(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】電極、加速器カラム及びそれらを含むイオン注入装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/317 20060101AFI20221214BHJP
H05H 5/03 20060101ALI20221214BHJP
H05H 5/06 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H01J37/317 Z
H05H5/03
H05H5/06
(21)【出願番号】P 2019503740
(86)(22)【出願日】2017-07-21
(86)【国際出願番号】 US2017043277
(87)【国際公開番号】W WO2018026543
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-04-16
(32)【優先日】2016-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239188
【氏名又は名称】ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ルポリ
(72)【発明者】
【氏名】シェリ エイ ダージン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル マックギリカディー
(72)【発明者】
【氏名】ビクター ジェイ セリオールト
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ベッカー
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-008097(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0064186(US,A1)
【文献】特開平10-270196(JP,A)
【文献】特開平04-294043(JP,A)
【文献】特開2003-178688(JP,A)
【文献】中国実用新案第205726638(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 5/00
H01J 37/317
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを操作するための電極であって、該電極は、
イオンビームを通すようにする、該イオンビームのアパーチャを有する、挿入されたものであって、前記電極の中心部分に配置され、第1の導電材料を備える、挿入されたものと、
該挿入されたものを包囲して配置され、第2の導電材料を備える、フレームと、
該フレームを包囲して配置され、第3の導電材料を備える、外側部分と、を備え、
前記挿入されたものは、前記フレームからリバーシブルに取り付けることができ、前記フレームは、前記外側部分からリバーシブルに取り外すことができ、
前記第1の導電材料は前記第2の導電材料と異なり、前記第2の導電材料は前記第3の導電材料と異な
り、
前記挿入されたものは、黒鉛又はタンタルを含み、
前記フレームは、高熱伝導材料を含み、
前記外側部分は、チタンを含み、前記挿入されたものは、チタンを含まない、電極。
【請求項2】
前記フレームは、前記外側部分から、回転自在に、取り付けることができ、取り外すことができる、請求項1記載の電極。
【請求項3】
前記フレームはアルミニウムを含む、請求項1記載の電極。
【請求項4】
前記挿入されたものは、2.5インチから4インチの外径を備え、前記イオンビームのアパーチャは、1インチから3.2インチの直径を備える、請求項1記載の電極。
【請求項5】
イオンビームを加速するための加速器カラムであって、該加速器カラムは、
第1の複数の電極を備える電極アセンブリを備え、該第1の複数の電極は、互いに電気的に絶縁され、
前記電極アセンブリの所定の電極は、
前記イオンビームを通すようにする、前記イオンビームのアパーチャを有し、前記電極の中心部分に配置される、挿入されたものと、
該挿入されたものを包囲して配置される、フレームと、
該フレームを包囲して配置される、外側部分と、を備え、
前記挿入されたものを前記フレームからリバーシブルに取り付けることができ、前記フレームを前記外側部分からリバーシブルに取り外すことができ、前記挿入されたもの、前記フレーム及び前記外側部分は導電性であり、
前記挿入されたものは第1の材料を備え、前記フレームは第2の材料を備え、前記外側部分は第3の材料を備え、
前記第1の材料は前記第2の材料と異なり、前記第2の材料は前記第3の材料と異な
り、
前記挿入されたものは、黒鉛又はタンタルを含み、
前記フレームは、高熱伝導材料を含み、
前記外側部分は、チタンを含み、前記挿入されたものは、チタンを含まない、加速器カラム。
