(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】誘導電力伝達装置
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20221214BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20221214BHJP
H02J 50/70 20160101ALI20221214BHJP
【FI】
H01F38/14
H02J50/10
H02J50/70
(21)【出願番号】P 2019153478
(22)【出願日】2019-08-26
(62)【分割の表示】P 2017225614の分割
【原出願日】2010-02-05
【審査請求日】2019-09-25
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-05
(32)【優先日】2009-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(32)【優先日】2009-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(73)【特許権者】
【識別番号】504448092
【氏名又は名称】オークランド ユニサービシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AUCKLAND UNISERVICES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】ボーイズ,ジョン タルボット
(72)【発明者】
【氏名】コビック,グラント アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ハン,チャン-ユ
(72)【発明者】
【氏名】ブディア,マイケル バイピン
【合議体】
【審判長】酒井 朋広
【審判官】清水 稔
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-269059(JP,A)
【文献】特開平8-37121(JP,A)
【文献】国際公開第2008/043326(WO,A1)
【文献】特表2001-520962(JP,A)
【文献】特開平6-277358(JP,A)
【文献】特開平4-246331(JP,A)
【文献】特表2005-525705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面と後面を有し、前記前面を越えた空間に磁束を発生しまたその空間から磁束を受ける磁束パッドであって、
前記磁束パッドの前記前面側に配置された磁気透過性の磁心と、
前記磁心の上で実質的に同じ平面上に設けられた実質的に平面状の2つのコイルと、
を含み、
前記2つのコイルは、それぞれ、前記磁心と磁気的に関連するとともに磁束を発生しまたは受ける磁極領域を画定し、
前記磁心は、
前記2つのコイルの中心線から各コイルの中心の穴を超えて伸長した細長い形状を備えることにより、前記磁束パッド内における前記磁極領域の間に磁束パイプをもたらし、磁束が、前記磁極領域の一方で磁束パッドに入り、前記磁極領域の他方で磁束パッドから出て、前記前面を越えた空間で前記磁極領域の間にアーチを形成するように配置される一方で、前記磁束パイプが、前記磁極領域を接続し、磁束が実質的に逃げない高い磁束集中をする全体的に細長い箇所を提供するように
した、磁束パッド。
【請求項2】
前記磁心は、少なくとも2本の磁気透過性材料から
なる、請求項1に記載の磁束パッド。
【請求項3】
前記コイルは、前記磁心の上部に載置されて前記磁束パイプをもたらし、前記コイルを通る磁束パイプを貫通する直線経路はなく、前記コイルは、動作時にパッドの後面を越えて伸びていく磁束は本質的に無いように配置されている、請求項1または2に記載の磁束パッド。
【請求項4】
前記磁心は、前記磁極領域の夫々を越えて各々のコイルの外側縁まで延在する、請求項1~3の何れか1項に記載の磁束パッド。
【請求項5】
前記コイルは、スパイラル巻きのコイルである、請求項1~4の何れか1項に記載の磁束パッド。
【請求項6】
