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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/14 20060101AFI20221214BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20221214BHJP
   B60W 10/18 20120101ALI20221214BHJP
   B60T 8/172 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B60W30/14
B60W10/00 120
B60W10/04
B60W10/18
B60T8/172 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019179645
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021054275
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀口 尚志
(72)【発明者】
【氏名】川本 善通
(72)【発明者】
【氏名】松下 悟史
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-028896(JP,A)
【文献】特開2017-043237(JP,A)
【文献】特開平11-020496(JP,A)
【文献】特開2000-238629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00~60/00
B60W 10/00~10/30
B60T 8/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行制御を行う走行制御装置であって、
自車両に備わる制動装置の制動状態情報、及び自車両の走行路が降坂路か否かを含む走行路情報を取得する情報取得部と、
目標車速に基づき自車両を定速走行させる定速走行制御、及び自車両の前方を走行する他車両に対し目標車間距離を保って前記目標車速に基づき追従走行させる追従走行制御の少なくとも一方の走行制御を行う走行制御部と、を備え、
前記走行制御部は、
前記定速走行制御では、前記目標車速に対して実車速が低下した場合、当該目標車速及び実車速の差に基づいて目標加速度を算出し、当該目標加速度の算出に際し、当該定速走行制御の作動中に、
前記情報取得部で取得した制動状態情報に基づく制動性能指標が所定の評価閾値に対して低下した場合、前記制動性能指標が前記評価閾値に対して低下していない場合と比べて、前記制動性能指標の高低に応じて目標加速度を補正する際に参照される制動性能指標係数に基づいて目標加速度を低減させる補正を行い、
自車両の走行路が降坂路である旨の前記走行路情報を当該情報取得部で取得した場合、自車両の走行路が平坦路又は登坂路である場合と比べて、降坂路勾配の大小に応じて目標加速度を補正する際に参照される降坂路勾配係数に基づいて目標加速度を低減させる補正を行い、
前記制動性能指標が前記評価閾値に対して低下し、かつ、自車両の走行路が降坂路である場合、前記制動性能指標係数及び前記降坂路勾配係数を乗算して得た補正係数に基づいて目標加速度を低減させる補正を行い、
当該補正後の目標加速度に基づいて、前記目標車速に対して実車速を近づけるように定速走行制御を行う
ことを特徴とする走行制御装置。
【請求項2】
自車両の走行制御を行う走行制御装置であって、
自車両に備わる制動装置の制動状態情報、及び自車両の走行路が降坂路か否かを含む走行路情報を取得する情報取得部と、
目標車速に基づき自車両を定速走行させる定速走行制御、及び自車両の前方を走行する他車両に対し目標車間距離を保って前記目標車速に基づき追従走行させる追従走行制御の少なくとも一方の走行制御を行う走行制御部と、を備え、
前記走行制御部は、
前記追従走行制御では、前記目標車間距離に対して実車間距離が広がった場合、当該目標車間距離及び実車間距離の差に基づいて目標加速度を算出し、当該目標加速度の算出に際し、当該追従走行制御の作動中に、
前記情報取得部で取得した制動状態情報に基づく制動性能指標が所定の評価閾値に対して低下した場合、前記制動性能指標が前記評価閾値に対して低下していない場合と比べて、前記制動性能指標の高低に応じて目標加速度を補正する際に参照される制動性能指標係数に基づいて目標加速度を低減させる補正を行い、
自車両の走行路が降坂路である旨の前記走行路情報を当該情報取得部で取得した場合、自車両の走行路が平坦路又は登坂路である場合と比べて、降坂路勾配の大小に応じて目標加速度を補正する際に参照される降坂路勾配係数に基づいて目標加速度を低減させる補正を行い、
前記制動性能指標が前記評価閾値に対して低下し、かつ、自車両の走行路が降坂路である場合、前記制動性能指標係数及び前記降坂路勾配係数を乗算して得た補正係数に基づいて目標加速度を低減させる補正を行い、
当該補正後の目標加速度に基づいて、前記目標車間距離に対して実車間距離を近づけるように追従走行制御を行う
ことを特徴とする走行制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の走行制御装置であって、
前記走行制御の作動中において、自車両の走行路が降坂路である場合の、自車両の走行路が平坦路又は登坂路である場合に対する前記降坂路勾配係数による前記目標加速度への調整代は、前記制動性能指標が前記評価閾値に対して低下した場合の、前記制動性能指標が前記評価閾値に対して低下していない場合に対する前記制動性能指標係数による前記目標加速度への調整代と比べて大に設定される
ことを特徴とする走行制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の走行制御装置であって、
自車両に装備された複数の走行モードのうち、一の走行モードを選択的に設定する際に操作される走行モード設定部をさらに備え、
前記走行制御部は、前記走行モード設定部で設定された走行モードの種別に基づく走行モード係数を前記目標加速度に乗算することで当該目標加速度を調整する補正を行う
ことを特徴とする走行制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の走行制御装置であって、
前記走行モード係数による前記目標加速度への調整代は、前記制動性能指標が前記評価閾値に対して低下した場合の、前記制動性能指標が前記評価閾値に対して低下していない場合に対する前記制動性能指標係数による前記目標加速度への調整代と比べて小に設定される
ことを特徴とする走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の走行制御を行う走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近時、運転者の運転操作に係る負担を軽減する、いわゆる自動運転を実現するための要素技術の開発が盛んに行われている。自動運転を実現するための要素技術の一つとして、アダプティブ・クルーズ・コントロール(Adaptive Cruise Control:ACC:適応巡航制御)と呼ばれる走行制御技術が知られている。
【0003】
ACC(適応巡航制御)機能を有する走行制御装置では、目標車速に基づき自車両を定速走行させる定速走行制御、及び自車両の前方を走行する他車両に対し所定の車間距離を保って追従走行させる追従走行制御を含む走行制御を、自車両の駆動系統・制動系統を統合的に制御することで実現する。
【0004】
かかる走行制御装置の一例として、特許文献1には、フェード現象が生じる可能性の度合いが所定の臨界レベルまで高まるとACCの作動を禁止することが記載されている(特許文献1の段落番号0069参照)。
【0005】
特許文献1に係る走行制御装置によれば、フェード現象が生じる可能性の度合いが所定の臨界レベルまで高まるとACCの作動を禁止するため、ACCに係る走行制御の作動中にブレーキのフェード現象が生じる事態を未然に抑止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-043237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に係る走行制御装置には、フェード現象が発生する可能性の度合いが第1の閾値を超えると、フェード注意フラグがオンしてACCの作動を禁止(解除)することが記載されている(特許文献1の段落番号0069参照)。
また、特許文献1に係る走行制御装置では、フェード現象が発生する可能性の度合いが第1の閾値よりも低い第2の閾値を下回ると、フェード注意フラグがオフしてACCの作動を再開させることが記載されている(特許文献1の段落番号0044,0060参照)。
【0008】
しかしながら、特許文献1に係る走行制御装置には、ACC(走行制御)の作動中に、フェード現象が発生する可能性の度合いを低減させることは開示も示唆もされていない。そのため、ACCの作動時間を可及的に延長すると共に、ACCの作動率向上に資する点で改良の余地があった。
