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特許7194086ガラスびん製造装置及びガラスびんの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】ガラスびん製造装置及びガラスびんの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 9/347 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
C03B9/347 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019131242
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021014392
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000222222
【氏名又は名称】東洋ガラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅井 清史
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-086938(JP,A)
【文献】特開2005-047153(JP,A)
【文献】特開2007-261897(JP,A)
【文献】実開昭58-113729(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/46
49/58-49/68
49/72-51/28
51/42
51/46
C03B 7/00-7/22
9/00-17/06
19/00-19/10
21/00-21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パリソンを成形する口型及び粗型と、前記パリソンからガラスびんを成形する仕上型とを有するガラスびん製造装置であって、
前記粗型は、前記パリソンの首部を成形する略円筒形の第1成形面を有し、前記第1成形面は前記パリソンの首部に凸部を形成する第1凹部を有し、
前記仕上型は、前記パリソンの首部を受容すると共に、前記びんの首部を成形するための略円筒形の第2成形面を有し、前記第2成形面は前記凸部を受容する第2凹部を有し、
前記第2凹部の開口端の前記第2成形面の周方向における幅は、前記第1凹部の開口端の前記第1成形面の周方向における幅より広く、
前記第2凹部の深さは、前記第1凹部の深さ以上であり、
前記第2凹部の所定の深さにおける中間部の前記第2成形面の周方向における幅は、前記第1凹部の前記所定の深さにおける中間部の前記第1成形面の周方向における幅よりも狭く設定されているガラスびん製造装置。
【請求項2】
前記所定の深さは、前記第2凹部の最深部を100%としたときの20%以上80%以下の値に設定される請求項1に記載のガラスびん製造装置。
【請求項3】
前記第2凹部の開口端は、前記第2凹部の壁面と前記第2成形面とを滑らかに接続する曲面に形成されている請求項1又は請求項2に記載のガラスびん製造装置。
【請求項4】
前記第1凹部は、扁平な半球形に形成されている請求項1~請求項3のいずれか1つの項に記載のガラスびん製造装置。
【請求項5】
前記第2凹部の開口端の前記第2成形面の周方向における幅は、前記第2凹部の深さに対して10倍以上25倍以下である請求項1~請求項4のいずれか1つの項に記載のガラスびん製造装置。
【請求項6】
前記第2凹部は、前記仕上型に前記パリソンが配置されたときに、深さ方向における中間部において前記凸部の高さ方向における中間部と当接する一方、開口端において前記凸部の基端との間に隙間を形成するように形状が設定されている請求項1~請求項5のいずれか1つの項に記載のガラスびん製造装置。
【請求項7】
前記第2凹部は、前記仕上型に前記パリソンが配置されたときに、深さ方向において開口端から20%以上80%以内の範囲において前記凸部に当接し、かつ深さ方向において開口端から0%以上20%未満の範囲内において前記凸部に当接しないように形状が設定されている請求項6に記載のガラスびん製造装置。
【請求項8】
パリソンを成形する口型及び粗型と、前記パリソンからガラスびんを成形する仕上型とを使用したガラスびんの製造方法であって、
前記粗型によって、前記パリソンの首部の外面に凸部を形成するステップと、
