(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】多重ホップ中継式指向性無線通信のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
H04W 40/12 20090101AFI20221214BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20221214BHJP
H04W 40/06 20090101ALI20221214BHJP
H04W 74/04 20090101ALI20221214BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20221214BHJP
【FI】
H04W40/12
H04W16/28
H04W40/06
H04W74/04
H04W84/12
(21)【出願番号】P 2019555819
(86)(22)【出願日】2018-05-29
(86)【国際出願番号】 IB2018053816
(87)【国際公開番号】W WO2018224916
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2019-10-11
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-28
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】迫田 和之
【合議体】
【審判長】廣川 浩
【審判官】圓道 浩史
【審判官】齋藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第2455794(GB,A)
【文献】特開2016-178452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
3GPP TSG SA WG1-4
3GPP TSG CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に含む送信機及び受信機によりmm波帯で近隣の1又は2以上の無線通信局(STA)との間で指向性送信/受信を行い、前記1又は2以上のSTAとの間でセクタスイープ及びフィードバックシグナリングを実行してアンテナセクタ情報を交換するように構成されたSTAのための装置であって、
(a)前記送信機及び前記受信機に結合され、前記1又は2以上のSTAとの間の通信を制御するためのコンピュータプロセッサと、
(b)前記コンピュータプロセッサによって実行可能な命令を記憶する非一時的コンピュータ可読メモリと、
を備え、
(c)前記命令は、前記コンピュータプロセッサによって実行された時に、
(i)前記1又は2以上のSTAのうち宛先局となる他のSTAへの多重ホップルーティング経路を確立する際に、前記1又は2以上のSTAへのルート発見メッセージを生成するステップと、
(ii)自身のSTAがルート発見メッセージを生成したSTAでないときに、(A)前記1又は2以上のSTAのうち前記ルート発見メッセージを生成したSTAとの通信のための送信アンテナセクタを決定し、(B)前記ルート発見メッセージを生成したSTAとの間のリンクメトリックを決定し、(C)自身のSTAが前記宛先局でない場合に、それ以前のリンクメトリックを決定したリンクメトリックで上書きして前記ルート発見メッセージを近隣の1又は2以上のSTAに伝播することによって、受け取ったルート発見メッセージを処理するステップと、
(iii)自身のSTAが発信局であるときに、ルート発見メッセージを送信する前にアクセス時間の割り当てを決定し、
ルーティング応答メッセージの受信後で自身が発信局であるかどうかを確認する前に、アクセス時間を有効化するステップと、
を実行することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記コンピュータプロセッサが、前記1又は2以上のSTAとの間の通信に使用する複数のアンテナセクタのリンク品質及び/又は干渉影響をチェックし、最良のアンテナセクタを選択する、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ルート発見メッセージは、ルート発見プロセス中に受信信号品質情報を送信するために使用される、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
内部に含む送信機及び受信機によりmm波帯で近隣の1又は2以上の無線通信局(STA)との間で指向性送信/受信を行い、前記1又は2以上のSTAとの間でセクタスイープ及びフィードバックシグナリングを実行してアンテナセクタ情報を交換するように構成されたSTAのための装置であって、
(a)前記送信機及び前記受信機に結合され、前記1又は2以上のSTAとの間の通信を制御するためのコンピュータプロセッサと、
(b)前記コンピュータプロセッサによって実行可能な命令を記憶する非一時的コンピュータ可読メモリと、
を備え、
(c)前記命令は、前記コンピュータプロセッサによって実行された時に、
(i)前記1又は2以上のSTAのうち宛先局となる他のSTAへの多重ホップルーティング経路を確立する際に、前記1又は2以上のSTAへのルート発見メッセージを生成するステップと、
(ii)自身のSTAがルート発見メッセージを生成したSTAでないときに、(A)前記1又は2以上のSTAのうち前記ルート発見メッセージを生成したSTAとの通信のための送信アンテナセクタを決定し、(B)前記ルート発見メッセージを生成したSTAとの間のリンクメトリックを決定し、(C)自身のSTAが前記宛先局でない場合に、それ以前のリンクメトリックを決定したリンクメトリックで上書きして前記ルート発見メッセージを近隣の1又は2以上のSTAに伝播することによって、
受け取ったルート発見メッセージを処理するステップと、
(iii)前記コンピュータプロセッサが、前記1又は2以上のSTAとの間の通信に使用する複数のアンテナセクタのリンク品質及び/又は干渉影響をチェックし、最良のアンテナセクタを選択するステップと、
を実行する、
ことを特徴とする装置。
【請求項5】
自身のSTAが発信局であるときに、ルート発見メッセージを送信する前にアクセス時間の割り当てを決定し、
ルーティング応答メッセージの受信後で自身が発信局であるかどうかを確認する前に、アクセス時間を有効化する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記ルート発見メッセージは、ルート発見プロセス中に受信信号品質情報を送信するために使用される、
請求項4に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
該当なし
【0002】
〔連邦政府が支援する研究又は開発に関する記述〕
該当なし
【0003】
〔コンピュータプログラム付属書の引用による組み入れ〕
該当なし
【0004】
〔著作権保護を受ける資料の通知〕
本特許文献中の資料の一部は、アメリカ合衆国及びその他の国の著作権法に従って著作権保護を受けることができる。著作権の権利所有者は、合衆国特許商標庁の一般公開ファイル又は記録内に表される通りに第三者が特許文献又は特許開示を複製することには異議を唱えないが、それ以外は全ての著作権を留保する。著作権所有者は、限定ではないが米国特許法施行規則§1.14に従う権利を含め、本特許文献を秘密裏に保持しておく権利のいずれも本明細書によって放棄するものではない。
【0005】
本開示の技術は、一般に局間の指向性無線通信に関し、具体的には、多重ホップ中継式指向性無線通信に関する。
【背景技術】
【0006】
30GHz~300GHzの、さらに好ましくは約60GHzなどのミリメートル波(mm波)技術は、高帯域幅通信にとって有望な物理(PHY)層(例えば、7層OSIモデル)である。mm波PHY層における通信装置には、指向性送信を使用して自機の不十分なリンクバジェットを軽減するように構成されたものもある。送信がビームフォーミングされるので、他の近隣のSTAに対する干渉を軽減することができる。これにより、2.4GHz又は5GHz WLANなどの非ビームフォーミングPHYと比べて近隣のSTAがより積極的にスペクトルを再使用できるので、理論上はシステム容量が高くなる。しかしながら、現行のシステムは、その構成に起因してこれらの理論的限界に手を伸ばすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
改善された指向性無線ルーティングプロトコルに対するニーズが存在する。従って、本開示では、PHY層(すなわち、mm波PHY)における指向性送信を使用する、本明細書ではmm波メッシュネットワークと呼ぶ効率的な多重ホップ(マルチホップ)通信ネットワークについて説明する。なお、mm波PHYのリンクバジェットは、たとえビームフォーミング送信を使用したとしても依然として不十分である。マルチホップリレー能力を追加することは、mm波PHYの欠点の一部を克服することに向けた有望なテクノロジーミックスである。
【0008】
mm波メッシュネットワークの概念は新しいものではないが、このようなネットワークの運用管理方法については多くのことが未知であり、現在の提供物には多くの短所がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、新たな運用及び最適化過程を有するmm波メッシュネットワークを提供する。具体的に言えば、開示するシステム、装置及び/又は方法は、mm波PHYを介した動作時に無線メッシュネットワークの既存のルーティングプロトコルを改善するコンポーネントを提供する。また、近隣の局(STA)間におけるスペクトル再使用を容易にすることによってネットワーク能力を最大化する方法も教示する。
【0010】
本開示には、一般に以下のように利用される意味を有する複数の用語が見受けられる。
AODV:アドホックオンデマンド距離ベクトル、アドホック無線ネットワークにおけるデータパケットのためのルーティングプロトコル。
メッシュネットワーク:メッシュネットワークトポロジーでは、各ノードがネットワークのデータを中継し、全てのメッシュノードが協働してネットワーク内にデータを分散させる。メッシュネットワークは、一種のアドホック(自発的、緊急又はオンザフライ構築)ネットワークである。
近隣リスト:近隣STAに関する情報を含むデータテーブル。STAは、その1ホップ通信エリア内の別のSTAからビーコンフレームなどの管理フレームを受け取ると、近隣STAに関する情報をメモリに記憶する。STAは、近隣STAから管理フレームを受け取ることによってデータテーブルを作成する。STAは、複数の近隣STA情報を収集して近隣リストに記憶することができる。
P2P:2又は3以上の局が接続されて独立したコントローラ/サーバを通さずにリソースを共有する際にピアツーピア(P2P)通信が生じる。P2Pネットワークは、アドホック接続とすることができる。
ルーティングテーブル:宛先STAへのルートに関する情報を記憶するデータテーブル。STAは、宛先STAにフレームを送信しようと試みる際に、ルーティングテーブルを調べてどの直近のSTA(ネクストホップSTA)にフレームを送信すべきかを判断する。
RREQ:Routing Request(ルーティング要求)、発信元STAと宛先STAとの間の経路を発見するためにデータルーティングプロトコルで使用されるパケット。
RREP:Routing Reply(ルーティング応答)、ルーティングプロトコルでのRREQに応答して送信されるパケット。発信元STAは、RREPを受け取るとデータパケットの送信を開始することができる。
RSS:受信信号強度(RSS)は、受信無線信号に存在する電力の測定値である。
SSW:Sector Sweep(セクタスイープ)は、異なるセクタ(方向)で送信を行って、受信信号及び強度などに関する情報を収集する動作である。
STA:局:無線媒体(WM)への媒体アクセス制御(MAC)及び物理層(PHY)インターフェイスの単独でアドレス指定可能なインスタンスである論理エンティティ。
【0011】
典型的なメッシュネットワークでは、発信STAから宛先STAへのルートが、エンド-エンド経路の中間STAを選択することによって決定される。多くの場合、中間STAは、AODV例に見られるような最良のリンク品質が使用するリンクによってもたらされるように選択される。
【0012】
メッシュリンクは、ネットワーク容量を最適化する目的で、送信が他の送信に影響しないように選択されることが望ましい。しかしながら、送信信号がその近隣のSTAに放射される場合に干渉を管理することは困難である。
【0013】
指向性送信を使用するmm波PHYでは、正しいアンテナセクタを選択することによって、他の近隣STAへの干渉影響を制限することができる。無線指向性メッシュネットワークの分野における本発明者らの以前の特許出願で開示した技術を使用すれば、STAが1ホップの近隣STA間の各アンテナセクタのリンク品質を学習することが可能である。
【0014】
本開示は、例えば以下のそれぞれによってマルチホップmm波メッシュネットワークの最適化方法を教示する。
(a)エンド-エンドルートを決定するためのルーティングプロトコルの実行、
(b)ルート設定時に使用する正しいアンテナセクタの選別、
(c)近隣STAのチャネル時間利用及び近隣STAにおいて進行中のトラフィックへの影響の考慮、
(d)ルート設定時におけるチャネル時間の割り当て、
(e)ルート決定のための順方向リンク及び逆方向リンクメトリックの蓄積、及び、
(f)マルチホップ経路のための中間STAの決定。
【0015】
本技術の別の態様は、最適なmm波メッシュネットワークのために使用される正しい中間STAとアンテナセクタの両方を選別することを含むようにルーティング決定プロトコルを拡張することである。本技術のさらに別の態様は、エンド-エンド経路リンク品質及び干渉影響の両方のバランスを保つ能力である。
【0016】
本明細書の以下の部分では、本明細書で説明する技術のさらなる態様が明らかになり、この詳細な説明は、本技術の好ましい実施形態を制限することなく完全に開示するためのものである。
【0017】
本明細書で説明する技術は、例示のみを目的とする以下の図面を参照することによって十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の実施形態に従って利用される、複数の局(STA)間の通信を例示する無線ノードトポロジー図である。
【
図2】本開示の実施形態に従って利用される、複数の局(STA)間の通信のためのアンテナセクタ方向を例示する無線ノードトポロジー図である。
【
図3】本開示の実施形態に従って利用される局ハードウェアのブロック図である。
【
図4】本開示の実施形態に従ってSTAにおいて利用されるビームパターン図である。
【
図5】本開示の実施形態に従って利用されるセクタスイープ学習シーケンスである。
【
図6】本開示の実施形態に従って利用される近隣リストのデータテーブルである。
【
図7】本開示の実施形態に従って利用される、近隣情報交換のためのデータフィールドフォーマットである。
【
図8】本開示の実施形態に従って利用される、近隣情報交換のためのエアタイム図である。
【
図9】本開示の実施形態に従って利用される、近隣リスト構築のためのデータテーブルフォーマットである。
【
図10】本開示の実施形態に従って利用される、近隣リストデータ構造内のデータフォーマットである。
【
図11】本開示の実施形態に従って利用される、近隣STA間のルーティングテーブルのためのデータフォーマットである。
【
図12A】本開示の実施形態に従って利用される、RREQフレームのデータフィールドフォーマットである。
【
図12B】本開示の実施形態に従って利用される、RREPフレームのデータフィールドフォーマットである。
【
