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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】車両制御システム、及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/02 20120101AFI20221214BHJP
   B60W 50/16 20200101ALI20221214BHJP
   B60W 30/12 20200101ALI20221214BHJP
   B60W 30/02 20120101ALI20221214BHJP
   B60W 30/06 20060101ALI20221214BHJP
   B60W 10/20 20060101ALI20221214BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20221214BHJP
   B60R 16/023 20060101ALI20221214BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20221214BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20221214BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20221214BHJP
   B62D 117/00 20060101ALN20221214BHJP
【FI】
B60W50/02
B60W50/16
B60W30/12
B60W30/02 300
B60W30/06
B60W10/20
B60R16/02 660G
B60R16/023 P
B62D6/00
B62D119:00
B62D113:00
B62D117:00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019155500
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021030974
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】植田 恭史
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171114(JP,A)
【文献】特開2006-051922(JP,A)
【文献】特開2017-196965(JP,A)
【文献】国際公開第2018/154859(WO,A1)
【文献】特開2015-020633(JP,A)
【文献】特開2001-350516(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108693862(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0089503(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0054264(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 ~ 60/00
B60R 16/00 ~ 16/023
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備えられる複数の被制御機器と、複数の前記被制御機器の制御を統括する中央制御部とを有する車両制御システムであって、
前記中央制御部は、前記車両の所定機能を実現するための前記被制御機器の作動条件を決定して、前記作動条件に応じた物理量の指示値を、前記車両の通信ネットワークを介して前記被制御機器に送信し、
前記被制御機器は、前記通信ネットワークを介して、前記中央制御部から前記物理量の指示値を受信したときに、前記物理量の指示値に従って、前記被制御機器が有する駆動部を駆動し、
前記中央制御部は、前記被制御機器の仕様に応じて、前記所定機能において要求される前記車両の作動が担保されるように、前記被制御機器に対する前記物理量の指示値を設定する仕様差吸収部を備える
車両制御システム。
【請求項2】
車両に備えられる複数の被制御機器と、複数の前記被制御機器の制御を統括する中央制御部とを有する車両制御システムであって、
前記中央制御部は、前記車両の所定機能を実現するための前記被制御機器の作動条件を決定して、前記作動条件に応じた物理量の指示値を、前記車両の通信ネットワークを介して前記被制御機器に送信し、
前記被制御機器は、前記通信ネットワークを介して、前記中央制御部から前記物理量の指示値を受信したときに、前記物理量の指示値に従って、前記被制御機器が有する駆動部を駆動し、
前記被制御機器は、前記中央制御部からの前記物理量の指示値の受信が不能になった場合に、所定の故障対応条件に基づいて前記駆動部を駆動又は停止する故障対応部を備え、
前記被制御機器は、前記車両の運転者に対して振動による報知を行う振動報知機器であり、
前記故障対応条件は、前記振動報知機器を振動停止状態に維持する設定条件である
車両制御システム。
【請求項3】
前記車両に新規な前記所定機能を追加するための新規機能データを取得する新規機能データ取得部を備え、
前記中央制御部は、前記新規機能データに従って決定した前記作動条件に応じた前記物理量の指示値を、前記被制御機器に送信することにより、新規な前記所定機能を実現する
請求項1又は請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記中央制御部は、前記車両の複数のエリア毎に備えられた複数のサブ制御部と、前記サブ制御部に対して、前記通信ネットワークを介して、前記所定機能を実現するための制御データを送信するコア制御部とを備え、
前記サブ制御部は、前記コア制御部から受信した前記制御データに基づいて決定した前記作動条件に応じた物理量の指示値を、対応する前記エリアに配置された前記被制御機器に送信する
