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  • 特許-新規なデプシペプチドおよびその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】新規なデプシペプチドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 11/02 20060101AFI20221214BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20221214BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20221214BHJP
   C12P 21/04 20060101ALI20221214BHJP
   C07K 7/56 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 38/15 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20221214BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221214BHJP
   A61P 31/10 20060101ALN20221214BHJP
   A61P 31/12 20060101ALN20221214BHJP
   A61P 33/00 20060101ALN20221214BHJP
   A61P 33/02 20060101ALN20221214BHJP
【FI】
C07K11/02
C12N1/00 F
C12N1/00 L
C12N1/20 A
C12P21/04
C07K7/56
A61K38/15
A61K38/12
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P33/00
A61P33/02
【請求項の数】 39
(21)【出願番号】P 2019554527
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 US2018025365
(87)【国際公開番号】W WO2018187173
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】62/481,412
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513295261
【氏名又は名称】ノボバイオティック ファーマシューティカルズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ, ダラス
(72)【発明者】
【氏名】スポーリング, エイミー
(72)【発明者】
【氏名】ピープルズ, アーロン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リン, ロシー ルーシー
(72)【発明者】
【氏名】ニッティ, アントニー
(72)【発明者】
【氏名】ミレット, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ズロ, アシュリー
(72)【発明者】
【氏名】ルーイス, キム
(72)【発明者】
【氏名】エプスタイン, スラバ
(72)【発明者】
【氏名】デスロシアーズ, アリシャ
(72)【発明者】
【氏名】エイコーン, キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】デメオ, ケリー
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-505547(JP,A)
【文献】The Journal of Antibiotics,1989年,Vol.42, No.10,pp.1460-1464
【文献】Angewandte Chemie International Edition,2015年,Vol.54,pp.6684-6686
【文献】ACS Chemical Biology,Vol.11,2016年,pp.1823-1826
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 1/00-15/90
C12P 1/00-41/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式:
【化1A】
または
【化1B】
によって表される、単離された合物またはその変異性体もしくは薬学的に許容される
【請求項2】
以下の構造式:
【化2】
によって表される、請求項1に記載の単離された化合物またはその互変異性体もしくは薬学的に許容される塩。
【請求項3】
以下の構造式:
【化3】
によって表される、請求項1に記載の単離された化合物またはその互変異性体もしくは薬学的に許容される塩。
【請求項4】
請求項1または2に記載の化合物を含む培養培地。
【請求項5】
ベータ-プロテオバクテリアのクラスに属する細菌細胞をさらに含む、請求項に記載の培養培地。
【請求項6】
請求項1または2に記載の化合物を含む細菌ライセート。
【請求項7】
ベータ-プロテオバクテリアのクラスに属する細菌細胞から生成される、請求項に記載の細菌ライセート。
【請求項8】
前記細菌細胞が、培養細菌細胞である、請求項に記載の細菌ライセート。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の化合物、および薬学的に許容される賦形剤、キャリアまたは希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項10】
抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗原生動物剤、駆虫薬、抗悪性腫瘍剤、免疫調節剤、高コレステロール血症治療剤およびそれらの組合せからなる群から選択される薬剤をさらに含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1または2に記載の化合物を生成する方法であって、好気条件下で、炭素、窒素および無機塩の同化性供給源を含む培養培地中でベータ-プロテオバクテリアのクラスに属する細菌細胞を培養し、それによって前記化合物を生成するステップを含む方法。
【請求項12】
前記化合物を単離するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1からのいずれか一項に記載の化合物を含む、障害の処置を必要としている被験体の障害を処置するための組成物。
【請求項14】
前記被験体が、動物および植物からなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記動物が、哺乳動物である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記哺乳動物が、ヒトまたは家畜である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記障害が、細菌、真菌、ウイルス、原生動物、蠕虫、寄生生物、およびそれらの組合せからなる群から選択される病原体によって引き起こされる、請求項13から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記病原体が、細菌である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記細菌が、グラム陽性菌である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記グラム陽性菌が、Streptococcus、Staphylococcus、Enterococcus、Corynebacteria、Listeria、Bacillus、Erysipelothrix、Mycobacterium、Clostridium、およびActinomycetalesからなる群から選択される属に属する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記グラム陽性菌が、メチシリン感受性およびメチシリン耐性ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、Staphylococcus saprophyticus、およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌を含む)、グリコペプチド中程度感受性Staphylococcus aureus(GISA)、ペニシリン感受性およびペニシリン耐性連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus dysgalactiae、Streptococcus avium、Streptococcus bovis、Streptococcus lactis、Streptococcus sangius、Streptococcus anginosus、Streptococcus intermedius、Streptococcus constellatusおよびStreptococci群C、Streptococci群G、ならびにViridans streptococciを含む)、腸球菌(バンコマイシン感受性およびバンコマイシン耐性株、例えばEnterococcus faecalisおよびEnterococcus faeciumを含む)、Clostridium difficile、Clostridium clostridiiforme、Clostridium innocuum、Clostridium perfringens、Clostridium tetani、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium avium、Mycobacterium intracellulare、Mycobacterium kansaii、Mycobacterium gordonae、Mycobacteria sporozoites、Listeria monocytogenes、Bacillus subtilis、Bacillus anthracis、Corynebacterium diphtheriae、Corynebacterium jeikeium、Corynebacterium sporozoites、Erysipelothrix rhusiopathiae、Staphylococcus warneriおよびActinomyces israelliからなる群から選択される属または種に属する、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記細菌が、Bacillus anthracisである、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
前記細菌が、グラム陰性菌である、請求項18に記載の組成物。
【請求項24】
前記グラム陰性菌が、Helicobacter pylori、Legionella pneumophilia、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、病原性Campylobacter sporozoites、Haemophilus influenzae、Pseudomonas aeruginosa、Enterobacter aerogenes、Enterobacter cloacae、Klebsiella pneumoniae、Klebsiella oxytoca、Pasteurella multocida、Bacteroides sporozoites、Bacteriodes fragilis、Bacteriodes thetaiotaomicron、Bacteriodes uniformis、Bacteriodes vulgatus Fusobacterium nucleatum、Streptobacillus moniliformis、Leptospira、Escherichia coli、Salmonella enterica、Salmonella salamae、Salmonella arizonae、Salmonella diarizonae、Salmonella houtenae、Salmonella bongori、Salmonella indica、Salmonella Enteritidis、Salmonella typhi、およびCitrobacter freundiiからなる群から選択される属または種に属する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記病原体が、ウイルスである、請求項17に記載の組成物。
【請求項26】
前記ウイルスが、Retroviridae、Picornaviridae、Calciviridae、Togaviridae、Flaviridae、Coronaviridae、Rhabdoviridae、Filoviridae、Paramyxoviridae、Orthomyxoviridae、Bungaviridae、Arenaviridae、Reoviridae、Birnaviridae、Hepadnaviridae、Parvoviridae、Papovaviridae、Adenoviridae、Herpesviridae、Poxviridae、およびIridoviridaeからなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記ウイルスが、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、および単純ヘルペスウイルスからなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
前記病原体が、原生動物である、請求項17に記載の組成物。
【請求項29】
前記原生動物が、Trichomonas vaginalis、Giardia lamblia、Entamoeba histolytica、Balantidium
coli、Cryptosporidium parvumおよびIsospora belli、Trypansoma cruzi、Trypanosoma gambiense、Leishmania donovani、およびNaegleria fowleriからなる群から選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記病原体が、蠕虫である、請求項17に記載の組成物。
【請求項31】
前記蠕虫が、Schistosoma mansoni、Schistosoma cercariae、Schistosoma japonicum、Schistosoma mekongi、Schistosoma hematobium、Ascaris lumbricoides、Strongyloides stercoralis、Echinococcus granulosus、Echinococcus multilocularis、Angiostrongylus cantonensis、Angiostrongylus constaricensis、Fasciolopis buski、Capillaria philippinensis、Paragonimus westermani、Ancylostoma dudodenale、Necator americanus、Trichinella spiralis、Wuchereria bancrofti、Brugia malayi、およびBrugia timori、Toxocara canis、Toxocara cati、Toxocara vitulorum、Caenorhabiditis elegans、およびAnisakis種からなる群から選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記病原体が、寄生生物である、請求項17に記載の組成物。
【請求項33】
前記寄生生物が、Plasmodium falciparum、Plasmodium yoelli、Hymenolepis nana、Clonorchis sinensis、Loa loa、Paragonimus westermani、Fasciola hepatica、およびToxoplasma gondiiからなる群から選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記寄生生物が、マラリア寄生生物である、請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
前記病原体が、真菌である、請求項17に記載の組成物。
【請求項36】
