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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】抗TL1Aモノクローナル抗体の中和
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/24 20060101AFI20221214BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221214BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20221214BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20221214BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221214BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20221214BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
A61K39/395 N
A61P1/04
C07K16/46
C12N15/13
C12P21/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019521389
(86)(22)【出願日】2017-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 US2017058019
(87)【国際公開番号】W WO2018081074
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】62/413,188
(32)【優先日】2016-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513268380
【氏名又は名称】シーダーズ―シナイ メディカル センター
(74)【復代理人】
【識別番号】100208292
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 直己
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ビルズボロウ,ジャニーン
(72)【発明者】
【氏名】ターガン,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンクル,ブラッドリー
【審査官】竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-518883(JP,A)
【文献】特表2016-503818(JP,A)
【文献】特表2011-502522(JP,A)
【文献】特表2014-531210(JP,A)
【文献】国際公開第2015/073580(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0079611(US,A1)
【文献】Mucosal. Immunol., 2014, 7(6), pp.1492-1503
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト腫瘍壊死因子様タンパク質1A(TL1A)に結合するヒト化抗体又はヒト化抗原結合フラグメントであって、ここで、ヒト化抗体又はヒト化抗原結合フラグメントは、
a)重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、および重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む重鎖可変領域を含み、ここで、
i)HCDR1は、配列番号6のDTYMHである第1アミノ酸配列を含み、
ii)HCDR2は、配列番号7のPASGHである第2アミノ酸配列を含み、及び
iii)HCDR3は、配列番号8のSGGLPDである第3アミノ酸配列を含み、ならびに
b)軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、
i)LCDR1は、配列番号14のASSSVSYMYである第4アミノ酸配列を含み、
ii)LCDR2は、配列番号15のATSNLASである第5アミノ酸配列を含み、及び
iii)LCDR3は、配列番号16のGNPRTである第6アミノ酸配列を含む、ヒト化抗体又はヒト化抗原結合フラグメント。
【請求項2】
ヒト化抗体又はヒト化抗原結合フラグメントは配列番号5を含む重鎖可変領域及び配列番号13を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のヒト化抗体又はヒト化抗原結合フラグメント。
【請求項3】
ヒト化抗体又はヒト化抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号35を含む重鎖可変領域及び配列番号40を含む軽鎖可変領域、
(ii)配列番号36を含む重鎖可変領域及び配列番号41を含む軽鎖可変領域、
(iii)配列番号37を含む重鎖可変領域及び配列番号42を含む軽鎖可変領域、
(iv)配列番号38を含む重鎖可変領域及び配列番号43を含む軽鎖可変領域、あるいは、
(v)配列番号39を含む重鎖可変領域及び配列番号44を含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項1に記載のヒト化抗体又はヒト化抗原結合フラグメント。
【請求項4】
ヒト化抗体又はヒト化抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体、CDR移植抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、ダイアボディ、多特異性抗体、二重特異性抗体(dual specific antibody)、二重特異性抗体(bispecific antibody)、又はそれらの組み合わせである、請求項1乃至の何れか1つに記載のヒト化抗体又はヒト化抗原結合フラグメント。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか1つに記載の治療上有効な量のヒト化抗体又はヒト化抗原結合フラグメント及び薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか1つに記載のヒト化抗体又はヒト化抗原結合フラグメントをコードする核酸。
【請求項7】
被験体の炎症性腸疾患の処置に使用するための、請求項1乃至の何れか1つに記載のヒト化抗体又はヒト化抗原結合フラグメント。
【請求項8】
炎症性腸疾患はクローン病、潰瘍性大腸炎、あるいは医学的に難治性の潰瘍性大腸炎、又はそれらの組み合わせを含む、請求項に記載のヒト化抗体又はヒト化抗原結合フラグメント。
【請求項9】
被験体はTL1Aを過剰発現する、請求項7又は8に記載のヒト化抗体又はヒト化抗原結合フラグメント。
【請求項10】
被験体は炎症性腸疾患に関連付けられるリスク変異体を含む、請求項7又は8に記載のヒト化抗体又はヒト化抗原結合フラグメント。
【請求項11】
被験体は、以前に第2の治療薬による処置を受けたことがある、請求項7乃至10の何れか1つに記載のヒト化抗体又はヒト化抗原結合フラグメント。
【請求項12】
第2の治療薬は抗腫瘍壊死因子(TNF)α抗体を含む、請求項1に記載のヒト化抗体又はヒト化抗原結合フラグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、本明細書において参照により全体が組み込まれる、2016年10月26日出願の米国仮特許出願第62/413,188号の優先権を主張するものである。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によって本明細書に組み込まれる配列表を含んでいる。2017年10月23日に作成された上記のASCIIコピーは、52388-702_601_SL.txtと命名され、33,920バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
炎症性腸疾患(IBD)は、胃腸管における炎症性疾病を引き起こす腸の障害の集まりを指す。IBDの原発性のタイプは潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病(CD)である。これらの疾患は広く流行しており、約18億6000万人が全体的にUCと診断され、約130万人が全体的にCDと診断されている。不運にも、IBD患者に利用可能な治療の数は限られており、新規な治療の開発は、臨床試験における最適以下の結果によって妨げられている。従って、IBDを処置するための新たな治療が必要である。
【発明の概要】
【0004】
本開示はIBDの処置に有用な抗体を提供する。一態様において、TL1Aポリペプチドに特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントが提供される。幾つかの実施形態において、抗体又は抗原結合フラグメントは:SEQ ID NO:6-8の相補性決定領域(CDR)を含む重鎖、及びSEQ ID NO:14-16の相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖を含んでいる。幾つかの実施形態において、抗体又は抗原結合フラグメントは:SEQ ID NO:22-24の相補性決定領域(CDR)を含む重鎖、及びSEQ ID NO:30-32の相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖を含んでいる。幾つかの実施形態において、抗体又は抗原結合フラグメントは:モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ(diabody)、多特異性抗体、二重特異性抗体(dual specific antibody)、抗イディオタイプ抗体、二重特異性抗体(bispecific antibody)、又はそれらの組み合わせである。更なる実施形態では、治療上有効な量の抗体又は抗原結合フラグメント及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物が提供される。更なる実施形態では、必要とする被験体の炎症性腸疾患を処置する方法が提供され、該方法は、治療上有効な量の抗体又は抗原結合フラグメントを被験体に投与する工程を含む。幾つかの実施形態において、炎症性腸疾患はクローン病、潰瘍性大腸炎、医学的に難治性(refractive)の潰瘍性大腸炎、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、被験体に抗体又は抗原結合フラグメントを投与する前に、被験体はTL1Aを過剰発現する。幾つかの実施形態において、被験体は、炎症性腸疾患に関連付けられるリスク変異体を含む。
【0005】
別の態様において、本明細書にはポリペプチドが開示され、該ポリペプチドは、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31、及びSEQ ID NO:32から成る群から選択された1つ以上の相補性決定領域を含む。
【0006】
他の態様において、本明細書には、SEQ ID NO:6-8の重鎖相補性決定領域(CDR)及びSEQ ID NO:14-16の軽鎖相補性決定領域(CDR)を含む、基準抗体としてヒトTL1Aの同じ領域に結合する抗体又は抗原結合フラグメントが提供される。幾つかの実施形態において、基準抗体は、SEQ ID NO:5の重鎖可変ドメイン及びSEQ ID NO:13の軽鎖可変ドメインを含む。幾つかの実施形態において、抗体又は抗原結合フラグメントは:モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、多特異性抗体、二重特異性抗体、抗イディオタイプ抗体、二重特異性抗体、又はそれらの組み合わせである。更なる実施形態では、治療上有効な量の抗体又は抗原結合フラグメント及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物が提供される。更なる実施形態では、必要とする被験体の炎症性腸疾患を処置する方法が提供され、該方法は、治療上有効な量の抗体又は抗原結合フラグメントを被験体に投与する工程を含む。幾つかの実施形態において、炎症性腸疾患はクローン病、潰瘍性大腸炎、医学的に難治性の潰瘍性大腸炎、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、被験体に抗体又は抗原結合フラグメントを投与する前に、被験体はTL1Aを過剰発現する。幾つかの実施形態において、被験体は、炎症性腸疾患に関連付けられるリスク変異体を含む。
【0007】
他の態様において、本明細書には、SEQ ID NO:22-24の重鎖相補性決定領域(CDR)及びSEQ ID NO:30-32の軽鎖相補性決定領域(CDR)を含む、基準抗体としてヒトTL1Aの同じ領域に結合する抗体又は抗原結合フラグメントが提供される。幾つかの実施形態において、基準抗体は、SEQ ID NO:21の重鎖可変ドメイン及びSEQ ID NO:29の軽鎖可変ドメインを含む。幾つかの実施形態において、抗体又は抗原結合フラグメントは:モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、多特異性抗体、二重特異性抗体、抗イディオタイプ抗体、二重特異性抗体、又はそれらの組み合わせである。更なる実施形態では、治療上有効な量の抗体又は抗原結合フラグメント及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物が提供される。更なる実施形態では、必要とする被験体の炎症性腸疾患を処置する方法が提供され、該方法は、治療上有効な量の抗体又は抗原結合フラグメントを被験体に投与する工程を含む。幾つかの実施形態において、炎症性腸疾患はクローン病、潰瘍性大腸炎、医学的に難治性の潰瘍性大腸炎、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、被験体に抗体又は抗原結合フラグメントを投与する前に、被験体はTL1Aを過剰発現する。幾つかの実施形態において、被験体は、炎症性腸疾患に関連付けられるリスク変異体を含む。
【0008】
他の態様において、本明細書には、SEQ ID NO:7を持つペプチドを含む組成物が提供される。幾つかの実施形態において、組成物は、SEQ ID NO:6、8及び14-16から選択された1つ以上のペプチドを更に含む。更なる実施形態では、炎症性腸疾患を抱える被験体を処置する方法が提供され、該方法は有効な量の組成物を被験体に投与する工程を含む。
【0009】
他の態様において、本明細書には、SEQ ID NO:23を持つペプチドを含む組成物が提供される。幾つかの実施形態において、組成物は、SEQ ID NO:22、24及び30-32から選択された1つ以上のペプチドを更に含む。更なる実施形態では、炎症性腸疾患を抱える被験体を処置する方法が提供され、該方法は有効な量の組成物を被験体に投与する工程を含む。
【0010】
別の態様において、本明細書には、必要とする被験体の炎症性腸疾患を処置する方法が提供され、該方法は、有効な量の抗TL1A抗体を被験体に投与する工程を含み、但し、被験体がTNFSF15遺伝子座に1つ以上のリスク変異体を含み、抗TL1A抗体が、SEQ ID NO:6-8の相補性決定領域(CDR)を含む重鎖とSEQ ID NO:14-16の相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖とを含んでいる場合に限る。幾つかの実施形態において、抗TL1A抗体は:モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、多特異性抗体、二重特異性抗体、抗イディオタイプ抗体、二重特異性抗体、又はそれらの組み合わせである。幾つかの実施形態において、炎症性腸疾患はクローン病、潰瘍性大腸炎、医学的に難治性の潰瘍性大腸炎、又はそれらの組み合わせを含む。
【0011】
別の態様において、本明細書には、必要とする被験体の炎症性腸疾患を処置する方法が提供され、該方法は、有効な量の抗TL1A抗体を被験体に投与する工程を含み、但し、被験体がTNFSF15遺伝子座に1つ以上のリスク変異体を含み、抗TL1A抗体が、SEQ ID NO:22-24の相補性決定領域(CDR)を含む重鎖とSEQ ID NO:30-32の相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖とを含んでいる場合に限る。幾つかの実施形態において、抗TL1A抗体は:モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、多特異性抗体、二重特異性抗体、抗イディオタイプ抗体、二重特異性抗体、又はそれらの組み合わせである。幾つかの実施形態において、炎症性腸疾患はクローン病、潰瘍性大腸炎、医学的に難治性の潰瘍性大腸炎、又はそれらの組み合わせを含む。
【0012】