図13】本開示の第1の実施形態による、発信元STAから宛先STAへのルートを確立しながらフレーム交換を行うためのメッセージシーケンスである。
【
図14】本開示の実施形態に従って利用される、発信元RREQ送信ロジックのフロー図である。
【
図15A】本開示の実施形態による、近隣STAにRREQを伝播するフロー図である。
【
図15B】本開示の実施形態による、近隣STAにRREQを伝播するフロー図である。
【
図16A】本開示の実施形態による、近隣STAへの送信アンテナセクタを決定するフロー図である。
【
図16B】本開示の実施形態による、近隣STAへの送信アンテナセクタを決定するフロー図である。
【
図17】本開示の実施形態に従って利用される、STA1@P1の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図18A】本開示の実施形態によるRREQ受信手順のフロー図である。
【
図18B】本開示の実施形態によるRREQ受信手順のフロー図である。
【
図19】本開示の実施形態に従って利用される、STA2@P2の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図20】本開示の実施形態に従って利用される、STA2@P5の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図21】本開示の実施形態に従って利用される、STA4@P6の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図22】本開示の実施形態による、RREP送信を開始するフロー図である。
【
図23】本開示の実施形態による、近隣STAにRREPを伝播するフロー図である。
【
図24】本開示の実施形態に従って利用される、STA4@P7の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図25】本開示の実施形態による、RREP受信手順のフロー図である。
【
図26】本開示の実施形態による、RREP受信を確認するフロー図である。
【
図27】本開示の実施形態に従って利用される、STA2@P8の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図28】本開示の実施形態に従って利用される、STA1@P9の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図29】本開示の第2の実施形態による、発信元STAから宛先STAへのルートを確立しながらフレーム交換を行うメッセージシーケンスである。
【
図30】本開示の実施形態に従って利用される、STA5@P21の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図31】本開示の実施形態に従って利用される、STA6@P22の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図32】本開示の実施形態に従って利用される、STA7@P23の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図33】本開示の実施形態に従って利用される、STA6@P24の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図34】本開示の実施形態に従って利用される、STA5@P25の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図35】本開示の第3の実施形態による、発信元STAから宛先STAへのルートを確立しながらフレーム交換を行うメッセージシーケンスである。
【
図36】本開示の実施形態に従って利用される、STA1@P41の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図37】本開示の実施形態に従って利用される、STA2@P43の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図38】本開示の実施形態に従って利用される、STA4@P44の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造である。
【
図39】本開示の実施形態に従って利用される、STA3@P45の通信シナリオのための近隣のリスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図40】本開示の実施形態に従って利用される、STA4@P46の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図41】本開示の実施形態に従って利用される、STA4@P47の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図42】本開示の実施形態に従って利用される、STA3@P48の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【
図43】本開示の実施形態に従って利用される、STA1@P49の通信シナリオのための近隣リスト及びルーティングテーブル構造の例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.IEEE802.11adのビームフォーミング(BF)トレーニング
既存の802.11adプロトコルは、60GHz PHY WLANのための規格であり、各STAが複数のアンテナセクタを有し、最も高いリンク品質を提供するアンテナセクタを利用すると仮定して、2つのSTA(STA1及びSTA2)間で信号を交換することによって使用するためのアンテナセクタの選択方法を規定する。このプロトコルは、初期セクタ学習のためのセクタスイープハンドシェーキングと、ビームフォーミング維持のためのビーム微調整ハンドシェーキングとを定める。STAは、これらのハンドシェーキングを完了することによって、リンクの最良のリンク品質を保証するためにどのアンテナセクタを使用すべきかを学習することができる。
【0020】
しかしながら、802.11adは、近隣STA、又はmm波メッシュネットワーク動作に対する干渉の制限又は軽減を考慮していない。
【0021】
1.1 ルーティングプロトコル例(AODV)
ルーティングプロトコルは、発信元STAと宛先STAとの間に多重ホップ(中間STA)を通じて通信経路を確立するための一連の規則である。AODVは、無線媒体を介したマルチホップルーティングの一般的本質を表すルーティングプロトコルである。AODVでは、STAが、(1)STA1(発信元STA)がRREQフレーム(RREQ1)をブロードキャストし、(2)STA2がRREQ1を受け取って自機とRREQ1の送信機(STA1)との間のリンクの品質を測定するとともに、リンク品質情報を埋め込んだRREQ(RREQ2)を再ブロードキャストし、(3)STA3がRREQ1を受け取って自機とRREQ1の送信機(STA1)との間のリンクの品質を測定するとともに、リンク品質情報を埋め込んだRREQ(RREQ3)を再ブロードキャストし、(4)STA4(宛先STA)がSTA2からRREQ2を受け取って自機とRREQ2の送信機(STA2)との間のリンクの品質を測定するとともに、この値をRREQ2に埋め込まれたリンク品質と共に蓄積する、というステップに従ってルートを生成する。この時点で、STA4は、STA2を介したSTA1へのエンド-エンド品質がどのようなものであるかを知り、(5)STA4は、STA3からのRREQ3も受け取って自機とRREQ3の送信機(STA3)との間のリンクの品質を測定するとともに、この値をRREQ3に埋め込まれたリンク品質と共に蓄積する。この時点で、STA4は、STA3を介したSTA1へのエンド-エンド品質がどのようなものであるかを知る。(6)STA4は、STA2を介したSTA1へのリンク品質の方がSTA3を介したリンク品質よりも良好であると分かる。STA4は、STA2にRREPフレーム(RREP1)を返送して中間及び発信元STAへの最良ルートを確認する。STA2が、STA1に向かうネクストホップSTAとして設定される。(7)STA2は、STA4からRREP1を受け取る。STA2は、自機がSTA4とSTA1との間の中間STAであると認識する。STA4が、STA4に向かうネクストホップSTAとして設定される。(8)STA2は、STA1(発信元STA)に向けてRREP(RREP2)をさらに送信する。STA1が、STA1に向かうネクストホップSTAとして設定される。(9)STA1は、STA2からRREP2を受け取る。STA1は、STA4に向かうマルチホップ経路が確認されてSTA4へのネクストホップSTAがSTA2であると認識する。(10)この結果、STA2を介したSTA1とSTA4との間の双方向ルートが確立される。
【0022】
2.検討のためのSTAトポロジー
図1に、同じ空間的近傍内に複数のSTA(STA1~STA7)が存在する無線ネットワーク例10を示す。このシナリオ例では、STA1が、STA4と通信12しようと試み、STA5が、STA7と通信14しようと試みる。このシナリオでは、STA1からSTA4への直接リンク12、及びSTA5からSTA7への直接リンク14が、いずれも正しい通信を行うには弱すぎる。従って、このシナリオでは、他のSTAが中間STAとして機能してこれらのエンド-エンド経路の確立を支援できれば望ましい。
【0023】
図2に、
図1に示すSTA1~STA7のアンテナ方向例30を示す。この例では、各STAが複数の(例えば、この例では4つの)アンテナセクタを使用していると考えられる。なお、各パイ状のアンテナセクタの角度範囲は、STAのハードウェア構成、及びそのSTAが一群の局の脈絡にどのように適合するかに応じて様々とすることができる。例えば、STA1のセクタ0~3は、他のSTAに向かって約180°しか広がっていないのに対し、STA4セクタの0~3は少なくとも270°広がっていることが分かる。セクタの数は、あらゆる所望の数に設定することができるが、セクタ数を増やせば、セクタ数を指定するためにさらなるビットが必要になると理解されたい。4つのセクタ(0~3)の値は、2ビットのセクタ方向情報しか必要としない妥協案と考えられたものであるが、いくつかの高トラフィック用途では、3ビットのセクタ方向情報を必要とする8つのセクタ(0~7)の方が適することもある。
【0024】
2.1.STAハードウェア構成
図3に、局(STA)ハードウェア構成の実施形態例50を示す。この例では、センサ、アクチュエータなどへのSTA外部I/Oに通じるI/O経路64に結合されたバス56に、コンピュータプロセッサ(CPU)52及びメモリ(RAM)54が結合される。プロセッサ52上では、メモリ54からの命令が実行されて、通信プロトコルを実装するプログラムを実行する。この図示のホストマシンは、近隣STAとの間でフレームの送受信を行う複数のアンテナ62a~62n、67a~67n及び69a~69nへの無線周波数(RF)回路60、66及び68に結合されたモデム58を含むように構成される。この例では、モデム58に結合された3つのRF回路を示しているが、モデムには本開示から逸脱することなく任意の数のRF回路を結合することができると理解されたい。一般に、RF回路の数が多ければ、アンテナビーム方向のカバレッジも広くなる。一般に、利用されるRF回路の数及びアンテナの数は、特定の装置のハードウェア制約及び用途によって決まる。STAが、近隣STAと通信する必要がないと判断した時には、RF回路及びアンテナの一部を無効にすることもできる。少なくとも1つの実施形態では、RF回路が、周波数コンバータ及びアレイアンテナコントローラなどを含み、ビームフォーミングを実行して送信及び受信を行うように制御される複数のアンテナに接続される。このように、STAは、複数のビームパターンの組を使用して信号を送信することができ、各ビームパターン方向はアンテナセクタとみなされる。アンテナセクタは、アレイアンテナコントローラによって命令されるRF回路及びビームフォーミングの選択によって決定される。STAハードウェアコンポーネント、すなわち
図3の52~69nは、上述したものとは異なる機能分割を有することもできるが、そのような構成は、開示するシステムの異なる例にすぎない。
【0025】
図4に、複数の(例えば、一例として示す36個の)アンテナセクタパターンを生成するためにSTAが実行できるアンテナ方向70の実施形態例を示す。この例では、STAが、3つのRF回路及び接続アンテナを実装し、各RF回路及び接続アンテナは、複数の(例えば、一例として示す12個の)ビームフォーミングパターンを生成し、これによってSTAは36個のアンテナセクタを有すると称される。しかしながら、本発明者らは、本明細書の説明を容易にするために、全てのSTAが4つのアンテナセクタを有していると仮定する。アンテナセクタには、あらゆる任意のビームパターンをマッピングすることができる。通常、ビームパターンは、鋭角ビーム(sharp beam)を生成するように形成されるが、複数の角度から信号を送受信するようにビームパターンを生成することも可能である。
【0026】
2.2.アンテナセクタ情報学習プロセス
図5に、各STAが各アンテナセクタのリンク品質を学習するためにセクタスイープ信号交換を実行する実施形態90を示す。各STAは、近隣STAに各アンテナセクタの受信信号品質を学習させる一連のセクタスイープ(TXSS)信号を送信する92、94、96。近隣STAはTXSS信号をリスンして、その近隣のSTAに各アンテナセクタの信号品質を知らせるSSWフィードバックを折り返しレポートする。この結果、STA1、STA2及びSTA3は、各近隣STAからのアンテナセクタ毎の信号品質を学習する。
【0027】
図1に示すトポロジーを用いて
図5に示す学習プロセスを検討すると、STA1~STA7は、その近隣のアンテナセクタ信号品質情報を学習することができる。各STAは、アンテナセクタ情報学習プロセスの結果として、Neighbor List(近隣リスト)と呼ばれるデータベースを構築し、STA毎の受信信号品質情報をTXアンテナセクタ毎にSTAのメモリに記憶する。Neighbor Listの各インスタンスは、近隣STAの雑情報を記憶する。
【0028】
図6に、STA1がSTA2及びSTA3をSTA1の近隣STAとして認識し、Neighbor Listエントリの2つのインスタンスを作成した、STA1において構築されたNeighbor Listの実施形態例110を示す。STA1は、受信リンク品質情報をa.RxQuality[N]に記憶し、ここでのNは、近隣STAのTxアンテナセクタに関連する。
【0029】
2.3.トラフィックアクティビティの監視
各STAは、そのトラフィックアクティビティもモニタして、その時点でSTAがどのようなタイプのトラフィックを処理しているかを追跡する。STAは、ルート発見プロセスを通じて新たなフローが活性化した時にトラフィックフロー情報を収集し、(a)トラフィック発信元STA、(b)トラフィック宛先STA、(c)トラフィックID、(d)トラフィック帯域幅、(e)このトラフィックを転送するのに必要なチャネル時間比(デューティサイクル)、をトラフィックフロー毎に記録する。この情報は、Neighbor Listにも記憶される。このトラフィックフローインスタンスは、STAが送信を行っているNeighbor Listインスタンスに追加される。
【0030】
2.4.近隣STA間の情報共有
各STAは、アンテナセクタ情報とトラフィックアクティビティ情報とを含む管理情報をその近隣STAに送信する。このようにして、近隣STAは、その近隣STAのアンテナセクタ情報及びトラフィックアクティビティを学習することができる。近隣STAは、本明細書では「近隣情報交換」と呼ぶプロセスにおいて、情報を含む管理フレームを交換する。
【0031】
