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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】車両のリッド開閉装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
B60K15/05 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019162180
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2021037910
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000155067
【氏名又は名称】株式会社ホンダロック
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 愛彦
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-082074(JP,A)
【文献】特開2016-075099(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0105036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体外板(15)にリッド(17)が回動可能に支持されるとともにケース(22)が取付けられ、前記リッド(17)を押し込むのに応じた押し込み位置ならびに前記リッド(17)が開き状態にあるときの突出位置間での進退動作を可能とするロッド(21)が、前記リッド(17)の閉じ状態では前記押し込み位置から前記突出位置側に所定移動量だけ戻ったリッド閉じ位置となることを可能として前記ケース(22)に支持され、前記ロッド(21)を前記押し込み位置から前記突出位置側に向けて付勢する付勢部材(38)が前記ケース(22)および前記ロッド(21)間に設けられ、前記突出位置側に臨むピン受け部(40a)を有する軸方向位置規制溝(40)が前記ロッド(21)もしくは当該ロッド(21)に軸方向相対移動不能に連結される連動部材(35)に形成され、前記ロッド(21)が前記リッド閉じ位置にある状態では前記ピン受け部(40a)で受けられることを可能として前記軸方向位置規制溝(40)に挿入されるピン(41)を有しつつ当該ピン(41)を前記ロッド(21)もしくは前記連動部材(35)に弾発的に当接させる弾性力を発揮する弾性部材(42)と前記軸方向位置規制溝(40)とで、前記リッド(17)の閉じ状態での押し込み操作に応じて前記ピン(41)が前記ピン受け部(40a)から離脱することを可能としつつ前記ロッド(21)の軸方向位置を規制するロッド軸方向規制機構(39)が構成される車両のリッド開閉装置において、
前記軸方向位置規制溝(40)から前記ピン(41)が外れる側への前記弾性部材(42)の変位を規制する規制部(60)が、前記弾性部材(42)に当接することを可能として前記ケース(22)に、該ケース(22)と一体に設けられることを特徴とする車両のリッド開閉装置。
【請求項2】
前記連動部材が、前記ロッド(21)に軸方向相対移動を不能としつつ相対回転可能に嵌合されるとともに前記軸方向位置規制溝(40)が形成されるホルダ(35)であり、前記ピン(41)を前記軸方向位置規制溝(40)にガイドするガイド部(59)が前記ホルダ(35)に形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両のリッド開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体外板にリッドが回動可能に支持されるとともにケースが取付けられ、前記リッドを押し込むのに応じた押し込み位置ならびに前記リッドが開き状態にあるときの突出位置間での進退動作を可能とするロッドが、前記リッドの閉じ状態では前記押し込み位置から前記突出位置側に所定移動量だけ戻ったリッド閉じ位置となることを可能として前記ケースに支持され、前記ロッドを前記押し込み位置から前記突出位置側に向けて付勢する付勢部材が前記ケースおよび前記ロッド間に設けられ、前記突出位置側に臨むピン受け部を有する軸方向位置規制溝が前記ロッドもしくは当該ロッドに軸方向相対移動不能に連結される連動部材に形成され、前記ロッドが前記リッド閉じ位置にある状態では前記ピン受け部で受けられることを可能として前記軸方向位置規制溝に挿入されるピンを有しつつ当該ピンを前記ロッドもしくは前記連動部材に弾発的に当接させる弾性力を発揮して前記ケースに支持される弾性部材