別の態様において、本明細書には、必要とする被験体の炎症性腸疾患を処置する方法が提供され、該方法は、有効な量の抗TL1A抗体を被験体に投与する工程を含み、但し、被験体がTL1Aを過剰発現し、抗TL1A抗体が、SEQ ID NO:6-8の相補性決定領域(CDR)を含む重鎖とSEQ ID NO:14-16の相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖とを含んでいる場合に限る。幾つかの実施形態において、抗TL1A抗体は:モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、多特異性抗体、二重特異性抗体、抗イディオタイプ抗体、二重特異性抗体、又はそれらの組み合わせである。幾つかの実施形態において、炎症性腸疾患はクローン病、潰瘍性大腸炎、医学的に難治性の潰瘍性大腸炎、又はそれらの組み合わせを含む。
【0013】
別の態様において、本明細書には、必要とする被験体の炎症性腸疾患を処置する方法が提供され、該方法は、有効な量の抗TL1A抗体を被験体に投与する工程を含み、但し、被験体がTL1Aを過剰発現し、抗TL1A抗体が、SEQ ID NO:22-24の相補性決定領域(CDR)を含む重鎖とSEQ ID NO:30-32の相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖とを含んでいる場合に限る。幾つかの実施形態において、抗TL1A抗体は:モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、多特異性抗体、二重特異性抗体、抗イディオタイプ抗体、二重特異性抗体、又はそれらの組み合わせである。幾つかの実施形態において、炎症性腸疾患はクローン病、潰瘍性大腸炎、医学的に難治性の潰瘍性大腸炎、又はそれらの組み合わせを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
典型的な実施形態は参照された図面に例示される。本明細書に開示される実施形態及び図面は、限定的ではなく例示的なものと考慮されるべきことが、意図されている。
図1】ハイブリドーマ684842-3(5C3D11)からの全RNAのアガロースゲル電気泳動を図示する。DNAマーカーであるマーカーIIIはレーンMに示され、684842-3の全RNAはレーンRに示される。
図2】684842-3のPCR産物のアガロースゲル電気泳動を図示する。DNAマーカーであるマーカーIIIはレーンMに示され、684842-3の可変重鎖(VH)はレーン1に示され、684842-3の可変軽鎖(VL)はレーン2に示される。
図3】ハイブリドーマ684842-6(9E12E5)からの全RNAのアガロースゲル電気泳動を図示する。DNAマーカーであるマーカーIIIはレーンMに示され、684842-6の全RNAはレーンRに示される。
図4】684842-6のPCR産物のアガロースゲル電気泳動を図示する。DNAマーカーであるマーカーIIIはレーンMに示され、684842-6のVHはレーン1に示され、684842-6のVLはレーン2に示される。
図5】ヒトTL1Aの阻害が9E12E5(パネルA)及び5C3D11(パネルB)によってIFN-γ産生を引き起こしたことを実証する。
図6】マウスTL1Aに対する、5C3D11(パネルA)及び9E12E5(パネルB)の認識能力を実証する。
図7】トランスフェクトされていないHEK293細胞株と比較した、HEK293細胞株を発現するTL1A上の5C3D11(パネルA)及び9E12E5(パネルB)の抗TL1A抗体の蛍光染色を示す、ヒストグラムを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
腫瘍壊死因子様タンパク質1A(TL1A)は、重度の大腸炎及びクローン病の発達及び重症度に関連付けられている。加えて、前臨床的及びヒト遺伝学的な関連データは、TL1Aがクローン病における潜在的な治療標的であることを示唆する。本開示は、TL1Aに対する抗体の中和について記載し、IBDの処置のための新たな治療を提供する。
【0016】
本明細書で引用される全ての引用文献は、あたかも完全に明記されているかのように参照によって全体が組み込まれる。別段の定めのない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、当業者により共通して理解されるものと同じ意味を有する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 3rd ed., Revised, J. Wiley & Sons (New York, NY 2006);及びSambrook and Russel, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (Cold Spring Harbor, NY 2012)は、本出願に使用される用語の多くの一般的な手引を当業者に提供する。抗体の調製方法に関する基準については、D. Lane, Antibodies: A Laboratory Manual 2nd ed. (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor NY, 2013); Kohler and Milstein, (1976) Eur. J. Immunol. 6: 511; Queen et al. U. S. Patent No. 5,585,089; and Riechmann et al., Nature 332: 323 (1988); U.S. Pat. No. 4,946,778; Bird, Science 242:423-42 (1988); Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883 (1988); Ward et al., Nature 334:544-54 (1989); Tomlinson I. and Holliger P. (2000) Methods Enzymol, 326, 461-479; Holliger P. (2005) Nat. Biotechnol. Sep;23 (9):1126-36)を参照。
【0017】
当業者は、本明細書に記載される実施形態を実施するために使用され得る、本明細書に記載されるものと同様又は同等の多くの方法及び物質を認識している。実際に、本明細書は記載の方法と物質には限定されない。本明細書に使用される選択用語の非限定的な定義は以下に提供される。
【0018】
「IBD」は炎症性腸疾患を指し、限定されないが、クローン病、潰瘍性大腸炎、及び医学的に難治性の潰瘍性大腸炎が挙げられる。
【0019】
「CD」、「UC」及び「MR-UC」は、クローン病、潰瘍性大腸炎、及び医学的に難治性の潰瘍性大腸炎をそれぞれ指す。
【0020】
「TL1A」はTNF様タンパク質1Aを指す。
【0021】
「TNFSF15」は腫瘍壊死因子の上科のメンバー15を指し、時にTL1Aと交換可能である。
【0022】
「SNP」は一塩基多型を指す。
【0023】
「リスク変異体」及び「リスクアレル」は、リスク変異体又はリスクアレルを持たない個体に比べて、クローン病、潰瘍性大腸炎、及び医学的に難治性の潰瘍性大腸炎を含むがこれらに限定されない炎症性腸疾患に対する感度の増大にその存在が関連付けられるアレルを指す。
【0024】
「保護変異体」及び「保護アレル」は、保護変異体又は保護アレルを持たない個体に比べて、クローン病、潰瘍性大腸炎、及び医学的に難治性の潰瘍性大腸炎を含むがこれらに限定されない炎症性腸疾患の発達の可能性の減少にその存在が関連付けられるアレルを指す。保護変異体は、炎症性腸疾患と診断された個体と比較して健康な個体に頻繁に存在する。
【0025】
「保護的な」及び「保護」は、特定の特異的な変異体又はアレルの存在に関して使用されるように、CD、UC、及びMR-UCを含むがこれらに限定されないIBDに対する感度の減少を指す。
【0026】
特異的な変異体又はアレルの存在に関して使用されるように「リスク」は、CD、UC及びMR-UCを含むがこれらに限定されずないIBDに対する感度の増加を指す。
【0027】
「生体サンプル」は、核酸及び/又はタンパク質分子が見出され得る任意の生体物質を指す。非限定的な例として、物質との用語は、全血、血漿、血清、唾液、口腔粘膜検体採取、及び他のあらゆる体液又は組織を含む。
【0028】
「IC」は免疫複合体を指す。
【0029】
「PBMC」は末梢血単核細胞を指す。
【0030】
「抗TL1A治療」は、TL1Aへの応答を抑え、及び/又は、TL1Aリガンドからその受容体を通って様々な上流及び/又は下流の分子標的へと分子シグナルを伝達する工程の阻害を含むがこれに限定されないTL1Aシグナル伝達を阻害する、任意の試薬を指す。抗TL1A治療は、小分子;siRNA、shRNA及びmiRNAなどの核酸;PNA、pc-PNA及びLNAなどの核酸アナログ;アプタマー;リボソーム;ペプチド;タンパク質;アビマー;抗体、又はその変異体及びフラグメント;及び/又はそれらのいずれかの組み合わせの使用を含み得る。
【0031】
用語「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原識別部位を介して、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、又は前述の組み合わせなどの、標的を認識し且つそれに特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。本明細書で使用されるように、用語「抗体」は、無傷のポリクローナル抗体、無傷のモノクローナル抗体、抗体フラグメント(Fab、Fab’、F(ab’)2及びFvフラグメントなど)、単鎖Fv(scFv)突然変異体、CDR移植抗体、多特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の抗原決定部分を含む融合タンパク質、及び、抗体が望ましい生物活性を提示する限り抗原認識部位を含む他の修飾された免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューそれぞれで言及される重鎖不変領域の同一性に基づいて、5つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの何れか、或いはそれらのサブクラス(アイソタイプ)(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)であり得る。異なるクラスの免疫グロブリンには、様々な且つ周知のサブユニット構造、及び三次元構成がある。抗体はネイキッドであり、或いは毒素、放射性同位元素などの他の分子に抱合され得る。
【0032】
用語「抗体フラグメント」は、抗体の抗原決定可変領域を持つ抗体の一部を指す「抗原結合フラグメント」を含める。抗体フラグメントの例は、限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvフラグメント、抗体フラグメントから形成された線形抗体、単鎖抗体、及び多特異性抗体を含む。
【0033】
用語「モノクローナル抗体」は、高度に特異的な認識及び単一の抗原決定基、又はエピトープの結合に関与する、均質の抗体集団を指す。これは、異なる抗原決定基を対象とする異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体とは対照的である。
【0034】
用語「ヒト化抗体」は、最小の非ヒト(例えばマウス)配列を含む特異的な免疫グロブリン鎖、キメラ免疫グロブリン、又はそれらのフラグメントを持つ、非ヒト(例えばマウス)抗体の形態を指す。例えば、ヒト化抗体は、可変領域において約40%未満の非ヒト配列を含む。場合によっては、ヒト化抗体は、完全長の抗体配列において約20%未満の非ヒト配列を含む。場合によっては、ヒト化抗体は、相補性決定領域(CDR)からの残留物が、所望の特異性、親和性、及び能力を持つヒト以外の種(例えばマウス、ラット、ウサギ、ハムスター)のCDRからの残留物で置き換えられるヒト免疫グロブリンである(Jones et al., 1986, Nature, 321:522-525; Riechmann et al., 1988, Nature, 332:323-327; Verhoeyen et al., 1988, Science, 239:1534-1536)。ヒト化抗体を生成するために使用される方法の例は米国特許第5,225,539に記載されている。
【0035】
用語「ヒト抗体」は、ヒトによって作られた抗体、又は、当技術分野で既知のあらゆる技術を使用して製造された、ヒトにより作られた抗体に対応するアミノ酸配列を持つ抗体を指す。ヒト抗体のこの定義には、無傷又は完全長の抗体、それらのフラグメント、及び/又は、例えばヒト軽鎖及びヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体などの少なくとも1つのヒト重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチドを含む抗体が挙げられる。
【0036】
用語「キメラ抗体」は、免疫グロブリン分子の配列が2つ以上の種に由来する抗体を指す。典型的に、軽鎖及び重鎖両方の可変領域は、所望の特異性、親和性及び能力を持つ哺乳動物の1つの種(例えばマウス、ラット、ウサギなど)に由来する抗体の可変領域に対応するが、定常領域は、その種における免疫応答の誘発を回避するために別のもの(通常ヒト)に由来する抗体における配列に相同する。
【0037】
重鎖及び軽鎖はそれぞれ、前記重鎖又は軽鎖の「可変領域」、及び前記重鎖又は軽鎖の「定常領域」で構成される。重鎖及び軽鎖領域は、相補性決定領域(CDR)として言及される超可変領域へと更に分割され、フレームワーク領域(FR)として言及される保存領域を散在され得る。重鎖及び軽鎖それぞれの領域は故に、3つのCDR及び4つのFRから成り、これらは以下の順序でN末端からC末端まで配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。この構造は当業者に周知である。
【0038】
本明細書で使用されるように、用語「CDR」は、抗体可変配列内の相補性決定領域を指し、抗体の抗原結合部位の形成の一因となる。CDRを決定するための技術は当該技術分野で既知である(例えば、Kabat et al. Sequences of Proteins of Immunological Interest, (5th ed., 1991, National Institutes of Health, Bethesda Md.; and Al-lazikani et al (1997) J. Molec. Biol. 273:927-948)。
【0039】
「保存的アミノ酸置換」は、1つのアミノ酸残基が同様の側鎖を持つ別のアミノ酸残基と置き換えられるアミノ酸置換である。同様の側鎖を持つアミノ酸残基のファミリーが当該技術分野で定義されており、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。例えば、チロシンに関するフェニルアラニンの置換は保存的置換である。ヌクレオチドを同定する方法、及び抗原結合を排除しないアミノ酸保存的置換は、当該技術分野で周知である(例えば、Brummell et al., Biochem. 32: 1180-1 187 (1993); Kobayashi et al. Protein Eng. 12(10):879-884 (1999);及びBurks et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:412-417 (1997))。
【0040】
抗体がタンパク質に「特異的に結合する」ことは、抗体が、無関係のタンパク質を含む代替的な物質よりも頻繁に、急速に、大きな持続時間で、大きな親和性で、或いは前述の何れかの組み合わせで、タンパク質に反応又は会合することを意味する。異なる種における相同タンパク質間の配列同一性により、特異的結合は、1より多くの種類におけるTL1Aなどの特定のタンパク質を認識する抗体を含み得る。抗体は、特定の実施形態において、抗体上で同じ抗原結合部位により結合される多数の標的に結合し、或いは抗体は、二重特異性であり、異なる特異性を持つ少なくとも2つの抗原結合部位を含み得る。
【0041】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、あらゆる長さのアミノ酸のポリマーを指すために本明細書で交換可能に使用される。ポリマーは直鎖又は分子鎖であり、修飾されたアミノ酸を含み、及び非アミノ酸により妨害され得る。この用語はまた、自然に、又は介入、例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質修飾、アセチル化、リン酸化、又は、別のポリペプチド及び/又は抱合、例えば標識化成分との融合などの他のあらゆる手技又は修飾により修飾されたアミノ酸ポリマーを含む。またこの定義には、当技術分野で既知の他の修飾と同様に、例えばアミノ酸(例えば非天然アミノ酸など)の1つ以上アナログを含むポリペプチドも含まれている。
【0042】
