(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】機能性膜を有する層状製品、そのような層状製品を含む履物及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20221214BHJP
A43B 7/06 20060101ALI20221214BHJP
A43B 7/12 20060101ALI20221214BHJP
A43B 13/12 20060101ALI20221214BHJP
A43B 23/02 20060101ALI20221214BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20221214BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20221214BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20221214BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20221214BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20221214BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20221214BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20221214BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20221214BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221214BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20221214BHJP
【FI】
B32B27/00 Z
A43B7/06
A43B7/12
A43B13/12 Z
A43B23/02 101A
B29C64/118
B32B5/18
B32B27/12
B32B27/30 A
B32B27/30 B
B32B27/30 D
B32B27/32 Z
B32B27/34
B32B27/36
B32B27/40
B33Y10/00
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2019546019
(86)(22)【出願日】2017-02-23
(86)【国際出願番号】 EP2017000256
(87)【国際公開番号】W WO2018153423
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2019-10-18
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】391018178
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエーツ,ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター キーダーレ
(72)【発明者】
【氏名】スタン ナバーニク
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン ムート
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】山崎 勝司
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/015037(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2005/0210708(US,A1)
【文献】国際公開第2005/037543(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の面(41)及び第二の面(42)を有する、防水性かつ水蒸気透過性膜材料(40,40a,40b)を含む、防水性かつ水蒸気透過性膜(4)、
前記膜(4)の第一の面(41)の少なくとも一部を覆い、
3D印刷装置の使用により前記膜の第一の面(41)上に印刷された少なくとも1つの三次元構築層(3-1~3-n)によって形成されている熱可塑性材料(3)であって、前記少なくとも1つの三次元構築層(3-1~3-n)の熱可塑性材料(3)は前記膜の膜材料(40,40a,40b)に結合されている、熱可塑性材料(3)、
を含む、層状製品(1)の製造方法
であって、
前記膜(4)の前記第一の面(41)と前記少なくとも1つの三次元構築層(3-1~3-n)との間に少なくとも1つの第一のテキスタイル(5)をさらに含み、
前記膜は少なくとも1つのシーム(150)を含み、かつ
前記少なくとも1つのシーム(150)は、該シームの防水性シール(30)を形成する前記少なくとも1つの三次元構築層(3-1~3-n)によって覆われていることを特徴とする、層状製品(1)の製造方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第一のテキスタイル(5)はフィラメント(51)を含み、前記第一のテキスタイル(5)の前記フィラメント(51)の少なくとも一部は前記熱可塑性材料(3)とともに少なくとも部分的に溶融される、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第一のテキスタイル(5)はポリアミド(PA)から作られたモノフィラメント(51)を含む、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記膜材料は少なくとも1つの多孔質膜材料(40b)を含み、前記少なくとも1つの三次元構築層(3-1~3-n)の前記熱可塑性材料(3)は前記少なくとも1つの多孔質膜材料(40b)の孔に浸透する、請求項1~3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
前記膜材料(40b)は、ASTM F316-86に規定されるバブルポイントが400kPa未満である、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
前記膜材料は少なくとも1つの非多孔質膜材料(40a)を含み、前記少なくとも1つの三次元構築層(3-1~3-n)の前記熱可塑性材料(3)は前記少なくとも1つの非多孔質膜材料(40a)とともに溶融される、請求項1~5のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの三次元構築層(3-1~3-n)は付加製造技術によって形成される、請求項1~6のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
前記熱可塑性材料(3)はポリウレタン(TPU)、コポリエステル(TPC)及びエラストマー(TPE)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~7のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項9】
