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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】接触力測定方法、及び、集電装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20221214BHJP
   B60L 5/22 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
G01L5/00 B
B60L5/22 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020019318
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2021124438
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【弁理士】
【氏名又は名称】稲田 弘明
(72)【発明者】
【氏名】平川 裕雅
(72)【発明者】
【氏名】臼田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】小山 達弥
(72)【発明者】
【氏名】小林 樹幸
(72)【発明者】
【氏名】長尾 恭平
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第4040017(JP,B2)
【文献】特許第5280763(JP,B2)
【文献】特許第3618062(JP,B2)
【文献】特許第4476745(JP,B2)
【文献】特許第4964099(JP,B2)
【文献】特許第3790925(JP,B2)
【文献】特許第4777812(JP,B2)
【文献】特許第3888750(JP,B2)
【文献】特許第3722463(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L5
B60L5
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道軌道の上部に設けられた架線と当接するとともにまくらぎ方向に沿って配列された複数のすり板片を有するすり板体と、
まくらぎ方向に沿って延在し前記複数のすり板片を連結するとともに可撓性を有する連結部材と、
前記連結部材におけるまくらぎ方向に離散した複数個所を支持する複数の連結部材支持部と、
前記連結部材支持部の前記連結部材側とは反対側の端部がそれぞれ接続される荷重伝達部材と、
前記連結部材支持部とまくらぎ方向に離間して配置された舟体取付部において前記荷重伝達部材に取り付けられる舟体と
を有する集電装置における前記すり板体と前記架線との接触力測定方法であって、
前記荷重伝達部材における前記舟体取付部と前記連結部材支持部との間の領域のひずみを測定し、前記ひずみを用いて前記接触力を算出すること
を特徴とする接触力測定方法。
【請求項2】
前記ひずみは、せん断ひずみであること
を特徴とする請求項1に記載の接触力測定方法。
【請求項3】
前記荷重伝達部材における前記舟体取付部と前記連結部材支持部との間の領域は、まくらぎ方向に沿って延在する梁状に形成されるとともに、その中間部にひずみゲージを設けて前記ひずみを測定すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接触力測定方法。
【請求項4】
鉄道軌道の上部に設けられた架線と当接するとともにまくらぎ方向に沿って配列された複数のすり板片を有するすり板体と、
まくらぎ方向に沿って延在し前記複数のすり板片を連結するとともに可撓性を有する連結部材と、
前記連結部材におけるまくらぎ方向に離散した複数個所を支持する複数の連結部材支持部と、
前記連結部材支持部の前記連結部材側とは反対側の端部がそれぞれ接続される荷重伝達部材と、
前記荷重伝達部材が取り付けられる舟体と
を有する集電装置における前記すり板と前記架線との接触力測定方法であって、
前記荷重伝達部材と前記舟体との間にロードセルを配置し、前記ロードセルの出力を用いて前記接触力を算出すること
を特徴とする接触力測定方法。
【請求項5】
前記連結部材支持部の少なくとも一部が、前記連結部材を弾性的に支持する弾性部材であること
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の接触力測定方法。
【請求項6】
前記すり板片の上下方向の加速度を測定し、前記加速度を前記接触力の算出に用いること
