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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】洗掘防止部材設置用装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/52 20060101AFI20221214BHJP
   E02D 27/42 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
E02D27/52 A
E02D27/42 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019136759
(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公開番号】P2021021204
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一輝
(72)【発明者】
【氏名】竹内 章博
(72)【発明者】
【氏名】藤田 英広
(72)【発明者】
【氏名】亀井 良至
(72)【発明者】
【氏名】小倉 剛
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 聡
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 聡
(72)【発明者】
【氏名】河本 勝久
(72)【発明者】
【氏名】岩前 伸幸
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204863(JP,A)
【文献】特開昭61-057484(JP,A)
【文献】特開昭63-004105(JP,A)
【文献】特開昭63-004104(JP,A)
【文献】特開2003-171923(JP,A)
【文献】特開2015-218552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/52
E02D 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塔状の水中基礎を囲うように所定の離隔を持たせた枠材と、
前記枠材を吊り下げる設置用天秤と、
前記枠材の外側から内側方向に向けて洗掘防止部材を移動させる移動手段と、
を具備することを特徴とする洗掘防止部材設置用装置。
【請求項2】
前記枠材が2段構造であることを特徴とする請求項1記載の洗掘防止部材設置用装置。
【請求項3】
前記移動手段が、前記枠材の外側方向に張出し、下段の前記枠材とヒンジ部を介して連結された回動支持部であり、
前記回動支持部の外側の先端部付近と前記設置用天秤とが、上段の前記枠材の外側に設けた滑車を介して線材で接続され、前記回動支持部の外側の先端部付近に前記洗掘防止部材が吊り下げられ、
前記線材によって前記回動支持部を回動させて前記洗掘防止部材を移動させることを特徴とする請求項2記載の洗掘防止部材設置用装置。
【請求項4】
前記移動手段が、前記枠材の外側方向に張出した滑動支持部であり、
前記設置用天秤に接続された線材の下端部に前記洗掘防止部材が吊り下げられ、
前記線材の中間部を前記滑動支持部に沿って移動させて前記洗掘防止部材を移動させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の洗掘防止部材設置用装置。
【請求項5】
前記設置用天秤に、前記線材の長さを調整する調整手段が設けられたことを特徴とする請求項3または請求項4記載の洗掘防止部材設置用装置。
【請求項6】
前記枠材の内側に、前記水中基礎の表面に接触するように複数のガイドローラが設けられたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の洗掘防止部材設置用装置。
【請求項7】
前記ガイドローラが、前記枠材と前記水中基礎との離隔に合わせて前記水中基礎の径方向にスライド可能であることを特徴とする請求項6記載の洗掘防止部材設置用装置。
【請求項8】
前記移動手段の端部付近または前記線材の下端部に、前記洗掘防止部材を吊り下げるための吊環を遠隔操作で解放するオートリリース機構が設けられたことを特徴とする請求項3または請求項4記載の洗掘防止部材設置用装置。
【請求項9】
前記洗掘防止部材が、網に砕石類を充填し縫合したフィルターユニットであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の洗掘防止部材設置用装置。
【請求項10】