【0009】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、走行制御の作動中に、走行制御の作動時間を可及的に延長すると共に、走行制御の作動率向上に資する走行制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解消するために、(1)に係る発明は、自車両の走行制御を行う走行制御装置であって、自車両に備わる制動装置の制動状態情報、及び自車両の走行路が降坂路か否かを含む走行路情報を取得する情報取得部と、目標車速に基づき自車両を定速走行させる定速走行制御、及び自車両の前方を走行する他車両に対し目標車間距離を保って前記目標車速に基づき追従走行させる追従走行制御の少なくとも一方の走行制御を行う走行制御部と、を備え、前記走行制御部は、前記定速走行制御では、前記目標車速に対して実車速が低下した場合、当該目標車速及び実車速の差に基づいて目標加速度を算出し、当該目標加速度の算出に際し、当該定速走行制御の作動中に、前記情報取得部で取得した制動状態情報に基づく制動性能指標が所定の評価閾値に対して低下した場合、前記制動性能指標が前記評価閾値に対して低下していない場合と比べて、前記制動性能指標の高低に応じて目標加速度を補正する際に参照される制動性能指標係数に基づいて目標加速度を低減させる補正を行い、自車両の走行路が降坂路である旨の前記走行路情報を当該情報取得部で取得した場合、自車両の走行路が平坦路又は登坂路である場合と比べて、降坂路勾配の大小に応じて目標加速度を補正する際に参照される降坂路勾配係数に基づいて目標加速度を低減させる補正を行い、前記制動性能指標が前記評価閾値に対して低下し、かつ、自車両の走行路が降坂路である場合、前記制動性能指標係数及び前記降坂路勾配係数を乗算して得た補正係数に基づいて目標加速度を低減させる補正を行い、当該補正後の目標加速度に基づいて、前記目標車速に対して実車速を近づけるように定速走行制御を行うことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る走行制御装置によれば、走行制御の作動中に、走行制御の作動時間を可及的に延長すると共に、走行制御の作動率向上に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る走行制御装置の概要を表すブロック構成図である。
図2A】ステアリングホィールに設けられる適応巡航制御(ACC)に係る操作スイッチの外観図である。
図2B】適応巡航制御(ACC)に係る操作スイッチを拡大して表す外観図である。
図3】ACC作動中における本発明の実施形態に係る走行制御装置の動作説明に供するフローチャート図である。
図4A】比較例に係る走行制御装置の動作説明に供する図である。
図4B】比較例に係る走行制御装置の動作説明に供する図である。
図5A】本発明の第1実施例に係る走行制御装置の動作説明に供する図である。
図5B】本発明の第1実施例に係る走行制御装置の動作説明に供する図である。
図6A】本発明の第2実施例に係る走行制御装置の動作説明に供する図である。
図6B】本発明の第2実施例に係る走行制御装置の動作説明に供する図である。
図7A】本発明の第3実施例に係る走行制御装置の動作説明に供する図である。
図7B】本発明の第3実施例に係る走行制御装置の動作説明に供する図である。
図8A】第1~第4実施例に適用される係数スケールに基づく目標加速度の補正要領の説明に供する図である。
図8B】第1実施例に適用される係数スケールに基づく目標加速度の補正要領の説明に供する図である。
図8C】第2実施例に適用される係数スケールに基づく目標加速度の補正要領の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る走行制御装置について、適宜図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に示す図において、共通の機能を有する部材間、又は、相互に対応する機能を有する部材間には、原則として共通の参照符号を付するものとする。また、説明の便宜のため、部材のサイズ及び形状は、変形又は誇張して模式的に表す場合がある。
【0014】
〔本発明の実施形態に係る走行制御装置11の概要〕
はじめに、本発明の実施形態に係る走行制御装置11の概要について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る走行制御装置11の概要を表すブロック構成図である。
【0015】
本発明の実施形態に係る走行制御装置11は、例えば、目標車速SVに対して実車速RVが低下した場合、目標車速SV及び実車速RVの差DVに基づいて目標加速度Gtgを算出し、当該目標加速度Gtgの算出に際し、適応巡航制御(ACC:Adaptive Cruise Control)のうち定速走行制御の作動中に、制動状態情報(パッド温度Tpd)に基づく制動性能指標BPI(詳しくは後記)が所定の評価閾値EV_thに対して低下した場合、制動性能指標BPIが評価閾値EV_thに対して低下していない場合と比べて、目標加速度Gtgを低減する補正を行い、当該補正後の目標加速度Gtgに基づいて、目標車速SVに対して実車速RVを近づけるように定速走行制御を行う。これについて、詳しくは後記する。
【0016】
また、本発明の実施形態に係る走行制御装置11は、ACCのうち追従走行制御では、目標車間距離TDに対して実車間距離RDが広がった場合、実車間距離RD及び目標車間距離TDの差ΔDに基づいて目標加速度Gtgを算出し、当該目標加速度Gtgの算出に際し、追従走行制御の作動中に、制動状態情報(パッド温度Tpd)に基づく制動性能指標BPIが所定の評価閾値EV_thに対して低下した場合、制動性能指標BPIが評価閾値EV_thに対して低下していない場合と比べて、目標加速度Gtgを低減する補正を行う。これについて、詳しくは後記する。
【0017】
前記の機能を実現するために、本発明の実施形態に係る走行制御装置11は、図1に示すように、入力系要素13及び出力系要素15の間を、例えばCAN(Controller Area Network)等の通信媒体17を介して相互にデータ通信可能に接続して構成されている。
【0018】
入力系要素13は、図1に示すように、レーダ21、カメラ23、車速センサ25、車輪速センサ27、ナビゲーション装置28、ブレーキペダルセンサ29、アクセルペダルセンサ31、傾斜角センサ32、制動液圧センサ33、パッド温度センサ35、走行モードスイッチ36、及び、HMI(Human-Machine Interface)37を含んで構成されている。
【0019】
一方、出力系要素15は、図1に示すように、ACC-ECU41、BRK-ECU43、ENG-ECU45、及び、MID(Multi Information Display:マルチインフォメーションディスプレイ)-ECU47を含んで構成されている。
【0020】
レーダ21は、自車両OCの前方を走行する他車両を含む物標にレーダ波を照射する一方、物標で反射されたレーダ波を受信することにより、物標までの距離や物標の方位を含む物標の分布情報を取得する機能を有する。ただし、物標の分布情報を、レーダ21に代えて又は加えて、カメラ23により撮像された自車両OCの進行方向画像情報に基づいて取得しても構わない。
【0021】
レーダ21としては、例えば、レーザレーダ、マイクロ波レーダ、ミリ波レーダ、超音波レーダなどを適宜用いることができる。レーダ21は、自車両OCのフロントグリル裏側部などに設けられる。レーダ21による物標の分布情報は、通信媒体17を介してACC-ECU41へ送られる。
【0022】
カメラ23は、自車両OC前方の斜め下方に傾斜した光軸を有し、自車両OCの進行方向の画像を撮像する機能を有する。カメラ23としては、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラやCCD(Charge Coupled Device)カメラなどを適宜用いることができる。カメラ23は、自車両OCのウインドシールド(不図示)中央上部などに設けられる。
カメラ23により撮像された自車両OCの進行方向画像情報は、例えばNTSC(National Television Standards Committee)などのインターレース方式により生成される画像信号として、通信媒体17を介してACC-ECU41へ送られる。
【0023】
車速センサ25は、車両の走行速度(車速)Vを検出する機能を有する。車速センサ25で検出された車速Vに係る情報は、通信媒体17を介してBRK-ECU43等へ送られる。
【0024】
車輪速センサ27は、自車両OCに設けられた各車輪(不図示)毎の回転速度(車輪速)をそれぞれ検出する機能を有する。車輪速センサ27でそれぞれ検出される各車輪毎の車輪速に係る情報は、通信媒体17を介してBRK-ECU43等へ送られる。
【0025】
ナビゲーション装置28は、自車両OCの現在位置に関する情報を取得する機能を有する。ナビゲーション装置28で取得された自車両OCの現在位置に関する情報は、通信媒体17を介してACC-ECU41等へ送られる。
【0026】
ブレーキペダルセンサ29は、運転者によるブレーキペダル(不図示)の操作量及び踏込みトルクを検出する機能を有する。ブレーキペダルセンサ29で検出されたブレーキペダルの操作量及び踏込みトルクに係る制動操作情報は、通信媒体17を介してBRK-ECU43等へ送られる。
【0027】
アクセルペダルセンサ31は、運転者によるアクセルペダル(不図示)の操作量を検出する機能を有する。アクセルペダルセンサ31で検出されたアクセルペダルの操作量に係る加減速操作情報は、通信媒体17を介してENG-ECU45等へ送られる。
【0028】
傾斜角センサ32は、自車両OCの傾斜角に係る情報を取得する機能を有する。傾斜角センサ32で取得された自車両OCの傾斜角に係る情報は、通信媒体17を介してACC-ECU41等へ送られる。
【0029】
制動液圧センサ33は、制動液圧系統のうちVSA装置(車両挙動安定化装置;不図示:ただし、「VSA」は本願出願人の登録商標)の給液経路における制動液圧を検出する機能を有する。制動液圧センサ33で検出されたVSA装置の給液経路における液圧情報は、通信媒体17を介してBRK-ECU43等へ送られる。