「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、本明細書で交換可能に使用されるように、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又は、それらのアナログ、或いはDNA又はRNAポリメラーゼによってポリマーへと組み込み可能な任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、限定されないがメチル化ヌクレオチド、及びそれらのアナログ又は非ヌクレオチド成分などの修飾されたヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチド構造への修飾はポリマーのアセンブリの前又は後に与えられてもよい。ポリヌクレオチドは、標識化成分との抱合によってなど、重合の後に更に修飾され得る。
【0043】
用語「ベクター」は、宿主細胞中の対象の1つ以上の遺伝子及び/又は配列を送達、及び好ましくは発現可能な構成物を意味する。ベクターの例は、限定されないが、ウイルスベクター、ネイキッドDNA又はRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド又はファージベクター、カチオン縮合剤に関連するDNA又はRNA発現ベクター、リポソームに包含されるDNA又はRNA発現ベクター、及び産生細胞などの特定の真核細胞を含む。
【0044】
「単離された」ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物は、自然に見出されない形態であるポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物である。単離されたポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物は、それらが自然に見出される形態ではない程度に精製されたものを含む。幾つかの実施形態において、単離される抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物は、実質的に純粋である。場合によっては、「実質的に純粋」は、少なくとも50%純粋(即ち、不純物がない)、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも98%純粋、又は少なくとも99%純粋な物質を指す。
【0045】
2つ以上の核酸又はポリペプチドの文脈における用語「同一の」又はパーセント「同一性」は、同じである、或いは、最大の一致のために比較及び整列した時に同じであるヌクレオチド又はアミノ酸残基の特定のパーセンテージを有する、2つ以上の配列又はサブ配列を指す。パーセント同一性は、配列比較のソフトウェア又はアルゴリズムを使用して、或いは目視検査によって測定され得る。アミノ酸又はヌクレオチド配列の整列を得るために使用され得る様々なアルゴリズム及びソフトウェアが、当該技術分野で既知である。そのようなアルゴリズム/ソフトウェアプログラムは、限定されないが、NBLAST、XBLAST、Gapped BLAST、BLAST-2、WU-BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、又はMegalign(DNASTAR)を含む。
【0046】
「処置すること(treating)」、「処置」、「処置すること(to treat)」、「緩和すること(alleviating)」、又は「緩和すること(to alleviate)」などの用語は、治療的処置及び/又は予防的又は防止手段を指し、その目的は、標的とされた病理的疾病を予防又は遅延(和らげる)すること、病理的疾病を予防すること、優れた全生存を追求する又は獲得すること、或いは、処置が最終的に成功しなかった場合であっても個体が前記疾病を進行させる可能性を下げることである。故に、処置を必要とする者は、既に障害を抱えている者;その障害を抱える傾向のある者;及びその障害が予防される者を含む。
【0047】
用語「被験体」は、特定の処置のレシピエントである、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類、及び家畜と狩猟動物を含むがこれらに限定されない任意の動物(例えば哺乳動物)を指す。霊長類には、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びマカク、例えばアカゲザルが含まれる。げっ歯類には、マウス、ラット、ヤマネズミ、シロイタチ、ウサギ及びハムスターが含まれる。家畜と狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ種、例えば家ネコ、イヌ種、例えばイヌ、キツネ、オオカミ、鳥類種、例えばニワトリ、エミュー、ダチョウ、及び魚、例えばマス、ナマズ、及びサケが含まれる。典型的に、「被験体」及び「患者」という用語は、ヒト被験体に関して本明細書で交換可能に使用される。様々な実施形態において、被験体は、処置を必要とする疾病に苦しむ又はそれを抱えていると以前に診断又は識別された被験体であり得る。様々な他の実施形態において、疾病に苦しむ又はそれを抱えていると以前に診断又は識別された被験体は、疾病の処置を受けている、又は受けていない場合もある。また他の実施形態において、被験体はまた、疾病を抱えていると以前に診断されていない被験体(即ち、条件に関する1つ以上危険因子を示す被験体)であり得る。特定の疾病の処置を「必要とする被験体」は、疾病を抱える、疾病を抱えると診断される、或いは疾病を進行させるリスクのある被験体であり得る。
【0048】
用語「治療上有効な量」は、被験体又は哺乳動物の疾患又は障害を「処置する」のに効果的な抗体、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、小さな有機分子、又は他の薬物の量を指す。場合によっては、薬物の治療上有効な量は、CD及びUC/MR-UCの症状を含むIBD症状の重症度を低下させる。これらは限定されないが、下痢、熱、疲労、腹痛症、腹部痙攣、炎症、潰瘍、吐き気、嘔吐、出血、便の血液、食欲減少、体重減少、及びそれらの組み合わせを含む。
【0049】
一態様において、本開示は、2つの中和する抗ヒトTL1Aモノクローナル抗体及び5つの中和するヒト化抗ヒトTL1Aモノクローナル抗体の同定について記載する。これら抗体は、インビトロでTL1Aの活性を中和し、可溶性且つ膜結合両方のTL1Aを認識する。
【0050】
TL1A(TNFSF15)は、主として内皮細胞、マクロファージ、及び樹状細胞(DC)によって発現されたTNFファミリーメンバーである。その発現は免疫複合体(IC)及びサイトカインによって引き起こされる。TL1A受容体DR3は主に、T細胞及びNKT細胞上で発現される。インビトロで、TL1Aは、ヒト及びマウスのT細胞分裂反応及びサイトカイン産生の両方を増強すると示されている。インビボで、TL1Aトランスジェニックマウスは、ヒトクローンと同様のIBD表現型を発達させた。加えて、組み換え型TL1Aタンパク質の処置はまた、mdr1‐/‐マウスにおける大腸炎を悪化させた。
【0051】
本開示は、IBD、CD、UC及びMR-UCを処置するのに有用な、中和する抗TL1Aモノクローナル抗体を提供する。場合によっては、これら抗TL1A抗体は、特異的な炎症性腸疾患(IBD)患者集団を治療するために使用される。関連するポリペプチド及びポリヌクレオチド、抗TL1Aの抗体を含む組成物、及び抗TL1Aの抗体を製造する方法も提供される。新規な抗TL1A抗体を処置のために使用する方法が更に提供される。
【0052】
抗TL1A抗体
様々な実施形態は、TL1Aに特異的に結合する抗体を提供する。幾つかの実施形態において、抗体は可溶性TL1Aに特異的に結合する。幾つかの実施形態において、抗体は膜結合TL1Aに特異的に結合する。TL1A抗体「5C3D11」に対する完全長のアミノ酸(aa)配列は:表1に示されるようなSEQ ID NO:5(重鎖)及びSEQ ID NO:13(軽鎖)を含む。様々な実施形態において、TL1A抗体はSEQ ID NO:5及びSEQ ID NO:13を含む。単量体TL1A抗体は、SEQ ID NO:5及びSEQ ID NO:13の2つの例を含む。様々な実施形態において、TL1A抗体は、表1に示されるように、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15及びSEQ ID NO:16を含む。幾つかの実施形態において、TL1A抗体は、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15及びSEQ ID NO:16の少なくとも1つ又はあらゆる組み合わせを含む。
【0053】
TL1A抗体「5C3D11」に対する完全長のヌクレオチド(nt)配列は、SEQ ID NO:1(重鎖)及びSEQ ID NO:9(軽鎖)を含む核酸配列によってコードされる。様々な実施形態において、TL1A抗体は、表1に示されるようなSEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:9を含む核酸配列によってコードされる。単量体TL1A抗体は、SEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:9を含む核酸配列の2つの例によってコードされる。様々な実施形態において、TL1A抗体は、表1に示されるように、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11及びSEQ ID NO:12を含む核酸配列によってコードされる。幾つかの実施形態において、TL1A抗体は、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11及びSEQ ID NO:12を含む核酸配列の少なくとも1つ又はあらゆる組み合わせによってコードされる。
【0054】
TL1A抗体「9E12E5」に対する完全長のアミノ酸(aa)配列は:表1に示されるようなSEQ ID NO:21(重鎖)及びSEQ ID NO:29(軽鎖)を含む。様々な実施形態において、TL1A抗体はSEQ ID NO:21及びSEQ ID NO:29を含む。単量体TL1A抗体は、SEQ ID NO:21及びSEQ ID NO:29の2つの例を含む。様々な実施形態において、TL1A抗体は、表1に示されるように、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31及びSEQ ID NO:32を含む。幾つかの実施形態において、TL1A抗体は、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31及びSEQ ID NO:32の少なくとも1つ又はあらゆる組み合わせを含む。
【0055】
TL1A抗体「9E12E5」に対する完全長のヌクレオチド(nt)配列は、表1に示されるようなSEQ ID NO:17(TL1A重鎖)及びSEQ ID NO:25(TL1A軽鎖)を含む核酸配列によってコードされる。様々な実施形態において、TL1A抗体は、に示されるようなSEQ ID NO:17及びSEQ ID NO:25を含む核酸配列によってコードされる。単量体TL1A抗体は、SEQ ID NO:17及びSEQ ID NO:25を含む核酸配列の2つの例によってコードされる。様々な実施形態において、TL1A抗体は、表1に示されるように、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27及びSEQ ID NO:28を含む核酸配列によってコードされる。幾つかの実施形態において、TL1A抗体は、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27及びSEQ ID NO:28を含む核酸配列の少なくとも1つ又はあらゆる組み合わせによってコードされる。
【0056】
【表1-1】
【0057】
【表1-2】
【0058】
様々な実施形態において、抗TL1Aの抗体は、特異的にTL1Aの同じ領域に結合し、又は、SEQ ID NO:1によってコードされた重鎖可変領域及びSEQ ID NO:9によってコードされた軽鎖可変領域を含む抗体が特異的に結合するTL1Aの領域と重なるTL1Aの領域に特異的に結合する。他の様々な実施形態において、抗TL1Aの抗体は、特異的にTL1Aの同じ領域に結合し、又は、SEQ ID NO:5の配列を含む重鎖及びSEQ ID NO:13の配列を含む軽鎖を含んでいる抗体が特異的に結合するTL1Aの領域と重なるTL1Aの領域に特異的に結合する。他の実施形態において、抗TL1Aの抗体は、特異的にTL1Aの同じ領域に結合し、又は、SEQ ID NO:17によってコードされた重鎖可変領域及びSEQ ID NO:25によってコードされた軽鎖可変領域を含む抗体が特異的に結合するTL1Aの領域と重なるTL1Aの領域に特異的に結合する。他の特定の実施形態において、抗TL1Aの抗体は、特異的にTL1Aの同じ領域に結合し、又は、SEQ ID NO:21を含む重鎖及びSEQ ID NO:29を含む軽鎖を含んでいる抗体が特異的に結合するTL1Aの領域と重なるTL1Aの領域に特異的に結合する。
【0059】
更なる実施形態では、TL1Aに特異的に結合し、5C3D11及び/又は9E12E5のCDRの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び/又は12を含む抗体を含むがこれに限定されない、ポリペプチドが提供される(下記の実施例1及び2の表1、表2、及び表3を参照)。特定の実施形態において、ポリペプチドは、5C3D11(SEQ ID NO:6、7及び8)及び/又は9E12E5(SEQ ID NO:22、23及び24)の重鎖CDR、5C3D11(SEQ ID NO:14、15及び16)及び/又は9E12E5(SEQ ID NO:30、31及び32)の軽鎖CDR、又はそれらの組み合わせを含む。特定の他の実施形態において、重鎖CDRは重鎖可変領域内に含まれ、及び/又は軽鎖CDRは軽鎖可変領域内に含まれる。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される個々の軽鎖又は重鎖の1つを含むポリペプチド、同様に個々の軽鎖及び重鎖の両方を含むポリペプチド(例えば抗体)も、提供される。幾つかの実施形態において、抗TL1A抗体は、5C3D11の重鎖及び軽鎖を含む。他の実施形態において、抗TL1A抗体は、9E12E5の重鎖及び軽鎖を含む。特定の実施形態において、抗TL1A抗体における各CDRは、1つのCDR当たり最大4(即ち、0、1、2、3、又は4)の保存的アミノ酸置換を含む。
【0060】
様々な実施形態において、抗TL1A抗体又はフラグメントは、少なくとも約1E-7、1E-8、1E-9、1E-10又は1E-11のTL1Aへの結合親和性を有する。場合によっては、結合親和性は約1E-9から約1E-11である。例えば、場合によっては、結合親和性は約7.90E-11である。様々な実施形態において、抗TL1A抗体又はフラグメントは、約7.90E-9から約7.90E-10のTL1Aへの結合親和性を有する。様々な実施形態において、抗TL1A抗体又はフラグメントは、約7.90E-10から約7.90E-12のTL1Aへの結合親和性を有する。様々な実施形態において、抗TL1A抗体又はフラグメントは、約7.90E-12から約7.90E-13のTL1Aへの結合親和性を有する。
【0061】
様々な実施形態において、抗TL1A抗体又はフラグメントは、約5.20E-11のTL1Aへの結合親和性を有する。様々な実施形態において、抗TL1A抗体又はフラグメントは、約5.20E-9から約5.20E-10のTL1Aへの結合親和性を有する。様々な実施形態において、抗TL1A抗体又はフラグメントは、約5.20E-10から5.20E-12のTL1Aへの結合親和性を有する。様々な実施形態において、抗TL1A抗体又はフラグメントは、約5.20E-12から5.20E-13のTL1Aへの結合親和性を有する。
【0062】
様々な実施形態は、基準抗体、例えば本明細書に記載される抗TL1A抗体としてTL1Aタンパク質又はその部分の同じ領域に結合する抗TL1A抗体を提供する。幾つかの実施形態において、基準抗体は、SEQ ID NO:6-8の重鎖CDR及びSEQ ID NO:14-16の軽鎖CDRを含む。場合によっては、基準抗体は、SEQ ID NO:5の重鎖可変ドメイン及びSEQ ID NO:13の軽鎖可変ドメインを含む。幾つかの実施形態において、基準抗体は、SEQ ID NO:22-24の重鎖CDR及びSEQ ID NO:30-32の軽鎖CDRを含む。場合によっては、基準抗体は、SEQ ID NO:21の重鎖可変ドメイン及びSEQ ID NO:29の軽鎖可変ドメインを含む。場合によっては、基準抗体は5C3D11である。場合によっては、基準抗体は9E12E5である。
【0063】
本明細書に記載される抗体としてTL1Aタンパク質又はその部分の同じ領域に抗TL1A抗体(即ち試験抗体)が結合するかどうかを判定するための非限定的な方法が、提供される。例示的な実施形態は競合アッセイを含む。例えば、前記方法は、試験抗体が基準抗体とTL1Aタンパク質又はその部分との間での結合と競合可能かどうかを判定する工程、或いは、基準抗体が試験抗体とTL1Aタンパク質又はその部分との間での結合と競合可能かどうかを判定する工程を含む。例示的な方法は、抗TL1Aの抗体がTL1Aと別の抗TL1A抗体との間での結合と競合可能かどうかを評価するための表面プラズモン共鳴の使用を含む。場合によっては、表面プラズモン共鳴は競合アッセイに利用される。非限定的な方法は実施例9と実施例10に記載される。
【0064】
抗体を生成する方法