前記熱可塑性材料(3)はポリ乳酸(PLA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロン、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びグリコール変性PET(PETG)、高性能熱可塑性コポリエステル(TPC)、ポリプロピレン(PP)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びその他の熱可塑性エラストマー及び/又はそれらのブレンド又はコポリマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~8のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの三次元構築層(3-1~3-n)は弾性を有するように形成される、請求項1~9のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの三次元構築層(3-1~3-n)は、ジグザグ様形状で形成されている、請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのシーム(150)は縫製されている、請求項1記載の製造方法。
【請求項13】
前記テキスタイルは少なくとも0.7g/m
2/μmの多孔度を有する、請求項1~12のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項14】
前記膜材料(40)は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリウレタン(PU)、ポリエステル(PES)及びコポリエーテルエステル、ポリエーテル、ポリアミド(PA)、コポリエーテルアミド及びポリアクリレートのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~13のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項15】
前記防水性かつ水蒸気透過性膜(4)は三次元形状に形成されている、請求項1~14のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項16】
前記層状製品(1)は履物(100)の構成要素である、請求項1~15のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項17】
前記防水性かつ水蒸気透過性膜は三次元ブーティ(200)、インサート又はソックスとして形成されている、請求項16記載の製造方法。
【請求項18】
前記三次元ブーティ(200)、インサート又はソックスはシームレス防水層を含む、請求項17記載の製造方法。
【請求項19】
前記三次元ブーティ、インサート又はソックス(200)は、その底部(201)に少なくとも1つのシーム(150)を有し、前記少なくとも1つのシーム(150)は少なくとも1つのシーム(150)の防水性シールを形成する少なくとも1つの三次元構築層(3-1~3-n)によって覆われている、請求項17又は18記載の製造方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの三次元構築層(3-1~3-n)は、前記ブーティ、インサート又はソックス(200)の底部(201)上でソール(202)を形成している、請求項17~19のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの第一のテキスタイル(5)は、g/平方メートル単位の面積あたりの重量をマイクロメートル単位の厚さで割り算し、該厚さは20kPaの荷重下で測定した多孔度が少なくとも0.5g/m
2/μmである、請求項1~20のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項22】
アッパー(101)及びソール(103)を含む履物(100)であって、前記アッパー(101)は請求項1~21のいずれか1項記載の製造方法で製造された層状製品(1)を含む、履物(100)の製造方法。
【請求項23】
前記アッパー(101)は外側材料(102)を含み、前記層状製品(1)は外側材料(102)の少なくとも一部を形成している、請求項22記載の製造方法。
【請求項24】
前記アッパー(101)は前記ソール(103)の上方に底部(201)を含み、前記底部(201)は、少なくとも部分的に前記熱可塑性材料(3)によって形成されている、請求項22又は23記載の製造方法。
【請求項25】
前記ソール(103)は少なくとも部分的に前記熱可塑性材料(3)によって形成されている、請求項22~24のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項26】
前記熱可塑性材料(3)は、ディスペンサ(74)から膜(4)の第一の面(41)に選択的に堆積され、前記ディスペンサは前記膜(4)の表面まで0.00~0.15mmの距離に配置される、請求項1~21のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項27】
前記ディスペンサ(74)を出るときに210~250℃の温度を有する前記熱可塑性材料(3)は提供される、請求項26記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性かつ水蒸気透過性膜を有する層状製品、及び、そのような層状製品を含む履物、ならびにそのような層状製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
保護衣料品は、湿潤条件など(雨天、雪、風など)の屋外条件での着用に使用され、水蒸気が衣料品を通して外部に透過できるようにするなど、着用者を快適に保ちながら、物品への水又は他の流体の漏れを防ぐことによって着用者を保護すべきである。さらに、そのような物品は、通常の使用の間の保護及び快適性の機能的属性を維持すべきである。
【0003】
一般に、初期の衣服及び靴は、通気性があるが防水ではないか、又は、防水性であるが通気性ではなかった(例えば、ゴム製ジャケット又はゴム製ブーツなど)。その後、膜又はラミネートを使用して、衣類又は靴のアッパー又は靴のソール領域をライニングし、それらを防水性かつ通気性にしていた。さらに、ある種の靴では、通気性を高めるために靴のソール及び/又はアッパーに開口部又は穴を作っていた。
【0004】
特に、履物製品に関して、初期には、靴は、革などのソール材料の使用の結果として、通気性とも呼ばれる、ソール領域にける特定の水蒸気透過性を有するが、ソール領域における透水性の欠点があり、又は、靴はゴム又はゴム状プラスチックなどの防水性材料で作られたアウトソールの使用の結果として、靴はソール領域において防水性又は水蒸気不透過性であるが、湿分が足のソール領域に蓄積しうるという欠点があった。
【0005】