前記真菌が、Cryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum、Coccidioides immitis、Blastomyces dermatitidis、Chlamydia trachomatis、Candida albicans、Candida tropicalis、Candida glabrata、Candida krusei、Candida parapsilosis、Candida dubliniensis、Candida lusitaniae、Epidermophyton floccosum、Microsporum audouinii、Microsporum canis、Microsporum canis var. distortum Microsporum cookei、Microsporum equinum、Microsporum ferrugineum、Microsporum fulvum、Microsporum gallinae、Microsporum gypseum、Microsporum nanum、Microsporum persicolor、Trichophyton ajelloi、Trichophyton concentricum、Trichophyton equinum、Trichophyton flavescens、Trichophyton gloriae、Trichophyton megnini、Trichophyton mentagrophytes var. erinacei、Trichophyton mentagrophytes var. interdigitale、Trichophyton phaseoliforme、Trichophyton rubrum、Trichophyton rubrum downy strain、Trichophyton rubrum granular strain、Trichophyton schoenleinii、Trichophyton simii、Trichophyton soudanense、Trichophyton terrestre、Trichophyton tonsurans、Trichophyton vanbreuseghemii、Trichophyton verrucosum、Trichophyton violaceum、Trichophyton yaoundei、Aspergillus fumigatus、Aspergillus flavus、およびAspergillus clavatusからなる群から選択される、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
感染性因子の成長を阻害する方法において使用するための組成物であって、前記方法は、前記因子を請求項1からのいずれか一項に記載の化合物と接触させ、それによって前記感染性因子の成長を阻害するステップを含む、組成物。
【請求項38】
前記感染性因子が、インビトロで培養される、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
細菌細胞におけるペプチドグリカン合成を阻害する方法において使用するための組成物であって、前記方法は、前記細菌細胞を請求項1からのいずれか一項に記載の化合物と接触させ、それによって前記細菌細胞におけるペプチドグリカン合成を阻害するステップを含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2017年4月4日に出願された米国仮出願第62/481,412号に対する優先権の利益を主張する。前記出願の内容全体が、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
政府援助
本発明は、国立衛生研究所により授与された補助金番号第R43AI1136137-0号および第R44AI091224-03号のもとの政府援助により行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
近年の医薬品の大きな業績として、疾患を引き起こす微生物に対する抗菌剤の開発およびその使用の成功が挙げられる。抗菌剤は、多くの生命を救い、多くの疾患および感染症の合併症を低減してきた。しかし、現在利用可能な抗菌剤は、かつてほどは有効でなくなっている。
【0004】
経時的に、多くの微生物が、公知の抗菌剤の抗菌作用を逃れるように発達してきており、近年、複数の抗菌剤に耐性がある微生物によって引き起こされる感染症が、世界的に増大している。世界旅行の利用率が増大し、容易になってきたため、世界中での薬物耐性微生物の急速な拡大が、深刻な問題になっている。地域社会においては、微生物の耐性は、薬物耐性病原体(例えば、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)、バンコマイシン耐性Enterococci(VRE))の院内感染、地域社会における抗生物質の使用による耐性出現(例えば、ペニシリン耐性およびキノロン耐性Neisseria gonorrheae)、旅行の結果による耐性病原体(例えば、抗生剤耐性Shigella)への感染、または動物に抗菌剤を使用し、その後耐性病原体がヒトに伝染した結果による耐性病原体(例えば、抗生物質耐性Salmonella)への感染から生じる場合がある。院内の抗生物質耐性は、通常は抗生物質の過剰使用から生じ、MRSA、VREおよび多剤耐性のグラム陰性桿菌(MDR-GNB)(例えば、Enterobacter、Klebsiella、Serratia、Citrobacter、PseudomonasおよびE.coli)について深刻な問題となっている。特に、細菌によるカテーテルに関係する血流感染、ならびに皮膚および軟組織感染症(SSTI)は、大きな問題になりつつある。
【0005】
細菌、ウイルス、真菌および寄生生物はすべて、公知の抗菌剤に対して耐性を発達させている。耐性は、通常は、(i)薬物の標的が変化し、その結果抗菌剤が結合しにくくなり、それによって感染症を制御する効果が低下すること、(ii)薬物浸透または該薬物の能動的流出が損なわれた結果として、該薬物がその標的に接近しにくくなること、および(iii)微生物によって産生される酵素によって、該薬物が酵素的に不活化されることの3つの機構から生じる。抗菌剤耐性によって微生物は生存しやすくなり、それにより身体から微生物感染症を排除しにくくなっている。このように微生物感染症との闘いが増々困難になっていることから、院内および他の実践場面における感染症発生の危険性が高まってきた。現在、結核、マラリア、淋病および小児期耳感染症などの疾患は、わずか数十年前よりも処置が困難になっている。薬物耐性は、抗生物質を利用しなければ感染症に罹患しやすくなっている重症疾患の患者を抱える病院にとっては、重大な問題である。残念ながら、こうした患者には、薬物耐性を生じる微生物を変化させるために、抗生物質を多量に使用することが選択される。これらの薬物耐性菌は、最も強力な抗生物質に対して耐性があり、感染しやすい入院患者が依然として犠牲になっている。入院患者の5~10パーセントが入院中に感染症に罹患していること、およびこの危険性はここ数十年で確実に増大していることが報告されている。
【0006】
こうした問題に関して、微生物感染症および薬物耐性増大の問題と闘うために、新規な抗菌剤の必要性が高まっている。利用可能な薬物に対して病原体が耐性を発達させているため、再度抗菌薬の発見に取り組むことは非常に重要である。
【0007】
これまでに、合成化合物では天然抗生物質を置き換えることができず、組合せの合成、ハイスループットスクリーニング、先進医薬品化学、ゲノミクスおよびプロテオミクス、ならびに合理的薬物設計を組み合わせた研究でも、新規な種類の広域スペクトルの化合物を生成するには至っていない。新しい合成抗生物質を得る上での問題は、合成抗生物質が、多剤耐性ポンプ(MDR)によって細菌の外膜障壁を通して一様に送り出されるという事実に一部関連し得るということである。細菌の外膜は、両親媒性化合物に対する障壁であり(本質的にすべての薬物が両親媒性化合物である)、MDRは、この障壁を通して薬物を追い出す。進化により、この二重障壁/追い出し機構を大部分回避することができる抗生物質が生成されてはいるが、合成化合物は、ほとんどの場合、一様に成功に至っていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、微生物感染症と闘って、薬物耐性増大の問題を克服することができる新規な抗菌化合物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、単離された式(I)の化合物
【化1】
またはその鏡像異性体、ジアステレオマー、互変異性体もしくは薬学的に許容される塩
[式中、各立体中心は「*」で示され、独立に、RまたはS立体配置のいずれかであり得、
各R1’、R2’、R3’、R4’、R5’およびR6’は、独立に、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロアルケニル、置換または非置換アリール、-NRb’、-COR、-COOR、-CONRe’およびアミノ酸側鎖からなる群から選択され、
各R、Ra’、R、Rb’、R、R、RおよびRe’は、独立に、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロアルケニルおよび置換または非置換アリールからなる群から選択され、
Xは、-O-、-S-または-N-であり、
nは、1~5の整数である]
を提供する。いくつかの実施形態では、nは、2~4の整数である。
【0009】
特定の一実施形態では、Xは、-O-である。別の特定の一実施形態では、Xは、-N-である。さらに別の特定の一実施形態では、Xは、-S-である。
【0010】
いくつかの態様では、単離された化合物は、単離された式(II)の化合物
【化2】
またはその鏡像異性体、ジアステレオマー、互変異性体もしくは薬学的に許容される塩
[式中、各立体中心は「*」で示され、独立に、RまたはS立体配置のいずれかであり得、
各R、R、R、R、R、R、RおよびRは、独立に、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロアルケニル、置換または非置換アリール、-NRb’、-COR、-COOR、-CONRe’およびアミノ酸側鎖からなる群から選択され、
各R、Rb’、R、R、R、Re’、RおよびRf’は、独立に、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロアルケニルおよび置換または非置換アリールからなる群から選択され、
Xは、-O-、-S-または-N-である]
である。
【0011】
特定の一実施形態では、Xは、-O-である。別の特定の一実施形態では、Xは、-N-である。さらに別の特定の一実施形態では、Xは、-S-である。
【0012】
いくつかの態様では、Rは、ベンジルである。いくつかの態様では、RおよびRa’は両方とも、水素である。いくつかの態様では、Rは、置換または非置換アルキルである。特定の一態様では、置換または非置換アルキルは、イソブチルである。
【0013】
いくつかの実施形態では、Rは、置換または非置換アルキル、例えばアミノ基で置換されているブチルである。いくつかの実施形態では、Rは、置換または非置換アルキル、例えばヒドロキシル基で置換されているメチルである。いくつかの態様では、Rは、-CONRe’である。さらなる態様では、RおよびRe’は両方とも、水素である。いくつかの実施形態では、Rは、置換または非置換アルキル、例えばメチルである。いくつかの態様では、Rは、置換または非置換アルキル、例えばイソブチルである。いくつかの態様では、Rは、置換または非置換アルキル、例えばイソブチルである。
【0014】
いくつかの実施形態では、単離された化合物は、単離された式(III)の化合物である。
【化3】
【0015】
いくつかの実施形態では、本発明の単離された化合物は、以下の化合物からなる群から選択される。
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【0016】
いくつかの態様では、本発明は、上に記載の本発明の化合物を含む培養培地を提供する。さらなる態様では、培養培地は、ベータ-プロテオバクテリアのクラスに属する細菌細胞も含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、本発明は、上に記載の本発明の化合物を含む細菌ライセートも提供する。さらなる態様では、細菌ライセートは、ベータ-プロテオバクテリアのクラスに属する細菌細胞から生成される。いくつかの態様では、細菌細胞は、培養細菌細胞である。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明は、上に記載の本発明の化合物、および薬学的に許容される賦形剤、キャリアまたは希釈剤を含む医薬組成物も提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗原生動物剤、駆虫薬、抗悪性腫瘍剤、免疫調節剤、高コレステロール血症治療剤およびそれらの組合せからなる群から選択される薬剤をさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明は、上に記載の本発明の化合物を生成する方法であって、好気条件下で、炭素、窒素および無機塩の同化性供給源を含む培養培地中でベータ-プロテオバクテリアのクラスに属する細菌細胞を培養し、それによって化合物を生成するステップを含む方法も含む。さらなる実施形態では、方法は、化合物を単離するステップも含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明は、上に記載の方法に従って調製された化合物、例えば式(I)の化合物も提供する。
【0021】
いくつかの態様では、本発明は、障害の処置を必要としている被験体の障害を処置する方法であって、被験体に、有効量の上に記載の本発明の化合物を投与し、それによって被験体の障害を処置するステップを含む方法も提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、被験体は、動物および植物からなる群から選択される。さらなる態様では、動物は、哺乳動物、例えばヒトまたは家畜である。
【0023】
いくつかの態様では、障害は、細菌、真菌、ウイルス、原生動物、蠕虫、寄生生物、およびそれらの組合せからなる群から選択される病原体によって引き起こされる。
【0024】
一態様では、病原体は細菌である。さらなる態様では、細菌は、グラム陽性菌、例えばStreptococcus、Staphylococcus、Enterococcus、Corynebacteria、Listeria、Bacillus、Erysipelothrix、Mycobacterium、Clostridium、およびActinomycetalesからなる群から選択される属に属するグラム陽性菌である。いくつかの態様では、グラム陽性菌は、メチシリン感受性およびメチシリン耐性ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、Staphylococcus saprophyticus、およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌を含む)、グリコペプチド中程度感受性Staphylococcus aureus(GISA)、ペニシリン感受性およびペニシリン耐性連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus dysgalactiae、Streptococcus avium、Streptococcus bovis、Streptococcus lactis、Streptococcus sangius、Streptococcus anginosus、Streptococcus intermedius、Streptococcus constellatusおよびStreptococci群C、Streptococci群G、ならびにViridans streptococciを含む)、腸球菌(バンコマイシン感受性およびバンコマイシン耐性株、例えばEnterococcus faecalisおよびEnterococcus faeciumを含む)、Clostridium difficile、Clostridium clostridiiforme、Clostridium innocuum、Clostridium perfringens、Clostridium tetani、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium avium、Mycobacterium intracellulare、Mycobacterium kansaii、Mycobacterium gordonae、Mycobacteria sporozoites、Listeria monocytogenes、Bacillus subtilis、Bacillus anthracis、Corynebacterium diphtheriae、Corynebacterium jeikeium、Corynebacterium sporozoites、Erysipelothrix rhusiopathiae、Staphylococcus warneriおよびActinomyces israelliからなる群から選択される属または種に属する。
【0025】
特定の一実施形態では、細菌は、Bacillus anthracisである。
【0026】
いくつかの実施形態では、細菌は、グラム陰性菌、例えばHelicobacter pylori、Legionella pneumophilia、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、pathogenic Campylobacter sporozoites、Haemophilus influenzae、Pseudomonas aeruginosa、Enterobacter aerogenes、Enterobacter cloacae、Klebsiella pneumoniae、Klebsiella oxytoca、Pasteurella multocida、Bacteroides sporozoites、Bacteriodes fragilis、Bacteriodes thetaiotaomicron、Bacteriodes uniformis、Bacteriodes vulgatus Fusobacterium nucleatum、Streptobacillus moniliformis、Leptospira、Escherichia coli、Salmonella enterica、Salmonella salamae、Salmonella arizonae、Salmonella diarizonae、Salmonella houtenae、Salmonella bongori、Salmonella indica、Salmonella Enteritidis、Salmonella typhi、およびCitrobacter freundiiからなる群から選択される属または種に属するグラム陰性菌である。