を特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の接触力測定方法。
【請求項7】
鉄道軌道の上部に設けられた架線を当接するとともにまくらぎ方向に沿って配列された複数のすり板片を有するすり板体と、
まくらぎ方向に沿って延在し前記複数のすり板片を連結するとともに可撓性を有する連結部材と、
前記連結部材におけるまくらぎ方向に離間した複数個所を支持する複数の連結部材支持部と、
前記連結部材支持部の前記連結部材側とは反対側の端部がそれぞれ接続される荷重伝達部材と、
前記連結部材支持部とまくらぎ方向に離間して配置された舟体取付部において前記荷重伝達部材に取り付けられる舟体と、
前記荷重伝達部材における前記舟体取付部と前記連結部材支持部との間の領域のひずみを測定するひずみ測定手段と
を備えることを特徴とする集電装置。
【請求項8】
鉄道軌道の上部に設けられた架線と当接するとともにまくらぎ方向に沿って配列された複数のすり板片を有するすり板体と、
まくらぎ方向に沿って延在し前記複数のすり板片を連結するとともに可撓性を有する連結部材と、
前記連結部材におけるまくらぎ方向に離散した複数個所を支持する複数の連結部材支持部と、
前記連結部材支持部の前記連結部材側とは反対側の端部がそれぞれ接続される荷重伝達部材と、
前記荷重伝達部材が取り付けられる舟体と、
前記荷重伝達部材と前記舟体との間に配置されたロードセルと
を備えることを特徴とする集電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まくらぎ方向に配列されかつ相対変位可能に支持された複数のすり板片を有するたわみ板式のすり板体を持つ集電装置のトロリ線との接触力測定方法、及び、このような接触力測定方法が行われる集電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電車、電気機関車等の電動の鉄道車両には、トロリ線などの架空電車線から電力を車両に導くための集電装置であるパンタグラフが設けられる。
パンタグラフは、まくらぎ方向に沿った長手方向を有する舟体を、車体に対してリンク機構などを有する枠組によって上下方向に移動可能に支持するとともに、舟体の上部にトロリ線等と摺動して通電するすり板体を設けて構成されている。
【0003】
このようなパンタグラフに関する従来技術として、例えば特許文献1,2には、トロリ線への追従性を向上するため、上下方向に相対変位可能な状態でまくらぎ方向(車幅方向)に配列された複数のすり板片によってすり板を構成する、いわゆるたわみ板式のものが記載されている。
特許文献3には、まくらぎ方向に多分割されたすり板体を有するパンタグラフのトロリ線に対する接触力を測定する方法であって、すり板体をトロリ線方向に付勢する微動バネのバネ反力を測定し、すり板体と舟体との摩擦力及び当接力の上下方向成分を加味して接触力を求めることが記載されている。
特許文献4には、パンタグラフの舟体に複数の加速度計を取り付けて舟体の曲げ1次振動モードを把握し、舟体の慣性力を求めることが記載されている。そして、別途求めた舟体への作用力から慣性力を差し引きすることにより、トロリ線とパンタグラフとの間の接触力を求めることが記載されている。
特許文献5には、パンタグラフのバネの画像を撮影範囲とするエリアカメラ等の撮影手段により得た画像を画像処理して、バネの反力と慣性力とを検出し、パンタグラフとトロリ線との接触力を求めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-137835号公報
【文献】特開2005-160266号公報
【文献】特開2010- 25677号公報
【文献】特開2001- 18692号公報
【文献】特開2010-169506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パンタグラフの舟体は、車体から突き出した状態で支持され使用されるため、車両の走行時には空気抵抗及び空力騒音の発生源となる。
このため、舟体周辺部の構成は極力コンパクトとすることが求められる。
このような小型かつたわみ板式のすり板体を有する集電装置においても、すり板体と架線との接触力を精度よく測定するニーズはあるが、ばね反力を直接測定するための機器類(例えばロードセル等)を、多分割されたすり板片をまくらぎ方向に離散した箇所で支持する複数のばねにそれぞれ設けることは、スペース的に非常に困難である。