前記コイルは、前記磁極領域の間の箇所で互いにすぐ隣に位置している、請求項1~5の何れか1項に記載の磁束パッド。
【請求項7】
前記コイルはそれぞれ非対称である、請求項1~6の何れか1項に記載の磁束パッド。
【請求項8】
各コイルの巻き線の組み合わせは、前記磁極領域の間ではパッドの周辺に比べて、広くなっている、請求項1~7の何れか1項に記載の磁束パッド。
【請求項9】
前記コイルは線径の
0.5~1倍より小さいエアギャップを備えている、請求項1~8の何れか1項に記載の磁束パッド。
【請求項10】
前記コイルは、幅狭の
周縁部と
フラットな周縁部を備えた楕円または長方形の断面の線からなり、該線は、前記磁極領域の間では
前記フラットな周縁部上に巻かれ、パッドの周辺では
前記幅狭の
周縁部上に巻かれている、請求項1~9の何れか1項に記載の磁束パッド。
【請求項11】
前記2つのコイルは
、前記中心線に沿って接触している、請求項1~10の何れか1項に記載の磁束パッド。
【請求項12】
前記磁心は
、前記中心線に平行な方向では、前記2つのコイルの周辺を越えて延在することはない、請求項1~11の何れか1項に記載の磁束パッド。
【請求項13】
前記2つのコイルは、電気的に接続されている、請求項1~12の何れか1項に記載の磁束パッド。
【請求項14】
さらに、前記後面に配置された背面プレートを備える、請求項1~13の何れか1項に記載の磁束パッド。
【請求項15】
前記背面プレートは、前記磁心の前記前面とは反対側で前記磁心に隣接して配置されている、請求項14に記載の磁束パッド。
【請求項16】
前記背面プレートは、磁束防御材料を備えている、請求項14又は15に記載の磁束パッド。
【請求項17】
さらに、前記磁心と磁気的に関連するとともに第二の磁束成分を発生しまたは受けるように構成された実質的に平面状の別のコイルを備える、請求項1に記載の磁束パッド。
【請求項18】
前記別のコイルは、前記2つのコイルとオーバーラップしている、請求項17に記載の磁束パッド。
【請求項19】
前記別のコイルは、前記磁束パッドの中心に配置されている、請求項17または18に記載の磁束パッド。
【請求項20】
前記第二の磁束成分は、垂直の磁束成分である、請求項17~19の何れか1項に記載の磁束パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁束を発生しまたは受ける装置に関するものである。本発明は、これに限らないが、特に、パッドなどのように誘導電力伝達(IPT)を用いた電力伝達を行うものであって、外形が低く実質的に平面状であるデバイスに利用される。
【背景技術】
【0002】
IPTシステムと、誘導電力伝達のための1次側または2次側の巻き線からなる一つ以上の巻き線を含むパッドの使用は、国際公開公報WO2008/140333で紹介されている。その内容は、ここに参照によって組み込まれる。この一つの利用形態としてのIPT電力伝達パッドは、電気自動車への充電である。IPT電力伝達パッドは、電力を「ピックアップ」するデバイス(すなわち、IPTシステムの2次側の巻き線)として電気自動車に搭載されるとともに「充電パッド」(すなわち、1次側の巻き線)としてガレージの床面に固定されて設置される。
【0003】
誘導的に充電される電気自動車のためのピックアップの開発において、問題であったのは、電気自動車の下面の車高である。従来のピックアップ回路では、結合係数が実用にならないほど小さく、おおよそ100mmの距離までしか十分な量の電力は提供できなかった。
【0004】
通常の電気自動車を一晩で充電する電力は約2.0kWであると一般に考えられていた。このため、一晩充電するモードではおおよそ24kWHを伝達することができる。近年の電気自動車では、これにより100km以上走行することができ、子供の学校の送り迎え、お使いや短い通勤などに用いる小型車のために、理想的である。
【0005】
誘導結合の充電器は、通常2つの電力パッドを用いる。これらは、