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記被制御機器は、前記駆動部として操舵アクチュエータを有する操舵機器であり、
前記中央制御部は、前記所定機能として、LKAS(Lane Keep Assist System)、RDM(Road Departure Mitigation)、PA(Parking Assist)、MA-EPS(Motion Adaptive-Electric Power Steering Systems)、AP(Automated Parking)、DAM(Driver Attention Monitor)のうちの少なくともいずれか一つを実現し、
前記操舵機器は、前記中央制御部から受信した前記物理量の指示値に従って、前記操舵アクチュエータを駆動する
請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項6】
前記被制御機器は、前記中央制御部からの前記物理量の指示値の受信が不能になった場合に、所定の故障対応条件に基づいて前記駆動部を駆動又は停止する故障対応部を備える
請求項に記載の車両制御システム。
【請求項7】
前記被制御機器は、前記駆動部として操舵アクチュエータを有する操舵機器であり、
前記故障対応条件は、前記車両をリンプホームモードで走行させるための前記操舵アクチュエータによる操舵角又は操舵角速度の設定条件である
請求項に記載の車両制御システム。
【請求項8】
前記中央制御部は、前記被制御機器の仕様に応じて、前記所定機能において要求される前記車両の作動が担保されるように、前記被制御機器に対する前記物理量の指示値を設定する仕様差吸収部を備える
請求項に記載の車両制御システム。
【請求項9】
車両に備えられる複数の被制御機器の制御を統括する中央制御部が、前記車両の所定機能を実現するための前記被制御機器の作動条件を決定して、前記作動条件に応じた物理量の指示値を、前記車両の通信ネットワークを介して前記被制御機器に送信する物理量指示値送信ステップと、
前記被制御機器が、前記物理量指示値送信ステップにより、前記通信ネットワークを介して、前記中央制御部から送信された前記物理量の指示値を受信したときに、前記物理量の指示値に従って、前記被制御機器が有する駆動部を駆動する駆動ステップと
前記中央制御部が、前記被制御機器の仕様に応じて、前記所定機能において要求される前記車両の作動が担保されるように、前記被制御機器に対する前記物理量の指示値を設定する仕様差吸収ステップと、
を含む車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システム及び車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、統合制御ECUと、ゲートウェイにより統合制御ECUに接続された第1~第4ECUとを備えた車両用ソフトウェア割当てシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。上記システムにおいて、第1ECU~第4ECUは、第1ローカル通信又は第2ローカル通信により第1アクチュエータドライバ又は第2アクチュエータドライバと接続されている。そして、第1アクチュエータドライバは、第1ECU又は第2ECUからの指令に応じて、第1アクチュエータの作動を制御し、第2アクチュエータドライバは、第3ECU又は第4ECUからの指令に応じて、第2アクチュエータの作動を制御する。
また、統合制御ECUは、第1ECU~第4ECUへのソフトウェアの配置要求があった場合に、動作不良の発生率が高いほど高く設定される第1ECU~第4ECUのランク値と、動作不良による影響が高いほど高く設定されるソフトウェアのランクとに基づくマッチングを行って、ソフトウェアを配置するECUを決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6443372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両制御システムにおいては、LKAS(Lane Keep Assist System)等の車両の所定機能を実現するための制御を、アクチュエータ及びドライバを備えた被制御機器側で行っていた。そのため、制御仕様が異なる被制御機器を採用して車両を製造する場合、各被制御機器の制御仕様に合わせて、所定機能を作用させる際の被制御機器に対するECU等の中央制御部の処理を決定しなければならず、中央制御部側の処理負荷が高いという不都合があった。
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、車両の所定機能を実現する際の被制御機器に対する中央制御部側の処理負荷を軽減した車両制御システム及び車両制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための第1態様として、車両に備えられる複数の被制御機器と、複数の前記被制御機器の制御を統括する中央制御部とを有する車両制御システムであって、前記中央制御部は、前記車両の所定機能を実現するための前記被制御機器の作動条件を決定して、前記作動条件に応じた物理量の指示値を、前記車両の通信ネットワークを介して前記被制御機器に送信し、前記被制御機器は、前記通信ネットワークを介して、前記中央制御部から前記物理量の指示値を受信したときに、前記物理量の指示値に従って、前記被制御機器が有する駆動部を駆動し、前記中央制御部は、前記被制御機器の仕様に応じて、前記所定機能において要求される前記車両の作動が担保されるように、前記被制御機器に対する前記物理量の指示値を設定する仕様差吸収部を備える車両制御システムが挙げられる。
【0006】
