(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】レール電位計算装置およびレール電位計算方法
(51)【国際特許分類】
B61L 27/16 20220101AFI20221214BHJP
B60M 3/06 20060101ALI20221214BHJP
B61L 27/60 20220101ALI20221214BHJP
【FI】
B61L27/16
B60M3/06 E
B61L27/60
(21)【出願番号】P 2019171091
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小熊 賢司
(72)【発明者】
【氏名】木村 祥太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘隆
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-055733(JP,U)
【文献】特開2007-153255(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1315476(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第105438223(CN,A)
【文献】特開2016-010226(JP,A)
【文献】特開2020-061919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 27/00 - 27/70
B60M 3/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要の情報を保持する記憶部と、
計算処理および判定処理を実行する演算部と
を備え、
前記記憶部は、鉄道用電力設備およびレールに関する設備情報、駅間を走行する列車の位置と使用電力との対応に関する列車情報、前記列車のダイヤ情報およびレール電位の上限値と当該上限値を超過する時間に対する許容持続時間の情報を保持し、
前記演算部は、前記列車情報および前記ダイヤ情報を用いて設定時刻における前記列車の位置および使用電力を計算し、前記列車の位置および使用電力の計算結果と前記設備情報とを用いてレール電位を計算し、前記レール電位の計算結果により前記レール電位の上限値を超過する時間が前記許容持続時間を超えるか否かを判定する
ことを特徴とするレール電位計算装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレール電位計算装置であって、
前記演算部は、超えると判定した場合に、判定した結果の情報を表示するための出力を行う
ことを特徴とするレール電位計算装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレール電位計算装置であって、
前記判定した結果の情報には、前記レール電位の計算結果、前記レール電位の上限値を超過する時間および前記列車の位置情報の少なくともいずれか一つが含まれる
ことを特徴とするレール電位計算装置。
【請求項4】
所要の情報を保持する記憶部と、
計算処理および判定処理を実行する演算部と
を備え、
前記記憶部は、鉄道用電力設備およびレールに関する設備情報、駅間を走行する列車の位置と使用電力との対応に関する列車情報、前記列車のダイヤ情報、前記列車の運行変更を反映した列車運行反映ダイヤ情報、レール電位の第1の上限値と当該第1の上限値の超過を許容する第1の許容持続時間および前記レール電位の第2の上限値と当該第2の上限値の超過を許容する第2の許容持続時間を保持し、
前記演算部は、
第1の計算処理として、前記列車情報および前記ダイヤ情報を用いて設定時刻における前記列車の位置および使用電力を計算し、当該列車の位置および使用電力の計算結果と前記設備情報とを用いて第1のレール電位を計算し、
第1の判定処理として、前記第1のレール電位の計算結果により前記第1の上限値を超過する時間が前記第1の許容持続時間を超える条件を判定して当該条件をレール電位計算実施条件として前記記憶部に保持し、
第2の計算処理として、前記列車情報および前記列車運行反映ダイヤ情報を用いて設定時刻における前記列車の位置および使用電力を計算し、前記レール電位計算実施条件を満足する場合にのみ当該列車の位置および使用電力の計算結果と前記設備情報とを用いて第2のレール電位を計算し、
第2の判定処理として、前記第2のレール電位の計算結果により前記第2の上限値を超過する時間が前記第2の許容持続時間を超えるか否かを判定する
ことを特徴とするレール電位計算装置。
【請求項5】
請求項4に記載のレール電位計算装置であって、
前記演算部は、第2の判定処理で超えると判定した時に、判定した結果の情報を表示するための出力を行う
ことを特徴とするレール電位計算装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレール電位計算装置であって、
前記判定した結果の情報には、前記第2のレール電位の計算結果、前記第2の上限値を超過する時間および前記列車の位置情報の少なくともいずれか一つが含まれる
ことを特徴とするレール電位計算装置。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載のレール電位計算装置であって、
前記レール電位の前記第1の上限値は前記レール電位の前記第2の上限値以下であり、前記第1の許容持続時間は前記第2の許容持続時間以下である
