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特許7194082リヒートプレス用ガラス材料、リヒートプレス済ガラス材料、研磨済ガラス及びそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】リヒートプレス用ガラス材料、リヒートプレス済ガラス材料、研磨済ガラス及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 11/00 20060101AFI20221214BHJP
   C03C 3/15 20060101ALI20221214BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20221214BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
C03B11/00 B
C03C3/15
C03C21/00 Z
G02B1/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019120907
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021006494
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】根岸 智明
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-006112(JP,A)
【文献】国際公開第2009/057586(WO,A1)
【文献】特開2015-206880(JP,A)
【文献】特開2020-007214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 21/00
C03B 11/00
C03C 1/00 - 14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分の合計含有量が1.2質量%以下で含有するガラスと、
前記ガラスを被覆する表面改質層とを含み、
前記表面改質層のLi成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分のうち少なくとも一種の成分の含有量が、前記ガラスの当該成分の含有量よりも多い、リヒートプレス用ガラス材料。
【請求項2】
ホウ酸ランタン系ガラスと、
前記ガラスを被覆する表面改質層とを含み、
前記表面改質層のLi成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分のうち少なくとも一種の成分の含有量が、前記ガラスの当該成分の含有量よりも多い、リヒートプレス用ガラス材料。
【請求項3】
前記表面改質層の厚さは1000nm以下である、請求項1又は2に記載のリヒートプレス用ガラス材料。
【請求項4】
前記ガラスは、Li成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分をいずれも0.1質量%以下含有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリヒートプレス用ガラス材料。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のリヒートプレス用ガラス材料由来のリヒートプレス済ガラス材料。
【請求項6】
請求項5に記載のリヒートプレス済ガラス材料由来の研磨済ガラス。
【請求項7】
ガラス原料をLi成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分の合計含有量が1.2質量%以下のガラスになるように熔融し、その後冷却することによりガラスを製造する工程と、
前記ガラスをLi成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分の少なくとも一種を含む溶融塩に浸漬させることにより、前記ガラスの表面に表面改質層を形成させる工程と、を含むリヒートプレス用ガラス材料の製造方法。
【請求項8】
ホウ酸ランタン系ガラスの原料を熔融し、その後冷却することによりホウ酸ランタン系ガラスを製造する工程と、
前記ホウ酸ランタン系ガラスをLi成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分の少なくとも一種を含む溶融塩に浸漬させることにより、前記ガラスの表面に表面改質層を形成させる工程と、を含むリヒートプレス用ガラス材料の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の製造方法により得られたリヒートプレス用ガラス材料をリヒートプレスする工程を含む、リヒートプレス済ガラス材料の製造方法。
【請求項10】
請求項9の製造方法により得られたリヒートプレス済ガラス材料を研削及び研磨する工程を含む研磨済ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス表面に処理を施したリヒートプレス用ガラス材料、リヒートプレス済ガラス材料、研磨済ガラス及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から光学ガラスの成形方法として、所定の形状のガラス材料(リヒートプレス用ガラス材料)を下型と上型とを備えた金型に供給し、当該ガラス材料を加熱軟化させた後に前記金型でプレス成形し、成形済のガラスを取り出すようにしたリヒートプレス方式が広く知られている。また、大口径の光学レンズは、その他の方式によって製造することが難しく、一般的にはリヒートプレス方式が採用されている。
【0003】
しかしながら、ガラス材料をリヒートプレス方式の金型に配置し加熱すると、表面にガラスの結晶に起因する硬い層が形成され、軟化しにくくなってしまう場合がある。このような状態でプレスを行うと、ガラス材料が角を有する形状の場合、硬い結晶になっている端部や角がレンズ材料の内部に侵入してしまい、その後の研磨等では取り除けなくなってしまう。最悪の場合は、ガラス材料の内部にも結晶が析出し、均質なガラス材料を得ることができなくなってしまう。
【0004】
また、光学ガラスの材料が結晶化しやすい組成の場合は、加熱軟化の際にガラス材料の表面に形成される結晶層が厚く、最終製品にするためには多くの結晶層を取り除く必要があるので、材料の損失が多くなり無駄が多くなる。また、ガラスは一般的な金型材料などと比べ熱伝導率が小さいことから、同じガラス材料であっても、リヒートプレス工程において、ガラス材料内の温度分布が当該ガラスの結晶化の度合いに差を生じるほど大きくなる場合(例えばレンズの大口径化のために加工寸法を大きくする場合、ガラスの加工精度を高めようとする場合、および厚みの分布を持った形状を加工する場合など)には、ガラスの中の特定の箇所の結晶化を抑制しようとしても、その別の箇所の結晶化を抑えられないか、或いは目的の形状が得られないことがあり、上記のような結晶化の問題はいっそう深刻になる。
【0005】