上記目的を達成するための第2態様として、車両に備えられる複数の被制御機器と、複数の前記被制御機器の制御を統括する中央制御部とを有する車両制御システムであって、前記中央制御部は、前記車両の所定機能を実現するための前記被制御機器の作動条件を決定して、前記作動条件に応じた物理量の指示値を、前記車両の通信ネットワークを介して前記被制御機器に送信し、前記被制御機器は、前記通信ネットワークを介して、前記中央制御部から前記物理量の指示値を受信したときに、前記物理量の指示値に従って、前記被制御機器が有する駆動部を駆動し、前記被制御機器は、前記中央制御部からの前記物理量の指示値の受信が不能になった場合に、所定の故障対応条件に基づいて前記駆動部を駆動又は停止する故障対応部を備え、前記被制御機器は、前記車両の運転者に対して振動による報知を行う振動報知機器であり、前記故障対応条件は、前記振動報知機器を振動停止状態に維持する設定条件である車両制御システムが挙げられる。
【0007】
上記車両制御システムにおいて、前記車両に新規な前記所定機能を追加するための新規機能データを取得する新規機能データ取得部を備え、前記中央制御部は、前記新規機能データに従って決定した前記作動条件に応じた前記物理量の指示値を、前記被制御機器に送信することにより、新規な前記所定機能を実現する構成としてもよい。
【0008】
上記車両制御システムにおいて、前記中央制御部は、前記車両の複数のエリア毎に備えられた複数のサブ制御部と、前記サブ制御部に対して、前記通信ネットワークを介して、前記所定機能を実現するための制御データを送信するコア制御部とを備え、前記サブ制御部は、前記コア制御部から受信した前記制御データに基づいて決定した前記作動条件に応じた物理量の指示値を、対応する前記エリアに配置された前記被制御機器に送信する構成としてもよい。
【0010】
上記車両制御システムにおいて、前記被制御機器は、前記駆動部として操舵アクチュエータを有する操舵機器であり、前記中央制御部は、前記所定機能として、LKAS(Lane Keep Assist System)、RDM(Road Departure Mitigation)、PA(Parking Assist)、MA-EPS(Motion Adaptive-Electric Power Steering Systems)、AP(Automated Parking)、DAM(Driver Attention Monitor)のうちの少なくともいずれか一つを実現し、前記操舵機器は、前記中央制御部から受信した前記物理量の指示値に従って、前記操舵アクチュエータを駆動する構成としてもよい。
【0011】
ここで、LKASは、車両が車線内を走行するように運転者によるステアリング操作を支援する車線維持支援機能である。RDMは、車両が車線からはみ出しそうになった場合に、ディスプレイへの表示或いはステアリング振動による注意喚起、ブレーキによる減速、ステアリング操作の支援等を行う路外逸脱抑制機能である。PAは、車両を駐車スペースに駐車する際の操舵を支援する駐車支援機能である。MA-EPSは、車両の姿勢を安定させるためのステアリング操作を支援する機能である。APは、駐車スペースへの車両の駐車を、運転者の操作に依らずに自動で行う機能である。DAMは、運転者の覚醒度の低下を検知して、注意音の出力やステアリング振動により注意喚起を行う機能である。
【0012】
上記第1態様の車両制御システムにおいて、前記被制御機器は、前記中央制御部からの前記物理量の指示値の受信が不能になった場合に、所定の故障対応条件に基づいて前記駆動部を駆動又は停止する故障対応部を備える構成としてもよい。
さらに、前記被制御機器は、前記駆動部として操舵アクチュエータを有する操舵機器であり、前記故障対応条件は、前記車両をリンプホームモードで走行させるための前記操舵アクチュエータによる操舵角又は操舵角速度の設定条件である構成としてもよい。
【0013】
上記第2態様の車両制御システムにおいて、前記中央制御部は、前記被制御機器の仕様に応じて、前記所定機能において要求される前記車両の作動が担保されるように、前記被制御機器に対する前記物理量の指示値を設定する仕様差吸収部を備える構成としてもよい。
【0014】
次に、上記目的を達成するための第態様として、車両に備えられる複数の被制御機器の制御を統括する中央制御部が、前記車両の所定機能を実現するための前記被制御機器の作動条件を決定して、前記作動条件に応じた物理量の指示値を、前記車両の通信ネットワークを介して前記被制御機器に送信する物理量指示値送信ステップと、前記被制御機器が、前記物理量指示値送信ステップにより、前記通信ネットワークを介して、前記中央制御部から送信された前記物理量の指示値を受信したときに、前記物理量の指示値に従って、前記被制御機器が有する駆動部を駆動する駆動ステップと、前記中央制御部が、前記被制御機器の仕様に応じて、前記所定機能において要求される前記車両の作動が担保されるように、前記被制御機器に対する前記物理量の指示値を設定する仕様差吸収ステップと、を含む車両制御方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両制御システムによれば、中央制御部により、車両の所定機能を実現するための被制御機器の作動条件が決定され、作動条件に応じた物理量の指示値が、中央制御部から被制御機器に送信される。そして、被制御機器は、物理量の指示値に従って駆動部を駆動する。そのため、所定機能を実現するための制御の全部又は一部を被制御機器が実行する場合のように、中央制御部側で、被制御機器の制御仕様に合わせて、被制御機器に対する制御指示を決定する必要がない。よって、車両の所定機能を実現する際の被制御機器に対する中央制御部側の処理負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、車両制御システムの構成図である。
図2図2は、コアECUからサブECUに所定機能のプラグラムをダウンロードして、サブECUによりプログラムを実行する態様の説明図である。
図3図3は、新規機能のプログラムがダウンロードされた場合に、コアECUが、前ECUと中央ECUに保存するプログラムを再配置する態様の説明図である。