【請求項6】
前記加速器カラムは、可変のイオンビームのアパーチャサイズを備え、前記第1の複数の電極の第1の電極の第1のイオンビームのアパーチャは第1の直径を有し、前記第1の複数の電極の第2の電極の第2のイオンビームのアパーチャは第2の直径を有し、前記第2の直径は前記第1の直径と異なる、請求項
5記載の加速器カラム。
【請求項7】
前記電極アセンブリは、第1の電極アセンブリを備え、前記加速器カラムは、更に第2の電極アセンブリを備え、該第2の電極アセンブリは前記第1の電極アセンブリに隣接して配置され、前記第2の電極アセンブリは少なくとも1つの追加の電極を備え、該少なくとも1つの追加の電極は、単一構造を有する導電材料を備える、請求項
5記載の加速器カラム。
【請求項8】
イオン注入機であって、該イオン注入機は、
イオンビームを生成するためのイオン源と、
前記イオンビームを加速するための加速器カラムであって、前記イオン源の下流に配置される加速器カラムと、を備え、
該加速器カラムは、第1の加速器カラムを備え、
該第1の加速器カラムは、
第1の複数の電極を備える第1の電極アセンブリを備え、該第1の複数の電極は、互いに電気的に絶縁され、
前記第1の電極アセンブリの所定の電極は、
前記イオンビームを通すようにする、前記イオンビームのアパーチャを有し、前記電極の中心部分に配置される、挿入されたものと、
該挿入されたものを包囲して配置される、フレームと、
該フレームを包囲して配置される、外側部分と、を備え、
前記挿入されたものを前記フレームからリバーシブルに取り外すことができ、前記フレームを前記外側部分からリバーシブルに取り付けることができ、前記挿入されたもの、前記フレーム及び前記外側部分は導電性であり、
前記第1の加速器カラムは,さらに,第2の電極アセンブリを備え、該第2の電極アセンブリは前記第1の電極アセンブリに隣接して配置され、前記第2の電極アセンブリは少なくとも1つの追加の電極を備え、該少なくとも1つの追加の電極は単一構造を有する電導材料を備
え、
前記挿入されたものは、黒鉛又はタンタルを含み、
前記フレームは、高熱伝導材料を含み、
前記外側部分は、チタンを含み、前記挿入されたものは、チタンを含まない、イオン注入機。
【請求項9】
前記イオン注入機は、さらに、
前記第1の加速器カラムに隣接して配置される電荷交換チャンバと、
該電荷交換チャンバに隣接して、前記第1の加速器カラムの下流に配置される第2の加速器カラムと、を備え、該第2の加速器カラムは、
第2の複数の電極を備える追加の電極アセンブリを備え、該第2の複数の電極は、互いに電気的に絶縁され、
前記追加の電極アセンブリの所定の電極は、
イオンビームを通すようにする、前記イオンビームのアパーチャを有する、挿入されたものと、
該挿入されたものを包囲して配置される、フレームと、
該フレームを包囲して配置される、外側部分と、を備え、
前記挿入されたものを前記フレームからリバーシブルに取り外すことができ、前記フレームを前記外側部分からリバーシブルに取り付けることができ、前記挿入されたもの、前記フレーム及び前記外側部分は導電性である、請求項
8記載のイオン注入機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ビームラインイオン注入機に関し、特に、イオンビームを加速するためのイオン注入機の電極に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、ビームラインイオン注入機は、イオンビームをイオン源から基板へ向けるために、多数のコンポーネントを使用する。基板を適切に処理するために、イオンビームは、目標のエネルギーに加速することができ、イオンビームの一組の目標の特性をつくるために、様々なビームラインコンポーネントにより操作された軌跡及び形状を有することができる。中エネルギー及び高エネルギーのイオン注入機を含む多くのタイプのイオン注入機において、目標のビームエネルギーを生成するため、イオンビームを加速し又は減速するために、加速器カラムを使用することができる。所定の加速器カラムは、イオンビームを加速するために、電気直列の方法で配置された多くの電極を含むことができる。例えば、加速器カラムは、イオンビームを通すためのアパーチャを有し、一連の異なる電位を異なる電極に印加することにより、ビームエネルギーを増大するに配置された多数の電極を含むことができる。このように、イオンビームは、電極に印加される異なる電位により、加速される。いくつかの例において、異なる電極に印加される電位は、加速器カラムの最初の電極から加速器カラムの最後の電極へ増大することができ、イオンビームは、比較的より低いエネルギーを有して、加速器カラムに入り、比較的より高いエネルギーを有して、加速器カラムから出る。
【0003】