また、特許文献5のように画像処理を用いてばね反力等を求めることも考えられるが、このような手法は接触力における比較的高周波の成分の検出には適しているが、低周波の静的な接触力を適切に検出することは困難である。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、たわみ板式のすり板体を有する集電装置におけるすり板体と架線との接触力を簡素な構造により精度よく測定可能な接触力測定方法、及び、集電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明の接触力測定方法は、鉄道軌道の上部に設けられた架線と当接するとともにまくらぎ方向に沿って配列された複数のすり板片を有するすり板体と、まくらぎ方向に沿って延在し前記複数のすり板片を連結するとともに可撓性を有する連結部材と、前記連結部材におけるまくらぎ方向に離散した複数個所を支持する複数の連結部材支持部と、前記連結部材支持部の前記連結部材側とは反対側の端部がそれぞれ接続される荷重伝達部材と、前記連結部材支持部とまくらぎ方向に離間して配置された舟体取付部において前記荷重伝達部材に取り付けられる舟体とを有する集電装置における前記すり板体と前記架線との接触力測定方法であって、前記荷重伝達部材における前記舟体取付部と前記連結部材支持部との間の領域のひずみを測定し、前記ひずみを用いて前記接触力を算出することを特徴とする。
これによれば、架線からすり板体に作用する接触力は、荷重伝達部材における舟体取付部と連結部材支持部との間でせん断ひずみ等のひずみを生じさせる。
そこで、荷重伝達部材のひずみを測定することにより、接触力を精度よく検出することができる。
このようなひずみは、荷重伝達部材に添付されるひずみゲージなどを用いて省スペースかつコンパクトな構成により測定することができる。
本発明において、前記ひずみは、せん断ひずみである構成とすることができる。
【0007】
本発明において、前記荷重伝達部材における前記舟体取付部と前記連結部材支持部との間の領域は、まくらぎ方向に沿って延在する梁状に形成されるとともに、その中間部にひずみゲージを設けて前記ひずみを測定する構成とすることができる。
これによれば、簡単な構成により精度よくひずみを測定し、上述した効果を得ることができる。
【0008】
本発明の他の接触力測定方法は、鉄道軌道の上部に設けられた架線と当接するとともにまくらぎ方向に沿って配列された複数のすり板片を有するすり板体と、まくらぎ方向に沿って延在し前記複数のすり板片を連結するとともに可撓性を有する連結部材と、前記連結部材におけるまくらぎ方向に離散した複数個所を支持する複数の連結部材支持部と、前記連結部材支持部の前記連結部材側とは反対側の端部がそれぞれ接続される荷重伝達部材と、前記荷重伝達部材が取り付けられる舟体とを有する集電装置における前記すり板と前記架線との接触力測定方法であって、前記荷重伝達部材と前記舟体との間にロードセルを配置し、前記ロードセルの出力を用いて前記接触力を算出することを特徴とする。
これによれば、架線からすり板体に作用し、複数の連結部材支持部を介して伝達される接触力を荷重伝達部材に集約し、荷重伝達部材と舟体との間でロードセルにより測定することにより、簡単な構成により接触力を精度よく測定することができる。
【0009】
本発明において、前記連結部材支持部の少なくとも一部が、前記連結部材を弾性的に支持する弾性部材である構成とすることができる。
本発明においては、連結部材支持部の一部または全部が例えばばねなどの弾性部材である場合であっても、荷重伝達部材のひずみ、あるいは、荷重伝達部材と舟体との間の荷重を測定することにより、架線とすり板体との接触力を適切かつ簡単に測定することができる。
【0010】
本発明において、前記すり板片の上下方向の加速度を測定し、前記加速度を前記接触力の算出に用いる構成とすることができる。
これによれば、荷重伝達部材のひずみ又はロードセルの検出荷重により比較的低周波の接触力(静的な接触力)を測定するとともに、すり板片の上下方向の加速度から比較的高周波の接触力(すり板片の振動などに伴う動的な接触力)を演算することにより、広範な周波数帯域で精度よく接触力を測定することができる。
ここで、すり板片の上下方向の加速度の測定は、例えば、すり板片を撮像した画像に基づいて行うことができる。また、すり板片に上下方向の加速度を検出する加速度計を設けてもよい。
【0011】
本発明の集電装置は、鉄道軌道の上部に設けられた架線を当接するとともにまくらぎ方向に沿って配列された複数のすり板片を有するすり板体と、まくらぎ方向に沿って延在し前記複数のすり板片を連結するとともに可撓性を有する連結部材と、前記連結部材におけるまくらぎ方向に離間した複数個所を支持する複数の連結部材支持部と、前記連結部材支持部の前記連結部材側とは反対側の端部がそれぞれ接続される荷重伝達部材と、前記連結部材支持部とまくらぎ方向に離間して配置された舟体取付部において前記荷重伝達部材に取り付けられる舟体と、前記荷重伝達部材における前記舟体取付部と前記連結部材支持部との間の領域のひずみを測定するひずみ測定手段とを備えることを特徴とする。