ことを特徴とするレール電位計算装置。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか1項に記載のレール電位計算装置であって、
前記レール電位計算実施条件は、2つの異なる駅を境界とする範囲および当該範囲内に存在する前記列車の数を含む
ことを特徴とするレール電位計算装置。
【請求項9】
請求項4~7のいずれか1項に記載のレール電位計算装置であって、
前記レール電位計算実施条件は、複数の前記列車が同一駅を出発する時刻の差分を含む
ことを特徴とするレール電位計算装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のレール電位計算装置であって、
前記設備情報は、変電所の位置と容量、き電線の電気抵抗率およびレールの電気抵抗率を含む
ことを特徴とするレール電位計算装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のレール電位計算装置であって、
前記記憶部が保持する前記列車のダイヤ情報として、運行管理装置が管理するダイヤ情報を利用する
ことを特徴とするレール電位計算装置。
【請求項12】
駅間を走行する列車の位置と使用電力との対応に関する列車情報および前記列車のダイヤ情報を用いて設定時刻における前記列車の位置および使用電力を計算する第1のステップと、
前記列車の位置および使用電力の計算結果と鉄道用電力設備およびレールに関する設備情報とを用いてレール電位を計算する第2のステップと、
前記レール電位の計算結果により前記レール電位の上限値を超過する時間が当該上限値を超過する時間に対する許容持続時間を超えるか否かを判定する第3のステップと
を有するレール電位計算方法。
【請求項13】
請求項12に記載のレール電位計算方法であって、
前記第3のステップで超えると判定した場合に、判定した結果の情報を表示する第4のステップと
を有するレール電位計算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールを帰線として用いる軌道交通システムにおけるレール電位計算装置およびレール電位計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電化鉄道では、レールを帰線として用いる構成が広く採用されている。この構成では、電車を加速するためや車内の照明や空調用の装置を動かすために電力を消費すると、列車と変電所との間のレールに消費電力に応じた電流が流れる。ここで、レール上の列車の位置と変電所の負き電線が接続する位置との間の電気抵抗に応じて、電流による電位差が発生する。
【0003】
鉄道に関する欧州規格(EN50122)では、レール近傍で作業する作業員が電位差により感電することを防止するために、列車運行中のレール各部の電位について、送電していない状態に対する差分の上限値を定めている。
【0004】
鉄道事業者は、メーカに対して列車ダイヤの列車運転時間間隔や、ひとつの変電所が故障した状態など、列車運行を継続する条件と共に、レール電位差が上限値以下となるよう指示する。
他方、メーカは、変電所の位置や数を列車ダイヤなどの条件について検討し、レール電位差が上限値以下となる設備を設置する。
【0005】
また、特許文献1には、蓄電池などの電力活用技術を含む鉄道の電力設備について計算を行う際に、列車の消費電力を反映した架線電圧を計算し、計算結果がしきい値を超えた場合に、電力活用設備を含む計算を行う方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
事故や故障などにより、予め計画された列車ダイヤ通りの列車運行ができない場合、鉄道事業者は、遅れの回復や増発、運転間隔の調整などを行い、そのため、乱れた列車ダイヤを修復するダイヤ変更が生じる。
【0008】
この過程で、変電所などの導入検討時点において、計画に無い運転本数や回復運転を指示すると、導入検討時点では上限値以下となっていたレール電位が上限値を超える可能性が生じるため、設備設置時の検討を再度行う必要性が発生する。また、この導入検討時点で、ダイヤ乱れの発生状況や回復のための運転本数など運行に関係する全ての組み合わせ条件を定義することが困難であると、ダイヤ修復の際にレール電位が上限値を超過しないことの確認を検討する必要性が発生し続けることとなる。
【0009】
特許文献1には、列車の消費電力について判定を行うものであるが、レール電位との関係については記載されていない。
【0010】
本発明は、列車ダイヤを作成、変更および修正を行う際に、レール電位が上限値を超過するかの判定を行い判定結果を表示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るレール電位計算は、所要の情報を保持する記憶部と、計算処理および判定処理を実行する演算部とを備え、記憶部は、鉄道用電力設備およびレールに関する設備情報、駅間を走行する列車の位置と使用電力との対応に関する列車情報、列車のダイヤ情報およびレール電位の上限値と当該上限値を超過する時間に対する許容持続時間の情報を保持し、演算部は、列車情報およびダイヤ情報を用いて設定時刻における列車の位置および使用電力を計算し、当該列車の位置および使用電力の計算結果と設備情報とを用いてレール電位を計算し、当該レール電位の計算結果によりレール電位の上限値を超過する時間が許容持続時間を超えるか否かを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、列車ダイヤを作成、変更および修正した際に、レール電位が上限値を超えるか判定し、超えた場合にはその判定結果を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1に係るレール電位計算装置の構成概要の一例を示すブロック図である。