このように、リヒートプレス方式のガラス成形では、種々の課題があり、その難易度は近年さらに高まっている。このようなリヒートプレス方式に関する技術として、例えば、特許文献1には、ガラス素材に離型のためのコーティング膜を施す技術が開示されている。また、特許文献2には、炭素原子を含有するガラス成形金型を用いて、金型面の保護膜を不要とする技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの文献には、リヒートプレス用光学ガラス材料の結晶層の端部が内部に侵入してしまうことを回避するような技術は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-227136
【文献】特開2002-356334
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ガラス材料を加熱軟化させ、プレスする時に端部や角等の表面結晶層の一部がガラス材料の内部に侵入してしまうことによる異物の混入を防止し、研削及び研磨する量を低減することができる、リヒートプレス用ガラス材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、Li成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分の合計含有量が1.2質量%以下のガラス、及び/又はホウ酸ランタン系ガラスのガラス表面を改質することによって、ガラスの表面結晶層の形成を抑制し、ガラスを軟化しやすくするための方法を検討し、本発明に至った。本発明は、以下を包含する。
[1] Li成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分の合計含有量が1.2質量%以下で含有するガラスと、
前記ガラスを被覆する表面改質層とを含み、
前記表面改質層のLi成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分のうち少なくとも一種の成分の含有量が、前記ガラスの当該成分の含有量よりも多い、リヒートプレス用ガラス材料。
[2] ホウ酸ランタン系ガラスと、
前記ガラスを被覆する表面改質層とを含み、
前記表面改質層のLi成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分のうち少なくとも一種の成分の含有量が、前記ガラスの当該成分の含有量よりも多い、リヒートプレス用ガラス材料。
[3] 前記表面改質層の厚さは1000nm以下である、[1]又は[2]に記載のリヒートプレス用ガラス材料。
[4] 前記ガラスは、Li成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分をいずれも0.1質量%以下含有する、[1]乃至[3]のいずれか一項に記載のリヒートプレス用ガラス材料。
[5] [1]乃至[4]のいずれか一項に記載のリヒートプレス用ガラス材料由来のリヒートプレス済ガラス材料。
[6] [5]に記載のリヒートプレス済ガラス材料由来の研磨済ガラス。
[7 ] ガラス原料をLi成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分の合計含有量が1.2質量%以下のガラスになるように熔融し、その後冷却することによりガラスを製造する工程と、
前記ガラスをLi成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分の少なくとも一種を含む溶融塩に浸漬させることにより、前記ガラスの表面に表面改質層を形成させる工程と、を含むリヒートプレス用ガラス材料の製造方法。
[8] ホウ酸ランタン系ガラスの原料を熔融し、その後冷却することによりホウ酸ランタン系ガラスを製造する工程と、
前記ホウ酸ランタン系ガラスをLi成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分の少なくとも一種を含む溶融塩に浸漬させることにより、前記ガラスの表面に表面改質層を形成させる工程と、を含むリヒートプレス用ガラス材料の製造方法。
[9] [7]又は[8]に記載の製造方法により得られたリヒートプレス用ガラス材料をリヒートプレスする工程を含む、リヒートプレス済ガラス材料の製造方法。
[10] [9]の製造方法により得られたリヒートプレス済ガラス材料を研削及び研磨する工程を含む研磨済ガラスの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリヒートプレス用ガラス材料を加熱軟化しても、硬い表面結晶層の形成を抑制し、プレス時に端部や角の表面結晶層の一部がガラス材料の内部に侵入してしまうことを防止し、研削及び研磨する量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、表面改質層がない場合のリヒートプレスの模式図である。
図2図2は、表面改質層がある場合のリヒートプレスの模式図である。
図3図3は、リヒートプレス用ガラス材料1~4及び比較用リヒートプレス用ガラス材料の製造条件、及び所定時間加熱したときの外観の写真である。
図4図4は、リヒートプレス用ガラス材料5~8及び比較用リヒートプレス用ガラス材料の製造条件、及び所定時間加熱したときの外観の写真である。
図5図5は、リヒートプレス用ガラス材料9~12及び比較用リヒートプレス用ガラス材料の製造条件、及び所定時間加熱したときの外観の写真である。
図6図6は、リヒートプレス用ガラス材料13~15及び比較用リヒートプレス用ガラス材料の製造条件、及び所定時間加熱したときの外観の写真である。
図7図7は、リヒートプレス用ガラス材料16~17及び比較用リヒートプレス用ガラス材料の製造条件、及び所定時間加熱したときの外観の写真である。
図8図8は、リヒートプレス用ガラス材料7について、LIBS(Laser Induced Breakdown Spectroscopy)を用いて測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[リヒートプレス用ガラス材料]
以下、リヒートプレス用ガラス材料について説明する。尚、本明細書では特に断らない限り、ガラス組成を表示する際に使用する「%」は、「質量%」を意味する。また、本明細書において、数値範囲を特定するときに用いる「~」は、上限及び下限のいずれもその範囲に含まれるものとする。例えば、ガラス構成成分の含有量として「10~20%」と表示する場合は、10質量%以上であり、かつ20質量%以下であることを意味する。また、ガラス構成成分の含有量は、酸化物に換算した量とする。さらに、ガラス構成成分の含有量(含有率)は、公知の方法、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)等の方法で定量することができ、本発明において、ガラス構成成分の含有量が0%とは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、当該成分が不可避的不純物レベルで含まれることを許容するものである。
また、本明細書において、「アルカリ金属」とは、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Rb(ルビジウム)、Cs(セシウム)、Fr(フランジウム)を言う。
【0013】
また、本明細書においてリヒートプレス用ガラス材料とは、その材料を用いてリヒートプレス工程を経ることにより、最終的な製品であるガラスを得るための材料である。