と、前記軸方向位置規制溝とで、前記リッドの閉じ状態での押し込み操作に応じて前記ピンが前記ピン受け部から離脱することを可能としつつ前記ロッドの軸方向位置を規制するロッド軸方向規制機構が構成される車両のリッド開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両のリッド開閉装置は、たとえば特許文献1で既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-117313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこのようなリッド開閉装置では、そのリッドの閉じ状態で当該リッドを押し込むことによって、ロッドがリッド閉じ位置から押し込み位置に押し込まれるのに応じてロッド軸方向位置規制機構は、軸方向位置規制溝のピン受け部でピンが受けられている状態を解除することになり、リッドを開くことが可能となるのであるが、上記リッド閉じ位置で押し込み操作をすることなくリッドを無理やり開く操作をした場合、軸方向位置規制溝のピン受け部でピンが受けられていることにより、弾性部材にはピンが軸方向位置規制溝から離脱する側の力がロッドから作用し、ピンが軸方向位置規制溝から外れてしまう可能性がある。このようにピンが軸方向位置規制溝から外れてしまうと、ロッドをリッド閉じ位置に保持することができず、リッドを開くことが可能となるため防盗上好ましくないが、上記特許文献1で開示されるものでは、そのような課題に対処する技術は開示されていない。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、閉じ位置にあるリッドに開き側の力が無理やり作用したとしても、軸方向位置規制機構のピンが軸方向位置規制溝から外れてしまうことを防止して防盗性を確保し得るようにした車両のリッド開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、車体外板にリッドが回動可能に支持されるとともにケースが取付けられ、前記リッドを押し込むのに応じた押し込み位置ならびに前記リッドが開き状態にあるときの突出位置間での進退動作を可能とするロッドが、前記リッドの閉じ状態では前記押し込み位置から前記突出位置側に所定移動量だけ戻ったリッド閉じ位置となることを可能として前記ケースに支持され、前記ロッドを前記押し込み位置から前記突出位置側に向けて付勢する付勢部材が前記ケースおよび前記ロッド間に設けられ、前記突出位置側に臨むピン受け部を有する軸方向位置規制溝が前記ロッドもしくは当該ロッドに軸方向相対移動不能に連結される連動部材に形成され、前記ロッドが前記リッド閉じ位置にある状態では前記ピン受け部で受けられることを可能として前記軸方向位置規制溝に挿入されるピンを有しつつ当該ピンを前記ロッドもしくは前記連動部材に弾発的に当接させる弾性力を発揮して前記ケースに支持される弾性部材と、前記軸方向位置規制溝とで、前記リッドの閉じ状態での押し込み操作に応じて前記ピンが前記ピン受け部から離脱することを可能としつつ前記ロッドの軸方向位置を規制するロッド軸方向規制機構が構成される車両のリッド開閉装置において、前記軸方向位置規制溝から前記ピンが外れる側への前記弾性部材の変位を規制する規制部が、前記弾性部材に当接することを可能として前記ケースに、該ケースと一体に設けられることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記連動部材が、前記ロッドに軸方向相対移動を不能としつつ相対回転可能に嵌合されるとともに前記軸方向位置規制溝が形成されるホルダであり、前記ピンを前記軸方向位置規制溝にガイドするガイド部が前記ホルダに形成されることを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の特徴によれば、閉じ位置にあるリッドに開き側の力が無理やり作用したとしても、ケースに、該ケースと一体に設けられる規制部が弾性部材に当接することで、ピンが軸方向位置規制溝から外れてしまう側に弾性部材が変位することが規制されるので、ピンが軸方向位置規制溝から外れてしまうことがなく、防盗性を高めることができる。
【0009】
また本発明の第2の特徴によれば、軸方向位置規制溝が形成されるホルダに、ピンを軸方向位置規制溝側にガイドするガイド部が形成されるので、弾性部材がケースに組み付けられた状態でも軸方向位置規制溝にピンを容易に挿入されることができ、組み付け性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車体外板を破断してリッド開閉装置の取り付け状態を示す斜視図である。