前記仕上型に対する前記パリソンの回転を規制するべく、前記凸部を前記仕上型に形成された凹部に受容させ、前記凸部の高さ方向における中間部の外面を前記凹部の壁面に当接させる一方、前記凸部の基部の外面と前記凹部の開口端との間に隙間を形成するステップとを有するガラスびんの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスびん製造装置及びガラスびんの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスびんを成形するための手法として、ブローアンドブロー成形法が公知である。ブローアンドブロー成形法は、口型及び粗型によって溶融ガラス塊からパリソンを成形するステップと、パリソンを口型で保持して仕上型に移動させるステップと、仕上型によってパリソンからガラスびんを成形するステップとを有する。
【0003】
ブローアンドブロー成形法では、パリソンの首部の外形が円形である場合、口型から仕上型にパリソンを受け渡したときに、パリソンが仕上型の内部で回転するという問題がある。パリソンが回転すると、粗型と仕上型のパーティングラインが互いにずれ、ガラスびんの美観が損なわれるという問題が生じる。また、パリソンの回転により肉厚が所期の肉厚分布とならず、成形されたガラスびんの肉厚に偏り(偏肉)の問題が生じる。この問題を解決するために、粗型によってパリソンの首部の外周面に凸部を形成し、仕上型に凸部が嵌合する凹部を形成し、凸部を凹部に嵌合させることによって回転を抑制する手法が公知である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭58-113729号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、成形後のガラスびんの首部に凸部が明瞭に残るとガラスびんの美観が損なわれるという問題がある。そのため、凸部はできるだけ目立たたないことが望ましい。
【0006】
本発明は、以上の背景を鑑み、成形後のガラスびんの美観を損なうことなく、口型から仕上型へのパリソンの受け渡し時のパリソンの回転を抑制することができるガラスびん製造装置及びガラスびんの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、パリソン(3)を成形する口型(7)及び粗型(20)と、前記パリソンからガラスびん(2)を成形する仕上型(43)とを有するガラスびん製造装置(1)であって、前記粗型は、前記パリソンの首部(3B)を成形する略円筒形の第1成形面(31)を有し、前記第1成形面は前記パリソンの首部に凸部(34)を形成する第1凹部(35)を有し、前記仕上型は、前記パリソンの首部を受容すると共に、前記びんの首部(2B)を成形するための略円筒形の第2成形面(48)を有し、前記第2成形面は前記凸部を受容する第2凹部(51)を有し、前記第2凹部の開口端(51B)の前記第2成形面の周方向における幅(W7)は、前記第1凹部の開口端(35)の前記第1成形面の周方向における幅(W1)より広く、前記第2凹部の深さ(D2)は、前記第1凹部の深さ(D1)以上であり、前記第2凹部の所定の深さにおける中間部(51C)の前記第2成形面の周方向における幅(W9)は、前記第1凹部の所定の深さにおける中間部(35C)の前記第1成形面の周方向における幅(W3)よりも狭く設定されている。
【0008】
この態様によれば、成形後のガラスびんの美観を損なうことなく、口型から仕上型へのパリソンの受け渡し時のパリソンの回転を抑制することができる。第1凹部によってパリソンの首部に形成される凸部は、深さ方向における中間部において第2凹部の壁面に当接するため、仕上型に対するパリソンの回転を抑制することができる。また、第2凹部の開口端の幅は凸部の基部の幅よりも広いため、凸部の基部は第2凹部の形状に沿って広がり、凸部と首部との境界が不明瞭になる。
【0009】
上記の態様において、前記所定の深さは、前記第2凹部の最深部を100%としたときの20%以上80%以下の値に設定されるとよい。
【0010】
上記の態様において、前記第2凹部の開口端は、前記第2凹部の壁面と前記第2成形面とを滑らかに接続する曲面に形成されているとよい。
【0011】
この態様によれば、パリソンからガラスびんが成形されるときに、凸部の基部は曲面に形成された第2凹部の開口端に沿った形状に成形される。そのため、凸部と首部との境界を一層不明瞭にすることができる。
【0012】
上記の態様において、前記第1凹部は、扁平な半球形に形成されているとよい。
【0013】