【0027】
いくつかの態様では、病原体は、ウイルス、例えばRetroviridae、Picornaviridae、Calciviridae、Togaviridae、Flaviridae、Coronaviridae、Rhabdoviridae、Filoviridae、Paramyxoviridae、Orthomyxoviridae、Bungaviridae、Arenaviridae、Reoviridae、Birnaviridae、Hepadnaviridae、Parvoviridae、Papovaviridae、Adenoviridae、Herpesviridae、Poxviridae、およびIridoviridaeからなる群から選択されるウイルスである。さらなる実施形態では、ウイルスは、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、および単純ヘルペスウイルスからなる群から選択される。
【0028】
いくつかの態様では、病原体は、原生動物、例えばTrichomonas vaginalis、Giardia lamblia、Entamoeba histolytica、Balantidium coli、Cryptosporidium parvum およびIsospora belli、Trypansoma cruzi、Trypanosoma gambiense、Leishmania donovani、およびNaegleria fowleriからなる群から選択される原生動物である。
【0029】
いくつかの実施形態では、病原体は、蠕虫、例えばSchistosoma mansoni、Schistosoma cercariae、Schistosoma japonicum、Schistosoma mekongi、Schistosoma hematobium、Ascaris lumbricoides、Strongyloides stercoralis、Echinococcus granulosus、Echinococcus multilocularis、Angiostrongylus cantonensis、Angiostrongylus constaricensis、Fasciolopis buski、Capillaria philippinensis、Paragonimus westermani、Ancylostoma dudodenale、Necator americanus、Trichinella spiralis、Wuchereria bancrofti、Brugia malayi、およびBrugia timori、Toxocara canis、Toxocara cati、Toxocara vitulorum、Caenorhabiditis elegans、およびAnisakis種からなる群から選択される蠕虫である。
【0030】
いくつかの態様では、病原体は、寄生生物、例えばPlasmodium falciparum、Plasmodium yoelli、Hymenolepis nana、Clonorchis sinensis、Loa loa、Paragonimus westermani、Fasciola hepatica、およびToxoplasma gondiiからなる群から選択される寄生生物である。さらなる態様では、寄生生物は、マラリア寄生生物である。
【0031】
いくつかの実施形態では、病原体は、真菌、例えばCryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum、Coccidioides immitis、Blastomyces dermatitidis、Chlamydia trachomatis、Candida albicans、Candida tropicalis、Candida glabrata、Candida krusei、Candida parapsilosis、Candida dubliniensis、Candida lusitaniae、Epidermophyton floccosum、Microsporum audouinii、Microsporum canis、Microsporum canis var. distortum Microsporum cookei、Microsporum equinum、Microsporum ferrugineum、Microsporum fulvum、Microsporum gallinae、Microsporum gypseum、Microsporum nanum、Microsporum persicolor、Trichophyton ajelloi、Trichophyton concentricum、Trichophyton equinum、Trichophyton flavescens、Trichophyton gloriae、Trichophyton megnini、Trichophyton mentagrophytes var. erinacei、Trichophyton mentagrophytes var. interdigitale、Trichophyton phaseoliforme、Trichophyton rubrum、Trichophyton rubrum downy strain、Trichophyton rubrum granular strain、Trichophyton schoenleinii、Trichophyton simii、Trichophyton soudanense、Trichophyton terrestre、Trichophyton tonsurans、Trichophyton vanbreuseghemii、Trichophyton verrucosum、Trichophyton violaceum、Trichophyton yaoundei、Aspergillus fumigatus、Aspergillus flavus、およびAspergillus clavatusからなる群から選択される真菌である。
【0032】
いくつかの態様では、本発明は、感染性因子の成長を阻害する方法であって、該因子を上に記載の本発明の化合物と接触させるステップを含む方法も提供する。いくつかの態様では、感染性因子は、インビトロで培養される。
【0033】
いくつかの実施形態では、本発明は、細菌細胞におけるペプチドグリカン合成を阻害する方法であって、細菌細胞を上に記載の本発明の化合物と接触させるステップを含む方法も提供する。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
単離された式(I)の化合物
【化8】
またはその鏡像異性体、ジアステレオマー、互変異性体もしくは薬学的に許容される塩
[式中、各立体中心は「*」で示され、独立に、RまたはS立体配置のいずれかであり得、
各R 1’ 、R 2’ 、R 3’ 、R 4’ 、R 5’ およびR 6’ は、独立に、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロアルケニル、置換または非置換アリール、-NR b’ 、-COR 、-COOR 、-CONR e’ およびアミノ酸側鎖からなる群から選択され、
各R 、R a’ 、R 、R b’ 、R 、R 、R およびR e’ は、独立に、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロアルケニルおよび置換または非置換アリールからなる群から選択され、
nは、1~5の整数である]。
(項目2)
nが、2~4の整数である、項目1に記載の単離された化合物。
(項目3)
式(II)の化合物
【化9】
またはその鏡像異性体、ジアステレオマー、互変異性体もしくは薬学的に許容される塩
[式中、各立体中心は「*」で示され、独立に、RまたはS立体配置のいずれかであり得、
各R 、R 、R 、R 、R 、R 、R およびR は、独立に、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロアルケニル、置換または非置換アリール、-NR b’ 、-COR 、-COOR 、-CONR e’ およびアミノ酸側鎖からなる群から選択され、
各R 、R b’ 、R 、R 、R 、R e’ 、R およびR f’ は、独立に、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロアルケニルおよび置換または非置換アリールからなる群から選択される]
である、項目1に記載の単離された化合物。
(項目4)
が、ベンジルである、項目3に記載の単離された化合物。
(項目5)
およびR a’ が両方とも、水素である、項目4に記載の単離された化合物。
(項目6)
が、置換または非置換アルキルである、項目3から5のいずれか一項に記載の単離された化合物。
(項目7)
前記置換または非置換アルキルが、イソブチルである、項目6に記載の単離された化合物。
(項目8)
が、置換または非置換アルキルである、項目3から7のいずれか一項に記載の単離された化合物。
(項目9)
前記置換または非置換アルキルが、アミノ基で置換されているブチルである、項目8に記載の単離された化合物。
(項目10)
が、置換または非置換アルキルである、項目3から9のいずれか一項に記載の単離された化合物。
(項目11)
前記置換または非置換アルキルが、ヒドロキシル基で置換されているメチルである、項目10に記載の単離された化合物。
(項目12)
が、-CONR e’ である、項目3から11のいずれか一項に記載の単離された化合物。
(項目13)
およびR e’ が両方とも、水素である、項目12に記載の単離された化合物。
(項目14)
が、置換または非置換アルキルである、項目3から13のいずれか一項に記載の単離された化合物。
(項目15)
前記置換または非置換アルキルが、メチルである、項目14に記載の単離された化合物。
(項目16)
が、置換または非置換アルキルである、項目3から15のいずれか一項に記載の単離された化合物。
(項目17)
前記置換または非置換アルキルが、イソブチルである、項目16に記載の単離された化合物。
(項目18)
が、置換または非置換アルキルである、項目3から17のいずれか一項に記載の単離された化合物。
(項目19)
前記置換または非置換アルキルが、イソブチルである、項目18に記載の単離された化合物。
(項目20)
式(III)の化合物である、項目1から19のいずれか一項に記載の単離された化合物。
【化10】
(項目21)
以下の化合物からなる群から選択される、項目1に記載の単離された化合物。
【化11-1】
【化11-2】
【化11-3】
(項目22)
項目1から21のいずれか一項に記載の化合物を含む培養培地。
(項目23)
ベータ-プロテオバクテリアのクラスに属する細菌細胞をさらに含む、項目22に記載の培養培地。
(項目24)
項目1から21のいずれか一項に記載の化合物を含む細菌ライセート。
(項目25)
ベータ-プロテオバクテリアのクラスに属する細菌細胞から生成される、項目24に記載の細菌ライセート。
(項目26)
前記細菌細胞が、培養細菌細胞である、項目25に記載の細菌ライセート。
(項目27)
項目1から21のいずれか一項に記載の化合物、および薬学的に許容される賦形剤、キャリアまたは希釈剤を含む医薬組成物。
(項目28)
抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗原生動物剤、駆虫薬、抗悪性腫瘍剤、免疫調節剤、高コレステロール血症治療剤およびそれらの組合せからなる群から選択される薬剤をさらに含む、項目27に記載の医薬組成物。
(項目29)
項目1から21のいずれか一項に記載の化合物を生成する方法であって、好気条件下で、炭素、窒素および無機塩の同化性供給源を含む培養培地中でベータ-プロテオバクテリアのクラスに属する細菌細胞を培養し、それによって前記化合物を生成するステップを含む方法。
(項目30)
前記化合物を単離するステップをさらに含む、項目29に記載の方法。
(項目31)
項目29または30に記載の方法に従って調製された、項目1から21のいずれか一項に記載の化合物。
(項目32)
障害の処置を必要としている被験体の障害を処置する方法であって、前記被験体に、有効量の項目1から21のいずれか一項に記載の化合物を投与し、それによって前記被験体の前記障害を処置するステップを含む方法。
(項目33)
前記被験体が、動物および植物からなる群から選択される、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記動物が、哺乳動物である、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記哺乳動物が、ヒトまたは家畜である、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記障害が、細菌、真菌、ウイルス、原生動物、蠕虫、寄生生物、およびそれらの組合せからなる群から選択される病原体によって引き起こされる、項目32から35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記病原体が、細菌である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記細菌が、グラム陽性菌である、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記グラム陽性菌が、Streptococcus、Staphylococcus、Enterococcus、Corynebacteria、Listeria、Bacillus、Erysipelothrix、Mycobacterium、Clostridium、およびActinomycetalesからなる群から選択される属に属する、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記グラム陽性菌が、メチシリン感受性およびメチシリン耐性ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、Staphylococcus saprophyticus、およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌を含む)、グリコペプチド中程度感受性Staphylococcus aureus(GISA)、ペニシリン感受性およびペニシリン耐性連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus dysgalactiae、Streptococcus avium、Streptococcus bovis、Streptococcus lactis、Streptococcus sangius、Streptococcus anginosus、Streptococcus intermedius、Streptococcus constellatusおよびStreptococci群C、Streptococci群G、ならびにViridans streptococciを含む)、腸球菌(バンコマイシン感受性およびバンコマイシン耐性株、例えばEnterococcus faecalisおよびEnterococcus faeciumを含む)、Clostridium difficile、Clostridium clostridiiforme、Clostridium innocuum、Clostridium perfringens、Clostridium tetani、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium avium、Mycobacterium intracellulare、Mycobacterium kansaii、Mycobacterium gordonae、Mycobacteria sporozoites、Listeria monocytogenes、Bacillus subtilis、Bacillus anthracis、Corynebacterium diphtheriae、Corynebacterium jeikeium、Corynebacterium sporozoites、Erysipelothrix rhusiopathiae、Staphylococcus warneriおよびActinomyces israelliからなる群から選択される属または種に属する、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記細菌が、Bacillus anthracisである、項目37に記載の方法。
(項目42)
前記細菌が、グラム陰性菌である、項目37に記載の方法。
(項目43)