図2】ロッドがリッド閉じ位置にあるときのリッド開閉装置を図1の2矢視方向から見た平面図である。
図3】ドアがロック状態にあるときの図2の3-3線断面図である。
図4】電動モータおよび規制部材を取り外した状態での図3に対応した断面図である。
図5図3の5-5線断面図である。
図6図3の6-6線断面図である。
図7】ピンが設けられた弾性部材およびホルダの分解斜視図である。
図8図7の8矢視図である。
図9図8の9矢視図である。
図10】ロッドが押し込み位置にある状態でのリッド開閉装置の図3に対応した断面図である。
図11】ロッドが突出位置にある状態でのリッド開閉装置の図3に対応した断面図である。
図12図11の12-12線断面図である。
図13】ロッドが突出位置にある状態でドアをロック状態としたときの図12に対応した断面図である。
図14図5の14矢視図である。
図15図14の要部拡大図である。
図16図14の16-16線断面図である。
図17】第1リンク部材の斜視図である。
図18】緊急用操作部材の操作状態での図15に対応した図である。
図19】閉じ位置にあるリッドに開き側の力を無理やり加えたときの状態を示すための図3の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図1図19を参照しながら説明すると、先ず図1において、車両の車体外板15には、図示しない燃料給油部を臨ませる凹部16が形成されており、この凹部16を開閉可能に閉じるリッド17の基端部が前記車体外板15に回動可能に支持される。また前記リッド17の遊端側内面には係止部18が設けられており、その係止部18に係脱可能に係合する係合部21aが先端部に設けられるロッド21を有するリッド開閉装置20のケース22が、前記凹部16の底壁16aに取り付けられる。すなわち前記車体外板15に前記リッド17が回動可能に支持されるとともに前記ケース22が取付けられる。
【0012】
図2図6を併せて参照して、前記ケース22は、矩形の箱状に形成されるケース主体23と、そのケース主体23の開口端を閉じるようにして当該ケース主体23に結合されるカバー24とで構成される。
【0013】
前記ケース主体23は、上下方向に間隔をあけて車幅方向に延びる上部側壁23aおよび下部側壁23bと、上部および下部側壁23a,23bの車幅方向外側の端部間を結んで上下方向に延びる外側側壁23cと、上部および下部側壁23a,23bの車幅方向内側の端部間を結んで上下方向に延びる内側側壁23dと、上部側壁23a、下部側壁23b、外側側壁23cおよび内側側壁23dの車両前後方向に沿う一端部に共通に連設される平板状の端壁23eとを一体に有する。前記カバー24は、前記端壁23eに対向するようにして車両前後方向に沿う他方から前記ケース主体23に結合される。
【0014】
ところで前記凹部16の前記底壁16aには矩形の挿入孔25(図1参照)が形成されており、前記ケース22は車幅方向外側から前記挿入孔25に挿入される。しかも前記ケース主体23の前記外側側壁23cには、その外周から外側方に張り出す矩形の鍔部23fが一体に連設されており、当該鍔部23fと、前記挿入孔25の周縁部における前記底壁16aの外面との間に、前記ケース22の前記鍔部23f側端部を囲繞する矩形の内側シール部材26を介在させるようにして前記ケース22が車幅方向外側から前記挿入孔25に挿入される。また前記ケース主体23における前記上部側壁23aおよび前記下部側壁23bには、前記ケース22の前記挿入孔25への挿入時には撓むことで挿入孔25を通過する弾発爪27の基端部が連設されており、この弾発爪27の先端部が前記底壁16aの内面に当接する。すなわち前記鍔部23fおよび前記弾発爪27間に前記内側シール部材26および前記底壁16aが挟持されることになり、これによって前記ケース22が前記底壁16aに取り付けられる。
【0015】
前記リッド開閉装置20は、前記ロッド21と、当該ロッド21の移動を規制し得る規制部材28と、その規制部材28を駆動する電動モータ29とを備え、前記規制部材28および前記電動モータ29は前記ケース22内に収容される。
【0016】
前記ロッド21は、前記ケース22の上部で車幅方向に延びるように配設されて、前記ケース22の前記ケース主体23に移動可能に支持される。前記ケース主体23における前記端壁23eの内面には、横断面円形である前記ロッド21の外周面の一部に摺接するようにして円弧状に凹んだ摺接支持面30を突出端に有する支持突条31が、前記ロッド21の長手方向に延びて一体に突設される。また前記ケース主体23における前記外側側壁23cの上部には、前記ロッド21を軸方向移動可能に挿通させる挿通孔32が形成されるとともに、その挿通孔32の一部を形成するようにして前記外側側壁23cから前記凹部16側に突出する短円筒部23gが一体に突設されており、この短円筒部23gには、前記ロッド21の外周に弾発的に摺接する環状の外側シール部材33が装着される。