この態様によれば、首部において凸部を目立ちに難くすることができる。
【0014】
上記の態様において、前記第2凹部は、前記仕上型に前記パリソンが配置されたときに、深さ方向における中間部において前記凸部の高さ方向における中間部と当接する一方、開口端において前記凸部の基端との間に隙間(59)を形成するように形状が設定されているとよい。
【0015】
上記の態様において、前記第2凹部は、前記仕上型に前記パリソンが配置されたときに、深さ方向において開口端から10%以上100%以内の範囲において前記凸部に当接し、かつ深さ方向において開口端から0%以上10%未満の範囲内において前記凸部に当接しないように形状が設定されているとよい。
【0016】
上記の態様において、前記第2凹部の開口端の前記第2成形面の周方向における幅は、前記第2凹部の深さに対して10倍以上25倍以下であるとよい。
【0017】
この態様によれば、首部において凸部を目立ちに難くすることができる。
【0018】
本発明の他の態様は、パリソン(3)を成形する口型(7)及び粗型(20)と、前記パリソンからガラスびん(2)を成形する仕上型(43)とを使用したガラスびんの製造方法であって、前記粗型によって、前記パリソンの首部(3B)の外面に凸部(34)を形成するステップと、前記仕上型に対する前記パリソンの回転を規制するべく、前記凸部を前記仕上型に形成された凹部(51)に受容させ、前記凸部の高さ方向における中間部の外面を前記凹部の壁面に当接させる一方、前記凸部の基部の外面と前記凹部の開口端との間に隙間(59)を形成するステップとを有する。
【0019】
この態様によれば、成形後のガラスびんの美観を損なうことなく、口型から仕上型へのパリソンの受け渡し時のパリソンの回転を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、成形後のガラスびんの美観を損なうことなく、口型から仕上型へのパリソンの受け渡し時のパリソンの回転を抑制することができるガラスびん製造装置及びガラスびんの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ガラスびん製造装置を示す説明図
図2】パリソン成形工程における粗型、口型、及びバッフルを示す断面図
図3】粗型の要部を拡大して示す断面図
図4】(A)第1凹部の縦断面図、(B)第1凹部の横断面図(図4(A)のB-B断面図)
図5】(A)パリソンの側面図、(B)図5(A)のB-B断面図、(C)図5(A)のC-C断面図
図6】ガラスびん成形工程における口型、仕上型、及び底型を示す断面図
図7】成形型の要部を拡大して示す断面図
図8】(A)第2凹部の縦断面図、(B)第2凹部の横断面図(図7(A)のB-B断面図)
図9】(A)第1凹部と第2凹部との形状を対比して示す説明図、(B)第2凹部と凸部との形状を対比して示す説明図、(C)ガラスびんの成形後の凸部の形状を示す説明図
図10】変形例に係る凸部の形状を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。ガラスびん製造装置1は、ブローアンドブロー成形によって溶融ガラス塊(ゴブ)からガラスびん2を製造するための装置である。ガラスびん製造装置1は、溶融ガラス塊からパリソン3を成形する工程と、パリソン3からガラスびん2を成形する工程とを実行する。
【0023】
図1に示すように、ガラスびん製造装置1は、基台5に回転可能に支持されたアーム6を有する。アーム6は、水平方向に延びる回転中心を有し、回転中心から水平方向における一方に延びた初期位置と、初期位置に対して180°回転した反転位置との間で回転する。アーム6の先端には、上下に延びる第1軸線X1に沿って、口型7の一部を構成する第1ネックリング8及び第2ネックリング9が支持されている。
【0024】
図2に示すように、第1ネックリング8及び第2ネックリング9は、アーム6が初期位置にあるときに、アーム6の先端の上側に配置される。第1ネックリング8及び第2ネックリング9は、第1軸線X1に沿って延びる合せ面を有し、合せ面において互いに当接する。第1軸線X1は口型7の軸線をなす。第1ネックリング8及び第2ネックリング9は、合せ面と直交する方向にスライド移動可能にアーム6に支持されており、第1軸線X1から離れる方向に退避することができる。
【0025】