【
図2】レール電位計算装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】レール電位計算処理部が実行する処理のフローチャートを示す図である。
【
図4】電力装置データのデータ項目、範囲および値の一例を示す図である。
【
図5】列車データのデータ項目、範囲および値の一例を示す図である。
【
図6】ダイヤデータのデータ項目、範囲および値の一例を示す図である。
【
図7】レール電位上限判定処理部が実行する処理のフローチャートを示す図である。
【
図8】レール電位上限データの一例を示す図である。
【
図9】本発明の実施例2に係るレール電位計算装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】レール電位計算対象判定データ作成処理部が実行する処理のフローチャートを示す図である。
【
図11】レール電位計算対象条件データの一例を示す図である。
【
図12】制限付きレール電位計算処理部が実行する処理のフローチャートを示す図である。
【
図13】レール電位計算対象元データの一例を示す図である。
【
図14】実施例1で所定時刻での各列車の位置、使用電力およびレール電位の一例を示す図である。
【
図15】実施例2で所定時刻での各列車の位置関係の一例を説明する図である。
【
図16】
図1に示すレール電位計算装置と運行管理装置とを連係させる構成の一例を示す図である。
【
図17】実施例1に係るレール電位計算装置と運行管理装置とを連係させる構成の一例を示す図である。
【
図18】実施例2に係るレール電位計算装置と運行管理装置とを連係させる構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態として、実施例1および2について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1に係るレール電位計算装置の構成概要の一例を示すブロック図である。
レール電位計算装置1の装置構成としては、演算データ保持部11、演算部12および情報インタフェース部13が含まれる。レール電位計算装置1としては、例えば、一般的なパソコンやサーバ等の計算機が該当する。
【0016】
レール電位計算装置1は、その計算結果を外部の表示装置2に出力する。表示装置2は、例えば、公知の液晶ディスプレイ、ドットマトリクスLEDまたはCRTディスプレイ等であり、レール電位計算装置1からの出力情報を表示する。
【0017】
演算データ保持部11は、プログラムやデータの記憶を行う機能を有し、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)またはフラッシュメモリ等の公知の記憶装置を利用して構成される。
【0018】
演算部12は、プログラムの実行や制御途中情報の一時的な保持を行う機能を有し、例えば、パソコンのCPUおよびレジスタ等の公知の部品を利用して構成される。
【0019】
情報インタフェース部13は、内部または外部の各装置間の情報の送受信を行う機能を有し、例えば、イーサネット(登録商標)のコネクタ、USBポート、光ファイバを用いたネットワーク、無線LAN、携帯電話などの無線ネットワークまたは周波数変調を用いた無線通信等、公知の部品や手段を利用して構成される。
【0020】
また、
図16に、本発明の実施例1に係るレール電位計算装置1を運行管理装置4と連係を取る形態で構成する場合の一例を示す。ここで、運行管理装置4の内部構成の概要としては、レール電位計算装置1と同様に、演算データ保持部11、演算部12および情報インタフェース部13を備えるものである。レール電位計算装置1および運行管理装置4それぞれの情報インタフェース部13を結び、必要に応じてデータ等の送受を行い、連係を取って処理を実行する。
【0021】
図2は、実施例1に係るレール電位計算装置1の機能構成の一例を示すブロック図である。
レール電位計算装置1は、レール電位上限データ21、電力装置データ22、列車データ23およびダイヤデータ24を保持し、レール電位計算処理部31およびレール電位上限判定処理部32から成る処理部を備え、処理結果としてレール電位計算結果データ41を格納する。レール電位計算装置1の各部による具体的な処理や、各データ部が保持する情報の具体例等については後述する。
【0022】
レール電位計算処理部31は、電力装置データ22、列車データ23およびダイヤデータ24を用いて処理を行い、レール電位計算結果データ41を出力する。
【0023】
レール電位上限判定処理部32は、レール電位計算結果データ41とレール電位上限データ21とを用いて処理を行い、判定結果を外部の表示装置2に表示出力する。
【0024】
図3は、レール電位計算処理部31が実行する処理のフローチャートを示す図である。処理を実行する主体はレール電位計算処理部31であるが、以下の各ステップの説明においては主体の記載を省略する。
【0025】
ステップ1001(S1001)で、処理を開始する。
ステップ1002(S1002)で、電力装置データ22、列車データ23およびダイヤデータ24を読み込む。
