図2(B)に示すように庇部14E付きの帯電部14を有するものが使用される。これにより、発電部30でも、回転部材12が軽量化されるとともに帯電部14の帯電量が多くなり、軽量で発電量が多いエレクトレット発電機が実現される。
【0058】
図10(A)~
図10(C)は、電気機械変換器3の概略構成図である。
図10(A)に示すように、電気機械変換器3は、アクチュエータ50および駆動部20を有する。アクチュエータ50は、筐体51、スライド板52、固定基板53、帯電部54および対向電極55,56を有する。
図10(B)はスライド板52の斜視図であり、
図10(C)は、対向電極55,56の配置およびスライド板52の移動方向を示す平面図である。電気機械変換器3は、駆動部20に入力された電気信号をもとに、帯電部54と対向電極55,56との間の静電気力を利用してスライド板52を往復移動させることにより電力から動力を取り出すエレクトレットモータである。電気機械変換器の可動部材は、回転軸の周りに回転するものに限らず、スライド板52のように往復移動するものであってもよい。
【0059】
スライド板52は、可動部材の一例であり、アルミニウムまたはシリコンなどの基材で構成され、図示しない可動支持部により箱型の筐体51内に支持されている。スライド板52は、筐体51の底面に配置された固定基板53との間で一定の距離を保って、固定基板53に平行な方向(水平方向、矢印A方向)に往復移動可能である。スライド板52には、その移動方向と直交する方向に帯状(直線状)に延びる複数の溝部524が、移動方向に等間隔に形成されている。溝部524は簡単のため2個しか図示していないが、その個数は2個よりも多いことが好ましい。ただし、これらの溝部は、端部同士が互いに連結されてひとつながりになっていてもよい。図示した形態とは異なり、溝部524はスライド板52を厚さ方向に貫通していなくてもよい。
【0060】
帯電部54は、エレクトレット材料で構成された薄膜であり、スライド板52の溝部524同士の間の部分である基台部523の下面に、矢印A方向と直交する方向に帯状に形成されている。このため、スライド板52の下面には、複数の帯電部54と溝部524が矢印A方向に交互に配置されている。
図10(B)に示すように、帯電部54も、帯電部14の庇部14Eと同様の庇部54Eを有する。すなわち、スライド板52の移動方向における各帯電部54の幅は各基台部523の幅よりも大きく、移動方向における帯電部54の端部は溝部524上に突出している。
【0061】
対向電極55,56は、固定基板53の上面において、スライド板52の移動方向に交互に、かつその移動方向と直交する方向に帯状に形成されている。対向電極55同士および対向電極56同士はそれぞれ等間隔に配置されており、それらの幅は同じであることが好ましい。また、対向電極55,56の幅は、各基台部523および各溝部524の幅と同じかほぼ同じであることが好ましく、帯電部54、対向電極55および対向電極56の(帯状の部分領域の)個数も同じであることが好ましい。
図10(C)では、図がわかりにくくなるため、溝部524の下方の対向電極55,56は図示していない。
【0062】
駆動部20は、アクチュエータ50を駆動するための回路であり、対向電極55,56に電気配線を介して接続されている。駆動部20は、電気機械変換器1のものと同様の構成を有し、極性が交互に切り替わる電圧を対向電極55,56に印加することにより、
図10(C)に示すように、スライド板52を筐体51内で矢印A方向に往復移動させる。
【0063】
アクチュエータ50でも、帯電部54が庇部54Eを有することで、スライド板52が軽量化されるとともに帯電部54の帯電量が多くなり、軽量で静電気力の高いエレクトレットモータが実現される。発電部30およびアクチュエータ50でも、
図6および
図7に示したアクチュエータ10’,10’’のように、回転部材12またはスライド板52の両面に帯電部を形成し、回転部材12またはスライド板52の両面に対向電極付きの固定基板を対向させてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1,2,3 電気機械変換器
10,10’,10’’,50 アクチュエータ
11 回転軸
12,12’,12’’,12A,12A’,12B 回転部材
13,13’,53 固定基板
14,14’,54 帯電部
14E,14E’ 庇部
15,15’,16,16’,55,56 対向電極
20 駆動部
30 発電部
40 蓄電部
52 スライド板