前記移動手段が複数の箇所に設けられて個別に操作可能であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の洗掘防止部材設置用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗掘防止部材設置用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洋上風力発電設備などを構築する際には、杭などの塔状の水中基礎を水底に設置している。これらの水中基礎の周囲の地盤では、水流や波などによって洗掘現象が発生することがある。そのため、洗掘防止部材を水中基礎の周囲に設置している(例えば、特許文献1参照)。洗掘防止部材には、網袋に中詰め材を充填したものなどが用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-204863号公報
【文献】実開昭64-19623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洗掘を確実に防止するためには、洗掘防止部材を水底で水中基礎に密着させて配置する必要がある。しかし、洗掘防止部材を水中基礎に沿って水底に吊り降ろすと、洗掘防止部材と水中基礎とが接触して双方が損傷する可能性がある。特に、網袋に中詰め材を充填した洗掘防止部材では、網袋の繊維が擦り切れる不具合が生じることがある。
【0005】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、水中基礎から離した状態で吊り降ろした洗掘防止部材を、水底で水中基礎に密着させて設置できる洗掘防止部材設置用装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために本発明は、塔状の水中基礎を囲うように所定の離隔を持たせた枠材と、前記枠材を吊り下げる設置用天秤と、前記枠材の外側から内側方向に向けて洗掘防止部材を移動させる移動手段と、を具備することを特徴とする洗掘防止部材設置用装置である。
【0007】
本発明によれば、洗掘防止部材が水中基礎から離れた状態で枠材の外側に保持される。これにより、洗掘防止部材の吊り降ろし時に多少の風や波、流れがあっても水中基礎との接触が防止され、洗掘防止部材および水中基礎の損傷を防ぐことができる。また、洗掘防止部材が移動手段によって枠材の外側から内側方向に向けて移動される。これにより、洗掘防止部材を移動させて水底で水中基礎に精度よく密着させて設置し、洗掘を抑制することができる。
【0008】
前記枠材が2段構造であることが望ましい。
これにより、枠材を水中基礎に対して傾かないように配置することができる。
【0009】
前記移動手段は、例えば、前記枠材の外側方向に張出し、下段の前記枠材とヒンジ部を介して連結された回動支持部であり、前記回動支持部の外側の先端部付近と前記設置用天秤とが、上段の前記枠材の外側に設けた滑車を介して線材で接続され、前記回動支持部の外側の先端部付近に前記洗掘防止部材が吊り下げられ、前記線材によって前記回動支持部を回動させて前記洗掘防止部材を移動させる。
または、前記移動手段は、例えば、前記枠材の外側方向に張出した滑動支持部であり、前記設置用天秤に接続された線材の下端部に前記洗掘防止部材が吊り下げられ、前記線材の中間部を前記滑動支持部に沿って移動させて前記洗掘防止部材を移動させてもよい。
これらのような構成にすれば、洗掘防止部材を水中基礎から確実に離した状態で吊り降ろすことができる。また、洗掘防止部材を枠材の外側から内側方向に向けて容易に移動させることができる。
【0010】
前記設置用天秤に、前記線材の長さを調整する調整手段が設けられることが望ましい。
これにより、線材の長さを調整して洗掘防止部材を適切な位置に移動させることができる。
【0011】
前記枠材の内側に、前記水中基礎の表面に接触するように複数のガイドローラが設けられることが望ましい。
また、前記ガイドローラが、前記枠材と前記水中基礎との離隔に合わせて前記水中基礎の径方向にスライド可能であることが望ましい。
ガイドローラを水中基礎の表面に接触させれば、枠材と水中基礎の表面との離隔を埋めて枠材のがたつきを防止することができる。また、ガイドローラをスライド可能とすれば、径が異なる水中基礎の周囲に洗掘防止部材を設置する際に洗掘防止部材設置用装置を転用できる。
【0012】
前記移動手段の端部付近または前記線材の下端部に、前記洗掘防止部材を吊り下げるための吊環を遠隔操作で解放するオートリリース機構が設けられてもよい。
これにより、洗掘防止部材を水底に設置する際に水中でのダイバー作業が不要となる。
【0013】
前記洗掘防止部材が、網に砕石類を充填し縫合したフィルターユニットであることが望ましい。
これにより、洗掘防止部材の変形が容易になるとともに、材料費を低減できる。
【0014】
前記移動手段が複数の箇所に設けられて個別に操作可能であることが望ましい。
これにより、隣接して設置される予定の洗掘防止部材をぶつからないように個別に移動させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水中基礎から離した状態で吊り降ろした洗掘防止部材を、水底で水中基礎に密着させて設置できる洗掘防止部材設置用装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】洗掘防止部材設置用装置1を示す図。