第1ネックリング8及び第2ネックリング9の合せ面には、第1軸線X1に沿ってパリソン3の口部3A(ガラスびん2の口部2A)の外周面に対応した型面8A、9Aが形成されている。型面8A、9Aには、パリソン3の口部3Aのねじ部11やスカート部12に対応した溝が形成されている。図5に示すように、スカート部12は、口部3Aにおいてねじ部11よりも下方に配置され、口部3Aの周方向に延びる突条である。型面8A、9Aによって形成される口型7のキャビティは、第1ネックリング8及び第2ネックリング9の上端に到達すると共に、第1ネックリング8及び第2ネックリング9の下部の間に形成された受容孔16に接続している。受容孔16は、第1ネックリング8及び第2ネックリング9の下端に開口している。
【0026】
口型7は、第1ネックリング8及び第2ネックリング9に加えて、ガイドリング17、プランジャ18、及びシンブル19(スリーブ)を有する。ガイドリング17は円環形に形成されている。シンブル19は円筒形に形成され、ガイドリング17の下方に同軸に配置されている。プランジャ18は、柱状に形成され、ガイドリング17及びシンブル19の内側に同軸に配置されている。プランジャ18は、ガイドリング17及びシンブル19に対してガイドリング17の軸線方向に進退可能に支持されている。ガイドリング17は、第1ネックリング8及び第2ネックリング9の間に同軸に保持されている。第1ネックリング8及び第2ネックリング9が互いに離間するときにも、ガイドリング17は第1ネックリング8及び第2ネックリング9の間に支持される。プランジャ18及びシンブル19は、アーム6が初期位置にあるときに、口型7の受容孔16内に配置され、第1軸線X1と同軸に配置される。プランジャ18は、ガイドリング17から突出した突出位置において、第1ネックリング8及び第2ネックリング9の型面8A、9Aの間に突入する。アーム6が初期位置から反転位置に移動すると、プランジャ18及びシンブル19はその場に留まり、第1ネックリング8、第2ネックリング9、及びガイドリング17から分離する。
【0027】
各口型7の上方には、第1軸線X1に沿って粗型20が配置される。粗型20は、第1軸線X1に沿って上下に延びる合せ面において互いに当接する第1粗型21及び第2粗型22を有する。第1粗型21及び第2粗型22は、それぞれ側方に移動して、互いに分離可能である。第1粗型21及び第2粗型22は、下端部において口型7の第1ネックリング8及び第2ネックリング9を側方から挟み込むように配置される。第1粗型21及び第2粗型22が第1ネックリング8及び第2ネックリング9を挟み込み、合せ面が互いに当接した状態において、合せ面は第1軸線X1に沿って配置される。
【0028】
第1粗型21及び第2粗型22は、合せ面にパリソン3の側部の形状に対応して凹んだ型面21A、22Aを形成する。左右の型面21A、22Aによって画定される粗型20のキャビティは、第1軸線X1に沿って延び、下端において口型7のキャビティに接続し、上端において第1粗型21及び第2粗型22の上面に開口している。粗型20のキャビティの上端開口は、バッフル25によって開閉可能に閉じられる。バッフル25の下面にはパリソン3の底部外面に対応した型面が形成されている。
【0029】
粗型20の型面21A、22Aは、パリソン3の首部3Bに対応した粗型首成形面31(第1成形面)を含む。粗型首成形面31は、第1軸線X1を中心とした円筒面に形成されている。粗型首成形面31は、等径の円筒面に形成されてもよく、上方に向けて外径が漸増する円筒面(円錐面)に形成されてもよい。粗型首成形面31は、粗型20の型面21A、22Aの下端部に設けられ、口型7の型面8A、9Aに接続している。
【0030】
図2図4に示すように、粗型首成形面31は、パリソン3の首部3Bの外面に凸部34を形成するための少なくとも1つの第1凹部35を有する。第1凹部35の数は複数であることが好ましい。第1凹部35が1つである場合、第1凹部35は型面21A、22Aのいずれに設けられてもよい。第1凹部35の壁面35Aは曲面に形成されていることが好ましい。第1凹部35は、半球形、より好ましくは扁平な半球形に形成されている。第1凹部35は、粗型20の合せ面に対して直交する方向に凹んでいる。
【0031】
第1凹部35の開口端35Bの粗型首成形面31の周方向(第1軸線X1を中心とした周方向)における幅W1、及び第1凹部35の開口端35Bの粗型首成形面31の長手方向(第1軸線X1に沿った方向)における幅W2のそれぞれは、第1凹部35の深さD1よりも大きく設定されている。例えば、幅W1及び幅W2のそれぞれは、深さD1に対して10倍以上25倍以下であることが好ましい。第1凹部35の外縁の形状が真円である場合、幅W1と幅W2は等しく、第1凹部35の直径に対応する。