ビームラインイオン注入機において、ドーパント種などのターゲットのイオン種は、ちょうど、基板に注入すべきであることがよくあるため、イオンビームが、イオン源と基板との間のイオンビームを操作するために用いるコンポーネントと最小の接触を有することを、確実にすることは有用であり得る。加速器カラムにおいて用いる電極の場合において、イオンビームの少なくともいくつかのイオンは、不注意に電極を打ち得て、電極からの材料のスパッタリングを引き起こす。このスパッタリングにより、電極から生成する汚染種をもたらし得て、ターゲットのイオン種に加えて、汚染種は、イオン化することができ、基板に通すことができる。例えば、加速器カラムの既知の電極は、チタン又は他の導電材料を用いて構成することができる。チタンは、機械加工できる、比較的、高融点の金属(融点1668℃)をもたらし、低い熱膨張係数を有し、チタンを、通常、電極に適しているようにさせる。イオンビームをチタンの電極を含む加速器カラムに通すとき、チタンは不注意にイオンビームよりスパッタされ得て、シリコンウェーハなどの基板にチタンの汚染をもたらす。この汚染は、基板から作られる半導体装置の性能に問題となり得る。加速器カラムの電極を、半導体の特性へのダメージがより少ない別の材料から構成することができるが、別の材料は、より高い熱膨張係数、又は、より低い弾性係数などのより好ましくない特性を有し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの及び他の考慮すべき事柄に対して、本発明を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施態様において、イオンビームを操作するための電極は、イオンビームを通すようにする、該イオンビームのアパーチャを有する、挿入されたものであって、第1の導電材料を備える、挿入されたものと、該挿入されたものを包囲して配置され、第2の導電材料を備える、フレームと、該フレームを包囲して配置され、第3の導電材料を備える、外側部分と、を含んでもよく、前記挿入されたものは、前記フレームからリバーシブルに取り付けることができ、前記フレームは、前記外側部分からリバーシブルに取り外すことができる。
【0006】
第2の実施態様において、イオンビームを加速するための加速器カラムは、第1の複数の電極を備える電極アセンブリを備え、該第1の複数の電極は、互いに電気的に絶縁され、前記電極アセンブリの所定の電極は、前記イオンビームを通すようにする、前記イオンビームのアパーチャを有する、挿入されたものと、該挿入されたものを包囲して配置される、フレームと、該フレームを包囲して配置される、外側部分と、を含んでもよく、前記挿入されたものを前記フレームからリバーシブルに取り付けることができ、前記フレームを前記外側部分からリバーシブルに取り外すことができ、前記挿入されたもの、前記フレーム及び前記外側部分は導電性である。
【0007】
さらなる実施態様において、イオン注入機は、イオンビームを生成するためのイオン源と、前記イオンビームを加速するための加速器カラムであって、前記イオン源の下流に配置される加速器カラムと、を含んでもよく、該加速器カラムは、第1の複数の電極を備える第1の電極アセンブリを備え、該第1の複数の電極は、互いに電気的に絶縁され、前記第1の電極アセンブリの所定の電極は、前記イオンビームを通すようにする、前記イオンビームのアパーチャを有する、挿入されたものと、該挿入されたものを包囲して配置される、フレームと、該フレームを包囲して配置される、外側部分と、を備え、前記挿入されたものを前記フレームからリバーシブルに取り外すことができ、前記フレームを前記外側からリバーシブルに取り付けることができ、前記挿入されたもの、前記フレーム及び前記外側である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態による、電極の端面図を例示する。
【
図2】本発明のさらなる実施形態による、電極の分解斜視図を例示する。
【
図3】本発明の実施形態による、配置された一組の電極を組み込む例示的加速器カラムを例示する。
【
図4】本発明の実施形態による、配置された電極を組み込む例示的タンデム加速器を示す。
【
図5】本発明の様々な実施形態による、例示的イオン注入装置を示す。
【
図6】本発明のさらなる実施形態による、加速器カラムの側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面は必ずしも縮尺通りではない。図面は単なる説明目的であって、本発明の特定パラメータを表現することは意図しない。図面は、本発明の例示的実施形態を描写することを意図し、またしたがって、発明範囲を限定するものとして見なされない。図面中、同様の参照符号付けは同類要素を表す。
【0010】
さらに、幾つかの図面における若干の要素は、説明を分かり易くするため、省略し、また縮尺通りには描いていない場合がある。断面図は、「スライス」又は「近視眼的」な断面図の形式であり、説明を分かり易くするため、「真の」断面図では可視である若干の背景ラインを省略する場合がある。さらに、説明を分かり易くするため、幾つかの参照符号は若干の図面で省略する場合がある。