【0026】
ここで、
図4に、電力装置データ22のデータ項目、範囲および値の一例を示す。
電力装置データ22は、対象とする路線の長さ、路線にある変電所の数、位置および送り出し架線電圧、き電線の長さ当たり抵抗値並びにレールの長さ当たり抵抗値を含むデータである。
【0027】
具体的には、
図4より、対象とする路線の長さは、-1~6.0kmであり、路線には、2箇所の変電所102と103があり、それぞれの位置は1.5kmと3.5kmである。また、各変電所からの送り出し架線電圧は、1500Vであり、き電線およびレールの長さ当たり抵抗値は、それぞれ0.015Ω/kmおよび0.025Ω/kmである。
【0028】
また、
図5に、列車データ23のデータ項目、範囲および値の一例を示す。
列車データ23は、各駅間に対して、列車の位置と走行時間(所要時間)との対応を含むと共に、列車の位置と使用電力との対応も含むデータである。なお、
図5に示す「消費あるいは回生電力」の項目は、列車の位置に対応した使用電力として、消費電力あるいは回生電力を示し、正の場合が消費電力、負の場合が回生電力である。
【0029】
具体的には、
図5より、列車の種別として値1であり、例えば、列車位置が0.0kmの地点では使用電力(消費電力)が400kWhであることが分かる。
【0030】
次に、
図6に、ダイヤデータ24のデータ項目、範囲および値の一例を示す。
ダイヤデータ24は、対象とする路線にある駅の数、駅の位置、列車の運転本数および各列車が各駅に到着あるいは出発する時刻の対応を含むデータである。
【0031】
具体的には、
図6より、駅の数は、3つ(駅201~203)であり、走行する列車は、全部で4列車(列車301、302、311および312)であること、また、例えば、列車301については、駅202を時刻6:3:15に出発し、駅203に時刻6:5:7に到着することなどが分かる。
【0032】
ステップ1003(S1003)で、計算対象となる時間範囲を決定する。計算対象となる時間範囲は、例えば、現在時刻からダイヤデータ24に記された全列車が走行終了するまでの時間である。あるいは、現在時刻の6:3:0から任意の時間範囲としてもよい。ここでは、全列車が走行終了するまでの時間として、
図6に示すダイヤデータ24より、時刻6:7:22までを対象とする。
【0033】
ステップ1004(S1004)で、計算対象時刻を設定する。ここでは、先のステップ1003(S1003)で、計算対象の時間範囲を現在時刻の6:3:0から時刻6:7:22までと決定したので、この範囲から計算対象の時刻を、現在時刻の6:3:0とする。
【0034】
ステップ1005(S1005)で、計算対象時刻での各列車の位置と使用電力を計算する。ここでは、ダイヤデータ24より、列車は301、302、311および312の4列車があるので、ステップ1004(S1004)で設定した時刻6:3:0に対して、ダイヤデータ24と列車データ23とを用いて順に処理を行う。
【0035】
まず、列車301の位置と使用電力は、次の式(1)、(2)となる。
(a)列車301
・位置(時刻6:3:0)=駅202に停車中=2.5km地点 式(1)
・使用電力(時刻6:3:0)=100kWh 式(2)
【0036】
ステップ1006(S1006)で、全列車について処理を実行したか否かを判定する。未処理の列車があれば(「いいえ」)、ステップ1005(S1005)に戻って処理を繰り返す。全ての列車について処理の実行が終了した場合には(「はい」)、ステップ1007(S1007)に進む。
【0037】
先の例では、列車302、311および312については未処理であるため、これらについてステップ1005(S1005)を実行する。この結果、ステップ1007(S1007)に進む段階で、列車302、311および312に対する位置と使用電力も取得する。その結果を式(3)~(8)に示す。
【0038】
(b)列車302
・位置(時刻6:3:0)=駅201発30秒後
=駅201より駅202に向かって0.0~0.5kmの範囲
=-0.5~0.0kmの範囲 式(3)
・使用電力(時刻6:3:0)=400kWh 式(4)
【0039】
(c)列車311
・位置(時刻6:3:0)=駅203発75秒後
=駅203より駅202に向かって2.0~2.5kmの範囲
=3.0~3.5kmの範囲 式(5)
・使用電力(時刻6:3:0)=-350kWh 式(6)
【0040】
(d)列車312
・位置(時刻6:3:0)=駅203出発以前=計算対象外 式(7)
・使用電力(時刻6:3:0)=0kWh 式(8)
【0041】
ステップ1007(S1007)で、各列車の位置と使用電力とを基に、レール電位の計算を実行する。レール電位の計算は、例えば、列車の位置と変電所の位置との差分からき電線あるいはレールの抵抗値を計算し、変電所からの送り出し架線電圧に対して、き電線およびレールの電圧降下と列車の使用電力に対する電圧降下とが釣り合うとして計算する。ここで、列車の位置について、駅停車中の場合は、駅位置を列車位置とし、列車の位置が駅間の区間である場合は、区間両端の平均値を列車位置とする。
【0042】
ここでは、式(1)から、列車301の位置は2.5km、式(3)から、列車302の位置は(-0.5km+0.0km)/2=-0.25km、となる。この列車位置を反映して、
図4に示す電力装置データ22を用いると、電流iは式(9)となる。
変電所からの送り出し架線電圧=1500V
=き電線の電圧降下+レールの電圧降下+列車の電圧降下