【0017】
前記ケース22内で、前記ロッド21には、当該ロッド21に軸方向相対移動不能に連結される連動部材としてのホルダ35が連結されるものであり、このホルダ35は、前記ロッド21に軸方向相対移動を不能としつつ相対回転可能に嵌合される。
【0018】
図7図9を併せて参照して、前記ホルダ35は、前記ケース22の前記ケース主体23における上部側壁23aの内面に摺接する上壁部35aと、この上壁部35aの下方に間隔をあけて平行に配置される下壁部35bと、前記ケース主体23の前記端壁23eから間隔をあけて位置で前記端壁23eに対向しつつ前記上壁部35aおよび前記下壁部35b間を連結する縦壁部35cとを一体に有して、前記端壁23e側に開放した略U字状の横断面形状を有するように形成される。
【0019】
前記ホルダ35に対応する部分で前記ロッド21の外周には環状溝36が形成されており、この環状溝36に係合する係合突部35dが、前記ホルダ35に一体に形成される。これにより前記ホルダ35は、前記ロッド21との軸方向相対移動を不能としつつ当該ロッド21の軸線まわりの制限された範囲での相対回動を可能として前記ロッド21に装着されることになる。
【0020】
前記ケース主体23の前記内側側壁23d寄りで前記ロッド21には、リング状のばね収容凹部37が前記ロッド21の軸線と同軸にかつ前記側側壁23側に開放するようにして形成されており、前記ばね収容凹部37内に一部を収容される付勢部材としてのコイルばね38が、前記ロッド21と、前記側側壁23との間に設けられる。このコイ
ルばね38の弾発力によって、前記ロッド21は、その先端部の前記係合部21aが車体外板15から突出する方向に付勢されるものであり、このロッド21の軸方向位置を規制するために、前記ホルダ35の下壁部35bには軸方向位置規制溝40が形成され、その軸方向位置規制溝40にピン41が挿入される。
【0021】
前記ホルダ35および前記電動モータ29間には、弾性部材である板ばね42が前記ロッド21の長手方向に長く延びるように配置されており、この板ばね42の基端部に挿通されるシャフト43が前記ケース主体23および前記カバー24間に挟持され、前記板ばね42は、前記ケース22内で許容される範囲での回動を可能として前記シャフト43を介して前記ケース22に支持される。
【0022】
前記ピン41は、前記板ばね42の遊端部寄りに固着されており、前記板ばね42の基端部寄りに前記ロッド21とは反対側から当接する突部44が前記ケース主体23に突設される。これにより前記板ばね42は、前記ピン41を前記ホルダ35に当接させる弾性力を発揮する。
【0023】
前記ロッド21の軸方向位置は、前記ピンを有する前記板ばね42と、前記ホルダ35の前記軸方向位置規制溝40とで構成されるロッド軸方向規制機構39によって規制される。
【0024】
ところで前記ロッド21は、閉じ状態および開き状態にある前記リッド17を押し込むのに応じて図10で示すように前記コイルばね38の弾発力に抗して押し込まれる押し込み位置と、前記リッド17が開き状態にあるときに図11で示すように前記コイルばね38の弾発力で前記ケース22から大きく突出した突出位置との間での進退動作が可能であり、しかも前記リッド17の閉じ状態で前記ロッド21は、図2図3図4および図6で示すように、前記押し込み位置から前記突出位置側に所定移動量だけ戻ったリッド閉じ位置となる。
【0025】
前記ケース主体23の前記内側側壁23dの端部で前記ロッド21には、丸棒状のストッパ21bが同軸にかつ一体に突設されており、このストッパ21bは、図10で示すように、前記ロッド21が前記押し込み位置にあるときに前記ケース主体23の前記内側側壁23dに当接して、押し込み方向での前記ロッド21の移動端を規制する。また前記ホルダ35は前記ロッド21の前記突出位置を規制する働きをするものであり、前記ロッド21が前記突出位置にある状態では、図11で示すように、前記ホルダ35が前記ケース主体23の前記外側側壁23cに当接して突出方向の前記ロッド21の移動端を規制するようにして、前記ロッド21に前記ホルダ35が取り付けられる。
【0026】