図7に、セクタスイープ(SSW)制御フレーム132における近隣情報交換のためのフレームコンテンツの実施形態例130を示す。フレーム制御(Frame Control)フィールドは、フレームのタイプを示す。持続時間フィールド(Duration)は、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。RAフィールド(RA)は、フレームの受信者のアドレスを含む。TAフィールド(TA)は、フレームを送信するSTAのアドレスを含む。
【0032】
SSWフィードバック要素134(SSW Feedback要素)は、本開示に従って利用される信号品質情報を含む。要素内には、長さ(Length)及びタイプフィールド(Type)に続き、1又は2以上のSSW Feedbackフィールド(SSSW Feedbackフィールド1、SSW Feedbackフィールド2、・・・SSW FeedbackフィールドN)が存在する。各フィールドは、特定の近隣STAからのリンク品質情報を含む。例えば、
図5のSTA1は2つのSSW Feedbackフィールドを含み、これらの一方は、STA2のアンテナセクタのRXリンク品質情報を含み、もう一方は、STA3のアンテナセクタのRXリンク品質情報を含む。
【0033】
SSW Feedbackフィールド内には、3つのサブフィールド138、すなわち局識別(STA ID)、セクタ番号(Sector Num)、及びセクタ品質情報(Sector Quality Bitmap)が存在する。STA IDサブフィールドは、この情報に関連するSTAを識別し、Sector Numサブフィールドは、Sector Quality Bitmapの長さを識別し、Sector Quality Bitmapは、各セクタの量子化リンク品質値を示す。
【0034】
なお、
図7では各セクタに2ビットが割り当てられ、ビットマップは第1のセクタから開始してM番目のセクタまで続く。各Sector Bitmapは、量子化リンク品質値を表すように符号化される。この例では、00:高品質(HQ)、01:中品質(MQ)、10:低品質(LQ)、11:信号未検出(ND)である。本明細書では、この量子化リンク品質値を使用し続けるが、量子化の細粒度(解像度)は、Sector Bitmapにさらに少ない又は多くのビットを割り当て、選択された解像度に従って適宜操作することによって望む通りに構成することができる。
【0035】
STAは、SSW Feedback要素の後に、フレーム内のトラフィックアクティビティ(Traffic Activity要素)に関する情報を含む。この要素は、進行中のトラフィックをSTAがいつ提供(送信及び/又は受信)しているかを示す。Traffic Activity要素136は、長さ(Length)及びタイプ(Type)フィールドを含み、進行中のトラフィックに関する情報を含む1又は2以上のフィールド(Ongoing Traffic field 1、...Ongoing Traffic field M)が存在する。各フィールドは、トラフィックストリーム毎の進行中トラフィック情報を含み、(140)、これらは以下のサブフィールドを含む。トラフィック発信元STAを含む発信局識別子フィールド(Orig STA ID)、トラフィック宛先STAを含む宛先局識別子フィールド(Dest STA ID)、トラフィックIDを含むトラフィック識別フィールド(Traffic ID)、及び特定の時間枠においてトラフィックがいつ転送されるかに関する情報を含むチャネル時間情報フィールド(Channel Time)。近隣情報を送信するには、以下の2つの方法がある。
【0036】
2.4.1.情報共有(ケース1)
1つの実装では、
図5に示すSSWフィードバックを用いて情報共有を実行し、
図7に示すフレーム又は情報要素をSSWフィードバックフレームとして送信する。
【0037】
2.4.2.情報共有(ケース2)
別の実装では、
図7に示すような近隣情報交換に特異的に利用される指定フレームを通じて情報共有を実行し、STAが時間又は事象などに基づいてこのフレームを定期的に送信する。
【0038】
図8に、近隣情報交換の別の実施形態例150を示す。152に示すように、情報の収集後に近隣情報交換を行う(156a)STA1では、Neighbor Info Exchangeフレームが、近隣のアンテナセクタ信号品質の収集後などの必要時にいつでも一般管理フレームとして送信される。情報の収集156b後及びSTA1からの近隣情報交換の受信後に近隣情報交換を実行するSTA2についても同様の状況が見られる154。Neighbor Info Exchangeフレームがユニキャストフレーム内で送信される時には、フレームのRAフィールドが特定のSTAのアドレスに設定され、SSW Feedbac要素には(RAフィールドによって識別される近隣STAに関する情報を含む)1つのSSW Feedbacフィールドのみが含まれる。
【0039】
少なくとも1つの実施形態では、STAが全てのアンテナセクタ情報を交換することが最も効率的であると考えられる。しかしながら、STAに構成される実際のアンテナセクタ数よりも少ないセクタ数に関する情報をSTAが決定して交換することもできる。従って、STAは、セクタ情報の一部のみを交換することもできる。或いは、他の実施形態では、STAがいくつかのセクタをグループ化して、グループ化されたセクタ情報を交換することもできる。例えば、
図3に示すようなハードウェア構成を有するSTAは、合計で36個などのセクタをもたらす3つのRF回路を有する。STAは、12個の実際のアンテナセクタの信号品質を平均化することによってこれらを単一のセクタ情報にグループ化し、グループ化されたセクタ情報を交換して、近隣情報交換に必要なビット数を最小化して実装を容易にすることができる。この事例では、STAが、合計で36個のセクタを有しているにもかかわらず3つのセクタ情報を交換する。この例では、STAが、セクタ情報をRF回路毎にグループ化する。
【0040】
2.4.3.近隣情報のNeighbor Listへの記憶
STAは、近隣情報交換プロセスの結果として、近隣情報交換プロセスから取得された情報をSTAのNeighbor Listに付加する。
【0041】
STAは、SSW Feedback要素及びTraffic Activity要素を含むNeighbor Info Exchangeフレーム又はSSW Feedbackフレームのいずれかを受け取ると、Neighbor Listのインスタンスを更新する。
【0042】
図9に、STA2 172及びその他の局174について示すNeighbor Listデータ構造の実施形態例170を示す。対応するNeighbor Listインスタンスのb.TrafficAct[]には、トラフィックアクティビティ情報が記憶される。
【0043】
この図には、STA1が4つのアンテナセクタを有すると仮定して、STA2及びSTA3から(Neighbor Info Exchangeフレーム又はSSW Feedbackフレームのいずれかを介して)SSW Feedback要素及びTraffic Activity要素を収集したSTA1において
図7のように構築されたNeighbor Listを示す。STA1は、受け取った情報要素を解析し、Traffic Activity要素内の情報をそのNeighbor List内のb.TrafficActアレイにコピーして、各セクタ品質情報をそのNeighbor List内のc.TxQuality[M]にコピーし、ここでのMはSTA1のTx Antenna Sectorに関連する。この時点で、STA1は、STA2及びSTA3における大まかな信号品質推定値を取得しており、ここでどのアンテナセクタ(例えば、セクタ1、2、3又は4)を利用すべきであるかを選択する。また、STA1は、各近隣STAのトラフィックアクティビティに関する情報も取得している。STA1は、内部的に動作しているタイマからのタイムスタンプも参照し、書面情報の期限切れ時間を計算して、この時間をf.ExpTimeに設定する。
【0044】
図10に、NeighborリストのTxQualityデータ構造の実施形態例190を示す。この図では、近隣リスト192が各近隣STAの構造を有し、一例として、各STA2セクタ196a、198b、200a、202aのTxQuality、及び各STA3セクタ196b、198b、200b、202bのTxQualityが示されたSTA2 194a及びSTA3 194bを示す。通常、データc.TxQuality[]は、各近隣STAの特定のTxQuality[i]を容易に走査できるように2次元リスト構造として実装される。
【0045】
2.5.ルーティングテーブル及びデータ転送
図11に、宛先AAA212、BBB214及びCCC216としての3つの宛先(サブテーブル)を一例として示すルーティングテーブルデータ構造の実施形態例210を示す。STA(発信元STA)は、別のSTA(宛先STA)にデータフレームを送信する際には、宛先STAへのルートを設定しなければならない。Routing Table(ルーティングテーブル)は、後の節で説明するルート発見プロセスの結果として構築される。
【0046】
宛先STAへのルートは、Routing Tableを作成することによって管理される。Routing Tableは、宛先STA毎のデータインスタンスを有し、STAは、宛先STAにフレームを送信する際にはこのインスタンスを調べる。Routing Tableの各インスタンスは、宛先毎に以下の情報(サブフィールド)を含む。
Dest:宛先STAアドレス、
a.NextHop:Destに向かうネクストホップSTAアドレス、
b.TxAntSec:ネクストホップにフレームを送信するために使用されるアンテナセクタ、
c.Metric:宛先STAまでの距離を決定する値、
d.SeqNum:ルーティング管理フレームのループを制御するための値、
e.TrafficID:ルーティングテーブルによって処理される対応するトラフィックID、
f.ExpTime:このルーティングテーブルインスタンスの期限切れ時間、
g.ValidFlag:このインスタンスが有効であるか否かを識別する。
【0047】
STAは、宛先STAに送信すべきデータフレームを有している時には、Routing Tableを調べ、フレームのRAフィールドをa.NextHopに記憶されているアドレスに設定し、b.TxAntSecに記憶されているアンテナセクタを使用してフレームを送信する。
【0048】
なお、Routingテーブルは、読み取り部分及び書き込み部分を有していると理解されたい。宛先STAへのルートを求める際には、ルーティングテーブルの読み取り部分において検索を実行し、ルート決定プロセス中に書き込み部分を利用する。
【0049】
2.6.ルーティング管理フレームフォーマット
STAは、宛先STAへのルートを利用できないことが分かると、ルーティングプロトコルの実行を開始する。ルーティングプロトコルは、発信元STAから宛先STAへのルートを設定するために2種類のフレームを交換する。RREQフレームは、発信元STAから宛先STAに向けて送信される。宛先STAは、RREQフレームを受け取ると、発信元STAを宛先とするRREPフレームで応答する。
【0050】
図12A及び
図12Bに、RREQ及びRREPフレーム内のコンテンツの実施形態例230、240をそれぞれ示す。限定ではなく一例として、
図232、242に例示するRREQ及びRREPの基本形式は同じであり、RREQ/RREP要素をFrame Control、Duration、RATA及びFCSが取り囲む。フレーム制御フィールド(Frame Control)は、フレームのタイプを示す。持続時間フィールド(Duration)は、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるネットワーク割り当てベクトル(NAV)情報を含む。受信側アドレスフィールド(RA)は、フレームの受信者のアドレスを含む。送信側アドレスフィールド(TA)は、フレームを送信するSTAのアドレスを含む。
【0051】
図12AのRREQ要素234は、以下のフィールドを含む。
Length:このフレームの長さ、
Type:このフレームのタイプ(RREQ)、
Orig STA:発信元STAのアドレス、
Dest STA:宛先STAのアドレス、
SeqNum:このルート設定を識別するSequence Number。SeqNumは、発信元STAがルートを設定又は維持しようと試みる度に増分される。
Metric:蓄積されたメトリック値を発信元STAに向けて運ぶ、
Lifetime:このルートの期限切れ時間までの寿命、
Traffic ID:関するトラフィックストリームのトラフィックID、
QoS Spec:このトラフィックストリームのトラフィック仕様、すなわち帯域幅など、
Access Time:RA STA(RAフィールドによって識別されるSTA)に向けたデータフレームの送信のためにTA STA(TAフィールドによって識別されるSTA)が使用するチャネル時間、
TxAntSector:RA STAに向けたデータフレームの送信のためにTA STAが使用するTx Antenna Sector、
AffectRatio:この送信が他の近隣STAに影響を与えるチャネル時間デューティサイクル、
RxQualList:(RA STAに対応する)TA STAのNeighbor Listインスタンスのa.RxQuality[]に含まれる値。
【0052】
図12BのRREPフレーム242のRREP要素244は、AffectRatio及びRxQualListフィールドを含まない点を除いて、上述したRREQ要素234と同じフィールドを含む。
【0053】
2.7.Routing Tableの構築(シナリオ1)
一例として、このルーティングシナリオでは、STAトポロジーが
図2のようなものであると仮定し、STA1がSTA4への有効な直接ルートを有していない時にSTA4と通信しようと試みる状況について検討する。以下では、このサブケースのルート設定プロセスについて説明する。
【0054】
2.7.1.メッセージシーケンスチャート(シナリオ1)
このシナリオでは、STA1が、STA4に向けてデータフレームを送信しようと試みる。従って、STA1はトラフィック発信元STAであり、STA4はトラフィック宛先STAである。他のSTAは潜在的中間STAであるが、STA1からSTA4へのルートが決定されるまでは不確定である。これらの潜在的中間STAは、RREQフレームの受信及びRREPフレームの受信毎に一連の事象を開始させる。発信元STAであるSTA1が宛先STAへのルートを確立しようと試みる際には、STA1がその近隣STAにRREQフレームを送信し始め、この潜在的中間STAである近隣STAがその近隣STAにRREQフレームを伝播して、最終的に宛先STAであるSTA4がRREQフレームを受け取る。宛先STAであるSTA4は、その近隣STAからRREQフレームを受け取ることによって、STA2を介したルートがこの送信に最も適していると判断し、発信元STA1にRREPフレームを戻すことによって応答する。発信元STA1が、中間STAとして決定されたSTA2を介してRREPを受け取ると、STA1からSTA4への(及びSTA4からSTA1への)エンド-エンドルートが確立される。以下、これについてさらに詳細に説明する。
【0055】
