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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】電動車両用バッテリーケース
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20221214BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20221214BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
H01M50/249
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019164408
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021041783
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】橋村 徹
(72)【発明者】
【氏名】山川 大貴
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-146341(JP,A)
【文献】特開2019-014349(JP,A)
【文献】特開2017-226353(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061109(WO,A1)
【文献】特開2019-123355(JP,A)
【文献】特開2019-081436(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0337377(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
H01M 50/249
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーを収容する凹状の収容部を有するバスタブ状のトレイと、
平面視において前記トレイの全周を囲むように配置され、前記トレイと接合されたフレームと、
前記トレイの上方に配置され、前記収容部を閉じるトップカバーと、
前記トレイの下方に配置されたアンダーカバーと
を備え
前記アンダーカバーは、前記フレームとは異なる材質からなり、前記フレームに対して異材接合されており、
前記フレームは、車幅方向に延びる上側クロスメンバーと、車幅方向に延びて前記上側クロスメンバーの下方に配置された下側クロスメンバーとを備え、
前記トレイは、車高方向において前記上側クロスメンバーと前記下側クロスメンバーとに挟まれており、
前記トップカバー、前記上側クロスメンバー、前記トレイ、および前記下側クロスメンバーは、平面視において同心状の孔部を備え、
前記同心状の孔部にボルトが挿通されており、
前記ボルトは、前記トップカバー、前記上側クロスメンバー、および前記トレイを完全に貫通するともに、前記下側クロスメンバーを完全には貫通しておらず、
前記ボルトが車体本体に留められることにより、前記トップカバー、前記上側クロスメンバー、前記トレイ、および前記下側クロスメンバーが一体的に前記車体本体に結合されている、電動車両用バッテリーケース。
【請求項2】
前記トレイは、プラスチック製である、請求項1記載の電動車両用バッテリーケース。
【請求項3】
車高方向において前記トレイと前記アンダーカバーとの間に配置された波状パネルをさらに備える、請求項1または請求項2に記載の電動車両用バッテリーケース。
【請求項4】
車両の車幅方向両端下部において車両前後方向に延びるロッカー部材をさらに備え、
前記アンダーカバーは、前記ロッカー部材には接合されることなく前記フレームに対して異材接合されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の電動車両用バッテリーケース。
【請求項5】
前記アンダーカバーは、前記トレイおよび前記フレームの下方に配置されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の電動車両用バッテリーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両用バッテリーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車などの電動車両は、十分な航続距離を確保するために大容量のバッテリーを搭載する必要がある一方で広い車室が求められている。これらの要求を両立するため、多くの電気自動車では大容量のバッテリーをバッテリーケースに格納して車両の床下全面に搭載している。従って、電動車両用バッテリーケースには、路面などからの水の浸入を防止して電子部品の不具合を防止するための高いシール性が求められるとともに、内部のバッテリーを保護するために高い衝突強度が求められる。
【0003】
例えば、特許文献1には、金属板を冷間プレス成形によりバスタブ状に成形したトレイを用いることでシール性を向上させたバッテリーケースが開示されている。また、特許文献2には、バッテリーケースの底板とフレームとを溶接などの接合手段で接合することにより、スペース効率および衝突強度を向上させたバッテリーケースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-226353号公報