図9に注目して、前記軸方向位置規制溝40は、前記ロッド21が前記リッド閉じ位置にあるときに、前記コイルばね38によって前記ロッド21とともに矢印45で示す付勢方向に付勢された前記ホルダ35を前記ピン41で受けて前記ロッド21が突出位置まで移動するのを阻止すべく前記ピン41に前記付勢方向に沿う方向で当接するようにして前記ロッド21の前記突出位置側に臨んで形成されるピン受け部40aと、前記ロッド21および前記ホルダ35が押し込み位置にあるときに前記ピン41を受け入れるようにした第1および第2の押し込み位置受容部40b,40cと、前記ロッド21および前記ホルダ35が突出位置にあるときに前記ピン41を受け入れるようにした突出位置受容部40dとを有するように形成される。
【0027】
そしてリッド17が閉じ位置にある状態で押し込むと、前記ロッド21および前記ホルダ35の押し込み位置への移動によって前記ピン41は矢印46で示すように前記ピン受け部40aから第1の押し込み位置受容部40bに変位し、リッド17を押し込む力を解放することで前記ロッド21および前記ホルダ35が突出位置に移動すると前記ピン41は矢印47で示すように第1の押し込み位置受容部40bから突出位置受容部40dに変位する。また前記リッド17が開き位置にある状態で前記リッド17とともに前記ロッド21を押し込むと、前記ロッド21および前記ホルダ35の押し込み位置への移動によって前記ピン41は矢印48で示すように第2の押し込み位置受容部40cに変位し、リッド17を押し込む力を解放することで前記ロッド21および前記ホルダ35がリッド閉じ位置に移動すると前記ピン41は矢印49で示すように第2の押し込み位置受容部40cから前記ピン受け部40aに変位し、当該ピン受け部40aに当接する。
【0028】
また前記軸方向位置規制溝40には、前記ピン41の前記ピン受け部40aから前記第2の押し込み位置受容部40cへの逆変位を阻止するための第1の段差部50、前記ピン41の前記第1の押し込み位置受容部40bから前記ピン受け部40aへの逆変位を阻止する第2の段差部51、前記ピン41の前記突出位置受容部40dから前記第1の押し込み位置受容部40bへの逆変位を阻止する第3の段差部52、ならびに前記ピン41の前記第2の押し込み位置受容部40cから前記突出位置受容部40dへの逆変位を阻止する第4の段差部53が形成される。
【0029】
前記ホルダ35には、前記板ばね42の前記ピン41を前記軸方向位置規制溝40にガイドするガイド部59が形成される。このガイド部59は、前記ホルダ35における縦壁部35cの車幅方向内側の端部の下部に形成されるものであり、下方に向かうにつれて前記軸方向位置規制溝40の前記突出位置受容部40dに近付くように傾斜した斜面として形成される。このガイド部59は、前記ケース22の前記ケース主体23に前記板ばね42の基端部の前記シャフト43が組み付けられた状態で、前記ホルダ35を前記ケース主体23側に組み付ける際に前記ピン21をガイドする働きをするものであり、前記ピン21は前記ガイド部59のガイドによって前記軸方向位置規制溝40の前記突出位置受容部40dに挿入される。
【0030】
ところで前記ロッド21の先端部の前記係合部21aは略T字状に形成されており、この係合部21aは、前記リッド17が閉じ位置にある状態では前記係止部18に係合するものの前記リッド17が開くときには前記係止部18との係合を解除するものであり、前記ロッド21がその軸線まわりに90度回動することにより、前記係止部18への前記係合部21aの係合および係合解除が切替えられる。
【0031】
図6に注目して、前記ロッド21の前記ケース主体23における前記端壁23e側に臨む外周には、螺旋状のガイド溝54が形成されており、そのガイド溝54に突入される突起55が前記ケース主体23の前記端壁23eに一体に突設される。前記ガイド溝54は、前記ロッド21が前記押し込み位置および前記突出位置間で軸方向に移動する間に、当該ロッド21をその軸線まわりに90度軸回動させるように形成される。
【0032】
前記電動モータ29は、前記ロッド21の軸線と平行な回転軸線を有するものであり、前記ロッド21および前記ホルダ35の下方で前記ケース主体23の前記内側寄りに配置されるようにして前記ケース22内に収容される。前記ケース主体23には、当該電動モータ29を収容するモータ収容凹部56を前記内側側壁23dおよび前記下部側壁23bと協働して形成する略L字の仕切壁57が一体に突設される。しかも前記仕切壁57には、前記板ばね42に固着された前記ピン41の一部を収容し得る開口部58が形成される。また前記内側側壁23dには、前記電動モータ29に連なるコネクタ部23hが一体に形成される。
【0033】
前記ケース22には、前記軸方向位置規制溝40から前記ピン41が外れる側への前記板ばね42の変位を規制する規制部60が、前記ケース22と一体に設けられるものであり、この実施の形態では、前記開口部58内に突出する規制部60が、前記板ばね42の遊端部に前記ホルダ35とは反対側から当接することを可能として、前記ケース22の前記ケース主体23に一体に設けられる。