【0032】
また、第1凹部35が半球形である場合、第1凹部35の壁面35Aの曲率は4mm以上7mm以下であることが好ましい。また、第1凹部35の開口端35Bの直径は、例えば3mm以上20mm以下であるとよい。
【0033】
第1凹部35の開口端35Bは、第1凹部35の壁面35Aと粗型首成形面31とを滑らかに接続する曲面に形成されている。開口端35Bは、第1凹部35の縁に沿って円環状に設けられている。開口端35Bの曲率は、10mm以上40mm以下であることが好ましく、15mm以上30mm以下であることが更に好ましい。
【0034】
第1凹部35は、粗型首成形面31において口型7側の端部に設けられていることが好ましい。第1凹部35の中心と粗型首成形面31の端部との距離は、例えば、3mm以上10mm以下であるとよい。第1凹部35の開口端35Bは、粗型首成形面31の端部に到達してもよい。
【0035】
溶融ガラス塊からパリソン3を成形する工程は、アーム6が初期位置に配置され、口型7及び粗型20がセットされた状態で実施される。口型7がセットされた状態では、第1ネックリング8と第2ネックリング9とが互いに合せ面で当接し、ガイドリング17及びプランジャ18が口型7の受容孔16に配置される。この状態で、プランジャ18の先端は、口型7のキャビティ内に配置される。粗型20がセットされた状態では、第1粗型21及び第2粗型22が合せ面で互いに当接し、第1ネックリング8及び第2ネックリング9を側方から挟持する。この状態で、粗型20のキャビティは口型7のキャビティに接続する。バッフル25は粗型20の上端から離れた退避位置に位置する。
【0036】
溶融ガラス塊が粗型20の空間に供給された後、バッフル25が粗型20の上端部に移動し、粗型20の上端開口を閉塞する。次に、バッフル25を通して圧縮空気が粗型20の空間の上部に供給され、溶融ガラス塊が口型7に押し付けられてパリソン3(ガラスびん2)の口部3Aが形成される。このとき、パリソン3の口部3Aの外周面には、ねじ部11及びスカート部12が形成される。
【0037】
次に、口型7のプランジャ18が第1ネックリング8及び第2ネックリング9に対して後退し、パリソン3の口部3Aの内側に空間が形成される。そして、第1ネックリング8及び第2ネックリング9とプランジャ18との隙間から口部3Aの内側の空間に圧縮空気が供給され、溶融ガラス塊が膨張し、粗型20及びバッフル25に溶融ガラス塊を押え付けられてパリソン3の側部及び底部が形成される。これにより、パリソン3が形成される。このとき、溶融ガラス塊は、第1凹部35内に進入し、パリソン3の首部3Bに凸部34が形成される。
【0038】
図5に示すように、凸部34は、第1凹部35の形状に対応した形状に形成される。凸部34は、半球形、より好ましくは扁平な半球形に形成される。凸部34の基部34Aの首部3Bの周方向(第1軸線X1を中心とした周方向)における幅W4は、第1凹部35の幅W1と等しく、凸部34の基部34Aの首部3Bの長手方向(第1軸線X1に沿った方向)における幅W5は、第1凹部35の幅W2と等しい。また、凸部34の高さH1は、第1凹部35の深さD1と等しい。
【0039】
次にバッフル25が粗型20から退避すると共に、粗型20が開いてパリソン3を露出させる。この状態で、パリソン3は口部3Aにおいて第1ネックリング8及び第2ネックリング9に挟持されている。そして、アーム6が初期位置から反転位置に移動することによって、パリソン3は口部3Aが上端に位置するように反転し、第1ネックリング8及び第2ネックリング9に吊るされた状態になる。アーム6が反転位置にあるときに、第1ネックリング8、第2ネックリング9及びガイドリング17は第2軸線X2に沿って配置される。プランジャ18及びシンブル19は、初期位置に留まり、第1ネックリング8及び第2ネックリング9から分離する。
【0040】
図1及び図6に示すように、基台5において、反転位置にある口型7の下方にはディストリビュータプレート41が設けられている。ディストリビュータプレート41の上面には、ガラスびん2の底部を形成するための底型42が配置されている。
【0041】
底型42の上方には、仕上型43が配置されている。底型42及び仕上型43は、第2軸線X2に沿って配置される。仕上型43は、第2軸線X2に沿って上下に延びる合せ面において互いに当接する第1仕上型44及び第2仕上型45を有する。
【0042】