=0.015Ω/km×(変電所と列車の距離)×電流i+0.025Ω/km×(変電所と列車の距離)×電流i+列車の使用電力/電流i 式(9)
【0043】
式(9)を、式(1)~(8)に示す列車の使用電力と位置とについて、
図4に示す電力装置データ22を用いて計算することで、列車301、302および311に流れる電流iを求めることができる。これにより、レールの位置における電流が決まり、レール抵抗値0.025Ω/kmを用いることでレールの位置における電位も求めることができる。
【0044】
よって、列車301、302および311の位置におけるレール電位は、式(10)~(12)の値となる。
・列車301のレール電位(時刻6:3:0)=40V 式(10)
・列車302のレール電位(時刻6:3:0)=70V 式(11)
・列車311のレール電位(時刻6:3:0)=15V 式(12)
【0045】
ステップ1008(S1008)で、ステップ1007(S1007)で求めたレール電位計算結果をレール電位計算結果データ41に出力する。これにより、レール電位計算結果データ41は、式(10)~(12)の情報を格納する。
【0046】
図14は、時刻6:3:0時点における各列車の位置、使用電力およびレール電位の関係を示す図である。列車301、302および311は、軌道3に沿って、駅201~203の間を走行するが、それぞれの位置、使用電力およびレール電位は、
図14に示すように、先の式(1)~(12)のとおりである。
【0047】
ステップ1009(S1009)で、全ての計算対象時間について処理を実行したか否かを判定する。実行していない場合には(「いいえ」)、ステップ1004(S1004)に戻り、実行した場合には(「はい」)、ステップ1010(S1010)に進んで処理を終了する。
【0048】
ここでは、全ての計算対象時間について、ステップ1003(S1003)で、現在時刻の6:3:0から時刻6:7:22までとして求めた。ステップ1004(S1004)以降で時刻6:3:0について実行したため、全ての計算対象時間について実行してはいないので、ステップ1004(S1004)に戻る。
【0049】
ステップ1004(S1004)に戻ると、次の計算対象時刻として、既に計算を実行した時刻6:3:0に、一定時間単位での計算として1秒を加算した時刻6:3:1について処理を実行する。この手順については先に説明したとおりで、この処理を計算対象時刻が時刻6:7:22の場合まで繰り返すことになる。
【0050】
次に、レール電位上限判定処理部32が実行する処理内容について説明する。
図7は、レール電位上限判定処理部32が実行する処理のフローチャートを示す図である。処理を実行する主体は、レール電位上限判定処理部32であるが、以下の各ステップの説明においては主体の記載を省略する。
【0051】
ステップ2001(S2001)で、処理を開始する。
ステップ2002(S2002)で、レール電位上限データ21を読み込む。
【0052】
ここで、
図8に、レール電位上限データ21の一例を示す。レール電位上限データ21は、レール電位の上限値(図では、110V)およびこの上限値を超過した状態の許容持続時間(図では、3秒)を含むデータである。
【0053】
ステップ2003(S2003)で、レール電位計算結果データ41を読み込む。レール電位計算結果データ41の内容は、先の式(10)~(12)で説明したとおりである。
【0054】
ステップ2004(S2004)で、レール電位計算結果がレール電位上限の条件を超過したか否かを判定する。判定結果が、超過有りの場合には(「はい」)、ステップ2005(S2005)を実行し、超過無しの場合には(「いいえ」)、ステップ2006(S2006)を実行する。
【0055】
図8に示すレール電位上限データ21より、レール電位上限値の超過有無の判定は、先に計算したレール電位が、上限値である110Vを許容持続時間である3秒間を連続で超過した場合に、超過有りとの判定を行う。
【0056】
ここで、レール電位計算結果データ41として、以下の式(13)~(17)のデータ内容がある場合を考察する。
・列車301のレール電位(時刻6:3:52)=114V 式(13)
・列車301のレール電位(時刻6:3:53)=116V 式(14)
・列車301のレール電位(時刻6:3:54)=118V 式(15)
・列車301のレール電位(時刻6:3:55)=117V 式(16)
・列車301のレール電位(時刻6:3:56)=99V 式(17)
【0057】
以上によると、レール電位は、式(13)~(16)が
図8に示すレール電位上限データ21のレール電位上限110Vを超えていることが分かる。また、この持続時間は4秒間であるため、
図8に示すレール電位上限データ21の許容持続時間3秒を超えている。よって、レール電位上限の条件を満たすので、条件成立となりステップ2005(S2005)を実行する。
【0058】
ステップ2005(S2005)で、表示装置2にレール電位上限値超過に関する情報を表示させるための出力を行う。表示内容としては、テキスト等で「レール電位上限値超過」と表示してもよいし、超過した時間としてその時刻「6:3:52~6:3:55」を表示してもよい。更には、超過した際のレール電位の計算結果を表示してもよいし、超過した列車301の位置情報を表示してもよい。
【0059】