【0014】
[母ガラス]
(第一態様)
本発明のリヒートプレス用ガラス材料の第一態様は、アルカリ金属成分(Li成分(LiO)、Na成分(NaO)、K成分(KO)、Rb成分(RbO)、Cs成分(CsO)及びFr成分(FrO))の合計含有量が1.2質量%以下(0質量%を含む)のガラスを、母ガラスとして使用する。
第一態様のガラスの種類としては、アルカリ金属成分を酸化物として、1.2質量%以下含有するガラスであれば、特に制限されることなく実施することができる。
【0015】
第一態様の母ガラスにおける各アルカリ金属成分の含有量は、金属酸化物基準として、ガラス全量に対して1.2%以下であるが、好ましくは、1.1%以下、0.8%以下、0.5%以下、0.3%以下、0.1%以下、0.08%以下、0.05%以下、0.03%以下、0.01%以下とすることができ、全てのアルカリ金属成分の含有量を0%にすることもできる。アルカリ金属成分の含有量が少ない場合、高屈折率化しやすいという利点がある。なお、本発明は、アルカリ金属成分を含めるとガラスとして不安定になってしまう(ガラスにならず、結晶が形成されてしまう)ガラスにも適用できる場合がある。
【0016】
第一態様の母ガラスの他のガラス成分は下記の通りである。
【0017】
第一態様の母ガラスは、SiO、P、及びB成分のうち一種以上を含むことができる。これらの成分はガラスの骨格を構成する成分であり、ガラスの熱的安定性を改善する成分である。また、低屈折率、低分散に寄与する成分である。SiO、P、及びB成分の含有量は特に限定されず、任意の含有量にすることできる。SiO、P、B成分の上限は、例えば、それぞれ99%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下であってもよく、下限は、例えばそれぞれ0%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%、90%以上であってもよい。
【0018】
また、SiO、P、B成分の含有量の合計(SiO+P+B)についても特に限定されず、任意の値をとることができ、SiO+P+Bの上限は、例えば、99%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下であってもよい。下限は、例えば0%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上であってもよい。
【0019】
第一態様の母体となるガラスは、Li成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分の少なくともいずれか一種を含有することができるが、これら成分の合計含有量は、上記のとおり、1.2質量%以下(0質量%を含む)である。LiO、NaO、及びKOはガラスの熔融性を改善する成分であり、ガラスの熱的安定性を改善させる場合がある。また、ガラスの転移温度を低下させる成分である。
【0020】
アルカリ金属の中でLiOとNaO成分は、KO、RbO及びCsO成分よりも屈折率を高め、高分散に寄与する場合がある成分である。LiOとNaO成分の含有量の合計(LiO+NaO)の上限については、ガラス全量に対して好ましくは1.2%以下、1.1%以下、0.8%、0.5%以下、0.3%以下、0.1%以下、0.08%以下、0.05%以下、0.03%以下、0.01%以下とすることができ、全てのアルカリ金属成分の含有量を0%にすることもできる。
【0021】
O成分は、RbO及びCsO成分よりも、屈折率を高め、高分散に寄与する場合がある成分である。前述のLiO及びNaOの含有量の合計にKOを加えたLiOとNaOとKOの含有量の合計(LiO+NaO+KO)の上限については、ガラス全量に対して好ましくは1.2%以下、1.1%以下、0.8%、0.5%以下、0.3%以下、0.1%以下、0.08%以下、0.05%以下、0.03%以下、0.01%以下とすることができ、全てのアルカリ金属成分の含有量を0%にすることもできる。
【0022】
MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnO成分は、ガラスの熔融性を改善する成分であり、ガラスの熱的安定性を改善させる場合がある。また、MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnO成分は、ガラス転移温度を低下させる成分であり、NaO、KO、及びCsO成分よりも屈折率を高める場合がある。MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnO成分のそれぞれの含有量についても特に限定はなく、MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnO成分のそれぞれの含有量の上限は、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.5%以下であってもよい。
【0023】
MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnO成分のそれぞれの含有量の下限は、例えば、0%以上、1%以上、3%以上、5%以上、7%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上であってもよい。
【0024】
MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnO成分のそれぞれの含有量の合計(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)についても特に限定はなく、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnOの上限は、例えば、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.5%以下であってもよい。
【0025】
MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnO成分のそれぞれの含有量の合計(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)の下限は、例えば、0%以上、1%以上、3%以上、5%以上、7%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上であってもよい。
【0026】
La、Gd、Y、及びYb成分は、MgO、CaO、SrO、及びBaO成分に比べて屈折率を高める成分であり、高屈折率、低分散に寄与する成分である。La、Gd、Y、及びYb成分を導入することによりガラスの熱的安定性を改善させる場合もある。La、Gd、Y、及びYb成分のそれぞれの含有量は特に限定はなく、La、Gd、Y、及びYbのそれぞれの含有量の上限は、例えば、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.5%以下であってもよい。
【0027】
La、Gd、Y、及びYb成分のそれぞれの含有量の下限は、例えば、0%以上、1%以上、3%以上、5%以上、7%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上であってもよい。