【0030】
パッド温度センサ35は、ブレーキパッド(不図示)に近接して設けられ、摩擦制動により生じたブレーキパッドに係るパッド温度Tpdを検出する機能を有する。パッド温度センサ35で検出されたパッド温度Tpdの情報(制動状態情報)は、通信媒体17を介してBRK-ECU43等へ送られる。
【0031】
走行モードスイッチ36は、例えばステアリングホィール39(図2A参照)に設けられ、自車両OCに備わる複数の走行モードを選択的に操作入力(設定)する際に用いられる。走行モードスイッチ36で設定される複数の走行モードとしては、例えば、コンフォート/エコ(Comfort/Eco)モード、ノーマル(Normal)モード、スポーツ(Sports)モード、及び、スポーツプラス(Sports +)モード、が挙げられる。走行モードスイッチ36は、本発明の「走行モード設定部」に相当する。
【0032】
HMI(Human-Machine Interface)37は、適応巡航制御(ACC)の操作スイッチ(以下、「ACC操作スイッチ」と呼ぶ。)38(図1参照)を含む。ACC操作スイッチ38は、ACCに係る設定情報を操作入力する際に用いられる。ACC操作スイッチ38によって操作入力されたACCに係る設定情報は、通信媒体17を介してACC-ECU41等へ送られる。
【0033】
ここで、ACC操作スイッチ38の周辺構成について、図2A図2Bを参照して説明する。図2Aは、ステアリングホィール39に設けられる適応巡航制御(ACC)に係るACC操作スイッチ38の外観図である。図2Bは、ACC操作スイッチ38を拡大して表す外観図である。
【0034】
ACC操作スイッチ38は、図2Aに示すように、例えばステアリングホィール39に設けられる。運転者の進行方向前方への視線の延長線上近傍には、車速Vやシフト位置のほか、ACCに係る設定情報(ACC_STATUS49;図1参照)を表示するためのマルチインフォメーションディスプレイ(MID)47が設けられている。
【0035】
次に、適応巡航制御(ACC)について説明する。ACCとは、所定の追従制御条件を充足すると、自車両OCの前方を走行する他車両(先行車両)を追従するように自車両OCの走行制御を行う機能である。
従来の巡航制御では、所要の車速Vを予め設定しておけば、自車両OCの車速Vを目標車速に保って走行する。
【0036】
これに対し、適応巡航制御(ACC)では、自車両OCの車速Vを目標車速に保つ機能に加えて、所要の車間距離を予め設定しておけば、自車両OCの走行車線において進行方向前方を走行する他車両(先行車両)との車間距離を、自車両OCの車速Vが目標車速の範囲内に維持された状態で、目標車間距離TDに保ちながら先行車両に追従しつつ走行する。
【0037】
ACCに係る設定情報を操作入力するために、ACC操作スイッチ38は、図2Bに示すように、メイン(MAIN)スイッチ91、及びサークルメニュースイッチ93を備える。メインスイッチ91は、ACCを起動する際に操作されるスイッチである。また、サークルメニュースイッチ93は、ACCに係る設定情報の操作入力を行う際に操作されるスイッチである。
【0038】
サークルメニュースイッチ93は、図2Bに示すように、セット(-SET)スイッチ95、リジューム(RES+)スイッチ97、キャンセル(CANCEL)スイッチ98、及びディスタンススイッチ99を備える。
【0039】
セット(-SET)スイッチ95は、ACCに係る設定情報のうち、ACCのセット、及び目標車速を下降調整する際に操作されるスイッチである。
【0040】
リジューム(RES+)スイッチ97は、ACCに係る設定情報のうち、ACCの再セット、及び目標車速を上昇調整する際に操作されるスイッチである。
【0041】
キャンセル(CANCEL)スイッチ98は、ACCの作動を解除する際に操作されるスイッチである。なお、メインスイッチ91を押下操作することによっても、ACCの作動を解除することができる。
【0042】
ディスタンススイッチ99は、自車両OCと先行車両との車間距離を設定する際に操作されるスイッチである。車間距離の設定情報は、ディスタンススイッチ99を押下操作する毎に、例えば、(最長→長→中→短)の4段階で順次切り換えられる。なお、車間距離の設定値は、自車両OCの車速Vの高低に応じて、車速Vが低くなるほど車間距離の設定値が短くなるように変動するように構成されている。
【0043】
ここで、図1に戻って走行制御装置11の説明を続ける。
出力系要素15に属するACC-ECU41は、図1に示すように、情報取得部51、ACC作動可否判定部53、目標G算出部55、及び制動駆動配分部57を備える。
ACC-ECU41は、予め設定された車速Vに基づき自車両OCを定速走行させる定速走行制御、及び自車両OCの走行車線において進行方向前方を走行する他車両に対し所定の車間距離を保って追従走行させる追従走行制御を含む適応巡航制御(ACC:請求項の用語「走行制御」に相当する。)を行う。
【0044】
換言すれば、ACC-ECU41は、自車両OCの車速Vが目標車速の範囲内に維持された状態で、先行車両との車間距離を設定された車間距離に保ちながら、運転者によるアクセルペダル(不図示)やブレーキペダル(不図示)の操作を要することなしに、加速制御及び減速制御を含む自車両OCの適応巡航制御(ACC:走行制御)を行う。
【0045】
また、ACC-ECU41は、ACCの作動中に取得した制動状態情報に基づく制動性能指標BPIが、予め定められる第1基準閾値EV_th1 に対して低下した場合、ACCの作動を解除する。
【0046】
ここで、ACCの作動中とは、適応巡航制御を実行している状態をいう。制動状態情報とは、自車両OCに備わる制動装置の制動状態を表す情報をいう。制動状態情報としては、パッド温度Tpdのほか、例えば、制動液圧の積分値、減速前後の車速差などを適宜採用すればよい。
また、制動性能指標BPI(Braking performance index)とは、自車両OCに備わる制動装置の制動状態を表す評価尺度の情報である。制動性能指標BPIは、例えば、自車両OCの保有する制動性能の高低の度合いを表すと同時に、フェード現象が発生する可能性の度合いを表す。制動状態情報に基づく制動性能指標BPIは、制動状態情報(例えばパッド温度Tpd)に対し換算テーブルを適用することで得られる。
さらに、第1基準閾値EV_th1 とは、自車両OCに係る制動性能指標BPIの相対的な位置付けとして、ACCによる適応巡航制御機能を十分に確保できないと見込まれる程度に自車両OCの保有する制動性能の高低の度合い(フェード現象が発生する可能性の度合い)が低下しているか否かを判定する際に用いる基準値である。
【0047】
また、ACC-ECU41は、ACCの作動を解除した後、自車両OCの走行路が引き続き降坂路である旨の走行路情報を情報取得部51で取得した際に、ACCの作動中に取得した制動状態情報に基づく制動性能指標BPIが、第1基準閾値EV_th1 と比べて高評価側の値に設定される第2基準閾値EV_th2 に対して向上した場合、ACCの作動再開を許可しても構わない。
ここで、第2基準閾値EV_th2 とは、ACCによる適応巡航制御機能を十分に確保可能と見込まれる程度に自車両OCの保有する制動性能の高低の度合い(フェード現象が発生する可能性の度合い)が向上しているか否かを判定する際に用いる基準値である。
【0048】
また、ACC-ECU41は、ACCの作動を解除した後、自車両OCの走行路が降坂路ではなくなった旨の走行路情報を情報取得部51で取得した際に、制動状態情報に基づく制動性能指標BPIが前記第2基準閾値EV_th2 に対して低下している場合であっても、ACCの作動再開を許可する。
【0049】
このように、ACCの作動再開時期を、自車両OCの走行シーンが制動負荷の小さい走行シーンに移行(降坂路走行から平坦路走行に移行)したことを考慮して、通常よりも早期に繰り上げるように設定したため、運転者の利便性向上に資することができる。本機能について、詳しくは後記する。
【0050】
ACC-ECU41は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータにより構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムやデータを読み出して実行し、ACC-ECU41が有する、各種情報の取得機能、ACC作動可否判定機能、目標G算出機能、及び、制動駆動配分機能を含む各種機能の実行制御を行うように動作する。
ACC-ECU41は、本発明の「走行制御部」の一部に相当する。
【0051】
情報取得部51は、レーダ21による物標の分布情報、カメラ23により撮像された自車両OCの進行方向画像情報、車速センサ25で検出された車速Vに係る情報、ナビゲーション装置28で取得された自車両OCの現在位置に関する情報、傾斜角センサ32で検出された傾斜角に係る情報、後記のBRK-ECU43の制動性能指標演算部63で求められる制動性能指標BPIに係る情報、走行モードスイッチ36により選択的に操作入力された走行モード情報、及びHMI(Human-Machine Interface)37に属するACC操作スイッチ38を介して入力されたACCに係る設定情報を含む各種情報を取得する機能を有する。
【0052】
情報取得部51で取得される自車両OCの現在位置に関する情報としては、例えば、自車両OCの走行路が降坂路LRD・平坦路FRD・登坂路のいずれかであるかの情報、自車両OCの走行路が降坂路LRDである場合、その勾配に係る情報などを例示することができる。
【0053】
なお、本発明の実施形態に係る走行制御装置11は、車車間通信機能、路車間通信機能、Web通信機能等の外部通信機能を有する構成を採用することができる。この場合、ACC-ECU41の情報取得部51は、前記外部通信機能を介して、自車両OCの現在位置に関する情報を取得することができる。