様々な実施形態では、ポリペプチド又はヌクレオチド配列を使用して生成される抗体が提供される。幾つかの実施形態において、抗体はモノクローナル抗体である。幾つかの実施形態において、抗体はヒト抗体又はヒト化抗体である。幾つかの実施形態において、抗体は抗体フラグメントである。例えば、抗体はFabである。幾つかの実施形態において、抗体はキメラ抗体である。
【0065】
本明細書に記載される抗体は、当該技術分野で既知のあらゆる方法による特異的結合のために分析され得る。使用可能なイムノアッセイは、限定されないが、BIAcore分析、FACS分析、免疫蛍光検査法、免疫細胞化学、ウエスタンブロット、放射免疫定量法、ELISA、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光イムノアッセイ、及びタンパク質Aイムノアッセイなどの技術を使用して、競合的及び非競合的なアッセイシステムを含む。そのようなアッセイは慣例的であり、当該技術分野で周知である(例えば、Ausubel et al., eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照)。
【0066】
様々な実施形態において、抗体はTL1A受容体のアンタゴニストであり、限定されないが、DR3及びTR6/DcR3などである。特定の実施形態において、抗体は、結合TL1A受容体の1つ以上の活性の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、又は約100%を阻害する。
【0067】
様々な実施形態において、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ方法を含むがこれに限定されない当該技術分野で既知の方法を使用して調製され、ここで、宿主動物は、免疫抗原に特異的に結合する抗体のリンパ球による産生を引き起こすために上述のように免疫化される(Kohler and Milstein (1975) Nature 256:495)。ハイブリドーマは、選択された抗原を特異的に対象としたモノクローナル抗体を産生する。モノクローナル抗体は、インビトロ又はインビボで伝播すると、当該技術分野で既知の技術によって培養培地又は腹水から精製される。
【0068】
幾つかの実施形態において、モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567に記載されるような組み換えDNA法を使用して製造される。モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドは、成熟B細胞又はハイブリドーマ細胞から単離される。その後、重鎖及び軽鎖をコードする、単離されたポリヌクレオチドは、宿主細胞(例えば大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄細胞)へとトランスフェクトされたときにモノクローナル抗体を生成する適切な発現ベクターへとクローン化される。モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドは、代替的な抗体を生成するためのDNA再結合技術を使用して、多数の異なる様式で更に修飾することができる。
【0069】
様々な実施形態において、「キメラ抗体」、即ち、様々な部分がマウスのモノクローナル抗体とヒト免疫グロブリン定常領域(例えばヒト化抗体)に由来する可変領域を有するものなどの様々な動物種に由来する分子を、生成することができる。キメラ抗体は、当該技術分野で既知の様々な技術を使用して産生することができる(Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 81:851-855 (1984); Neuberger et al., Nature 312:604-608 (1984); Takeda et al., Nature 314:452-454 (1985))。
【0070】
幾つかの実施形態において、抗TL1Aモノクローナル抗体は、ヒト被験体に投与されたときに抗原性及びHAMA(ヒト抗マウス抗体)の応答を減少するための、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は当該技術分野で既知の様々な技術を使用して産生することができる。例えば、抗体は、(1)最初の抗体の軽鎖及び重鎖可変ドメインのヌクレオチド及び予測されたアミノ酸配列を決定することにより;(2)ヒト化抗体を設計すること、即ち、ヒト化プロセス中にどの抗体フレームワーク領域を使用するかを決定することにより;(3)実際のヒト化方法/技術により;及び(4)ヒト化抗体のトランスフェクション及び発現(例えば米国特許第5,585,089号;第6,835,823号;第6,824,989号を参照)により、ヒト化される。様々な実施形態において、ヒトでの治療のために、ヒト化抗体は、潜在的な免疫原性を減少させつつ、官能性の活性を維持するように更に最適化することができる。
【0071】
幾つかの実施形態において、ヒト化抗TL1A抗体は、SEQ ID NO:35-39のいずれかの重鎖可変ドメインを含む。幾つかの実施形態において、ヒト化抗TL1A抗体は、SEQ ID NO:40-44のいずれかの軽鎖可変ドメインを含む。場合によっては、ヒト化TL1A抗体は、SEQ ID NO:35を持つ重鎖可変ドメイン及びSEQ ID NO:40を持つ軽鎖可変ドメインを含む。場合によっては、ヒト化TL1A抗体は、SEQ ID NO:36を持つ重鎖可変ドメイン及びSEQ ID NO:41を持つ軽鎖可変ドメインを含む。場合によっては、ヒト化TL1A抗体は、SEQ ID NO:37を持つ重鎖可変ドメイン及びSEQ ID NO:42を持つ軽鎖可変ドメインを含む。場合によっては、ヒト化TL1A抗体は、SEQ ID NO:38を持つ重鎖可変ドメイン及びSEQ ID NO:43を持つ軽鎖可変ドメインを含む。場合によっては、ヒト化TL1A抗体は、SEQ ID NO:39を持つ重鎖可変ドメイン及びSEQ ID NO:44を持つ軽鎖可変ドメインを含む。
【0072】
特定の実施形態において、抗TL1A抗体はヒト抗体である。ヒト抗体は当該技術分野で既知の様々な技術を使用して直接調製することができる。インビトロで免疫化され、又は標的抗原を対象とする抗体を産生する免疫化個体から単離される、不死化されたヒトBリンパ球を、生成することができる(例えば、Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); Boerner et al., 1991, J. Immunol., 147 (1):86-95; and U.S. Pat. No. 5,750,373を参照)。ヒト抗体はファージライブラリーから選択され得る。抗体ファージライブラリーの生成及び使用の技術は、米国特許第5,969,108号、6,172,197号、5,885,793号、6,521,404号;6,544,731号;6,555,313号;6,582,915号;6,593,081号;6,300,064号;6,653,068号;6,706,484号;及び7,264,963号;及びRothe et al., 2007, J. Mol. Bio., doi:10.1016/j.jmb.2007.12.018に記載される。
【0073】
ヒト化抗体も、免疫化に際して、内因的な免疫グロブリン産生がない場合にはヒト抗体の完全なレパートリーを産生可能なヒト免疫グロブリン遺伝子座を含んでいるトランスジェニックマウスにおいてで製造することができる。この手法は、米国特許第5,545,807号;5,545,806号;5,569,825号;5,625,126号;5,633,425号;及び5,661,016に記載される。ヒト化抗体も、例えばウサギ及びマウスなどの大動物における親和性が成熟したヒト様ポリクローナル抗体の産生を可能とする新規な遺伝子操作手法によって得られるかもしれない。(例えば米国特許第6,632,976号を参照)。
【0074】
完全にヒト化された抗体は、ヒト由来のフレームワーク配列に包埋される非ヒト、例えば、げっ歯類由来のCDRを含む、可変領域アミノ酸配列を最初に設計することにより作成され得る。非ヒトCDRは所望の特異性を提供する。従って、場合によっては、これら残留物は、実質的に変更されていない、作り変えられた可変領域の設計に含まれる。場合によっては、修飾は故に最小限に限定され、抗体の特異性及び親和性の変化について注意深く監視されるべきである。一方、理論上のフレームワーク残留物は任意のヒト可変領域に由来する場合がある。許容可能な又は更に改善された親和性を示す作り変えられた抗体を作成するために、作り変えられた可変領域を作成し且つ抗体親和性を保持するのに等しく適したヒトフレームワーク配列が、選択されるべきである。ヒトフレームワークは生殖細胞系列由来であり、又は非生殖細胞系列(例えば、変異した、又は親和性が成熟した)配列由来でもよい。当業者に周知の遺伝子設計技術、例えば、限定されないが、ヒト抗体のライブラリのファージディスプレイ、トランスジェニックマウス、ヒト-ヒトのハイブリドーマ、ハイブリッドハイブリドーマ、B細胞不死化及びクローニング、単細胞RT-PCR、又はHuRAb技術は、ヒトフレームワーク及び非ヒトCDRを含んでいる雑種DNA配列を有するヒト化抗体を生成するために使用されてもよい。「ヒト化抗体」を得る方法は当業者に周知である。(例えば、米国特許第5,861,155号、米国特許第6,479,284号、米国特許第6,407,213号、米国特許第5,624,821号、US2003166871、US20020078757、Queen et al., Proc. Natl. Acad Sci USA, 86:10029-10032 (1989)、及びHodgson et al., Bio/Technology, 9:421 (1991))。
【0075】
キメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体は、組み換え型発現によって典型的に産生される。組み換え型ポリヌクレオチド構築物は典型的に、自然に会合された又は異種のプロモーター領域を含む、抗体鎖のコード配列に動作可能に結合された発現調節配列を含む。特定の実施形態において、これらヒト化抗体のアミノ酸配列変異体を生成することが望ましく、具体的には、これらは結合親和性又は抗体の他の生物学的な特性を改善する。
【0076】
特定の実施形態において、抗体フラグメントはIBDを処置及び/又は改善するために使用される。抗体フラグメントの産生のための様々な技術が知られている。一般的に、これらフラグメントは、無傷の抗体のタンパク質分解の消化を介して誘導される(例えば、Morimoto et al., 1993, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117; Brennan et al., 1985, Science, 229:81)。Fab、Fv及びscFv抗体フラグメントは全て、大腸菌又は他の宿主細胞に発現され且つそこから分泌され、故に大量のこれらのフラグメントの産生を可能にする。抗体フラグメントの産生のための他の技術は当業者に明白である。
【0077】
本開示に従い、TL1Aに特異的な単鎖抗体の産生のための技術が採用され得る(例えば米国特許第4,946,778号を参照)。加えて、TL1A、又はその誘導体、フラグメント、アナログ、又はホモログに対して所望の特異性を有するモノクローナルFAbフラグメントの急速且つ有効な同定を可能にするために、Fab発現ライブラリの構築のための方法が採用され得る(例えばHuse, et al., Science 246:1275-1281 (1989)を参照)。抗体フラグメントは、以下を含むがこれらに限定されない技術によって当該技術分野で産生され得る:(a)抗体分子のペプシン消化によって産生されるF(ab’)2フラグメント;(b)F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋の減少により生成されたFabフラグメント、(c)パパイン及び還元剤での抗体分子の処置によって生成されたFabフラグメント、及び(d)Fvフラグメント。
【0078】
また本明細書には、抗体のTL1Aとの会合をもたらす任意のタイプの可変領域を含む、修飾された抗体が提供される。当業者は、修飾された抗体が、定常領域ドメインの1つ以上の少なくともわずかが欠失され、又はそうでなければTL1Aの減少などの所望の生化学特徴を提供するように改変された抗体(例えば、完全長の抗体又はその免疫反応性のフラグメント)を含み得ることを認識する。特定の実施形態において、重鎖及び軽鎖両方の可変領域は、1つ以上のCDRの少なくとも部分的な置き換えによって、及び必要な場合、部分的なフレームワーク領域の置き換え及び配列の変更によって改変され。幾つかの実施形態において、置き換えられたCDRは、同じクラスの抗体、サブクラスの抗体、異なるクラスの抗体、例えば、異なる種の抗体及び/又はそれらの組み合わせに由来し得る。幾つかの実施形態において、修飾された抗体の定常領域はヒト定常領域を含む。本開示に適合可能な定常領域の修飾は、1つ以上のドメインにおける1つ以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換を含む。
【0079】
様々な実施形態において、本明細書に記載されるような抗体又はその抗原結合フラグメントの発現が、原核生物又は真核細胞のいずれかに生じる場合がある。適切な宿主は、インビボ又はインサイツでの酵母菌、昆虫、真菌、鳥細胞及び哺乳動物細胞、或いは、哺乳動物、昆虫、鳥又は酵母菌由来の宿主細胞を含む、細菌又は真核生物の宿主を含む。哺乳動物細胞又は組織は、ヒト、霊長類、ハムスター、ウサギ、げっ歯類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、イヌ、又はネコ由来であるが、他のあらゆる哺乳動物細胞が使用されてもよい。他の実施形態において、本明細書に記載されるような抗体又はその抗原フラグメントは宿主へとトランスフェクトされ得る。
【0080】
幾つかの実施形態において、発現ベクターは、本明細書に記載されるキメラ抗体、ヒト化抗体、又は複合ヒト抗体の産生のために受容細胞株へとトランスフェクトされる。様々な実施形態において、哺乳動物細胞は、Vero(ATCC CRL 81)又はCHO-K1(ATCC CRL 61)細胞、HeLa細胞及びL細胞などの線維芽細胞由来の細胞を含みうるがこれらに限定されない、抗体タンパク質の産生のための宿主として有用である。ポリペプチドを発現するために使用可能な例示的な真核細胞は、限定されないが、COS 7細胞を含むCOS細胞;293-6E細胞を含む293細胞;CHO--S及びDG44細胞を含むCHO細胞;PER.C6(商標)細胞(Crucell);及びNSO細胞を含む。幾つかの実施形態において、特定の真核生物の宿主細胞は、重鎖及び/又は軽鎖への所望の翻訳後修飾を作り出すその能力に基づいて選択されている。
【0081】
無傷の異種タンパク質を分泌可能な多数の適切な宿主細胞株が当該技術分野で開発され、限定されないが、CHO細胞株、様々なCOS細胞株、HeLa細胞、L細胞、及び多発性骨髄腫細胞株が含まれる。
【0082】
キメラ抗体、ヒト化抗体、又は複合ヒト抗体構成物を搬送する発現ベクター、本明細書に記載されるような抗体又はその抗原結合フラグメントは、当業者に知られるような形質転換、トランスフェクション、リポフェクション、抱合、エレクトロポレーション、直接微量注入、及び微粒子銃を含むがこれらに限定されない、細胞の宿主のタイプに依存する様々な適切な手段の何れかによって適切な宿主細胞へと導入され得る。これら細胞の発現ベクターは、複製起点部位、プロモーター、リボソーム結合部位などのエンハンサー及び必要な処理情報部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写ターミネーター配列などの、発現調節配列を含み得る。
【0083】
様々な実施形態において、酵母菌も、本明細書に記載される抗体分子又はペプチドの産生のための宿主として利用され得る。様々な他の実施形態において、バクテリア菌株も、本明細書に記載される抗体分子又はペプチドの産生のための宿主として利用され得る。バクテリア菌株の例は、限定されないが、大腸菌、バチルス種、腸内細菌、及び様々なシュードモナス種を含む。
【0084】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるような1つ以上の抗体又はその抗原結合フラグメントは、任意の適切な方法に従い、ポリペプチドをコードする1つ以上の核酸分子で設計(トランスジェニック)又はトランスフェクトされた動物においてインビボで産生され得る。トランスジェニック動物の産生のために、トランスジーンが、受精した卵母細胞へて微小注入され、或いは、胚性幹細胞のゲノム、及び除核された卵母細胞へ転写されたそのような細胞の母核へと組み込むことができる。一旦発現されると、抗体は、HPLC精製、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等を含む、当該技術分野の標準手順に従って精製することができる(一般的に、Scopes, Protein Purification (Springer-Verlag, NY, 1982)を参照)。
【0085】