前記グラム陰性菌が、Helicobacter pylori、Legionella pneumophilia、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、病原性Campylobacter sporozoites、Haemophilus influenzae、Pseudomonas aeruginosa、Enterobacter aerogenes、Enterobacter cloacae、Klebsiella pneumoniae、Klebsiella oxytoca、Pasteurella multocida、Bacteroides sporozoites、Bacteriodes fragilis、Bacteriodes thetaiotaomicron、Bacteriodes uniformis、Bacteriodes vulgatus Fusobacterium nucleatum、Streptobacillus moniliformis、Leptospira、Escherichia coli、Salmonella enterica、Salmonella salamae、Salmonella arizonae、Salmonella diarizonae、Salmonella houtenae、Salmonella bongori、Salmonella indica、Salmonella Enteritidis、Salmonella typhi、およびCitrobacter freundiiからなる群から選択される属または種に属する、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記病原体が、ウイルスである、項目36に記載の方法。
(項目45)
前記ウイルスが、Retroviridae、Picornaviridae、Calciviridae、Togaviridae、Flaviridae、Coronaviridae、Rhabdoviridae、Filoviridae、Paramyxoviridae、Orthomyxoviridae、Bungaviridae、Arenaviridae、Reoviridae、Birnaviridae、Hepadnaviridae、Parvoviridae、Papovaviridae、Adenoviridae、Herpesviridae、Poxviridae、およびIridoviridaeからなる群から選択される、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記ウイルスが、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、および単純ヘルペスウイルスからなる群から選択される、項目44に記載の方法。
(項目47)
前記病原体が、原生動物である、項目36に記載の方法。
(項目48)
前記原生動物が、Trichomonas vaginalis、Giardia lamblia、Entamoeba histolytica、Balantidium coli、Cryptosporidium parvumおよびIsospora belli、Trypansoma cruzi、Trypanosoma gambiense、Leishmania donovani、およびNaegleria fowleriからなる群から選択される、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記病原体が、蠕虫である、項目36に記載の方法。
(項目50)
前記蠕虫が、Schistosoma mansoni、Schistosoma cercariae、Schistosoma japonicum、Schistosoma mekongi、Schistosoma hematobium、Ascaris lumbricoides、Strongyloides stercoralis、Echinococcus granulosus、Echinococcus multilocularis、Angiostrongylus cantonensis、Angiostrongylus constaricensis、Fasciolopis buski、Capillaria philippinensis、Paragonimus westermani、Ancylostoma dudodenale、Necator americanus、Trichinella spiralis、Wuchereria bancrofti、Brugia malayi、およびBrugia timori、Toxocara canis、Toxocara cati、Toxocara vitulorum、Caenorhabiditis elegans、およびAnisakis種からなる群から選択される、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記病原体が、寄生生物である、項目36に記載の方法。
(項目52)
前記寄生生物が、Plasmodium falciparum、Plasmodium yoelli、Hymenolepis nana、Clonorchis sinensis、Loa loa、Paragonimus westermani、Fasciola hepatica、およびToxoplasma gondiiからなる群から選択される、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記寄生生物が、マラリア寄生生物である、項目51に記載の方法。
(項目54)
前記病原体が、真菌である、項目36に記載の方法。
(項目55)
前記真菌が、Cryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum、Coccidioides immitis、Blastomyces dermatitidis、Chlamydia trachomatis、Candida albicans、Candida tropicalis、Candida glabrata、Candida krusei、Candida parapsilosis、Candida dubliniensis、Candida lusitaniae、Epidermophyton floccosum、Microsporum audouinii、Microsporum canis、Microsporum canis var. distortum Microsporum cookei、Microsporum equinum、Microsporum ferrugineum、Microsporum fulvum、Microsporum gallinae、Microsporum gypseum、Microsporum nanum、Microsporum persicolor、Trichophyton ajelloi、Trichophyton concentricum、Trichophyton equinum、Trichophyton flavescens、Trichophyton gloriae、Trichophyton megnini、Trichophyton mentagrophytes var. erinacei、Trichophyton mentagrophytes var. interdigitale、Trichophyton phaseoliforme、Trichophyton rubrum、Trichophyton rubrum downy strain、Trichophyton rubrum granular strain、Trichophyton schoenleinii、Trichophyton simii、Trichophyton soudanense、Trichophyton terrestre、Trichophyton tonsurans、Trichophyton vanbreuseghemii、Trichophyton verrucosum、Trichophyton violaceum、Trichophyton yaoundei、Aspergillus fumigatus、Aspergillus flavus、およびAspergillus clavatusからなる群から選択される、項目54に記載の方法。
(項目56)
感染性因子の成長を阻害する方法であって、前記因子を項目1から21のいずれか一項に記載の化合物と接触させ、それによって前記感染性因子の成長を阻害するステップを含む方法。
(項目57)
前記感染性因子が、インビトロで培養される、項目56に記載の方法。
(項目58)
細菌細胞におけるペプチドグリカン合成を阻害する方法であって、前記細菌細胞を項目1から21のいずれか一項に記載の化合物と接触させ、それによって前記細菌細胞におけるペプチドグリカン合成を阻害するステップを含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、S.aureus ATCC 33591に感染し、本発明の化合物およびバンコマイシンで処置された好中球減少マウス太腿感染モデルにおける細菌コロニーの平均数(平均log10 CFU/太腿1グラムとして表される)を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
本発明は、一般に、新規なデプシペプチド、これらの新規なデプシペプチドを調製する方法、新規なデプシペプチドを含む医薬組成物、および様々な障害、例えば細菌感染症を処置または阻害するために新規なデプシペプチドを使用する方法に関する。本発明は、他の抗生物質に耐性の株を含む、多くの細菌病原体、特にグラム陽性病原体に対して広範な活性を有する新規な抗生物質に関する。本明細書に開示の化合物は、好ましい生体利用能を有しており、毒性が低い。
【0036】
定義
便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で用いられるいくつかの用語を、ここにまとめる。別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書の基または用語に対して提供される最初の定義は、別段指定されない限り、本明細書を通して個々にまたは別の基の一部としてその基または用語に適用される。
【0037】
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書では、その冠詞の文法的な対象の1つまたは複数(すなわち少なくとも1つ)を指すために使用される。例えば、「1つの(an)要素」は、1つの要素または1つより多くの要素を意味する。
【0038】
用語「または」は、本明細書では、文脈から別段明らかに示されない限り、用語「および/または」を指すために使用され、用語「および/または」と交換可能に使用される。
【0039】
用語「実質的に同じ」は、本明細書では、比較される2つの対象が、ある共通の特徴のうちの少なくとも90%を共有することを意味するために使用される。特定の実施形態では、上記2つの対象は、ある共通の特徴のうちの少なくとも95%を共有する。特定の他の実施形態では、上記2つの対象は、ある共通の特徴のうちの少なくとも99%を共有する。
【0040】
用語「単離された」は、本明細書では、その天然環境で会合している他の物質を実質的に含まない、本発明の化合物を指すために使用される。例えば、単離された化合物は、夾雑物(例えば、細胞物質、該化合物が得られる細胞由来の夾雑物、化学的に合成される場合には化学的前駆体もしくは他の化学物質)を実質的に含まないものであってよい。他の材料を実質的に含まないとは、一般に、例えば約30%未満、または20%、または15%、または10%、または5%、または2%(乾燥重量で)の不純物を指す。いくつかの実施形態では、単離された化合物は、実質的に純粋である。いくつかの実施形態では、上記細胞由来の汚染物質または化学的前駆体を約10%未満(乾燥重量で)有する化合物の調製物は、実質的に純粋であるとみなされる。他の実施形態では、上記細胞由来の汚染物質または化学的前駆体を(乾燥重量で)約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満で有する化合物の調製物は、実質的に純粋であるとみなされる。
【0041】
別段指定されない限り、未充足の原子価を有する任意のヘテロ原子は、該原子価を満たすのに十分な水素原子を有すると推測される。
【0042】
用語「加熱」には、それに限定されるものではないが、従来の加熱(例えば、電気加熱、蒸気加熱、ガス加熱等)、ならびにマイクロ波加熱による加温が含まれる。
【0043】
用語「薬学的に許容される賦形剤、キャリアまたは希釈剤」は、本明細書で使用される場合、対象医薬品を、身体のある臓器または一部から身体の別の臓器または一部に運搬または輸送することに関与する、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料(encapsulating material)などの薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを意味する。それぞれのキャリアは、製剤の他の成分と適合性があり、患者にとって有害でないという意味で、「許容される」ものでなければならない。
【0044】
被験体に関する用語「処置すること」は、該被験体の障害の少なくとも1つの症状を改善することを指す。処置することは、障害または状態を治癒することまたはそれを改善することであり得る。
【0045】
用語「障害」は、本明細書では、文脈から別段明らかに示されない限り、疾患、状態または疾病という用語を示すために使用され、これらの用語と交換可能に使用される。
【0046】
用語「微生物」は、本明細書では、細菌、ウイルス、原生動物または真菌などの生物、特に疾患を伝染させる生物を示すために使用される。
【0047】
句「薬学的に許容される」は、本明細書では、良好な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに、ヒト、動物および植物の組織と接触させて使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比に相応した化合物、材料、組成物および/または剤形を指すために用いられる。
【0048】
本明細書を通して、基およびその置換基は、安定な部分および化合物を提供するように選択することができる。
【0049】
本発明の化合物
いくつかの実施形態では、本発明の教示は、単離された式(I)の化合物
【化5】
またはその鏡像異性体、ジアステレオマー、互変異性体もしくは薬学的に許容される塩
[式中、各立体中心は「*」で示され、独立に、RまたはS立体配置のいずれかであり得、
各R1’、R2’、R3’、R4’、R5’およびR6’は、独立に、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロアルケニル、置換または非置換アリール、-NRb’、-COR、-COOR、-CONRe’およびアミノ酸側鎖からなる群から選択され、
各R、Ra’、R、Rb’、R、R、RおよびRe’は、独立に、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロアルケニルおよび置換または非置換アリールからなる群から選択され、
Xは、-O-、-S-または-N-であり、
nは、1~5の整数である]
に関する。
【0050】
特定の一実施形態では、Xは、-O-である。別の特定の一実施形態では、Xは、-N-である。さらに別の特定の一実施形態では、Xは、-S-である。
【0051】
一実施形態では、nは、1~2の整数である。一実施形態では、nは、2~3の整数である。別の実施形態では、nは、3~4の整数である。さらに別の実施形態では、nは、4~5の整数である。いくつかの実施形態では、nは、1、2、3、4または5である。
【0052】
いくつかの実施形態では、アミノ酸側鎖は、天然アミノ酸側鎖である。他の実施形態では、アミノ酸側鎖は、非天然アミノ酸側鎖である。
【0053】
いくつかの実施形態では、RおよびRa’は両方とも、水素である。
【0054】
いくつかの実施形態では、RおよびRb’は両方とも、水素である。
【0055】
いくつかの実施形態では、RおよびRe’は両方とも、水素である。
【0056】
いくつかの実施形態では、本発明の教示は、単離された式(II)の化合物
【化6】
またはその鏡像異性体、ジアステレオマー、互変異性体もしくは薬学的に許容される塩
[式中、各立体中心は「*」で示され、独立に、RまたはS立体配置のいずれかであり得、
各R、R、R、R、R、R、RおよびRは、独立に、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロアルケニル、置換または非置換アリール、-NRb’、-COR、-COOR、-CONRe’およびアミノ酸側鎖からなる群から選択され、
各R、Rb’、R、R、R、Re’、RおよびRf’は、独立に、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロアルケニルおよび置換または非置換アリールからなる群から選択され、
Xは、-O-、-S-または-N-である]
に関する。
【0057】
特定の一実施形態では、Xは、-O-である。別の特定の一実施形態では、Xは、-N-である。さらに別の特定の一実施形態では、Xは、-S-である。
【0058】
いくつかの例では、Xは、-O-であり、RおよびRf’は両方とも、水素である。
【0059】
いくつかの例では、Rは、ベンジルであり得る。いくつかの例では、Rは、置換または非置換アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたはイソブチルであり得る。特定の一実施形態では、Rは、イソブチルである。
【0060】
いくつかの例では、Rは、置換または非置換アルキル、例えばアミノ基で置換されているブチルであり得る。いくつかの例では、Rは、置換または非置換アルキル、例えばヒドロキシル基で置換されているメチルであり得る。いくつかの例では、Rは、置換または非置換アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたはイソブチル、または -CONRe’であり得る。一態様では、Rは、メチルである。別の態様では、Rは、-CONRe’であり、RおよびRe’は両方とも、水素である。
【0061】