自車両OCの走行路が降坂路LRD・平坦路FRD・登坂路のいずれかであるかの情報、自車両OCの走行路が降坂路LRDである場合、その勾配に係る情報は、例えば、レーダ21による物標の分布情報、及び、カメラ23により撮像された自車両OCの進行方向画像情報に対して画像解析を行うと共に、ナビゲーション装置28で取得された自車両OCの現在位置に関する地図情報(標高データを含む)、並びに、前記外部通信機能を介して取得した自車両OCの現在位置に関する情報を適宜参照することによって、適宜取得すればよい。
【0054】
また、自車両OCの走行路が降坂路LRD・平坦路FRD・登坂路のいずれかであるかの情報は、傾斜角センサ32で検出した自車両OCの傾斜角データを所定区間毎に積分しておき、所定区間毎の傾斜角データの積分値に基づいて取得しても構わない。
【0055】
ACC作動可否判定部53は、BRK-ECU43を介して情報取得部51で取得した制動性能指標BPIに係る情報、自車両OCの現在位置に関する情報に基づいて、ACC作動可否(ACCの作動・作動再開を許可するか、又はACCの作動を解除するか)に係る判定を行う機能を有する。ACCの作動可否に係る判定について、詳しくは後記する。
【0056】
目標G算出部55は、情報取得部51で取得した物標の分布情報、自車両OCの進行方向画像情報、車速Vに係る情報、ACCに係る設定情報等に基づいて、目標となる加減速度(目標G)を算出する機能を有する。
【0057】
詳しく述べると、目標G算出部55は、ACCのうち定速走行制御では、目標車速SVに対して実車速RVが低下した場合、目標車速SV及び実車速RVの差DVに基づいて目標加速度Gtgを算出し、当該目標加速度Gtgの算出に際し、定速走行制御の作動中に、制動状態情報(パッド温度Tpd)に基づく制動性能指標BPIが所定の評価閾値EV_thに対して低下した場合、制動性能指標BPIが評価閾値EV_thに対して低下していない場合と比べて、目標加速度Gtgを低減する補正を行う。
なお、所定の評価閾値EV_thとしては、制動性能指標BPIのうち任意の値を適宜採用することができる。
【0058】
また、目標G算出部55は、ACCのうち追従走行制御では、目標車間距離TDに対して実車間距離RDが広がった場合、実車間距離RD及び目標車間距離TDの差ΔDに基づいて目標加速度Gtgを算出し、当該目標加速度Gtgの算出に際し、追従走行制御の作動中に、制動状態情報(パッド温度Tpd)に基づく制動性能指標BPIが評価閾値EV_thに対して低下した場合、制動性能指標BPIが評価閾値EV_thに対して低下していない場合と比べて、目標加速度Gtgを低減する補正を行う。
【0059】
制動駆動配分部57は、車速Vに係る情報、目標G算出部55で算出された目標Gに係る情報等に基づいて、制動及び駆動に係る配分比を算出すると共に、算出された配分比に従って制動・駆動に係るトルク配分を行う機能を有する。
【0060】
BRK-ECU43は、ACC-ECU41と同様に、出力系要素15に属する。BRK-ECU43は、図1に示すように、情報取得部61、制動性能指標演算部63、及び制動制御部65を備える。
【0061】
BRK-ECU43は、運転者の制動操作によってマスタシリンダ(不図示)で発生した制動液圧(一次液圧)の高低に応じて、制動モータ67の駆動によってモータシリンダ装置(例えば、特開2015-110378号公報参照:不図示)を作動させることにより、自車両OCを制動するための制動液圧(二次液圧)を発生させる機能を有する。
【0062】
また、BRK-ECU43は、例えば、制動駆動配分部57から送られてきた減速制御指令を受けて、ポンプモータ69を用いて加圧ポンプ(不図示)を駆動することにより、四輪の制動力を各車輪の目標液圧に応じた制動力に制御する機能を有する。
【0063】
マスタシリンダ、モータシリンダ装置、制動モータ67、及びポンプモータ69は、本発明の「制動装置」に相当する。
【0064】
BRK-ECU43は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータにより構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムやデータを読み出して実行し、BRK-ECU43が有する、各種情報の取得機能、制動性能指標演算機能、制動操作又はACC作動に基づく制動制御機能を含む各種機能の実行制御を行うように動作する。
BRK-ECU43は、本発明の「制動装置」及び「走行制御部」の一部に相当する。
【0065】
情報取得部61は、車速センサ25で検出された車速Vに係る情報、車輪速センサ27で検出された各車輪毎の車輪速に係る情報、ブレーキペダルセンサ29で検出されたブレーキペダルの操作量及び踏込みトルクに係る制動操作情報、制動液圧センサ33で検出されたVSA装置の給液経路における液圧情報、ACC-ECU41の制動駆動配分部57から送られてきた制動制御情報を含む各種情報を取得する機能を有する。
【0066】
制動性能指標演算部63は、パッド温度センサ35で検出されたパッド温度Tpd(の実測値)を制動状態情報として用い、換算テーブルを参照して、パッド温度Tpdを制動性能指標BPIに換算する演算を行う。
ちなみに、パッド温度Tpdに基づく制動性能指標BPIが、第1基準閾値EV_th1 に対して低評価側にある場合において、パッド温度Tpdと制動性能指標BPIとの間には、負の線形相関性がある。つまり、パッド温度Tpdに基づく制動性能指標BPIが第1基準閾値EV_th1 に対して低評価側にある場合において、パッド温度Tpdが高くなるほど、制動性能指標BPIは低下する傾向がある。
なお、制動性能指標BPIとしては、特に限定されないが、例えば、車速Vに係る情報、及び、VSA装置の給液経路における液圧情報に基づいて、パッド温度Tpdを推定する演算を行い、こうして推定されたパッド温度Tpdを、制動性能指標BPIに換算する構成を採用しても構わない。
【0067】
制動制御部65は、ブレーキペダルセンサ29を介して取得した運転者の制動操作に係る情報、又は、ACC-ECU41の制動駆動配分部57から送られてきた制動制御情報に基づいて、制動モータ67の駆動によってモータシリンダ装置を作動させることにより、自車両OCの制動制御を行うと共に、必要に応じてポンプモータ69を用いて加圧ポンプを駆動することにより、四輪の制動力を各車輪毎の目標液圧に応じた制動力に制御する。
【0068】
ENG-ECU45は、ACC-ECU41、BRK-ECU43と同様に、出力系要素15に属する。ENG-ECU45は、図1に示すように、情報取得部71、及び駆動制御部73を備える。
【0069】
ENG-ECU45は、アクセルペダルセンサ31を介して取得した運転者の加速操作(アクセルペダルの踏込量)に係る情報、又は、ACC-ECU41の制動駆動配分部57から送られてきた駆動制御情報に基づいて、内燃機関エンジン75の駆動制御を行う機能を有する。
【0070】
詳しく述べると、ENG-ECU45は、内燃機関エンジン75の吸気量を調整するスロットルバルブ(不図示)、燃料ガスを噴射するインジェクタ(不図示)、燃料の着火を行う点火プラグ(不図示)等を制御することにより、内燃機関エンジン75の駆動制御を行う。
【0071】
ENG-ECU45は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータにより構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムやデータを読み出して実行し、ENG-ECU45が有する、各種情報の取得機能、内燃機関エンジン75の駆動制御機能を含む各種機能の実行制御を行うように動作する。
ENG-ECU45は、本発明の「走行制御部」の一部に相当する。
【0072】
情報取得部71は、アクセルペダルセンサ31で検出されたアクセルペダルの操作量に係る加減速操作情報、ACC-ECU41の制動駆動配分部57から送られてきた駆動制御情報を含む各種情報を取得する機能を有する。
【0073】
駆動制御部73は、アクセルペダルセンサ31を介して取得した運転者の加速操作(アクセルペダルの踏込量)に係る情報、又は、ACC-ECU41の制動駆動配分部57から送られてきた駆動制御情報に基づいて、内燃機関エンジン75の駆動制御を行う。
【0074】
〔ACC作動中における本発明の実施形態に係る走行制御装置11の動作〕
次に、ACC作動中における本発明の実施形態に係る走行制御装置11の動作について、図3を参照して説明する。図3は、ACC作動中における本発明の実施形態に係る走行制御装置11の動作説明に供するフローチャート図である。
【0075】
図3に示すステップS11において、ACC-ECU41の情報取得部51は、ACCの作動中に時々刻々と変動する制動性能指標BPIを得るために、パッド温度Tpd0 の情報を取得する。ACC-ECU41は、取得したパッド温度Tpd0 を制動性能指標BPIに換算する。これにより、パッド温度Tpdに基づく制動性能指標BPIを取得する。
また、ACC-ECU41の情報取得部51は、ACCの作動中において、自車両OCの走行路が降坂路か否かに係る走行路情報、及び自車両OCの走行路が降坂路の場合、傾斜角(勾配)に係る情報を、自車両OCの進行方向画像を撮像するカメラ23及び傾斜角センサ32をそれぞれ介して取得する。
さらに、ACC-ECU41の情報取得部51は、先行車との実車間距離RDの情報を、レーダ21を介して取得すると共に、目標車間距離TDの情報を取得する。また、情報取得部51は、目標車間距離TD及び実車間距離RDの差ΔDに係る情報を取得する。