ステップ2006(S2006)で、全てのレール電位計算結果データ41について処理を実行したか否かを判定する。全ての処理を実行していない場合には(「いいえ」)、ステップ2004(S2004)に戻って処理を続け、全ての処理を実行した場合には(「はい」)、ステップ2007(S2007)に進んで処理を終了する。
【0060】
以上のとおり、
図3に示すフローチャートにより、電力装置データ22、列車データ23およびダイヤデータ24を用いてレール電位を計算し、更に、
図7に示すフローチャートにより、計算したレール電位が上限値を超えたか否かをレール電位上限データ21を用いて判定することが可能となる。
【0061】
上記したフローチャートでは、ダイヤデータ24に従って列車が走行する場合を説明したが、実際の列車運行状態を反映する方法として、例えば、
図17に示すように、運行管理装置4が管理するダイヤデータ24を受け取って処理に用いてもよい。ここで、
図17は、実施例1に係るレール電位計算装置1が使用するダイヤデータ24を、運行管理装置4が管理するダイヤデータ24を参照して(例えば、ダウンロードして)作成するものである。
また、図示していない情報伝送装置を用いて、列車から、時刻および位置の対応情報、あるいは時刻、位置および使用電力の対応情報、を受け取って処理に用いてもよい。
【0062】
なお、上記した電位上限データ21、電力装置データ22、列車データ23およびダイヤデータ24のそれぞれの数値は、一例であり、この数値が変化したとしても実施例1を妨げるものではない。
【実施例2】
【0063】
本発明に係る実施例2は、実施例1に係るレール電位計算装置1の計算処理手順に対して、計算を実施する条件を予め作成しておき、列車ダイヤが計算を実施する条件を満たした場合についてのみレール電位計算を行う方法である。
【0064】
すなわち、実施例2は、レール電位計算を行う条件を設定することにより、当該条件が成立しない場合はレール電位計算を実施しない処理手順を採用する。実施例1は、列車ダイヤを変更した場合ごとに、先に説明した処理手順を全て行うが、実施例2は、列車ダイヤを変更した場合でも、その内の一部についてレール電位計算を行うものである。
【0065】
これにより、列車ダイヤの内容を変更した場合について、レール電位計算の実行回数を削減し、レール電位計算装置1が実行するレール電位計算の総量を抑制することができる。
【0066】
レール電位計算装置1の基本的構成は、実施例1で示した
図1と同じである。
図9は、実施例2に係るレール電位計算装置1の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0067】
実施例2に係るレール電位計算装置1は、
図2に示す実施例1の機能構成と比べて、列車運行反映ダイヤデータ25、レール電位計算対象判定データ作成処理部33、制限付きレール電位計算処理部34、制限付きレール電位計算結果データ42、レール電位計算対象条件データ51およびレール電位計算対象判定データ52を備える点で異なる。
【0068】
レール電位計算装置1のレール電位計算処理部31は、実施例1と同様に、電力装置データ22、列車データ23およびダイヤデータ24を用いて処理を実行し、レール電位計算結果データ41を出力する。このレール電位計算処理部31における処理内容は、先の実施例1で説明した内容と同じであるため、説明を省略する。
【0069】
レール電位計算対象判定データ作成処理部33は、レール電位計算結果データ41およびレール電位計算対象条件データ51からの各情報を用いて処理を実行し、レール電位計算対象判定データ52にデータ出力する。
【0070】
次に、制限付きレール電位計算処理部34は、電力装置データ22、列車データ23、列車運行反映ダイヤデータ25およびレール電位計算対象判定データ52からの各情報を用いて処理を実行し、制限付きレール電位計算結果データ42にデータ出力する。
【0071】
更に、レール電位上限判定処理部32は、制限付きレール電位計算結果データ42およびレール電位上限データ21からの各情報を用いて処理を実行し、実行結果を外部の表示装置2に出力する。
【0072】
なお、列車運行反映ダイヤデータ25の内容は、ダイヤデータ24に記載された内容に対して、列車301および列車302について、列車301の駅201の出発時刻と列車302の駅201の出発時刻とは異なるが、列車301の駅201の出発時刻と列車302の駅201の出発時刻との時間間隔は同じとする。同様に、列車311および列車312についても、列車311の駅203の出発時刻と列車312の駅203の出発時刻とは異なるが、列車311の駅203の出発時刻と列車312の駅203の出発時刻との時間間隔は同じとする。
【0073】
図10は、レール電位計算対象判定データ作成処理部33が実行する処理のフローチャートを示す図である。処理を実行する主体は、レール電位計算対象判定データ作成処理部33であるが、以下の各ステップの説明においては主体の記載を省略する。
【0074】
ステップ3001(S3001)で、処理を開始する。
ステップ3002(S3002)で、レール電位計算結果データ41を読み込む。読み込む内容は、先の実施例1で示した式(1)~(17)の各列車の位置、使用電力およびレール電位をまとめたデータである。
【0075】
ステップ3003(S3003)で、レール電位計算対象条件データ51を読み込む。
図11に、レール電位計算対象条件データ51の例を示す。レール電位計算対象条件データ51は、レール電位の上限値の条件判定値(
図11では、100V)およびこの上限値を超過した状態の許容持続時間の条件判定値(