第1仕上型44及び第2仕上型45は、下端部において底型42を側方から挟み込むように配置される。第1仕上型44及び第2仕上型45は、合せ面にガラスびん2の側部の形状に対応して凹んだ型面44A、45Aを有する。左右の型面44A、45Aによって画定される仕上型43のキャビティは、第2軸線X2に沿って第1仕上型44及び第2仕上型45の上端及び下端に開口している。仕上型43のキャビティの下端は、底型42に閉塞される。
【0043】
仕上型43の型面44A、45Aは、パリソン3の首部3Bを受容すると共に、ガラスびん2の首部2Bを成形するための仕上型首成形面48(第2成形面)を有する。仕上型首成形面48は、第2軸線X2を中心とした円筒面に形成されている。仕上型首成形面48は、等径の円筒面に形成されてもよく、下方(底型42側)に向けて径が漸増する円筒面(円錐面)に形成されてもよい。仕上型首成形面48は、仕上型43の型面44A、45Aにおいて上端部に設けられている。仕上型首成形面48の一部は、粗型首成形面31の対応する部分と等しい直径に設定されている。これにより、粗型首成形面31によって成形されたパリソン3の首部3Bは、仕上型首成形面48によって形成される空間に嵌合し、第2軸線X2と直交する方向への移動が規制される。
【0044】
図6及び図7に示すように、仕上型首成形面48は、パリソン3の首部3Bに突設された凸部34を受容するための少なくとも1つの第2凹部51を有する。第2凹部51の数は、第1凹部35の数と等しい数に設定される。第2凹部51が1つである場合、第2凹部51は型面44A、45Aのいずれに設けられてもよい。第2凹部51の壁面51Aは曲面に形成されていることが好ましい。第2凹部51は、半球形、より好ましくは扁平な半球形に形成されている。第2凹部51は、仕上型43の合せ面に対して直交する方向に凹んでいる。
【0045】
第2凹部51の開口端51Bの仕上型首成形面48の周方向(第2軸線X2を中心とした周方向)における幅W7、及び第2凹部51の開口端51Bの仕上型首成形面48の長手方向(第2軸線X2に沿った方向)における幅W8のそれぞれは、第2凹部51の深さD2よりも大きく設定されている。例えば、幅W7及び幅W8のそれぞれは、深さD2に対して10倍以上25倍以下であることが好ましい。第2凹部51の外縁の形状が真円である場合、幅W7と幅W8は等しく、第2凹部51の直径に対応する。
【0046】
また、第2凹部51が半球形である場合、第2凹部51の壁面51Aの曲率は4mm以上7mm以下であることが好ましい。また、第2凹部51の開口端51Bの直径は、例えば3mm以上20mm以下であるとよい。
【0047】
第2凹部51の開口端51Bは、第2凹部51の壁面51Aと仕上型首成形面48とを滑らかに接続する曲面に形成されている。開口端51Bは、第2凹部51の縁に沿って円環状に設けられている。開口端51Bの曲率は、10mm以上40mm以下であることが好ましく、15mm以上30mm以下であることが更に好ましい。
【0048】
第2凹部51の仕上型首成形面48に対する位置は、第1凹部35の粗型首成形面31に対する位置に対応して設定されている。第2凹部51の中心と仕上型首成形面48の端部との距離は、例えば、3mm以上10mm以下であるとよい。第2凹部51の開口端の縁部は、仕上型首成形面48の端部に到達してもよい。
【0049】
図9は、第1凹部35、第2凹部51、及び凸部34の形状を示す説明図であり、説明のために深さ(高さ)が幅に対して拡大して示されている。図9(A)に示すように、第2凹部51の開口端51Bの仕上型首成形面48の周方向における幅W7は、第1凹部35の開口端35Bの粗型首成形面31の周方向における幅W1より広く設定されている。なお、図示しないが、第2凹部51の開口端51Bの第2軸線X2に沿った方向における幅W8は、第1凹部35の開口端35Bの第1軸線X1に沿った方向における幅W2より広く設定されている。また、第1凹部35及び第2凹部51の開口縁の形状が真円である場合、第2凹部51の開口縁の直径は第1凹部35の開口縁の直径よりも大きく設定されている。
【0050】
第2凹部51の深さD2は、第1凹部35の深さD1以上に設定されている。すなわち、第2凹部51の深さD2は第1凹部35の深さD1と同一であってもよく、第2凹部51の深さD2は第1凹部35の深さD1より深く設定されてもよい。
【0051】