【0011】
本実施形態は、いくつかの実施形態を示す添付図面を参照して、以後、もっと十分に説明する。本発明の主題は、多くの異なる形式で具現化することができ、本明細書で述べる実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。これらの実施形態は、本発明が徹底的に完全であり、本主題の範囲を当業者に十分に伝えるように、提供される。図面において、初めから終わりまで、同様の番号は同様の要素を指す。
【0012】
本実施形態は、ビームライン注入機などのイオンビーム処理装置に関連する。様々な実施形態は、ビームラインイオン注入機の新規な加速器カラムを含む、イオンビームを操作するための新規な改良した電極を提供する。本実施形態は、例えば、イオンエネルギーは、約50keVより上、及び、最大で10MeVに及ぶことができるビームラインイオン注入機において、有用であり得る。実施形態は本文脈に限定されない。
図1は、本発明の実施形態による、電極の端面図を例示し、一方、
図2は、本発明のさらなる実施形態による、電極の分解斜視図を例示する。
図3は、本発明の実施形態による、配置された一組の電極を組み込む例示的加速器カラムを例示し、一方、
図4は、本発明の実施形態による、配置された電極を組み込む例示的タンデム加速器を示す。
【0013】
図5は、本発明の様々な実施形態による、例示的イオン注入装置を示す。簡単に、
図5を参照するに、ビームラインイオン注入機として配置されたイオン注入機500が示される。異なる実施形態のイオン注入機500は、50kVから500kVの電圧範囲にわたって動作するように設計された中エネルギーのイオン注入機とすることができ、又は、300kVから10MeVの電圧範囲にわたって動作するように設計された高エネルギーのイオン注入機とすることができる。実施形態は本文脈に限定されない。イオン注入機500は、イオン源502、質量分析器504、静電レンズ506、補正磁石510、及び、基板514を収容する基板ステージ512などの既知のコンポーネントを含むことができる。イオン注入機500は、当業者により正しく評価されるような、追加のコンポーネント又はより少ないコンポーネントを含むことができる。イオン注入機500は、異なる実施形態において、1つの加速器カラム、又は、複数の加速器カラムを含むことができ、加速器カラムは、本実施形態により配置された少なくとも1つの新規な電極を含む。
図5に示す本実施形態のイオン注入機500は、タンデム加速器400を含み、タンデム加速器400の詳細は、
図4に対して、論じる。
【0014】
さて、
図1を参照するに、本発明の実施形態による電極100の詳細を示す。電極100は、ビームラインイオン注入機のイオンビームを操作するために、用いることができる。特に、イオンビームをターゲットの電位(電圧)に加速するために配置された、複数の電極を有する加速カラムの中で、電極100を用いることができる。電極100は、挿入されたもの102、挿入されたもの102を包囲して配置されたフレーム104、及び、フレーム104を包囲して配置された外側部分106を含むことができる。様々な実施形態により、挿入されたもの102は、フレーム104からリバーシブルに取り付けることができ、フレーム104は、外側部分106からリバーシブルに取り付けることができる。本明細書で用いる用語「リバーシブルに取り付ける」は、コンポーネントが、リバーシブルな方法で、別のコンポーネントから、取り付けられ、及び、取り外されるように、設計されていることを意味する。様々な実施形態において、挿入されたものは第1の導電材料から作ることができ、フレーム104は第2の導電材料から作ることができ、及び、外側部分106は第3の導電材料から作ることができる。様々な実施形態において、挿入されたもの102の第1の導電材料はフレーム104の第2の導電材料と異なることができ、一方、フレーム104の第2の導電材料は、挿入されたもの102の第1の導電材料と異なることができるだけでなく、外側部分106の第3の導電材料とも異なることができる。いくつかの実施形態において、挿入されたもの102、フレーム104、及び、外側部分106の材料は、同じ材料にすることができる。他の実施形態において、挿入されたもの102及びフレーム104などの、コンポーネントの内の2つの材料は同じ材料にすることができ、一方、外側部分106などの第3のコンポーネントの材料は、フレームの材料及び挿入されたものの材料と異なるようにする。実施形態は本文脈に限定されない。様々な実施形態において、フレーム104の材料及び外側部分106の材料だけでなく、挿入されたものの材料102も、ターゲットのアプリケーションにより、変えることができる。電極100は、それに応じて、電極100が、異なるコンポーネントに対して、材料の異なる組合せを含むことができる、モジュール式の構造を提供し、材料は所定のアプリケーションに合うように調整される。