より最近では、ソール領域において防水性があり、また、水蒸気透過性がある靴は、ソールに貫通穴を開け、該貫通穴を防水性の水蒸気透過性の膜で覆うことで作られており、それにより、水は外側から靴内部に浸透することができないが、足のソール領域に形成される湿分は靴内部から外側に逃げることができる。ここで、2つの異なる解決策は追求されている。ソールは靴内部からソールの歩行面に水蒸気を導くことができる垂直貫通孔を備えているか、又は、ソールはアウトソール上に蓄積した水蒸気がソールの側周部から逃げることができる水平チャネルを備えている。他の変形形態は、通気性のアッパー又はアッパーの一部に開口部を設け、ソールの上方のアッパーの底部にある通気性スペーサ構造を通して、靴の水平方向の空気流を可能にする。そのような履物を防水性にするために、ソールの上方の部分などの靴の少なくとも一部を防水性かつ水蒸気透過性にする膜は典型的に使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
動きの柔軟性が不可欠である場合に、上記の機能属性を備えた弾性又は伸長性の布帛ラミネート及び/又はシューアッパーは、柔らかくてドレープ可能な感触とともに望まれている。
【0007】
したがって、衣料品及び履物を含む様々な用途での使用において高度の防水性、通気性、柔軟性及び快適さを達成する複合材料が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示される実施形態は、第一の面及び第二の面を有する防水性かつ水蒸気透過性膜を含む層状製品であって、前記膜は防水性かつ水蒸気透過性である膜材料を含み、前記層状製品は熱可塑性材料をさらに含み、該熱可塑性材料は膜の第一の面の少なくとも一部を覆いそして膜の第一の面の上に印刷された少なくとも1つの三次元構築層により形成されており、該少なくとも1つの三次元構築層の熱可塑性材料は前記膜の膜材料に結合されている層状製品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
このような層状製品を用いて、上記の機能属性を備えた布帛、ラミネート及びシューアッパーを製造することができる。これらは、スポーツシューズなどの軽量衣類品又は軽量履物に組み込むのに十分に柔軟性及び薄さがあり、温暖及び/又は過酷な条件で着用される。それでも、少なくとも1つの三次元構築層の熱可塑性材料は、膜が履物のアッパーなどの衣料品又は履物の外側を形成するのに十分な耐久性及び剛性の構成要素を提供する。
【0010】
そのようなものとして、衣料品及び履物を含む様々な用途での使用において高度の防水性、通気性、柔軟性及び快適さを達成する複合材製品を提供することができる。熱可塑性材料の少なくとも1つの三次元構築層は、3D印刷装置の使用により製造されるため、製造コストは非常に低く保つことができる。さらに、3D印刷装置を使用することにより、膜の耐久性構成要素は、それぞれの用途のニーズに合わせたあらゆる幾何形状で作製することができ、例えば、熱可塑性材料の構築層を所望の数だけ、例えばそれぞれの構築層の望ましい厚さ及び/又は幾何形状と組み合わせて選択的に堆積させることにより作製することができる。特に、熱可塑性材料は、少なくとも2つの三次元構築層によって形成される。
【0011】
1つの実施形態によれば、層状製品は、膜の第一の面と少なくとも1つの三次元構築層との間に少なくとも1つの第一のテキスタイルをさらに含む。さらなる実施形態によれば、テキスタイルはフィラメントを含む。これらのフィラメントはモノフィラメント又はマルチフィラメントを含むことができる。テキスタイルは、編物、織物又は不織布から選択されうる。少なくとも1つの三次元構築層の熱可塑性材料はテキスタイルに結合し、テキスタイルを通過し、膜材料に効果的かつ耐久的に結合することができる。
【0012】
1つの実施形態によれば、フィラメントの少なくとも一部は、熱可塑性材料とともに少なくとも部分的に溶融される。したがって、少なくとも1つの第一のテキスタイル又はその繊維の一部(例えば、テキスタイルバッカーなどとして使用される、ポリアミド(PA)モノフィラメント、例えばポリアミド6又は66などのモノフィラメントを含む)を少なくとも部分的に融解し、及び/又は、繊維(例えば、非ポリアミド繊維など)を包囲することにより、効果的かつ耐久性結合を実施することができる。
【0013】
1つの実施形態によれば、少なくとも1つの第一のテキスタイルはポリアミド(PA)から作られたモノフィラメントを含む。
【0014】
1つの実施形態によれば、膜材料は少なくとも1つの多孔質膜材料を含み、少なくとも1つの三次元構築層の熱可塑性材料は前記少なくとも1つの多孔質膜材料の細孔に浸透する。このようにして、例えば延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)から作られた、多孔質膜の細孔への浸透によって、効果的かつ耐久性結合を達成することができる。
【0015】
多孔質膜材料の細孔は、ASTM F316-86の手順に従って、バブルポイント法で測定することができる。試験片の細孔を満たす湿潤流体としてイソプロピルアルコールを使用する。報告される値は、3つのサンプルの平均測定値を表す。バブルポイントは、試験片の最大孔からイソプロピルアルコールを追い出し、多孔質媒体を覆っているイソプロピルアルコール層を通過して上昇することで検出可能なバブルの最初の連続流を形成するのに必要な空気圧である。この測定は最大細孔サイズの評価値を提供する。
【0016】
本発明の1つの実施形態によれば、膜材料は400kPa未満のバブルポイントを有する。このサイズにより、熱可塑性材料が膜の細孔に十分に浸透し、良好な結合が確保される。
【0017】
1つの実施形態によれば、膜材料は少なくとも1つの非多孔質膜材料を含み、少なくとも1つの三次元構築層の熱可塑性材料は前記少なくとも1つの非多孔質膜材料とともに溶融する。このようにして、例えばポリウレタン(PU)又はモノリシック層を上に有する多孔質膜から作製された非多孔性モノリシック膜とともに熱可塑性材料を溶融させることにより、効果的かつ耐久性結合を実現することができる。
【0018】
上記の機構の組み合わせは、特に、膜の第一の面と少なくとも1つの三次元構築層との間の少なくとも1つの第一のテキスタイルの使用と組み合わせで、結合を非常に強くし、それにより、耐久性かつ防水性結合は作られる。少なくとも1つの第一のテキスタイルの使用により、最終構造の機械的安定性を高めることができる。
【0019】
1つの実施形態によれば、少なくとも1つの三次元構築層は、付加製造技術、特に溶融堆積モデリング(FDM)技術に従って形成される。
【0020】
1つの実施形態において、熱可塑性材料は、ポリウレタン(TPU)、コポリエステル(TPC)又はエラストマー(TPE)を含む。
【0021】
別の実施形態において、熱可塑性材料は、ポリ乳酸(PLA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロン及びナイロン系コポリエステル、アルケニルコハク酸無水物(ASA)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びグリコール変性PET(PETG)、DSM Arnitel Eco(Innoflex)ポリプロピレン(PP)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びその他の熱可塑性エラストマー及び/又はそれらのブレンド又はコポリマーのうちの少なくとも1つを含むことができる。材料にはフィラーが含まれることもできる。