図4図4は、中央ECUが追加された場合に、コアECUが、前ECUと中央ECUに保存するプログラムを再配置する態様の説明図である。
図5図5は、車両の特定機能を有効にするための処理のフローチャートである。
図6図6は、前ECUと操舵機器間の処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[1.車両制御システムの構成]
図1を参照して、本実施形態における車両制御システム2の構成について説明する。車両制御システム2は、車両1に搭載されて車両1の作動を制御する。車両制御システム2は、コアECU(Electronic Control Unit)10と、コアECU10とイーサネット(登録商標)200により接続された前ECU20、中央ECU30、及び後ECU40とを備えている。
【0018】
コアECU10は本発明のコア制御部に相当し、前ECU20、中央ECU30、及び後ECU40は、車両1のエリア毎に備えられた本発明のサブ制御部に相当する。また、コアECU10と、前ECU20、中央ECU30、及び後ECU40とにより、本発明の被制御機器の制御を統括する中央制御部が構成される。
【0019】
また、車両制御システム2は、コアECU10とイーサネット200により接続された右前ドアECU50、左前ドアECU60、右後ドアECU70、及び左後ドアECU80を備えている。以下では、前ECU20、中央ECU30、後ECU40、右前ドアECU50、左前ドアECU60、右後ドアECU70、及び左後ドアECU80を、まとめてサブECUともいう。
【0020】
さらに、車両制御システム2は、前ECU20とCANFD(CAN with Flexible Data Rate、CAN(Controller Area Network)は登録商標)230により接続された第1ドライバ101~第6ドライバ106、中央ECU30とCANFD230により接続された第7ドライバ107~第10ドライバ110を備えている。また、車両制御システム2は、後ECU40とCANFD230により接続された第11ドライバ111~第13ドライバ113を備えている。
【0021】
第1ドライバ101~第6ドライバ106は、車両1の前エリアに配置された駆動部を駆動し、コアECU10は、前ECU20及び第1ドライバ101~第6ドライバ106を介して、前エリアに配置された駆動部の作動を制御する。前ECU20は、第1ドライバ101~第6ドライバ106に接続された駆動部の作動条件に応じた物理量(電流、トルク、舵角、舵角速度、動作の有無等)の指示値を、CANFD230を介して、第1ドライバ101~第6ドライバ106に送信する。第1ドライバ101~第6ドライバ106は、前ECU20から受信した物理量の指示値に従って、接続された駆動部を駆動する。前エリアには、EPS(Electric Power Steering)120、ブレーキ、パワープラント、空調装置等の駆動部が配置される。
【0022】
第7ドライバ107~第10ドライバ110は、車両1の中央エリアに配置された駆動部を駆動し、コアECU10は、中央ECU30及び第7ドライバ107~第10ドライバ110を介して、中央エリアに配置された駆動部の作動を制御する。中央ECU30は、第7ドライバ107~第10ドライバ110に接続された駆動部の作動条件に応じた物理量の指示値を、CANFD230を介して、第7ドライバ107~第10ドライバ110に送信する。第7ドライバ107~第10ドライバ110は、中央ECU30から受信した物理量の指示値に従って、接続された駆動部を駆動する。中央エリアには、TCU(Telematics Communication Unit)130、図示しないBCM(Body Control Module)、IVIシステム(In-Vehicle Infotainment system)等の駆動部が配置される。
【0023】
第11ドライバ111~第15ドライバ115は、車両1の後エリアに配置された駆動部を駆動し、コアECU10は、後ECU40及び第11ドライバ111~第15ドライバ115を介して、後エリアに配置された駆動部の作動を制御する。後ECU40は、第11ドライバ111~第15ドライバ115に接続された駆動部の作動条件に応じた物理量の指示値を、CANFD230を介して、第11ドライバ111~第15ドライバ115に送信する。第11ドライバ111~第15ドライバ115は、後ECU40から受信した物理量の指示値に従って、接続された駆動部を駆動する。
【0024】
また、コアECU10は、右前ドアECU50及び図示しないドライバを介して右前ドアエリアに配置された駆動部の作動を制御し、左前ドアECU60及び図示しないドライバを介して左前ドアエリアに配置された駆動部の作動を制御する。さらに、コアECU10は、右後ドアECU70及び図示しないドライバを介して右後エリアに配置された駆動部の作動を制御し、左後ドアECU80及び図示しないドライバを介して左後エリアに配置された駆動部の作動を制御する。
【0025】
ここで、ドライバとドライバに接続された駆動部とにより、本発明の被制御機器が構成される。例えば、EPS120と、EPS120が接続された第2ドライバ102とにより、本発明の被制御機器である操舵機器125が構成され、EPS120に備えられたEPSモータ124(図2参照)は、操舵機器125が有する操舵アクチュエータに相当する。
【0026】
車両制御システム2は、イーサネット200の冗長ネットワークとして、コアECU10、前ECU20、中央ECU30、後ECU40、右前ドアECU50、左前ドアECU60、右後ドアECU70、及び左後ドアECU80を相互に通信可能に接続した冗長用のCANFD220を備えている。
【0027】
コアECU10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、メモリ、インターフェース回路等により構成され、メモリに保存された車両1の制御用プログラムを実行することにより、仕様差吸収部11、新規機能データ取得部12等として機能する。仕様差吸収部11は、第1ドライバ101~第15ドライバ115のいずれかについて、異なるメーカ等による仕様が異なる複数のドライバを採用して車両1を製造する場合に対応するための処理を実行する。すなわち、仕様差吸収部11は、所定の作動条件に対して要求される駆動部の動作の同一性が担保されるように、各仕様のドライバに対する物理量の指示値を設定する。