本発明の他の集電装置は、鉄道軌道の上部に設けられた架線と当接するとともにまくらぎ方向に沿って配列された複数のすり板片を有するすり板体と、まくらぎ方向に沿って延在し前記複数のすり板片を連結するとともに可撓性を有する連結部材と、前記連結部材におけるまくらぎ方向に離散した複数個所を支持する複数の連結部材支持部と、前記連結部材支持部の前記連結部材側とは反対側の端部がそれぞれ接続される荷重伝達部材と、前記荷重伝達部材が取り付けられる舟体と、前記荷重伝達部材と前記舟体との間に配置されたロードセルとを備えることを特徴とする。
これらの各発明によれば、上述した接触力測定方法に係る発明と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、たわみ板式のすり板体を有する集電装置におけるすり板体と架線との接触力を簡素な構造により精度よく測定可能な接触力測定方法、及び、集電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用した集電装置の第1実施形態の模式的外観斜視図である。
図2】第1実施形態の集電装置におけるすり板体支持構造の模式的断面図である。
図3】本発明を適用した集電装置の第2実施形態におけるすり板体支持構造の模式的断面図である。
図4】本発明を適用した集電装置の第3実施形態におけるすり板体支持構造の模式的断面図である。
図5】本発明を適用した集電装置の第4実施形態におけるすり板体支持構造の模式的断面図である。
図6】本発明を適用した集電装置の第5実施形態におけるすり板体支持構造の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明を適用した接触力測定方法、及び、集電装置の第1実施形態について説明する。
第1実施形態において、集電装置は、例えば高速旅客用電車などの車体上部に設けられ、まくらぎ方向に配列された複数のすり板片を有するたわみ板式(多分割式)のすり板体を有するパンタグラフである。
【0015】
図1は、第1実施形態の集電装置の模式的外観斜視図である。
図1に示すように、集電装置であるパンタグラフ1は、車体Bの屋根構上部に取り付けられ、車体Bの上方に配置されたトロリ線(架線)Tから集電を行うものである。
パンタグラフ1は、舟体10、枠組20、すり板体30、ホーンH等を有する。
舟体10は、トロリ線Tの下方にこれと隣接して配置され、まくらぎ方向に沿った長手方向を有する部材である。
舟体10は、すり板体30及びその支持構造を保持する部材である。
すり板体30の支持構造に関しては、後に詳しく説明する。
【0016】
枠組20は、舟体10の下部と車体Bの上部との間に設けられ、舟体10を昇降可能に支持するとともに、パンタグラフ1の使用時(集電時)には、舟体10を上方へ付勢した状態で支持する例えばリンク状の機構である。
【0017】
すり板体30は、トロリ線Tと摺動可能な状態で当接し、トロリ線Tと導通して集電を行う部材である。
すり板体30は、例えば鉄系の焼結合金等によって形成された複数のすり板片31(31a乃至31h:図2等を参照)を、可撓性を有する連結部材によりまくらぎ方向に沿って配列したいわゆるたわみ板式(多分割式)のものである。
【0018】
ホーンHは、舟体10の左右両端部から外側へ突出して設けられ、突端部が下垂するよう上方が凸となる弧状に湾曲して形成されている。
ホーンHは、トロリ線Tが舟体10の下方へもぐり込むことを防止する機能を有する。
【0019】
以下、舟体10によるすり板体30の支持構造について、より詳細に説明する。
図2は、第1実施形態の集電装置におけるすり板体支持構造の模式的断面図(図1のII-II部矢視断面図)である。
図2は、舟体10をまくらぎ方向及び鉛直方向と平行な平面で切って見た状態を示している。また、枠組20及びホーンHは図示を省略する。(後述する図3乃至図5において同様)
すり板体30は、たわみ板40、荷重伝達部材50、ばね60を用いて、舟体10に取り付けられている。
なお、第1実施形態においては、すり板体30のすり板片31は、例えば、8枚が配列されており、図2では、各すり板片31に、a乃至hの添え字を順次付して図示している。
【0020】
舟体10は、例えば金属系の材料によって一体に形成された底面部11、段部12、突起13、側壁部14を有し、側壁部14の上部には、補助すり板70が取り付けられている。
底面部11は、舟体10の下部に設けられ、水平面にほぼ沿って延在する平板状の部分である。