図1に示すように円形をしており直径が400mmで厚さが25mm程度の大きさである。しかしながら、このような誘導充電器に用いるには電気自動車は、充電パッドの上方に正確に位置決めをしなくてはならず、通常50mm以内に完璧にそろえることが必要であり、電気自動車の電力パッドと地上の電力パッドの間隔は精密に制御されなくてはならない。 原理的には、誘導電力伝達は垂直方向に0~100mmの隙間で行うことができる。しかし、100mmに設定すると、120mmではパワーのロスが大きく、また50mmを下回ると作動させることができない。このような事態は、パッド間の距離が変化することにより電力パッドの自己インダクタンスと相互インダクタンスの双方が大きく変動するために生じる。
図1の構造を有する同一の2つの円形パッドの自己インダクタンスと相互インダクタンスを、距離の関数として
図2に示す。したがって、100mmでは、電力パッドレシーバーまたはピックアップは、500Wの電力定格に対し100ボルトのピックアップ電圧で5アンペアの短絡電流を有することができる。IPTシステムのエレクトロニクスはQ値を4で作動させると、2kWをバッテリーに伝達することができるが、適当なバッテリー電圧で必要な電力を生成する点において、まだ改善を要する点がある。
【0006】
ピックアップパッド(すなわち、電気自動車に搭載された電力パッド)に誘導される電圧は、間隔の変化にたいへん敏感に変動する。
図2に示すように、相互インダクタンスの変化に対応して、120mmでは約40%減少し、50mmでは2倍になる。電力が減少すると、電気自動車は通常の時間ではフル充電できないことになる。しかし、より大きな問題は、間隔が小さいと伝達される電力は大きくなり、回路の部品が過負荷になることである。また、間隔が減少するにつれてピックアップコイルの自己インダクタンスも変化して、回路がオフ周波数で動作するようになり、電源に過重な負担をかけることになる。間隔がさらに小さくなると、このような電源の負担により1次側のピックアップの同調が維持できなくなり、システムはシャットダウンする。実際には、40mmから100mmまでの間隔で動作させることが実現可能であり、これより大きい範囲では困難である。
【0007】
40mmから100mmの間隔の範囲はたいへん狭いものである。高い地上高を有する電気自動車であれば、電気自動車の電力パッドは低くするか、または地上の電力パッドを高くするかどちらかにしなければならない。自動システムでこれを行うと、充電システムの信頼性を確保できる。別の方法として、地上のパッドを持ち上げた位置で固定することもできる。しかし、電気自動車が充電していない時はこのようなパッドは躓く危険があり、このような状況は、ガレージや電気自動車と歩行者が混在する場所では通常はさけるべきである。
【0008】
図1の電力パッドの構造は知られているものであり、アルミニウム製のケース1に通常8つのフェライトバー2と一つのコイル3が収納されている。コイルを流れる電流はフェライトバーの内部に磁束を生成し、この磁束は磁束線となってフェライトバーから他のバーの端部へ伝搬する。その経路はコイルを含み楕円形に近い形と考えられる。ひとつのバーに対する磁束線4を
図3に示す。磁束線は上方向にフェライトバーから飛び出し、バーの他の端部に直交して入るように伝搬する。中実のアルミニウム製の背面プレート1に妨げられるのでパッドの後面には磁束は通らない。実際のパッドは、
図4の断面図におおよそ示すように、8つのバーが磁束のパターンを与える。磁束のパターンのシミュレーションを
図4Aに示す。
【0009】
図4Aから、最も高い位置では、磁束線は本質的に水平であることがわかる。したがって、1次パッドと2次パッドの間で可能な最大間隔を得るには、この水平の磁束を検出することが有利であろう。しかしながら、この水平の磁束は相対的にパッドに近い(パッドからパッドの直径の4分の1程度伸ばしたところである)ので、電力パッドのまさに中心では水平の磁束は存在しない。したがって、もっとも磁束密度の大きい箇所は、理想的には、中心であるが、実際の使用可能な水平の磁束の成分はゼロである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、誘導電力伝達の改善した装置もしくは改善した方法、または改善したIPT電力伝達パッドを提供することであり、また、少なくとも公衆に有用な選択肢を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、一態様において、前面と後面を有し、前面を越えた空間に磁束を発生しまたその空間から磁束を受ける磁束パッドであって、磁束を送りまたは受ける2つの磁極領域と、磁気透過性の磁心と、前記磁心に磁気的に関連する2つのコイルとを含み、これにより、磁束はパッドの一つの磁極領域から入り、パッドの他の磁極領域から出る磁束パッド、を提供する。