第2凹部51の所定の深さにおける中間部51Cの仕上型首成形面48の周方向における幅W9は、第1凹部35の所定の深さにおける中間部35Cの粗型首成形面31の周方向における幅W3よりも狭く設定されている。ここで、所定の深さは、第2凹部51の最深部を100%としたときの20%以上80%以下の値に設定されるとよい。本実施形態では、所定の深さを第2凹部51の最深部を100%としたときの50%の値(=D2/2)とする。例えば、第2凹部51の中間部51Cには、壁面51Aを形成する円弧状のベース面に対して第2凹部51の内側に膨出する膨出部を有するとよい。或は、第1凹部35の中間部35Cには、壁面35Aを形成する円弧状のベース面に対して第1凹部35の外側に凹む凹部を有するとよい。
【0052】
第2凹部51は、仕上型首成形面48において口型7側の端部に設けられていることが好ましい。第2凹部51の中心と仕上型首成形面48の端部との距離は、例えば、3mm以上10mm以下であるとよい。また、第2凹部51の開口端51Bの上部は、延長部55を介して仕上型首成形面48の端部に接続している。延長部55は、仕上型首成形面48に形成された凹部であり、第2凹部51と同じ深さを有し、仕上型首成形面48の周方向において第2凹部51と等しい幅を有する。
【0053】
パリソン3からガラスびん2を成形する工程は、アーム6が反転位置に配置され、パリソン3が口型7によって底型42の上方において吊るされた状態から実施される。最初に、第1仕上型44及び第2仕上型45が互いに分離した退避位置から、それぞれの合せ面において当接する使用位置に移動し、仕上型43のキャビティにパリソン3を受容する。このとき、パリソン3の首部3Bは仕上型首成形面48の間に受容される。仕上型首成形面48の一部は、粗型首成形面31の対応する部分と等しい直径に設定されているため、粗型首成形面31によって成形されたパリソン3の首部3Bは、仕上型首成形面48によって形成される空間に嵌合し、第2軸線X2と直交する方向への移動が規制される。また、凸部34は第2凹部51に受容される。
【0054】
図9(B)に示すように、第1凹部35と第2凹部51との形状の差異に起因して、第2凹部51に凸部34が受容された状態で、凸部34の所定の高さ(第2凹部51の50%の深さに対応する高さ)における中間部34Bは第2凹部51の深さ方向における中間部51Cと当接し、パリソン3は仕上型43に対して仕上型首成形面48の周方向(第2軸線X2を中心とした周方向)への回転が抑制される。このとき、凸部34の中間部34Bは第2凹部51の中間部51Cに押されて変形することが好ましい。図9(C)に示すように、凸部34の中間部34Bと第2凹部51の中間部51Cとの当接部は、第2凹部51の中心(最深部)に対して左右両側に配置されている。また、当接部は、第2凹部51の中心(最深部)に対して下側にも形成されてもよい。
【0055】
また、図9(B)に示すように、第2凹部51の開口端側の縁部と凸部34の基部34Aとの間には隙間59が形成される。第2凹部51の中心(最深部)と凸部34の先端とは互いに接触してもよく、第2凹部51の中心(最深部)と凸部34の先端との間に空間が形成されてもよい。
【0056】
次に、口型7を構成する第1ネックリング8及び第2ネックリング9が互いに分離し、口型7がパリソン3の口部3Aを放す。これにより、パリソン3が口型7から仕上型43に受け渡される。このとき、パリソン3は、スカート部12が仕上型43の端部に当接するまで第2軸線X2に沿って落下する。パリソン3の落下距離は例えば約1mmであるとよい。このとき、凸部34が第2凹部51内に受容され、第2凹部51の壁面51Aと当接しているため、パリソン3の仕上型43に対する第2軸線X2を中心とした回転が抑制される。パリソン3が仕上型43に対して落下した状態で、第2凹部51と凸部34との当接部及び隙間59は残存する。
【0057】
次に、空気供給管(不図示)がパリソン3の口部3Aに突入し、空気供給管からパリソン3の内側に圧縮空気を供給する。これにより、パリソン3が膨張し、仕上型43及び底型42にパリソン3を押し付けられてガラスびん2の側部及び底部が形成される。これにより、ガラスびん2が形成される。このとき、パリソン3の首部3Bは膨張して仕上型首成形面48に押し付けられる。また、凸部34の基部34A及び首部3Bにおける凸部34の周辺部分は、第2凹部51の壁面51Aに押し付けられる。これにより、図9(C)に示すように、凸部34の基部34Aは、第2凹部51の開口端51Bに沿った形状に成形され、幅が広くなると共に、境界の形状が不明瞭になる。すなわち、凸部34の外縁と首部3Bの表面のなす角度が小さくなると共に、凸部34の外縁が首部3Bの表面に滑らかに接続する。これにより、成形後のガラスびん2において凸部34を目立ち難くすることができる。なお、パリソン3の首部3Bは胴部に対して温度が低下しているが、圧縮空気に押されて仕上型首成形面48に沿うように変形する。隙間59内の空気は、延長部55を通して仕上型43の外部に排出されるとよい。