【0028】
新規機能データ取得部12は、車両1に新規機能を追加するために必要な新規機能データを、TCU130により、外部のサポートサーバ510(図2参照)から、通信ネットワーク500を介してダウンロードすることによって取得する。
【0029】
前ECU20、中央ECU30、後ECU40、右前ドアECU50、左前ドアECU60、右後ドアECU70、及び左後ドアECU80も、図示しないCPU、メモリ、インターフェース回路等により構成されている。前ECU20のCPUは、基本的には、メモリに保存された制御プログラムを実行することにより、車両1の前エリアに配置された被制御機器の作動を制御する。
【0030】
同様に、中央ECU30は車両1の中央エリアに配置された被制御機器の作動を制御し、後ECU40は車両1の後エリアに配置された被制御機器の作動を制御する。また、右前ドアECU50は車両1の右前ドアエリアに配置された被制御機器の作動を制御し、左前ドアECU60は車両1の左前ドアエリアに配置された被制御機器の作動を制御する。また、右後ドアECU70は車両1の右後ドアエリアに配置された被制御機器の作動を制御し、左後ドアECU80は車両1の左後エリアに配置された被制御機器の作動を制御する。
【0031】
操舵機器125の第2ドライバ102は、EPS120の駆動回路の他に、CANFD230による前ECU20との通信が不能になった場合に、故障対処処理を実行する故障対応部102aを備えている。故障対処処理の詳細については後述する。第1ドライバ101、及び第3ドライバ103~第15ドライバ115についても、駆動回路と故障対応部とを備えた構成としてもよい。
【0032】
前ECU20、中央ECU30、及び後ECU40が、後述するように、物理量の指示値を第1ドライバ101~第15ドライバ115に送信する処理は、本発明の車両制御方法における物理量指示値送信ステップに相当する。また、第1ドライバ101~第15ドライバ115が、前ECU20、中央ECU30、或いは後ECU40から出力される物理量の指示値を受信し、物理量の指示値に従って駆動部を駆動する処理は、本発明の車両制御方法における駆動ステップに相当する。
【0033】
[2.コアECUとサブECU間の処理]
図2を参照して、コアECU10とサブECU間の処理について説明する。コアECU10は、複数のコアとして第1コア10a、第2コア10b、第3コア10c、第4コア10d、第5コア10e、…を有するマルチコア型のCPUを備えている。そして、各サブECUに対して一つのコアを割り当てて、サブECUの作動を管理している。図2は、中央ECU30に第1コア10aが割り当てられ、前ECU20に第2コア10bが割り当てられ、後ECU40に第3コア10cが割り当てられた例を示している。
【0034】
図2は、コアECU10が、LKAS(Lane Keeping Assist System)の機能を実現するために、前ECU20にLKASプログラム300を実行させる場合を示している。コアECU10の第2コア10bは、コアECU10のメモリに予め保存されたLKASプログラム300を、イーサネット200を介して前ECU20にダウンロードする。LKASプログラム300は、本発明の所定機能を実現するための制御データに相当する。
【0035】
前ECU20は、LKASプログラム300を実行することにより、LKAS機能を有効にする。具体的には、前ECU20は、車両1に備えられたカメラ21による車両1の前方の撮影画像から道路の区画線を認識し、車両1が車線内を走行するように、EPS120に備えられたEPSモータ124の駆動条件を決定する。EPS120は、操舵アクチュエータに相当する。そして、前ECU20は、駆動条件を第2ドライバ102に出力することによってEPSモータ124を駆動する。EPSモータ124は、減速機構123を介して車両1の操舵角度を変更する。
【0036】
EPS120には、ステアリング121に加わるトルクを検出するトルクセンサ122が備えられ、前ECU20は、トルクセンサ122による検出トルクに基づいて、車両1の運転者によるステアリング121の操作状況を認識する。
【0037】
同様にして、第1コア10aは、中央ECU30に対して所定機能のプログラムをダウンロードすることにより、所定機能を実現するための処理を中央ECU30に実行させる。また、第3コア10cは、後ECU40に対して所定機能のプログラムをダウンロードすることにより、所定機能を実現するための処理を後ECU40に実行させる。
【0038】
[3.新規機能の追加処理]
図3を参照して、車両1に新規機能を追加するための処理について説明する。図3のT1は、コアECU10のメモリ410の第1領域411に第1機能~第3機能を実現するための第1プログラム301~第3プログラム303が保存され、第2領域412に第4機能を実現するための第4プログラム304が保存された状態を示している。
【0039】
T1において、前ECU20のメモリ420には、コアECU10からイーサネット200を介してダウンロードされた第1プログラム301と第3プログラム303が保存されている。また、中央ECU30のメモリ430には、コアECU10からイーサネット200を介してダウンロードされた第4プログラム304が保存されている。この状態で、サポートサーバ510からコアECU10に対して、新規機能である第5機能を実現するための第5プログラムがダウンロードされ、T2の状態に移行する。
【0040】