図13に、このルートの設定時に行われる全体的なフレーム交換シーケンスを示すメッセージシーケンスチャートの実施形態例250を示す。図示の期間p1~p9については、本開示全体を通じて参照することができる。チャートの上部に沿って局(STA1~STA7)の各々を示しており、時間はチャートの上部から開始して順にチャートを下向きに移動する。このシーケンスでは、トラフィック発信元STAであるSTA1が近隣STA、STA2及びSTA3にRREQを送信することが分かる。RREQを受け取った各STAは、このルート設定試行の宛先STAでない限り、このRREQを近隣STAに伝播する。この例では、これに応答して、STA2が、その近隣STAであるSTA3、STA4及びSTA5にRREQを送信する。RREQを受け取ったSTA3は、STA2及びSTA4にRREQを送信する。同様に、RREQを受け取ったSTA5は、STA4及びSTA6にRREQを送信する。RREQを受け取ったSTA6は、STA4及びSTA7にRREQを送信する。RREQを受け取ったSTA7は、STA4にRREQを送信する。宛先STAであるSTA4は、ローカルSTAに関する必要な情報を収集すると、発信元STA1に向かう中間STAとしてSTA2を選別し、このSTA2にルーティング応答RREPを送信する。STA2は、RREPを受け取った時点で中間STAとして選択されたことを認識し、このRREPを発信元STA1に送信する。この時点で、発信元STA1においてRREPが受け取られる。STA1は、STA2を宛先STA4に向かう中間STAとして認識する。このようにして、STAは、STA1(発信元STA)からSTA2(中間STA)を通じたSTA4(宛先STA)へのルーティング経路を確立する。
【0056】
2.7.2.RREQ送信機STAの挙動
2.7.2.1.RREQ送信機STAのロジックフロー1
図14に、発信元STAのRREQ送信ロジックの実施形態例270を示す。STAは、上位層から送信トラフィックを受け取った時点でRREQ TX手順272に入り、Routing Tableを調べて宛先STAへの利用可能なルートが存在するかどうかを判定する(274)。宛先へのルートが存在する場合には、ブロック276が実行されて、ルート期限切れ時間への到達が近いかどうかが判定される。ルートの期限切れ時間が近くない場合には、このルートを使用することができ、プロセスは終了する(282)。ルートの期限切れ時間が近い場合、又はブロック274に従って宛先へのルートが見つからない場合、実行はブロック278に進んで送信側RREQに初期値、デフォルト値又は所与値を設定し、プロセス280を実行して近隣STAにRREQを伝播した後でプロセスを終了する(282)。従って、STAは、宛先STAへのルートが見つかった時にそのルートの期限切れ時間が近いかどうかもチェックすることが分かる。STAは、期限切れ時間が近い場合、RREQ送信をキックして既存のルートのリフレッシュ及び維持も行う。期限切れ時間が近くない場合、STAは、既存のRouting Tableを使用する。
【0057】
2.7.2.2.RREQ送信機STAのロジックフロー2
図15A及び
図15Bに、
図14のブロック280に示すような近隣STAにRREQを伝播するロジックフローの実施形態例290を示す。RREQ送信は、STAが複数の近隣STAを有している場合に、これらの複数の近隣STA又は選択された近隣STAにRREQを送信する考えられるルートを決定する試験プロセスである。
【0058】
このプロセスは292から開始した後に、STAがNeighbor List内の全ての近隣STAを走査294して近隣STAを1つずつ選別し、選別された近隣STAインスタンスが標的近隣となる。従って、STAは、これらの近隣294、296の各々にRREQを送信しようと試みる。ブロック298において、RREQの受信によってRREQ送信がトリガされてTargetNeighborがRREQのTA又はRREQのOrigSTAのいずれかに一致するかどうかを判定する。一致する場合、STAは、近隣STAにRREQを送信せず、実行は終了する310。そうではなく一致しない場合、STAプロセスはブロック300に進み、TargetNeighborに向けた送信アンテナセクタを決定する。このステップの結果、STAは、AffectRatio及びBestSector(最良セクタ)を決定する。次に、ブロック302において、送信側RREQのAffectRatioフィールド、TxAntSectorフィールド、RxQual[]フィールド、及びRAフィールドを含むいくつかのRREQフィールド値を設定する。
【0059】
次に、ブロック304において、STAは、BestSectorを使用してTargetNeighborにデータフレームを送信する場合にこのトラフィックをいつ送信すべきであるかを決定する。具体的に言えば、STAは、RREQのQoSSpec及び近隣リストを参照してチャネル時間割り当てを決定し、最良のセクタを使用したTargetNeighborへのトラフィックの送信にチャネル時間を割り当てる。従って、RREQ要素のQoSSpecフィールド(要求帯域幅)に設定された情報と、Neighbor Listインスタンスのc.TxQuality[BestSector]及びb.TrafficAct[]とを参照して利用可能な時間割り当てを求める。チャネル時間を決定するプロセスの詳細は簡潔にするために示していないが、当業者であれば、チャネル時間は複数の方法で決定することができると理解するであろう。
【0060】
ブロック306に到達すると、決定されたチャネル時間をRREQ要素のAccessTimeフィールドにコピーして、TargetNeighborのg.AccessTimeに記憶する。しかしながら、このチャネル時間割り当ては、ルートが確認されるまで保留される。従って、TargetNeighborのg.AccessTimeは、確認タイムアウト毎に除去の対象となる。STAは、g.AccessTimeを除去するためのタイマを実行する。タイマが作動すると、このデータはTargetNeighborから除去される。
【0061】
この時点でブロック308に到達し、TargetNeighborに向けたRREQフレーム送信の準備が整う。STAは、RREQフレームのTAフィールドに自機のアドレスを設定し、BestSectorを使用してTargetNeighborにRREQフレームを送信する。その後、プロセスは終了する(310)。
【0062】
2.7.2.3.RREQ送信機STAのロジックフロー3
図16A及び
図16Bに、
図15Aのブロック300において実行された標的近隣に向けた送信セクタを決定するロジックフローの実施形態例330を示す。STAは、
図16Aの332において手順に入った後に、TargetNeighborにデータを送信するためにどのTxアンテナセクタを使用すべきであるかを決定する。ここでの基本構想は、他の近隣STAへの干渉効果を最小化しながらより高いデータレートをもたらすTxセクタを発見しようと試みることである。
【0063】
まず、ブロック334において、可変MaxRateを初期化する。次に、ブロック336において、STAが、このNeighbor Listインスタンス(TargetNeighbor)における全てのTxQualityを走査してTxQuality[i]を1つずつ選別する。次に、ブロック338において、STAが、選別されたTxアンテナセクタ(c.TxQuality[i])にTxAntを設定する。次に、STAは、c.TxQuality[i]及びb.TrafficActを使用してTargetNeighborへの予想リンク速度を計算する(340)。TxQuality[i]は近似リンク速度をもたらし、b.TrafficActは、このトラフィックに対応するために利用できるチャネル時間デューティサイクルをもたらす。c.TxQuality[i]に、計算されたリンク速度に使用できるチャネル時間デューティサイクルを乗算する。この値を可変TxRateに記憶する。
【0064】
次に、ブロック342において、STAは、TxAntを使用した場合にどれほどの干渉を生じることになるかをチェックする。この実施形態では、このレベルが、Neighbor List内の他の近隣STAインスタンスのc.TxQuality[i]を走査し、ループを実行して、近隣STAのTxQuality[i]を1つずつ選別することによって決定される。本開示の教示から逸脱することなく、他の方法を利用して干渉レベルを推定することもできると理解されるであろう。
【0065】
ブロック344において、選別された近隣STAインスタンスをAffectedSTAに記憶する。
図16Bの346において、AffectedSTAがTargetNeighborと異なるかどうかのチェックを行う。異ならない場合、AffectedSTAのc.TxQuality[i]を示すAffectedSTAに対するAffect Factorを求める計算を行い、Affect Factorは、AffectSTAへの干渉をどれほど生じるかを示す。c.TxQuality[i]は、高品質の場合には大きく影響を受け、Affect Factorは大きくなる(最大1.0)。c.TxQuality[i]は、検出されない(ND)場合には影響を受けず、Affect Factorはゼロである。次に、Affect Factorを計算する(348)。少なくとも1つの実施形態では、AffectedSTAに対するAffect Factorが、AffectFactor[AffectedSTA]=Func(c.TxQuality[i])*DutyCycleとして計算され、ここでのFunc()は、0.0から1.0への線形関数であり、DutyCycleは、TargetNeighborのb.TrafficActから計算されるが、AffectFactorは、本開示の教示から逸脱することなく他の方法で求めることもできる。STAは、Neighbor List内の全てのインスタンスについて同じ動作を繰り返す。
【0066】
次に、STAは、Affect Factorに全影響が反映されるように、近隣STA間のAffect Factorを蓄積する(350)。
【0067】
次に、STAは、TxAntを使用してTargetNeighborへの実効リンク速度を計算する(352)。TxRateはベースリンク速度であり、この値はAffect Factorによって調整される。実効速度は、EffectRate=TxRate*(1-AffectFactor)などとして計算され、ここでのEffectRateは最終実効速度である。
【0068】
STAは、Neighbor Listインスタンスから最大EffectRateをもたらすデータを選別する。EffectRateがMaxRateよりも大きいかどうかの判定354を行う。EffectRateがMaxRateよりも大きい場合にはブロック356を実行して、STAが、MaxRateをEffectRateに設定し、BestSectorをTxAntに設定し、AffectRatioをAffect Factorに設定する。
【0069】
STAは、ブロック336においてループバックを実行した後に、ブロック358においてBestSectorの最終結果を取得する。この最終結果は、TargetNeighborのe.CandSectorにコピーされ(360)、CandSectorは、送信アンテナセクタ候補を示す。その後、プロセスは終了する(362)。
【0070】
2.7.2.4.STA1@P1の近隣リスト及びルーティングテーブル
前の節では、発信元STAであるSTA1がどのように送信RREQを決定するかについて説明した。
図13に示すように、STA1は、説明したロジックに従ってその近隣STAであるSTA2及びSTA3にRREQを送信する。
図13の時間基準P1におけるRREQ送信時点で、STA1のNeighbor Listが更新される。
【0071】
図17に、RREQ送信時におけるNeighbor List更新の実施形態例370を示す。この図には、STA2についてのデータテーブル372と、STA3についてのテーブル374と、空のルーティングテーブル376とを示す。
【0072】
STA1は、
図15Aのステップ300の結果として、Neighbor Listインスタンスのe.CandSectorを適切な数(最良の有効リンク速度をもたらすTxアンテナセクタ)に設定する。
図15Bのステップ304、306の結果として、Neighbor Listインスタンスのg.AccessTimeに、提案されるチャネル割り当て時間及び関連情報が書き込まれる。
図17では、RREQ送信プロセスの結果として更新されるデータに下線を引いて示しているが、STA1は、この時点でRouting Tableのインスタンスを有してしない。
【0073】
2.7.3.RREQ受信機STAの挙動
2.7.3.1.RREQ受信機STAのロジックフロー
図18A及び
図18Bに、RREQフレームを受け取るSTAのRREQ受信手順のプログラムフローの実施形態例390を示す。STAは、近隣STAからRREQを受け取った時にこの
図18Aのプロセスを開始する(392)。
図13に示すシナリオでは、
図18Aの392からプロセスが開始し、STA1によって送信されたRREQが、ここではSTA2及びSTA3として例示する他の局において受け取られる。限定ではなく一例として、この従属節の例では、STA2に焦点を当てて、RREQの受信時におけるSTA2の挙動について説明する。
【0074】
STAは、その近隣STAのうちの1つからRREQフレームを受け取ると、Neighbor Listを調べて(検索して)394、受け取ったRREQのTAフィールド内のアドレスに一致するインスタンスを選別(発見)し、このNeighbor ListインスタンスをTargetNeighborにする。
【0075】
次に、STAは、近隣STA(STA1)から自機(STA2)へのリンクメトリック値を計算する(396)。リンクメトリックは、受信信号品質の関数である。信号品質が良好であれば、リンクメトリック値は小さくなる。メトリック値が小さいほど良好なリンク品質を意味する。STAは、TargetNeighborのRxQuality[RREQ.TxAntSector]を参照することによってリンク品質を選別する。なお、RREQのTxAntSectorフィールドは、RREQフレームのTxアンテナセクタ番号を送信したSTAであるSTA1を含む。STAは、受け取ったRREQの信号品質を考慮してリンク品質を決定することができる。STAは、この計算の結果として、計算されたメトリック値を可変LinkMetricForwardに記憶する。
【0076】
次に、STAは、
図15Aのステップ300と同等のロジック398を実行する。
図18Aのブロック398において、TargetNeighborに向けた送信セクタを決定する。STAは、このステップの結果として、上述したようにAffectRatio及びBestSectorを決定する。
【0077】
STAは、自機(STA2)から近隣STA(STA1)へのリンクメトリック値をさらに計算する(400)。STAは、受け取ったRREQ要素のRxQual[BestSector]フィールドを参照することによってリンク品質を選別する。なお、RREQのRxQualフィールドは、STA1のSTA2からの受信信号品質を含むと理解されたい。STAは、計算されたメトリック値を可変LinkMetricReverseに記憶する。
【0078】
次に、STAは、受け取ったRREQ要素のMetricフィールド、LinkMetricForward、及びLinkMetricReverseの値を蓄積することによってPathMetricを決定する(402)。
【0079】
STAは、Routing Tableを調べて(検索して)404、受け取ったRREQ要素のOrigSTAフィールドに等しいDestによって識別されたインスタンスを選別する。STAは、このようなインスタンスを発見できない場合には、新たなRouting Tableインスタンスを生成する。STAは、選別された又は新たに生成されたRouting TableインスタンスにRouteTableポインタを設定する。
【0080】
次に、STAは、