図2】洗掘防止部材設置用装置1を示す図。
図3】水底45に洗掘防止部材23を設置する方法を示す図。
図4】水底45に洗掘防止部材23を設置する方法を示す図。
図5】洗掘防止部材設置用装置1aを示す図。
図6】水底45に洗掘防止部材23を設置する方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の第1の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1図2は、第1の実施形態に係る洗掘防止部材設置用装置1を示す図である。図1は、洗掘防止部材設置用装置の鉛直方向の断面図であり、図2は、図1に示す矢印A-Aによる断面図である。
【0019】
図1図2に示すように、洗掘防止部材設置用装置1は、枠材3、設置用天秤5、移動手段である回動支持部7等からなる。
【0020】
枠材3は、上段枠材3aと下段枠材3bとからなる2段構造である。上段枠材3aおよび下段枠材3bは環状の部材である。上段枠材3aと下段枠材3bとは、連結材31によって剛結合される。連結材31は、枠材3の周方向に所定の間隔をおいて設けられることが望ましい。
【0021】
上段枠材3a、下段枠材3bの内側には、複数のガイドローラ17が設けられる。ガイドローラ17は、枠材3の周方向に所定の間隔をおいて複数設けられる。ガイドローラ17は、枠材3に固定されたスライド部19に接続され、スライド部19によって枠材3の径方向にスライド可能である。
【0022】
設置用天秤5は、吊下材6によって上段枠材3aと連結され、枠材3を吊り下げる。吊下材6は設置用天秤5と枠材3との距離を一定に保つ。設置用天秤5の外周には、ジャッキ15が固定される。ジャッキ15は、後述する線材13の長さを調整する調整手段である。設置用天秤5の上面には、制御ユニット29が設置される。制御ユニット29は、ジャッキ15や後述するオートリリース機構21などを制御する。
【0023】
回動支持部7は、下段枠材3bとヒンジ部9を介して連結され、枠材3の外側方向に張出す。回動支持部7の外側の先端部33付近は、設置用天秤5に固定されたジャッキ15に、上段枠材3aの外側に設けられた滑車11を介して線材13で接続される。
【0024】
回動支持部7は、枠材3の周方向に所定の間隔をおいて複数の箇所に設けられる。ジャッキ15と回動支持部7とは1対1で対応しており、制御ユニット29でジャッキ15を制御することにより、回動支持部7を個別に操作することができる。
【0025】
回動支持部7の先端部33付近には洗掘防止部材23が吊り下げられる。洗掘防止部材23には線材25が設けられ、線材25には吊環27が設けられる。洗掘防止部材23は、ラッセル網等の網袋に砕石類を充填し縫合したフィルターユニットである。
【0026】
洗掘防止部材23は、回動支持部7の先端部33に設けられたオートリリース機構21に吊環27を介して取り付けられる。オートリリース機構21は例えばジャッキを用いており、制御ユニット29でオートリリース機構21のジャッキを制御することにより、吊環27の固定や解放を個別に操作することができる。
【0027】
図3図4は、洗掘防止部材設置用装置1を用いて水底45に洗掘防止部材23を設置する方法を示す図である。以下に、洗掘防止部材設置用装置1を用いて水底45に洗掘防止部材23を設置する方法について、図1から図4を用いて説明する。
【0028】
モノパイルなどの塔状の水中基礎37の周囲の水底45に洗掘防止部材23を設置するには、あらかじめ水中基礎37の周囲の水底45の深さを把握しておく。そして、まず、陸上に図2に示すように洗掘防止部材23を並べ、その上に洗掘防止部材設置用装置1を吊り降ろして、回動支持部7のオートリリース機構21に洗掘防止部材23を取り付ける。
【0029】
次に、洗掘防止部材23を取り付けた洗掘防止部材設置用装置1を洋上に運搬し、図1に示すように枠材3や洗掘防止部材23を水中に吊下げていく。そして、水中基礎37の先端を枠材3に通し、洗掘防止部材設置用装置1を所定の高さに設置する。洗掘防止部材設置用装置1を所定の高さに設置するまでの間、回動支持部7は、洗掘防止部材23を水中基礎37から充分に離れた状態に保つ。
【0030】
洗掘防止部材設置用装置1を設置する所定の高さとは、回動支持部7を図3に示すように回動させた時に洗掘防止部材23を水底45付近に配置できる高さである。設置用天秤5は水中基礎37の上方の水面35上に配置される。
【0031】
枠材3は、図1に示すように、水中基礎37を囲うように水中基礎37との間に所定の離隔39を持たせて配置される。ガイドローラ17は、スライド部19によって枠材3と水中基礎37との離隔39に合わせてスライドし、スライド部19によって水中基礎37の表面に押し付けられる。
【0032】