【0028】
La、Gd、Y、及びYb成分の含有量の合計(La+Gd+Y+Yb)も特に限定されず、La+Gd+Y+Ybの上限は、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.5%以下あってもよい。
【0029】
La、Gd、Y、及びYb成分の含有量の合計(La+Gd+Y+Yb)の下限は、0%以上、1%以上、3%以上、5%以上、7%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上であってもよい。
【0030】
TiO、Nb、Ta、WO、及びBi成分は、高屈折率、高分散に寄与する成分であり、導入することでガラスの熱的安定性を改善させる場合がある。TiO、Nb、Ta、WO、及びBi成分のそれぞれの含有量は特に限定されず、TiO、Nb、Ta、WO、及びBiのそれぞれの含有量の上限は、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.5%以下であってもよい。
【0031】
TiO、Nb、Ta、WO、及びBi成分の含有量のそれぞれの下限は、0%以上、1%以上、3%以上、5%以上、7%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上であってもよい。
【0032】
TiO、Nb、Ta、WO、及びBiのそれぞれの含有量の合計(TiO+Nb+Ta+WO+Bi)も特に限定されず、TiO+Nb+Ta+WO+Biの上限は、例えば、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.5%以下であってもよい。
【0033】
TiO、Nb、Ta、WO、及びBi成分のそれぞれの含有量の合計(TiO+Nb+Ta+WO+Bi)の下限は、例えば、0%以上、1%以上、3%以上、5%以上、7%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上であってもよい。
【0034】
ZrO及びAl成分は、化学的耐久性を改善させる成分であり、導入することでガラスの熱的安定性を改善させる場合がある。ZrO及びAl成分のそれぞれの含有量も特に限定されず、ZrO及びAlのそれぞれの含有量の上限は、例えば、30%以下、20%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下であってもよい。
【0035】
ZrO及びAl成分のそれぞれの含有量の下限は、例えば、0%以上、1%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、20%以上、25%以上であってもよい。
【0036】
必要に応じ、As、Sb及びSnOの少なくとも一種をガラスに加えることができる。As、Sb、及びSnOは、ガラス熔融時における清澄効果、及び得られるガラス中の白金ブツ(白金異物)を低減させる効果がある。また、ガラスの酸化・還元状態の調整することができる場合もある。Ab、Sb、SnOの含有量は、特に限定されるものではないが、Ab、Sb、SnOのそれぞれの含有量の上限は、1%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下、0.09%以下、0.08%以下、0.07%以下、0.06%以下、0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、0.01%以下、0.009%以下、0.008%以下、0.007%以下、0.006%以下、0.005%以下、0.004%以下、0.003%以下、0.002%以下、0.001%以下であってもよい。また、As、Sb及びSnOのそれぞれの含有量の下限は、0%以上、0.001%以上、0.002%以上、0.003%以上、0.004%以上、0.005%以上、0.006%以上、0.007%以上、0.008%以上、0.009%以上、0.01%以上、0.02%以上、0.03%以上、0.04%以上、0.05%以上、0.06%以上、0.07%以上、0.08%以上、0.09%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上であってもよい。
【0037】
なお、用途により材料に放射性物質が含まれることが問題になる場合は、放射性同位体の含有率を一定量以下に抑える、或いは意図的に含有しないことが好ましい(ただし不純物としての混入を妨げない)。
【0038】
(第二態様)
本発明のリヒートプレス用ガラス材料の第二態様は、母ガラスが、ホウ酸ランタン系ガラスである。
第二態様の母ガラスの種類としては、ホウ酸ランタン系ガラスであれば、特に制限されることなく実施することができる。ホウ酸ランタン系ガラスは、光学ガラス用途においては、一般的に高屈折率低分散ガラス等であり、このようなガラスを本発明は対象にすることができる。
【0039】
本明細書の中で、ホウ酸ランタン系ガラスとは、B成分(B)とLa成分(La)をガラス成分として含むガラスを意味する。
【0040】
第二態様において、Bの含有量は、特に限定されるものではないが、下限としては、1.0%以上、5.0%以上、7.0%以上、8.0%以上、9.0%以上、10.0%以上とすることができる。一方、B成分の上限としては、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下とすることができる。ガラスの熱的安定性を維持する上から、質量%表示におけるBの含有量がSiOの含有量より多いこと、Bの含有量がPの含有量より多いことがそれぞれ好ましい。同様に、ガラスの熱的安定性を維持する上から、質量%表示におけるBの含有量がSiO及びBの合計含有量より多いことが好ましい。
【0041】
第二態様において、Laの含有量は、特に限定されるものではないが、下限としては、10%以上、12%以上、15%以上、17%以上、20%以上とすることができる。
【0042】
Laの上限としては、90%以下、80%以下、75%以下、70%以下、68%以下、65%以下、63%以下、60%以下とすることができる。
【0043】
第二態様において、SiO、P成分は、ガラスの骨格を構成する任意成分であり、ガラスの熱的安定性を改善する成分である。また、低屈折率、低分散に寄与する成分である。SiO、P成分の含有量は特に限定されず、任意の含有量にすることできる。SiO、P成分の上限は、例えば、それぞれ80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下であってもよく、下限は、例えばそれぞれ0%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上であってもよい。
【0044】