図18Bの406において、RREQのシーケンス番号及びメトリック値を評価する。受け取ったRREQが新たなルート設定又は維持の試行である(RREQのSeqNum>RouteTableのd.SeqNum)場合、或いは計算されたPathMetricが以前にRouteTableに記憶されたメトリック値よりも良好である(小さい)場合、ブロック408が実行されて、STAが、宛先STAへのルート候補を、TargetNeighborを宛先STAへのネクストホップSTAとして使用するように提案する新たなデータに置き換える。上記の条件が満たされない場合、STAは、受け取ったRREQフレームを単純に廃棄し、ブロック420においてプロセスを終了する。
【0081】
STAは、ブロック408に従って宛先STAへのルート候補を置き換える場合、このブロックに示すように、RouteTable内のメンバを図示の変数に置き換える。
【0082】
次に、STAは、TrafficIDフィールド及びQoSSpecフィールドに含まれている情報をTargetNeighborのg.AccessTimeに記憶する(410)。
【0083】
RREQフレーム内のDest STAフィールドが自機のアドレスに一致するかどうかを判定する(412)。これが自機のアドレスである場合、STAは、ブロック418を実行して、RREPフレームの送信をスケジュールするタイマ(RREP送信タイマ)を設定する。
【0084】
そうではなく、RREQフレーム内のDest STAフィールドが自機のアドレスとは異なる場合、STAは、ブロック414に到達して、受け取ったRREQフレーム内のフィールドを送信RREQフレームにコピーし、MetricフィールドにPathMetricを上書きする。その後、STAはプロセス416を実行して近隣STAにRREQを伝播し、これについては前節において詳細を説明した
図14のブロック280と同等である。
【0085】
2.7.3.2.STA2@P2/P5の近隣リスト及びルーティングテーブル
上記では、RREQフレームの受信時に局(例えば、例のSTA2)がどのように挙動するかについて説明し、
図18Bのブロック410までのステップにRREQ受信プロセスを示し、ステップ414及び416にRREQ伝播プロセスを示した。
【0086】
図19に、RREQ受信プロセスの結果として、また
図13の時間基準P2の観点から、STA2のNeighbor List及びRouting Tableがどのように更新されたかについての実施形態例430を示す。
図19には、参加局STA1 432、STA3 434、STA4 436、STA5 438の近隣リストと、Dest=STA1のルーティングテーブル440とを示す。更新された値、特にSTA1 432についてはe.CardSector=3、g.Access Time[0]=x、及びルーティングテーブル440全体を示していることが分かるであろう。
【0087】
上記の更新は、
図18Aのステップ398の結果として行われ、STA2は、STA1のNeighbor Listインスタンスのe.CandSectorを適切な数(最良の有効リンク速度をもたらすTxアンテナセクタ)に設定する。
図18Bのステップ410の結果として、Neighbor Listインスタンスのg.AccessTimeにTraffic ID及びQoSSpecが書き込まれる。また、この図のステップ408の結果として、STA2は、Dest=STA1であるRouting Tableインスタンスを生成している。
【0088】
図20に、
図18Bのブロック416による説明したロジックに従ってSTA2がSTA3、STA4及びSTA5にRREQを送信する
図13に示すようなRREQ伝播プロセスの結果としての近隣リストを示す実施形態例450を示す。
図13の時間基準P5におけるRREQ送信時点で、STA2のNeighbor Listが更新される。
図20には、近隣リストSTA1 452、STA3、454、STA4 456、STA5 458と、Dest=STA1のルーティングテーブル460とを示す。
【0089】
図18Aのステップ398の結果として、STA2は、Neighbor Listインスタンスのe.CandSectorを適切な数(最良の有効リンク速度をもたらすTxアンテナセクタ)に設定する。
図15Bに示すようなステップ304及び306の結果として、Neighbor Listインスタンスのg.Access Timeに、提案されるチャネル割り当て時間及び関連情報が書き込まれる。RREQ送信プロセスの結果としての
図20のリストの変化は、破線で囲んで示している。
【0090】
2.7.3.3.STA4@P6の近隣リスト及びルーティングテーブル
STA2が送信したRREQフレームは、STA3、STA4及びSTA5において受け取られる。この従属節では、STA4に焦点を当てて、本開示によるRREQの受信時にSTA4がどのように挙動するかについて説明する。
【0091】
図21に、STA2 472、STA3 474についてのデータ更新、及びSTA1のDestを含むルーティングテーブルの実施形態例470を示す。これらの更新は、
図18A及び
図18Bに示すロジックと同じロジックを実行するSTA4がRREQフレームを受け取った時に行われる。STA4は、
図18Bのステップ410まではSTA2と同じ処理に従ってNeighbor List及びRouting Tableを更新する。この結果、
図13の時間基準P6において、STA4のNeighbor List及びRouting Tableが
図21に示すように更新される。
【0092】
図18Aのステップ398の結果として、STA4は、STA2のNeighbor Listインスタンスのe.CandSectorを適切な数(最良の有効リンク速度をもたらすTxアンテナセクタ)に設定する。
図18Bのステップ410の結果として、Neighbor Listインスタンスのg.AccessTimeにTraffic ID及びQoSSpecが書き込まれる。また、ステップ408の結果として、STA4は、Dest=STA1であるRouting Tableインスタンスを生成している。
図21では、RREQ受信プロセスの結果としてのデータ更新を破線で囲んで示している。
【0093】
図18Bのステップ412において、STA4は、RREQのDestSTAフィールドが自機と同等であると判定する。従って、STA4は、RREQをさらに伝播せず、RREP送信タイマを開始してRREPで応答する。
【0094】
2.7.4.RREP送信機STAの挙動
2.7.4.1.RREP送信機STAのロジックフロー
図22に、RREP送信タイマが作動(トリガ)した時のプロセスフローの実施形態例490を示す。上述したように、このタイマは宛先STAにおいて設定され、宛先STAにおいて事象が発生する。
図13に示すシナリオ例では、STA4が、RREP送信手順を初期化してこのプロセスを開始する(492)。ブロック494において、STAは、受け取ったRREQフレーム内のフィールドをRREP送信フィールドにコピーして、RREPフレーム内のMetricフィールドを初期化する。次に、STAは、ロジックを実行して近隣STAにRREPを伝播496した後で終了し(498)、伝搬496については以下の図に詳述する。
【0095】
図23に、ブロック512から開始する、近隣STAにRREPを伝播するプロセスフローの実施形態例510を示す。STAは、そのRouting Tableを調べて(検索して)514、RREP要素内のDest==OrigSTAであるインスタンスを選別(発見)する。STAは、選別したインスタンスにRouteTableポインタを設定する。次に、ブロック516において、STAは、RouteTable内のa.NextHopをRREPフレームのRAフィールドにコピーし、RouteTable内のb.TxAntSecをRREPフレームのTxAntSectorフィールドにコピーする。さらに、STAは、RouteTableのg.ValidFlagをTrueに設定して、このRouteTableインスタンスを有効にする。有効化の結果として、Routing Tableの読み取り部分にRouteTable情報が送信され、これがデータ転送(中継)に使用される。
【0096】
次に、ブロック518において、STAは、そのNeighbor Listを調べて(検索して)、RouteTable内のa.NextHopに一致するNeighbor Listインスタンスを選別(発見)し、TargetNeighborがインスタンスを識別する。
【0097】
ブロック520において、STAは、RouteTableのb.TxAntSecを使用してこのトラフィックをいつTargetNeighborに送信すべきであるかを決定する。送信側RREP要素のQoSSpecフィールド(要求帯域幅)に設定された情報と、Neighbor Listインスタンスのc.TxQuality[Route Table.b.TxAntSec]及びb.TrafficAct[]とを参照して、利用可能な時間割り当てを求める。
【0098】
ブロック522において、利用可能なチャネル時間を発見した後に、決定されたチャネル時間をRREP要素のAccessTime(アクセス時間)フィールドにコピーして、TargetNeighborのg.AccessTimeに記憶する。ここでは、このチャネル時間割り当てが決定された割り当てであり、データフレームの送信が意図される時に時間情報が使用される。
【0099】
次に、ブロック524において、STAは、e.CandSectorをTargetNeighborのd.TxAntSectorにコピーする。この値を設定することによって送信アンテナセクタが確認され、実際の使用のために有効になる。
【0100】
ブロック526において、STAは、自機のアドレスをRREPフレームのTAフィールドにコピーし、RouteTableのb.TxAntSecによって識別されたTxアンテナセクタを使用してTargetNeighborにRREPフレームを送信した後でプロセスを終了する(528)。
【0101】
2.7.4.2.STA4@P7の近隣リスト及びルーティングテーブル
図24に、STA2 532、STA3 534についての近隣リスト、及びSTA4におけるDest=STA1のルーティングテーブル540の更新の実施形態例530を示す。前節では、STA4がRREP送信時に宛先STAとしてどのように挙動するかについて説明した。
図13の時間基準P7におけるRREP送信の結果、STA4のNeighbor List及びRouting Tableが更新される。
【0102】
図23のステップ516の結果として、STA4は、Dest==STA1のRouting Tableインスタンスを有効にする。
図23のステップ524の結果として、STA4は、STA2のNeighbor Listインスタンスのd.TxAntSectorを適切な数(最良の有効リンク速度をもたらすTxアンテナセクタ)に設定する。
図23のステップ520の結果として、Neighbor Listインスタンスのg.AccessTimeに決定されたチャネル時間情報が書き込まれる。この図では、RREP初期化プロセスの結果として更新されたデータを破線で囲んで示している。
【0103】
2.7.5.RREP受信機STAの挙動
2.7.5.1.RREP受信機STAのロジックフロー1
図25に、ブロック552から開始するRREP受信手順の実施形態例550を示す。STAは、近隣STAからのRREP受信時にこのプロセス552を開始する。
図13に示すシナリオでは、STA4によって送信されたRREPがSTA2において受け取られる。RREPフレームを受け取ったSTAは、図示のロジックを実行し、この従属節の説明では、STA2、及びSTA2がRREPの受信を処理するためにどのように構成されているかに焦点を当てる。
【0104】
STAがその近隣STAのうちの1つからRREPフレームを受け取った場合、このRREPフレームは、RREQ伝播プロセスにおいて構築されるルート候補の確認である。RREPフレームを受け取ったSTAは、後節において詳細に説明する近隣STAからのRREP受信Confirm手順を実行する(554)。
【0105】
RREPフレーム内のOrigSTAフィールドが自機のアドレスに一致するかどうかを判定する(556)。RREPフレームが自機のアドレスに一致する場合、実行は終了562に進み、STAは、RREPが発信元STAに到達した時にルート設定プロセスを終了して、宛先STAへの全てのルートを設定し終える。
【0106】
そうではなく、RREPフレームのOrigSTAフィールドが自機のアドレスと異なる場合、STAは、受け取ったRREPフレーム内のフィールド558を送信側RREPフレームにコピーして、
図22の496と同等の、近隣STAにRREPを伝播560するプロセスを実行する。
【0107】
2.7.5.2.RREP受信機STAのロジックフロー2
図26に、
図25のブロック554において実行された近隣STAからのRREP受信を確認する実施形態例570を示す。このプロセスはブロック572から開始し、STAがそのRouting Tableを調べて(検索して)574、受け取ったRREP要素のDestSTAフィールドに等しいDestによって識別されるインスタンスを選別(発見)する。STAは、このようなインスタンスを発見できない場合には、新たなRouting Tableインスタンスを生成する。STAは、選別された又は新たに生成されたRouting TableインスタンスにRouteTableポインタを設定する。
【0108】
ブロック576において、STAは、そのNeighbor Listを調べて(検索して)、RREPフレームのTAフィールドに一致するインスタンスを選別(発見)する。このインスタンスは、NeighborEntryによって識別される。
【0109】
ブロック578において、STAは、RouteTableのメンバを図示の変数に置き換える。ここでは、STAが、RouteTableのg.ValidFlagをTrueに設定して、このRouteTableインスタンスを有効にする。有効化の結果として、Routing Tableの読み取り部分にRouteTable情報が送信され、これがデータ転送(中継)に使用される。
【0110】
次に、STAは、NeighborEntryのg.AccessTimeを有効にして(580)、チャネル時間割り当てが決定された割り当てであり、データフレームの送信が意図される時に時間情報が使用されることを確実にする。
【0111】
ブロック582において、STAは、e.CandSectorを近隣エントリのd.TxAntSectorにコピーする。この値を設定することによって送信アンテナセクタが確認され、実際の使用のために有効になり、プロセスは終了する(584)。
【0112】
2.7.5.3.STA2@P8の近隣リスト及びルーティングテーブル
図27に、STA2@P8のNeighbor List及びRouting Tableステータスの実施形態例590を示す。この図には、STA1 592、STA3 594、STA4 596、STA5 598についての更新、並びにDest=STA1 600及びDest=STA4 602のルーティングテーブルを示す。前節では、STA2がRREP受信時にどのように挙動するように構成されるかについて説明した。
図13の時間基準P8におけるRREP受信及びRREP伝播の結果、STA2のNeighbor List及びRouting Tableが更新される。
【0113】
図26のステップ578の結果として、STA2は、Dest==STA4のRouting Tableインスタンスを生成して有効にする。
図26のステップ580の結果として、STA2は、STA4のNeighbor Listインスタンスのg.AccessTimeを有効にする。
図26のステップ582の結果として、STA2は、STA4のNeighbor Listインスタンスのd.TxAntSectorを適切な数に設定する。
【0114】
図23のステップ516の結果として、STA2は、Dest==STA1のRouting Tableインスタンスを有効にする。