【0034】
前記規制部材28は、前記電動モータ29よりも車幅方向外側で前記ロッド21およびホルダ35の下方に配置されるようにして前記ケース22内に収容されており、図3および図5で示すように前記リッド閉じ位置にある前記ロッド21に係合して当該ロッド21の移動を規制する規制位置と、図10図11および図12で示すように、前記ロッド21との係合を解除して前記ロッド21から離反する側に移動して前記ロッド21の規制を解除する規制解除位置との間で、前記ロッド21の進退方向と直交する方向、この実施の形態では上下方向に作動することを可能として前記ケース22に収容される。
【0035】
前記ロッド21の外周には、当該ロッド21が前記リッド閉じ位置にあるときに前記規制部材28側に臨む係止凹部61が形成されており、ロッド21が前記リッド閉じ位置にあるときに前記係止凹部61に嵌入、係合する係合突起62が前記規制部材28の前記ロッド21側端部に突設される。また前記規制部材28の前記ロッド21側端部には、前記ロッド21が前記リッド閉じ位置にある状態で規制位置に前記規制部材28が移動したときに、図5で示すように、前記端壁23eの内面に突設された前記支持突条31に当接して前記規制部材28の前記規制位置を定めるストッパ63が一体に突設される。
【0036】
前記電動モータ29の出力軸64は、前記ロッド21の軸線と平行すなわち前記規制部材28の作動方向と直交する軸線を有するものであり、前記仕切壁57を回転自在に貫通して前記規制部材28側に突出される。一方、前記規制部材28には、その移動方向に沿って延びるラック65が設けられており、このラック65に、前記出力軸64に設けられるピニオン66が噛合される。したがって前記規制部材28は、前記電動モータ29の作動によって、前記規制位置および前記規制解除位置間で作動するように駆動されることになる。
【0037】
ところで前記電動モータ29は、車両ユーザによるキーレスボタン操作やスマートエントリーシステムによって車両のドアのロック状態およびアンロック状態が切替えられるのに応じて所定時間(たとえば0.6秒)だけ作動するものであり、ドアのロック状態で前記電動モータ29は前記規制部材28を前記規制位置に駆動し、ドアのアンロック状態で前記電動モータ29は前記規制部材28を前記規制解除位置に駆動する。
【0038】
ところがロッド21が突出位置にある状態すなわちリッド17が開いている状態で、車両ユーザーが誤ってドアをロック状態にしてしまうと、規制解除位置にあった規制部材28が電動モータ29によって規制位置側に駆動されるものの、突出位置にあるロッド21に規制部材28は係合不能であり、図13で示すように、前記規制部材28の前記係合突起62および前記ストッパ63は、前記規制位置に達する前に前記ホルダ35に当接し、前記規制位置への前記規制部材28の移動が阻止されることになる。このため電動モータ29の作動停止時に、規制部材28が規制位置に達していない中途半端な位置で停止してしまう可能性があるが、保持機構68の働きによって前記規制部材28は規制解除位置に戻される。
【0039】
前記保持機構68は、前記規制部材28の少なくとも前記規制解除位置を弾発的に保持するものであり、前記ケース22の一部を構成する前記カバー24に一体に設けられる当接部69と、前記規制部材28が前記規制解除位置から前記規制位置側に移動する途中の位置では前記規制部材28を前記規制解除位置側に付勢するようにして前記当接部69に当接しつつ前記規制部材28に取り付けられる弾発部材70とで構成される。
【0040】
前記規制部材28には、前記ケース主体23の前記外側側壁23c側に開放した溝71が、当該規制部材28の移動方向に沿う全長にわたって形成されており、この溝71内に配置される支軸72が前記規制部材28に一体に突設される。前記弾発部材70は、前記支軸72を囲繞するコイル部70aと、そのコイル部70aの両端から延びる第1および第2アーム部70b,70cとを有する。
【0041】
前記弾発部材70の前記第1アーム部70bは、前記溝71の両側の側壁71a,71bのうち前記カバー24から遠い方の側壁71aに当接、支持される。また第2アーム部70cの先端部は、前記溝71の両側の側壁71a,71bのうち前記カバー24側の側壁71bに当接、支持され、この第2アーム部70cの中間部には、前記カバー24側に膨らむように湾曲した山形の弾発部分73が形成される。また前記規制部材28には、前記弾発部分73を挿通させるスリット74が設けられており、前記弾発部分73は、前記スリット74から前記カバー24側に突出する。
【0042】