第二態様におけるホウ酸ランタン系ガラス中には、LiO、NaO、KO、RbO及びCsO成分の少なくともいずれか一種を含有することができる。中でもLiO、NaO、及びKOはガラスの熔融性を改善する成分であり、ガラスの熱的安定性を改善させる場合がある。また、ガラスの転移温度を低下させる成分である。LiO、NaO、KO、RbO及びCsO成分の含有量は、母ガラスに含まれる場合は、特に限定されず、任意の含有量とすることができる。LiO、NaO、KO、RbO及びCsO成分の含有量のそれぞれの上限としては、例えば、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下、0.5%以下である。下限は、例えば、0%以上、0.1%以上、0.5%以上、1.0%以上、1.5%以上、2.0%以上、2.5%以上、3.0%以上、3.5%以上、4.0%以上、5.0%以上、7.5%以上、10.0%以上、15.0%以上、20.0%以上、25.0%以上、30.0%以上、35.0%以上、40.0%以上、45.0%以上であり、LiO、NaO、KO、RbO及びCsO成分をいずれも含有させなくてもよい。
【0045】
アルカリ金属の中でLiOとNaO成分は、KO、RbO及びCsO成分よりも屈折率を高め、高分散に寄与する場合がある成分である。LiOとNaO成分の含有量の合計(LiO+NaO)については、これらの成分を含む場合、例えば、0.1%以下、0.5%以下、1.0%以下、1.5%以下、2.0%以下、2.5%以下、3.0%以下、3.5%以下、4.0%以下、5.0%以下、7.5%以下、10.0%以下、15.0%以下、20.0%以下、25.0%以下、30.0%以下、35.0%以下、40.0%以下、45.0%以下、50.0%以下であってもよい。
【0046】
LiOとNaO成分の含有量の合計(LiO+NaO)の下限ついては、例えば、0%以上、0.1%以上、0.5%以上、1.0%以上、1.5%以上、2.0%以上、2.5%以上、3.0%以上、3.5%以上、4.0%以上、5.0%以上、7.5%以上、10.0%以上、15.0%以上、20.0%以上、25.0%以上、30.0%以上、35.0%以上、40.0%以上、45.0%以上であってもよい。
【0047】
O成分は、RbO及びCsO成分よりも、屈折率を高め、高分散に寄与する場合がある成分である。前述のLiO及びNaOの含有量の合計にKOを加えたLiOとNaOとKOの含有量の合計(LiO+NaO+KO)についても特に限定されず、上限については、例えば、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下、0.5%以下であってもよい。
【0048】
LiOとNaOとKO成分の合計量(LiO+NaO+KO)の下限ついては、例えば、0%以上、0.1%以上、0.5%以上、1.0%以上、1.5%以上、2.0%以上、2.5%以上、3.0%以上、3.5%以上、4.0%以上、5.0%以上、7.5%以上、10.0%以上、15.0%以上、20.0%以上、25.0%以上、30.0%以上、35.0%以上、40.0%以上、45.0%以上であってもよい。
【0049】
MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnO成分は、ガラスの熔融性を改善する成分であり、ガラスの熱的安定性を改善させる場合がある。また、MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnO成分は、ガラス転移温度を低下させる成分であり、NaO、KO、及びCsO成分よりも屈折率を高める場合がある。MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnO成分のそれぞれの含有量についても特に限定はなく、MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnO成分のそれぞれの含有量の上限は、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.5%以下であってもよい。
【0050】
MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnO成分のそれぞれの含有量の下限は、例えば、0%以上、1%以上、3%以上、5%以上、7%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上であってもよい。
【0051】
MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnO成分のそれぞれの含有量の合計(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)についても特に限定はなく、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnOの上限は、例えば、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.5%以下であってもよい。
【0052】
MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnO成分のそれぞれの含有量の合計(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)の下限は、例えば、0%以上、1%以上、3%以上、5%以上、7%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上であってもよい。
【0053】
Gd、Y、及びYb成分は、MgO、CaO、SrO、及びBaO成分に比べて屈折率を高める成分であり、高屈折率、低分散に寄与する成分である。Gd、Y、及びYb成分を導入することによりガラスの熱的安定性を改善させる場合もある。La、Gd、Y、及びYb成分のそれぞれの含有量は特に限定はなく、Gd、Y、及びYbのそれぞれの含有量の上限は、例えば、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.5%以下であってもよい。
【0054】
Gd、Y、及びYb成分のそれぞれの含有量の下限は、例えば、0%以上、1%以上、3%以上、5%以上、7%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上であってもよい。
【0055】
La、Gd、Y、及びYb成分の含有量の合計(La+Gd+Y+Yb)も特に限定されず、La+Gd+Y+Ybの上限は、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.5%以下あってもよい。
【0056】
La、Gd、Y、及びYb成分の含有量の合計(La+Gd+Y+Yb)の下限は、5%以上、7%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上であってもよい。
【0057】
TiO、Nb、Ta、WO、及びBi成分は、高屈折率、高分散に寄与する成分であり、導入することでガラスの熱的安定性を改善させる場合がある。TiO、Nb、Ta、WO、及びBi成分のそれぞれの含有量は特に限定されず、TiO、Nb、Ta、WO、及びBiのそれぞれの含有量の上限は、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.5%以下であってもよい。
【0058】
TiO、Nb、Ta、WO、及びBi成分の含有量のそれぞれの下限は、0%以上、1%以上、3%以上、5%以上、7%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上であってもよい。