一旦宿主に発現されると、抗体全体、抗体フラグメント(例えば、個々の軽鎖及び重鎖)又は本開示の他の免疫グロブリン形態は、既知の技術、例えば免疫吸着法、免疫アフィニティー・クロマトグラフィー、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)などのクロマトグラフィー法、硫酸アンモニウム沈殿法、ゲル電気泳動法又はこれらの任意の組み合わせによって回復且つ精製することができる。一般的に、Scopes, PROTEIN PURIF. (Springer- Verlag, NY, 1982)を参照。少なくとも約90%~95%の均一性の実質的に純粋な免疫グロブリンは、特に医薬用途のために、98%~99%以上の均一性を持つもののように、都合が良い。一旦、望まれるように部分的又は均一になるまで精製されると、ヒト化抗体又は複合ヒト抗体はその後、治療上で、或いはアッセイ手順、免疫蛍光検査法染色などの進行及び実行の際に使用することができる。一般的に、Vols. I & II Immunol. Meth. (Lefkovits & Pernis, eds., Acad. Press, NY, 1979 and 1981)を参照。
【0086】
様々な実施形態では、本明細書に提供される抗TL1A抗体又はフラグメントをコードする核酸を含む、遺伝学的構成物が提供される。抗体の遺伝学的な構成物は、コードされた抗TL1A抗体又はフラグメントの発現に適している発現カセットの形態であり得る。遺伝学的な構成物は、ベクターに組み込まれて、又は組み込まれることなく宿主細胞に導入され得る。例えば、遺伝学的な構成物はリポソーム又はウイルス粒子内で組み込むことができる。代替的に、精製された核酸分子は、当該技術分野で既知の方法によって宿主細胞へと直接挿入することができる。遺伝学的な構成物は、トランスフェクション、感染、エレクトロポレーション、細胞融合、原形質融合、微小注射、又は弾道衝撃(ballistic bombardment)によって宿主被験体の細胞へと直接導入することができる。
【0087】
様々な実施形態では、本明細書に提供される抗体の遺伝学的な構成物を含む組み換え型ベクターが提供される。組み換え型ベクターはプラスミド、コスミド又はファージであり得る。組み換え型ベクターは他の機能要素;例えば遺伝子発現を始めるのに適切なプロモーターを含み得る。
【0088】
様々な実施形態では、本明細書に記載される遺伝学的構成物及び/又は組み換え型ベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0089】
ポリペプチド及びポリヌクレオチド
様々な実施形態では、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31、及びSEQ ID NO:32から成る群から選択された1つ以上の相補性決定領域を含む、ポリペプチドが提供される。様々な実施形態において、ポリペプチドは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12のこれら相補性決定領域を含む。
【0090】
様々な実施形態において、抗体はポリペプチド又はポリヌクレオチドを使用して生成される。
【0091】
ポリペプチドは、組み換え型ポリペプチド、或いは、TL1Aに対する抗体又はそのフラグメントを含む合成ポリペプチドであり得る。特異的に注目すると、ポリペプチドは天然ポリペプチドであり得る。タンパク質の構造又は機能の有意な効果を用いることなく幾つかのアミノ酸配列を変更可能であることが、当該技術分野で認識される。故に、実質的な活性を示す、或いは、TL1Aタンパク質に対する抗体又はそのフラグメントの領域を含む、ポリペプチドの変形が更に提供される。そのような修飾は、欠失、挿入、逆位、反復、及びタイプ置換(type substitutions)を含む。
【0092】
本明細書に記載される単離されたポリペプチドは、当該技術分野で既知の任意の適切な方法によって産生することができる。そのような方法は、直接のタンパク質合成法から、単離されたポリペプチド配列をコードするDNA配列を構築してこれら配列を適切な形質転換した宿主に発現させることにまで及ぶ。幾つかの実施形態において、DNA配列は、対象の野生型タンパク質をコードするDNA配列の単離又は合成により、組み換え型技術を使用して構築される。
【0093】
様々な宿主システムも組み換え型タンパク質を発現するために有利に利用される。適切な哺乳動物の宿主細胞株の例は、サル腎培養細胞のCOS-7株、及び、例えば、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa及びBHK細胞株を含む適切なベクターを発現可能な他の細胞株を含む。哺乳動物発現ベクターは、複製起点、発現される遺伝子に結合された適切なプロモーター及びエンハンサー、及び他の5’又は3’隣接の非翻訳配列、並びに、必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー及びアクセプター部位、及び転写末端配列などの5’又は3’非翻訳配列などの、非転写要素を含み得る。
【0094】
形質転換した宿主によって産生されたタンパク質は、任意の適切な方法に従って精製することができる。そのような標準方法は、クロマトグラフィー(例えばイオン交換、親和性及びサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、差次的な溶解性、又はタンパク質精製のための他のあらゆる標準技術によるものを含む。ヘキサヒスチジン(SEQ ID NO:45)、マルトース結合ドメイン、インフルエンザコート配列及びグルタチオン-S-転移酵素などのアフィニティータグは、適切なアフィニティー・カラム上の通路によって容易な精製を可能にするためにタンパク質に付けることができる。単離されたタンパク質も、タンパク質分解、核磁気共鳴、及びX線結晶構造解析などの技術を使用して、物理的に特徴づけることができる。細菌培養において産生された組み換え型タンパク質を単離することができる。抗体及び他のタンパク質の精製について当該技術分野で既知の方法はまた、例えば、米国特許公報第2008/0177048号及び2009/0187005号に記載されるものを含む。
【0095】
当業者は、コードされた破裂における単一のアミノ酸又は少ない割合のアミノ酸を改変する核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質配列への個々の置換、欠失、又は付加は、「保存的に修飾された変異体」であることを認識し、そこでは、改変の結果、化学的に同様のアミノ酸でのアミノ酸の置換がもたらされ、標的抗原に特異的に結合する能力が保持される。そのような保存的に修飾された変異体は、多形性変異体、異種間ホモログ、及び本開示に一致するアレルを加えられ、それらを除外しない。
【0096】
与えられたアミノ酸は、同様の生理化学的特徴を持つ残留物によって置換することができ、例えば、1つの脂肪族残留物から別のもの(互いに対して、He、Val、Leu、又はAlaなど)への置換、又は1つの極性残留物から別のもの(LysとArg;GluとAsp;又はGinとAsnの間など)への置換である。他のそのような保存的置換、例えば同様の疎水性特徴を持つ領域全体の置換は周知である。保存的アミノ酸置換を含むポリペプチドは、望ましい活性、例えば天然又は基準のポリペプチドの抗原結合活性及び特異性が保持されることを確認するために本明細書に記載されるアッセイの何れか1つにおいて試験され得る。
【0097】
特定の保存的置換は、例えば;AlaからGly又はSer;ArgからLys;AsnからGin又はHis;AspからGlu;CysからSer;GinからAsn;GluからAsp;GlyからAla又はPro;HisからAsn又はGin;lieからLeu又はVal;Leuからlie又はVal;LysからArg、Gin、又はGlu;MetからLeu、Tyr、又はlie;PheからMet、Leu、又はTyr;SerからThr;ThrからSer;TrpからTyr;TyrからTrp;及び/又はPheからVal、lie、又はLeuを含む。
【0098】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される抗体及び/又はその抗原結合フラグメントは、本明細書に記載される配列の変異体、例えば抗体ポリペプチドの保存的置換変異体であり得る。幾つかの実施形態において、変異体は保存的に修飾された変異体である。「変異体」は、ポリペプチドに関して本明細書で言及されるように、天然又は基準のポリペプチドとほぼ相同するポリペプチドであるが、1つ又は複数の欠失、挿入、又は置換により天然又は基準のポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を持つものである。変異体ポリペプチドをコードするDNA配列は、天然又は基準のDNA配列と比較するとヌクレオチドの1つ以上の付加、欠失又は置換を含むが、活性、例えば関連する標的ポリペプチドに対する抗原特異的結合活性を保持する変異体タンパク質又はそのフラグメントをコードする配列を包含している。
【0099】
天然アミノ酸配列の改質は、当業者に既知の多数の技術の何れかによって達成することができる。突然変異は、特定の遺伝子座にて、又はオリゴヌクレオチドを対象とした部位特異的な突然変異誘発手順によって導入することができる。そのような改質を行うための技術は非常によく確立され、例えば、Walder et al. (Gene 42: 133, 1986); Bauer et al. (Gene 37:73, 1985); Craik (BioTechniques, January 1985, 12-19); Smith et al. (Genetic Engineering: Principles and Methods, Plenum Press, 1981);及び米国特許第4,518,584号と4,737,462号に開示されるものを含む。
【0100】
特定の実施形態において、特異的にTL1A又はそのフラグメントに結合するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。例えば、TL1Aに対し抗体をコードするか、又はそのような抗体のフラグメントをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチドが提供される。ポリヌクレオチドは、RNA、又はDNAの形態であり得る。DNAはcDNA、ゲノムDNA及び合成DNAを含み;及び、二本鎖又は一本鎖であり、一本鎖の場合、コード鎖又は非コード(アンチセンス)鎖であり得る。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドはで単離される。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドはほぼ純粋である。
【0101】
更に、SEQ ID NO:1、9、17、25、及びそれらの組み合わせから成る群から選択された配列を含むポリヌクレオチドが提供される。また、本明細書に記載されたポリヌクレオチドコード化の変異体、例えばフラグメント、アナログ、誘導体も提供される。
【0102】
抗体の核酸分子をコードするアミノ酸配列変異体は、当該技術分野で既知の様々な方法によって調製される。これらの方法は、限定されないが、抗体の初期に調製された変異体又は非変異体のバージョンの、オリゴヌクレオチドに媒介された(又は部位を対象とした)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット式変異誘発による調製を含む。本明細書に記載されるような少なくとも1つの抗体、部分、又はポリペプチドをコードする核酸配列は、ライゲーション及び制限酵素消化のための平滑末端又は付着端を含むがこれらに限定されない、従来技術に従ってベクターDNAにより再結合することができる。そのような操作のための技術は、例えば、Maniatis et al., Molecular Cloning, Lab. Manual (Cold Spring Harbor Lab. Press, NY, 1982 and 1989)により開示され、且つ、モノクローナル抗体分子又は抗原結合領域をコードする核酸配列を構築するために使用することができる。
【0103】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるような抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸は、ベクターによって含まれる。本明細書に記載される態様の一部において、本明細書に記載されるような抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸配列、又はそのあらゆるモジュールは、ベクターに動作可能に結合される。用語「ベクター」は、本明細書で使用されるように、宿主細胞への送達、又は異なる宿主細胞間の伝達のために設計された核酸構成物を指す。本明細書で使用されるように、ベクターはウイルス性又は非ウイルス性であり得る。用語「ベクター」は、適切な調整要素との会合時に複製可能であり、且つ遺伝子配列を細胞に伝達可能である、遺伝子要素を包含する。ベクターは、限定されないが、クローニングベクター、発現ベクター、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどを含み得る。
【0104】
本明細書で使用されるように、用語「発現ベクター」は、ベクター上の転写調節配列に結合された配列からのRNA又はポリペプチドの発現を対象とするベクターを指す。用語「発現」は、RNA及びタンパク質の産生、及び適切なものとしてタンパク質の分泌に関与する細胞プロセスを指し、適用可能な場合に、転写、転写処理、翻訳、タンパク質フォールディング、修飾、及び処理を含むがこれらに限定されない。「発現産物」は、遺伝子から転写されたRNA、及び遺伝子から転写されたmRNAの翻訳によって得られたポリペプチドを含む。用語「遺伝子」は、適切な調節配列に動作可能に結合されたときにインビトロ又はインビボでRNAに転写される核酸配列(DNA)を意味する。遺伝子は、コード領域に先行する及びそれに続く領域、例えば、5’非翻訳(5’UTR)又は「リーダー」配列、及び3’UTR又は「トレーラー」配列の他、個々のコーディングセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)を含むか、又は含まない場合がある。
【0105】
本明細書で使用されるように、用語「ウイルスベクター」は、ウイルス由来の少なくとも1つの要素を含み且つウイルスベクター粒子へとパッケージングされる能力を持つ核酸ベクター構成物を指す。ウイルスベクターは、非本質的なウイルス遺伝子の代わりに本明細書に記載されるような抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸を含むことができる。ベクター及び/又は粒子は、インビトロ又はインビボで核酸を細胞へと伝達するために利用され得る。ウイルスベクターの多くの形態が当該技術分野で知られている。
【0106】
「組み換え型ベクター」は、ベクターがインビボでの発現可能な異種の核酸配列、又は「トランスジーン」を含むことを意味する。
【0107】
特定の実施形態において、本明細書に記載されるTL1Aに対して抗体又はそのフラグメントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対して、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、及び幾つかの実施形態において少なくとも96%、97%、98%又は99%の同一性のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む、単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0108】
基準ヌクレオチド配列に対して少なくとも例えば95%の同一性のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが基準ヌクレオチド配列の各100のヌクレオチド当たり最大5つの点突然変異を含みうることを除いて、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が基準配列と同一であることを意図する。基準配列のこれら突然変異は、基準ヌクレオチド配列のアミノ末端位置又はカルボキシ末端位置に、或いは、基準配列又は基準配列内の1つ以上の隣接群におけるヌクレオチド間で個々に点在する末端位置間のあらゆる場所に、生じ得る。
【0109】
ポリヌクレオチド変異体は、コード領域、非コード領域、又はその両方の改質を含むことができる。幾つかの実施形態において、ポリヌクレオチド変異体は、サイレント置換、付加、又は欠失を産生するが、コードされたポリペプチドの特性又は活性を改変しない改質を含む。幾つかの実施形態において、ヌクレオチド変異体は遺伝子コードの退化が原因でサイレント置換によって産生される。ポリヌクレオチド変異体は、例えば、特定の宿主に対してコドン発現を最適化する(大腸菌などの細菌宿主によって好ましいものへとヒトmRNAのコドンを変化させる)ために様々な理由で産生することができる。
【0110】
幾つかの実施形態において、遺伝子は所望の配列を作成するために融合される。各融合遺伝子は、レシピエントへとトランスフェクトされる発現ベクターにおいてアセンブルされるか、又は発現ベクターへと挿入される。トランスフェクトされた受容細胞は、組み込まれた遺伝子の発現を可能にする条件下で培養され、発現された免疫グロブリン鎖、又は無傷の抗体又はフラグメントは培養物から回復される。幾つかの実施形態において、抗体、その抗原結合フラグメントをコードする融合遺伝子は、後に受容細胞を共トランスフェクトするために使用される別個の発現ベクターにおいてアセンブルされる。