【文献】特開2012-212659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のバッテリーケースでは、バッテリーケースの周囲全体をフレームが囲っているわけではないため、衝突強度に関して改善の余地がある。また、バスタブ状のトレイが車体下面を構成しているため、路面からの突き上げに対する強度に対して改善の余地がある。
【0006】
特許文献2のバッテリーケースでは、バスタブ状のトレイが使用されていないため、溶接の継ぎ目などからの水の浸入を防止する必要があり、シール性に関して改善の余地がある。
【0007】
本発明は、電動車両用バッテリーケースにおいて、十分なシール性および強度を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、バッテリーを収容する凹状の収容部を有するバスタブ状のトレイと、平面視において前記トレイの全周を囲むように配置され、前記トレイと接合されたフレームと、前記トレイの上方に配置され、前記収容部を閉じるトップカバーと、前記トレイの下方に配置されたアンダーカバーとを備える、電動車両用バッテリーケースを提供する。
【0009】
この構成によれば、トレイとトップカバーによって収容部が閉じられるため、収容部はシールされる。特に、トレイがバスタブ状であるため、トレイとトップカバーとの接合部以外に継ぎ目が設けられない。そのため、バッテリーの収容部に対して、全周の溶接などを要することなく高いシール性を確保できる。また、フレームがトレイの全周を囲むように配置されているため、高い衝突強度が確保される。また、アンダーカバーがトレイの下方に配置されているため、車体の下面においてトレイが露出せず、路面からの突き上げに対する高い強度を確保できる。
【0010】
前記アンダーカバーは、前記フレームとは異なる材質からなり、前記フレームに対して異材接合されていてもよい。
【0011】
この構成によれば、アンダーカバーとフレームの材質を用途に応じて変更でき、電動車両用バッテリーケースの汎用性を高めることができる。例えば、フレームを軽量化のためにアルミニウム合金製とし、アンダーカバーを路面からの突き上げ強度向上のために鋼鉄製とすることもできる。ここで、異材接合は、異種金属材料同士の接合態様を示し、例えば、ボルト接合、リベット接合、またはEASW(Element Arc Spot Welding)などのことをいう。
【0012】
前記トレイは、プラスチック製であってもよい。
【0013】
この構成によれば、トレイの形状を任意に成形できるとともにトレイを軽量化できる。特に、トレイの収容部は、可能な限り大容量のバッテリーを収容するため、容量として大きく、かつ、稜線部の丸みを小さくすることが好ましい。これに対し、トレイをプラスチック製とすることで、そのような成形を容易に行うことができる。
【0014】
前記フレームは、車幅方向に延びる上側クロスメンバーと、車幅方向に延びて前記上側クロスメンバーの下方に配置された下側クロスメンバーとを備え、前記トレイは、車高方向において前記上側クロスメンバーと前記下側クロスメンバーとに挟まれていてもよい。
【0015】
この構成によれば、上側クロスメンバーと下側クロスメンバーとによって、車体の側方衝突に対する強度を向上できる。また、トレイが上側クロスメンバーと下側クロスメンバーとに挟まれていることで、トレイを安定して固定できる。また、上側クロスメンバーと下側クロスメンバーとを異なる材質で形成することもできるため、必要な性能に応じて軽量化や車体側面からの高い衝突強度を容易に実現できる。
【0016】
前記トップカバー、前記上側クロスメンバー、前記トレイ、および前記下側クロスメンバーは、平面視において同心状の孔部を備え、前記同心状の孔部にボルトが挿通されており、前記ボルトは、前記トップカバー、前記上側クロスメンバー、および前記トレイを完全に貫通するともに、前記下側クロスメンバーを完全には貫通しておらず、前記ボルトが車体本体に留められることにより、前記トップカバー、前記上側クロスメンバー、前記トレイ、および前記下側クロスメンバーが一体的に前記車体本体に結合されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、トップカバー、上側クロスメンバー、トレイ、および下側クロスメンバーは、ボルトを介して車体本体に強固に結合される。バッテリーケースにおいては、バッテリーに過度に振動を与えないように、このように車体本体に強固に結合される構成は有効である。また、ボルトが下側クロスメンバーを完全に貫通しないため、シール性が損なわれることを防止できる。
【0018】
車高方向において前記トレイと前記アンダーカバーとの間に配置された波状パネルをさらに備えてもよい。
【0019】
この構成によれば、波状パネルによって突き上げ強度をさらに向上できる。特に、波状パネルは、好適に衝撃を吸収するため、突き上げ強度の向上に有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電動車両用バッテリーケースにおいて、十分なシール性および強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る電動車両用バッテリーケースを搭載した電気自動車の側面図。
図2】バッテリーケースのロッカー部材付近の概略断面図。
図3】バッテリーケースの分解斜視図。