【0076】
ステップS12において、ACC-ECU41の目標G算出部55は、ACCのうち追従走行制御において、目標車間距離TD及び実車間距離RDの差ΔDに基づいて目標加速度Gtgを算出する。
【0077】
ステップS13において、ACC-ECU41は、ACC-ECU41の情報取得部51で取得した走行路情報に基づいて、自車両OCの走行路が降坂路LRDか否かに係る判定を行う。
【0078】
ステップS13の判定の結果、自車両OCの走行路が降坂路LRDではない(平坦路FRDである)旨の判定が下された場合(ステップS13のNo)、ACC-ECU41は、処理の流れを次のステップS14へと進ませる。
【0079】
一方、ステップS13の判定の結果、自車両OCの走行路が降坂路LRDである旨の判定が下された場合(ステップS13のYes)、ACC-ECU41は、処理の流れをステップS15へとジャンプさせる。
【0080】
ステップS14において、自車両OCの走行路が降坂路LRDではない(平坦路FRDである)旨の判定が下された場合、ACC-ECU41の目標G算出部55は、ステップS12で算出された目標加速度Gtgを補正することなくそのまま、走行制御を行う際の基礎データとして用いる。
【0081】
一方、ステップS15において、自車両OCの走行路が降坂路LRDである旨の判定が下された場合、ACC-ECU41の目標G算出部55は、降坂路勾配(傾斜角)が大きくなるほど目標加速度Gtgが低減するように、ステップS12で算出された目標加速度Gtgを、降坂路勾配に基づき低減補正する。ACC-ECU41の目標G算出部55は、低減補正後の目標加速度Gtgを、走行制御を行う際の基礎データとして用いる。
【0082】
ステップS16において、ACC-ECU41は、ステップS14又はステップS15で採用された目標加速度Gtgを基礎データとして用いた走行制御を実行する。
【0083】
ステップS17において、ACC-ECU41のACC作動可否判定部53は、パッド温度Tpdに基づく制動性能指標BPIが第1基準閾値EV_th1 (図4A図4B参照)に対し低下しているか否かの判定を行う。ステップS12では、パッド温度Tpdに基づく制動性能指標BPIが、ACCの作動を継続可能なレベルにあるか否かを判定している。
【0084】
ステップS17の判定の結果、パッド温度Tpdに基づく制動性能指標BPIが第1基準閾値EV_th1 に対して低下していない旨の判定が下された場合(ステップS17のYes)、ACC-ECU41は、ACCの作動を継続可能とみなして、処理の流れをステップS11へと戻し、以下の処理を順次行わせる。
一方、ステップS17の判定の結果、パッド温度Tpdに基づく制動性能指標BPIが第1基準閾値EV_th1 に対して低下している旨の判定が下された場合(ステップS12のNo)、ACC-ECU41は、原則としてACCの作動を継続不能とみなして、処理の流れを次のステップS18へと進ませる。
【0085】
ステップS18において、ACC-ECU41は、ACCの作動解除に係る制御を行う。これにより、ACCの作動は解除される。その後、ACC-ECU41は、一連の処理の流れを終了させる。
【0086】
〔ACC作動中における比較例に係る走行制御装置11の動作〕
次に、ACC作動中における比較例に係る走行制御装置11の動作について、図4A図4Bを参照して説明する。図4Aは、比較例に係る走行制御装置11の動作説明に供する図である。
【0087】
図4Aには、平坦路FRDを走行中の先行車両LCに後続して、ACC作動中の自車両OCが先行車両LCを追従走行するシーンが描かれている。同図には、先行車両LC及び自車両OC間の実車間距離RDと、目標車間距離TDと、実車間距離RDから目標車間距離TDを差し引いた距離差ΔDと、がそれぞれ表記されている。
また、同図には、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「基準値」をとることが表記されている。ここで、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「基準値」をとるとは、自車両OCの保有する制動性能の高低の度合い(フェード現象が発生する可能性の度合い)が中位の値を示すことを意味する。
【0088】
図4Bには、図4Aに示す追従走行シーンにおいて、距離差ΔDをx軸とする一方、目標加速度Gtgをy軸とする距離差ΔDの変化に応じた目標加速度Gtgの変化特性線図が描かれている。図4Bにおいて、距離差ΔDが0とは、実車間距離RDと目標車間距離TDとが一致していることを意味する。従って、距離差ΔDが0の場合には自車両OCの速度調整は不要のため、その場合の目標加速度Gtgも0となる。
【0089】
図4Bに示す特性線図のうち第1象限領域では、0を起点とする矢印方向のx軸領域は距離差ΔDが正の値をとり、かつ、0を起点とする矢印方向のy軸領域は目標加速度Gtgが正の値をとる。かかる第1象限領域において、目標加速度Gtgの変化特性は、(x=0~標準距離差ΔD0)の領域では右肩上がりで線形に伸びる特性を示す一方、(x=標準距離差ΔD0~)の領域では一定の値G0_ΔD0をとる特性を示す。この特性を、比較例に係る目標加速度Gtgの変化特性と呼ぶ。
【0090】
〔ACC作動中における第1実施例に係る走行制御装置11の動作〕
次に、ACC作動中における第1実施例に係る走行制御装置11の動作について、図5A図5Bを参照して説明する。図5A図5Bは、第1実施例に係る走行制御装置11の動作説明に供する図である。
【0091】
図5A図5Bに示す第1実施例に係る走行制御装置11の動作と、図4A図4Bに示す比較例に係る走行制御装置11の動作とは、相互に共通する部分が多く存在する。
そこで、前記両者の相違点に注目して説明することで、ACC作動中における第1実施例に係る走行制御装置11の動作説明に代えることとする。
【0092】
図4Aに示す比較例では、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「基準値」をとることが表記されている。これに対し、図5Aに示す第1実施例では、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「低位値」をとることが表記されている。ここで、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「低位値」をとるとは、自車両OCの保有する制動性能の高低の度合い(フェード現象が発生する可能性の度合い)が基準値と比べて低位の値をとることを意味する。
【0093】
また、図5Bに示す特性線図のうち第1象限領域において、第1実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性は、距離差ΔDの値を共通にして比べた場合に、比較例と比べて低減した値をとる点が、比較例に係る目標加速度Gtgの変化特性と相違している。
具体的には、図4Bに示す特性線図のうち第1象限領域において、比較例に係る目標加速度Gtgの変化特性は、(x=0~標準距離差ΔD0)の領域では右肩上がりで線形に伸びる特性を示す一方、(x=標準距離差ΔD0~)の領域では一定の値G0_ΔD0をとる特性を示す。
これに対し、図5Bに示す特性線図のうち第1象限領域において、第1実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性は、(x=0~標準距離差ΔD0)の領域では右肩上がりで線形に伸びる特性(ただし、比較例と比べて傾きは小さい)を示す一方、(x=標準距離差ΔD0~)の領域では一定の値G1_ΔD0(ただし、G1_ΔD0<G0_ΔD0)をとる特性を示す。
【0094】
図5Bに示す特性線図のうち第1象限領域において、第1実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性が、比較例に係る目標加速度Gtgの変化特性と比べて低減した値をとることは、第1実施例に係る走行制御装置11において、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「低位値」をとることに関連している。
【0095】
すなわち、第1実施例に係る走行制御装置11において、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「低位値」をとるとは、フェード現象が生じる可能性の度合いが、ACCによる適応巡航制御機能を十分に確保できないと見込まれる程度に高まっていることを意味する。このままでは、自車両OCに係る制動性能指標BPIが第1基準閾値EV_th1 に対して低下した値をとる結果として、ACCの作動禁止を招く蓋然性が高い。
【0096】
そこで、第1実施例に係る走行制御装置11では、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「低位値」をとるケースにおいて、ACCの作動中に、フェード現象が発生する可能性の度合いを低減させる目的で、第1実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性は、距離差ΔDの値を共通にして比べた場合に、比較例に係る目標加速度Gtgの変化特性と比べて低減した値をとる構成を採用している。
【0097】
(追従走行制御の作動中における第1実施例に係る走行制御装置11の動作)