【0111】
医薬組成物、投与、及び用量
提供される抗TL1Aの抗体は、IBDの処置などの治療処置方法を含むがこれに限定されない様々な用途に有用である。使用方法は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボの方法であり得る。特定の実施形態において、抗TL1A抗体はTL1A受容体に対するアンタゴニストである。
【0112】
特定の実施形態において、抗TL1A抗体又はTL1A受容体アンタゴニストで処置された疾患は、IBD、CD、UC及び/又はMR-UCである。
【0113】
様々な実施形態において、医薬組成物は、任意の投与経路を介した送達用に製剤される。「投与経路」は、限定されないが噴霧、経鼻、経口、経粘膜的、経皮、又は非経口を含む、当該技術分野で既知の投与経路を指し得る。
【0114】
「経皮」投与は、局所クリーム又は軟膏を使用して、或いは経皮パッチを使用して達成され得る。
【0115】
「非経口」は、眼窩内、注入、動脈内、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内(intrasternal)、鞘内、子宮内、静脈内、クモ膜下、被膜下、皮下、口腔粘膜、又は経気管を含む、一般的に注射に関連する投与の経路を指す。非経口経路を介する場合、組成物は、注入又は注射用の溶液又は懸濁液の形態、或いは凍結乾燥粉末であり得る。
【0116】
腸経路を介する場合、医薬組成物は、錠剤、ゲルカプセル剤、糖衣錠、シロップ剤、懸濁剤、溶液、粉末剤、果粒剤、乳剤、制御放出を可能にするミクロスフェア又はナノスフェア或いは脂質ベシクル若しくはポリマーベシクルの形態であり得る。
【0117】
局所経路を介する場合、医薬組成物は、皮膚と粘膜の処置のために製剤され、軟膏剤、クリーム剤、乳剤、軟膏、粉末剤、浸透性パッド、溶液、ゲル剤、スプレー、ローション剤又は懸濁剤の形態であり得る。それらは更に、制御放出を可能にする、ミクロスフェア又はナノスフェア、或いは脂質ベシクル若しくはポリマーベシクル、又はポリマー貼付剤及びヒドロゲルであり得る。これら局所経路用の組成物は、臨床的適応に応じて無水形態又は水性形態であり得る。
【0118】
眼経路を介する場合、組成物は点眼剤の形態であり得る。
【0119】
様々な実施形態において、薬剤は、注射によって、又は経時的な漸進的注入によって、静脈内に投与することができる。所与の経路に適切な製剤を考慮すると、例えば、本明細書に記載の方法及び組成物に有用な薬剤は、静脈内に、鼻腔内に、吸入によって、腹腔内に、筋肉内に、皮下に、窩内に投与することができ、及び望まれる場合には、蠕動性の手段又は当業者に既知の他の手段によって送達され得る。特定の実施形態において、本明細書に使用される化合物は、IBD、CD、UC及び/又はMR-UCを抱える患者に経口で、静脈内、又は筋肉内に投与される。
【0120】
医薬組成物は更に、あらゆる薬学的に許容可能な担体を含み得る。「薬学的に許容可能な担体」は、体内のある組織、器官、又は部分から体内の別の組織、器官、又は部分へと対象の化合物を運ぶ或いは輸送するのに関係する、薬学的に許容可能な物質、組成物又はビヒクルを指す。例えば、担体は、液体又は固体の充填材、希釈剤、賦形剤、溶剤、又はカプセル化物質、或いはその組み合わせであってもよい。担体の各構成要素は、製剤の他の成分と適合しなければならないという点において「薬学的に許容可能」でなければならない。それはまた、接触し得る組織又は臓器との接触時の使用に適していなければならず、このことは、その治療効果を過度に重視する毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、或いは他のあらゆる合併症のリスクをもたらしてはならないことを意味する。
【0121】
様々な実施形態において、抗TL1Aの抗体の治療上有効な量と共に薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物が提供される。「薬学的に許容可能な賦形剤」は、一般的に安全で、無毒で、望ましい医薬組成物を調製するのに役立つ賦形剤を意味し、動物への使用とヒトの製薬用途にも許容可能な賦形剤を含んでいる。有効成分は、薬学的に許容可能且つ有効成分と適合可能な賦形剤と混合され、及び本明細書に記載の治療法に使用するのに適した量であり得る。そのような賦形剤は、固体、液体、半固体、又はエアロゾル組成物の場合には気体でもよい。適切な賦形剤は、例えばデンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、水、食塩水、ブドウ糖、プロピレングリコール、グリセロール、エタノール、マンニトール、ポリソルベートなど、及びその組み合わせである。加えて、望まれる場合、組成物は、有効成分の効果を高める又は維持する、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝薬などの小量の補助物質を含んでもよい。本明細書に記載の治療用組成物は、薬学的に許容可能な塩を含むことができる。薬学的に許容可能な塩は、例えば塩化水素又はリン酸などの無機酸、有機酸、例えば酢酸、酒石酸又はマンデル酸で形成された酸付加塩、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム又は水酸化鉄などの無機塩から形成された塩、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩から形成された塩を含む。液体組成物は、水を加えた及び水を除いた液相、例えばグリセリン、綿実油などの野菜油、水油乳剤を含むことができる。生理的に耐用可能な担体は当該技術分野で周知である。特定の障害又は疾病の処置に効果的である、使用される有効成分(即ち、抗体又はそのフラグメント)の量は、障害又は疾病の性質に依存し、及び標準的な臨床技術を用いて当業者により決定され得る。
【0122】
医薬組成物は更に、経口投与用に、カプセル化され、錠剤化され、或いは乳剤又はシロップとして調製され得る。薬学的に許容可能な固体又は液体の担体は、組成物を増強又は安定させるために、或いは組成物の調整を容易にするために加えられてもよい。液体の担体として、シロップ、落花生油、オリーブオイル、グリセリン、食塩水、アルコール、及び水が挙げられる。固体の担体として、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム、二水和物、白土、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸、タルク、ペクチン、アラビアゴム、寒天或いはゼラチンが挙げられる。担体は更に、モノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリンなどの徐放性物質を、単独で又はワックスと共に含んでもよい。
【0123】
医薬品は、錠剤形態のために、必要なときに、製粉、混合、顆粒化及び圧縮;又はハードゼラチンカプセル形態のために製粉、混合、及び充填を含む薬学の従来の技術に従い製造される。液体担体が使用されるとき、調製物は、シロップ、エリキシル、乳剤、又は水性或いは非水性の懸濁液の形態である。そのような液体製剤は、経口で直接投与され、或いはソフトゼラチンカプセル剤へと充填され得る。
【0124】
医薬組成物は治療上有効な量で送達され得る。正確な治療上有効な量は、所与の被験体への処置における有効性の観点から、最も効果的な結果を生み出す組成物の量である。この量は、限定されないが、治療用化合物の特性(活性、薬物動態、薬力学、及びバイオアベイラビリティを含む)、被験体の生理的状態(年齢、性別、疾患の種類とステージ、一般的な身体状況、所与の用量への反応性、及び薬物治療のタイプを含む)、薬学的に許容可能な担体又は製剤内の担体の性質、並びに投与経路を含む様々な要因に依存して変動する。臨床及び薬学の分野の当業者は、慣例的な手順を通じて、例えば化合物の投与に対する被験体の反応をモニタリングし、それに応じて用量を調整することによって、治療上有効な量を決定することができる。更なるガイダンスに関しては、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro ed. 20th edition, Williams & Wilkins PA, USA) (2000)を参照。
【0125】
有効な抗TL1A抗体の典型的な用量は、インビトロの反応又は動物モデルにおける反応によって当業者に示された通りであり得る。そのような用量は典型的に、関連する生物学的活性を失わずに、濃度又は量における最大で約1桁の規模に低減することができる。故に、実際の用量は、医師の判断、患者の状況、及び、例えば、得られた生体サンプルなどの関連する原発性培養細胞又は組織培養(histocultured)組織サンプルの、或いは適切な動物モデルに観察された反応に基づいた治療方法の有効性に依存する。
【0126】
疾患の処置に対して、抗体の適切な用量は、処置される疾患の種類、疾患の重症度と経過、疾患の反応性、治療目的又は予防目的で抗体が投与されたか否か、以前の治療、及び患者の病歴に依存する。用量は更に、何らかの合併症が起きた場合に個々の医師によって、及び処置を行う医師の裁量で、調整することができる。投与する医師は、最適な用量、投薬法、及び反復率を決定することができる。TL1A抗体は、1回のみ、又は数日から数ヶ月続く一連の処置を通じて、又は治癒に達するまで、或いは疾患状態の低下が達成されるまで(例えばIBDの処置又は改善)、投与され得る。処置の期間は、被験体の臨床経過と治療への反応性に依存する。特定の実施形態において、用量は体重1kg当たり0.01μg~100mgであり、毎日、毎週、毎月、又は毎年1回以上投与され得る。全身投与に対して、被験体は、例えば0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、又はそれ以上などの、治療用の量を投与され得る。
【0127】
処置の方法
様々な実施形態では、必要とする被験体に本明細書に記載される抗TL1A抗体を投与する工程を含む、炎症性腸疾患(IBD)を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、被験体は1つ以上のリスク変異体を含む。
【0128】
様々な実施形態において、本明細書には、必要とする被験体の炎症性腸疾患(IBD)を処置する方法が提供され、該方法は、TL1Aに特異的に結合する治療上有効な量の抗体又は抗原結合フラグメントを被験体に投与する工程を含み、抗体又は抗原結合フラグメントは、(a)SEQ ID NO:5を含む重鎖及びSEQ ID NO:13を含む軽鎖;(b)SEQ ID NO:21を含む重鎖及びSEQ ID NO:29を含む軽鎖;(c)SEQ ID NO:6-8の重鎖相補性決定領域(CDR)及びSEQ ID NO:14-16の軽鎖相補性決定領域(CDR);(d)SEQ ID NO:22-24の重鎖相補性決定領域(CDR)及びSEQ ID NO:30-32の軽鎖相補性決定領域(CDR);(e)SEQ ID NO:5及び/又は21の重鎖;(f)SEQ ID NO:13及び/又は29の軽鎖;(g)SEQ ID NO:6-8及び/又はSEQ ID NO:22-24の重鎖相補性決定領域(CDR);(h)SEQ ID NO:14-16及び/又はSEQ ID NO:30-32の軽鎖相補性決定領域(CDR);及び(i)それらの組み合わせをからなる群から選択される。
【0129】
幾つかの実施形態において、炎症性腸疾患(IBD)は、クローン病、潰瘍性大腸炎、及び/又は医学的に難治性の潰瘍性大腸炎である。
【0130】
様々な実施形態において、抗体はモノクローナル抗体である。幾つかの実施形態において、抗体はヒト抗体である。幾つかの実施形態において、抗体はヒト化抗体である。幾つかの実施形態において、抗体は中和抗体である。
【0131】
様々な他の実施形態において、被験体はTL1A発現の増加を伴うと判定される。幾つかの実施形態において、治療上有効な量の抗TL1A抗体の投与は、処置された被験体のTL1Aの減少を引き起こす。
【0132】
様々な実施形態において、抗体又は抗原結合フラグメントは、(a)SEQ ID NO:5を含む重鎖及びSEQ ID NO:13を含む軽鎖;(b)SEQ ID NO:6-8の重鎖相補性決定領域(CDR)及びSEQ ID NO:14-16の軽鎖相補性決定領域(CDR);(c)SEQ ID NO:5の重鎖;(d)SEQ ID NO:13の軽鎖;(e)SEQ ID NO:6-8の重鎖相補性決定領域(CDR);(f)SEQ ID NO:14-16の軽鎖相補性決定領域(CDR);及び(g)それらの組み合わせからなる群から選択される。
【0133】
様々な他の実施形態において、抗体又は抗原結合フラグメントは、(a)SEQ ID NO:21を含む重鎖及びSEQ ID NO:29を含む軽鎖;(b)SEQ ID NO:22-24の重鎖相補性決定領域(CDR)及びSEQ ID NO:30-32の軽鎖相補性決定領域(CDR);(c)SEQ ID NO:21の重鎖;(d)SEQ ID NO:29の軽鎖;(e)SEQ ID NO:22-24の重鎖相補性決定領域(CDR);(f)SEQ ID NO:30-32の軽鎖相補性決定領域(CDR);及び(g)それらの組み合わせからなる群から選択される。
【0134】
様々な実施形態において、抗体又は抗原結合フラグメントは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:25、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される配列を有する核酸によってコードされる。
【0135】
様々な他の実施形態において、抗体又は抗原結合フラグメントは、(a)SEQ ID NO:2-4の重鎖相補性決定領域(CDR)及びSEQ ID NO:10-12の軽鎖相補性決定領域(CDR);(b)SEQ ID NO:18-20の重鎖相補性決定領域(CDR)及びSEQ ID NO:26-28の軽鎖相補性決定領域(CDR);(c)SEQ ID NO:1及び/又は17の重鎖;(d)SEQ ID NO:9及び/又は25の軽鎖;(e)SEQ ID NO:2-4及び/又はSEQ ID NO:18-20の重鎖相補性決定領域(CDR);(f)SEQ ID NO:10-12及び/又はSEQ ID NO:26-28の軽鎖相補性決定領域(CDR);及び(g)それらの組み合わせからなる群から選択される、配列を有する核酸によってコードされる。
【0136】
様々な態様において、抗TL1A抗体は処置のために被験体に投与される。様々な他の実施形態において、抗TL1A抗体は一連の処置において投与される。幾つかの実施形態において、抗TL1A抗体及び第2のIBD処置は、任意の順序で、又は同時に投与されてもよい。選択された実施形態において、抗TL1A抗体は、以前に第2のIBD処置による処置を受けた患者に投与される。特定の他の実施形態において、抗TL1A抗体及び第2のIBD処置は、ほぼ同時に又は同時に投与される。例えば、被験体は、第2のIBD処置による処置の経過を受ける間に抗TL1Aの抗体を投与されてもよい。特定の実施形態において、抗TL1A抗体は、第2のIBD処置による処置の1年以内に投与される。特定の代替的な実施形態において、抗TL1A抗体は、第2のIBD処置による任意の処置の10、8、6、4、又は2ヶ月以内に投与される。特定の代替的な実施形態において、抗TL1A抗体は、第2のIBD処置による任意の処置の4、3、2、又は1週間以内に投与される。幾つかの実施形態において、抗TL1A抗体は、第2のIBD処置による任意の処置の5、4、3、2、又は1日以内に投与される。2つの処置は数時間又は数分以内に(即ち同時に)被験体に投与されてもよいことが、更に認識される。
【0137】
他のIBD処置は、限定されないが、1)抗炎症性の薬物(例えば、アミノサリチル酸、限定されないが、スルファサラジン、アザルフィジン、5-アミノサリチル酸、メサラジン、アサコール、リアルダ、ロワサ、カナサ、バルサラジド・コラザル及びオルサラジン、ディペンタム);2)コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロン及びヒドロコルチゾン);3)免疫系サプレッサー(例えばアザチオプリン、Azasan、イムラン、メルカプトプリン、プリネトール、プリクサン、シクロスポリン、Gengraf、ネオーラル及びサンジムムン、インフリキシマブ、レミケード、アダリムマブ、ヒュミラ、ゴリムマブ、及びシンポニー、腫瘍壊死因子(TNF)-α阻害剤(例えばインフリキシマブ)、メトトレキセート、リウマトレックス、ナタリズマブ、タイサブリ、ベドリズマブ、エンタイビオ、ウステキヌマブ及びステラーラ);4)抗生物質(例えばメトロニダゾール、フラジール、シプロフロキサシン、シプロ);5)抗下痢性薬物(例えば、ファイバーサプリメント(fiber supplement)-メタムシル又はシトルセル)又はロペラミド;6)鎮痛剤(例えばタイレノール、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム及びジクロフェナクナトリウム);及び7)手術(例えば大腸の除去、部分的な消化器官除去、結腸切除、大腸全摘術、及び/又は狭窄部形成術)を含む。幾つかの実施形態において、これらIBD処置は抗TL1A抗体と組み合わせて投与されてもよい。抗体での処置は、IBD処置の投与の前、同時、又は後に行われ得る。組み合わされた投与は、単一の医薬製剤における又は別個の製剤を使用する共投与、或いは、何れかの順序ではあるが、通常は全ての活性薬剤がその生物活性を同時に及ぼすことができるような時間内での連続投与を含み得る。そのようなIBD処置のためのあらゆる投薬スケジュールも、熟練した医師により決定されるように使用することができる。