【0015】
様々な実施形態において、外側部分106は、電極が単一部分のチタンから成ることができる既知の電極に類似の、チタン又はチタン合金から作ることができる。モジュール式の挿入されたもの及びフレームを、イオンビームを通す所に近い位置に備えることにより、注入プロセス中の汚染を避け、又は、低下させるために、電極100は、挿入されたもの102用の材料を、特に、選択することを可能にする。様々な実施形態において、例えば、挿入されたもの102の材料、及び、フレーム104の材料は、チタン以外の材料から作ることができる。チタンは、電極100により実施される注入プロセスにおける汚染を代表し得るが、これにより、電極100を通るイオンビームによるチタン材料のスパッタリングを防ぐことができる。
【0016】
さらに
図1に示すように、挿入されたもの102は、イオンビームのアパーチャ112を含むことができ、イオンビームを、例えば、図示のデカルト座標のZ軸に沿って、アパーチャに通すようにする。例示的実施形態において、挿入されたもの102は、2.5インチから4インチの外径を備えることができ、一方、イオンビームのアパーチャ112は、1インチから3.2インチの直径を備える。これらの寸法は単に例示であり、実施形態は本文脈に限定されない。
【0017】
例として、異なる実施形態において、挿入されたもの102は、黒鉛、アルミニウム、タングステン、モリブデン、又は、タンタルを含むことができる。実施形態は本文脈に限定されない。高エネルギーイオンにより引き起こされる、特定の材料に衝突するときの放射を避けるだけでなく、チタンから成る従来の電極の使用により引き起こされる、基板の材料汚染を避けるために、これらの材料は、イオン注入という観点から、有用であり得る。例えば、陽子ビームを生成するために電極100を用いる実施形態において、陽子は、MeVの範囲のエネルギーで特定の材料に衝突するときに、ガンマ線放射を生成する傾向があり得る。例として、チタンの約5%の同位体として天然に存在する49Tiは、1.5MeVより大きい陽子エネルギーで衝突するときに、中性子を創生する。別の例として、70keVより大きい高エネルギー陽子により衝突された12Cは、ガンマ線放射を創生し、ガンマ線放射の生成のピークは、420keV及び5MeVで生じる。望ましくない放射の生成をさけるために、生成すべきイオンエネルギーに従って、イオン注入アプリケーションにより、挿入されたものの組成を選択することができることを、当業者は、正しく評価することができる。
【0018】
上述のとおり、様々な実施形態において、フレーム104は、挿入されたもの102の材料と異なる材料を含むことができる。例えば、挿入されたもの102の材料は、基板の材料汚染を制限するように選択することができ、さらに、ガンマ線などの高エネルギー電磁放射の生成を制限するように設計することができ、一方、フレーム104の材料は、他の考慮すべき事柄により選択することができる。既知のイオン注入機に従って、イオンビームアパーチャ112は、イオンビームアパーチャ112を通るイオンビームの呼び直径が、イオンビームアパーチャ112の直径より小さいように、イオンビームを入れるサイズにすることができる。したがって、イオンビームがイオンビームアパーチャ112内の中心にあるとき、イオンビームにより不注意でスパッタされる電極100からのほとんどの材料は、挿入されたもの102がイオンビームに最も近くに配置されるため、通常、挿入されたもの102からの材料であり得る。一例において、例示の目的のため、挿入されたもの102の外径は4インチにすることができ、一方、イオンビームアパーチャ112の最大内径は2.5インチにすることができる。イオンビームアパーチャ112を通過するイオンビームの呼び直径が2.5インチより小さいという仮定の下で、フレーム104の内径はイオンビームアパーチャ112の外径(4インチ)と同じため、イオンビームは、フレーム104からのどの材料にも突き当る可能性が低くなり得る。したがって、フレーム104は、イオンビームからのスパッタリングによる汚染が最優先の検討課題ではない一群の材料から選択することができる。例えば、いくつかの実施形態において、フレーム104は、高熱伝導材料を含むことができる。高熱伝導材料は、50W/m-K以上の熱伝導率を有することができる。例えば、アルミニウムをフレーム104として用いることができ、アルミニウムは、熱伝導率が20W/m-Kの範囲の中にあるチタンとは対照的に、約200W/m-Kの(室温)熱伝導率を有することができる。他の実施形態において、アルミニウムとは異なる他の材料を、フレーム104用の材料として、選択することができる。フレーム104用に高い熱伝導材料を提供することにより、特に、熱伝導率が熱輸送において大きな役割を演じる温度範囲を、加速器カラムが生成する状況において、加速器カラムの1つの又は一連の電極で発生する熱を、もっと効率的に放散することができる。