【0013】
一つの実施形態において、これらのコイルが平面状のコイルであり、各コイルはそれぞれ一つの磁極領域を画してもよい。
【0014】
これらのコイルは、スパイラル巻きのコイルであってもよい。
【0015】
一つの実施形態において、これらのコイルはパッドの前面に最も近い磁心の片側に位置し、これらのコイルと磁心はともにパッドの磁束経路を形成する。
【0016】
この磁心はフェライトなどの磁気透過性材料の長さを含む。
【0017】
一つの実施形態において、コイルの巻きは、磁極領域と磁極領域の間で拡がっている。他の実施形態において、コイルの巻きは磁極領域と磁極領域の間の箇所の外側の領域に集中している。各コイルは非対称であって、コイルの巻き線の組み合わせは、磁極領域と磁極領域の間ではパッドの周辺に比べて、広くなっていてもよい。
【0018】
一つの実施形態において、これらのコイルは、磁極領域と磁極領域の間の箇所で互いにすぐ隣に位置する。コイルは磁極領域と磁極領域の間の箇所で互いに接触していてもよい。
【0019】
これらのコイルは、磁極領域と、磁極領域と磁極領域の間の磁束パイプとを提供するように形成されてもよい。これらのコイルは、また、実質的に同じ平面にあってもよい。
【0020】
本発明のさらに他の態様として、前面と後面を有し、前面を越えた空間に磁束を発生しまたその空間から磁束を受ける磁束パッドであって、磁束を送りまたは受ける2つの磁極領域と、磁気透過性の磁心と、磁心に磁気的に関連しパッドの前面に隣り合う磁心の片側に設けられた2つのコイルとを含み、これにより、パッドは空間にアーチ形状の磁束を生成し、本質的に各磁束線が磁極領域のひとつから始まり、第2の磁極領域へアーチをかけ、パッドの後面に本質的に磁束が存在せずに磁心を通してそれ自体に結合するようにした磁束パッド、を提供する。
【0021】
本発明のさらに別な態様として、前面と後面を有し、前面を越えた空間に磁束を発生しまたその空間から磁束を受ける磁束パッドであって、磁束を送りまたは受ける2つの磁極領域と、磁気透過性の磁心と、磁心に磁気的に関連しパッドの前面に隣り合う磁心の片側に設けられ、水平の磁束成分を受けるようにした2つのコイルと、さらに、磁心と磁気的に関連し垂直の磁束成分を受けるようにした別のコイルとを含む磁束パッドを提供する。
【0022】
本発明のさらに別な態様として、上記した磁束パッドを含むIPTシステムを提供する。このシステムは、また、上記した磁束を送るパッド(トランスミッターパッド)と磁束を受けるパッド(レシーバーパッド)を含んでもよい。
【0023】
このIPTシステムは、電気自動車に電源を供給してもよい。
【0024】
本発明のさらに別な態様として、相対的に高い磁気透過性を有するとともに2つの端部を有する磁束坦体と、前記磁束坦体と電磁気的な関連をする2つの巻き線と、を含み、磁束坦体は、2つの磁束送受箇所を有し、磁束送受箇所は各端部の隣に配され、これにより磁束は実質的に送受箇所かまたはその隣りにおいてのみ磁束坦体に出入りするようにしたIPT電力伝達磁束トランスミッターまたはレシーバーを供給する。
【0025】
本発明の他の態様は、以下の記載によって明らかになる。
【0026】
一つ以上の実施態様が、図を参照し実施例を通して以下に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、IPT電力伝達パッドのすでに知られた形の一部の透視図である。
【
図2】
図2は、
図1のようなパッドの高さの変動に対するインダクタンスの測定値と磁束結合能率を示すグラフである。
【
図3】
図3は、
図1のパッドの一部の断面における模式立面図であり、磁束線を示している。
【
図4】
図4は、
図1のパッドの断面における平面図と立面図であり、磁束線を示している。
【
図4A】
図4Aは、
図1のパッドの断面の立面図であり、磁界(磁束線で示されている)のコンピュータシミュレーションを示している。
【
図5A】