図23のステップ524の結果として、STA2はSTA1のNeighbor Listインスタンスのd.TxAntSectorを適切な値に設定する。
図23のステップ520の結果として、Neighbor Listインスタンスのg.AccessTimeに決定されたチャネル時間情報が書き込まれる。さらに、他のNeighbor Listインスタンスのg.AccessTimeが、確認タイムアウト毎にNULLに戻される。
図27では、RREP受信及びRREP伝播プロセスの結果として更新されたフィールドを破線で囲んで示している。
【0115】
2.7.5.4.STA1@P9の近隣リスト及びルーティングテーブル
図28に、STA1@P9の、STA2 612、STA3 614についてのNeighbor List、及びDest=STA4 620のRouting Tableの実施形態例610を示す。STA2が送信したRREPフレームは、STA1において受け取られる。STA1は、RREPフレームを受け取ると、
図25に示すロジックと同じロジックを実行する。STA1は、
図25のステップ554と同じロジックを実行するが、RREPフレーム内のOrigSTAフィールドが自機のアドレスに一致すると判定して手順を終了する。この結果、
図13の時間基準P9において、STA1のNeighbor List及びRouting Tableが
図28に示すように更新される。
【0116】
具体的には、
図26からのステップ578の結果として、STA1は、Dest==STA4のRouting Tableインスタンスを生成して有効にする。
図26からのステップ580の結果として、STA1は、STA2のNeighbor Listインスタンスのg.AccessTimeを有効にする。
図26からのステップ582の結果として、STA1は、STA2のNeighbor Listインスタンスのd.TxAntSectorを適切な数に設定する。
図28では、テーブルの変更を破線で囲んで示している。
【0117】
2.8.ルーティングテーブルの構築方法(シナリオ2)
図29に、第2のシナリオによるメッセージシーケンスの実施形態例630を示す。このシナリオでは、再び
図2のSTAトポロジーを仮定する。このシナリオでは、STA1が前の従属節で説明したようにSTA4へのルートを設定した後に、STA5がSTA7と通信しようと試みる。なお、STA5は、最初はSTA7への有効なルートを有していない。以下では、この従属節におけるルート設定プロセスについて説明する。図示の期間p21~p25については、本開示全体を通じて参照することができる。
【0118】
2.8.1.メッセージシーケンスチャート(シナリオ2)
このシナリオでは、STA5がトラフィック発信元STAであり、STA7がトラフィック宛先STAである。他のSTAは潜在的中間STAであるが、STA5からSTA7へのルートが決定されるまでは、どのSTAが介在するかは不確定である。これらの潜在的中間STAは、RREQフレームの受信及びRREPフレームの受信毎に一連の事象を開始させる。発信元STAであるSTA5がSTA7にデータフレームを送信しようと試みる際には、STA5が、このトポロジー例ではSTA2 632、STA4 634及びSTA6 636であるその近隣STAにRREQフレームを送信し始め、これらの近隣STAがRREQフレームを伝播する。この段階で、これらの近隣STAは潜在的中間STAとして挙動する。具体的には、STA2がSTA1 638、STA3 640及びSTA4 642にRREQを伝播することが分かる。STA4は、STA2 644、STA3 646、STA6 648及びSTA7 650にRREQを伝播する。STA6は、STA4 652及びSTA7 654にRREQを伝播する。この結果、最終的にSTA7がRREQフレームを受け取る。宛先STAであるSTA7は、その近隣STAからRREQフレームを受け取ることによって、STA6を介したルートがこの送信に最適であると判断し、STA6を発信元STA4に向かう中間STAとして選別して、RREPフレームを生成してSTA5に戻すことによって応答する。具体的に言えば、STA7は、中間STAであるSTA6を選別するルーティング応答RREPを送信する。STA6は、RREPを受け取ると、中間STAとして選択されたことを認識して発信元STA5にRREPを送信する。STA5は、STA6を介してRREPを受け取った時に、STA6を宛先STA7に向かう中間STAとして認識する。このようにして、発信元STA5から宛先STA7への(及びSTA7からSTA5への)エンド-エンドルートが確立される。
【0119】
2.8.1.1.STA5@P21の近隣リスト及びルーティングテーブル
図30に、
図14に示すロジックを実行したSTA5@P21のNeighbor List及びRouting Tableステータスの実施形態例670を示す。STA2 672、STA4 674、STA6 676についての近隣リストを示しているが、ルーティングテーブル678は未だ作成されていない。
【0120】
図29のように、STA5は、説明したロジックに従ってSTA2、STA4及びSTA6にRREQを送信する。
図29の時間基準P21におけるRREQ送信時点で、STA5のNeighbor Listが更新される。
【0121】
図15Aのステップ300の結果として、STA5は、Neighbor Listインスタンスのe.CandSectorを適切な数(最良の有効リンク速度をもたらすTxアンテナセクタ)に設定する。なお、STA6に最も高い帯域幅をもたらすのはアンテナセクタ1であるが、STA5は、アンテナセクタ0をSTA6へのBestSectorとして選別している。このようになる理由は、アンテナセクタ1が、進行中のトラフィックを有しているSTA4に干渉を生じるからである。STA5は、
図16Bのステップ352、354におけるBestSector決定時に、アンテナセクタ0を用いたEffectRateの方がアンテナセクタ1を用いたEffectRateよりも良好な値をもたらすと判断している。
【0122】
図15Bのステップ304、306の結果として、Neighbor Listインスタンスのg.AccessTimeに、提案されるチャネル割り当て時間及び関連情報が書き込まれる。図では、RREQ送信プロセスの結果として更新されたデータを破線で囲んで示している。この時点では、STA5は未だRouting Tableのインスタンスを有していない。
【0123】
2.8.1.2.STA6@P22の近隣リスト及びルーティングテーブル
図31に、STA6@P22のNeighbor List及びRouting Tableの実施形態例690を示す。STA4 692、STA5 694、STA7 696についての近隣リストと、Dest=STA5のルーティングテーブル700とを示す。
【0124】
STA5によって送信されたRREQは、STA2、STA4及びSTA6において受け取られる。RREQフレームを受け取ったSTAは、
図18A及び
図18Bに示すロジックを実行する。以下の節では、STA6、並びにSTA6のNeighbor List及びRouting Tableがどのように変化するかに焦点を当てる。
【0125】
図29の時間基準P22におけるRREQ受信及びRREQ伝播プロセスの結果として、STA6のNeighbor List及びRouting Tableが更新される。
【0126】
図18Aのステップ398の結果として、STA6は、STA5のNeighbor Listインスタンスのe.CandSectorを適切な数(最良の有効リンク速度をもたらすTxアンテナセクタ)に設定する。
図18Bのステップ410の結果として、Neighbor Listインスタンスのg.AccessTimeにTraffic ID及びQoSSpecが書き込まれる。なお、STA6に最も高い帯域幅をもたらすのはアンテナセクタ2であるが、STA6は、アンテナセクタ3をSTA5へのBestSectorとして選別している。このようになる理由は、アンテナセクタ2が、進行中のトラフィックを有しているSTA4に干渉を生じるとの判断からである。STA6は、
図16Bのステップ352、354におけるBestSector決定時に、アンテナセクタ3を用いたEffectRateの方がアンテナセクタ2を用いたEffectRateよりも良好な値をもたらすと判断している。また、
図18Bのステップ408の結果として、STA6は、Dest=STA5のRouting Tableインスタンスを生成している。
【0127】
図29のようなRREQ伝播プロセスの結果として、STA6は、説明したロジックに従ってSTA4及びSTA7にRREQを送信する。
図18Aのステップ398の結果として、STA6は、STA4及びSTA7のNeighbor Listインスタンスのe.CandSectorを適切な数に設定する。なお、STA7に最も高い帯域幅をもたらすのはアンテナセクタ1であるが、STA6は、アンテナセクタ0をSTA7へのBestSectorとして選別している。このようになる理由は、アンテナセクタ1が、進行中のトラフィックを有しているSTA4に干渉を生じるとの判断からである。STA6は、
図16Bのステップ352、354におけるBestSector決定時に、アンテナセクタ0を用いたEffectRateの方がアンテナセクタ1を用いたEffectRateよりも良好な値をもたらすと判断している。
【0128】
図15Bのステップ304、306の結果として、Neighbor Listインスタンスのg.AccessTimeに、提案されるチャネル割り当て時間及び関連情報が書き込まれる。この図では、RREQ送信プロセスの結果として更新されたデータを破線で囲んで示している。
【0129】
2.8.1.3.STA7@P23の近隣リスト及びルーティングテーブル
図32に、STA7@P23のNeighbor List及びRouting Tableステータスの実施形態例710を示す。STA4 712、STA6 714についての近隣リストと、Dest=STA5 720のルーティングテーブルとを示す。STA6が送信したRREQフレームは、STA4及びSTA7において受け取られる。
【0130】
この従属節では、STA7、及び本開示においてSTA7がRREQの受信時にどのように挙動するように構成されるかに焦点を当てる。STA7は、RREQフレームを受け取ると、
図18A及び
図18Bに示すロジックを実行する。この結果、
図29の時間基準P23において、STA7のNeighbor List及びRouting Tableが更新される。
【0131】
図18Aのステップ398の結果として、STA7は、STA6のNeighbor Listインスタンスのe.CandSectorを適切な数に設定する。なお、STA6に最も高い帯域幅をもたらすのはアンテナセクタ2であるが、STA7は、アンテナセクタ3をSTA6へのBestSectorとして選別している。このようになる理由は、アンテナセクタ2が、進行中のトラフィックを有しているSTA4に干渉を生じるとの判断からである。STA7は、
図16Bのステップ352、354におけるBestSector決定時に、アンテナセクタ3を用いたEffectRateの方がアンテナセクタ2を用いたEffectRateよりも良好な値をもたらすと判断している。また、
図18Bのステップ408の結果として、STA7は、Dest=STA6のRouting Tableインスタンスを生成している。さらに、STA7は、RREP送信タイマの期限切れ毎に
図22に示すロジックを実行してSTA6にRREPフレームを送信する。
図29の時間基準P23におけるRREP送信の結果として、STA7のNeighbor List及びRouting Tableが
図32に示すように更新される。
【0132】
図23のステップ516の結果として、STA7は、Dest==STA5のRouting Tableインスタンスを有効にする。
図23のステップ524の結果として、STA7は、STA6のNeighbor Listインスタンスのd.TxAntSectorを適切な数に設定する。
図23のステップ520の結果として、Neighbor Listインスタンスのg.AccessTimeに決定されたチャネル時間情報が書き込まれる。この図では、RREQ受信及びRREP初期化プロセスの結果として更新されたデータを破線で囲んで示している。
【0133】
2.8.1.4.STA6@P24の近隣リスト及びルーティングテーブル
図33に、STA6@P24のNeighbor List及びRouting Tableステータスの実施形態例730を示す。STA4 732、STA5 734、STA7 736についての近隣リスト、Dest=STA5 738のルーティングテーブル、及びDest=STA7 740のルーティングテーブルを示す。STA7によって送信されたRREPは、STA6において受け取られる。RREPフレームを受け取ったSTAは、
図25に示すロジックを実行する。この結果、STA6は、ルートを確認してSTA5にRREPを伝播する。
【0134】
図29の時間基準P24におけるRREP受信及びRREP伝播の結果として、STA6のNeighbor List及びRouting Tableが更新される。
【0135】
ステップS93の結果として、STA6は、Dest==STA7のRouting Tableインスタンスを生成して有効にする。
図26のステップ580の結果として、STA6は、STA7のNeighbor Listインスタンスのg.AccessTimeを有効にする。
図26のステップ582の結果として、STA6は、STA7のNeighbor Listインスタンスのd.TxAntSectorを適切な数に設定する。
【0136】
図23のステップ516の結果として、STA6は、Dest==STA5のRouting Tableインスタンスを有効にする。
図23のステップ524の結果として、STA6は、STA5のNeighbor Listインスタンスのd.TxAntSectorを適切な数に設定する。
図23のステップ520の結果として、Neighbor Listインスタンスのg.AccessTimeに決定されたチャネル時間情報が書き込まれる。さらに、他のNeighbor Listインスタンス内のg.AccessTimeが、確認タイムアウト毎にNULLに戻される。この図では、RREP受信及びRREP伝播プロセスの結果として更新されたデータを破線で囲んで示している。
【0137】
2.8.1.5.STA5@P25の近隣リスト及びルーティングテーブル
図34に、STA5@P25のNeighbor List及びRouting Tableステータスの実施形態例750を示す。STA2 752、STA4 754、STA6 756についての近隣リストと、Dest=STA7 760のルーティングテーブルとを示す。
【0138】
STA6が送信したRREPフレームは、STA5において受け取られる。STA5は、RREPフレームを受け取ると、
図25に示すロジックを実行する。STA5は、RREPフレームのOrigSTAフィールドが自機のアドレスに一致すると判断して手順を終了する。この結果、
図29の時間基準P25において、STA5のNeighbor List及びRouting Tableが更新される。
【0139】
図26のステップ578の結果として、STA5は、Dest==STA7のRouting Tableインスタンスを生成して有効にする。
図26のステップ580の結果として、STA5は、STA6のNeighbor Listインスタンスのg.AccessTimeを有効にする。
図26のステップ582の結果として、STA5は、STA6のNeighbor Listインスタンスのd.TxAntSectorを適切な数に設定する。
【0140】
2.9.ルーティングテーブルの構築方法(シナリオ3)
このシナリオでは、再び