図11では、2秒)を含むデータである。
【0076】
ここで、レール電位計算対象条件データ51の条件判定値の内、レール電位の上限値は、実施例1における(
図8に示す)レール電位上限データ21のレール電位の上限値以下で、また、上限値を超過した状態の許容持続時間は、実施例1における(
図8に示す)レール電位上限データ21の上限値を超過した状態の許容持続時間以下である。
【0077】
ステップ3004(S3004)で、レール電位計算結果データ41に対して、レール電位計算対象条件データ51の条件での判定結果を達成の有無として追加し、レール電位計算対象元データ61を作成する。ただし、このレール電位計算対象元データ61は、このフローチャート実行時に一時的に作成されるデータである(
図10では点線枠で記す)。
【0078】
図13は、レール電位計算対象元データ61の例を示す図である。
図13に示す各時刻における列車301、302、311および312について、レール電位計算結果データ41より、列車の位置、使用電力およびレール電位を反映し、レール電位と持続時間については、レール電位計算対象条件データ51を用いた判定結果から達成の有無を保持する(
図13では、各時刻欄において、行の上から順に、列車の位置、使用電力、レール電位および条件判定結果(達成の有無)を示す)。
【0079】
ステップ3005(S3005)で、全ての計算対象条件の範囲について実行したか否かを判定する。実行した場合には(はい)、ステップ3006(S3004)を実行し、実行していない場合には(いいえ)、ステップ3004(S3004)に戻る。
【0080】
ステップ3006(S3006)で、ステップ3004(S3004)で作成したレール電位計算対象元データ61からレール電位計算対象判定データ52を作成する。具体的には、
図13に示すデータを対象にして、ステップ3004(S3004)で実行した対象条件の判定結果が達成ありとなる条件のデータを作成することである。
【0081】
以下では、
図13に示す各列車の位置および使用電力について、駅間の列車数と列車の使用電力とについて条件を作成するものとする。
図13に示す例では、達成ありと判定された列車は301だけである(図では斜字で示す)。その状態に共通する条件は、当該列車301の使用電力が400kWであること、駅202での停車列車を含めて駅202~駅203の間に3列車が存在すること、であることが分かる。この内、時刻6:3:0における列車302が、使用電力400kWで達成なしであることより、当該列車302の使用電力400kWは達成条件でなくなる。つまり、列車位置の条件として、駅202と駅203との間に存在する列車の数が3以上の場合に達成あり、が条件となる。
【0082】
これにより、レール電位計算対象判定データ52の内容は、式(18)となる。
レール電位計算対象判定データ52
=駅202と駅203との間に存在する列車の数が3以上 式(18)
レール電位計算対象判定データ52としては、この式(18)の内容を保持する。
ステップ3007(S3007)で、処理を終了する。
【0083】
図12は、制限付きレール電位計算処理部34が実行する処理のフローチャートを示す図である。
【0084】
ステップ4001(S4001)で、処理を開始する。
ステップ4002(S4002)で、電力装置データ22、列車データ23および列車運行反映ダイヤデータ25を読み込む。この処理内容は、先の実施例1のステップ1002(S1002)と同様であるため、説明を省略する。
【0085】
ステップ4003(S4003)で、レール電位計算対象判定データ52を読み込む。ここで、レール電位計算対象判定データ52の内容は、先の式(18)に示す内容である。
【0086】
ステップ4004(S4004)で、計算対象となる時間範囲を決定する。この処理内容は、先の実施例1のステップ1003(S1003)と同様であるため、説明を省略する。
【0087】
ステップ4005(S4005)で、計算対象時刻を設定する。この処理内容は、先の実施例1のステップ1004(S1004)と同様であるため、説明を省略する。
【0088】
ステップ4006(S4006)で、計算対象時刻での各列車の位置および使用電力を抽出する。この処理内容は、先の実施例1のステップ1005(S1005)と同様であるため、説明を省略する。
【0089】
ステップ4007(S4007)で、全列車について処理を実行したか否かを判定する。未処理の列車があれば(いいえ)、ステップ4006(S4006)に戻って処理を繰り返す。全ての列車について処理の実行が終了したら(はい)、ステップ4008(S4008)に進む。
【0090】
ステップ4008(S4008)で、ステップ4006(S4006)で作成した各列車の位置および使用電力が、ステップ4003(S4003)で読み込んだレール電位計算対象判定データ52を満たしているか否かを判定する。満たす場合には(はい)、ステップ4009(S4009)を実行し、満たさない場合には(いいえ)、ステップ4011(S4011)を実行する。
【0091】
ここでは、レール電位計算対象判定データ52の内容が式(18)に示す内容であるため、列車の位置について駅202と駅203との間に存在する列車の数が3以上の場合にのみ、条件を満たすと判定する。
【0092】
例えば、時刻6:3:20における各列車の位置が式(19)~(22)であるとする。
・列車301の位置(時刻6:3:20)=駅202発5秒後
=駅202より駅203に向かって0.0~0.5kmの範囲