いくつかの態様では、Rは、置換または非置換アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたはイソブチルであり得る。特定の一実施形態では、Rは、メチルである。いくつかの例では、Rは、置換または非置換アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたはイソブチルであり得る。特定の一実施形態では、Rは、イソブチルである。いくつかの例では、Rは、置換または非置換アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたはイソブチルであり得る。特定の一実施形態では、Rは、イソブチルである。
【0062】
いくつかの実施形態では、各R、R、R、R、R、R、RおよびRは、独立に、アミノ酸側鎖、例えばD-アミノ酸側鎖またはL-アミノ酸側鎖であり得る。アミノ酸側鎖は、天然アミノ酸鎖、例えばアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン(phynylananine)、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンの側鎖であり得る。アミノ酸側鎖は、非天然アミノ酸側鎖、例えば当技術分野で公知の任意の非天然アミノ酸の側鎖でもあり得る。非天然アミノ酸側鎖の非限定的な例には、例えばSigma-Aldrich Catalogに列挙される非天然アミノ酸の側鎖が含まれ、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。一実施形態では、非天然アミノ酸側鎖は、β-ヒドロキシグルタミンであり得る。
【0063】
例えば、いくつかの実施形態では、Rは、フェニルアラニン、例えばD-フェニルアラニンまたはL-フェニルアラニンの側鎖であり得る。いくつかの例では、R、RまたはRは、ロイシン、例えばD-ロイシンまたはL-ロイシンの側鎖であり得る。いくつかの例では、Rは、リシン、例えばD-リシンまたはL-リシンの側鎖であり得る。いくつかの例では、Rは、セリン、例えばD-セリンまたはL-セリンの側鎖であり得る。いくつかの例では、Rは、アラニン、例えばD-アラニンまたはL-アラニンの側鎖であり得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、RおよびRb’は両方とも、水素である。いくつかの実施形態では、RおよびRe’は両方とも、水素である。いくつかの実施形態では、RおよびRf’は両方とも、水素である。
【0065】
用語「アルキル」は、1~12個の炭素原子、例えば直鎖では1~6個の炭素原子または分枝鎖では3~6個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖の脂肪族基を指す。例示的な「アルキル」基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4-ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4-トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が含まれる。
【0066】
用語「アルケニル」は、2~12個の炭素原子、例えば直鎖では2~6個の炭素原子または分枝鎖では3~6個の炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する、直鎖または分枝鎖の炭化水素基を指す。例示的な「アルケニル」基には、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル等などが含まれる。
【0067】
用語「アルキニル」は、2~12個の炭素原子、例えば、直鎖では2~6個の炭素原子または分枝鎖では3~6個の炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有する、直鎖または分枝鎖の炭化水素基を指す。例示的なこのような基には、エチレニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル等が含まれる。
【0068】
用語「シクロアルキル」は、1~4個の環および環1個当たり3~8個の炭素を含有する完全に飽和の環式炭化水素基を指す。例示的なこのような基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が含まれる。用語「シクロアルキル(cykloalkyl)」には、炭化水素骨格の1個または複数の炭素を置き換える酸素、窒素、硫黄またはリン原子をさらに含んでよいシクロアルキル基がさらに含まれる。
【0069】
用語「シクロアルケニル」は、1~4個の環および環1個当たり3~8個の炭素を含有する部分的に不飽和の環式炭化水素基を指す。例示的なこのような基には、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等が含まれる。
【0070】
用語「アリール」は、1~5個の芳香族環を含有する環式の芳香族炭化水素基、特にフェニル、ビフェニルまたはナフチルなどの単環式または二環式基を指す。2つまたはそれよりも多い芳香族環(例えば、二環式または三環式)を含有する場合、アリール基の芳香族環は、単一の点において連結していてもよく(例えば、ビフェニル)、または縮合していてもよい(例えば、ナフチル、フェナントレニル等)。用語「アリール」は、例えばピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール(isothiaozole)、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジン等、0~4個のヘテロ原子を含むことができる基、例えば5員および6員の単一環芳香族基も指す。さらに、用語「アリール」には、多環式アリール基、例えば三環式、二環式、例えばナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン(napthridine)、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、またはインドリジンが含まれる。環構造にヘテロ原子を有するそれらのアリール基は、「アリールヘテロ環」、「ヘテロ環」、「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」と呼ぶこともできる。
【0071】
本発明の教示に記載されているアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはアリール基は、置換されていなくても置換されていてもよい。用語「置換された」は、炭化水素骨格の1個または複数の炭素上の水素を置き換える少なくとも1つ、例えば1つ、2つ、3つ、4つまたはそれよりも多い置換基を有する、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはアリール基を指す。このような置換基は、例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、アセチル、アリール、ヒドロキシル、ハロゲン(例えば、-Br、-Cl、-Iまたは-F)、-OR、SR、NR、COOH、COORまたはCORを含むことができ、Rは、水素または1~6個の炭素を含むアルキルである。
【0072】
いくつかの例では、本発明の単離された化合物は、式(III)の化合物
【化7】
[式中、各立体中心は「*」で示され、独立に、RまたはS立体配置のいずれかであり得る]
である。
【0073】
いくつかの実施形態では、単離された化合物は、以下の表1に示す構造を有する化合物である。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物、例えば式(III)の化合物は、Novo29と呼ぶことができる。Novo29は、902g/モルの分子量を有するデプシペプチドである。理論に拘泥することを望むものではないが、Novo29は、脂質IIおよび脂質IIIの結合を介して作用することによってその抗菌性(actibacterial property)を発揮することができるペプチドグリカン合成阻害剤であり得ると考えられる。
【0075】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、血清に最大500μg/mLで添加するとゲル化を示さない。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物、例えば式(I)、(II)、(III)の化合物または表1の化合物中の任意の炭素または水素をそれぞれ、13CまたはHで置き換えることもできる。
【0077】
句「本発明の化合物」、「式(I)の化合物」、「式(II)の化合物」、「式(III)の化合物」、または「表1の化合物」は、本明細書で使用される場合、その鏡像異性体、ジアステレオマー、互変異性体、および薬学的に許容される塩を含むことを意味する。本発明のデプシペプチド化合物およびその塩は、それらの互変異性体の形態で(例えば、アミドまたはグアニジンとして)存在し得る。本明細書では、このようなすべての互変異性体の形態が、本発明の一部分として意図される。本発明の化合物、例えばベータ-プロテオバクテリアから単離された化合物は、「Novo29」と呼ぶこともできる。いくつかの実施形態では、本発明の教示は、立体異性体の混合物に関する。他の実施形態では、本発明の教示は、特に、本発明の化合物の単一の立体異性体に関する。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、細菌種の単離された天然産物である。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、これまでに培養されていないベータ-プロテオバクテリアの単離された天然産物である。
【0079】
本発明のデプシペプチド化合物の、鏡像異性形態およびジアステレオマー形態を含むあらゆる立体異性体(例えば、様々な置換基上の不斉炭素に起因して存在し得るもの)は、本発明の範囲内にあることが意図される。一実施形態では、本発明の化合物は、混合物である。しかしあるいは、本発明の化合物は、実質的に他の立体異性体を含まない単一の立体異性体である(例えば、特定の活性を有する純粋なまたは実質的に純粋な光学異性体として)。いくつかの実施形態では、本発明は、約10%未満(乾燥重量で)の他の異性体が存在する状態の、単一の立体異性体に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、約5%未満(乾燥重量で)の他の異性体が存在する状態の、単一の立体異性体に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、約2%未満(乾燥重量で)の他の異性体が存在する状態の、単一の立体異性体に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、約1%未満(乾燥重量で)の他の異性体が存在する状態の、単一の立体異性体に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、約5%(乾燥重量で)~約10%(乾燥重量で)の他の異性体が存在する状態の、単一の立体異性体に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、約1%(乾燥重量で)~約5%(乾燥重量で)の他の異性体が存在する状態の、単一の立体異性体に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、約1%(乾燥重量で)~約10%(乾燥重量で)の他の異性体が存在する状態の、単一の立体異性体に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、約5%(乾燥重量で)~約10%(乾燥重量で)の他の異性体が存在する状態の、単一の立体異性体に関する。無関係な化合物は、2%未満(乾燥重量で)を構成する。他の実施形態では、本発明の教示は、立体異性体の混合物を対象とする。本発明の化合物のキラル中心は、IUPAC1974推奨によって定義されている通り、SまたはR配置を有することができる。立体異性体形態は、例えば、ジアステレオマー誘導体の分別結晶化、分離もしくは結晶化、またはキラルカラムクロマトグラフィーによる分離などの物理的方法によって分割することができる。個々の光学異性体は、限定されるものではないが、例えば、光学的に活性な酸を用いて塩を形成した後に結晶化するなどの従来の方法を含む任意の適切な方法によって、立体異性体の混合物から得ることができる。
【0080】
本発明のデプシペプチド化合物は、それらを調製した後に、例えば単離し精製して、90%以上(乾燥重量で)の重量の量を含有する組成物を得ることができ、次にその組成物は、本明細書に記載の通り使用され、または製剤化される。本発明のデプシペプチド化合物は、それらを調製した後に、例えば単離し精製して、95%以上(乾燥重量で)の重量の量を含有する組成物を得ることができ、次にその組成物は、本明細書に記載の通り使用され、または製剤化される。本発明のデプシペプチド化合物は、それらを調製した後に、例えば単離し精製して、約90%(乾燥重量で)~約95%(乾燥重量で)の重量の量を含有する組成物を得ることができ、次にその組成物は、本明細書に記載の通り使用され、または製剤化される。本発明のデプシペプチド化合物は、それらを調製した後に、例えば単離し精製して、約85%(乾燥重量で)~約95%(乾燥重量で)の重量の量を含有する組成物を得ることができ、次にその組成物は、本明細書に記載の通り使用され、または製剤化される。本発明のデプシペプチド化合物は、それらを調製した後に、例えば単離し精製して、約95%(乾燥重量で)~約99%(乾燥重量で)の重量の量を含有する組成物を得ることができ、次にその組成物は、本明細書に記載の通り使用され、または製剤化される。
【0081】
本発明の化合物のあらゆる立体配置異性体が、混合物、または純粋なもしくは実質的に純粋な形態のいずれかで意図される。
【0082】
別の実施形態では、本発明は、本発明の教示に記載されている化合物、および薬学的に許容される賦形剤、キャリア、または希釈剤を含む医薬組成物に関する。特定の実施形態では、組成物は、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗原生動物剤、駆虫薬、抗悪性腫瘍剤、免疫調節剤、高コレステロール血症治療剤およびそれらの組合せからなる群から選択される薬剤をさらに含む。
【0083】
本発明のデプシペプチド化合物は、塩を形成することができ、これも本発明の範囲に含まれる。本明細書における本発明の化合物への参照は、別段指定されない限り、その化合物の塩への参照を含むと理解される。用語「塩(複数可)」は、本明細書で用いられる場合、無機酸および/もしくは有機酸を用いて形成される酸性塩を指す。薬学的に許容される(すなわち、非毒性の生理的に許容される)塩が好ましいが、例えば調製中に用いることができる単離または精製ステップにおいて、他の塩も有用である。本発明の化合物の塩は、媒体(例えば、塩が沈殿する媒体)中または水性媒体または水性および有機性の媒体中で、本発明の化合物を、ある量の(例えば当量(equivalent amount)の)酸と反応させ、その後凍結乾燥させることによって形成することができる。
【0084】
アミンなどが挙げられるがこれらに限定されない塩基性部分を含有する本発明のデプシペプチド化合物は、様々な有機酸および無機酸と塩を形成することができる。例示的な酸付加塩には、酢酸塩(酢酸またはトリハロ酢酸、例えばトリフルオロ酢酸を用いて形成されるものなど)、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシエタンスルホン酸塩(例えば、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩(例えば、2-ナフタレンスルホン酸塩)、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩(例えば、3-フェニルプロピオン酸塩)、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩(硫酸を用いて形成されるものなど)、スルホン酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、例えばトシル酸塩、ウンデカン酸塩等が含まれる。
【0085】
本発明の化合物を調製する方法
本発明の教示は、本発明の化合物、例えば上に記載の式(I)、式(II)、式(III)の化合物または表1の化合物を生成する方法にも関する。
【0086】
方法は、好気条件下で、炭素、窒素および無機塩の同化性供給源を含む培養培地中でベータ-プロテオバクテリアを培養(cultivating)または培養(culturing)し、アッセイ可能な量の本発明の化合物を生成できるようにするステップを含む。
【0087】
特定の実施形態では、方法は、本発明の化合物を単離および/または精製するステップをさらに含む。本発明の化合物は、発酵ブロスを遠心分離する(例えば、10,000rpmで20分間遠心分離する)し、本発明の化合物を例えば逆相クロマトグラフィーにより単離および/または精製することによって単離することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、方法は、本発明の化合物を少なくとも約75%の純度(乾燥重量)まで、例えば少なくとも約80%の純度(乾燥重量)、少なくとも約85%の純度(乾燥重量)、少なくとも約90%の純度(乾燥重量)、少なくとも約95%の純度(乾燥重量)、少なくとも約97%の純度(乾燥重量)、または少なくとも約99%の純度(乾燥重量)まで単離および/または精製するステップをさらに含む。
【0089】