図2に示すSTAトポロジーを仮定する。このシナリオでは、STA1がSTA4へのルートをリフレッシュ中である。上記説明の結果としての通信設定が進行中であると気付くであろう。STA1は、STA4への有効なルートを有しているが、今回はルート設定後にSTA5からSTA7へのトラフィックが追加されるので、好ましいルートが変化している。以下では、この従属節におけるルート維持プロセスについて説明する。
【0141】
2.9.1.メッセージシーケンスチャート(シナリオ3)
図35に、このルート設定プロセスの全体的なフレーム交換シーケンスの実施形態例770を示す。このシナリオでは、発信元STAであるSTA1が、宛先STAであるSTA4に向かうルートをリフレッシュするために、STA2 772及びSTA3 774を含む近隣STAにRREQフレームを送信し始める。RREQを受け取ったSTAは、このルート設定試行の宛先STAでない限り、このRREQを近隣STAに伝播する。近隣STA(STA2、STA3)は、RREQフレームを伝播する。具体的に言えば、STA2は、STA3 776、STA4 778及びSTA5 780にRREQを伝播し、STA3は、STA2 782及びSTA4 784にRREQを伝播し、STA5は、STA4 786及びSTA6 788にRREQを伝播し、STA6は、STA4 790及びSTA7 792にRREQを伝播し、STA7は、STA4 794にRREQを伝播する。図示の期間p41~p49については、本開示全体を通じて参照することができる。
【0142】
このようにして、STA4がRREQフレームを受け取ることが分かる。このRREQは、シナリオ1において上述したものとは異なるルート発見プロセスであるため、発信元STAであるSTA1は、送信側RREQのSeqNum値を増分する。STA4は、その近隣STAからRREQフレームを受け取ることにより、この時点ではSTA3を介したルートがこの送信に適していると最終的に判断し、STA3を介してSTA1にRREPフレームを戻すことによって応答する。STA3は、RREPフレーム796を受け取った時点で中間STAとして選択されたと認識し、RREPフレーム798を生成してSTA1に送信する。STA1は、STA3を介してRREPを受け取った時点で、このSTAが宛先STA4に向かう新たな中間STAであると認識する。このようにして、STA1からSTA4への(及びSTA4からSTA1への)エンド-エンドルートがリフレッシュされる。
【0143】
2.9.1.1.STA1@P41の近隣リスト及びルーティングテーブル
図36に、STA1@P41のNeighbor List及びRouting Tableステータスの実施形態例810を示す。STA2 812、STA3 814についての近隣リストと、Dest=STA4のルーティングテーブル820とを示す。
【0144】
STA1は、
図14に示すロジックを実行する。この時点でSTA4に向かうルートの期限切れが迫っており、従ってSTA1はRREQの生成を開始する。
図35に示すように、STA1は説明したロジックに従ってSTA2及びSTA3にRREQを送信する。
図35の時間基準P41におけるRREQ送信時点で、STA1のNeighbor List及びRouting Tableは、最後の更新以降変化していない。
【0145】
2.9.1.2.STA@P43のNeighbor List及びRouting Table
図37に、STA2@P43のNeighbor List及びRouting Tableステータスの実施形態例830を示す。STA1 832、STA3 834、STA4 836、STA5 838についての近隣リストと、Dest=STA1 840及びDest=STA4 842のルーティングテーブルとを示す。
【0146】
STA1によって送信されたRREQは、STA2及びSTA3において受け取られる。STA2は、RREQフレームを受け取ると、
図18A及び
図18Bに示すロジックを実行する。STA2は、ロジックに従ってそのRouting Tableを更新し、その近隣STAにRREQフレームを伝播する。
【0147】
図35の時間基準P43におけるRREQ受信及びRREQ伝播プロセスの結果として、STA2に関連するNeighbor List及びRouting Tableが更新される。
【0148】
このトランザクションは維持を目的としているので、Neighbor Listインスタンスの変更は行われない。しかしながら、
図18Bのステップ408の結果として、STA2は、Dest=STA1のRouting Tableインスタンスに、RREQ(41)の受信によって取得された情報を上書きする。この上書きが行われる理由は、受け取ったRREQのSeqNumの方がSTA2のRouting TableのSeqNumよりも大きいためである。図には、RREQ送信プロセスの結果として更新されたデータを破線で囲んで示している。
【0149】
2.9.1.3.STA4@P44の近隣リスト及びルーティングテーブル
図38に、STA4@P44のNeighbor List及びRouting Tableステータスの実施形態例850を示す。STA2 852、STA3 854についての近隣リストと、Dest=STA1 860のルーティングテーブルとを示す。STA2が送信したRREQフレームは、STA3、STA4及びSTA5において受け取られる。以下では、STA4がこのインスタンスにおいてどのように挙動するように構成されるかに焦点を当てる。
【0150】
STA4は、RREQフレームを受け取ると、
図18A及び
図18Bに示すロジックを実行する。この結果、
図35の時間基準P44において、STA4のNeighbor List及びRouting Tableが更新される。
【0151】
図18Aのステップ398の結果として、STA4は、STA2のNeighbor Listインスタンスのe.CandSectorを適切な数に設定する。なお、BestSectorは1から0に変更されている。STA4のTxアンテナセクタ1は、STA5に影響を及ぼす。この時点でSTA5が通信を開始しており、STA4は、Txアンテナセクタ0を好ましいセクタとして選択している。この決定は、
図16Bのステップ348、350、352から行われる。
【0152】
また、
図18Bのステップ408の結果として、STA4は、Dest=STA1のRouting Tableインスタンスを更新している。この更新が行われる理由は、受け取ったRREQのSeqNumの方がSTA4のRouting TableのSeqNumよりも大きいためである。また、Routing Tableインスタンスのb.TxAntSecも0に更新されている。この図では、RREQ受信及びRREP初期化プロセスの結果として更新されるデータを破線で囲んで示している。
【0153】
2.9.1.4.STA3@P45の近隣リスト及びルーティングテーブル
図39に、STA3@P45のNeighbor List及びRouting Tableステータスの実施形態例870を示す。STA1 872、STA2 874、STA4 876についての近隣リストと、Dest=STA1 880のルーティングテーブルとを示す。
【0154】
STA1によって送信されたRREQは、STA3において受け取られる。STA3も、
図18A及び
図18Bに示すロジックを実行する。
図35の時間基準P45におけるRREQ受信及びRREQ伝播プロセスの結果として、STA3のNeighbor List及びRouting Tableが更新される。
【0155】
STA3は、前回から変更されていない(0のままである)ので、STA1のNeighbor Listインスタンスにおけるe.CandSectorを変更していない。
図18Bのステップ410の結果として、Neighbor Listインスタンスのg.AccessTimeにTraffic ID及びQoSSpecが書き込まれる(前回の記録は確認タイムアウト毎に除去されている)。また、
図18Bのステップ408の結果として、STA3は、dest(宛先)=STA1のRouting Tableインスタンスを更新している。この更新が行われる理由は、受け取ったRREQのSeqNumの方がSTA4のRouting TableのSeqNumよりも大きいためである。
【0156】
STA3は、
図35のようなRREQ伝播プロセスの結果として、説明したロジックに従ってSTA2及びSTA4にRREQを送信する。
図15Bのステップ304、308の結果として、STA2及びSTA4のNeighbor Listインスタンスのg.AccessTimeに、提案されるチャネル割り当て及び関連情報が書き込まれる。この図では、RREQ送信プロセスの結果として更新されたデータを破線で囲んで示している。
【0157】
2.9.1.5.STA4@P46の近隣リスト及びルーティングテーブル
図40に、STA4@P46のNeighbor List及びRouting Tableステータスの実施形態例890を示す。STA2 892、STA3 894についての近隣リストと、Dest=STA1 900のルーティングテーブルとを示す。STA3が送信したRREQフレームは、STA2及びSTA4において受け取られる。以下では、STA4が本開示に従ってどのように挙動するように構成されるかに焦点を当てる。
【0158】
STA4は、RREQフレームを受け取ると、
図18A及び
図18Bに示すロジックを実行する。この結果、P35の時間基準P46において、STA4のNeighbor List及びRouting Tableが更新される。
【0159】
図18Bのステップ408の結果として、STA4は、Dest=STA1のRouting Tableインスタンスを更新している。この更新が行われる理由は、STA3を介したメトリック値の方がRouting Tableのメトリック値よりも良好な(小さい)(210<220)ためである。Routing Tableインスタンスは、RREQ(47)によって受け取られた情報によって上書きされる。この時点で、STA1に向かうネクストホップSTAがSTA3に設定される。
【0160】
図18Bのステップ410の結果として、Neighbor Listインスタンスのg.AccessTimeにTraffic ID及びQoSSpecが書き込まれる(前回の記録は確認タイムアウト毎に除去されている)。この図では、RREQ受信及びRREP初期化プロセスの結果として更新されたデータを破線で囲んで示している。STA4は、RREP送信タイマを実行して、STA3を介したRREPで応答する。
【0161】
2.9.1.6.STA4@P47の近隣リスト及びルーティングテーブル
図41に、STA4@P47のNeighbor List及びRouting Tableステータスの実施形態例910を示す。STA2 912、STA3 914についての近隣リストと、Dest=STA1 920のルーティングテーブルとを示す。STA4において、STA3からRREQを受け取った後にRREP送信タイマの期限が切れる。ルーティングテーブル内では、STA1に向かうネクストホップSTAがSTA3に設定されているので、STA4は、RREP送信タイマの期限切れ毎に、
図22に示すロジックを実行してSTA3にRREPフレームを送信する。
【0162】
図35の時間基準P47におけるRREP送信の結果として、STA4のNeighbor List及びRouting Tableが更新される。
【0163】
図23のステップ516の結果として、STA4は、Dest==STA1のRouting Tableインスタンスを有効にする。
図23のステップ524の結果として、STA4は、STA3のNeighbor Listインスタンスのd.TxAntSectorを適切な数に設定する。
図23のステップ520の結果として、STA3のNeighbor Listインスタンスのg.AccessTimeに決定されたチャネル時間情報が書き込まれ、STA2を介したルートはもはや有効でないため、STA2のNeighbor Listインスタンスのg.AccessTimeが除去される。この図では、RREP初期化の結果として更新されたデータを破線で囲んで示している。
【0164】
2.9.1.7.STA3@P48の近隣リスト及びルーティングテーブル
図42に、STA3@P48のNeighbor List及びRouting Tableステータスの実施形態例930を示す。STA1 932、STA2 934、STA936についての近隣リストと、Dest=STA1 938及びDest=STA4 940のルーティングテーブルとを示す。
【0165】
STA4によって送信されたRREPは、STA3において受け取られる。STA3は、
図25に示すロジックを実行する。この結果、STA3は、ルートを確認してSTA1にRREPを伝播する。
【0166】
図35の時間基準P48におけるRREP受信及びRREP伝播の結果として、STA3のNeighbor List及びRouting Tableが更新される。
【0167】
図26のステップ578の結果として、STA3は、Dest==STA4のRouting Tableインスタンスを生成して有効にする。
図26のステップ580の結果として、STA3は、STA4のNeighbor Listインスタンスのg.AccessTimeを有効にする。
図26のステップ582の結果として、STA3は、STA4のNeighbor Listインスタンスのd.TxAntSectorを適切な数に設定する。
【0168】
図23のステップ516の結果として、STA3は、Dest==STA1のRouting Tableインスタンスを有効にする。
図23のステップ524の結果として、STA3は、STA1のNeighbor Listインスタンスのd.TxAntSectorを適切な数に設定する。
図23のステップ520の結果として、STA1のNeighbor Listインスタンスのg.AccessTimeに決定されたチャネル時間情報が書き込まれる。さらに、他のNeighbor Listインスタンスのg.AccessTimeが、確認タイムアウト毎にNULLに戻される。この図では、RREP受信及びRREP伝播プロセスの結果として更新されたデータを破線で囲んで示している。
【0169】
2.9.1.8.STA1@P49の近隣リスト及びルーティングテーブル
図43に、STA1@P49のNeighbor List及びRouting Tableステータスの実施形態例950を示す。STA2 952、STA3 954についての近隣リストと、Dest==STA4 960のルーティングテーブルとを示す。
【0170】
STA3が送信したRREPフレームは、STA1において受け取られる。STA1は、RREPフレームを受け取ると、
図25に示すロジックを実行する。STA1は、RREPフレームのOrigSTAフィールドが自機のアドレスに一致すると判断して手順を終了する。
【0171】
この結果、
図35の時間基準P49において、STA1のNeighbor List及びRouting Tableが更新される。
【0172】
図26のステップ578の結果として、STA1は、Dest==STA4のRouting Tableインスタンスを更新する。この時点で、Routing Tableインスタンスのa.NextHopがSTA3に変更され、Routing Tableインスタンスのb.TxAntSecが2に変更される。
図26のステップ580の結果として、STA1は、STA3のNeighbor Listインスタンスのg.AccessTimeを有効にする。
図26のステップ582の結果として、STA1は、STA3のNeighbor Listインスタンスのd.TxAntSectorを適切な数に設定する。さらに、STA2を介したルートはもはや有効でないため、他のNeighbor Listインスタンス(STA2)のg.AccessTimeが除去される。この図では、RREP受信プロセスの結果として更新されたデータを破線で囲んで示している。
【0173】