いくつかの実施形態において、挿入されたもの102用の材料は、フレーム104用の材料と同様に、放射により熱を放散するための、挿入されたもの102又はフレーム104の機能により、選択することができる。例えば、加速器カラムは、電極コンポーネントの温度が最大で2800Kまで達し得る条件下で動作することができる。そのような高温下で、主要な熱輸送は放射により行うことができる。例として、黒鉛は、2800Kにおいて35W/cm2の速度で熱を放射することができ、電極から熱を放散するために都合の良い、挿入されたものの材料及びフレームの材料を提供し、挿入されたものは、高真空の中にあり、電極の他の部分とわずかな小領域の接触を有し、接触の小領域は熱伝導が起こり得る位置を提供する、条件下で、特に重要な材料である。
【0019】
様々な追加の実施形態において、挿入されたもの又はフレーム用の材料の選択は、追加の考慮すべき事柄により導くことができる。黒鉛は、通常、機械加工性が良く、半導体材料の低汚染のため、多くの応用に有用であり得るが、例えば、非常に薄い板状であり、圧入によるアセンブリなどの変形に依存するプロセスにおいて、黒鉛を成形するために、制限がある。アルミニウムは、低コスト、低重量及び加工容易性のため、有用であり得る。アルミニウムの使用の制限は、基板の汚染を避けることを含み、シリコンの黒鉛によるアルミニウムのコーティングは、この問題に対処することができる。第2に、アルミニウム及びその合金は、また、約300℃以下の低い最大加工温度を有する。タンタル又はタングステンは、腐食抵抗を必要とする高温アプリケーション用の挿入されたもの又はフレームの材料として、用いることができる。タングステン及びタンタルの短所は、それらの高重量及び低い加工性である。したがって、挿入されたもの及びフレームの材料の選択は、上記のように、考慮すべき事柄のバランスに基づいて実施することができる。
【0020】
さらに
図1に示すように、挿入されたもの102は、挿入されたもの102とフレーム104との間に内側アパーチャ116を画定するように、設計することができる。フレーム104は、さらに、図示のフレームアパーチャ118を含むことができ、さらに、外側部分106と共に、外側アパーチャ114を画定するように、設計することができる。通常、既知のイオン注入機におけるように、例えば、ガスを電極及び加速器カラムに通すために、これらのアパーチャを用いることができる。
【0021】
さて、
図2を見るに、電極100の実施形態が示され、電極100は、この場合、図示の2つの部分に配置されたカバー部分130を含む。組み立てられたときのカバー部分130は、挿入されたもの102をフレーム104に取り付けるように、少なくとも部分的に挿入されたもの102の上に配置することができる。カバー部分130は、ねじなどのリバーシブルファスナー132を用いて、フレーム104に取り付けることができる。このように、カバー部分130は、また、挿入されたもの102をフレーム104に対して適切な位置で支えることができる。他の既知の留め付け機構は、挿入されたもの102をフレーム104に、リバーシブルな取り外し可能な方法で、取り付けるために、用いることができるので、本実施形態は本文脈に限定されない。したがって、有用であるときは、挿入されたもの102は、フレーム104から分離して取り除くことができ、クリーニングのため、又は、挿入されたもの102用の異なる材料、もしくは、材料は同じである挿入されたものの代わりなどの電極100において異なる挿入されたものを用いるべきときなどのためである。
【0022】
図2にさらに示すように、フレーム104は、本例において、フレーム104の2つの異なる領域において配置される凹部分120を含むことができる。凹部分120は、磁石アセンブリ122を収容するように配置することができ、磁石アセンブリ122は図示の2つの磁石を含むことができる。これらの磁石は、既知の加速器カラムの電極におけるように、荷電粒子を制御するために用いることができる。本文脈において、カバー部分130は、非磁性材料にすることができ、また、凹部分120において、磁石アセンブリ122を適切な位置で支えることができる。
【0023】
図1にさらに示すように、外側部分106は連結部分124を含むことができ、連結部分124は、図示のように、フレーム104の外側領域に係合するように設計される。連結部分124は、フレーム104を外側部分106からリバーシブルに取り付けかつ取り外せるように配置された、タブ、凹部又は類似の機構、又は機構の組合せにすることができる。いくつかの例において、フレーム104は、既知の設計におけるように、外側部分106に回転自在に取り付け可能にすることができる。したがって、有用であるときは、フレーム104は、外側部分106から分離して取り除くことができ、クリーニングのため、又は、フレーム104用の異なる材料、もしくは、材料は同じであるフレーム104用の代わりなどの電極100において異なるフレームを用いるべきとき、又は、外側部分106用の異なるコンポーネントを用いるべきとき、などのためである。