【0022】
1つの実施形態によれば、少なくとも1つの三次元構築層は弾性を有するように形成される。特に、それは、弾性材料及び形状により弾性を提供する材料の少なくとも一方によって形成される。形状による弾性とは、材料がジグザグ状又は蛇行形状などの特定のパターンで印刷されており、例えば、直線に伸長されうることを意味する。有利には、熱可塑性材料の特定のパターンを作製することにより、及び/又は、適度に弾性の印刷材料を使用することにより、剛性と弾性の要件を組み合わせることができる。
【0023】
1つの実施形態によれば、少なくとも1つの三次元構築層は、ジグザグ様形状に形成される。特に、ジグジグとして形成される。そのような形状により、少なくとも1つの三次元構築層は、そのジグザグ延在部に沿って弾性を有するように形成することができる。
【0024】
1つの実施形態において、膜は少なくとも1つのシームを備えている。例えば、少なくとも1つのシームは縫製されている。有利には、少なくとも1つのシームは、シーム上に防水性シールを形成する少なくとも1つの三次元構築層によって覆われている。これは、シームテープを使用せずに有利に行うことができる。したがって、膜及びシームの有効な防水加工を行うことができ、シームテープの面倒な使用を有利に省くことができる。
【0025】
さらに、3D印刷技術を採用することにより、非常に異なる厚さ及び/又は圧縮率の膜又は膜ラミネートを用いて防水性シールを有利に作製することができる。
【0026】
1つの実施形態によれば、膜材料は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリウレタン(PU)、ポリエステル(PES)及びコポリエーテルエステル、ポリエーテル、ポリアミド(PA)、コポリエーテルアミド及びポリアクリレートの少なくとも1つ、ならびに他の適切な熱可塑性かつエラストマーフィルムを含む。本発明の1つの態様において、防水性水蒸気透過性膜は、フルオロポリマーから作られることができ、特に微孔質延伸ポリテラフルオロエチレン(ePTFE)から作られることができる。微孔質ポリテトラフルオロエチレン膜は、US 3 953 566及びUS 4 187 390で教示されているような延伸ポリテトラフルオロエチレンの膜である。そのような延伸ポリテトラフルオロエチレンの膜は、商品名GORE-TEX(登録商標)ファブリックでW.L.Gore and Associatesから市販の布帛中に存在している。水蒸気透過性かつ防水性膜は、メリーランド州エルクトンにあるW.L.Gore and Associatesに付与されたUS 4 194 041及びUS 4 942 214の教示により実質的に製造されたポリウレタンコート化微孔質延伸ポリテトラフルオロエチレン膜から構成されうる。
【0027】
1つの実施形態によれば、少なくとも1つの第一のテキスタイルは、膜の第一の面にラミネート化される。そのようなラミネートは主に当該技術分野で知られている。
【0028】
1つの実施形態において、テキスタイルは少なくとも0.5g/m2/μmの多孔度を有する。このようなテキスタイルを使用すると、機械的安定性、柔軟性及びシーリング性能の良好な組み合わせを実現できる。別の実施形態において、テキスタイルは、少なくとも0.7g/m2/μm、好ましくは少なくとも0.85g/m2/μmの多孔度を有する。この場合に、材料は、膜に存在することがあるシームを浸入してシールすることができる。テキスタイルの開口度又は多孔度は、g/平方メートル単位の面積あたりの重量をマイクロメートル単位の厚さで割ることで計算できる。厚さは20kPaの荷重下で測定される。
【0029】
膜はまた、それにラミネート化された少なくとも1つのさらなるテキスタイルを、例えば印刷材料がある面の反対面に有することができる。
【0030】
有利には、熱可塑性材料は弾性ラミネート上に印刷することができる。US5 804 011は、二次元で伸長可能な布帛を開示している。テキスタイル層は、弾性テキスタイル構成を有することができ、例えば、弾性ニットパターン(トリコット、ワープニット又は同様のニットパターンなど)を有する編物として作られていることができる。そのような場合に、テキスタイルは、所望の弾性特性を提供するために弾性糸を必ずしも含む必要はない。しかしながら、多くの構成では、テキスタイル層が、例えば、エラスタンから作られた弾性フィラメントを含むと役立つ場合があり、それにより、テキスタイル層の弾性をさらに高める。
【0031】
熱可塑性材料が印刷される膜も伸長可能であることができる。伸長可能性は、材料及び/又は形状によって作られることができる。
【0032】
膜及び本明細書で記載される任意の他の層、例えば、テキスタイルの弾性又は伸長性はDIN EN 14704-1(2005年7月)、方法Aに従って測定されうる。試験は以下の構成の試験サンプルを使用して、その中に記載されているとおりに実行されうる:試験サンプル幅=25mm、試験サンプル試験長さ=50mm(試験長さは向かい合ったクランプ間のテストサンプルの自由長を指す)、試験サンプルの全長=100~150mm。試験サンプルは5つの連続した試験サイクルを受ける。各試験サイクルにおいて、試験サンプルは7.5Nの一定の張力を受け、試験サンプルの最大伸びEを測定する。それ以外は、試験条件はDIN EN 14704-1(2015年7月)、方法Aに示されたとおりである。試験サンプルは、5回目の試験サイクルの終わりに、元の長さと比較した最大伸びEが少なくとも64mmに達成する場合に弾性と考えられる。より好ましくは、試験サンプルは、5回目の試験サイクルの終わりに、最大延びEが少なくとも8mmに達成し得る。さらにより好ましくは、試験サンプルは、5回目の試験サイクルの終わりに、最大延びEが少なくとも10mmに達成し得る。すべての場合において、試験サンプルは、張力の解放の30分後に測定して、少なくとも80%の回復率が要求される。回復率とは、DIN EN 14704-1(2015年7月)による残留伸びCを指す。5回目の試験サイクルの終了後に張力を緩和すると、試験サンプルはDIN EN 14704-1(2015年7月)による残留伸びCに回復する。残留伸びCがDIN EN 14704-1(2015年7月)に従って測定された最大伸びの20%以下に等しい場合に、試験サンプルの回収率は少なくとも80%である。例えば、7.5Nでの試験サンプルの最大伸びEが6mmの場合に、残留伸びC≦1.2mmであることが必要である。特定の実施形態において、30分後に、90%以上もの回復率は達成され得る。
【0033】
本発明は、防水性かつ水蒸気透過性膜が三次元形状に形成される場合に有利に使用することができる。シューアッパーなどの複合材料の外部及び/又は内部構成要素は、膜上に直接印刷されうる。
【0034】
1つの実施形態によれば、層状製品は履物の構成要素である。特に、防水性かつ水蒸気透過性膜は、三次元のブーティ、インサート又はソックスとして形成される。例えば、シューアッパーの外部及び/又は内部構成要素は、このように、ブーティ膜上に直接印刷することができる。三次元のブーティ、インサート又はソックスは、ブーティ、インサート又はソックスを作製するために使用できる、例えばWO2015/123482に記載されている、靴型又は足の形状に形成されたシームレス膜であるか、又は、それを含むことができる。