換言すれば、第1実施例に係る走行制御装置11は、追従走行制御では、目標車間距離TDに対して実車間距離RDが広がった場合、目標車間距離TD及び実車間距離RDの差ΔDに基づいて目標加速度Gtgを算出し、目標加速度Gtgの算出に際し、追従走行制御の作動中に、情報取得部51で取得した制動状態情報(パッド温度Tpd0 )に基づく制動性能指標BPIが所定の評価閾値EV_thに対して低下した場合、制動性能指標BPIが評価閾値EV_thに対して低下していない場合と比べて、目標加速度Gtgを低減させる補正を行い、当該補正後の目標加速度Gtgに基づいて、目標車間距離TDに対して実車間距離RDを近づけるように追従走行制御を行う構成を採用している。
なお、第1実施例に係る走行制御装置11において、制動性能指標BPIが評価閾値EV_thに対して低下した場合とは、例えば、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「標準値」と比べて「低位値」をとることに相当する。
また、制動性能指標BPIが評価閾値EV_thに対して低下していない場合とは、例えば、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「標準値」をとることに相当する。
【0098】
第1実施例に係る走行制御装置11では、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「低位値」をとるケースにおいて、距離差ΔDの値を共通にして比べた場合に、第1実施例に係る目標加速度Gtgは、図5Bに示すように、比較例に係る目標加速度Gtgと比べて低減した値をとる。そのため、第1実施例に係る走行制御装置11では、距離差ΔDを詰めるための加速動作が、比較例に係る走行制御装置11と比べて緩やかになる。
【0099】
従って、第1実施例に係る走行制御装置11によれば、比較例に係る走行制御装置11と比べて、ACC(追従走行制御)の作動中に、フェード現象が発生する可能性の度合いを低減させることができる。その結果、ACCの作動時間を可及的に延長すると共に、ACCの作動率向上に資することができる。
【0100】
(定速走行制御の作動中における第1実施例の変形例に係る走行制御装置11の動作)
また、第1実施例の変形例に係る走行制御装置11は、目標車速SVに基づき自車両OCを定速走行させる定速走行制御では、目標車速SVに対して実車速RVが低下した場合、目標車速SV及び実車速RVの差DVに基づいて目標加速度Gtgを算出し、目標加速度Gtgの算出に際し、定速走行制御の作動中に、情報取得部51で取得した制動状態情報(パッド温度Tpd0 )に基づく制動性能指標BPIが所定の評価閾値EV_thに対して低下した場合、制動性能指標BPIが評価閾値EV_thに対して低下していない場合と比べて、目標加速度Gtgを低減させる補正を行い、当該補正後の目標加速度Gtgに基づいて、目標車速SVに対して実車速RVを近づけるように定速走行制御を行う構成を採用している。
なお、第1実施例の変形例に係る走行制御装置11において、制動性能指標BPIが評価閾値EV_thに対して低下した場合とは、第1実施例に係る走行制御装置11と同様に、例えば、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「標準値」と比べて「低位値」をとることに相当する。
また、制動性能指標BPIが評価閾値EV_thに対して低下していない場合とは、第1実施例に係る走行制御装置11と同様に、例えば、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「標準値」をとることに相当する。
【0101】
第1実施例の変形例に係る走行制御装置11では、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「低位値」をとるケースにおいて、距離差ΔDの値を共通にして比べた場合に、第1実施例の変形例に係る目標加速度Gtgは、図5Bに示すように、比較例に係る目標加速度Gtgと比べて低減した値をとる。そのため、第1実施例の変形例に係る走行制御装置11では、第1実施例に係る走行制御装置11と同様に、距離差ΔDを詰めるための加速動作が、比較例に係る走行制御装置11と比べて緩やかになる。
【0102】
従って、第1実施例の変形例に係る走行制御装置11によれば、比較例に係る走行制御装置11と比べて、ACC(定速走行制御)の作動中に、フェード現象が発生する可能性の度合いを低減させることができる。その結果、ACCの作動時間を可及的に延長すると共に、ACCの作動率向上に資することができる。
【0103】
〔ACC作動中における第2実施例に係る走行制御装置11の動作〕
次に、ACC作動中における第2実施例に係る走行制御装置11の動作について、図6A図6Bを参照して説明する。図6A図6Bは、第2実施例に係る走行制御装置11の動作説明に供する図である。
【0104】
図6A図6Bに示す第2実施例に係る走行制御装置11の動作と、図4A図4Bに示す比較例に係る走行制御装置11の動作とは、相互に共通する部分が多く存在する。
そこで、前記両者の相違点に注目して説明することで、ACC作動中における第2実施例に係る走行制御装置11の動作説明に代えることとする。
【0105】
図4Aに示す比較例では、平坦路FRDを走行中の先行車両LCに後続して、ACC作動中の自車両OCが先行車両LCを追従走行するシーンが描かれている。これに対し、図6Aに示す第2実施例では、降坂路LRDを走行中の先行車両LCに後続して、ACC作動中の自車両OCが先行車両LCを追従走行するシーンが描かれている。
要するに、自車両OCの走行路について、比較例では平坦路FRDが採用されているのに対し、第2実施例では降坂路LRDが採用されている点が、比較例とは相違している。
【0106】
また、図4Bに示す第1象限領域において、目標加速度Gtgの変化特性は、(x=0~標準距離差ΔD0)の領域では右肩上がりで線形に伸びる特性を示す一方、(x=標準距離差ΔD0~)の領域では一定の値G0_ΔD0をとる特性を示す。
これに対し、図6Bに示す特性線図のうち第1象限領域において、目標加速度Gtgの変化特性は、(x=0~第1距離差ΔD1)の第1領域では右肩上がりで線形に伸びる特性を示し、(x=第1距離差ΔD1~第2距離差ΔD2)の第2領域でも右肩上がりで線形に伸びる特性を示し、(x=第2距離差ΔD2~)の第3領域でも右肩上がりで線形に伸びる特性を示す。
なお、図6Bに示すように、距離差ΔDが(x=第1距離差ΔD1)の値をとる際の目標加速度Gtgは(G2_ΔD1)の値をとり、距離差ΔDが(x=第2距離差ΔD2)の値をとる際の目標加速度Gtgは(G2_ΔD2;ただし、G2_ΔD1<G2_ΔD2<G0_ΔD0)の値をとる。
【0107】
ここで、第2実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性について、特筆すべき点が3点ある。
第1点目は、図6Bに示すように、第2実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性は、距離差ΔDの値を共通にして比べた場合に、比較例に係る目標加速度Gtgと比べて低減した値をとる点である。
第2点目は、図5B図6Bに示すように、第2実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性は、距離差ΔDの値を共通にして比べた場合に、第1実施例(第1実施例の変形例を含む。以下、同様。)に係る目標加速度Gtgの変化特性(図5B参照)と比べて低減した値をとる点である。
第3点目は、図6Bに示すように、第2実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性において、第1領域の変化特性、第2領域の変化特性、第3領域の変化特性を比べると、目標加速度Gtgの低減度が昇順に緩やかになっている点である。換言すれば、第1領域の変化特性の傾き、第2領域の変化特性の傾き、第3領域の変化特性の傾きを比べると、傾きが昇順に大きくなっている。
【0108】
第2実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性に関する前記第1点目の特徴は、自車両OCの走行路が「降坂路LRD」であることに関連している。すなわち、自車両OCの走行路が「降坂路LRD」であるケースでは、自車両OCの走行路が「平坦路FRD」であるケースと比べて、制動負荷が大きいため、フェード現象が生じる可能性の度合いが高まる傾向がある。この傾向を放置すると、自車両OCに係る制動性能指標BPIが第1基準閾値EV_th1 に対して低下した値をとる結果として、ACCの作動が禁止されてしまう蓋然性が高い。
【0109】
そこで、第2実施例に係る走行制御装置11では、ACCの作動中に、フェード現象が発生する可能性の度合いを低減させる目的で、自車両OCの走行路が降坂路LRDである旨の走行路情報を情報取得部51で取得した場合、目標加速度Gtgの算出に際し、自車両OCの走行路が降坂路LRDではない(例えば、平坦路FRDである)場合と比べて、目標加速度Gtgを低減させる補正を行い、当該補正後の目標加速度Gtgに基づいて、目標車速SVに対して実車速RVを、又は、目標車間距離TDに対して実車間距離RDを、近づけるように走行制御を行う構成を採用している。
【0110】
第2実施例に係る走行制御装置11では、自車両OCの走行路が降坂路LRDである旨の走行路情報を情報取得部51で取得した場合、目標加速度Gtgの算出に際し、自車両OCの走行路が降坂路LRDではない(例えば、平坦路FRDである)場合と比べて、目標加速度Gtgを低減させる。そのため、第2実施例に係る走行制御装置11では、距離差ΔDを詰めるための加速動作が、比較例に係る走行制御装置11と比べて緩やかになる。
【0111】
従って、第2実施例に係る走行制御装置11によれば、比較例に係る走行制御装置11と比べて、ACCの作動中に、フェード現象が発生する可能性の度合いを低減させることができる。その結果、ACCの作動時間を可及的に延長すると共に、ACCの作動率向上に資することができる。