=2.5~3.0kmの範囲 式(19)
・列車302の位置(時刻6:3:20)=駅201発50秒後
=駅201より駅202に向かって1.0~1.5kmの範囲
=0.5~1.0kmの範囲 式(20)
・列車311の位置(時刻6:3:20)=駅203発95秒後
=駅203より駅202に向かって2.5~3.0kmの範囲
=2.5~3.0kmの範囲 式(21)
・列車312の位置(時刻6:3:20)=駅203発5秒後
=駅203より駅202に向かって0.0~0.5kmの範囲
=5.0~5.5kmの範囲 式(22)
【0093】
この内、式(19)、(21)および(22)は、列車が駅202と駅203との間に存在している。すなわち、駅202と駅203との間に存在する列車の数が3(列車301、311および312)であることが分かる。これは、式(18)に示すレール電位計算対象判定データ52を満たしている。
よって、時刻6:3:20の場合には、ステップ4008(S4008)の判定条件が成立する。
【0094】
図15は、以上で説明した時刻6:3:20時点の各列車の位置関係を示す図である。列車301、302、311および312は、軌道3に沿って、駅201~駅203の間を走行し、それぞれの位置は、式(19)~(22)に示すとおりで、その内、列車301、311および312は、駅202と駅203との間に存在している。
【0095】
ステップ4009(S4009)で、レール電位の計算を行う。この処理内容は、先の実施例1の処理1007と同様であるため、説明を省略する。
【0096】
ステップ4010(S4010)で、計算したレール電位の結果をレール電位計算結果データ41に出力する。この処理内容は、先の実施例1の処理1008と同様であるため、説明を省略する。
【0097】
ステップ4011(S4011)で、全ての計算対象時間について実行したか否かを判定する。この処理内容は、先の実施例1のステップ1009(S1009)と同様であるため、説明を省略する。
ステップ4012(S4003)で、処理を終了する。
【0098】
また、レール電位上限判定処理部32は、制限付きレール電位計算結果データ42とレール電位上限データ21とを用いて処理を実行し、結果を外部の表示装置2に出力する。この処理内容は、先の実施例1で説明した内容と同様であるため、説明を省略する。
【0099】
以上のとおり、列車運行反映ダイヤデータ25に対するレール電位計算の実施は、式(18)に示すレール電位計算対象判定データ52を満たす場合のみとなる。このように、列車運行反映ダイヤデータ25が一回以上変更となる場合において、先の実施例1に示したダイヤデータ24の内容全てについてレール電位を実行する構成と比較して、レール電位の計算回数を少なくし、レール電位計算装置1が行うレール電位計算の総量を抑制することが可能となる。
【0100】
ここでは、レール電位計算対象判定データ52の内容として、駅間の列車数と列車の使用電力とについて条件を作成する方法を説明したが、レール電位計算対象元データ61の図示しない時刻における位置、使用電力およびレール電位より、駅間の列車数と列車の使用電力の条件を組み合わせたレール電位計算対象判定データ52を作成してもよい。
【0101】
更に、ダイヤデータ24に代わって、各列車の駅出発時刻を任意に設定した複数のダイヤデータを用いて、レール電位計算対象判定データ52を作成してもよい。この場合は、レール電位計算対象判定データ52の内容として、同一方向に走行する列車間での運転時間間隔や、異なる方向に走行する列車について駅出発時刻の差分を条件としてもよい。複数の任意に設定した駅出発時刻を持つダイヤデータを対象に、レール電位計算対象判定データ52を作成することで、列車運行反映ダイヤデータ25に格納された列車の時間間隔がダイヤデータ24と異なる場合でも、レール電位計算の実施回数を削減することができる。
【0102】
なお、列車運行反映ダイヤデータ25は、例えば、列車の故障の発生、運行する列車の遅れの発生、運行する列車の追加の発生、駅の装置故障の発生などを反映して、適宜に変更を行ってもよい。
【0103】
また、上記の実施例2で示した電位上限データ21、電力装置データ22、列車データ23、ダイヤデータ24、レール電位計算対象条件データ51のそれぞれの数値は、一例であり、この数値が変化したとしても実施例2を妨げるものではない。
【0104】
図18は、実施例2に係るレール電位計算装置1で使用するダイヤデータを運行管理装置が管理するダイヤデータを利用して作成する構成の一例を示す図である。先の実施例1の場合の
図17と同様に、レール電位計算装置1が備えるダイヤデータ24を、運行管理装置4が管理するダイヤデータ24を参照して(例えば、ダウンロードして)作成するものである。
【符号の説明】
【0105】
1 レール電位計算装置、2 表示装置、3 軌道、4 運行管理装置、
11 演算データ保持部、12 演算部、13 情報インタフェース部、
21 レール電位上限データ、22 電力装置データ、23 列車データ、
24 ダイヤデータ、25 列車運行反映ダイヤデータ、31 レール電位計算処理部、
32 レール電位上限判定処理部、33 レール電位計算対象判定データ作成処理部、
34 制限付きレール電位計算処理部、41 レール電位計算結果データ、
42 制限付きレール電位計算結果データ、51 レール電位計算対象条件データ、
52 レール電位計算対象判定データ、61 レール電位計算対象元データ、
201~203 駅、301,302,311,312 列車