洗掘防止部材設置用装置1を所定の高さに設置したら、図2に示す複数の回動支持部7のうち、1ケ所おきに示される半数の回動支持部7について、ジャッキ15で調整して線材13の長さを伸ばす。線材13を伸ばすと、図3に示すようにヒンジ部9を中心として回動支持部7が下向きに回動し、洗掘防止部材23が枠材3の外側から内側方向に向けて移動する。すなわち洗掘防止部材23が水中基礎37から充分に離れた位置(図1に示す位置)から水中基礎37に密着する位置(図3の左半部に示す位置)まで移動する。
【0033】
洗掘防止部材23が水中基礎37に密着する位置まで寄ったら、オートリリース機構21を遠隔操作して吊環27を解放し、図3の右半部に示すように洗掘防止部材23を水底45に設置する。オートリリース機構21から吊環27を解放する時、洗掘防止部材23は水底45に着底していてもよいし、水底45との間に10~20cm程度の隙間があってもよい。
【0034】
なお、洗掘防止部材23を水中基礎37の表面に確実に密着させるには、回動支持部7と下段枠材3bとの角度41が90度以下にならないことが望ましい。角度41は、例えばジャッキ15で線材13の長さを適切に調整することによって管理できる。
【0035】
図2で1ケ所おきに示される半数の回動支持部7について上記の操作を行うことにより、図4(a)に示すように、半数の洗掘防止部材23aが水中基礎37の表面に沿って水底45に設置される。
【0036】
洗掘防止部材23aを水底45に設置したら、残りの半数の回動支持部7についても同様の操作を行って、残りの洗掘防止部材23bを水底45に設置する。洗掘防止部材23a、23bはフィルターユニットであるので、図4(b)に示すように、後から設置される洗掘防止部材23bは先に設置された洗掘防止部材23aの隙間に入り込むように形状を変えて、水中基礎37の表面に沿って水底45に設置される。
【0037】
このように、第1の実施形態の洗掘防止部材設置用装置1を用いれば、洗掘防止部材23を水中基礎37から充分に離した状態で水中に吊り降ろすことができるので、多少の風や波、流れがあっても洗掘防止部材23が水中基礎37と接触することがなく、洗掘防止部材23の網の擦り切れや水中基礎37の損傷を防止できる。また、洗掘防止部材23を吊り下ろした後、回動支持部7を回動させて洗掘防止部材23を枠材3の外側から内側方向に向けて移動させることにより、洗掘防止部材23を水底45で水中基礎37に精度よく密着させて設置することができる。さらに、複数の回動支持部7を個別に操作可能とすることにより、隣接して設置される予定の洗掘防止部材23をぶつからないように移動させて水底45に設置できる。
【0038】
洗掘防止部材設置用装置1では、枠材3を2段構造とすることにより、枠材3の水中基礎37に対する傾きを防止できる。また、枠材3の内側に複数のガイドローラ17を設けることにより、枠材3と水中基礎37の表面との離隔39を埋めて枠材3のがたつきを防止できる。さらに、スライド部19を設けることにより、ガイドローラ17を確実に水中基礎37の表面に接触させることができる。
【0039】
洗掘防止部材設置用装置1では、オートリリース機構21を設けることにより、洗掘防止部材23を水底45に設置する際に水中でのダイバー作業が不要となる。また、洗掘防止部材23としてフィルターユニットを用いることにより、水中で容易に変形させることができ、材料費も低減できる。
【0040】
以下、本発明の別の例について、第2の実施形態として説明する。第2の実施形態は第1の実施形態と異なる点について説明し、同様の構成については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。
【0041】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る洗掘防止部材設置用装置1aを示す図である。
【0042】
この洗掘防止部材設置用装置1aは、移動手段として滑動支持部43を有する点で第1の実施形態と主に異なる。
【0043】
滑動支持部43は、下段枠材3bに固定され、枠材3の外側方向に張出す。設置用天秤5に固定されたジャッキ15は、オートリリース機構21と、滑動支持部43を介して線材13aで接続される。洗掘防止部材23は、吊環27をオートリリース機構21に取り付けることにより線材13aの下端部に吊り下げられる。線材13aの中間部は滑動支持部43に沿って図5の矢印に示す方向に移動可能である。滑動支持部43は、枠材3の周方向に所定の間隔をおいて複数の箇所に設けられ、個別に操作可能である。
【0044】
図6は、洗掘防止部材設置用装置1aを用いて水底45に洗掘防止部材23を設置する方法を示す図である。以下に、洗掘防止部材設置用装置1aを用いて洗掘防止部材23を設置する方法について、図5図6を用いて説明する。
【0045】
水中基礎37の周囲の水底45に洗掘防止部材23を設置するには、まず、第1の実施形態と同様に陸上に洗掘防止部材23を並べ、その上に洗掘防止部材設置用装置1aを吊り降ろして、オートリリース機構21に洗掘防止部材23を取り付ける。
【0046】