【0035】
1つの実施形態によれば、三次元ブーティは、その底部に少なくとも1つのシームを有し、該少なくとも1つのシームは少なくとも1つの三次元構築層によって覆われ、該構築層は少なくとも1つのシームの防水性シールを形成する。したがって、ブーティ底部の効果的な防水化及びシーリングを行うことができ、シームテープの使用を有利に省くことができる。
【0036】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの三次元構築層はまた、ブーティの底部にソールを形成する。有利なことに、このようにして、底部シーリング及びソールを1つの製造工程で作製することができる。
【0037】
別の態様によれば、アッパー及びソールを含む履物であって、アッパーは、本明細書に記載の態様及び実施形態による層状製品を含む、履物は提供される。
【0038】
好ましい実施形態によれば、アッパーは外側材料を含み、層状製品は外側材料の少なくとも一部を形成する。さらなる実施形態によれば、アッパーは、ソールの上方に底部を含み、底部は少なくとも部分的に熱可塑性材料によって形成される。さらなる実施形態によれば、ソールは、少なくとも部分的に熱可塑性材料によって形成される。有利なことに、このようにして、アッパー及びソールの一部又は全体を作製することができる。
【0039】
別の態様によれば、本明細書に記載の層状製品の製造方法であって、熱可塑性材料がディスペンサから膜の第一の面の上に選択的に堆積される、方法は提供される。
【0040】
特に、1つの実施形態によれば、ディスペンサを離れるときに210~250℃の温度を有する熱可塑性材料は提供される。
【0041】
1つの実施形態によれば、ディスペンサは、膜印刷表面まで0.00~0.15mmの距離、又は第一のテキスタイル印刷表面まで0.05~0.15mmの距離に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明は、図面に示される例示的な実施形態により、以下により詳細に説明される。
【
図1】
図1は本開示の実施形態による層状製品の概略図を示す。
【
図2】
図2は、1つの実施形態による、FDM印刷技術を用いた3Dプリンタを使用する製造装置、及び、それにより製造される、ここでは靴のアッパーの形態である層状製品の概略図を示す。
【
図3】
図3は、1つの実施形態による、FDM印刷技術を用いた3Dプリンタを使用する製造装置、及び、それにより製造される、ここでは履物のブーティ上に形成された底層の形態である層状製品の概略図を示す。
【
図4】
図4は、1つの実施形態による、FDM印刷技術を用いた3Dプリンタを使用する製造装置、及び、それにより製造される、ここではシューアッパーとして形成されたブーティの形態である層状製品の概略図を示す。
【
図5】
図5は、1つの実施形態による、PU膜層などの非多孔質膜材料上に印刷されそして結合された熱可塑性材料の断面図を示す。
【
図6】
図6は、1つの実施形態による、ePTFE膜層などの多孔質膜材料上に印刷されそして結合された熱可塑性材料の断面図を示す。
【
図7】
図7は、1つの実施形態による、テキスタイル層上に印刷されそして結合された熱可塑性材料の断面図を示し、ここではテキスタイル層はポリアミドから作られたモノフィラメントを含む。
【
図8】
図8は、張力がかかっていない状態(
図8A)及び張力がかかった状態(
図8B)の形状により弾性を有するように形成された熱可塑性材料の実施形態を示す。
【0043】
図1は、本開示の実施形態による層状製品1の概略図を示す。第一の実施形態を示す
図1Aによれば、層状製品1は、第一の面41及び第二の面42を有する防水性かつ水蒸気透過性膜4を含む。本実施形態では、第一の面及び第二の面は、一般に知られている2層又は3層の膜ラミネートを形成するように、それぞれのテキスタイル層などの追加層で覆われていない。膜4はモノリシック構造を有することができ、すなわち、防水性かつ水蒸気透過性である1つの膜材料40から製造されることができる。他の実施形態によれば、防水性かつ水蒸気透過性膜4は、多層構造又は複合構造を含むことができ、例えば、異なる種類の材料から作られることができ、例えば、当該技術分野で一般に知られ採用されているように、多孔質延伸ポリテトラフルオロポリマー(ePTFE)の少なくとも1層と、該多孔質ePTFE層の1つの面にポリウレタン(PU)の連続層を含む。
【0044】
図1Bによれば、膜4は、膜4の第一の面41の上に少なくとも1つの第一のテキスタイル5を含む。このようなものとして、膜は、その1つの面の上に少なくとも1つのテキスタイル層5を有する既知の2層ラミネートの一部である。他の実施形態によれば、特定の用途に応じて、膜4の第2の面42の上に第二のテキスタイル層(図示せず)を配置することができる。例えば、第一のテキスタイル5は、モノフィラメントポリウレタン編物を含む。
【0045】
図1A及び1Bに示される両方の実施形態において、熱可塑性材料3は、膜4の第一の面41の少なくとも一部を覆う。例えば、熱可塑性材料3は、連続層又は不連続層を形成し、例えば、膜4の第一の面41の上に特定のパターン又は構造を提供する。熱可塑性材料3は、少なくとも1つの三次元構築層3-1~3-nによって形成され、
図1の本実施形態では4つの三次元構築層3-1~3-4(
図7も参照)によって形成され、それぞれの破線で概略的に示されている。すなわち、熱可塑性材料3の最終層又は構造は、それぞれ熱可塑性材料を含む1つ以上の三次元構築層3-1~3-nによって形成される。特に、ほとんどの場合に、熱可塑性材料3は、少なくとも2つの三次元構築層3-1~3-nによって形成される。
【0046】
特に、1つ以上の三次元構築層3-1~3-nは、それぞれ3D印刷技術によって形成される。スクリーン印刷及びグラビア印刷などの一般的な印刷技術とは対照的に、3Dプリンタ(3D印刷技術を使用するプリンタ)によって形成される構築層は、少なくとも部分的に熱可塑性材料から形成され、典型的に、レイヤーバイレイヤー構造の一部であり、1つの構築層が別の構築層上に(一種の層スタック配置で)形成される。多くの3Dプリンタは、付加的なレイヤーバイレイヤーのアプローチを使用して、三次元パーツ又は構造を構築する。
【0047】
「三次元印刷」、「3Dプリンタ」、「印刷」などの用語は、一般に、ここでは膜上に選択的堆積、噴射、溶融堆積モデリング及び当該技術分野で知られている又は将来知られる可能性のある、構築材料又は印刷材料を使用して三次元構造又はオブジェクトを製造する他の技術によって形成される三次元(3D)構造又はオブジェクトを作製するための様々な製造技術を記載する。特に、「三次元構築層」という用語は、そのような製造技術によって形成されるあらゆる種類の層を意味する。
【0048】
例示的な3D印刷システム及びそれを用いて製造されるオブジェクトは、特に以下の文献に開示されている:
【0049】