【0138】
幾つかの実施形態において、第2のIBD処置は抗体を含む。故に、処置は、限定されないが腫瘍壊死因子(TNF)-αなどの、追加のIBD関連の抗原に対する他の抗体と組み合わせた本明細書に提供される抗体の投与に関与することができる。組み合わされた投与は、単一の医薬製剤における又は別個の製剤を使用する共投与、或いは、何れかの順序ではあるが、通常は全ての活性薬剤がその生物活性を同時に及ぼすことができるような時間内での連続投与を含み得る。
【0139】
キット
更に、IBD(例えばCD、UC及び/又はMR-UC)を処置するためのキットが提供される。キットは、本明細書に記載される方法を行うために使用可能な、本明細書に記載される抗体を含む。キットは、抗TL1Aの抗体の投与によるIBD、CD、UC及び/又はMR-UC患者の処置を提供する進歩性のある方法を実施するのに有用である。キットは、進歩性のある組成物の少なくとも1つを含む物質又は構成要素の集合である。故に、幾つかの実施形態において、キットは、上述のように、IBD、CD、UC及び/又はMR-UCの処置のための抗TL1A抗体を含む組成物を含んでいる。他の実施形態において、キットは、全ての制御、アッセイを行うための指示、及び分析と結果の提示に必要なソフトウェアを含む、TL1Aに対する検出アッセイを実行するのに必要及び/又は十分な構成要素の全てを含む。
【0140】
進歩性のあるキットに構成された構成要素の正確な性質は、その意図した目的に依存する。例えば、幾つかの実施形態は、IBD、CD、UC及び/又はMR-UCを処置するために構成される。一実施形態において、キットは特に哺乳動物被験体を処置するために構成される。別の実施形態において、キットは特にヒト被験体を処置するために構成される。更なる実施形態において、キットは、獣医学用途、即ち限定されないが家畜、家庭動物、及び実験動物などの被験体を処置するために構成される。
【0141】
使用説明書がキットに含まれてもよい。「使用説明書」は典型的に、IBD、CD、UC及び/又はMR-UCを処置又は緩和するためなど、望ましい結果を達成するためにキットの構成要素を使用するのに利用される技術について記載する有形表現(tangible expression)を含む。随意に、キットはまた、希釈剤、緩衝液、薬学的に許容可能な担体、シリンジ、カテーテル、塗布具、ピペッティングツール又は測定ツール、包帯材料、或いは当業者に容易に認識されるような他の有用な道具一式などの、他の有用な構成要素を含む。
【0142】
キットにおいて組み立てられた物質又は構成要素は、開業医に提供され、それらの操作性及び有用性を保つ任意の都合が良く適切な方法で保管され得る。例えば、構成要素は、溶解され、脱水され、又は凍結乾燥された形態であり;それらは室温、冷却温度、又は冷凍温度で提供され得る。構成要素は典型的に、適切な包装材料に含まれている。本明細書で利用されるように、フレーズ「包装材料」は、進歩性のある組成物などの、キットの内容物を収容するために使用される1つ以上の物理的構造を指す。包装材料は、好ましくは無菌の汚染物質のない環境を与えるために周知の方法によって構築される。キットに利用された包装材料は、遺伝子発現アッセイ、及び処置の投与において慣習的に利用されるものである。本明細書で使用されるように、用語「包装」は、個々のキット構成要素を保持することが可能な、ガラス、プラスチック、紙、ホイルなどの適切な固形マトリックス又は物質を指す。故に、例えば、包装は、TL1Aに対する抗TL1A抗体及び/又はプライマー及びプローブを含んでいる、適切な多量の進歩性のある組成物を含むために使用される、ガラスバイアル又は予め充填されたシリンジであり得る。包装材料には通常、キット及び/又はその構成要素の内容物及び/又は目的を示す外部ラベルがある。
【実施例
【0143】
以下の実施例は、本明細書に記載される実施形態を例示するものであり、記載された実施形態の範囲を限定するものと解釈するものではない。特定の物質が言及される点では、これは単に例示目的のものであり、限定を意図したものではない。当業者は、発明の能力の発揮なしに、且つ本開示の範囲を逸脱することなく、同等の手段又は反応を開発することができる。
【0144】
実施例1
免疫原の生成及びハイブリドーマ生成の免疫化プロトコル
(完全長のタンパク質における主要なメチオニンから集計されたように)点突然変異C66Sを持っており、主要な57のアミノ酸を欠く組み換え型TL1Aタンパク質を、大腸菌において発現させた。組み換え型TL1A配列をSEQ ID NO:33(QLRAQGEASVQFQALKGQEFAPSHQQVYAPLRADGDKPRAHLTVVRQTPTQHFKNQFPALHWEHELGLAFTKNRMNYTNKFLLIPESGDYFIYSQVTFRGMTSECSEIRQAGRPNKPDSITVVITKVTDSYPEPTQLLMGTKSVCEVGSNWFQPIYLGAMFSLQEGDKLMVNVSDISLVDYTKEDKTFFGAFLL)によって表わす。
【0145】
HEK293細胞株を発現するTL1Aを、完全長のTL1Aタンパク質に対する配列を含むレンチウイルス構成物での形質導入によって生成した。この細胞株は、(フローサイトメトリー及びELISAに基づく方法によってそれぞれ確認されたように)タンパク質の膜結合形態と分泌形態の両方を発現した。HEK293細胞株によって発現されたTL1Aの配列をSEQ ID NO:34(MAEDLGLSFGETASVEMLPEHGSCRPKARSSSARWALTCCLVLLPFLAGLTTYLLVSQLRAQGEACVQFQALKGQEFAPSHQQVYAPLRADGDKPRAHLTVVRQTPTQHFKNQFPALHWEHELGLAFTKNRMNYTNKFLLIPESGDYFIYSQVTFRGMTSECSEIRQAGRPNKPDSITVVITKVTDSYPEPTQLLMGTKSVCEVGSNWFQPIYLGAMFSLQEGDKLMVNVSDISLVDYTKEDKTFFGAFLL)によって表わす。
【0146】
細胞株を発現する組み換え型タンパク質及びTL1Aの両方を使用して、複数回の免疫化でマウスを免疫化した。戦略は、最初の免疫化及び2回の追加免疫を含んでいた。動物の2つの群を免疫化し、群の間で最初の及び追加免疫の免疫原を交換した:群1:組み換え型TL1Aタンパク質での最初の免疫化、及び細胞株を発現するTL1Aでの追加免疫;群2:細胞株を発現するTL1Aでの最初の免疫化、及び組み換え型TL1Aタンパク質での追加免疫。マウスから除去したB細胞を骨髄細胞と融合し、5C3D11及び9E12E5の抗体を発現するハイブリドーマを生成した。
【0147】
ハイブリドーマ5C3D11のモノクローナル抗体配列決定
全RNAを冷凍したハイブリドーマ細胞から抽出し、cDNAをRNAから合成した。その後、PCRを行い、抗体の可変領域(多額及び軽鎖)を増幅させ、その後にこれを標準クローニングベクターへと別個にクローン化し、配列決定した。
【0148】
物質と方法
使用する物質は、ハイブリドーマ細胞、TRIzol(登録商標)試薬(Ambion, Cat. No. : 15596-026)、及びPrimeScript(商標)1st Strand cDNA Synthesis Kit (Takara, Cat. No.: 6110A)を含む。
【0149】
全RNA抽出及び逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)
TRIzol(登録商標)試薬の技術マニュアルに従い全RNAをハイブリドーマ細胞から単離した。全RNAをアガロースゲル電気泳動によって分析した。
【0150】
PrimeScript(商標)1st Strand cDNA Synthesis Kitの技術マニュアルに従い、アイソタイプ特異的アンチセンスプライマー又はユニバーサルプライマーを使用して、全RNAをcDNAへと逆転写した。VH及びVLの抗体フラグメントを、GenScriptのRACEの標準操作手順に従って増幅させた。
【0151】
抗体遺伝子のクローニング、スクリーニング及び配列決定
増幅した抗体フラグメントを、標準分子クローニング手順を使用して、標準クローニングベクターへと別個にクローン化した。
【0152】
コロニーPCRスクリーニングを行い、正確なサイズの挿入を持つクローンを同定した。正確なサイズの挿入を持つ5以上の単一コロニーを、各抗体フラグメントのために配列決定した。
【0153】
結果と分析
サンプルの単離された全RNAを、図1に示されるように、1.5%のアガロース/GelRed(商標)ゲル上でDNAマーカー、即ちマーカーIII(TIANGEN, Cat. No. : MD103))と並行して実行した(run)。
【0154】
各サンプルの4マイクロリットルのPCR産物を、図2に示されるように、1.5%のアガロース/GelRed(商標)ゲル上でDNAマーカー、即ちマーカーIIIと並行して実行した。PCR産物を精製し、更なる使用まで-20℃で保管した。
【0155】
配列決定の結果と分析
正確なVH及びVLの挿入サイズを持つ5つの単一コロニーを、配列決定のために送った。5つの異なるクローンのVH及びVLの遺伝子を、ほぼ同一と見出した。重鎖、軽鎖及びCDR領域のためのDNA及びアミノ酸配列を、抗TL1A抗体5C3D11に対応するSEQ ID NO:1-16(表2を参照)で図示する。
【0156】
【表2】
【0157】
ハイブリドーマ9E12E5のモノクローナル抗体配列決定
全RNAを冷凍したハイブリドーマ細胞から抽出し、cDNAをRNAから合成した。その後、PCRを行い、抗体の可変領域(多額及び軽鎖)を増幅させ、その後にこれを標準クローニングベクターへと別個にクローン化し、配列決定した。
【0158】
物質と方法
使用する物質は、ハイブリドーマ細胞;TRIzol(登録商標)試薬(Ambion, Cat. No. : 15596-026);及びPrimeScript(商標)1st Strand cDNA Synthesis Kit (Takara, Cat. No.: 6110A)を含む。
【0159】
全RNA抽出及び逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)
TRIzol(登録商標)試薬の技術マニュアルに従い全RNAをハイブリドーマ細胞から単離した。全RNAをアガロースゲル電気泳動によって分析した。
【0160】
PrimeScript(商標)1st Strand cDNA Synthesis Kitの技術マニュアルに従い、アイソタイプ特異的アンチセンスプライマー又はユニバーサルプライマーを使用して、全RNAをcDNAへと逆転写した。VH及びVLの抗体フラグメントを、GenScriptのRACEの標準操作手順に従って増幅させた。
【0161】
抗体遺伝子のクローニング、スクリーニング及び配列決定
増幅した抗体フラグメントを、標準分子クローニング手順を使用して、標準クローニングベクターへと別個にクローン化した。
【0162】
コロニーPCRスクリーニングを行い、正確なサイズの挿入を持つクローンを同定した。正確なサイズの挿入を持つ5以上の単一コロニーを、各抗体フラグメントのために配列決定した。
【0163】
結果と分析
サンプルの単離された全RNAを、図3に示されるように、1.5%のアガロース/GelRed(商標)ゲル上でDNAマーカー、即ちマーカーIII(TIANGEN, Cat. No. : MD103))と並行して実行した。
【0164】
各サンプルの4マイクロリットルのPCR産物を、図4に示されるように、1.5%のアガロース/GelRed(商標)ゲル上でDNAマーカー、即ちマーカーIIIと並行して実行した。PCR産物を精製し、更なる使用まで-20℃で保管した。
【0165】
配列決定の結果と分析
正確なVH及びVLの挿入サイズを持つ5つの単一コロニーを、配列決定のために送った。5つの異なるクローンのVH及びVLの遺伝子を、ほぼ同一と見出した。重鎖、軽鎖及びCDR領域のためのDNA及びアミノ酸配列を、抗TL1A抗体9E12E5に対応するSEQ ID NO:17-32(表3を参照)で図示する。
【0166】
【表3】
【0167】
実施例2
重鎖可変領域(表4)及び軽鎖可変領域(表5)に対するBLASTP 2.2.32+を使用した2つの抗体配列のアライメント比較。
【0168】
【表4】
【0169】
【表5】
【0170】
実施例3
抗ヒトTL1Aモノクローナル抗体9E12E5及び5C3D11は、インビトロでヒトTL1Aの活性を中和する。IFN-γ産生に対するTL1A抗体の効果を評価し、両方のTL1A抗体は、図5に示されるようにTL1Aの阻害がIFN-γ産生を引き起こしたことを実証する。図6に示されるように、MSDプレートをマウスTL1Aで覆い、様々な濃度の5C3D11又は9E12E5でインキュベートして、抗体がマウスTL1Aを認識する能力を評価した。ヒトTL1Aを陽性対照としてインキュベートした。5C3D11は、濃度依存の方式でマウスTL1Aを認識する。5C3D11及び9E12E5の両抗体の結合プロファイルを、TL1AでトランスフェクトしたHEK293細胞株を使用して評価し、トランスフェクトされていない親のHEK293細胞株と比較した。図7に示されるように、HEK293細胞を発現するTL1Aにおける抗TL1Aの抗体の蛍光染色を、トランスフェクトされていない親のHEK293細胞と比較する。抗TL1Aの抗体の結合親和性を、表6に示される解離定数を用いて、Biacoreによって測定した。
【0171】
【表6】
【0172】
実施例4
大腸炎の動物モデルにおける抗TL1A抗体の効果を実行する。
【0173】
抗TL1A抗体を、ジ-又はトリ-ニトロベンゼンスルホン酸(D/TNBS)又はオキサゾロンの直腸内投与によって引き起こされた急性結腸炎、及び飲料水中のDSSの投与又はCD45RBhi T細胞の伝達によって引き起こされた慢性大腸炎のげっ歯類モデルにおいて試験する。DNBS及びオキサゾロンは局所的な潰瘍及び炎症を引き起こす。DSS投与は、浸食性の病変及び炎症性の浸潤を特徴とする胃管の強健な全身性炎症(generalized inflammation)を引き起こす。これら全てのモデルの症状は通常、下痢、潜血、体重減少、及び時折直腸脱を含む。
【0174】
予防モデルにおいて、抗体処置は大腸炎を誘導する化合物の投与の開始時点で始まる。治療モデルにおいて、抗体処置は誘導の開始の数日後に始まる。重量、便の一貫性、及び潜血に対する処置の効果が、上皮組織の完全性及び炎症性の浸潤の程度に対する顕微鏡効果とともに判定される。毎日の臨床スコアリングを、疾患活動係数(DAI)スコアを示す、便の一貫性及び潜血の存在に基づいて実行する。
【0175】
実施例5
第1相臨床試験を行い、クローン病を抱える被験体における本明細書に提供された抗TL1Aの抗体の安全性、耐用性、薬物動態学、及び薬動力学を評価する。
【0176】
単回用量漸増(SAD)群(arms):各群の被験体(被験体はリスク変異体の有無に基づいて分類される)は、単回用量の抗体又はプラセボのいずれかを受ける。典型的な投薬は、1、3、10、30、100、300、600及び800mgの抗体である。安全性モニタリング及びPK評価を、予め決められた時間にわたり行う。PKデータの評価に基づいて、及び抗体に十分に耐性があると見なされる場合、同じ群内に、又は健康な被験体の更なる群の中で、用量漸増が行われる。予め定められた最大曝露が到達しない、或いは耐えられない副作用が現れない限り、最大用量に到達するまで用量漸増を継続する。
【0177】
複数回用量漸増(MAD)群:各群の被験体(被験体はリスク変異体の有無に基づいて分類される)は、複数回用量の抗体又はプラセボを受ける。投与レベル及び投与間隔を、SADデータから安全であると予測されるものとして選択する。投与レベル及び投薬頻度を選択し、数日間定常状態で維持される体循環内の治療薬レベルを達成して、は適切な安全パラメータのモニタリングを可能にする。サンプルを集め、判定PKプロファイルに対して分析する。
【0178】
包含基準:18~55歳の年齢の、妊娠の可能性がない健康な被験体。健康は、詳細な病歴、血圧及び脈拍数測定を含む完全な身体検査、12-誘導心電図、及び臨床検査によって特定された臨床的に関連する異常がないと定められる。妊娠の可能性がない女性の被験体は、以下の基準の少なくとも1つを満たさなければならない:(1)以下のように定義される、閉経後の状態を達成している:代替的な病理学的又は生理学的な原因がない、少なくとも12ヶ月連続にわたる通常の月経の停止;及び閉経後の女性に関する研究所の基準範囲内の血清濾胞刺激ホルモン(FSH)レベルがある;(2)文書で立証された子宮摘出及び/又は両側卵巣摘出を受けている;(3)卵巣の欠陥が医学的に確認されている。他の全ての女性被験体(卵管結紮を行われた女性、及び、文書で立証された子宮摘出、両側卵巣摘出及び/又は卵巣の欠陥がない女性を含む)は、妊娠の可能性があると考慮される。17.5~30.5kg/m2の肥満度指数(BMI);及び総体重>50kg(110lbs)。被験体(又は法的代理人)が研究の全ての関係のある側面を通知されていることを示す、個人で署名され且つ日付を付けたインフォームドコンセント文書の証拠。