段部12は、底面部11のまくらぎ方向における両端部を段状に高くした部分である。
段部12には、荷重伝達部材50の本体部51のまくらぎ方向における両端部が載置され、固定される。
【0021】
突起13(13a,13b)は、底面部11から上方へ突出した柱状の部分である。
突起13の突端面には、荷重伝達部材50の本体部51のまくらぎ方向における中間部が載置され、固定される。
突起13は、例えば、まくらぎ方向に離間して1対が設けられる。
図2においては、各突起13に、a,bの添え字を付して図示している。
荷重伝達部材50の本体部51と、段部12、突起13との取付箇所は、本発明にいう舟体取付部として機能する。
側壁部14は、舟体10のまくらぎ方向における両端部に設けられ、底面部11、段部12に対して上方へ突出して形成されている。
【0022】
たわみ板40は、多分割のすり板体30を構成する各すり板片31a乃至31hを連結する連結部材である。
たわみ板40は、例えばばね鋼などの可撓性を有し、弾性変形を許容する材料によって、まくらぎ方向に沿った長手方向を有する帯板状に形成されている。
各すり板片31a乃至31hは、たわみ板40の上面部に取り付けられ、たわみ板40が弾性変形することによって、舟体10に対して上下方向に相対変位可能となっている。
【0023】
荷重伝達部材50は、トロリ線Tとすり板体30との間で作用する接触力の反力が入力されるとともに、この力を舟体10に伝達する棒状の部材(心棒)である。
荷重伝達部材50の本体部51は、まくらぎ方向に沿った長手方向を有する梁状に形成されている。
本体部51は、例えば、矩形状の横断面形状を有する角柱状に形成される。
本体部51は、後述するように、すり板体30からたわみ板40等を介して入力される荷重によってせん断ひずみが生じ、このせん断ひずみを測定して荷重の検出を行うための感受体として利用される。
【0024】
荷重伝達部材50は、支柱部52(52a,52b)を有する。
支柱部52は、本体部51のまくらぎ方向における両端部近傍の領域から、上方へ突出して形成された柱状の部分である。
支柱部52の上端部には、たわみ板40の両端部が取り付けられる。
図2において、左右の各支柱部52には、a,bの添え字を付して図示している。
【0025】
ばね60は、たわみ板40を荷重伝達部材50に対して弾性的に(上下方向に弾性変位可能に)支持するものである。
ばね60及び上述した支柱部52は、すり板体30とトロリ線Tとの間で作用する接触力の反力を、たわみ板40(連結部材)を介して荷重伝達部材50の本体部51に伝達する、本発明の連結部材支持部として機能する。
ばね60として、例えば、上下方向に沿った中心軸を有する圧縮コイルばね等の各種ばね要素を用いることができる。
ばね60は、例えば第1実施形態の場合には、まくらぎ方向に分散して複数設けられるが、1個のみ設ける構成としてもよい。
例えば、第1実施形態の場合には、ばね60は、4箇所に配置されている。
図2において、これらのばね60には、a乃至dの添え字を付して図示している。
【0026】
各ばね60のまくらぎ方向における位置について以下説明する。
ばね60aは、すり板片31aとすり板片31bとの間に設けられている。
ばね60bは、すり板片31cとすり板片31dとの間に設けられている。
ばね60cは、すり板片31eとすり板片31fとの間に設けられている。
ばね60dは、すり板片31gとすり板片31hとの間に設けられている。
【0027】
補助すり板70は、舟体10の上面部であって、すり板体30に対してまくらぎ方向外側の領域に設けられた部材である。
補助すり板70は、舟体10に対するトロリ線Tのまくらぎ方向の相対変位が著大であり、すり板体30からはみ出した際に、トロリ線Tと摺動する部分である。
補助すり板70の上面部の高さは、すり板体30のすり板片31と実質的に同等となるように配置されている。
【0028】
荷重伝達部材50の本体部51には、以下説明するひずみゲージ80(80a乃至80d)が取り付けられている。
ひずみゲージ80は、電気絶縁物のシートによって形成された基材の上に、例えば格子状にフォトエッチング加工した抵抗箔を取り付けて構成されている。
ひずみゲージ80は、このような格子状の抵抗箔を、直交2軸方向にそれぞれ配置した構成を有する。各格子の軸線方向は、荷重伝達部材50の本体部51の長手方向(まくらぎ方向)に対して、それぞれ例えば45°傾斜するように配置される。
ひずみゲージ80は、本体部51の側面部に設けられ、本体部51に作用するせん断ひずみを検出する機能を有する。
図2において、これらのひずみゲージ80には、a乃至fの添え字を付して図示している。