図5Aは、パッドの形式で提供される誘導電力伝達装置の一例の平面図である。
【
図5D】
図5Dは
図5A~5Cのパッドの断面図のコンピュータシミュレーションであり、使用に供されたパッドにより生成された磁束線を示している。
【
図6】
図6は、中心コイルまたは積分コイルを含む誘導電力伝達装置の別の実施例に対する電気配線図の模式的説明図である。
【
図7A】
図7Aは磁束トランスミッター及びレシーバーを下から見た斜視図である(上側が磁束トランスミッターである。)。
【
図8A】
図8Aは、
図7Aおよび
図7Bの配置のシミュレーションに基づく磁束線を示す。磁束トランスミッター及びレシーバーの間隔が200mmで、ずれがないときのものである。
【
図8B】
図8Bは、
図7Aおよび
図7Bの配置のシミュレーションに基づく磁束線を示す。磁束トランスミッター及びレシーバーがX軸方向にずれがあるときのものである。
【
図11】
図11は、前に掲げた図のパッドのコイルに対する巻き線配置の説明図である。
【
図12】
図12は、前に掲げた図におけるパッドの構造に対するフォーマーまたは支持プレートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
IPT電力伝達の配置における新しい概念を開示する。本明細書に記載された実施例は、磁束送受装置に関連するものであり、これらは共通して(必ずしも限るものではないが)、電力伝達パッドに関連する独立したユニットの形式で提供される。すなわち、可搬であって通常3次元というよりも2次元といえる配置であり、電気自動車の充電などに利用される。この場合、一つのパッドは地面に備えられ(たとえば、ガレージの床上など)、他のパッドは電気自動車に備えられている。しかしながら、開示された発明は、たとえば道路などの恒久的な構造も含む他の配置も提供し、パッドの形式をとる必要はない。明細書を通して、同様の参照番号は同様の特徴を参照するものである。
【0029】
図5Aの配置を参照すると、新規な「磁束パイプ」を用いるパッドが、一般に参照番号10で示されている。この磁束パイプは、磁極領域11、12である2つの別々の磁束送受箇所を接続している。この磁束パイプ10は一般に理想的にはまったく磁束が逃げない高い磁束集中をする細長い箇所を提供する。この実施例の磁束パイプ10は磁心14を有し、磁心は磁心内に磁束が留まるフェライトなどの磁気透過性の材料を含んでいる。電気回路に関しては、コンデンサの静電容量に大きな違いがある。通常、銅は5.6×10
7であり、空気は10
14のオーダである。この状況は、フェライトと空気の磁気透過性の違いが一万分の一のオーダ以下であるので、磁界に関係しない。したがって、磁気回路においては、空気中への漏洩磁束は常に存在するため、最良の結果を得るには、漏洩磁束を制御する必要がある
【0030】
フラットコイルまたは巻き線17は磁心14の上部に置かれて磁束パイプを提供する。コイル17を通る磁束パイプを貫通する直線経路はない。これに代わり、コイル17の配置により、磁極領域11または12のひとつを通ってパッドに入る磁束は関連するコイル17を通って磁心に沿って伝達されるところから磁心14に伝達され、その後、他の磁極領域12または11を通ってパッドから出て、空気中を通って最初の磁極領域11または12に完全な曲線の磁束経路を形成してもどることにより完了する。このように形成された磁束経路は本質的にパッドの前面の完全に上方にあり、前面を越えて空間に伸びていく。コイル17の配置はまた、本質的にパッドの後面を越えて伸びていく磁束はないことを意味する。したがって、巻き線17の向いている方向により、磁束経路は曲線を描いてパッドの前面の正面の空間に向けられる。コイル17は、磁心14の上面を横切って広がってまたは分けられているので、パッドの中心の磁束は磁心14の内部に主として束縛される。コイル17はまた磁極領域間を離して画するので、磁束が磁極領域を経由してガイドされてパッドに入りまたは出ていき、パッドの前面の表面を越えて空間にループ状のアーチを形成する。このため、パッドの前面の上方の有意の距離に有意の水平の磁束成分を提供する。
【0031】
好ましい実施例では、2つのコイル17は互いにきわめて近接している。これらのコイル17はスパイラル巻きである。