【0059】
TiO、Nb、Ta、WO、及びBiのそれぞれの含有量の合計(TiO+Nb+Ta+WO+Bi)も特に限定されず、TiO+Nb+Ta+WO+Biの上限は、例えば90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.5%以下であってもよい。
【0060】
TiO、Nb、Ta、WO、及びBi成分のそれぞれの含有量の合計(TiO+Nb+Ta+WO+Bi)の下限は、例えば、0%以上、1%以上、3%以上、5%以上、7%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上であってもよい。
【0061】
ZrO及びAl成分は、化学的耐久性を改善させる成分であり、導入することでガラスの熱的安定性を改善させる場合がある。ZrO及びAl成分のそれぞれの含有量も特に限定されず、ZrO及びAlのそれぞれの含有量の上限は、例えば、30%以下、20%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下であってもよい。
【0062】
ZrO及びAl成分のそれぞれの含有量の下限は、例えば、0%以上、1%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、20%以上、25%以上であってもよい。
【0063】
必要に応じ、As、Sb及びSnOの少なくとも一種をガラスに加えることができる。As、Sb、及びSnOは、ガラス熔融時における清澄効果、及び得られるガラス中の白金ブツを低減させる効果がある。また、ガラスの酸化・還元状態の調整することができる場合もある。Ab、Sb、SnOの含有量は、特に限定されるものではないが、Ab、Sb、SnOのそれぞれの含有量の上限は、1%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下、0.09%以下、0.08%以下、0.07%以下、0.06%以下、0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、0.01%以下、0.009%以下、0.008%以下、0.007%以下、0.006%以下、0.005%以下、0.004%以下、0.003%以下、0.002%以下、0.001%以下であってもよい。また、As、Sb及びSnOのそれぞれの含有量の下限は、0%以上、0.001%以上、0.002%以上、0.003%以上、0.004%以上、0.005%以上、0.006%以上、0.007%以上、0.008%以上、0.009%以上、0.01%以上、0.02%以上、0.03%以上、0.04%以上、0.05%以上、0.06%以上、0.07%以上、0.08%以上、0.09%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上であってもよい。
【0064】
(好ましい態様)
本発明は、第一態様の特徴である、母ガラスのLi成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分の合計含有量が1.2質量%以下であることと、第二態様の特徴である、母ガラスがホウ酸ランタン系ガラスであることを、いずれも満たす態様であることが好ましい。すなわち、本発明は、Li成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分の合計含有量が1.2質量%以下(0質量%を含む)であるホウ酸ランタン系を母ガラスとして使用することが好ましい。
【0065】
母ガラスが、Li成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分の合計含有量が1.2質量%以下であるホウ酸ランタン系ガラスの場合、ガラス成分については、アルカリ金属成分の含有量は、第一態様で説明した含有量とすることができ、また、その他のガラス成分については、第二態様で説明した含有量とすることができる。
【0066】
[ガラス特性]
【0067】
本発明のリヒートプレス用ガラス材料は、加熱により軟化した状態でプレスにより成形することに好適な材料である。
【0068】
リヒートプレス用ガラス材料の形状は、特に限定されるものではないが、例えば、直方体、立方体等の多角体、及び円柱などが挙げられる。これらの形状は、いずれも、端部や角がある。ガラス材料の端部や角が結晶化してしまうと、軟化しにくくなり、端部又は角の部分の形状がそのまま残ってしまう。しかし、本発明のような表面改質層を有することにより、端部や角がそのまま固化することなく、加熱により軟化し、ガラス材料は丸みを帯び、その状態でプレスをすることにより、結晶層がガラス内部に入り込みにくくなる。なお、リヒートプレス用ガラス材料として、熔融状態のガラスから直接得られるゴブなども使用することができる。
【0069】
リヒートプレス用ガラス材料の母体となるガラスは、光学ガラスが好ましく、レンズ成形を目的とした光学ガラスであることが好ましい。当該ガラスの屈折率ndは特に限定はなく、下限については1.30以上であってもよく、1.40以上、1.50以上、1.60以上、1.70以上、1.80以上、1.90以上、2.00以上、2.10以上、2.20以上であってもよい。屈折率ndの上限については、2.70以下であってもよく、2.60以下、2.50以下、2.40以下、2.30以下、2.20以下、2.10以下、2.00以下、1.90以下、1.80以下、1.70以下、1.60以下、1.50以下、1.40以下であってもよい。アッベ数νdは特に限定はなく、下限については、10以上であってもよく、15以上、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上、90以上、95以上、100以上であってもよい。アッベ数νdの上限については、150以下であってもよく、140以下、130以下、120以下、110以下、100以下、95以下、90以下、85以下、80以下、75以下、70以下、65以下、60以下、55以下、50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下であってもよい。
【0070】
なお、用途により材料に放射性物質が含まれることが問題になる場合は、放射性同位体の含有率を一定量以下に抑える、或いは意図的に含有しないことが好ましい(ただし不純物としての混入を妨げない)。
【0071】
[表面改質層]
表面改質層は、Li成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分のうち少なくとも一種の成分の含有量が母体となるガラスの当該成分の含有量よりも多いことを特徴とする。表面改質層もガラスであるため、母体となるガラスとの境界を確認することは難しいが、本発明のリヒートプレス用ガラス材料を表面から母体となるガラスの中心に向かって成分量を測定した場合に、表面に近い部分はLi成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分又はFr成分のうち少なくとも一種の成分の含有量が、母体ガラスのLi成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分又はFr成分の含有量よりも多い部分が存在し、この部分を本明細書では表面改質層とする。