【0179】
健康な被験体の2つの群が選択される:その存在がクローン病に対する感度の増加に関連付けられるリスク変異体を持つ被験体、及び、リスク変異体を欠く被験体。
【0180】
除外基準:臨床的に有意な血液、腎、内分泌腺、肺、胃腸、心臓血管、肝臓、精神医学、神経系、又はアレルギー性の疾患(薬物アレルギーを含むが、投薬の時点で未処置で無症状の季節性アレルギーを除く)の証拠又は履歴。以下の血清検査の何れかに関する陽性結果の履歴、又は現在その結果がある被験体:B型肝炎表面抗原(HBsAg)、B型肝炎コア抗体(HBcAb)、抗C型肝炎抗体(HCV Ab)、又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)。治療薬のアレルギー反応又はアナフィラキシー反応の履歴がある被験体。30日以内(又は、局所的な要件によって決定される、何れか長い方)の治験薬での処置、或いは、研究薬の第1投薬に先行するバイオロジクスについて5半減期又は180日。妊娠している女性;授乳中の女性;及び妊娠の可能性がある女性。
【0181】
主要評価項目:用量制限又は不耐用性の処置に関連する有害事象(AE)の発生[時間枠:12週]。処置で発現したAE(TEAE)の発生、重症度及び因果関係、及び、処置で発現した有害事象による撤回[時間枠:12週]。異常な検査所見の発生及び規模[時間枠:12週]。バイタルサイン、血圧(BP)及び心電図(ECG)のパラメータにおける異常な及び臨床的に関連のある変化[時間枠:12週]。
【0182】
副次的評価項目:
【0183】
単回の漸増用量:最大の観察された血漿中濃度(Cmax)[時間枠:12週]。単回の漸増用量:最大の観察された血漿中濃度に達する時間(Tmax)[時間枠:12週]。単回の漸増用量:時間0から14日までの血漿中濃度-時間プロファイル下の面積(AUC14日)[時間枠:12週]。単回の漸増用量:推定された時間0から無限時間までの血漿中濃度-時間プロファイル下の面積(AUCinf)[時間枠:12週]。単回の漸増用量:時間0から最後の数量化可能な濃度の時間までの血漿中濃度-時間プロファイル下の面積(AUClast)[時間枠:12週]。単回の漸増用量:用量により標準化された最大血漿中濃度(Cmax[dn])[時間枠:12週]。単回の漸増用量:推定された時間0から無限時間までの血漿中濃度-時間プロファイル下の用量により標準化された面積(AUCinf[dn])[時間枠:12週]。単回の漸増用量:時間0から最後の数量化可能な濃度の時間までの血漿中濃度-時間プロファイル下の用量により標準化された面積(AUClast[dn])[時間枠:12週]。単回の漸増用量:血漿減衰半減期(t1/2)[時間枠:12週]。血漿減衰半減期は、2分の1減少するまでの血漿中濃度について測定された時間である。単回の漸増用量:平均滞留時間(MRT)[時間枠:12週]。単回の漸増用量:定常状態(Vss)の分布容積[時間枠:6週間]。分布容積は、薬物の所望の血中濃度を産生するために薬物の総量が一様に分配される必要がある理論的な容積として定められる。定常状態分布容積(Vss)は定常状態の明らかな分布容積である。単回の漸増用量:全身除去(CL)[時間枠:6]。CLは、薬物が身体から取り除かれる割合の定量的測度である。
【0184】
複数回漸増用量の最初の用量:最大の観察された血漿中濃度(Cmax)[時間枠:12週]。複数回漸増用量の最初の用量:最大の観察された血漿中濃度に達する時間(Tmax)[時間枠:12週]。複数回漸増用量の最初の用量:時間0から時間τまでの血漿中濃度-時間プロファイル下の面積、τ=2週間である投与間隔(AUCτ)[時間枠:12週]。複数回漸増用量の最初の用量:用量により標準化された最大血漿中濃度(Cmax[dn])[時間枠:12週]。複数回漸増用量の最初の用量:時間0から時間τまでの血漿中濃度-時間プロファイル下の用量により標準化された面積、τ=2週間である投与間隔(AUCτ[dn])[時間枠:12週]。血漿減衰半減期(t1/2)[時間枠:12週]。血漿減衰半減期は、2分の1減少するまでの血漿中濃度について測定された時間である。複数回漸増用量の最初の用量:平均滞留時間(MRT)[時間枠:12週]。明らかな分布容積(Vz/F)[時間枠:12週]。分布容積は、薬物の所望の血將中濃度を産生するために薬物の総量が一様に分配される必要がある理論的な容積として定められる。経口投与の後の明らかな分布容積(Vz/F)は吸収された分画の影響を受ける。複数回漸増用量の最初の用量:定常状態(Vss)の分布容積[時間枠:12週間]。分布容積は、薬物の所望の血中濃度を産生するために薬物の総量が一様に分配される必要がある理論的な容積として定められる。定常状態分布容積(Vss)は定常状態の明らかな分布容積である。複数回漸増用量の最初の用量:明らかな経口除去(CL/F)[時間枠:12週]。薬物の除去は、薬物が正常な生物学的方法によって代謝又は排除される割合の測度である。経口投与後に得られた除去(明らかな経口除去)は、吸収された投薬の分画の影響を受ける。除去は集団薬物動態(PK)モデリングから評価される。薬物除去は、薬物が血液から取り除かれる割合の定量的測度である。複数回漸増用量の最初の用量:全身除去(CL)[時間枠:12週]。CLは、薬物が身体から取り除かれる割合の定量的測度である。
【0185】
複数回漸増用量の複数回用量:最大の観察された血漿中濃度(Cmax)[時間枠:12週]。複数回漸増用量の複数回用量:最大の観察された血漿中濃度に達する時間(Tmax)[時間枠:12週]。複数回漸増用量の複数回用量:時間0から時間τまでの血漿中濃度-時間プロファイル下の面積、τ=2週間である投与間隔(AUCτ)[時間枠:12週]。複数回漸増用量の複数回用量:用量により標準化された最大血漿中濃度(Cmax[dn])[時間枠:12週]。複数回漸増用量の複数回用量:時間0から時間τまでの血漿中濃度-時間プロファイル下の用量により標準化された面積、τ=2週間である投与間隔(AUCτ[dn])[時間枠:12週]。複数回漸増用量の複数回用量:血漿減衰半減期(t1/2)[時間枠:12週]。血漿減衰半減期は、2分の1減少するまでの血漿中濃度について測定された時間である。複数回漸増用量の複数回用量:明らかな分布容積(Vz/F)[時間枠:12週]。分布容積は、薬物の所望の血將中濃度を産生するために薬物の総量が一様に分配される必要がある理論的な容積として定められる。経口投与の後の明らかな分布容積(Vz/F)は吸収された分画の影響を受ける。複数回漸増用量の複数回用量:定常状態(Vss)の分布容積[時間枠:12週間]。分布容積は、薬物の所望の血中濃度を産生するために薬物の総量が一様に分配される必要がある理論的な容積として定められる。定常状態分布容積(Vss)は定常状態の明らかな分布容積である。複数回漸増用量の複数回用量:明らかな経口除去(CL/F)[時間枠:12週]。薬物の除去は、薬物が正常な生物学的方法によって代謝又は排除される割合の測度である。経口投与後に得られた除去(明らかな経口除去)は、吸収された投薬の分画の影響を受ける。除去は集団薬物動態(PK)モデリングから評価された。薬物除去は、薬物が血液から取り除かれる割合の定量的測度である。複数回漸増用量の複数回用量:全身除去(CL)[時間枠:12週]。CLは、薬物が身体から取り除かれる割合の定量的測度である。複数回漸増用量の複数回用量:最小限の観察された血漿トラフ濃度(Cmin)[時間枠:12週]。複数回漸増用量の複数回用量:定常状態の平均濃度(Cav)[時間枠:12週間]。複数回漸増用量の複数回用量:観察された蓄積比率(Rac)[時間枠:12週]。複数回漸増用量の複数回用量:ピーク・トラフ(Peak to trough fluctuation)(PTF)[時間枠:12週]。複数回漸増用量の追加のパラメータ:対応する静脈内用量での皮下投与のバイオアベイラビリティの推定(F)[時間枠:12週]。単回漸増用量及び複数回漸増用量両方の免疫原性:抗薬物抗体の発達(ADA)[時間枠:12週]。
【0186】
実施例6
第1b相の非盲検臨床試験を行い、クローン病に関連付けられるリスク変異体を持つ患者に対する本明細書に提供される抗TL1Aの抗体の効果を評価する。
【0187】
群:その存在がクローン病に対する感度の増加に関連付けられるリスク変異体に対して陽性の10人の患者に抗体を投与する。リスク変異体に対して陰性の5-10人の患者に抗体を投与する。患者をリアルタイムでモニタリングする。内視鏡検査及び生検の集中的な準備(Central ready)を利用し、読み手は処置及びエンドポイントの時点まで盲検される。
【0188】
包含基準:被験体の2つの群が選択される:その存在がクローン病に対する感度の増加に関連付けられるリスク変異体を持つ被験体、及び、リスク変異体を欠く被験体。
【0189】
主要評価項目:クローン病の単純内視鏡スコア(SESCD)、クローン病活動係数(CDAI)、及び患者により報告された結果(PRO)。リスク変異体がベースラインから50%の低下を示す場合、第2a相臨床試験を行う。
【0190】
包含基準:PRO参加基準:2以上の腹痛スコア及び/又は4以上の排便回数スコア。最初の結果は、ベースラインからの悪化がない、0又は1の疼痛スコア(core)及び3以下の排便回数スコアである。内視鏡検査参加基準:大腸が含まれる場合、4及び6のスコアでSESCDの回腸のみの参加。最初の内視鏡結果は平均SESCDの40-50%のデルタである。
【0191】
実施例7
第2a相臨床試験を行い、クローン病を抱える被験体における本明細書に提供された抗TL1Aの抗体の効果を評価する。
【0192】
群:1つの群(抗体及びプラセボの群)当たり40人の患者が12週間、抗体又はプラセボで処置される。各群から20人の患者が最高用量で処置された後に中間解析を行い、最初の結果(SESCD、CDAI及びPROにおいてベースラインから50%の低下)におけるプラセボ群と処置群との間の40-50%のデルタを探した。
【0193】
主要評価項目:クローン病の単純内視鏡スコア(SESCD)、クローン病活動係数(CDAI)、及び患者により報告された結果(PRO)。
【0194】
包含基準:PRO参加基準:2以上の腹痛スコア及び/又は4以上の排便回数スコア。最初の結果は、ベースラインからの悪化がない、0又は1の疼痛スコア(core)及び3以下の排便回数スコアである。内視鏡検査参加基準:大腸が含まれる場合、4及び6のスコアでSESCDの回腸のみの参加。最初の内視鏡結果は平均SESCDの40-50%のデルタである。
【0195】
実施例8
ヒト化抗TL1A抗体を生成した。簡単に、5C3D11及びヒト生殖細胞系列抗体からのフレームワーク領域のCDRを含む抗体のライブラリを作成した。ヒトTL1A(hTL1A)抗原への親和性を持つ抗体を同定するためのファージディスプレイを使用してライブラリをスクリーニングした。表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して60のクローンの親和性をランク付けした。5つの抗体を、フレームワーク配列の親和性データ及び評価に基づいて選択した:AS12816、AS12819、AS12823、AS12824、及びAS12825。選択されたクローンの配列データを表7(VH)及び表8(VL)に示す。5つの選択されたクローンの親和性データを表9に示す。5つの選択されたクローン(AS12816、AS12819、AS12823、及びAS12824)のうち4つは複数回の親和性測定のために選択され、対応するデータを表10に示す。
【0196】
【表7】
【0197】
【表8】
【0198】
【表9-1】
【0199】
【表9-2】
【0200】
【表10】
【0201】
実施例9
表面プラズモン共鳴(SPR)を使用する結合競合アッセイを行い、試験抗TL1A抗体が、本明細書に記載されるあらゆる抗TL1A抗体としてTL1A上で同じ領域に結合するかどうかを評価する。この実施例において、基準抗体は、SEQ ID NO:6-8の重鎖CDR及びSEQ ID NO:14-16の軽鎖CDRを含む。
【0202】
Biacore 2000又は3000の機器を使用して、カルボキシメチル化デキストラン・センサチップ表面(CMS)上でのアミンカップリングを介して、基準抗体を直接固定する。8.1mMのNaHPO、1.47mMのKFPO、pH7.2、237mMのNaCI、2.7mMのKCI、3.4mMのEDTA、及び0.01%のtween20(PBS-NET)の中で10nMに希釈された組み換え型可溶性ヒトTL1A又はマウスTL1Aを、10 RI/分の流量で約1分間注入して、少なくとも100の反応単位(RU)の固定された抗体上で結合レベルを達成する。その後、TL1A上での潜在的結合部位を全て飽和するために、基準抗体を5分間30nMで注入する。基準抗体の反復注射を行い、この飽和を確かにする。次に、対照としてPBS-NET又はPBS-NET単独での試験抗体を5分間、30nMで注入する。試験抗体が第1の抗体で飽和されたTL1Aに結合する場合、このことは、基準抗体と比較して試験抗体がTL1A上で非競合領域に結合することを示す。試験抗体が飽和したTL1Aに結合しなかった場合、このことは、2つの抗体が同じ領域に結合する、又はTL1Aへの結合と競合することを示す。この戦略は、固定された試験抗体、及び試験抗体がTL1Aと結合した後に注入された基準抗体で繰り返してもよい。各サイクルを繰り返してもよい。各サイクルの終わりに、固定された抗体表面を、3M MgCl2の30秒のパルス、又は0.1%のTFA、その後PBS-NETの2回連続の15秒のパルスによって再生成する。全ての注射を10Hzの収集率で、25℃で行う。全てのセンサーグラムは、対照表面及び緩衝液注射の両方の使用により二重に参照される。
【0203】
実施例10
SPRを使用する別の結合競合アッセイを行い、試験抗TL1A抗体が、本明細書に記載されるあらゆる抗TL1A抗体としてTL1A上で同じ領域に結合するかどうかを評価する。この実施例において、基準抗体は、SEQ ID NO:6-8の重鎖CDR及びSEQ ID NO:14-16の軽鎖CDRを含む。
【0204】
アレイにわたり3又は4つの異なる密度で結合されるアミンを介して、基準抗体をSPRチップに固定する。TL1Aタンパク質を一連の増大濃度で注入して、競合ビニング(competition binning)実験中に動力学的パラメータ及び注射に適切な濃度を評価する。一旦、ビニング実験に関する最適抗原濃度が決定されると、再生成条件(典型的には簡潔な低いpH注射)を評価して、ビニングアッセイのサイクル間に再生成のための最適条件を確立する。
【0205】
Pre-Mix手法を用いてビニングを行い、そこでは、中程度の濃度のTL1Aがアレイにわたって、それ自体で、或いは、飽和抗体濃度(例えば30-50μg/mL)で試験抗体に予め複合させて、注入される。試験抗体が固定され、基準抗体がTL1Aに予め複合されるように、アッセイを行ってもよい。固定された抗体からの固有の領域に結合するクローンはシグナルの増加をもたらすが、一方で競合クローンは抗原結合シグナルを減少させる。全てのクローンがリガンド及び分析物の両方として試験されるように、競合アッセイを行う。
【0206】
様々な実施形態が上記の詳細な説明に記載される。これらの記載が上記実施形態を直接説明する一方、本明細書に示され且つ説明された特定の実施形態に対する修正及び/又は変形を当業者が考え得ることが理解される。本説明の範囲内に属するあらゆる修正又は変形も、同様に本明細書に含まれていることが意図される。具体的に明記されていなければ、それは、本明細書及び特許請求の範囲中の単語及びフレーズが、当業者に対して通常且つ慣用の意味で伝わるという本発明者らの意向である。
【0207】
本出願時に出願人に知られる様々な実施形態に関する前述の説明が提供され、例示及び説明の目的を意図されている。本説明は、包括的であることも、開示された正確な形態への限定であることも意図しておらず、多くの修正及び変形が、上述の教示の観点から可能である。記載された実施形態は、本出願の原理及び実施を説明し、そして当業者が、考慮される特定の用途に適するように、随意に様々な修正と共に様々な実施形態を利用することを可能にする役割を果たす。それ故、本開示は、開示された特定の形態に限定されないことが意図されている。
【0208】
特定の実施形態が示され且つ説明された一方、本明細書の教示に基づいて、変更及び修正が、本開示及びその更に広範囲の態様から逸脱することなく行われてもよく、それ故に、添付された特許請求の範囲が、そのような変更及び修正が全て本開示の真の趣旨及び範囲内にあるように、それらの範囲内に包含されることは、当業者に明白である。概して、本明細書で使用される用語は通常、「オープン」ターム(“open”terms)として意図されることが、当業者によって理解される(例えば、用語「含んでいる(including)」は、「~などを含んでいるがこれらに限定されない(including but not limited to)」として解釈されるべきであり、用語「有している(having)」は「少なくとも~を有している(having at least)」と解釈されるべきであり、用語「含む(include)」は、「~などを含むがこれらに限定されない(include but not limited to)」として解釈されるべきである、等)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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