図5Aから5Cに図面で説明されるように、これらのコイル17はアルキメデススパイラルを形成し、中心線17Aに沿って接触している。磁束パイプ10は、磁心14に含まれ、コイル17の端部まで延びている。コイル17は、実質的に平面状であり、磁心14の片側の同じ平面上に配置されている。磁心14の実際の長さは重要ではない。ひとつの実施例ではコイル17の中心線を含むもので各コイルの中心の穴を越えて少なくともAで示される位置にまで延びている。磁心14はコイル17の下を位置Bまであるいはさらに遠くまで、延びていてもよい。コイル17の穴は、磁極領域11および12を画しているパッドの磁束レシーバー/トランスミッターの箇所として機能する。
【0032】
一つの実施例では、磁心14はストリップ状またはレングス状のフェライトバーでできている(
図5A~Cでは示されていないが、
図7Aまたは7Bで説明されている。)。ストリップとストリップの間のエアギャップはあってもよく、製造が簡単になる。理想的な磁束経路20は
図5Cに示され、理想的状態としては、磁心14の片側にのみ存在する。原則として、理想的にはパッドの後面(すなわち、磁心14の片側であってコイル17が取り付けられている片側の反対側)に延びる磁束はない。したがって、アルミニウム製の仕切り(スクリーン)やそのほかの磁束防護部材は必要がない。しかしながら、実際には、いくつかの実施例で軽量の仕切りを用いてもよい。磁心14を構成するフェライトバーに欠陥や不具合があると、小規模な漏洩磁束が発生することがあるためである。
【0033】
図5Dは、使用されて磁界を生成する際の
図5A~5Cのパッド構造のシミュレーションの結果を示す。磁束経路はパッドの前面を越えた空間を通るおおむねアーチ形状であることがわかる。
【0034】
前記した配置による誘導電力伝達パッドは、漏洩磁束が少ないため、たいへん使いやすい。パッドは金属物のすぐ近くにおいても性能が低下することはない。配線などを接続してもほとんど影響がない。
【0035】
第2実施例
別の実施例において、たとえば電気自動車に水平に取り付けられているレシーバーパッドまたはピックアップパッドのコイルの配置は、磁束の発生器(水平向きのトランスミッターパッド)に関してピックアップパッドを長手方向に向けられた磁束の第1の方向(すなわち、磁心14に対して平行方向で図面ではX軸方向)に対しピックアップパッドを敏感にする。ずれがある場合のレシーバーの磁気的な結合を改善するために、固定されたトランスミッターに対して望ましくは垂直である磁束の第2の成分に敏感な「第2の」コイルを配置することができる。
【0036】
図6は、レシーバーパッドの別な実施例の電気図面を示している。レシーバーパッドには、「水平」な磁束に敏感なコイル22が中央に配置され、逆位相で接続された外側の2つのコイル17が垂直成分に敏感な別のコイルを作っている。
【0037】
図5A~5Cのレシービングパッドでは、別のフラットコイル22を磁束パイプの上方に置くことができ、
図7Aと7Bに好適な配置が示されている。コイル22は磁界の垂直成分に敏感である。もとのオリジナルのピックアップ構造においては、この追加したコイルは磁心14の片側にのみ存在した。したがって、トランスミッターに向けられたレシーバーの側にある磁束線のすべてを理想的に維持する。
【0038】
図7Aおよび7Bに示すように、レシーバーだけが中心コイルまたは積分コイル22を装備できる。この第2のコイルは特にX方向(すなわち、水平の長手方向)のずれに対して敏感である。しかし、Y方向(磁心14に直角である水平の横断方向)には敏感ではない。このことはもとのレシーバーがY方向のずれに敏感であることを補完する。しかし、もとのレシーバーは、構造上、X方向の動きに対して敏感でない。両方のレシーバーコイルを合わせた出力は、レシーバーの感度を改善し、レシーバーを名目上の理想的な位置にすることができ、必要な電力を結合することもできる。
図7Aおよび7Bは、また、磁心24を構成する、間隔をあけたフェライトロッドやフェライトバー24の配置を示す。
【0039】
例として、
図7Aおよび7Bに示すパッドデザインを用いた補償のない磁束線を、
図8Bおよび8Aに、それぞれずれがあるものとないものを示す。ここに、トランスミッターパッドとレシーバーパッドは、レシーバーパッドの第2の「垂直磁束」コイル(すなわち、