【0112】
また、第2実施例に係る走行制御装置11では、第2実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性(図6Bの実線で表す線図を参照)は、距離差ΔDの値を共通にして比べた場合に、図6Bに示すように、第1実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性(図6Bの一点鎖線で表す線図を参照)と比べて低減した値をとる。そのため、第2実施例に係る走行制御装置11では、距離差ΔDを詰めるための加速動作が、第1実施例に係る走行制御装置11と比べて緩やかになる。
【0113】
従って、第2実施例に係る走行制御装置11によれば、第1実施例に係る走行制御装置11と比べて、ACC(走行制御)の作動中に、フェード現象が発生する可能性の度合いを低減させることができる。その結果、ACCの作動時間を可及的に延長すると共に、ACCの作動率向上に資することができる。
【0114】
さらに、第2実施例に係る走行制御装置11では、第2実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性において、図6Bに示すように、第1領域の変化特性、第2領域の変化特性、第3領域の変化特性を比べると、目標加速度Gtgの低減度が昇順に緩やかになっている。そのため、第2実施例に係る走行制御装置11では、距離差ΔDが大きくなるにつれて、距離差ΔDを詰めるための加速動作が徐々に急になる。
【0115】
従って、第2実施例に係る走行制御装置11によれば、距離差ΔDが大きくなるにつれて、距離差ΔDを詰めるための加速動作が徐々に急になるため、距離差ΔDの詰めを効率よく行うことができる。
【0116】
〔ACC作動中における第3実施例に係る走行制御装置11の動作〕
次に、ACC作動中における第3実施例に係る走行制御装置11の動作について、図7A図7Bを参照して説明する。図7A図7Bは、第3実施例に係る走行制御装置11の動作説明に供する図である。
【0117】
図7A図7Bに示す第3実施例に係る走行制御装置11は、第1実施例に係る走行制御装置(図5A図5B参照)11と、第2実施例に係る走行制御装置(図6A図6B)11とを組み合わせたものである。そのため、第3実施例に係る走行制御装置11の動作は、第1,第2実施例に係る走行制御装置11の動作と、相互に共通する部分が多く存在する。
そこで、前記両者の一致点・相違点に注目して説明することで、ACC作動中における第3実施例に係る走行制御装置11の動作説明に代えることとする。
【0118】
図5Aに示す第1実施例では、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「低位値」(制動性能指標BPIのうち基準値と比べて低位な値)をとることが表記されている。これと同様に、図7Aに示す第3実施例でも、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「低位値」をとることが表記されている。
【0119】
また、図6Aに示す第2実施例では、自車両OCの走行路として降坂路LRDが採用されている。これと同様に、図7Aに示す第3実施例でも、自車両OCの走行路として降坂路LRDが採用されている。
【0120】
そして、図7Aに示す第3実施例では、図7Bに示す特性線図のうち第1象限領域において、第3実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性(図7Bの実線参照)は、距離差ΔDの値を共通にして比べた場合に、比較例(図7Bの点線参照)、第1実施例(図7Bの一点鎖線参照)、及び第2実施例(図7Bの二点鎖線参照)と比べて低減した値をとる点が、比較例、第1実施例、及び第2実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性と相違している。
【0121】
具体的には、図7Bに示す特性線図のうち第1象限領域において、第3実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性は、第4領域(x=0~第3距離差ΔD3)では一定の値(Gtg=0)をとる特性を示す一方、第5領域(x=第3距離差ΔD3~)では右肩上がりで線形に伸びる特性を示す。
【0122】
図7Bに示す特性線図のうち第1象限領域において、第3実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性が、比較例、第1実施例、及び第2実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性と比べて低減した値をとることは、第3実施例に係る走行制御装置11において、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「低位値」をとり、かつ、自車両OCの走行路が「降坂路LRD」であることに関連している。
【0123】
すなわち、第3実施例に係る走行制御装置11において、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「低位値」をとるとは、フェード現象が生じる可能性の度合いが、ACCによる適応巡航制御機能を十分に確保できないと見込まれる程度に高まっていることを意味する。このままでは、自車両OCに係る制動性能指標BPIが第1基準閾値EV_th1 に対して低下した値をとる結果として、ACCの作動禁止を招く蓋然性が高い。
【0124】
しかも、自車両OCの走行路が「降坂路LRD」であるケースでは、自車両OCの走行路が「平坦路FRD」であるケースと比べて、制動負荷が大きいため、フェード現象が生じる可能性の度合いが高まる傾向がある。この傾向を放置すると、自車両OCに係る制動性能指標BPIが第1基準閾値EV_th1 に対して低下した値をとる結果として、ACCの作動が禁止されてしまう蓋然性が高い。
【0125】
そこで、第3実施例に係る走行制御装置11では、ACCの作動中に、フェード現象が発生する可能性の度合いを低減させる目的で、第3実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性は、距離差ΔDの値を共通にして比べた場合に、比較例、第1実施例、及び第2実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性と比べて低減した値をとる構成を採用している。
【0126】
第1実施例に係る走行制御装置11では、距離差ΔDの値を共通にして比べた場合に、第3実施例に係る目標加速度Gtgは、図7Bに示すように、比較例、第1実施例、及び第2実施例に係る目標加速度Gtgと比べて低減した値をとる。そのため、第3実施例に係る走行制御装置11では、距離差ΔDを詰めるための加速動作が、比較例、第1実施例、及び第2実施例に係る走行制御装置11と比べて緩やかになる。
【0127】
従って、第3実施例に係る走行制御装置11によれば、比較例、第1実施例、及び第2実施例に係る走行制御装置11と比べて、ACC(走行制御)の作動中に、フェード現象が発生する可能性の度合いを一層低減させることができる。その結果、ACCの作動時間を可及的に延長すると共に、ACCの作動率向上に資する効果を高めることができる。
【0128】
〔係数スケールCSに基づく目標加速度Gtgの補正〕
次に、係数スケールCSに基づく目標加速度Gtgの補正について、前記実施例1~3、及び後記の実施例4に適用した例をあげて、図8A図8Cを参照して説明する。
図8Aは、第1~第4実施例に適用される係数スケールCSに基づく目標加速度Gtgの補正要領の説明に供する図である。図8Bは、第1実施例に適用される係数スケールCSに基づく目標加速度Gtgの補正要領の説明に供する図である。図8Cは、第2実施例に適用される係数スケールCSに基づく目標加速度Gtgの補正要領の説明に供する図である。
【0129】
〔第1実施例に適用される係数スケールCSに基づく目標加速度Gtgの補正〕
はじめに、第1実施例に係る走行制御装置11に適用される係数スケールCSに基づく目標加速度Gtgの補正について、図8A図8Bを参照して説明する。
【0130】
第1実施例に係る走行制御装置11では、自車両OCに係る制動性能指標BPIが「低位値」をとるケースにおいて、ACCの作動中に、フェード現象が発生する可能性の度合いを低減させる目的で、第1実施例に係る目標加速度Gtgの変化特性は、図5Bに示すように、距離差ΔDの値を共通にして比べた場合に、比較例に係る目標加速度Gtgの変化特性と比べて低減した値をとる構成を採用している。
【0131】
第1実施例に係る走行制御装置11に適用される係数スケールCSの種別は、図8A図8Bに示すように、制動性能指標係数である。制動性能指標係数とは、自車両OCに係る制動性能指標BPIの高低に応じて目標加速度Gtgの補正を適切に行うために設定される補正係数である。図8A図8Bに示す例では、制動性能指標係数値としては、「基準値」に(1)が、「第1低位値」に(L2)が、「第2低位値」に(L4:L4<L2)が、前記の順番で徐々に値が小さくなるように、それぞれの係数値が設定されている。
【0132】
第1実施例に係る走行制御装置11に適用される係数スケール(制動性能指標係数)CSに基づく目標加速度Gtgの補正要領は、次の通りである。
すなわち、まず、距離差ΔDの変化に応じた目標加速度Gtgの変化特性線図を参照する等の既存の手法を用いて、ベースとなる目標加速度Gtgの値を算出する。