【0024】
さて、
図3を見るに、本発明の実施形態による、加速器カラム300が示される。加速器カラム300は、通常、上記のように電極100として示される複数の電極を含む電極アセンブリを含むことができる。加速器カラム300は、絶縁体302を含むことができ、絶縁体302は隣接する電極の間に配置され、したがって、電極100は、既知の加速器カラムにおけるように、互いに電気的に絶縁される。加速器カラム300は、図示のように、加速器カラム300にイオンビーム304を通すように配置することができ、電極100の異なる電極は、加速器カラム300を通って伸びるカラムアパーチャ306を画定する。イオンビーム304用のターゲットイオンエネルギーを得るために、異なる電極間で(絶対的大きさにおいて)単調に増加する電圧などの異なる電圧を、異なる電極に印加することができる。例として、加速器カラム300が25個の電極を含む場合、40kVの電圧を、加速器カラム300の左の第1の入り口の電極に印加することができ、一方、増加する電圧を、第1の電極の右に続く電極に印加することができる。いくつかの実施形態において、隣接する電極間の40kVの増加などのように、電圧を連続する電極間に均一に増加することができ、25個の電極のアセンブリは1MeVの電圧の変化を生成する。本実施形態は本文脈に限定されない。本発明の様々な実施形態により、電極100として示す、少なくとも1つの電極は、
図1及び
図2に示すように、挿入されたもの102を含むように、配置することができ、挿入されたもの102は、上記のように、材料又は放射の汚染を低減するために選択された材料から、作ることができる。加速器カラム300は、既知の加速器カラムと同じ一般のサイズ及び形状を有するように、配置することができ、したがって、本実施形態の新規な電極は、既知のイオン注入機の構成内に適合することができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、加速器カラム300などの加速器カラムは、2つの異なる加速器カラムを含むタンデム加速器の中に配置することができる。さて、
図4を見るに、本発明の実施形態による、タンデム加速器400の側面図が示される。
図4に示すように、タンデム加速器400は、第1の加速器カラム402、第1の加速器カラム402に隣接して配置された電荷交換チャンバ404、及び、電荷交換チャンバ404に隣接して配置され、かつ、第1の加速器カラム402の下流に配置された第2の加速器カラム406を含む。
【0026】
既知のタンデム加速器におけるように、タンデム加速器400は、イオンビームのイオンを30keVより大きいエネルギーなどの高エネルギーへ加速するために、使用することができる。本実施形態は本文脈に限定されない。タンデム加速器において、第1のイオン種は、第1の加速器カラムにおいて、ターゲットエネルギーに加速することができ、続いて電荷交換プロセスがあり、イオン種は、例えば、正のイオンから負のイオンへ変わることができる。別の例において、第1のイオン種は、電荷交換プロセスにおいて、正のイオンに変えられるべき負のイオンであり得る。新しいイオン種は、さらにイオンエネルギーを増大するために、第2の加速器カラムにより加速することができる。既知のタンデム加速器におけるように、新しいイオン種の電荷は第1のイオン種の電荷と反対であり得るため、第2の加速器カラムは、第1の加速器カラムと比べて、シーケンスにおいて逆の、個々の電極に印加される、電圧を有することができる。例えば、第1の加速器カラムは、一価の負のイオンを1MeVのイオンエネルギーへ加速することができ、一方、第2の加速器カラムは、1MeVの最初のエネルギーを有する一価の正のイオンを2MeVのエネルギーへ加速する。電荷交換チャンバに隣接する、第1の加速器カラム及び第2の加速器カラムの中の、電極において、最大の電圧が存在し得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、タンデム加速器400の第1の加速器カラム402は、複数の電極を用いて構成することができ、異なる電極のほとんど又は全ては、上記の電極100の構造などの、お互いに同じ構造を有する。同じく第2の加速器カラム406に適用することができ、電極も上記の電極100のように配置することができる。いくつかの実施形態において、加速器カラムは、可変のイオンビームのアパーチャサイズを備えることができ、加速器カラムの第1の電極の第1のイオンビームのアパーチャは第1の直径を有し、加速器カラムの第2の電極の第2のイオンビームのアパーチャは第2の直径を有し、第2の直径は第1の直径と異なる。例えば、円すい形のイオンビームのアパーチャを画定するために、挿入されたもの102のアパーチャサイズが1つの電極から次の電極へ単調に変化するように、一連の電極を配置することができる。