US 2016/0185041 A1において、熱可塑性3Dオブジェクトは、高強度結合でもって透過性材料に直接印刷される。透過性材料への3Dオブジェクトの接着性を改善するために、透過性材料上に直接印刷される液体熱可塑性材料の結合層は、通常の材料堆積温度よりも高い温度を含むことができる修正3Dプリンタ設定で堆積されうる。この高い結合強度を実現するために使用する必要がある温度は250~270℃の範囲である。液体熱可塑性材料の追加の構築層は3Dオブジェクトを完成させるために結合層上に印刷される。幾つかの実施形態において、熱可塑性材料は透過性材料上に直接印刷することができる。透過性材料は、3Dオブジェクトを印刷するために使用される液体状態の熱可塑性材料を少なくとも部分的に通過させるか又は少なくとも部分的に吸収させることができるように孔、凹部、又は、穴もしくは通路を通した開口部を有する任意の材料又は構造であることができる。透過性材料としては、任意の多孔性材料、テキスタイル、布帛、編物、織物材料、メッシュ、ポリマー、ゴム、フォームなどが挙げられる。材料は、柔軟な布、シート、層及び、液体状態の熱可塑性材料が少なくとも部分的に通過することができる孔、凹部、又は、穴もしくは通路を通した開口部を有する他の構造の形態をとることができる。しかしながら、そこに教示されている透過性材料は、防水性かつ水蒸気透過性の材料ではない、すなわち、防水性かつ水蒸気透過性ePTFE及びPU膜層などの微孔質又は連続膜層ではない。
【0050】
US 2016/0192741 A1は、フィラメントに沿って整列した強化ストランドを含浸するマトリックス材料を有するコア強化フィラメント、ならびに、コア強化フィラメントとは別に充填材料を供給し、そしてプリントベッド上でインソール形状内で充填材料の少なくとも1つのシェルを堆積させることにより、履物インソール形状を生じさせることを教示している。コア強化フィラメントは、インソール形状に関して形成された第一の強化領域内で充填材料に融合するように堆積される。ノズルチップの上流のカッターはコア強化フィラメントを切断し、コア強化フィラメントの残りは堆積されて、第一の強化領域を完成させる。ノズルチップは圧力を加えて、コア強化フィラメントが充填材料に融着するときに、コア強化フィラメントをインソール形状へと連続的に圧縮する。
【0051】
US9474331は、三次元プリンタによって物品上に配置された印刷構造を有する履物製品を開示している。印刷構造は、延長部分及びファスナ受容部分を含む。延長部分は少なくとも部分的にアッパーに埋め込まれている。ファスナ受容部分はアッパーの外面から少なくとも部分的に間隔を空けて離れている。
【0052】
US 2015/0320138 A1は、迅速製造技術を使用して作製された三次元(3-D)表面テクスチャを持つ靴を開示している。複数の3D表面テクスチャオプションはユーザーインターフェイス上に表示される。各オプションは靴の一部に適用される複数の3D表面テクスチャの1つに関連付けられている。3-D表面テクスチャの選択は受容され、デザインファイルを生成するために部分的に使用される。デザインファイルを使用して、迅速製造デバイスに指示し、迅速製造技術を使用して3D表面テクスチャを含む靴の部分を製造する。
【0053】
当業者によって理解され、本明細書でさらに記載されるように、本発明の実施形態による3D印刷は、流体構築物又は印刷材料の層を選択的に堆積して、膜上に3D構造を形成することを含むことができる。一般に、流体印刷材料はディスペンサを介して堆積することができ、ディスペンサは加熱されたノズルであることができ、それを通して、フィラメント印刷材料が供給されてフィラメント印刷材料を全体として溶融し、ディスペンサの出口から印刷材料を分配してそれぞれの構築層を形成する。
【0054】
本発明の1つの実施形態において、各構築層3-1~3-nの高さは少なくとも0.05mmであることができる。典型的には、各構築層3-1~3-nの高さは約0.1mmである。そのようなそれぞれの構築層は、本明細書で呼称されるとおりの三次元構築層を形成するものと理解されるべきである。実施形態によれば、
図1及び
図7に示されるように、4つの構築層3-1~3-4は互いの上に配置された状態で、熱可塑性材料の層3を0.4mmの高さで製造することができる。
【0055】
各々個々の構築層の厚さはそれぞれの用途に応じて変えることができる。同様に、各々の構築層の幅及び/又は長さを変えることができる。例えば、ディスペンサは印刷材料が様々な構成で印刷表面上に印刷される様々な直径/幅を有する様々なノズルを有することができる(又は様々な交換可能なノズルを備えることができる)。
【0056】
1つの実施形態によれば、1つ以上の三次元構築層3-1~3-nは、付加製造技術、特に溶融堆積モデリング(いわゆるFDM)技術に従ってそれぞれ形成される。
【0057】
三次元構築層3-1~3-nのそれぞれは、構築層(特に最下層の構築層3-1)の熱可塑性材料3が膜の膜材料40に結合されるように、膜4の第一の面41の上に印刷される。このことは、これをより詳細に示す
図5~7に関して、以下でさらに詳細に説明される。
図1Aの実施形態において、熱可塑性材料3は最下層の構築層3-1の熱可塑性材料3が膜材料40と直接接触するように膜4上に印刷される。
図1Bの実施形態において、熱可塑性材料3は、最下層の構築層3-1の熱可塑性材料の少なくとも一部がテキスタイル層5を浸透して膜材料40と接触するように、第一のテキスタイル層5の上に印刷することにより、膜4の上に印刷される。両方の実施形態において、以下により詳細に説明するように、構築層3-1~3-nの熱可塑性材料の膜材料40への結合は非常に強い。
【0058】
ここで
図2を参照すると、FDM印刷技術(
図2A)を用いた3Dプリンタを使用する製造装置、及びそれを用いて製造される層状製品の概略図が示されており、ここではそれぞれの実施形態による靴100及びシューアッパー101の形態である。
図2Aに示される装置は、層又は構造で印刷されるテキスタイル層(図示せず)を含む膜4が配置されているプラットフォーム71を含む。当業者に一般的に知られているように、採用される3D印刷は、特定の構造で三次元構築層を形成するために、構築又は印刷材料の層を選択的に堆積することを含むことができる。ここで、熱可塑性印刷材料はフィラメント構造を有し、熱可塑性材料のフィラメント73がスプール72から引き出され、印刷ヘッド及び加熱ノズルを含むディスペンサ74に供給されるようにスプール72に保管される。そのため、高温の熱可塑性材料3はディスペンサ74を介して膜4上に堆積でき、加熱ノズルを通してフィラメント印刷材料73は供給され、フィラメント印刷材料を全体として溶融し、ディスペンサ74の出口から印刷材料を膜4の上に分配する。ディスペンサ74は膜印刷表面まで0.00~0.15mm、又は、第一のテキスタイル印刷表面まで0.05~0.15mmの距離に配置される。
【0059】
図2B及び2Cに示すように、こうして製造される層状製品1は、履物、特に靴100の構成要素として使用されうる。例えば、層状製品1は、靴100のアッパー101の一部である。製造の間に、膜4を含むアッパー101は
図2Bに示されるように二次元的に形成され、図示のようにスタッドのパターン、ネット構造又は他のパターンなど、熱可塑性材料3によって構造を形成するためにプラットフォーム71上に二次元形態で配置されうる。構造が