【0058】
次に、空気供給管が口部3Aから退避すると共に、第1仕上型44及び第2仕上型45が互いに分離し、成形されたガラスびん2を放す。底型42の型面に載置されたガラスびん2は、クランプによって口部3Aを把持され、次の工程に移動させられる。その後、アーム6は反転位置から初期位置に移動し、口型7及び粗型20が溶融ガラス塊を受け入れ可能な初期状態にセットされる。
【0059】
以上の構成によれば、成形後のガラスびん2の美観を損なうことなく、口型7から仕上型43へのパリソン3の受け渡し時のパリソン3の回転を抑制することができる。凸部34は、高さ方向における中間部34Bにおいて第2凹部51の壁面51Aに当接するため、仕上型43に対するパリソン3の回転を抑制することができる。また、第2凹部51の開口端51Bの幅は凸部34の基部34Aの幅よりも広いため、凸部34の基部34Aは第2凹部51の形状に沿って広がり、凸部34と首部3Bとの境界が不明瞭になる。
【0060】
第2凹部51は、仕上型43にパリソン3が配置されたときに、深さ方向における中間部51Cにおいて凸部34の高さ方向における中間部34Bと当接する一方、開口端51Bにおいて凸部34の基部34Aとの間に隙間59を形成するように形状が設定されている。そのため、パリソン3からガラスびん2を成形するときに凸部34の基部34Aが隙間59に向けて膨張することができ、凸部34と首部3Bとの境界が不明瞭になる。第2凹部51は、仕上型43にパリソン3が配置されたときに、深さ方向において開口端51Bから20%以上80%以内の範囲において凸部34に当接し、かつ深さ方向において開口端51Bから0%以上20%未満の範囲内において凸部34に当接しないように形状が設定されていることが好ましい。この構成によれば、第2凹部51と凸部34とを一層確実に当接させることができると共に、隙間59を一層確実に形成することができる。
【0061】
第2凹部51の開口縁が成形型首成形面と滑らかに接続する曲面を有するため、凸部34の基部34Aは曲面に沿って膨張し、ガラスびん2における凸部34と首部2Bの表面との境界が一層不明瞭になる。
【0062】
第1凹部35が扁平な半球形に形成されているため、凸部34は扁平な半球形に形成される。そのため、ガラスびん2の首部2Bにおいて凸部34は比較的目立ち難くなる。
【0063】
以上の実施形態に係るガラスびん製造装置1は、粗型20によって、パリソン3の首部3Bの外面に凸部34を形成するステップと、仕上型43に対するパリソン3の回転を規制するべく、凸部34を仕上型43に形成された第2凹部51に受容させ、凸部34の高さ方向における中間部34Bの外面を第2凹部51の壁面51Aに当接させる一方、凸部34の基部34Aの外面と第2凹部51の開口端51Bとの間に隙間を形成するステップとを有するガラスびんの製造方法を実施することができる。
【0064】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、第1凹部35の形状は円形に限らず様々な形状を適用してもよい。図10に示すように、第1凹部35によって形成される凸部34の形状は、側方から見て、例えば四角形に形成された上部と、上部の下縁から下方に延出した半円状の下部とを有する形状であってよい。この場合も、第1凹部35の所定の深さにおける中間部35Cの粗型首成形面31の周方向における幅W3は、第2凹部51の所定の深さ方向における中間部51Cの仕上型首成形面48の周方向における幅W9よりも大きく設定されているとよい。また、第1凹部35の開口端35Bの粗型首成形面31の周方向における幅W1は、第2凹部51の開口端51Bの仕上型首成形面48の周方向における幅W7よりも小さく設定されているとよい。
【符号の説明】
【0065】
1 :ガラスびん製造装置
2 :ガラスびん
2A :口部
2B :首部
3 :パリソン
3A :口部
3B :首部
7 :口型
20 :粗型
31 :粗型首成形面(第1成形面)
34 :凸部
34A :基端部
34B :中間部
35 :第1凹部
35A :壁面
35B :開口端
35C :中間部
43 :仕上型
48 :仕上型首成形面
51 :第2凹部
51A :壁面
51B :開口端
51C :中間部
59 :隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10