【0072】
表面改質層の厚さの下限は、特に限定されるものではないが、成分分析の結果からリヒートプレス用ガラス材料の表面から5000nm以下が好ましく、3000nm以下がより好ましく、1000nm以下がさらに好ましく、500nm以下であれば一層好ましく、300nm以下であれば特に好ましい。5000nm以下であれば、プレス後の研削及び研磨により表面改質層を取り除くことが可能である。
表面改質層の厚さの下限については特に限定されないが、1nm以上であれば好ましく、10nm以上であればさらに好ましい。10nm以上であれば、リヒートプレス用ガラス材料の表面部分の安定性が高まり、加熱により軟化しやすくなる。
なお、表面改質層の厚さは、表面改質層に含まれるアルカリ金属の多い部分のLIBS(Laser Induced Breakdown Spectroscopy(レーザー誘起ブレークダウン分光法))によって測定した強度が、未処理のガラスのLIBSの最大強度と同じ強度になるところを境界とする。例えば、図8では、NaNOで処理したガラスのLIBSの境界は、5Shotの位置において未処理の最大強度と同じになるため、ガラスと表面改質層との境界は、500nmである、ということができる。
【0073】
[リヒートプレス済ガラス材料及び研磨済ガラス]
本発明のリヒートプレス用ガラス材料は、研磨済ガラス、特にガラス製の光学素子、例えば光学レンズを製造するための材料として好適である。リヒートプレス用ガラス材料から、研磨済ガラスを製造するためには、まずリヒートプレス用ガラス材料をリヒートプレスすることにより、リヒートプレス済ガラス材料を製造する。次に、リヒートプレス済ガラス材料を研削及び研磨等をすることにより、研磨済ガラスを製造する。本発明のリヒートプレス用ガラス材料を用いた製造は、リヒートプレスによりガラス内部に結晶層が混入しくいため、高品質で歩留まりが高く、加熱によって形成される結晶層をより薄くできるため、研削及び研磨により取り除かれるガラス量を低減することができる。
【0074】
[リヒートプレス用ガラス材料の製造方法]
(浸漬工程)
リヒートプレス用ガラス材料の製造方法について説明する。リヒートプレス用ガラス材料は、板状又は棒状等のガラス材料(母ガラス)を、所定の大きさになるように切断したもの(本明細書では、「カットピース」と称する場合もある)、又は熔融状態のガラスから直接得られるゴブなどをアルカリ金属の溶融塩(Li成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分の少なくとも一種の成分を含む溶融塩)に浸漬させることで製造することができる。
【0075】
Li成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分の少なくとも一種の成分を含む溶融塩としては、Li成分、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分の少なくとも一種の成分を含む溶融塩であれば、特に限定されるものではないが、扱いやすさの観点から、硝酸リチウム(LiNO)、硝酸ナトリウム(NaNO)、硝酸カリウム(KNO)、硝酸セシウム(CsNO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸ルビジウム(RbCO)、炭酸セシウム(CsCO)、及びこれらの前記溶融塩から選択される2種又は3種からなる混合物が挙げられる。混合物の混合割合は任意で決定できる。成分としては、Na成分が好ましく、Na成分及びK成分の混合物であれば、Na成分が多い方が好ましい。
【0076】
浸漬する際の温度は、Na成分、K成分、Rb成分、Cs成分及びFr成分の少なくとも一方の成分を含む溶融塩が溶融状態になっているのであれば特に限定されるものではないが、下限温度としては、各塩の融点以上である。好まくは308℃以上、より好ましくは320℃以上であり、上限温度としては、好ましくは800℃以下、より好ましくは600℃以下である。
【0077】
浸漬時間は、溶融塩のアルカリ成分がガラス中に侵入すればよいが、長すぎると製造効率が悪くなるおそれがある。例えば、浸漬時間の下限は、好ましくは10分、より好ましくは30分であり、浸漬時間の上限は、上限時間は好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下、一層好ましくは6時間以下、さらに一層の好ましくは2時間以下である。
【0078】
前記浸漬工程により、表面改質層を形成することについては、ガラスの表層のみ熔融塩からアルカリ金属成分が侵入し、安定性の比較的高い表面改質層を形成することであると考えられる。なお、アルカリ金属塩が侵入すると、ガラス軟化温度付近まで加熱しても固い結晶層を形成しにくくなると考えることができる。なお、アルカリ金属成分を含むと、かえって安定しないガラスであっても、浸漬工程により、安定性が比較的高い表面改質層を形成する場合がある。
【0079】
[リヒートプレス工程、研削及び研磨工程]
次にガラスの成形について、説明する。本発明のリヒートプレス用ガラス材料は、リヒートプレスに好適である。
【0080】
(リヒートプレス工程)
リヒートプレスについては、図面を用いて説明する。図1は、表面改質層を有さない材料をリヒートプレスしたときの概念図である。
【0081】
所定の形状のガラス11をプレス機の下金型13に配置し、軟化させるために加熱する(図1(a))。このとき、加熱温度が高すぎると、熔融状態になり型の中でガラスが液状化してしまい、成形できず、また、加熱温度が低すぎると、ガラス材料が硬いままであるため成形できない。したがって、軟化させる温度は、成形しようとするガラスの軟化点より100℃低い温度からガラスの軟化点よりも300℃高い温度の範囲であることが好ましい。ここで、ガラスの軟化点とは、JIS R 3103-1:2001に規定される方法により測定した値である。
【0082】
しかしながら、軟化点付近の温度はガラスの種類によっては表面に硬い表面結晶層11aが形成されてしまい、ガラス材料の表面結晶層の角が残った状態になる(図1の(b))。この状態で上型12と下型13とでプレスをすると、固まった角が、ガラス材料の内部に侵入してしまい(図1(c)~(d))、リヒートプレス後研削及び研磨をしても、内部に侵入した角部(侵入結晶層11(b))を取り除くことはできない(図1(e))。
【0083】
一方、表面処理層を有するガラスの場合(図2参照。ただし、表面改質層はガラスとの明確な境界がないため図示しない。)はガラス21の表面の安定性が高く、軟化点付近の温度で形成される表面結晶層21aは、表面処理層を有さない図1の場合よりも薄くなる。また、角を有するリヒートプレス用ガラス材料21は加熱により軟化し、角がなくなる(図2の(b))。その状態で上型22と下型23とでプレスしても、図1のような侵入結晶層は生じず、成形後のガラス内部は異物のない状態である(図2(c)~(d))。したがって、リヒートプレス後の研削及び研磨により、表面結晶層21aをすべて取り除くことができる(図2(e)参照)。
【0084】
(研削及び研磨工程)
リヒートプレス後、リヒートプレス済ガラス材料を、研削及び研磨することにより、最終製品の研磨済ガラスを製造することができる。得られた研磨済ガラスは光学レンズとして好適なものである。研削及び研磨は、従来から行われている方法により実施することができる。