図2Aによる装置で形成されると、膜4を含むアッパー101は、靴100を形成するために三次元形状にすることができる。本実施形態において、アッパー101は外側材料102を含み、製造された層状製品1は外側材料102の少なくとも一部を形成する。例えば、外側材料102の少なくとも1つ以上のセクションは、層状製品1がこれらのセクションで外側材料102を形成するように層状製品1から製造できる。他の実施形態によれば、外側材料102の少なくとも1つ以上のセクションは、複合材料又は多層配列を含み、そのような複合材料又は多層配列の1つの構成要素又は層は層状製品1であることができる。
【0060】
さらなる実施形態によれば、靴100のソール103はまた、少なくとも部分的に熱可塑性材料3によって形成されうる。特に、そのようなソール103は、互いに配置された複数の三次元構築層によって形成されることができ、
図2Aに関して記載したのと同様の方法又は他の3D印刷法によってソール側の膜4上に印刷されることができる。
【0061】
図3は、1つの実施形態による、FDM印刷技術を用いた3Dプリンタを使用する別の製造装置、及び、それにより製造される層状製品1の概略図を示し、ここでは、履物のブーティ上で形成される底層の形態である。
図3Aによる装置は
図2Aの装置と類似しているため、3D印刷に使用される例示的な構成要素は、これ以上詳細には説明されない。
図2Aによる装置とは異なり、熱可塑性材料3は、ここでは履物のブーティ200の形態の三次元オブジェクトの表面上に印刷されている。ブーティ200は熱可塑性材料3が
図2Aのようにプラットフォームの(絶対的に)平坦な表面上に印刷されず、靴型上に載置される三次元形成ブーティ200の底部の準平坦表面上に印刷されるように靴型(図示せず)の上に載置される。このために、印刷装置は、ディスペンサ74がブーティの底面における高さの不規則性を補償するために(わずかな)垂直運動も行うという点で、
図2による方法と比較して、その制御ソフトウェアに何らかの修正を必要とする。
【0062】
この実施形態において、防水性かつ水蒸気透過性膜4(例えば、
図1に関連して記載されるとおり)は三次元ブーティ200として形成される。例えば、膜4及びブーティ200は、それぞれ、例えば、膜4の各部分を縫い合わせて靴の形状を有する三次元ブーティ200を形成するか、又は、膜4を一体的に三次元形状に形成することによるなど、一般に知られている方法により製造されうる。本実施形態において、三次元ブーティ200は、ブーティ200の底部201上に少なくとも1つのシーム150を有する。例えば、シーム150は、ブーティの底部201の周りに縫い付けられて提供され、その底部201はまた、靴100に形成されたら、着用者の足の下のアッパーの底部を形成する(
図2Cを参照されたい)。例えば、シーム150は、着用者の足のソールの下に配置されたブーティの底層210(例えば、不織布テキスタイルを上に有する膜から作られた)を、ブーティのシャフト部分及びアッパーを形成するブーティのそれぞれの側部層211,212と接続する。底部201は、膜及びテキスタイルの防水性かつ水蒸気透過性ラミネートであっても(例えば、ソール103などのソール、又は、履物のアッパー材料の底側部が通気性を高めるための1つ以上の開口部又は及び/又はチャネル有する実施形態において)、又は、防水性かつ非通気性材料であってもよい。
【0063】
他の実施形態によれば、底部201はブーティ200がその底部で開いているように開いたままにすることができる。次いで、ブーティのシャフト部分を、例えばアッパーのインナーソール又はアウターソールに取り付けることができる。
【0064】
好ましい実施形態において、1つ以上のシーム150は、シーム150の防水性シールを形成する少なくとも1つの三次元構築層3-1~3-nによって覆われる(
図7の防水性シール30を参照)。例えば、1つ以上の構築層3-1~3-nは、シーム150の周りの領域のみを覆うことができる(シーム150の各側に幾らかの側方延長部を含むシーム150を覆ってシーリングのための「ウォームアップ」ゾーンを作り出す。すなわち側方からの防水性を作り出す移行ゾーン(シーリングマージン)、例えば、0.7mmの非常に低いシーリングマージン31を有する
図7を参照)。
図3Cに示すように、シーム150がジグザグに縫い付けられる場合に、シーム150をシールする1つ以上の構築層3-1~3-nはまた、ジグザグの形態を有してもよい。
【0065】
別の実施形態によれば、
図3Cに示されるように、1つ以上の構築層3-1~3-nは、ブーティ200の底部201の幅及び/又は長さを覆うことができる。そのような実施形態において、1つ以上の三次元構築層3-1~3-nはまた、
図3Bに示されるように、ブーティ200の底部201上にソール202を形成することができ、又は、
図3Cに示されるように部分的なソール層を形成することができる。すなわち、そのようなソール202は、ブーティの底部201上に構造的なソール層を形成し、同時に、そのシーム150を防水性でシールする。さらなる実施形態によれば、再び
図2Cに関して、ソール103の上方のアッパー101の底部は、少なくとも部分的に熱可塑性材料3によって形成される。上記の実施形態はすべて、シーリングが印刷された熱可塑性材料3によって完全に確立され得るので、当該技術分野で一般的に使用されるようなシーリングテープが必要ないという利点を有する。これは、製造プロセスのかなりのコスト削減をもたらすことができる。
【0066】
図3Dは、シームレス膜から作製されたブーティであるブーティ200の別の実施形態を示す。特に、三次元ブーティ200は、靴型又は足の形状を形成したシームレス膜であることができ又はシームレス膜を含み、それはブーティ、インサート又はソックスを作製するために使用でき、例えばWO2015/123482に記載されている。
【0067】
図4は、1つの実施形態による、FDM印刷技術を採用して3Dプリンタを使用する別の製造装置、及び、それを用いて製造される層状製品1の概略図を示し、ここではシューアッパーとして形成されるブーティ200の形態である。この実施形態において、熱可塑性材料3は、
図3に関して記載したように、ブーティ200などの三次元オブジェクトの平坦表面上だけでなく、ソールの上方のシャフト領域のなどのブーティ200の他の部分にも印刷することができる。ブーティ200はシーム付き(膜及び/又はラミネートの縁を縫製することにより作製)又はシームレス(例えば、膜又はラミネートの1つの連続した切れ目のないピースにより作製)とすることができる。例えば、
図2Aによる平坦表面上でアッパー101上に印刷される、
図2Bに示されるアッパー101のパターンは、靴型(明示的に示されていない)上に配置された状態で、ブーティ200の三次元表面上に印刷され得る。この目的のために、製造アセンブリはロボット300をさらに使用することができ、該ロボットは6自由度で可動性である(例えば、いわゆる3+3軸3Dプリンタを使用する、すなわち、3つの並進軸及び3つの回転軸を有する)ことにより、靴型に取り付けられたブーティ上に三次元印刷されたアッパー、及び、該アッパーの底部の下方でソールを作製することができる。ロボット300には、
図4Aに概略的に示されるような3D印刷アセンブリが備えられている。例えば、ディスペンサ74はロボットのアーム301の一部であるか又はそれに取り付けられており、ロボットアームは、6自由度(例えば、3つの並進方向及び3つの回転方向)に可動性であり、そして靴型上に取り付けられたブーティ200の表面に沿ってそしてその周りで移動することができる。堆積法自体は、
図2及び3の方法と同様である。
【0068】
ここで