一方、前記カバー24に突設される前記当接部69は、前記弾発部分73に常時当接するものであり、前記規制部材28が前記規制解除位置にある状態では、図12で示すように、前記弾発部分73がその山形の頂部73aよりも第2アーム部70cの先端部側で前記当接部69に当接しており、前記弾発部分73は前記規制部材28を前記規制解除位置側に付勢する弾発力を発揮する。また前記規制部材28が前記規制位置にある状態では、図5で示すように、前記弾発部分73がその山形の頂部73aよりも第2アーム部70cの先端部と反対側で前記当接部69に当接しており、前記弾発部分73は前記規制部材28を前記規制位置側に付勢する弾発力を発揮する。さらに前記規制部材28が、図13で示すように、前記規制位置および規制解除位置間の中間位置にあるときには、前記当接部69が前記弾発部分73の前記頂部73aを乗り越えることはなく、前記弾発部分73がその頂部73aよりも第2アーム部70cの先端部側で前記当接部69に当接しており、前記弾発部分73は前記規制部材28を前記規制解除位置側に付勢する弾発力を発揮する。これにより電動モータ29によって前記規制部材28が前記規制位置側に駆動されたときに規制部材28が規制位置に達していない中途半端な位置となったときには、前記電動モータ29の作動停止に伴って、前記規制部材28は前記保持機構68の働きによって規制解除位置に戻されることになる。
【0043】
ところで電動モータ29の不調時には、ロッド21がドア閉じ状態で規制する規制部材28を手動操作によって規制解除位置に戻さなければ、リッド17を開くことができないので、前記リッド開閉装置20には、前記電動モータ29の不調時に前記規制部材28を前記規制解除位置に移動させることを可能とした緊急用操作部材76が付設される。
【0044】
図14および図15において、前記緊急用操作部材76は、前記ケース22の前記ケース主体23における前記端壁23eの外面に沿って移動可能なものであり、長孔状の第1連結孔77を有する連結部76aと、その連結部76aに一体に連なる棒状部76bと、円形孔を有して前記棒状部76bの先端部に設けられる操作部76cとを一体に有する。前記棒状部76bは、前記連結部76aから車幅方向内側に向かうにつれて上方位置となるように傾斜しており、また前記端壁23eの外面には、前記連結部76aを移動自在に嵌合させるガイド孔78を有するガイド突部79が一体に突設されており、前記緊急用操作部材76は前記棒状部76bの長手方向に沿って移動可能となる。
【0045】
図16を併せて参照して、前記規制部材28および前記緊急用操作部材76間には、前記緊急用操作部材76を操作して当該緊急用操作部材76が移動するときに、その緊急用操作部材76からの操作力を、前記規制位置から前記規制解除位置に向けて前記規制部材28を前記ロッド21の進退方向と直交する方向に作動させる力に変換する操作力作用方向変換機構84が設けられる。
【0046】
前記操作力作用方向変換機構84は、前記規制部材28に一体に突設される受圧突起82と、前記緊急用操作部材76の作動に応じて回動する第1リンク部材86と、前記規制位置側から前記受圧突起82に先端部が当接されるとともに前記第1リンク部材86の回動に応じて前記規制解除位置に向けて前記規制部材28を押圧するように回動する第2リンク部材87とで構成され、前記受圧突起82は、前記端壁23eの内面に先端部を近接、対向させるようにして前記規制部材28に一体に突設される。
【0047】
図17を併せて参照して、前記第1リンク部材86は、前記ケース22の前記ケース主体23における前記端壁23eの外面に沿って配置される第1リンク部材主部86aと、前記緊急用操作部材76における前記第1連結孔77に挿入されることで前記連結部76aに回動可能に弾発係合されるようにして前記第1リンク部材主部86aの一端部の前記端壁23eとは反対側に一体に突設される一対の第1弾発係合爪86bと、前記第1リンク部材主部86aの他端部に一体に設けられる連結筒部86cとを一体に有するように形成される。
【0048】
前記連結筒部86cには、横断面矩形の第2連結孔88が形成されており、この第2連結孔88の前記端壁23eとは反対側の端部の相互に対向する側面には係止段部88aがそれぞれ形成される。
【0049】
また前記連結筒部86cの周囲で前記第1リンク部材主部86aの外周の一部には、周方向一端に回動規制面89を有する切欠き部90が形成される。一方、前記ケース主体23における前記端壁23eには、前記切欠き部90内に配置されるストッパ91が突設されており、このストッパ91には、前記回動規制面89に当接可能なストッパ面92が形成される。
【0050】