T2において、コアECU10は、イーサネット200を介して前ECU20に第5プログラム305をダウンロードし、それまでメモリ420に保存されていた第3プログラム303を第5プログラム305に入れ替える。また、コアECU10は、前ECU20のメモリ420の不足を補完するために、前ECU20のメモリ420に保存されていた第3プログラム303を、中央ECU30のメモリ430に再配置する。
【0041】
[4.サブECUの追加対応処理]
図4を参照して、車両1にサブECUを追加する場合の対応処理について説明する。図4のT3は、車両1に中央ECU30が備えられていない場合の構成を示している。T3において、コアECU10のメモリ410の第1領域411には、第1機能~第5機能をそれぞれ実現するための第1プログラム301~第5プログラム305が保存されている。また、前ECU20のメモリ420には、前エリアに配置された被制御機器に関連した第1プログラム301、第3プログラム303、第4プログラム304、及び第5プログラム305が保存されている。この状態で、中央ECU30が追加されて、T4の状態に移行する。
【0042】
T4において、コアECU10は、メモリ410の第1領域411に、前ECU20に配置する第1プログラム301、第2プログラム302、及び第5プログラム305を保存する。また、コアECU10は、メモリ410の第2領域412に、中央ECU30に配置する第3プログラム303及び第4プログラム304を保存する。
【0043】
そして、コアECU10は、イーサネット200を介して中央ECU30に第3プログラム303及び第4プログラム304にダウンロードして、中央ECU30のメモリ430に第3プログラム303及び第4プログラム304を保存する。また、コアECU10は、前ECU20のメモリ420から第4プログラム304を削除して、第1プログラム301、第2プログラム302、及び第5プログラム305を配置する。
【0044】
これにより、前ECU20のメモリ420の空きエリアに余裕ができ、車両1に新規機能を追加するための第6プログラム306をダウンロードしたときに、コアECU10は、第6プログラム306を前ECU20にダウンロードして、前ECU20に新規機能による処理を実行させることができる。
【0045】
[5.特定機能を有効にするための処理]
図5に示したフローチャートに従って、車両1に備えられた特定機能を有効にするための処理の実行手順について説明する。車両1には、所定機能として、LKAS、RDM(Lane Departure Mitigation、)、PA(Parking Assist)、MA(Motion Adaptive)-EPS、AP(Automatic Parking)、及びDAM(Driver Attention Monitor)を備えている。
【0046】
LKASは、車両1が車線内を走行するようにEPS120を作動させる機能である。RDMは、車両1が車線から逸脱しそうになったときに、EPS120による操舵或いはステアリング121の振動等による報知により、運転者に対する注意喚起を行う機能である。PAは、車両1を駐車する際に、カメラ21の撮影画像或いは図示しないソナーによる対象物の検知状況等に基づいて、車両1が駐車スペース内に進むようにEPS120による操舵を行う機能である。MA-EPSは、車両1の姿勢を安定させるために、運転者によるステアリング121の操作をEPS120によりアシストする機能である。APは、車両1の駐車スペースへの走行を、カメラ21の撮影画像或いは図示しないソナーによる対象物の検知状況等に基づいて、EPS120とパワープラントを制御して運転者の操作に依らずに行う機能である。DAMは、図示しない車室内カメラによる運転者の撮影画像等に基づいて、運転者の覚醒度を検知し、覚醒度が低下した場合に、注意音の出力やステアリング121の振動により注意喚起を行う機能である。
【0047】
図5のステップS1で、コアECU10は、車両1の運転者によるLKASのON(有効)操作がなされたか否かを判断する。そして、コアECU10は、LKASのON操作がなされたときはステップS10に処理を進め、LKASのON操作がなされていないときにはステップS2に処理を進める。
【0048】
ステップS2で、コアECU10は、車両1の運転者によるLKASのOFF操作がなさたか否かを判断する。そして、コアECU10は、RDMのOFF操作がなされたときはステップS20に処理を進め、RDMのOFF操作がなされていないときにはステップS3に処理を進める。コアECU10は、このようにステップS1、ステップS2、ステップS3、…、ステップS12のループ処理を実行することにより、各機能のON/OFFを切り替える処理を行う。
【0049】
ステップS10で、コアECU10は、LKASプログラムが前ECU20に既にダウンロードされているか否かを判断する。そして、コアECU10は、LKASプログラムが前ECU20にダウンロードされているときはステップS12に処理を進め、LKASプログラムが前ECU20にダウンロードされていないときにはステップS11に処理を進める。
【0050】
ステップS11で、コアECU10は、LKASプログラムを前ECU20にダウンロードしてステップS12に処理を進める。ステップS12で、コアECU10は、LKASのONを指示する制御情報を、前ECU20に送信する。この制御情報を受信した前ECU20は、LKASプログラムを実行し、これによりLKAS機能が有効になる。
【0051】
ステップS20で、コアECU10は、LKASのOFFを指示する制御情報を、前ECU20に送信する。この制御情報を受信した前ECU20は、LKASプログラムの実行を終了し、これによりLKASが無効になる。
【0052】
コアECU10は、他の所定機能についても同様にして、所定機能のプログラムを前ECU20、中央ECU30等に実行させることによって所定機能を有効にし、所定機能のプログラムの実行を終了することにより所定機能を無効にする。
【0053】
[6.操舵機器による対応処理]