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態において、加速器カラムは、第1の電極アセンブリ及び追加の電極アセンブリ又は第2の電極アセンブリを含むことができ、第2の電極アセンブリは、第1の電極アセンブリに隣接して配置され、構造又は材料において、第1の電極アセンブリとは異なる。例えば、加速器カラムの第1の電極アセンブリは、挿入されたもの102、フレーム104及び外側部分106を含む電極100に対して説明したように、通常、構成される複数の電極を含むことができる。特定の変形において、第1の電極アセンブリの複数の電極は、同じイオンビームのアパーチャサイズを有することができ、一方、他の変形において、第1の電極アセンブリの複数の電極は、異なる電極間で変化するイオンビームのアパーチャサイズを画定することができる。本発明の様々な実施形態において、第2の電極アセンブリは、電導材料からの単一構造として構成することができ、第2の電極アセンブリは少なくとも1つの追加の電極を含む。第2の電極アセンブリは、例えば、既知の構造を有する複数のチタンの電極から構成することができる。単一構造により、電極は、通常、1つの部分を構成するが、たとえ、もともと、1つの部分より多いものから形成されたとしても、その1つの部分は、通常、分解されず、分解することができない。単一構造は、さらに、単一の材料から形成することができる。例えば、既知のチタンの電極は、チタンだけから形成することができ、通常、分解することができない。2つの異なる電極アセンブリを有する加速器カラムを提供することにより、加速器カラムは、加速器カラムのターゲット部分において、本実施形態により配置された電極を含むことができ、一方、加速器カラムの他の部分において、既知の構造の電極を含むことができる。この2つのアセンブリの構成は、コストの考慮、メンテナンス、組み立ての容易さ、同心性、及び、他の考慮すべき事柄において、支援するために有用であり得る。
【0029】
さて、
図6を見るに、本発明のさらなる実施形態による、加速器カラム600の側面図が示される。本実施形態において、加速器カラム600は、第1の電極アセンブリ602、及び、第1の電極アセンブリ602に隣接して配置された第2の電極アセンブリ604を含む。加速器カラム600は、いくつかの実施形態において、タンデム加速器の部分を形成することができる。特定の実施形態において、加速器カラム600は、タンデム加速器において、下流の加速器カラムを形成することができ、イオンビーム304は、電荷交換プロセスの後に、図示のように、右から入る。様々な実施形態において、第1の電極アセンブリは、電極100と同じ通常の構造を有する電極を含むことができ、一方、イオンビームのアパーチャサイズは、既知の加速器カラムにおけるように、イオンビームのアパーチャ606として示される、可変サイズのイオンビームのアパーチャを画定するように、電極間で変わり得る。本例において、イオンビームのアパーチャ606のアパーチャサイズは、第1の電極アセンブリ602内で左から右へ増加することができる。第2の電極アセンブリ604は、いくつかの例におけるチタンの電極などの、既知の電極を用いて形成することができる。
図6により示唆されるように、第2の電極アセンブリ604のイオンビームのアパーチャ608のイオンビームのアパーチャサイズは、一定にすることができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、ミラー・イメージではあるが、同様に構成された加速器カラムは、タンデム加速器において、上流の加速器カラムを形成することができる。追加の実施形態において、タンデム加速器の上流の加速器カラムは、加速器カラム600と異なって構成することができる。
【0031】
加速器カラムの再設計をせずに、中エネルギー及び高エネルギーのイオン注入機の汚染を防ぐ機能を含む、本実施形態により提供される、多数の優位性がある。さらに、本実施形態は、適切なときに、中心部分(挿入されたもの)のみを選択的に交換することができる、単一電極設計を提供することにより、イオン注入処理において、フレキシビリティーを提供する。
【0032】
本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際に、本明細書に記載された実施形態に加えて、本発明の他の様々な実施形態および変更は、前述の記載および添付図面から当業者には明らかであろう。したがって、このような他の実施形態および変更は、本発明の範囲内に含まれるものと意図している。さらに、本発明は、特定の環境における特定の目的のための特定の実装の文脈にて本明細書中で説明したけれども、当業者は、その有用性はそれらに限定されるものでなく、本発明は任意の数の環境における任意の数の目的のために有益に実装し得ることを認識するであろう。従って、以下に記載する特許請求の範囲は本明細書に記載された本発明の全範囲及び精神に鑑みて解釈しなければならない。