図4】バッテリーケースの斜視図。
図5】バッテリーケースのクロスメンバー付近の概略断面図。
図6】変形例におけるバッテリーケースのクロスメンバー付近の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0023】
図1を参照して、電動車両1は、バッテリー30から供給される電力によってモータを駆動させて走行する車両である。電動車両1は、電力で走行する車両であり、例えば、電気自動車またはプラグインハイブリッド車等であり得る。車両の種類については、特に限定されず、乗用車、トラック、作業車、またはその他のモビリティ等であり得る。以下では、電動車両1として乗用車タイプの電気自動車の場合を例に挙げて説明する。
【0024】
電動車両1は、車体前部10に不図示のモータや高電圧機器等を搭載している。また、電動車両1は、車体中央部20の車室Rの床下の概ね全面にバッテリー30を格納した電動車両用バッテリーケース100(以下、単にバッテリーケース100ともいう。)を搭載している。なお、図1中、電動車両1の前後方向をX方向で示し、高さ方向(上下方向)をZ方向で示している。以降の図でも同表記とし、図2以降で車幅方向をY方向で示す。
【0025】
図2を参照して、バッテリーケース100は、車幅方向においてロッカー部材200の内側に配置され、ロッカー部材200に支持されている。ロッカー部材200は、電動車両1(図1参照)の車幅方向両端下部において車両前後方向に延びる骨格部材である。ロッカー部材200は、複数枚の金属板が張り合わされて形成されており、電動車両1の側方からの衝撃に対して車室Rおよびバッテリーケース100を保護する機能を有する。
【0026】
図3,4を併せて参照して、バッテリーケース100は、貫通孔THを画定するフレーム110と、バスタブ状のトレイ120と、これらを上下から挟み込むように配置されるトップカバー130およびアンダーカバー140とを備える。また、好ましくは、本実施形態では、バッテリーケース100は、車高方向においてトレイ120とアンダーカバー140との間に配置された複数枚の波状パネル150をさらに備える。
【0027】
フレーム110は、バッテリーケース100の骨格をなす枠状の部材であり、本実施形態では、例えば、アルミ合金押出品からなる。ただし、フレーム110は、アルミ合金押出品、アルミ合金鋳造品、マグネシウム合金押出品、マグネシウム合金鋳造品、またはそれらの組み合わせからなってもよい。フレーム110は、平面視において矩形枠状の枠状体111と、枠状体111内で車幅方向に延びる4本のクロスメンバー112とを備える。
【0028】
クロスメンバー112は、車幅方向に延びる4本の上側クロスメンバー112aと、車幅方向に延びて上側クロスメンバー112aの下方に配置された4本の下側クロスメンバー112bとを含む。4本の上側クロスメンバー112aは、電気ケーブル31によって接続されている。電気ケーブル31は、バッテリー30に接続されている。
【0029】
本実施形態では、貫通孔THを有するフレーム110を例に説明するが、フレーム110の形状は特に限定されない。例えば、フレーム110は、貫通孔THに代えて凹形状を有する中空部を有していてもよい。
【0030】
枠状体111は、車両前後方向に延びる側壁111c,111dと、それらを接続して車幅方向に延びる前壁111aおよび後壁111bとを備える。側壁111c,111dは、車両前後方向に垂直な断面において概略L字形をしている。側壁111c,111dの内部は、複数の部屋に仕切られて中空状となっている。前壁111aおよび後壁111bは四角筒状であり、前壁111aおよび後壁111bの内部もまた同様に中空状となっている。
【0031】
4本の上側クロスメンバー112aおよび4本の下側クロスメンバー112bは、前壁111aおよび後壁111bと平行に延び、ほぼ等間隔で配置されている。
【0032】
図3,5を併せて参照して、上側クロスメンバー112aは、トレイ120内に配置され、車幅方向両端においてトレイ120の内面と接触している。上側クロスメンバー112aは、中空状であり、詳細には車幅方向に垂直な断面において矩形の閉断面形状を有している。例えば、上側クロスメンバー112aは、ハイテンション鋼製である。
【0033】
下側クロスメンバー112bは、上側クロスメンバー112aの下方に配置され、側壁111cと側壁111dを接続している。下側クロスメンバー112bは、中空状であり、詳細には車幅方向に垂直な断面において内部が仕切壁112b1によって仕切られた矩形の閉断面形状を有している。また、下側クロスメンバー112bは、下端においてアンダーカバー140と接合するためのフランジ部112b2を有する。フランジ部112b2は、アンダーカバー140と平行に水平面内で延びている。下側クロスメンバー112bは、例えば、アルミニウム合金製の押出成形品(アルミ合金押出品)である。
【0034】
クロスメンバー112(上側クロスメンバー112a,下側クロスメンバー112b)は、バッテリーケース100の強度を向上させる機能を有する。特に、クロスメンバー112によって、電動車両1(図1参照)の側方からの衝突に対しての強度を向上できる。ただし、クロスメンバー112は、必須の構成ではなく、必要に応じて省略されてもよい。また、クロスメンバー112を設置する場合にも、その態様は特に限定されず、形状、配置、および本数等は任意に設定され得る。
【0035】