図6に示したフローチャートに従って、操舵機器125による処理について説明する。操舵機器125の第2ドライバ102は、ステップS50とステップS51から成るループを繰り返し実行して、ステップS50で前ECU20との通信が不能になっているか否かを判断し、ステップS51で、前ECU20からEPSモータの駆動条件を受信したか否かを判断する。
【0054】
第2ドライバ102は、前ECU20と第2ドライバ102との間の通信が不能になっていない場合は、ステップS50からステップS51に進める。そして、第2ドライバ102は、前ECU20からEPSモータ124の作動条件に応じた物理量の指示値を受信したときに、ステップS70に処理を進めて、物理量の指示値に従った駆動電力をEPSモータ124に出力する。
【0055】
ここで、第2ドライバ102には、EPSモータ124に対する物理量(舵角速度、トルク、振動の有無等)の指示値のみを指示する。そして、LKASの制御は前ECU20で実行されるため、LKASの制御は第2ドライバ102に依存しない。そのため、基本的なハードウェア性能を満たす第2ドライバ102及びEPS120とからなる操舵機器125を自由に選択して、車両1を製造することができる。
【0056】
前ECU20と第2ドライバ102との間の通信が不能になった場合、第2ドライバ102は、ステップS50からステップS60に処理を進め、トルクセンサ122の検出トルクに基づいて運転者によるステアリング121の操作の有無を判断する。そして、第2ドライバ102は、ステアリング121が操作されたときはステップSS61に処理を進め、操作に応じた駆動電力をEPSモータ124に出力して、運転者によるステアリング121の操作をアシストする。
【0057】
これにより、前ECU20と第2ドライバ102との間の通信不能により、コアECU10及び前ECU20によるEPS120の制御が不能になった場合であっても、運転者によるステアリング121の操作が可能な状態となる。そのため、運転者は、ステアリング121を操作して、車両1を路肩に停車させる等の対応をとることができる。なお、ステップS60による判断条件は、本発明の故障対応条件に相当する。また、前ECU20と第2ドライバ102との間の通信が不能になった場合に、運転者によるステアリング121の操作に応じてEPS120を作動させるモードは、本発明のリンプホームモードに相当する。
【0058】
一方、ステップS60で、運転者によるステアリング121の操作が検知されなかったときには、第2ドライバ102は、ステップS60に処理を進め、再び、運転者によるステアリング121の操作の有無を検知する。
【0059】
第1ドライバ101、第3ドライバ103~第15ドライバ115についても、第2ドライバ102と同様に、前ECU20、中央ECU30、或いは後ECU40との間の通信が不能になった場合に、所定の故障対応条件に基づいて、接続された駆動部を駆動する故障対応部を備えてもよい。
【0060】
[7.他の実施形態]
上記実施形態では、コアECU10に新規機能データ取得部12を備えて、車両1への新規機能の追加が可能な構成を示したが、新規機能データ取得部12を省略した構成としてもよい。
【0061】
上記実施形態では、コアECU10と、前ECU20、中央ECU30、及び後ECU40とにより、本発明の中央制御部を構成したが、コアECU10と、前ECU20、中央ECU30、及び後ECU40とを一体構成としてもよい。
【0062】
上記実施形態では、コアECU10に仕様差吸収部11を備えて、ドライバの仕様の相違を吸収する処理を行ったが、ドライバの仕様差がない、或いは仕様差の違いが車両1を制御する上で問題がない程度である場合は、仕様差吸収部11を省略することができる。
【0063】
上記実施形態では、車両1が備えた所定機能として、LKAS、RDM、PA、MA-EPS、AP、DAMを例示したが、所定機能はこれらに限られず、車両1に備えられた駆動部を制御して車両1を作動させる機能であれば、所定機能に該当する。
【0064】
上記実施形態では、前ECU20と第2ドライバ102との間の通信が不能になった場合の故障対応条件として、運転者によるステアリング121の操作を示した。他の構成として、振動報知機器の振動アクチュエータであるEPSモータ124の駆動によるステアリング121の振動を停止した振動停止状態に維持する設定条件を、故障対応条件としてもよい。或いは、車両1をリンプホームモードで走行させるためのEPS120の操舵角又は操舵角速度を、故障対応条件としてもよい。また、リンプホームモードにおいて、車両1に走行速度を所定速度以下に制限する制御を行ってもよい。
【0065】
上記実施形態では、本発明の車両制御方法を車両1に搭載された車両制御システム2により実行する構成を示したが、物理量指示値送信ステップを、サポートサーバ510等の車両1の外部のコンピュータシステムで実行し、駆動条件を外部のコンピュータシステムから車両1に送信する構成としてもよい。
【0066】
[8.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成の具体例である。
【0067】
(第1項)車両に備えられる複数の被制御機器と、複数の前記被制御機器の制御を統括する中央制御部とを有する車両制御システムであって、前記中央制御部は、前記車両の所定機能を実現するための前記被制御機器の作動条件を決定して、前記作動条件に応じた物理量の指示値を、前記車両の通信ネットワークを介して前記被制御機器に送信し、前記被制御機器は、前記通信ネットワークを介して、前記中央制御部から前記物理量の指示値を受信したときに、前記物理量の指示値に従って、前記被制御機器が有する駆動部を駆動する車両制御システム。
第1項の車両制御システムによれば、中央制御部により、車両の所定機能を実現するための被制御機器の作動条件が決定され、作動条件に応じた物理量の指示値が、中央制御部から被制御機器に送信される。そして、被制御機器は、物理量の指示値に従って駆動部を駆動する。そのため、所定機能を実現するための制御の全部又は一部を被制御機器が実行する場合のように、中央制御部側で、被制御機器の制御仕様に合わせて、被制御機器に対する制御指示を決定する必要がない。よって、車両の所定機能を実現する際の被制御機器に対する中央制御部側の処理負荷を軽減することができる。