前記第2リンク部材87は、先端部を前記受圧突起82に前記規制位置側から当接させることを可能として前記ケース22の前記ケース主体23における前記端壁23eの内面に沿って配置される第2リンク部材主部87aと、前記端壁23eに形成された支持孔93に回動可能に嵌合されるようにして前記第2リンク部材主部87aの基端部に一体に連設される軸部87bと、前記端壁23eの外側で前記軸部87bの他端部に一体に連設される一対の第2弾発係合爪87cとを一体に有するように形成され、前記支持孔93の内面に弾発接触する環状のシール部材94が前記軸部87bの外周に装着される。
【0051】
前記第2弾発係合爪87cは、第1リンク部材86の第2連結孔88に撓みつつ挿入され、前記係止段部88aに弾発係合する。これにより第2リンク部材87が第1リンク部材86に回動不能に連結される。
【0052】
このような構成の操作力作用方向変換機構84によれば、前記規制部材28が前記規制位置にあって前記緊急用操作部材76が非操作状態に在るときには、図14および図15で示すように、前記第1リンク部材86はその回動規制面89が前記ストッパ91の前記ストッパ面92に当接して回動が規制された状態にあり、第2リンク部材87における第2リンク部材主部87aの先端部は規制部材28の受圧突起82に前記規制位置側から近接した状態で静止している。
【0053】
前記規制部材28が、前記電動モータ29の作動によって前記規制位置から規制解除位置側に移動したときには、第2リンク部材87も前記受圧突起82に追随して回動することなく静止したままである。
【0054】
また前記規制部材28が規制位置にある状態で前記緊急用操作部材76を引っ張るように操作すると、図18で示すように、前記第1および第2リンク部材88,87が回動し、前記第2リンク部材主部87aの先端部で前記受圧突起82が押圧され、前記規制部材28は、規制解除位置に移動することになる。この際、前記第1リンク部材86における前記切欠き部90の前記回動規制面89とは周方向反対側の端部が前記ストッパ91に当接することはなく、前記ストッパ91で前記第1リンク部材86の回動が規制されることはない。
【0055】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、ロッド21の突出位置側に臨むピン受け部40aを有する軸方向位置規制溝40が前記ロッド21に軸方向相対移動不能に連結されるホルダ35に形成され、前記ロッド21がリッド閉じ位置にある状態では前記ピン受け部40aで受けられることを可能として前記軸方向位置規制溝40に挿入されるピン41を有しつつ当該ピン41を前記ホルダ35に弾発的に当接させる弾性力を発揮する板ばね42と前記軸方向位置規制溝40とで、リッド17の閉じ状態での押し込み操作に応じて前記ピン41が前記ピン受け部40aから離脱することを可能としつつ前記ロッド21の軸方向位置を規制するロッド軸方向規制機構39が構成されるのであるが、前記軸方向位置規制溝40から前記ピン41が外れる側への前記板ばね42の変位を規制する規制部60が、前記板ばね42に当接することを可能としてケース22のケース主体23に一体に設けられる。したがって閉じ位置にある前記リッド17に開き側の力が無理やり作用したとしても、図19で示すように、前記規制部60が前記板ばね42に当接することで、前記ピン41が前記軸方向位置規制溝40から外れてしまう側に前記板ばね42が変位することが規制されることになり、前記ピン41が前記軸方向位置規制溝40から外れてしまうことがなく、防盗性を高めることができる。
【0056】
また前記ホルダ35に、前記ピン41を前記軸方向位置規制溝40にガイドするガイド部59が形成されるので、前記板ばね42が前記ケース22の前記ケース主体23に組み付けられた状態でも前記軸方向位置規制溝40に前記ピン41を容易に挿入されることができ、組み付け性を高めることができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0058】
たとえば上述の実施の形態では、ロッド21に軸方向相対移動不能に連結される連動部材であるホルダ35に軸方向位置規制溝40が形成されるようにしたが、ロッドに軸方向位置規制溝が形成される構造とすることも可能である。
【符号の説明】
【0059】
15・・・車体外板
17・・・リッド
21・・・ロッド
22・・・ケース
38・・・付勢部材であるコイルばね
39・・・ロッド軸方向規制機構
40・・・軸方向位置規制溝
40a・・・ピン受け部
41・・・ピン
42・・・弾性部材である板ばね
59・・・ガイド部
60・・・規制部
図1
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