図3を参照して、トレイ120は、バッテリー30を収容するバスタブ状の部材であり、例えばプラスチック製である。トレイ120は、外縁部において水平方向(X,Y方向)へ延びるフランジ部121と、フランジ部121と連続して凹形状を有する収容部122とを備える。収容部122は、バッテリー30を収容する部分である。収容部122の底部122aには、下側クロスメンバー112bに対して相補的な形状を有する張出部122bが設けられている。
【0036】
図5を参照して、張出部122bの下方には下側クロスメンバー112bが配置され、張出部122bの上方には上側クロスメンバー112aが配置されている。即ち、トレイ120は、車高方向において上側クロスメンバー112aと下側クロスメンバー112bとによって挟まれている。本実施形態では、上側クロスメンバー112aと、張出部122bと、下側クロスメンバー112bとは、ねじ123で共締めされて固定されている。また、詳細を図示しないが、上側クロスメンバー112aとトップカバー130も同様にねじ止めされている。
【0037】
図3,4を併せて参照して、トレイ120とフレーム110が組み合わされた状態では、トレイ120のフランジ部121がフレーム110の枠状体111の上面に載置されるとともに、トレイ120の収容部122がフレーム110の枠状体111内に配置される。このとき、張出部122bが下側クロスメンバー112bを部分的に被覆するように配置される。
【0038】
図2,3を併せて参照して、トレイ120の収容部122にはバッテリー30(本実施形態では5個)が配置される。収容部122がバッテリー30の上方からトップカバー130によって閉じられることで、バッテリー30がバッテリーケース100に格納される。図示の例では、トップカバー130とトレイ120は、フレーム110に対してねじで共締めされて固定されている。トップカバー130の上方には、車室Rの床面を構成するフロアパネル300と、車室Rにおいて車幅方向に延びるフロアクロスメンバー400とが配置されている。また、トレイ120の下方には、アンダーカバー140が配置されている。アンダーカバー140は、フレーム110と接合され、車体の下面を構成する。
【0039】
好ましくは、アンダーカバー140は、フレーム110と異なる材質からなる。これにより、アンダーカバー140とフレーム110の材質を用途に応じて変更でき、バッテリーケース100の汎用性を高めることができる。本実施形態では、フレーム110が前述のように例えばアルミニウム合金製であるのに対し、アンダーカバー140は例えば鋼鉄製である。従って、フレーム110を軽量化できるとともに、アンダーカバー140の路面からの突き上げに対する強度を高くできる。
【0040】
図2の破線円で示す部分拡大図を参照して、アンダーカバー140は、フレーム110に対して異材接合されている。異材接合とは、異種金属材料同士の接合態様を示し、例えば、ボルト接合、リベット接合、またはEASW(Element Arc Spot Welding)などのことをいう。本実施形態では、異材接合としてEASW(Element Arc Spot Welding)が採用されている。EASWでは、中空状のフランジ付鋼製リベット(エレメント)141をアルミニウム合金製のフレーム110の内側延出部113に設けた孔113aに嵌め込み、鋼鉄製のアンダーカバー140上に載置し、エレメント141内の中空部にアーク溶接法によって溶融した溶接材料を鋳込む。すなわち、片側からアークスポット溶接することで、エレメント141とアンダーカバー140が強固に溶接される。このとき、フレーム110は、エレメント141のフランジとアンダーカバー140との間に挟まれてこれらと接合される。当該接合部においては、アンダーカバー140の内側(上側)のシール性を高めるために公知の接着剤やシール材を使用してもよい。
【0041】
図5を参照して、本実施形態では、下側クロスメンバー112bもまた、アンダーカバー140に対して異材接合されている。詳細には、上記と同様にEASWが採用され、エレメント142を使用して、下側クロスメンバー112bのフランジ部112b2がアンダーカバー140と接合されている。当該接合部においても、アンダーカバー140の内側(上側)のシール性を高めるために公知の接着剤やシール材を使用してもよい。
【0042】
また、本実施形態では、車高方向において、トレイ120と、アンダーカバー140との間に波状パネル150が配置されている。波状パネル150は、バッテリー30の数(本実施形態では5個)に対応して複数枚(本実施形態では5枚)設けられている。波状パネル150は、車幅方向から見て断面が波状をしている。波状パネル150は、路面からの突き上げ衝撃を緩和する機能を有している。
【0043】
以上のようなバッテリーケース100によれば、以下の作用効果を奏する。
【0044】
本実施形態によれば、トレイ120とトップカバー130によって収容部122が閉じられるため、収容部122はシールされる。特に、トレイ120がバスタブ状であるため、トレイ120とトップカバー130との接合部以外に継ぎ目が設けられない。そのため、バッテリー30の収容部122に対して、全周の溶接などを要することなく高いシール性を確保できる。また、フレーム110がトレイ120の全周を囲むように配置されているため、高い衝突強度が確保される。また、アンダーカバー140がトレイ120の下方に配置されているため、車体の下面においてトレイ120が露出せず、路面からの突き上げに対する高い強度を確保できる。