さらに別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の方法に従って調製された本発明の化合物に関する。
【0090】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の化合物、例えば式(I)、式(II)、式(III)の化合物または表1の化合物を含む培養培地も提供する。培養培地は、細菌細胞、例えばベータ-プロテオバクテリアのクラスに属する細菌細胞を培養するのに適している培養培地であり得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の化合物、例えば式(I)、式(II)、式(III)の化合物または表1の化合物を含む細胞ライセート、例えば細菌細胞ライセートも提供する。細菌細胞ライセートは、ベータ-プロテオバクテリアのクラスに属する細菌細胞、例えば培養細菌細胞を使用して調製することができる。
【0092】
あるいは、本発明の化合物、例えば式(I)、式(II)、式(III)の化合物または表1の化合物は、当技術分野で公知の合成方法を使用することによって合成することができる。
【0093】
本発明の化合物を用いた処置の方法
本発明はまた、病原体の成長を阻害する方法を提供する。方法は、病原体を有効量の1つまたは複数の本発明のデプシペプチド化合物と接触させ、それによって病原体の成長を、化合物によって処置していない病原体の成長と比較して阻害するステップを含む。特定の実施形態では、方法は、化合物によって処置していない病原体の成長と比較して病原体の成長を低減する。他の場合には、処置は、病原体の殺滅をもたらす。病原体の非限定的な例には、それに限定されるものではないが、細菌、真菌、ウイルス、原生動物、蠕虫、寄生生物、およびそれらの組合せが含まれる。これらの方法は、インビボまたはインビトロで実施することができる。
【0094】
特定の細菌に対する本発明のデプシペプチド化合物の抗菌活性は、阻害域のモニタリングおよび最小阻害濃度(MIC)アッセイなどのインビトロアッセイによって評価することができる。本発明のデプシペプチド化合物の抗真菌活性は、例えばSanatiら、A new triazole, voriconazole (UK-109,496), blocks sterol biosynthesis in Candida albicans and Candida krusei、Antimicrob. Agents Chemother.、1997年11月;41巻(11号):2492~2496頁に記載の通り、例えば所望の真菌病原体(Candida albicansおよびAspergillus種など)の生存率を求めることによって決定することができ、その文書は、内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。本発明のデプシペプチド化合物の抗ウイルス性は、Tisdale M.、Monitoring of viral susceptibility: new challenges with the development of influenza NA inhibitors、Rev. Med. Virol.、2000年1月~2月;10巻(1号):45~55頁に記載の通り、例えばインフルエンザのノイラミニダーゼの阻害をモニターすることによって、またはウイルス生存率をアッセイすることによって決定することができ、その文書は、内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。本発明のデプシペプチド化合物の抗原生動物活性は、Katiyarら、Antiprotozoal activities of benzimidazoles and correlations with beta-tubulin sequence、Antimicrob. Agents Chemother.、1994年9月;38巻(9号): 2086~2090頁に記載の通り、Trichomonas vaginalisおよびGiardia lambliaなどの寄生原生動物の生存率を求めることによって決定することができ、その文書は、内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。本発明のデプシペプチド化合物の駆虫活性は、例えばMolgaard P.ら、Traditional herbal remedies used for the treatment of urinary schistosomiasis in Zimbabwe、J. Ethnopharmacol.、1994年4月;42巻(2号):125~32頁に記載の通り、Schistosoma mansoni、Schistosoma cercariaeおよびCaenorhabditis elegansなどの線虫の生存率に対する化合物の効果を求めることによって決定することができ、その文書は、内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0095】
他の実施形態では、本発明は、被験体に、有効量の本明細書に記載の1つまたは複数のデプシペプチド化合物を投与することによって、障害の処置を必要としている被験体の障害、例えば病原体感染を処置する方法を対象とする。特定の実施形態では、障害は、それに限定されるものではないが、細菌、真菌、ウイルス、原生動物、蠕虫、寄生生物、またはそれらの組合せなどの病原体によって引き起こされる。
【0096】
いくつかの実施形態では、障害は、細菌によって引き起こされる。本明細書に記載のデプシペプチド化合物は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方に対して有用であり得る。特に、障害は、グラム陽性菌によって引き起こされ得る。あるいは、障害は、グラム陰性菌によって引き起こされ得る。グラム陽性菌の非限定的な例には、Streptococcus、Staphylococcus、Enterococcus、Corynebacteria、Listeria、Bacillus、Erysipelothrix、およびActinomycetesからなる群から選択される属に属する細菌が含まれる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、以下の1種または複数種による感染を処置するのに使用される:Helicobacter pylori、Legionella pneumophilia、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium avium、Mycobacterium intracellulare、Mycobacterium kansaii、Mycobacterium gordonae、Mycobacteriaスポロゾイト(Mycobacteria sporozoites)、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、Listeria monocytogenes、化膿性Streptococcus(Streptococcus pyogenes)(A群Streptococcus)、化膿性Streptococcus agalactiae(B群Streptococcus)、Streptococcus dysgalactia、Streptococcus faecalis、Streptococcus bovis、Streptococcus pneumoniae、病原性Campylobacter スポロゾイト、Enterococcusスポロゾイト、Haemophilus influenzae、Pseudomonas aeruginosa、Bacillus anthracis、Bacillus subtilis、Escherichia coli、Corynebacterium diphtheriae、Corynebacterium jeikeium、Corynebacteriumスポロゾイト、Erysipelothrix rhusiopathiae、Clostridium perfringens、Clostridium tetani、Clostridium difficile、Enterobacter aerogenes、Klebsiella pneumoniae、Pasturella multocida、Bacteroides thetaiotamicron、Bacteroides uniformis、Bacteroides vulgatus、Fusobacterium nucleatum、Streptobacillus moniliformis、Leptospira、およびActinomyces israelli。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)またはバンコマイシン耐性Entercocci(VRE)による感染を処置するのに有用であり得る。米国において、MRSAにより、年間およそ19,000人が死亡している。これらの死亡のほとんどは、院内MRSA(HA-MRSA)に起因するが、市中MRSA(CA-MRSA)の方が実際には病原性が高く、まだ健康な個体にとっても致死的となる可能性があることが公知である。CA-MRSAの毒性(virulence)は、部分的に、フェノール可溶性モジュリンまたはPSMペプチドの発現に起因する。したがって、CA-MRSAを処置するのに、本発明の化合物を、それに限定されるものではないがPSMペプチドなどの毒性因子の発現および/または活性をモジュレートする薬剤と組み合わせて使用することができる。特定の実施形態では、本発明のデプシペプチド化合物は、Borelia burgdorferi、Treponema pallidium、およびTreponema pertenueなどのスピロヘータを処置するのに使用することができる。
【0097】
特定の一実施形態では、グラム陽性菌は、Staphylococcus(例えば、S.aureus spp.、S.epidermidis spp.、S.warneri spp.およびS.haemolyticus spp.を含む);Streptococcus(例えば、S.viridans spp.、S.pneumoniae spp.、S.agalactiae spp.およびS.pyogenes spp.を含む);Bacillus(例えば、B.anthracis spp.およびB.subtilis, spp.を含む);Clostridium(例えば、C.difficile spp.を含む);Propionibacterium(例えば、P.acnes spp.を含む);Enterococcus(例えば、E.faecium spp.、E.faecalis spp.、バンコマイシン耐性E.faecium spp.およびバンコマイシン耐性E.faecalis spp.を含む);およびMycobacterium(例えば、M.smegmatis spp.およびM.tuberculosis spp.を含む)から選択することができる。本明細書に記載の化合物は、これらの細菌によって引き起こされる障害を処置するのに有用である。このような障害の例には、急性の細菌性皮膚および皮膚組織感染症、C.difficileに関連する下痢、炭疽、敗血症、ボツリヌス中毒、尿路感染症、菌血症、細菌性心内膜炎、憩室炎、髄膜炎、肺炎、および結核が含まれる。
【0098】
特定の一実施形態では、グラム陰性細菌は、Haemophilus(例えば、H.influenzae spp.を含む);Klebsiella(例えば、K.pneumoniae spp.を含む);Pseudomonas(例えば、P.aeruginosa spp.を含む);Escherichia(例えば、E.coli spp.を含む);Yersinia(例えば、Y.pestis spp.を含む);Neisseria(例えば、N.gonorrhoeae spp.を含む);Bacteriodes(例えば、B.fragilis spp.を含む);Proteus(例えば、P.mirabilis spp.およびP.vulgaris spp.を含む);Enterobacter(例えば、E.cloacae spp.およびE.aerogenes spp.を含む);Serratia(例えば、S.marcescens spp.を含む);Acinetobacter(例えば、A.baumannii spp.を含む);およびMoraxella(例えば、M.catarrhalis spp.を含む)から選択される。特定の一実施形態では、グラム陰性菌は、Haemophilus、特にH.influenzae、またはMoraxella、特にM.catarrhalis spp.である。本明細書に記載の化合物は、これらの細菌によって引き起こされる障害を処置するのに有用である。このような障害の例には、インフルエンザ、菌血症、肺炎、急性の細菌性髄膜炎、淋疾、尿路感染症、気道感染症、カテーテルに関連する菌血症、創傷感染症、中耳炎、気管支炎、副鼻腔炎、および喉頭炎が含まれる。
【0099】
他の実施形態では、本明細書に記載のデプシペプチド化合物は、ウイルス障害を処置するのに有用であり得る。本発明の化合物により処置される障害を引き起こし得る感染性ウイルスの非限定的な例には、Retroviridae(ヒト免疫不全ウイルス、例えば、HIV-1(HTLV-III、LAVまたはHTLV-III/LAVと呼ばれる)またはHIV-III;および他の分離株、例えばHIV-LP;Picornaviridae(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);Calciviridae(例えば、胃腸炎を引き起こす株);Togaviridae(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);Flaviridae(例えば、デングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱ウイルス);Coronaviridae(例えば、コロナウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス);Rhabdoviridae(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);Filoviridae(例えば、エボラウイルス);Paramyxoviridae(例えば、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);Orthomyxoviridae(例えば、インフルエンザウイルス);Bungaviridae(例えば、ハンタンウイルス、ブンガウイルス(bunga virus)、フレボウイルスおよびナイロウイルス);Arenaviridae(出血熱ウイルス);Reoviridae(例えば、レオウイルス、オルビウイルス(orbiviurses)およびロタウイルス);Birnaviridae;Hepadnaviridae(例えば、B型肝炎ウイルス);Parvoviridae(パルボウイルス);Papovaviridae(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);Adenoviridae(ほとんどのアデノウイルス);Herpesviridae(例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス);Poxviridae(例えば、痘瘡ウイルス、ワクチニアウイルス、ポックスウイルス);ならびにIridoviridae(例えば、アフリカブタ熱ウイルス);ならびに未分類ウイルス(例えば、海綿状脳症の病原体、デルタ肝炎の病原体(B型肝炎ウイルスの欠損サテライトであると考えられる)、非A非B型肝炎の病原体(クラス1=内部伝播型;クラス2=親から伝播した、すなわちC型肝炎);ノーウォークおよび関連ウイルス、ならびにアストロウイルス)が含まれる。特定の実施形態では、本発明の化合物は、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、および単純ヘルペスウイルスを処置するのに使用される。
【0100】
いくつかの実施形態では、本発明のデプシペプチド化合物は、真菌によって引き起こされる障害を処置するのに有用であり得る。本発明の化合物によって阻害することができる真菌の非限定的な例には、それに限定されるものではないが、Cryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum、Coccidioides immitis、Blastomyces dermatitidis、Chlamydia trachomatis、Candida albicans、Candida tropicalis、Candida glabrata、Candida krusei、Candida parapsilosis、Candida dubliniensis、Candida lusitaniae、Epidermophyton floccosum、Microsporum audouinii、Microsporum canis、Microsporum canis var. distortum Microsporum cookei、Microsporum equinum、Microsporum ferrugineum、Microsporum fulvum、Microsporum gallinae、Microsporum gypseum、Microsporum nanum、Microsporum persicolor、Trichophyton ajelloi、Trichophyton concentricum、Trichophyton equinum、Trichophyton flavescens、Trichophyton gloriae、Trichophyton megnini、Trichophyton mentagrophytes var. erinacei、Trichophyton mentagrophytes var. interdigitale、Trichophyton phaseoliforme、Trichophyton rubrum、Trichophyton rubrum downy strain、Trichophyton rubrum granular strain、Trichophyton schoenleinii、Trichophyton simii、Trichophyton soudanense、Trichophyton terrestre、Trichophyton tonsurans、Trichophyton vanbreuseghemii、Trichophyton verrucosum、Trichophyton violaceum、Trichophyton yaoundei、Aspergillus fumigatus、Aspergillus flavus、およびAspergillus clavatusが含まれる。