図5を参照すると、1つの実施形態による、非多孔質膜材料40a上に印刷されてそして結合された熱可塑性材料3の断面図が示されている。例えば、膜材料はPU膜層から作られるか又はそれを含み、それは連続的であるが、当該技術分野で一般に知られそして採用されているように防水性かつ水蒸気透過性である。例えば、膜は、多孔質ePTFE層(
図5に明色で表示)と該ePTFE層にラミネート化されたPU層を含む複合膜である。熱可塑性材料3は両面から複合膜上に印刷される。
図5から分かるように、複数の構築層3-1~3-nを互いの上に印刷することにより形成された熱可塑性材料3は、PU膜材料40aとともに溶融され、それにより、接合領域に防水性シールが形成される。
【0069】
図6は、1つの実施形態による、ePTFE膜層などの多孔質膜材料上に印刷されそして結合された熱可塑性材料3の断面図を示す。
図6に示される結合領域60に見られるように、複数の構築層3-1~3-nを互いの上に印刷することにより形成された熱可塑性材料3は、多孔質膜材料40bの孔に浸透する。例えば、浸透は1~3μmの深さ(多孔質層の表面から測定)であることもでき、良好なシール性能を提供する。本実施形態において、結合深さは約1~2.5μmの範囲にある。そのような浸透を達成するために、ディスペンサは、例えば、本明細書で記載されるように印刷面までのプリンタヘッドの距離を適切に調整することにより、十分な圧力を発生するべきである。
【0070】
図7は、膜4に結合されたテキスタイル層5に印刷されそして結合された熱可塑性材料の断面図を示す。この実施形態において、テキスタイル層5はモノフィラメント51の配列、例えば、ポリアミドから作られたモノフィラメント編物を含む。熱可塑性材料3は、複数の構築層、この実施形態では4つの構築層3-1~3-4を互いの上にテキスタイル層上で印刷することにより形成される。
図7から分かるように、このように形成された熱可塑性材料3は、モノフィラメント51とともに少なくとも部分的に溶融され、また、膜4まで少なくとも部分的に浸透し、それにより、結合領域に防水性シール30を形成する。モノフィラメント編物及び3D印刷された熱可塑性材料は均一な連続体を構築する。1つの実施形態によれば、上述のように、防水性シールを形成するための「ウォームアップ」ゾーン31(シーリングマージン)は0.6~0.8mmの範囲を有することができる。シームテープで典型的に使用されるシーリングマージンと比較して、そのようなシーリングマージンは有利なことに非常に低い。
【0071】
図5~
図7に関して記載した実施形態のそれぞれにおいて、熱可塑性材料3は、ポリウレタン(TPU)、コポリエステル(TPC)及びエラストマー(TPE)又はナイロンのうちの少なくとも1つを含むことができる。他の熱可塑性材料も同様に使用されうる。
【0072】
図8は、張力がかかっていない状態(
図8A)及び張力がかかった状態(
図8B)で形状又はパターンによって弾性を有するように形成された熱可塑性材料3の実施形態を示す。
【0073】
有利には、熱可塑性材料3は機能性を支援するように弾性ラミネート上に印刷されうる。テキスタイル層は、例えば弾性編物パターンによる弾性テキスタイル構成を有することができ、及び/又は、例えばエラスタンから作られた弾性フィラメントを含む。熱可塑性材料が印刷される膜も伸長可能である。伸張性は材料及び/又は形状によって作製されうる。
【0074】
1つの実施形態によれば、熱可塑性材料は弾性を有するように形成されている、すなわち、材料はそれ自体弾性である。したがって、ラミネート材料の弾性に追従することができる。別の実施形態において、弾性のある熱可塑性材料の使用に加えて又はその代わりに、熱可塑性材料3は形状により弾性を有するように形成される。
図8に示される本実施形態において、弾性は熱可塑性材料のジグザグ形状によって作り出される。
図8Bに示すように、ジグザグ形状の材料は張力をかけることができ、そして
図8Aに示す初期形状(又はほぼ初期形状)に戻る。
【0075】
図8に示される例示的な形状とは別に、より高い又はより低い弾性を有する他の形状も可能である。熱可塑性材料を膜材料上に印刷するための3D印刷法を採用すると、材料及び形状/幾何形状による幅広い機能変更性を与える。柔軟性があるが、それでもなお非常に硬い構造は、使用される膜及び膜ラミネートの柔軟性を維持するためのそのような方法によって作製することができる。
【0076】
以下は印刷法の実施形態で使用される潜在的なパラメータの例である。
【0077】
プリンタ:German RepRap X350 Pro
ラミネート:厚さ0.7mm、印刷面上で100%モノフィラメントPU編物及び反対面上で30%PES及び70%PAを含むマルチフィラメント編物に接着されているePTFE膜
印刷材料:Ninjatec SemiFlex(TPU)
関連する印刷パラメータ:
ノズル温度:最初の層240℃、後続の層230℃
床温度:60℃(ブーティが配置される表面が加熱される温度)
Zオフセット:0.8mm(ラミネート厚+0.1 mm)(床表面の上方のディスペンサの距離)
層高さ:0.1mm
ノズル直径:0.25mm
印刷速度:25mm/s
【0078】
膜に関して本明細書で使用される水蒸気透過性(WVP)は「カップ試験」としても知られているEN ISO 15496(2004)に規定されているように試験することができる。試験される膜又は膜ラミネートの20×20cm又はφ100mmサンプルを、水を含む容器上に置き、膜で覆う。次いで、酢酸カリウムを含み、同膜で覆われたカップをサンプルの上に配置する。水蒸気は、試験される膜を通過してカップに入り、次いで、その重量の増加を測定する。WVPが0.01g/(Pa* m2*h)以上の場合に、膜は水蒸気透過性又は通気性と考えられる。必要なサイズのサンプルが得られない場合には、標準で指定された酢酸カリウムの半分の量、つまり100gの代わりに50gと、15.6gの水を混合して含むより小さなカップを使用して、より小さなサンプルを測定に使用できる。より小さいカップを使用する場合は、それに応じて計算の適用領域を調整する必要がある。
【0079】
調査対象の100cm2の材料サンプルが少なくとも0.05barの水侵入圧力に耐えることができる場合に、膜又はラミネート、すなわち、テキスタイルに結合された膜は防水性と考えられる。特に、材料はさらには少なくとも1barの水圧に耐えることができる。この試験の実施方法は、ISO規格No.811(1981)(EN 20811(1992))に記載されている。測定は、調査対象の100cm2の材料サンプルを上昇水圧にさらすことによって行われる。この目的のために、20±2℃の温度を有する蒸留水は使用される。水圧の上昇は60±3cmH2O/分である。調査対象のサンプルの水侵入圧力は、調査対象のサンプルの反対側を水が通過する圧力である。100cm2のサンプルが得られない場合は、より小さなサンプルを測定に使用できる。サンプルサイズと水侵入圧の間には線形相関があり、それにより、100cm2のサンプルの水侵入圧を計算できる。
【0080】
図1に示すテキスタイル5などの幾つかの実施形態に従って本明細書で使用される第一のテキスタイルに関して、様々な実施形態によれば、モノフィラメント又はマルチフィラメント繊維を使用した編物、織物又は不織布テキスタイルのいずれかを使用することができる。