次に、洗掘防止部材23を取り付けた洗掘防止部材設置用装置1aを洋上に運搬し、図5に示すように枠材3や洗掘防止部材23を水中に吊下げていく。そして、水中基礎37の先端を枠材3に通し、洗掘防止部材設置用装置1aを所定の高さに設置する。洗掘防止部材設置用装置1aを所定の高さに設置するまでの間、滑動支持部43は、洗掘防止部材23が水中基礎37から充分に離れた状態に保たれるように線材13aを保持する。
【0047】
洗掘防止部材設置用装置1aを設置する所定の高さとは、線材13aを図6に示すように滑動させた時に洗掘防止部材23を水底45付近に配置できる高さである。設置用天秤5は水中基礎37の上方の水面35上に配置される。
【0048】
洗掘防止部材設置用装置1aを所定の高さに設置したら、複数の滑動支持部43のうち1ケ所おきの半数の滑動支持部43について、図6に示すようにジャッキ15で長さを調整して線材13aを伸ばすとともに、線材13aの中間部を滑動支持部43に沿って図5に示す矢印の方向に移動させる。すると、洗掘防止部材23が枠材3の外側から内側方向に向けて移動する。すなわち洗掘防止部材23が水中基礎37から充分に離れた位置(図5に示す位置)から水中基礎37に密着する位置(図6の左半部に示す位置)まで移動する。
【0049】
洗掘防止部材23が水中基礎37に密着する位置まで寄ったら、オートリリース機構21を遠隔操作して吊環27を解放し、図6の右半部に示すように洗掘防止部材23を水底45に設置する。
【0050】
1ケ所おきの半数の滑動支持部43について上記の操作を行って半数の洗掘防止部材23を水底45に設置したら、残りの半数の滑動支持部43についても同様の操作を行い、全ての洗掘防止部材23を水底45に設置する。
【0051】
このように、第2の実施形態の洗掘防止部材設置用装置1aを用いれば、洗掘防止部材23を水中基礎37から充分に離した状態で水中に吊り降ろすことができるので、多少の風や波、流れがあっても洗掘防止部材23が水中基礎37と接触することがなく、洗掘防止部材23の網の擦り切れや水中基礎37の損傷を防止できる。また、洗掘防止部材23を吊り下ろした後、滑動支持部43に沿って線材13aを滑動させて洗掘防止部材23を枠材3の外側から内側方向に向けて移動させることにより、洗掘防止部材23を水底45で水中基礎37に精度よく密着させて設置することができる。さらに、複数の滑動支持部43を個別に操作可能とすることにより、隣接して設置される予定の洗掘防止部材23をぶつからないように移動させて水底45に設置できる。
【0052】
第2の実施形態においても、洗掘防止部材設置用装置1aの枠材3を2段構造とすること、ガイドローラ17およびスライド部19を設けること、オートリリース機構21を設けること、洗掘防止部材23としてフィルターユニットを用いること等により、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0053】
なお、洗掘防止部材設置用装置1aでは、枠材3を1段構造としてもよい。
【0054】
第1、第2の実施形態では、線材13、13aの長さを調整する調整手段としてジャッキ15を設けたが、調整手段はジャッキに限らず、ウインチやチェーンブロック等でもよい。
【0055】
第1、第2の実施形態の洗掘防止部材設置用装置1、1aでは、吊下材6で設置用天秤5に対する枠材3の吊り下げ高さを一定に保ったが、ウインチ等を設けて吊下材6の長さを可変とし、設置用天秤5に対する枠材3の吊り下げ高さを調整できるようにしてもよい。
【0056】
第1、第2の実施形態では、移動手段である回動支持部7や滑動支持部43を1ケ所おきに2回に分けて操作したが、移動手段を3回以上に分けて操作してもよい。また、枠材3の外側から内側に移動させる際に洗掘防止部材23同士が干渉しないと想定される場合は、複数の移動手段を一括して操作してもよい。
【0057】
第1、第2の実施形態では、洗掘防止部材設置用装置1、1aに設けたオートリリース機構21に洗掘防止部材23の吊環27を取り付けたが、これは必須ではない。洗掘防止部材設置用装置1の回動支持部7の先端部33付近や洗掘防止部材設置用装置1aの線材13aの下端部に、洗掘防止部材23の線材25を直接取り付けてもよい。この場合、線材25を切断することにより洗掘防止部材23を水底45に設置する。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0059】
1、1a………洗掘防止部材設置用装置
3………枠材
3a………上段枠材
3b………下段枠材
5………設置用天秤
6………吊下材
7………回動支持部
9………ヒンジ部
11………滑車
13、13a、25………線材
15………ジャッキ
17………ガイドローラ
19………スライド部
21………オートリリース機構
23、23a、23b………洗掘防止部材
27………吊環
29………制御ユニット
31………連結材
33………先端部
35………水面
37………水中基礎
39………離隔
41………角度
43………滑動支持部
45………水底
図1
図2
図3
図4
図5
図6