【0101】
さらに他の実施形態では、本明細書に記載のデプシペプチド化合物は、原生動物によって引き起こされる障害を処置するのに有用であり得る。本発明の化合物によって阻害することができる原生動物の非限定的な例には、それに限定されるものではないが、Trichomonas vaginalis、Giardia lamblia、Entamoeba histolytica、Balantidium coli、Cryptosporidium parvumおよびIsospora belli、Trypansoma cruzi、Trypanosoma gambiense、Leishmania donovani、およびNaegleria fowleriが含まれる。
【0102】
特定の実施形態では、本明細書に記載のデプシペプチド化合物は、蠕虫によって引き起こされる障害を処置するのに有用である。本発明の化合物によって阻害することができる蠕虫の非限定的な例には、それに限定されるものではないが、Schistosoma mansoni、Schistosoma cercariae、Schistosoma japonicum、Schistosoma mekongi、Schistosoma hematobium、Ascaris lumbricoides、Strongyloides stercoralis、Echinococcus granulosus、Echinococcus multilocularis、Angiostrongylus cantonensis、Angiostrongylus constaricensis、Fasciolopis buski、Capillaria philippinensis、Paragonimus westermani、Ancylostoma dudodenale、Necator americanus、Trichinella spiralis、Wuchereria bancrofti、Brugia malayi、およびBrugia timori、Toxocara canis、Toxocara cati、Toxocara vitulorum、Caenorhabiditis elegans、およびAnisakis種が挙げられる。
【0103】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のデプシペプチド化合物は、寄生生物によって引き起こされる障害を処置するのに有用である。本発明の化合物によって阻害することができる寄生生物の非限定的な例には、それに限定されるものではないが、Plasmodium falciparum、Plasmodium yoelli、Hymenolepis nana、Clonorchis sinensis、Loa loa、Paragonimus westermani、Fasciola hepatica、およびToxoplasma gondiiが含まれる。特定の実施形態では、寄生生物は、マラリア原虫である。
【0104】
他の実施形態では、デプシペプチド化合物を使用して、感染因子の成長を、化合物によって処置しない場合の感染因子の成長と比較して阻害することができる。感染因子の非限定的な例には、それに限定されるものではないが、細菌、真菌、ウイルス、原生動物、蠕虫類、寄生生物、およびそれらの組合せが含まれる。デプシペプチド化合物を使用して、感染因子をインビボまたはインビトロで阻害することができる。
【0105】
本発明の化合物を含む医薬組成物
本発明は、本発明のデプシペプチド化合物の少なくとも1つ、および本発明のデプシペプチド化合物を可溶化するキャリアなど薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物も提供する。これらのデプシペプチド組成物は、被験体(例えば、ヒトなどの哺乳動物)への投与に適している。医薬組成物は、障害を処置するのに使用することができる。このような障害の非限定的な例は上に提示され、病原体、例えば細菌による感染を含む。
【0106】
1つの実施形態では、上記デプシペプチド化合物は、薬学的に許容されるキャリア中で投与される。当該分野で公知の任意の適切なキャリアを使用することができる。本発明の化合物を効率的に可溶化するキャリアが好ましい。キャリアには、それに限定されるものではないが、固体、液体、または固体と液体の混合物が挙げられる。上記キャリアは、カプセル、錠、小球(pill)、粉末、ロゼンジ、懸濁液、乳濁液またはシロップの形態をとることができる。上記キャリアは、香味剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁化剤、結合剤、安定剤、錠剤崩壊剤および封入材料として作用する物質を含むことができる。句「薬学的に許容される」は、本明細書では、良好な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比に相応した化合物、材料、組成物および/または剤形を指すために用いられる。
【0107】
薬学的に許容されるキャリアとして働き得る材料の非限定的な例には、以下が挙げられる。(1)糖、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース、(2)デンプン、例えばトウモロコシデンプンおよびバレイショデンプン、(3)セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース、(4)粉末化トラガント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)賦形剤、例えばカカオバターおよび坐剤ワックス、(9)油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油、(10)グリコール、例えばプロピレングリコール、(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール、(12)エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル、(13)寒天、(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム、(15)アルギン酸、(16)発熱物質を含まない水、(17)等張食塩水、(18)リンガー溶液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝液、ならびに(21)医薬製剤で用いられる他の適合性のある非毒性の物質。
【0108】
上記製剤は、好都合には単位剤形で提示することができ、薬学分野で周知の任意の方法によって調製することができる。単一剤形を生成するためにキャリア材料と組み合わせることができる活性成分の量は、中でも処置を受ける被験体、特定の投与モード、処置される特定の状態に応じて変わることになる。単一剤形を生成するためにキャリア材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に治療効果をもたらす化合物の量である。一般にこの量は、100%のうち、活性成分が約1パーセント~約99パーセント、好ましくは約5パーセント~約70パーセント、最も好ましくは約10パーセント~約30パーセントの範囲である。
【0109】
これらの製剤または組成物の調製方法は、本発明の化合物を、上記キャリアおよび必要に応じて1つまたは複数の補助成分と会合させるステップを含む。一般に、上記製剤は、本発明のデプシペプチド化合物を、液体キャリアまたは適時に分割される固体キャリアまたはその両方と、均一かつ十分に会合させ、次に必要な場合、その生成物を成形することによって調製される。
【0110】
経口投与用の固体剤形(例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤等)では、上記活性成分は、1つまたは複数の追加の成分、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または以下の成分のいずれかと混合される:充填剤または増量剤、例えばそれに限定されるものではないが、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸;結合剤、例えばそれに限定されるものではないが、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアゴム;保湿剤、例えばそれに限定されるものではないが、グリセロール;崩壊剤、例えばそれに限定されるものではないが、寒天、炭酸カルシウム、バレイショデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケートおよび炭酸ナトリウム;溶解遅延剤、例えばそれに限定されるものではないが、パラフィン;吸収促進剤、例えばそれに限定されるものではないが、四級アンモニウム化合物;湿潤剤、例えばそれに限定されるものではないが、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート;吸収剤、例えばそれに限定されるものではないが、カオリンおよびベントナイト粘土;滑沢剤、例えばそれに限定されるものではないが、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびその混合物;ならびに着色剤。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、上記薬学的組成物は、緩衝剤を含むこともできる。軟質および硬質充填ゼラチンカプセルにおける充填剤としては、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用する、類似のタイプの固体組成物を用いることもできる。
【0111】
散剤では、上記キャリアは、微粉砕された固体であり、これは有効量の微粉砕した薬剤と混合される。散剤およびスプレー剤は、本発明の化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有することができる。スプレー剤はさらに、クロロフルオロ炭化水素などの通例の噴霧剤、ならびにブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素を含有することができる。
【0112】
全身性経口投与用の錠剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、糖(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール)、セルロース(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ガム(例えば、アラビアゴム、トラガント)などの当技術分野で公知の1つまたは複数の賦形剤を、1つまたは複数の崩壊剤(例えば、トウモロコシ、デンプンまたはアルギン酸、結合剤、例えばゼラチン、コラーゲンまたはアカシアゴムなど)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク)、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(disintegrant)(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム)、表面活性剤および/または分散剤と一緒に含むことができる。錠剤は、必要に応じて1つまたは複数の補助成分と共に圧縮または成型することによって生成され得る。
【0113】
液剤、懸濁剤、乳剤またはシロップ剤では、有効量の上記デプシペプチド化合物を、滅菌水または有機溶媒、例えば水性プロピレングリコールなどのキャリアに溶解または懸濁させる。上記化合物をデンプン水溶液もしくはカルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液、または当技術分野で公知の適切な油に分散させることによって、他の組成物を生成することもできる。その液体剤形は、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、それに限定されるものではないが、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにその混合物などの、当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤を含有することができる。
【0114】
経口組成物は、不活性希釈剤以外に、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、賦香剤、ならびに保存剤などのアジュバントを含むこともできる。
【0115】
懸濁剤は、活性な上記化合物に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガント、ならびにその混合物などの懸濁化剤を含有することができる。
【0116】
直腸または膣投与のための薬学的組成物の製剤は、坐剤として提示することができ、その坐剤は、本発明の1つまたは複数の化合物を、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスまたはサリチレートを含む1つまたは複数の適切な非刺激性の賦形剤またはキャリアと混合することによって調製することができ、その坐剤はまた、室温で固体であり、体温で液体になり、したがって上記直腸または膣腔内で融解し、上記薬剤を放出する。膣投与用に適した製剤には、当技術分野で適していることが公知のキャリアを含有する、ペッサリー製剤、タンポン製剤、クリーム製剤、ゲル製剤、ペースト製剤、発泡体製剤またはスプレー製剤も含まれる。
【0117】
本発明の化合物の局所または経皮投与用の剤形には、散剤、スプレー剤、軟膏、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、点滴剤、パッチおよび吸入剤が挙げられる。活性な上記デプシペプチド化合物は、無菌条件下で薬学的に許容されるキャリアと、かつ必要な場合には任意の保存剤、緩衝剤または噴霧剤と混合することができる。
【0118】
軟膏、ペースト剤、クリーム剤およびゲル剤は、活性な化合物に加えて、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクならびに酸化亜鉛、またはその混合物などの賦形剤を含有することができる。
【0119】
経皮パッチは、本発明の化合物を身体に制御送達するという追加の利点を有する。かかる剤形は、適切な媒体に上記薬剤を溶解または分散させることによって生成され得る。皮膚への上記薬剤流動を増大するために、吸収促進剤を使用することもできる。かかる流動の速度は、速度制御膜を提供するか、または上記デプシペプチド化合物をポリマーマトリックスもしくはゲルに分散させることによって制御することができる。
【0120】
上記デプシペプチド化合物は、このような処置を必要としている被験体に有効量で投与される。句「有効量」は、本明細書で使用される場合、動物において何らかの所望の効果をもたらすのに有効な、本発明の化合物または本発明の化合物を含む組成物の量を意味する。薬剤が、治療効果を達成するのに使用される場合、「有効量」を含む実際の用量は、それに限定されるものではないが、処置される特定の状態、疾患の重症度、患者の大きさおよび健康状態、投与経路を含むいくつかの条件に応じて変わることが認識されている。熟練した医療従事者であれば、医療分野で周知の方法を使用して、適切な用量を容易に決定することができる。いくつかの実施形態では、有効量は、障害の処置を必要としている被験体における障害を処置することに有効な量である。さらに、上記デプシペプチド化合物の有効量は、微調整することによって、かつ/または2種以上のデプシペプチド化合物を投与することによって、またはデプシペプチド化合物を第2の薬剤(例えば、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、NSAID、DMARDS、ステロイド等)と一緒に投与することによって低減または増大できることを、当業者は理解されよう。有効量は、例えば経験的に、相対的に少ない量で開始し、段階的に増分すると同時に有益な効果(例えば、症状の低減)を評価することによって、決定することができる。実際の有効量は、当技術分野で標準的な方法を使用して、用量/応答アッセイによって確立される(Johnsonら、Diabetes、42巻:1179頁(1993年))。当業者に公知の通り、上記有効量は、上記デプシペプチド化合物の生体利用能、生物活性および生分解性に応じて決まる。
【0121】