提示した技術の説明した強化は、様々な無線ネットワーキングノード(例えば、AP及びSTA)内に容易に実装することができる。また、これらの各無線ノードは、少なくとも1つのコンピュータプロセッサ装置(例えば、CPU、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、コンピュータ対応ASICなど)、及び命令を記憶する関連するメモリ(例えば、RAM、DRAM、NVRAM、FLASH、コンピュータ可読媒体など)を含むように実装されることにより、メモリに記憶されたプログラム(命令)がプロセッサ上で実行されて、本明細書で説明した様々なプロセス法のステップを実行することが好ましいと理解されたい。提示した技術は、メモリ及びコンピュータ可読媒体が非一時的であり、従って一時的電子信号を構成しない限り、これらに関して限定するものではない。
【0174】
本明細書では、コンピュータプログラム製品としても実装できる、本技術の実施形態による方法及びシステム、及び/又は手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式又はその他の計算表現のフローチャートを参照して本技術の実施形態を説明することができる。この点、フローチャートの各ブロック又はステップ、及びフローチャートのブロック(及び/又はステップ)の組み合わせ、並びにあらゆる手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式、又は計算表現は、ハードウェア、ファームウェア、及び/又はコンピュータ可読プログラムコードの形で具体化された1又は2以上のコンピュータプログラム命令を含むソフトウェアなどの様々な手段によって実装することができる。理解されるように、このようなあらゆるコンピュータプログラム命令は、以下に限定されるわけではないが、汎用コンピュータ又は専用コンピュータ、又は機械を生産するための他のあらゆるプログラマブル処理装置を含む1又は2以上のコンピュータプロセッサによって実行して、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置上で実行されるコンピュータプログラム命令が、(単複の)特定される機能を実施するための手段を生み出すようにすることができる。
【0175】
従って、本明細書で説明したフローチャートのブロック、並びに手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式、又は計算表現は、(単複の)特定の機能を実行する手段の組み合わせ、(単複の)特定の機能を実行するステップの組み合わせ、及びコンピュータ可読プログラムコード論理手段の形で具体化されるような、(単複の)特定の機能を実行するコンピュータプログラム命令をサポートする。また、本明細書で説明したフローチャートの各ブロック、並びに手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式、又は計算表現、及びこれらの組み合わせは、(単複の)特定の機能又はステップを実行する専用ハードウェアベースのコンピュータシステム、又は専用ハードウェアとコンピュータ可読プログラムコードとの組み合わせによって実装することもできると理解されるであろう。
【0176】
さらに、コンピュータ可読プログラムコードロジックなどの形で具体化されるこれらのコンピュータプログラム命令を、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置に特定の態様で機能するように指示することができる1又は2以上のコンピュータ可読メモリ又はメモリデバイスに記憶して、これらのコンピュータ可読メモリ又はメモリデバイスに記憶された命令が、(単複の)フローチャートの(単複の)ブロック内に指定される機能を実施する命令手段を含む製造の物品を生産するようにすることもできる。コンピュータプログラム命令をコンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置によって実行し、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置上で一連の動作ステップが実行されるようにしてコンピュータで実施される処理を生成し、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置上で実行される命令が、(単複の)フローチャートの(単複の)ブロック、(単複の)手順、(単複の)アルゴリズム、(単複の)ステップ、(単複の)演算、(単複の)数式、又は(単複の)計算表現に特定される機能を実施するためのステップを提供するようにすることもできる。
【0177】
さらに、本明細書で使用する「プログラム」又は「プログラム実行文」という用語は、本明細書で説明した1又は2以上の機能を実行するために1又は2以上のコンピュータプロセッサが実行できる1又は2以上の命令を意味すると理解されるであろう。命令は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで具体化することができる。命令は、装置の非一時的媒体に局所的に記憶することも、又はサーバなどに遠隔的に記憶することもでき、或いは命令の全部又は一部を局所的に又は遠隔的に記憶することもできる。遠隔的に記憶された命令は、ユーザが開始することによって、或いは1又は2以上の要因に基づいて自動的に装置にダウンロード(プッシュ)することができる。
【0178】
さらに、本明細書で使用するプロセッサ、ハードウェアプロセッサ、コンピュータプロセッサ、中央処理装置(CPU)及びコンピュータという用語は、命令、並びに入力/出力インターフェイス及び/又は周辺装置との通信を実行できる装置を示すために同義的に使用されるものであり、プロセッサ、ハードウェアプロセッサ、コンピュータプロセッサ、CPU及びコンピュータという用語は、単一の又は複数の装置、シングルコア装置及びマルチコア装置、及びこれらの変種を含むように意図するものであると理解されるであろう。
【0179】
本明細書の説明から、本開示は、限定ではないが以下の実施形態リストを含む複数の実施形態を含むことができると理解されるであろう。
【0180】
1.指向性送信/受信を用いた局(STA)間無線通信のための装置であって、(a)mm波通信のために構成された無線通信局(STA)を備え、前記mm波通信において、前記STAと装置の近隣のSTAインスタンスとがセクタスイープ及びフィードバックシグナリングを実行してアンテナセクタ情報を交換するように構成され、前記装置は、(b)範囲内の他の無線通信装置への指向性無線送信を発生させるように構成された、前記無線通信局(STA)の送信機と、(c)他の無線通信装置からの無線送信を受け取るように構成された、前記無線通信局(STA)の受信機と、(d)前記送信機及び前記受信機に結合された、自機と他の無線通信装置との間の通信を制御するためのコンピュータプロセッサと、(e)コンピュータプロセッサによって実行可能な命令を記憶する非一時的コンピュータ可読メモリと、をさらに備え、(f)前記命令は、コンピュータプロセッサによって実行された時に、(f)(i)1又は2以上の近隣局との間で、各アンテナセクタの量子化チャネル利得情報又は経路損失情報を交換するステップと、(f)(ii)近隣局との通信から受け取られた量子化チャネル利得情報を記録するステップと、(f)(iii)発信局から宛先局への多重ホップルーティング経路を確立する際に、近隣局へのルート発見メッセージを生成するステップと、(f)(iv)(f)(iv)(A)ルート発見メッセージを生成した近隣局との間のリンクメトリックを決定し、(f)(iv)(B)ルーティング経路における潜在的ネクストホップとしての近隣局への送信アンテナセクタを決定する際に干渉影響を考慮し、(f)(iv)(C)局が宛先局でない場合にルート発見メッセージを近隣局に伝播することによって、受け取ったルート発見メッセージを処理するステップと、を実行する、装置。
【0181】
2.使用する複数のアンテナセクタをチェックし、近隣局(STA)へのリンク品質及び/又は干渉影響に基づいてセクタを選択することに応答して、干渉影響が考慮される、前述のいずれかの実施形態に記載の装置。
【0182】
3.多重ホップルーティング経路を確立する際の干渉影響の決定において、近隣局におけるチャネル時間利用及び進行中のトラフィックへの影響が利用される、前述のいずれかの実施形態に記載の装置。
【0183】
4.前記無線通信局(STA)は、ルート発見が行われる前に近隣局との間で量子化チャネル利得情報及びトラフィックアクティビティ情報を相互に交換する、前述のいずれかの実施形態に記載の装置。
【0184】
5.発信局から宛先局への多重ホップルーティング経路にチャネル時間が割り当てられる、前述のいずれかの実施形態に記載の装置。
【0185】
6.ルート発見メッセージ内の割り当てチャネル時間情報の送信に応答してチャネル時間が割り当てられる、前述のいずれかの実施形態に記載の装置。
【0186】
7.ルーティング経路を決定する際に、ルート発見メッセージからの順方向リンクメトリック及び逆方向リンクメトリックを蓄積して利用するステップをさらに含む、前述のいずれかの実施形態に記載の装置。
【0187】
8.前記発見メッセージは、ルート発見プロセス中に受信信号品質情報を送信するために使用される、前述のいずれかの実施形態に記載の装置。
【0188】
9.指向性送信/受信を用いた局(STA)間無線通信のための装置であって、(a)mm波通信のために構成された無線通信局(STA)を備え、前記mm波通信において、前記STAと装置の近隣のSTAインスタンスとがセクタスイープ及びフィードバックシグナリングを実行してアンテナセクタ情報を交換するように構成され、前記装置は、(b)範囲内の他の無線通信装置への指向性無線送信を発生させるように構成された、前記無線通信局(STA)の送信機と、(c)他の無線通信装置からの無線送信を受け取るように構成された、前記無線通信局(STA)の受信機と、(d)前記送信機及び前記受信機に結合された、自機と他の無線通信装置との間の通信を制御するためのコンピュータプロセッサと、(e)コンピュータプロセッサによって実行可能な命令を記憶する非一時的コンピュータ可読メモリと、をさらに備え、(f)前記命令は、コンピュータプロセッサによって実行された時に、(f)(i)1又は2以上の近隣局との間で、各アンテナセクタの量子化チャネル利得情報又は経路損失情報を交換するステップと、(f)(ii)近隣局との通信から受け取られた量子化チャネル利得情報を記録するステップと、(f)(iii)発信局から宛先局への多重ホップルーティング経路を確立する際に、近隣局へのルート発見メッセージを生成するステップと、(f)(iv)(f)(iv)(A)ルート発見メッセージを生成した近隣局との間のリンクメトリックを決定し、(f)(iv)(B)ルーティング経路における潜在的ネクストホップとしての近隣局への送信アンテナセクタを決定する際に干渉影響を考慮し、(f)(iv)(C)局が宛先局でない場合にルート発見メッセージを近隣局に伝播することによって、受け取ったルート発見メッセージを処理するステップと、を実行し、(f)(v)使用する複数のアンテナセクタをチェックし、近隣局(STA)へのリンク品質及び/又は干渉影響に基づいてセクタを選択することに応答して、干渉影響が考慮され、(f)(vi)多重ホップルーティング経路を確立する際の干渉影響の決定において、近隣局におけるチャネル時間利用及び進行中のトラフィックへの影響が利用される、装置。
【0189】
10.前記無線通信局(STA)は、ルート発見が行われる前に近隣局との間で量子化チャネル利得情報及びトラフィックアクティビティ情報を相互に交換する、前述のいずれかの実施形態に記載の装置。
【0190】
11.発信局から宛先局への多重ホップルーティング経路にチャネル時間が割り当てられる、前述のいずれかの実施形態に記載の装置。
【0191】
12.ルート発見メッセージ内の割り当てチャネル時間情報の送信に応答してチャネル時間が割り当てられる、前述のいずれかの実施形態に記載の装置。
【0192】
13.ルーティング経路を決定する際に、ルート発見メッセージからの順方向リンクメトリック及び逆方向リンクメトリックを蓄積して利用するステップをさらに含む、前述のいずれかの実施形態に記載の装置。
【0193】
14.前記発見メッセージは、ルート発見プロセス中に受信信号品質情報を送信するために使用される、前述のいずれかの実施形態に記載の装置。
【0194】
15.指向性送信/受信を用いた局(STA)間無線通信の実行方法であって、(a)範囲内の他の無線通信装置への指向性無線送信を発生させるとともに他の無線通信装置からの無線送信を受け取るように構成されたSTA間でmm波通信及びセクタスイープ及びフィードバックシグナリングを行ってアンテナセクタ情報を交換するように構成された1又は2以上の近隣局(STA)との間で、各アンテナセクタの量子化チャネル利得情報又は経路損失情報を交換するステップと、(b)近隣局との通信から受け取られた量子化チャネル利得情報を記録するステップと、(c)発信局から宛先局への多重ホップルーティング経路を確立する際に、近隣局へのルート発見メッセージを生成するステップと、(d)(d)(A)ルート発見メッセージを生成した近隣局との間のリンクメトリックを決定し、(d)(B)ルーティング経路における潜在的ネクストホップとしての近隣局への送信アンテナセクタを決定する際に干渉影響を考慮し、(d)(C)局が宛先局でない場合にルート発見メッセージを近隣局に伝播することによって、受け取ったルート発見メッセージを処理するステップと、を含む方法。
【0195】
16.使用する複数のアンテナセクタをチェックし、近隣局(STA)へのリンク品質及び/又は干渉影響に基づいてセクタを選択することに応答して、干渉影響が考慮される、前述のいずれかの実施形態に記載の方法。
【0196】
17.多重ホップルーティング経路を確立する際の干渉影響の決定において、近隣局におけるチャネル時間利用及び進行中のトラフィックへの影響が利用される、前述のいずれかの実施形態に記載の方法。
【0197】
18.発信局から宛先局への多重ホップルーティング経路にチャネル時間が割り当てられる、前述のいずれかの実施形態に記載の方法。
【0198】
19.ルーティング経路を決定する際に、ルート発見メッセージからの順方向リンクメトリック及び逆方向リンクメトリックを蓄積して利用するステップをさらに含む、前述のいずれかの実施形態に記載の方法。
【0199】
20.前記発見メッセージは、ルート発見プロセス中に受信信号品質情報を送信するために使用される、前述のいずれかの実施形態に記載の方法。
【0200】
本明細書の説明は多くの詳細を含んでいるが、これらは本開示の範囲を限定するものではなく、現在のところ好ましい実施形態の一部を例示するものにすぎないと解釈すべきである。従って、本開示の範囲は、当業者に明らかになると考えられる他の実施形態も完全に含むと理解されるであろう。
【0201】
特許請求の範囲における単数形の要素についての言及は、別途明確に示していない限り「唯一の」を意味するものではなく、むしろ「1又は2以上の」を意味するものである。当業者に周知の本開示の実施形態の要素の構造的、化学的及び機能的同等物も、引用によって本明細書に明確に組み入れられ、本特許請求の範囲に含まれるように意図される。さらに、本開示の要素、構成要素又は方法ステップは、これらが特許請求の範囲に明示されているかどうかにかかわらず、一般に公開されるように意図するものではない。本明細書における請求項の要素については、その要素が「~のための手段」という表現を使用して明確に示されていない限り、「ミーンズプラスファンクション」の要素として解釈すべきではない。また、本明細書における請求項の要素については、その要素が「~のためのステップ」という表現を使用して明確に示されていない限り、「ステッププラスファンクション」の要素として解釈すべきではない。