【0068】
(第2項)前記被制御機器は、前記中央制御部からの前記物理量の指示値の受信が不能になった場合に、所定の故障対応条件に基づいて前記駆動部を駆動又は停止する故障対応部を備える第1項に記載の車両制御システム。
第2項の車両制御システムによれば、被制御機器による中央制御部からの物理量の指示値の受信が不能になった場合に、被制御機器に備えられた故障対応部により、故障対応条件に基づく駆動部の駆動又は停止を行って対処することができる。
【0069】
(第3項)前記車両に新規な前記所定機能を追加するための新規機能データを取得する新規機能データ取得部を備え、前記中央制御部は、前記新規機能データに従って決定した前記作動条件に応じた前記物理量の指示値を、前記被制御機器に送信することにより、新規な前記所定機能を実現する第1項又は第2項に記載の車両制御システム。
第3項の車両制御システムによれば、車両に対する新規機能の追加を、中央制御部の処理によって容易に行うことができる。
【0070】
(第4項)前記中央制御部は、前記車両の複数のエリア毎に備えられた複数のサブ制御部と、前記サブ制御部に対して、前記通信ネットワークを介して、前記所定機能を実現するための制御データを送信するコア制御部とを備え、前記サブ制御部は、前記コア制御部から受信した前記制御データに基づいて決定した前記作動条件に応じた物理量の指示値を、対応する前記エリアに配置された前記被制御機器に送信する第1項から第3項のうちいずれか1項に記載の車両制御システム。
第4項の車両制御システムによれば、車両の複数のエリア毎にサブ制御部を備えて、各エリアに配置された被制御機器の作動条件を、対応するサブ制御部により決定することによって、各エリアの被制御機器を用いた所定機能を効率良く実現することができる。
【0071】
(第5項)前記中央制御部は、前記被制御機器の仕様に応じて、前記所定機能において要求される前記車両の作動が担保されるように、前記被制御機器に対する前記物理量の指示値を設定する仕様差吸収部を備える第1項から第2項のうちいずれか1項に記載の車両制御システム。
第5項の車両制御システムによれば、例えば、製造メーカの相違による被制御機器の仕様の差を仕様差吸収部により吸収することによって、車両を製造する際の被制御機器の選択範囲を拡大することができる。
【0072】
(第6項)前記被制御機器は、前記駆動部として操舵アクチュエータを有する操舵機器であり、前記中央制御部は、前記所定機能として、LKAS(Lane Keep Assist System)、RDM(Road Departure Mitigation)、PA(Parking Assist)、MA-EPS(Motion Adaptive-Electric Power Steering Systems)、AP(Automated Parking)、DAM(Driver Attention Monitor)のうちの少なくともいずれか一つを実現し、前記操舵機器は、前記中央制御部から受信した前記物理量の指示値に従って、前記操舵アクチュエータを駆動する第1項から第5項のうちいずれか1項に記載の車両制御システム。
第6項の車両制御システムによれば、車両の運転を補助するための上記所定機能を、実現することができる。
【0073】
(第7項)前記被制御機器は、前記駆動部として操舵アクチュエータを有する操舵機器であり、前記故障対応条件は、前記車両をリンプホームモードで走行させるための前記操舵アクチュエータによる操舵角又は操舵角速度の設定条件である第2項に記載の車両制御システム。
第7項の車両制御システムによれば、車両の操舵制御を行って、リンプホームモードでの車両の走行を可能にすることができる。
【0074】
(第8項)前記被制御機器は、前記車両の運転者に対して振動による報知を行う振動報知機器であり、前記故障対応条件は、前記振動報知機器を振動停止状態に維持する設定条件である第2項に記載の車両制御システム。
第8項の車両制御システムによれば、故障発生時に、振動報知機器が振動した状態が維持されることを回避することができる。
【0075】
(第9項)車両に備えられる複数の被制御機器の制御を統括する中央制御部が、前記車両の所定機能を実現するための前記被制御機器の作動条件を決定して、前記作動条件に応じた物理量の指示値を、前記車両の通信ネットワークを介して前記被制御機器に送信する物理量指示値送信ステップと、前記被制御機器が、前記物理量指示値送信ステップにより、前記通信ネットワークを介して、前記中央制御部から送信された前記物理量の指示値を受信したときに、前記物理量の指示値に従って、前記被制御機器が有する駆動部を駆動する駆動ステップとを含む車両制御方法。
第9項の車両制御方法によれば、物理量指示値送信ステップにより、車両の所定機能を実現するための被制御機器の作動条件が中央制御部によって決定され、作動条件に応じた物理量の指示値が、中央制御部から被制御機器に送信される。そして、駆動ステップにより、被制御機器は、物理量の指示値に従って駆動部を駆動する。そのため、所定機能を実現するための制御の全部又は一部を被制御機器が実行する場合のように、中央制御部側で、被制御機器の制御仕様に合わせて、被制御機器に対する制御指示を決定する必要がない。よって、車両の所定機能を実現する際の被制御機器に対する中央制御部側の処理負荷を軽減することができる。
【符号の説明】
【0076】
1…車両、2…車両制御システム、10…コアECU、10a…第1コア、10b…第2コア、10c…第3コア、11…仕様差吸収部、12…新規機能データ取得部、20…前ECU、30…中央ECU、40…後ECU、50…右前ドアECU、60…左前ドアECU、70…右後ドアECU、80…左後ドアECU、102…第2ドライバ、102a…故障対応部、120…EPS、124…EPSモータ、125…操舵機器、200…イーサネット、220…(冗長ネットワーク用)CANFD、230…CANFD。
図1
図2
図3
図4
図5
図6