図7Aおよび7Bのコイル22)が加えられた以外は同一である。トランスミッターパッドとレシーバーパッドはともに長さが588mmあり、幅が406mmある。そして、垂直方向に200mm離れている。トランスミッターパッドのコイルの電流は20kHzにおいて23アンペアである。トランスミッターパッドとレシーバーパッドの間に磁束の大部分が存在することに注目すべきである。一方、ほんのわずかな漏洩磁束がこの領域の外側に存在することが示される。
図8Aでは、この磁束線は第1のレシーバーコイルと結合する。一方、
図8Bは磁束線の大部分は第2のレシービングコイル(すなわち、
図7Aおよび
図7Bのコイル22)と結合する。これにより、ピックアップの出力電力供給能力が改善される。
【0040】
図9および
図10では、ずれのある場合とない場合のレシーバーパッドコイルの出力から生成されたボルトアンペアが示されている。
図9では、
図7Aおよび7Bに示されるパッドの磁気的シミュレーションからレシーバーコイルの全体のボルトアンペアと個別のボルトアンペアへの寄与を示す。レシーバーパッドはX方向にずれ(トランスミッターパッドの中心である理想的な位置に比較して)がある。
図9では、曲線26はコイル22のボルトアンペアへの寄与を表している。曲線28はコイル17の合計のボルトアンペアへの寄与を示している。残りの曲線はコイル17とコイル22の全体を表したものである。第2のコイル22は、前述のように、X方向のオフセットが0の時に2KWの出力が必要であるとすると、その出力を実質的に改善して、電子的同調によりボルトアンペア出力は約3.2倍になるようにしなくてはならない。コイル22がない場合は、X方向のオフセットが140mmでは、電子的ブースト(Q)は17倍必要とされる(実際には、同調感度の問題があり難しい)。これに対して、コイル22がある場合は、約4.8倍の実効的なブーストが必要であるが、これは容易に実現される。レシーバーのX方向のオフセットが0であるときは、コイル22はY方向の感度が敏感でなくともよい。これは
図10に示す磁気的なシミュレーションで確認される。
図10では、コイル22からの全電力に対する寄与はないことが示されている。しかしながら、コイル17の合計の出力はもともとこの方向に敏感であるため必要ではない。Y方向の140mmのオフセットでは、2KWの出力は約5.5倍の電子的な同調(Q)により得ることができる。
【0041】
第3実施例
図11に戻り、コイル17に対する巻き線配置が模式的に説明されている。この実施例では、コイル17の個別の巻きはパッドの端部に比較してパッドの中心に近いところの各巻き線の終わりで拡大されている。したがって、コイル17はそれぞれ非対称であって、コイルの巻き線の組み合わせは、磁極領域と磁極領域の間ではパッドの周辺に比べて、広くなっている。この実施例は、磁極領域11および12(と磁束パッドの前面を越えて延びる大きい磁束の広がり)をより大きい間隔にすることを可能にしている。磁極領域11および12の間隔は、磁極領域11および12の狭い周縁部上と磁極領域と磁極領域の間の磁気パイプの中央の箇所に対してフラットな周縁部上とに巻かれた、楕円または長方形の断面のリッツ線を用いることでより大きくすることができる。
【0042】
これに代わって、コイルが丸線で巻かれている場合は、磁極領域11および12の間隔は磁極領域と磁極領域の間の磁気パイプ部分の巻き線の間のギャップを用いることでより大きくすることができる。しかしながら、発明者らは、磁気パイプ部分の個別の巻き線のギャップは注意深く扱う必要があることが分かった。というのは、磁気パイプの能率をスポイルする磁束漏洩をする穴を残すことがあるためである。発明者らは、巻き線の間隔は同等にするのがよく、ギャップがある場合に磁束の損失を最小限にするには、通常、ギャップは線径の0.5~1倍より小さくなるようにするべきであることが分かった。実際には、技術的な選択として、使いやすい単純な丸線を選択した。
【0043】
さらに他の実施例では、巻き線17の形状により、さらに磁極領域の間隔を大きくすることができる。たとえば、コイル17は各三角形の頂点がパッドの中心に向くようにしておおよそ三角形状で巻かれるとよい。