いくつかの実施形態では、有効量は、被験体の障害の症状を低減することができる量である。したがって、この量は、処置を受ける被験体ごとに変わることができる。例えば、上記デプシペプチド化合物の有効量は、体重1kg当たり約1μg~約100mgを占めることができる。一実施形態では、上記化合物の有効量は、体重1kg当たり約1μg~約50mgを占める。さらなる一実施形態では、上記化合物の有効量は、体重1kg当たり約10μg~約10mgを占める。1つまたは複数のデプシペプチド化合物または薬剤は、キャリアと組み合わされる場合には、約1重量パーセント~約99重量パーセントの量で存在することができ、その残りは薬学的に許容されるキャリアから構成される。いくつかの実施形態では、有効量は、1用量当たり約1mg~約10g、例えば1用量当たり約10mg~約1gである。上に列挙した範囲の値および範囲の中間値は、本発明の教示によって包含されるものとする。
【0122】
デプシペプチド化合物の投与は、1時間ごと、毎日、毎週、毎月、毎年行うことができ、または単回事象であってもよい。さらに投与は、1日から1年またはそれを超える期間行うことができる。いくつかの実施形態では、投与は、一定期間、例えば約1週間、2週間、3週間、1カ月間、3カ月間、6カ月間または1年間にわたって毎日投与することを指す。いくつかの実施形態では、投与は、一定期間、例えば約1カ月、3カ月、6カ月、1年またはそれを超える期間にわたって毎週投与することを指す。
【0123】
本発明はまた、少なくとも1つの本発明のデプシペプチド化合物を含むキットを提供する。上記キットは、少なくとも1つの容器を含有することができ、これらの材料の使用を指導する指示を含むこともできる。別の実施形態では、キットは、問題の障害を処置するために使用される薬剤を、被験体が炎症性疾患を有しているかどうかを決定するために存在し得る上記の材料と共に、またはそれなしに含むことができる。
【0124】
本発明の医薬組成物の投与
本明細書に記載の本発明のデプシペプチド化合物を含む本発明の製剤の投与方法は、当技術分野で周知のいくつかの方法のいずれかによって行うことができる。これらの方法には、局所投与または全身投与が含まれる。例示的な投与経路には、経口、非経口、経皮、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内(例えば、ネブライザー、吸入器、エアロゾルディスペンサ)、眼内(例えば、結膜炎の処置用)、耳内(例えば、耳の感染症の処置用)、結腸直腸、直腸、膣内、およびその任意の組合せが挙げられる。さらに、中枢神経系には、脳室内および髄腔内注入を含む任意の適切な経路によって、本発明の薬学的組成物を導入することが望ましい場合がある。脳室内注入は、例えばOmmayaリザーバーなどのリザーバーに取り付けた脳室内カテーテルによって容易になる場合がある。導入方法は、再充填可能なまたは生分解性デバイス、例えばデポーによって提供することもできる。さらに投与は、デバイス、移植片、ステントまたは人工器官をコーティングすることによって行うこともできることが意図される。本発明の化合物はまた、カテーテルが体内に挿入される任意の状況で、カテーテルをコーティングするのに使用することができる。
【0125】
別の実施形態では、対象の上記デプシペプチド化合物は、他の薬剤との併用療法の一部として投与することができる。併用療法とは、既に投与した治療化合物が体内でまだ有効である間に第2の化合物が投与されるように、2種以上の異なる治療用化合物を組み合わせる任意の投与形態を指す(例えば、2種の化合物が、患者において同時に有効であると、そこには、上記2種の化合物の相乗効果が含む場合がある)。例えば、異なる治療用化合物を、同じ製剤または別個の製剤のいずれかにより、同時または逐次的に投与することができる。したがって、このような処置を受ける個体は、異なる治療用化合物の複合効果を有することができる。
【0126】
例えば、デプシペプチド化合物は、他の公知の抗生物質と併用することができる。本発明のデプシペプチド化合物は、逐次的に、または実質的に同時に投与することができる。薬物に対する耐性を生じる上記病原体の能力を低減するのに、抗生物質を変更することは有益であり得る。抗生物質の非限定的な例には、ペニシリン(例えば、天然ペニシリン、ペニシリナーゼ耐性ペニシリン、抗シュードモナスペニシリン、アミノペニシリン)、テトラサイクリン、マイクロライド(例えば、エリスロマイシン)、リンコサミド(例えば、クリンダマイシン)、ストレプトグラミン(例えば、Synercid)、アミノグリコシド、およびスルホンアミドが挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明のデプシペプチド化合物は、それに限定されるものではないが、フェノール可溶性モジュリンなどの毒性因子を標的にする化合物と併用して使用される。いくつかの実施形態では、本発明のデプシペプチド化合物は、上記病原体の排出ポンプを標的にする化合物と併用して使用される。
【0127】
本発明の化合物の医薬組成物を含むキットおよび製造品
また本発明の範囲には、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、およびそれを使用するための指示を含むキットが含まれる。用語「キット」は、本明細書で使用される場合、病原体によって引き起こされる障害を処置するための、本発明の、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物と共に投与する構成成分を含む、パッケージ産物を指す。キットは、好ましくは、キットの構成成分を保持する箱または容器を含む。箱または容器には、ラベルまたは食品医薬品局が承認したプロトコルが添えられる。箱または容器は、好ましくは、プラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン、またはプロピレンの入れ物に含有されている本発明の構成成分を保持する。入れ物は、キャップ付き管もしくはボトル、または本発明の化合物を含有する溶液を、例えば被験体の耳もしくは目に滴下投与するのに適した点滴器を含有するボトルであり得る。キットはまた、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を投与するための指示を含み得る。特定の一実施形態では、キットは、(a)本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む、容器に入れられた医薬組成物、および(b)医薬組成物を使用する方法を記載している指示を含むことができる。
【0128】
キットは、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗原生動物剤、駆虫剤、抗新生物剤、免疫調節剤、抗高コレステロール血症剤およびそれらの組合せなどのもう1つの追加の試薬をさらに含有することができる。キットは、典型的に、キットの内容物の所期の使用を示すラベルを含む。ラベルという用語は、キット上もしくはキットと共に供給され、または他の方法でキットに添える任意の記載資料または記録資料を含む。
【0129】
本発明はまた、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物の液体製剤で充填された、1つまたは複数の容器を含む医薬用パックまたはキットを提供する。一実施形態では、本発明の液体製剤で充填された容器は、プレフィルドシリンジである。特定の一実施形態では、本発明の製剤は、無菌溶液として、単回投与用のバイアルに製剤化される。例えば、製剤は、目標体積1.2mLを有する3ccのUSPタイプIのホウケイ酸コハク色バイアル(West Pharmaceutical Services-Part番号6800-0675)で供給され得る。このような容器(複数可)には、必要に応じて、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する行政機関によって規定された形態の通知であって、ヒトへの投与のための製造、使用または販売に関する該機関による承認を反映する通知が付随し得る。
【0130】
当業者に公知の任意のプレフィルドシリンジは、本発明の液体製剤と組み合わせて使用することができる。使用できるプレフィルドシリンジは、例えば限定されるものではないが、PCT公開第WO05032627号、同第WO08094984号、同第WO9945985号、同第WO03077976号、米国特許US6792743、同US5607400、同US5893842、同US7081107、同US7041087、同US5989227、同US6807797、同US6142976、同US5899889、米国特許出願公開US20070161961A1、同US20050075611A1、同US20070092487A1、同US20040267194A1、同US20060129108A1に記載されている。プレフィルドシリンジは、様々な材料から製造され得る。一実施形態では、プレフィルドシリンジは、ガラスシリンジである。別の実施形態では、プレフィルドシリンジは、プラスチックシリンジである。当業者には、上記シリンジの製造に使用される材料の性質および/または質は、該シリンジ内に保存される化合物製剤の安定性に影響を及ぼし得ることが理解される。例えば、シリンジチャンバの内表面に沈着したケイ素系滑沢剤は、化合物製剤における粒子の形成に影響を及ぼし得ると理解される。一実施形態では、プレフィルドシリンジは、シリコーン系滑沢剤を含む。一実施形態では、プレフィルドシリンジは、シリコーン系の内容物を含む(comprises baked on silicone)。別の実施形態では、プレフィルドシリンジは、シリコーン系滑沢剤を含まない。また当業者には、シリンジバレル、シリンジ先端キャップ、プランジャーまたはストッパーから製剤に浸出する少量の汚染要素が、製剤の安定性に影響を及ぼし得ることが理解される。例えば、製造プロセス中に導入されたタングステンは、製剤の安定性に有害な影響を及ぼし得ると理解される。一実施形態では、プレフィルドシリンジは、500ppbを超えるレベルのタングステンを含むことができる。別の実施形態では、プレフィルドシリンジは、低タングステンシリンジである。別の実施形態では、プレフィルドシリンジは、約500ppb~約10ppb、約400ppb~約10ppb、約300ppb~約10ppb、約200ppb~約10ppb、約100ppb~約10ppb、約50ppb~約10ppb、約25ppb~約10ppbのレベルのタングステンを含むことができる。
【0131】
本発明はまた、パッケージされ、ラベルを付された完成した医薬製品を包含する。この製造品は、ガラスバイアル、プレフィルドシリンジ、または気密シールされる他の容器などの適切な入れ物または容器内に、適切な単位剤形を含む。一実施形態では、単位剤形は、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を含む、非経口投与に適した、微粒子を含まない無菌溶液として提供される。別の実施形態では、単位剤形は、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を含む、再構成するのに適した無菌の凍結乾燥粉末として提供される。
【0132】
一実施形態では、単位剤形は、静脈内、筋肉内、鼻腔内、経口、局所または皮下送達に適している。したがって、本発明は、各送達経路に適した無菌溶液を包含する。本発明はさらに、再構成するのに適した無菌の凍結乾燥粉末を包含する。
【0133】
いかなる医薬製品においても同様に、パッケージ用材料および容器は、保存および出荷中に製品の安定性を保護するように設計される。さらに、本発明の製品は、医師、技師または患者に、当該の疾患または障害を適切に防止または処置する方法、ならびに医薬品を投与する方法および頻度を通知する、使用のための指示または他の情報材料を含む。換言すれば、製造品は、限定されるものではないが、実際の用量、モニタリング手順、および他のモニタリング情報を含む投与レジメンを示すまたは示唆する指示手段を含む。
【0134】
具体的には、本発明は、パッケージ用材料、例えば箱、ボトル、管、バイアル、容器、プレフィルドシリンジ、噴霧器、吸入器、静脈内(i.v.)バッグ、エンベロープ等、ならびにそのパッケージ用材料内に含められる本発明の化合物の少なくとも1つの単位剤形を含む製造品を提供し、ここで化合物は、抗生物質を含有する液体製剤を含む。パッケージ用材料は、化合物を使用して、疾患または障害に関連する1つまたは複数の症状を防止、処置および/または管理し得る方法を示す指示手段を含む。
【0135】
本発明は、いかなる方式でも限定的なものと解釈されるべきではない以下の実施例によって、さらに例示される。本願を通して、様々な特許文書、特許出願文書、および刊行物を参照する。これらの特許文書、特許出願文書、および刊行物の開示全体は、本明細書において参照によって本願に組み込まれる。特許文書、特許出願文書および刊行物と、本開示との間に任意の矛盾が存在する場合には、本開示が優先する。
【実施例
【0136】
(実施例1)
本発明の化合物の単離および化学構造
式(III)の化合物が、これまでに培養されていないベータ-プロテオバクテリアによって生成された抽出物から単離された。ベータ-プロテオバクテリア(proteobacteium)の分離株を寒天板上で成長させ、次いで1つのコロニーを使用して、ブロスに接種した。発酵後、ブロスを遠心分離し、上清を逆相樹脂上に吸着させた。洗浄した後、本発明の化合物を樹脂から溶出し、HPLCを使用してさらに精製した。NMRおよび質量分析を使用して、本発明の化合物の構造を決定した。
【0137】
(実施例2)
本発明の化合物の抗菌活性
式(III)の化合物の抗菌活性のスペクトルを決定し、表2に示す。
【表2】
【0138】
表2の結果から、式(III)の化合物が、他のペプチドグリカン阻害剤に耐性を有する株を含めてグラム陽性病原体に対して優れた活性を有し、ほとんどのグラム陰性菌に対してはより低い活性を有することが実証される。10%血清の存在は、最小阻害MIC値に影響しなかった。式(III)の化合物は、S.aureusに対して優れた殺菌活性を示し、最小殺菌濃度(MBC)は2×MICである。
【0139】
(実施例3)
耐性頻度
S.aureusの自然耐性変異体を発生させる試みは、成功しなかった(1.2×1010CFUまで試験した)。これは、<10-10の優れた自然耐性頻度を示す(4×MICで試験した)。
【0140】
(実施例4)
作用の特異性:巨大分子の合成研究
式(III)の化合物の作用の機序および特異性への洞察を得るために、S.aureusを用いた巨大分子の合成研究を行った。トリチウム標識したチミジン、ウリジン、ロイシン、またはN-アセチル-グルコサミンをDNA、RNA、タンパク質、またはペプチドグリカンへの組込みによって、式(III)の化合物が、ペプチドグリカン合成を(バンコマイシンに匹敵するほど)強く阻害し、他の主要な経路を阻害しなかったことが示された。
【0141】
(実施例5)
細胞傷害性および溶血活性
本発明の化合物は、2つの哺乳動物細胞系NIH3T3およびHepG2に64μg/mL(試験した最高用量)で細胞傷害性を示さなかった。式(III)の化合物はまた、64μg/mL(試験した最高用量)まで、ヒト赤血球に対して溶血活性を示さなかった。DNAの添加は、MICに影響を及ぼさなかった。これは、本発明の化合物がDNAに結合しないことを示した。
【0142】
(実施例6)
マウス敗血症モデルにおける本発明の化合物のインビボ有効性
式(III)の化合物のインビボ有効性をマウス敗血症モデルにおいて試験した。研究のために、6匹のCD-1雌性マウスを、腹腔内注射により7.8×10CFUのMRSA ATCC 33591に感染させた。感染1時間後に、マウスに、式(III)の化合物を2.5mg/kg、5.0mg/kg、10.0mg/kgもしくは20.0mg/kgの用量で、または対照としてバンコマイシンを2.5mg/kgの用量で静脈内投与した。式(III)の化合物を投与されたマウスは、5.2mg/kgの50%保護用量(PD50)値を示した。無処置動物は17%にすぎない生存率を示したのに比べて、バンコマイシンを2.5mg/kgの用量で投与された対照マウスはすべて生存した。
【0143】
(実施例7)
マウス太腿感染モデルにおける本発明の化合物のインビボ有効性
次に、好中球減少マウス太腿感染モデルにおいて、式(III)の化合物をS.aureus ATCC 33591に対して評価した。研究のために、S.aureus ATCC 33591で攻撃したマウスに、感染2時間および4時間後に2回の、式(III)の化合物を5mg/kg、10mg/kg、20mg/kgおよび30mg/kgの用量で、または対照としてバンコマイシンを50mg/kgの単回用量で静脈内投与した。感染26時間後に太腿における細菌負荷を測定した。
【0144】
図1に示すように、感染対照は、処置時間(2時間)で6.07log10 CFU/太腿1グラムの生物負荷(bioload)を示した。26時間感染対照は、処置時間から3.11log10 CFUの生物負荷の増加を示した。26時間感染対照からのCFU低減は、式(III)の化合物の研究された4つの用量すべてにおいて用量依存的に観察された。30mg/kgの用量を2回、2時間あけて送達された式(III)の化合物は、26時間感染対照から3.59log10 CFU低減、および治療開始(T=2時間)から0.48log10 CFU低減をもたらした。バンコマイシンを投与されたマウスは、2時間および26時間感染対照からそれぞれ0.54および3.65log10 CFU低減を示した。
【0145】
図1に示す結果は、式(III)の化合物が良好な組織浸透および薬物耐性皮膚感染症を処置する可能性を示すことを示す。
【0146】
均等論
当業者は、通常の実験方法と同様の実験方法を使用して、本明細書に具体的に記載した特定の実施形態の数々の均等物を認識し、確認することができる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されるものとする。
図1