【0029】
各ひずみゲージ80のまくらぎ方向における位置について以下説明する。
ひずみゲージ80aは、荷重伝達部材50の本体部51の一方の端部と、支柱部52aとの間に設けられている。
ひずみゲージ80bは、ばね60aと突起13aとの間に設けられている。
ひずみゲージ80cは、突起13aとばね60bとの間に設けられている。
ひずみゲージ80dは、ばね60cと突起13bとの間に設けられている。
ひずみゲージ80eは、突起13bとばね60dとの間に設けられている。
ひずみゲージ80fは、荷重伝達部材50の本体部51の他方の端部と、支柱部52bとの間に設けられている。
【0030】
以上説明したひずみゲージ80の配置により、各すり板片31a乃至31hがトロリ線Tから受ける下向きの荷重は、全ていずれかのひずみゲージ80a乃至80fにおいてせん断ひずみにとして検出、測定することが可能となる。
例えば、支柱部52a、及び、ばね60aに作用する荷重は、ひずみゲージ80a,80bにおいて検出されるせん断ひずみにより測定することができる。
また、ばね60b,60cに作用する荷重は、ひずみゲージ80c,80dにおいて検出されるせん断ひずみにより測定することができる。
また、支柱部52b、及び、ばね60dに作用する荷重は、ひずみゲージ80e,80fにおいて検出されるせん断ひずみにより測定することができる。
【0031】
第1実施形態においては、トロリ線Tとすり板体30との接触力のうち、比較的低周波数の領域(静的な領域)を上述したひずみゲージ80の出力に基づいて測定し、比較的高周波の領域(動的な領域)は、すり板体30を構成する各すり板片31a乃至31hの加速度に基づいて算出している。
各すり板片31a乃至31hの上下方向の加速度は、例えば、舟体10に図示しないカメラ等の撮像手段を設け、撮像した画像に画像処理を施して求めることができる。
【0032】
以上説明した第1実施形態によれば、トロリ線Tからすり板体30に作用する接触力は、荷重伝達部材50における段部12又は突起13と、支柱部52又はばね60との間で、せん断ひずみを発生させる。そこで、荷重伝達部材50の本体部51に添付されるひずみゲージ80により荷重伝達部材50の本体部51のせん断ひずみを測定することにより、省スペースかつコンパクトな構成により、複数の支柱部52、ばね60を介して複雑な経路により入力される接触力を、舟体10への伝達経路の途中で荷重伝達部材50のせん断ひずみとして捉え、精度よく検出することができる。
また、荷重伝達部材50の本体部51をまくらぎ方向に沿って延在する梁状に形成することにより、簡単な構成により精度よくせん断ひずみを測定し、上述した効果を得ることができる。
また、荷重伝達部材50の本体部51のせん断ひずみにより、接触力における比較的低周波の成分を測定するとともに、すり板片31の上下方向の加速度から比較的高周波の成分を演算することにより、広範な周波数帯域で精度よく接触力を測定することができる。
【0033】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した接触力測定方法、及び、集電装置の第2実施形態について説明する。
以下説明する各実施形態において、従前の実施形態と共通する箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図3は、第2実施形態の集電装置におけるすり板体支持構造の模式的断面図である。
【0034】
図3に示すように、第2実施形態においては、荷重伝達部材50の本体部51における支柱部52よりもまくらぎ方向外側の部分は設けられていない。
すなわち、第2実施形態では、支柱部52は、本体部51の両端部から上方へ突出している。
これに伴い、段部12、ひずみゲージ80a,80fも省略されている。
第2実施形態においては、支柱部52a、及び、ばね60aに作用する荷重は、ひずみゲージ80bにおいて検出されるせん断ひずみにより測定することができる。
また、支柱部52b、及び、ばね60dに作用する荷重は、ひずみゲージ80eにおいて検出されるせん断ひずみにより測定することができる。
以上説明した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と実質的に同様の効果に加え、さらに、構造をより簡素化し、軽量かつコンパクトな構成により接触力を測定することができる。
【0035】
<第3実施形態>
次に、本発明を適用した接触力測定方法、及び、集電装置の第3実施形態について説明する。
図4は、第3実施形態の集電装置におけるすり板体支持構造の模式的断面図である。