【0085】
研削及び研磨は、通常種々の研削及び研磨工程を経て、最終製品となるガラスが得られるが、一般的には表面から100μm~500μm程度研削及び研磨する。本発明のリヒートプレス用ガラス材料を用いると、表面結晶層の厚さが薄く、かつ、結晶表面層が内部に侵入しないため、研削及び研磨量を減らすことができる。
なお、研削及び研磨に用いられる材料は、従来のものを使用することができる。
【実施例
【0086】
実施例
以下、実施例により本発明をさらに説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、本実施例では、リヒートプレス用ガラス材料として、リヒートプレス用光学ガラスレンズ材料を製造し、光学ガラスレンズを成形した。
【0087】
[光学ガラスのカットピース製造]
まず、下記の組成を有するガラスが得られるように、ガラス原料(含有割合は質量%、ガラス組成No.1)を調合し、1400℃で熔融し、金型にキャスト後、730℃でアニールすることにより、板状の光学ガラスを得た。
8.1%
SiO 6.1%
La 45.7%
Gd 10.6%
0.3%
ZrO 5.8%
TiO 13.9%
Nb 7.9%
ZnO 1.6%
ガラスの諸特性として、Tg(ガラス転移点)は709℃、nd(屈折率)は2.001、νd(アッベ数)は29.13であった。
【0088】
得られた板状の光学ガラスを、10mm(縦)×10mm(横)×9.0mm(高さ)の直方体の形状になるように切断し、同形状の複数のカットピースを得た。
【0089】
[リヒートプレス用光学ガラスレンズ材料の製造]
(実施例1)
カットピース全体を、350℃に加熱した70mlの100モル%NaNO溶融塩に浸漬させ、60分間浸漬させ、リヒートプレス用光学ガラスレンズ材料1を得た。
【0090】
(実施例2~13)
溶融塩の種類(NaNO、又はNaNOとKNOの1:1の混合物)、浸漬温度(Immersion temp.(℃))浸漬時間(Immersion time (min))を図3図7に示すような数値に変更した以外は、実施例1と同様にカットピースを浸漬させ、リヒートプレス用光学ガラスレンズ材料2乃至13を得た。
【0091】
[リヒート(再加熱)実験後の厚さ測定]
リヒートプレス用光学ガラスレンズ材料1~13を、アニール炉内、700℃で10分間保持し、その後880℃で10間加熱後取り出して、加熱後のリヒートプレス用光学ガラスレンズ1~13の高さを測定し、加熱前の高さ(9.0mm)からの減少量(Δt)を算出した(図3図7に記載)。また、加熱後のリヒートプレス用光学ガラスレンズ1~13はすべて表面が白くなっており、表面結晶層に覆われていることを確認した。また、同様に、浸漬していないカットピース(比較用リヒートプレス用光学ガラスレンズ材料)を同様にリヒート実験し、カットピースの厚さを測定した。浸漬していないカットピースも表面結晶層に覆われていることを確認した。リヒート実験後のリヒートプレス用光学ガラスレンズ材料1~13、及び比較用リヒートプレス用光学ガラスレンズの材料の写真も図3~7に示す。
【0092】
[表面結晶層の厚さ]
加熱後のリヒートプレス用光学ガラスレンズ材料7を切断し、表面結晶層の厚さを写真撮影等により測定したところ20μmであった。同様に、比較用リヒートプレス用光学ガラスレンズを切断し、表面結晶層の厚さを写真撮影等により測定したところ、50μmであった。表面改質層を含めた表面部分の組成が変わり、硬い結晶ではない表面結晶層に覆われ、カットピースは、角が取れた球形に近い状態となった。このようなカットピースであれば、リヒートプレス時に、角が中ガラス中に侵入せず、また、薄い表面結晶層は、ガラスの研削及び研磨により十分除去できる程度の厚さであった。
【0093】
[表面改質層の成分]
リヒートプレス用光学ガラスレンズ材料(リヒートプレス前)の表面改質層のNa成分の測定には、例えば、LIBS(Laser Induced Breakdown Spectroscopy(レーザー誘起ブレークダウン分光法),Applied Spectra社製装置を使用。)を用いることができる。以下の測定ではLIBSを用いた。
リヒートプレス用光学ガラスレンズ材料7(リヒートプレス前)について、このような装置を用いて、表面改質層の成分を測定した。結果を図8示す。母ガラスにNa成分が含まれていないのにもかかわらず、表面から所定の距離(おおよそ500nm)はNa成分が多いことがわかった。これは、浸漬によりNa成分がガラス中に侵入したものと推測される。
【0094】
上記実施例と同様に、ガラス組成No.1に代え、表1に記載のガラス組成No.2~31に変更して、ガラスの特性に応じて適宜温度を変更して、実施例1と同様の実験を行ったところ、溶融塩に浸漬したカットピースは、表面結晶層を含めた表面部分の組成が変わり、硬い結晶ではなく、カットピースは、角が取れた球形に近い状態となった。このようなカットピースであれば、リヒートプレス時に、角が中ガラス中に侵入せず、また、薄い表面結晶層は、ガラスの研削及び研磨により十分除去できる程度の厚さであった。
【0095】
各カットピースについても、アルカリ金属溶融塩に浸漬することにより、表面結晶層の厚さを低減できること、表面結晶層を含めた表面部分の組成が変わり、硬い結晶ではなく、カットピースを角が取れた球形に近い状態にできることが確認された。このようなカットピースであれば、リヒートプレス時に、角が中ガラス中に侵入することを抑制できる。また、これら実施例の薄い表面結晶層は、ガラスの研削及び研磨により十分除去できる程度の厚さである。
【0096】
このようにして作製した各種リヒートプレス用ガラス材料を、加熱、軟化してリヒートプレス成形し、光学レンズに近似した形状のレンズブランクを作製した。レンズブランクを観察したところ、ガラス材料の端部や角の表面結晶層のガラス内部への侵入は認められなかった。
上記リヒートプレス成形した後のリヒートプレス済ガラス材料の表面について、リヒートプレス用ガラス材料の表面分析と同様の方法により表面分析を行うことによって、リヒートプレス用ガラス材料と同様の表面改質層が存在することを確認した。
次いで、上記レンズブランクを研削及び研磨し、各種光学レンズを作製した。レンズブランクにはガラス材料の端部や角の表面結晶層のガラス内部への侵入がないため、研削及び研磨する量を低減することができた。
なお、上記リヒートプレス成形、研削、研磨は公知の方法を適用することができる。
以上、光学レンズの作製について説明したが、本発明は、光学レンズ以外にもプリズムなどガラス製の各種光学素子の製造、光学素子以外のガラス物品の製造にも適用することができる。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は光学ガラスの技術分野において有用である。特に本発明のガラスは再加熱時の表面失透を軽減する特徴を持つことから、特に再加熱工程を含むガラスの製造に好適であるが、リヒートプレス以外にも、多くの用途に用いることができる。
【0098】
符号の説明
11,21 ガラス
11a,21a 結晶層
11b 侵入結晶層
12,22 上型
13,23 下型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8