【0044】
図12を参照すると、
図11の巻き線レイアウトを含むパッドを供給するためのフォーマーまたは支持プレート30が平面図に示されている。フォーマー30は、たとえば、プラスチックなどの磁気非透過性の材質で構成されていればよい。ある。フォーマー30は、コイル17(不図示)の一方を形成し支持する第1の箇所32とコイル17の他方を形成し支持する第2の箇所38を含んでいる。くぼみ34はフェライトバーや他の透過性部材を位置決めし支持する。溝36はコイル17の巻きを構成する個別の線を受容し、巻きが正しい間隔で配置されるようにしている。明確のため、フォーマー30の斜視図を
図13に示す。
【0045】
図14はフォーマー30の後面、すなわち、コイル17が位置する側の反対側であるフォーマーの側に位置し、パッドの後面の隣に位置する背面プレート40を示す。背面プレート40は、たとえば、アルミニウムなどの磁束防御材料で構成されていてもよい。フラットコイル17と磁心14上でのそれらの位置の設計により、パッドの前面の前側の空間に向けて磁束を実質的に放射するため、使用の際にパッドの後面から磁束が出ることを妨げる必要は必ずしもない。しかしながら、背面プレート40はパッドに構造的な支持を加えるものである。また、背面プレート40はパッドの磁気的性質(たとえばインダクタンスの変化)を変えないようにするものである。たとえば、使用の際に磁気透過性材料の隣に取り付けられたような場合である。
【0046】
フォーマー30の大きさはおおよそ790mm×600mm×25mmである。このようなフォーマーから構成されるパッドはほとんど同じ大きさになるであろう。
【0047】
他の実際的な配慮
実際には、パッドのターミナルの電圧は安全が保持できないレベルに到達しないようにするのが望ましい。したがって、いくつかの実施例では、パッドのターミナルからみたインダクタンスを低下するように、コンデンサがパッドの内部に巻き線に直列に加えられてもよく、これらのターミナルで望ましい限度内(たとえば、300~400ボルト)になるように電圧を制御してもよい。そうしないと、ターミナル電圧は数KVに及ぶことがあるため、望ましいとはいえず、また安全が保持できない恐れもある。コンデンサは装置のどこか配置しやすい場所の近くに巻き線と直列に配置することができる。したがって、いくつかの実施例において、ひとつ以上のコンデンサがパッドの筐体の内部のターミナルポイントに巻き線と直列に配置することができる。他の実施例において、一つのコイルの内部電圧が高くなりすぎるような場合は、コンデンサを巻き線に沿って分けて配置し、巻き線をいくつかの適当なセクションに分けて、直列に接続することができる。
【0048】
したがって、本発明は、ここではパッドと呼ぶ外形が低いデバイスを提供することができ、このデバイスから有意の距離に有用な磁束を発生することに用いることができる磁束発生器として使用することができる。このデバイスは、磁束のレシーバーとしても使用することができ、これによって、磁界から受けた電気エネルギーを生成する。有意な距離を越える磁束を発生させまたは受けるパッドの能力は、電気自動車に充電したりエネルギーを与えたりする際に特に有利である。
【0049】
この明細書で引用したすべての出願、特許及び公報のすべての開示は、それがあるとすれば、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
本明細書中の従来技術に関する議論は、そのような先行技術が世界中のどの国においても共通の一般的知識の一部をなすことを承認するものではなく、また、いかなる形式においても示唆をするものではない。また、そのように解すべきでもない。
【0051】
上記の記述では、公知の均等物を有する本発明の完成品または構成要素について言及してきたが、これらの完成品は個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれて含まれる。
【0052】
この明細書に記載された好ましい実施態様に対するいろいろな改変は当業者にとって明らかであることに注意すべきである。このような改変は、本発明の範囲と趣旨から離れずかつその有利な効果を縮減せずに行うことができる。したがって、このような改変は本発明に含まれるものと考えられる。