図4に示すように、第3実施形態の集電装置は、第1実施形態の集電装置から、舟体10の支柱13a,13b、及び、ひずみゲージ80b,80c,80d,80eを取り除いたものである。
第3実施形態においては、すり板体30からたわみ板40を介して荷重伝達部材50に入力される接触力の低周波成分は、全てひずみゲージ80a,80fにより検出することが可能である。
以上説明した第3実施形態によれば、荷重伝達部材50が両端部のみの支持であっても、強度面等に問題がない場合には、装置の構成を簡素化することができる。
【0036】
<第4実施形態>
次に、本発明を適用した接触力測定方法、及び、集電装置の第4実施形態について説明する。
図5は、第4実施形態の集電装置におけるすり板支持構造の模式的断面図である。
図5に示すように、第4実施形態の集電装置は、第1実施形態の集電装置の構成において、補助すり板70を舟体10から離間させるとともに、そのまくらぎ方向内側の端部を、たわみ板40の端部を介して、荷重伝達部材50の支柱部52の上端部に固定したものである。
以上説明した第4実施形態によれば、トロリ線Tがすり板体30から外れて補助すり板70に当接している状態であっても、荷重伝達部材50に設けられたひずみゲージ80により、トロリ線Tと補助すり板70との接触力を測定することができる。
【0037】
<第5実施形態>
次に、本発明を適用した接触力測定方法、及び、集電装置の第5実施形態について説明する。
図6は、第5実施形態の集電装置におけるすり板体支持構造の模式的断面図である。
図6に示すように、第3実施形態においては、第2実施形態における突起13a、13b、及び、ひずみゲージ80b,80c,80d,80eに代えて、以下説明するロードセル90(90a,90b,90c,90d)を有する。
【0038】
ロードセル90は、荷重伝達部材50の下部と舟体10の底面部11の上面との間に作用する鉛直方向に沿った圧縮荷重を測定する荷重測定手段である。
各ロードセル90のまくらぎ方向における位置について以下説明する。
ロードセル90aは、支柱部52aの直下に設けられている。
ロードセル90bは、ばね60a,60bの間に設けられている。
ロードセル90cは、ばね60c,60dの間に設けられている。
ロードセル90dは、支柱部52bの直下に設けられている。
【0039】
第5実施形態においては、上述した各実施形態におけるひずみゲージ80の出力に代えて、ロードセル90の出力を用いて接触力の低周波成分を測定する。
以上説明した第5実施形態によれば、トロリ線Tからすり板体30に作用し、複数の支柱部52、ばね60を介して伝達される接触力を荷重伝達部材50に集約し、荷重伝達部材50と舟体10との間でロードセル90により測定することにより、簡単な構成により接触力を精度よく測定することができる。
【0040】
(他の実施形態)
なお、本発明は上述した各実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。
(1)接触力測定方法及び集電装置の詳細な構成は、上述した各実施形態に限定されず、適宜変更することが可能である。
例えば、集電装置を構成する各部材の形状、構造、材質、製法、数量、配置などは、適宜変更することが可能である。
(2)第1乃至第4実施形態においては、荷重伝達部材のせん断ひずみに基づいて接触力を測定しているが、これに代えて、荷重伝達部材の曲げひずみ、軸ひずみ等の他種のひずみに基づいて接触力を測定する構成としてもよい。
(3)各実施形態においては、複数のすり板片を、弾性変形を許容するたわみ板で連結することによりすり板体を構成しているが、たわみ板式すり板体の構成はこれに限らず、適宜変更することができる。
例えば、連結部材がヒンジ等の回動許容部を有し、その回動によってすり板体が可撓性を有するよう構成してもよい。
(4)各実施形態では、すり板片の上下方向加速度を、カメラ等の撮像手段により撮像した画像に基づいて測定しているが、撮像手段として、例えばラインCCD等を用いてもよい。
また、加速度センサの設置が可能である場合には、すり板片に加速度センサを設けて加速度を検出する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 パンタグラフ 10 舟体
11 底面部 12 段部
13(13a,13b) 突起 14 側壁部
20 枠組 30 すり板体
31(31a~31h) すり板片 H ホーン
40 たわみ板 50 荷重伝達部材
51 本体部 52(52a,52b) 支柱部
60(60a~60d) ばね 70 補助すり板
80(80a~80f) ひずみゲージ
90(90a~90d) ロードセル
図1
図2
図3
図4
図5
図6