こうして算出したベースとなる目標加速度Gtgの値に、パッド温度Tpd0 に基づく制動性能指標係数値、例えば、「第2低位値」(L4)を乗算し、その乗算結果を得る(Gtg*L4)。こうした手順を経て、制動性能指標係数の観点で補正後の目標加速度Gtgの値を得る。
【0133】
〔第2実施例に適用される係数スケールCSに基づく目標加速度Gtgの補正〕
次に、第2実施例に係る走行制御装置11に適用される係数スケールCSに基づく目標加速度Gtgの補正について、図8A図8Cを参照して説明する。
【0134】
第2実施例に係る走行制御装置11では、自車両OCの走行路が降坂路LRDであるケースにおいて、ACCの作動中に、フェード現象が発生する可能性の度合いを低減させる目的で、自車両OCの走行路が降坂路LRDである旨の走行路情報を情報取得部51で取得した場合、目標加速度Gtgの算出に際し、自車両OCの走行路が降坂路LRDではない(例えば、平坦路FRDである)場合と比べて、目標加速度Gtgを低減させる補正を行い、当該補正後の目標加速度Gtgに基づいて、目標車速に対して実車速を、又は、目標車間距離TDに対して実車間距離RDを、近づけるように走行制御を行う構成を採用している。
【0135】
第2実施例に係る走行制御装置11に適用される係数スケールCSの種別は、図8A図8Cに示すように、降坂路勾配係数である。降坂路勾配係数とは、自車両OCのの走行路が降坂路LRDであるケースにおいて、その勾配(傾斜角度)の大小に応じて目標加速度Gtgの補正を適切に行うために設定される補正係数である。図8A図8Cに示す例では、降坂路勾配係数値としては、「勾配小」に(L1)が、「勾配中」に(L3)が、「勾配大」に(L5)が、前記の順番で徐々に値が小さくなるように(L1>L3>L5)、それぞれの係数値が設定されている。
【0136】
第2実施例に係る走行制御装置11に適用される係数スケール(降坂路勾配係数)CSに基づく目標加速度Gtgの補正要領は、次の通りである。
すなわち、まず、距離差ΔDの変化に応じた目標加速度Gtgの変化特性線図を参照する等の既存の手法を用いて、ベースとなる目標加速度Gtgの値を算出する。
こうして算出したベースとなる目標加速度Gtgの値に、傾斜角センサ32で取得した降坂路勾配係数値、例えば、「勾配中」(L3)を乗算し、その乗算結果(Gtg*L3)を得る。こうした手順を経て、降坂路勾配係数の観点で補正後の目標加速度Gtgの値を得る。
【0137】
ここで、第3実施例に適用される係数スケールCSに基づく目標加速度Gtgの補正については、第1実施例に適用される係数スケールCSに基づく目標加速度Gtgの補正、及び第2実施例に適用される係数スケールCSに基づく目標加速度Gtgの補正を組み合わせることで適宜実現可能である。そのため、第3実施例に適用される係数スケールCSに基づく目標加速度Gtgの補正については、その説明を割愛する。
【0138】
〔ACC作動中における第4実施例に係る走行制御装置11の動作〕
次に、ACC作動中における第4実施例に係る走行制御装置11の動作について、図8Aを参照して説明する。
【0139】
第4実施例に係る走行制御装置11は、自車両OCに装備された複数の走行モードのうち、一の走行モードを選択的に操作入力(設定)する際に操作される走行モードスイッチ(走行モード設定部)36をさらに備える。第4実施例に係る走行制御装置11は、走行モードスイッチ(走行モード設定部)36で設定された走行モードの種別に基づいて、前記ベースとなる目標加速度Gtgの値を調整する補正を行う。
【0140】
走行モードスイッチ36で設定される複数の走行モードとしては、例えば、コンフォート/エコ(Comfort/Eco)モード、ノーマル(Normal)モード、スポーツ(Spo)モード、及び、スポーツプラス(Spo+)モード、が挙げられる。
【0141】
ノーマル(Normal)モードは、複数の走行モードのうち基準となる走行モードである。コンフォート/エコ(Comfort/Eco)モードは、ノーマル(Normal)モードと比べて駆動力特性を抑制した、又は燃費特性を重視した走行モードである。スポーツ(Spo)モード、スポーツプラス(Sports +)モードは、ノーマル(Normal)モードと比べて駆動力特性を向上させた走行モードである。スポーツプラス(Sports +)モードは、スポーツ(Spo)モードと比べてさらに進んだ駆動力特性を呈する。
【0142】
これら4つの走行モードのそれぞれには、図8Aに示すように、ノーマル(Normal)モードに基準係数(1)を割り当てる走行モード係数値が設定されている。具体的には、コンフォート/エコ(Comfort/Eco)モードに(L0:L0<1)が、ノーマル(Normal)モードに(1)が、スポーツ(Spo)モードに(H0:H0>1)が、スポーツプラス(Spo+)モードに(H1:H1>H0)が、前記の順番で徐々に値が大きくなるように、4つの走行モードのそれぞれに相応しい大きさの走行モード係数値が設定されている。
【0143】
第4実施例に係る走行制御装置11に適用される係数スケール(走行モード係数)CSに基づく目標加速度Gtgの補正要領は、次の通りである。
すなわち、まず、距離差ΔDの変化に応じた目標加速度Gtgの変化特性線図を参照する等の既存の手法を用いて、ベースとなる目標加速度Gtgの値を算出する。
こうして算出したベースとなる目標加速度Gtgの値に、走行モードスイッチ(走行モード設定部)36で設定された走行モード係数値、例えば、スポーツ(Spo)モード係数値(H0)を乗算し、その乗算結果(Gtg*H0)を得る。こうした手順を経て、走行モード係数の観点で補正後の目標加速度Gtgの値を得る。
【0144】
〔ACC作動中における第1~第4実施例の組み合わせに係る走行制御装置11の動作〕
次に、ACC作動中における第1~第4実施例の組み合わせに係る走行制御装置11の動作について、図8Aを参照して説明する。
【0145】
第1~第4実施例の組み合わせに係る走行制御装置11において、仮に、パッド温度Tpd0 に基づく制動性能指標BPIの値が「第2低位値」(L4:ただし、1>L1>L2>L3>L4>L5)であり、傾斜角センサ32で取得した降坂路勾配の値が「勾配中」(L3)であり、走行モードスイッチ(走行モード設定部)36で設定された走行モードの値がスポーツ(Spo)モード(H0)であるとする。
【0146】
かかるケースでの、係数スケールCSに基づく目標加速度Gtgの補正要領は、次の通りである。
すなわち、まず、距離差ΔDの変化に応じた目標加速度Gtgの変化特性線図を参照する等の既存の手法を用いて、ベースとなる目標加速度Gtgの値を算出する。
こうして算出したベースとなる目標加速度Gtgの値に、パッド温度Tpd0 に基づく制動性能指標BPIの値「第2低位値」(L4)、傾斜角センサ32で取得した降坂路勾配の値「勾配中」(L3)、走行モードスイッチ(走行モード設定部)36で設定された走行モードの値:スポーツ(Spo)モード(H0)を、それぞれ乗算し、その乗算結果(Gtg*L4*L3*H0)を得る。こうした手順を経て、制動性能指標係数、降坂路勾配係数、及び、走行モード係数の観点で補正後の目標加速度Gtgの値(前記乗算結果)を得る。
【0147】
〔その他の実施形態〕
以上説明した複数の実施形態は、本発明の具現化の例を示したものである。したがって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならない。本発明はその要旨又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形態で実施することができるからである。
【0148】
本発明の第2実施例に係る走行制御装置11の説明において、自車両OCの走行路が平坦路FRD又は登坂路であるケースとして、自車両OCの走行路が平坦路FRDであるケースを例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。自車両OCの走行路が平坦路FRD又は登坂路であるケースとして、自車両OCが登坂路を走行中のケースも包含される。
【0149】
また、本発明の実施形態に係る走行制御装置11の説明において、ACC-ECU(走行制御部)41は、予め設定された車速Vに基づき自車両OCを定速走行させる定速走行制御、及び自車両OCの前方を走行する他車両に対し所定の車間距離を保って追従走行させる追従走行制御の少なくとも一方の走行制御を行う機能を有する。
すなわち、本発明に係る走行制御装置は、定速走行制御のみを行うケース、追従走行制御のみを行うケース、並びに、定速走行制御及び追従走行制御を組み合わせて行うケースの全てを、技術的範囲の射程に捉えている。
【0150】
また、本発明の実施形態に係る走行制御装置11の説明において、駆動手段として内燃機関エンジン75を搭載した車両の例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。本発明は、駆動手段として圧縮自着火機関(ディーゼルエンジン)を搭載した車両、HEV(Hybrid Electric Vehicle)等のハイブリッド車両を含む電気自動車EV(Electric Vehicle)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0151】
11 走行制御装置
41 ACC-ECU(走行制御部)
43 BRK-ECU(制動装置及び走行制御部の一部を構成する)
51 情報取得部
OC 自車両
Gtg 目標加速度
FRD 平坦路
LRD 降坂路
TD 目標車間距離
RD 実車間距離
ΔD 距離差
BPI 制動性能指標
EV_th1 第1基準閾値
EV_th2 第2基準閾値
EV_th 評価閾値
Tpd パッド温度(制動状態情報)
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C