【0045】
また、トレイ120をプラスチック製としているため、トレイ120の形状を任意に成形できるとともにトレイ120を軽量化できる。特に、トレイ120の収容部122は、可能な限り大容量のバッテリー30を収容するため、容量として大きく、かつ、稜線部の丸みを小さくすることが好ましい。これに対し、トレイ120をプラスチック製とすることで、そのような成形を容易に行うことができる。
【0046】
また、上側クロスメンバー112aと下側クロスメンバー112bとを設けているため、これらが設けられていない車体に比べて車体の側方衝突に対する強度を向上できる。また、トレイ120が上側クロスメンバー112aと下側クロスメンバー112bとに挟まれていることで、トレイを安定して固定できる。また、上側クロスメンバー112aと下側クロスメンバー112bとを異なる材質で形成できるため、必要な性能に応じて軽量化や側面からの高い衝突強度を容易に実現できる。例えば、本実施形態のように、上側クロスメンバー112aをハイテンション鋼製として車体側面からの高い衝突強度を確保できるとともに、下側クロスメンバー112bをアルミニウム合金製として軽量化を図ることができる。
【0047】
また、波状パネル150を設けているため、路面からの突き上げ強度をさらに向上できる。特に、波状パネル150は、好適に衝撃を吸収するため、突き上げ強度の向上に有効である。
【0048】
(変形例)
図6を参照して、本実施形態の変形例を説明する。
【0049】
変形例では、上記実施形態のねじ123(図5参照)に代えて、トップカバー130、上側クロスメンバー112a、トレイ120、および下側クロスメンバー112bを一体的に固定するボルト124を使用する。ボルト124を上下方向に挿通するために、トップカバー130、上側クロスメンバー112a、トレイ120、および下側クロスメンバー112bは、平面視において同心状の孔部CHを有している。同心状の孔部CHは、ボルト124が、トップカバー130、上側クロスメンバー112a、およびトレイ120を完全に貫通するように設けられている。下側クロスメンバー112bはボルト124によって完全に貫通されておらず、下側クロスメンバー112bの上面のみをボルト124が貫通するように、下側クロスメンバー112bでは上面のみに孔部CHが設けられている。
【0050】
また、ボルト124は、上端部においてフロアパネル300などの車体本体に固定される。このため、本実施形態では、フロアパネル300にも同心状の孔部CHが設けられている。ボルト124は、同心状の孔部CHに上方から挿通され、上から順にフロアパネル300、トップカバー130、上側クロスメンバー112a、トレイ120、および下側クロスメンバー112bを一体的に固定し、下端部においてナットで止められている。また、アンダーカバー140は、前述のように下側クロスメンバー112bとEASW等によって異材接合されている。
【0051】
本変形例によれば、トップカバー130、上側クロスメンバー112a、トレイ120、下側クロスメンバー112b、およびアンダーカバー140は、ボルト124を介してフロアパネル300などの車体本体に強固に結合される。バッテリーケース100においては、バッテリー30に過度に振動を与えないように、このように車体本体に強固に結合される構成は有効である。
【0052】
仮に、本変形例の構成において、トップカバー130の上面からアンダーカバー140の下面までを完全に貫通するようにボルトを配置すると、必要なシール性を確保できないおそれがある。本変形例では、ボルト124が、下側クロスメンバー112bを完全に貫通せず、下側クロスメンバー112bの上面のみを貫通するため、ボルト124がアンダーカバー140を貫通することもなく、アンダーカバー140の内側(上側)において必要なシール性を確保している。また、シール性を一層高めるために、アンダーカバー140とフレーム110との接触部に公知の接着剤やシール材を使用してもよい。
【0053】
以上より、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0054】
例えば、上記実施形態では、トレイ120は、プラスチック製であるとして説明したが、トレイ120の材質はプラスチックに限定されない。トレイ120の材質は、例えば鋼鉄製またはアルミニウム合金製などの金属製であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 電動車両
10 車体前部
20 車体中央部
30 バッテリー
31 電気ケーブル
100 バッテリーケース(電動車両用バッテリーケース)
110 フレーム
111 枠状体
111a 前壁
111b 後壁
111c,111d 側壁
112 クロスメンバー
112a 上側クロスメンバー
112b 下側クロスメンバー
112b1 仕切壁
112b2 フランジ部
113 内側延出部
113a 孔
120 トレイ
121 フランジ部
122 収容部
122a 底部
122b 張出部
123 ねじ
124 ボルト
130 トップカバー
140 アンダーカバー
141,142 エレメント
150 波状パネル
200 ロッカー部材
300 フロアパネル
400 フロアクロスメンバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6