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特許7194134リパーゼ変異体およびこれをコードするポリヌクレオチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】リパーゼ変異体およびこれをコードするポリヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/55 20060101AFI20221214BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221214BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221214BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221214BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221214BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221214BHJP
   C12N 9/20 20060101ALI20221214BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20221214BHJP
【FI】
C12N15/55 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N9/20
A01H5/00 A
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020033861
(22)【出願日】2020-02-28
(62)【分割の表示】P 2018090736の分割
【原出願日】2013-01-25
(65)【公開番号】P2020089391
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】12153817.7
(32)【優先日】2012-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500586299
【氏名又は名称】ノボザイムス アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】ルイーゼ エルランドセン
(72)【発明者】
【氏名】カルステン ヘルスレウ ハンセン
(72)【発明者】
【氏名】イェスパー ビンド
(72)【発明者】
【氏名】アラン スベンドセン
(72)【発明者】
【氏名】カルステン ペーター ソンクセン
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-501153(JP,A)
【文献】特表2003-520021(JP,A)
【文献】特表2011-508755(JP,A)
【文献】特表2010-512795(JP,A)
【文献】特表2009-523900(JP,A)
【文献】特表2008-546863(JP,A)
【文献】特許第6751113(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
C12N 9/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リパーゼ変異体を取得する方法であって、
親リパーゼに、配列番号2の成熟ポリペプチドのT37Rの位置に対応する置換を導入するステップであって、前記変異体が配列番号2の成熟ポリペプチドに少なくとも95%の配列同一性を有し、かつリパーゼ活性を有し、前記親リパーゼと比較して、下記式:
【化1】
【化2】
または
c)これらの混合物、
(式中、各Rは、独立して、3~24個の炭素を含む分枝状アルキル基または1~24個の炭素を含む直鎖状アルキル基である)
を有する有機触媒からなる群から選択される有機触媒の存在下で向上した性能を有する、ステップと;
前記変異体を回収するステップと
を含む、前記方法。
【請求項2】
が、独立して、2-プロピルへプチル、2-ブチルオクチル、2-ペンチルノニル、2-ヘキシルデシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシル、イソ-ノニル、イソ-デシル、イソ-トリデシルおよびイソ-ペンタデシルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記親リパーゼが、配列番号2の前記成熟ポリペプチドのアミノ酸配列からなる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記置換が、D96G、T143A、A150G、E210Q、G225R、T231R、N233RおよびP250Rから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
配列番号2の成熟ポリペプチドのT37Rの置換を含むリパーゼ変異体であって、前記リパーゼ変異体が配列番号2の成熟ポリペプチドに少なくとも95%の配列同一性を有し、かつリパーゼ活性を有する、前記リパーゼ変異体。
【請求項6】
配列番号2の成熟ポリペプチドのアミノ酸配列に対して、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%であるが、100%未満である配列同一性を有する、請求項5に記載の変異体。
【請求項7】
前記置換の数が、1~10及び1~5、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10置換である、請求項5又は6に記載の変異体。
【請求項8】
前記置換が、D96G、T143A、A150G、E210Q、G225R、T231R、N233RおよびP250Rから選択される、請求項5~7のいずれか一項に記載の変異体。
【請求項9】
リパーゼと比較して、下記式:
【化3】
【化4】
または
c)これらの混合物、
(式中、各R1は、独立して、3~24個の炭素を含む分枝状アルキル基または1~24個の炭素を含む直鎖状アルキル基である)
を有する有機触媒からなる群から選択される有機触媒の存在下で向上した性能を有する、請求項6~8のいずれか1項に記載の変異体。
【請求項10】
が、独立して、2-プロピルへプチル、2-ブチルオクチル、2-ペンチルノニル、2-ヘキシルデシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシル、イソ-ノニル、イソ-デシル、イソ-トリデシルおよびイソ-ペンタデシルからなる群から選択される、請求項9に記載の変異体。
【請求項11】
請求項5~10のいずれか1項に記載の変異体をコードする単離ポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項11に記載のポリヌクレオチドを含む核酸構築物。
【請求項13】
請求項11に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項14】
請求項11に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項15】
請求項5~10のいずれか1項に記載の変異体を生成する方法であって、以下:
a)前記変異体の発現に好適な条件下で請求項14の宿主細胞を培養するステップと;
b)前記変異体を回収するステップと
を含む方法。
【請求項16】
請求項5~10のいずれか1項に記載の変異体を生成する方法であって、以下:
a)前記変異体の生成を実施可能にする条件下で、前記変異体をコードするポリヌクレオチドを含むトランスジェニック植物または植物細胞を培養するステップと;
b)前記変異体を回収するステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本出願は、コンピュータ読み取り可能な形態の配列表を含んでおり、これは、本明細書おいて参照により援用される。
【0002】
本発明は、リパーゼ変異体、変異体をコードするポリヌクレオチド、変異体を生成する方法、および変異体を用いる方法に関する。本発明は、その親と比較して向上した特性を有するリパーゼを提供する。特に、これらの変異体は、3,4-ジヒドロイソキノリンの双性イオン硫酸誘導体などの有機触媒の存在下でより安定している。
【背景技術】
【0003】
効率的洗浄組成物を生成することを目的として、このような組成物を調製するのに用いられる他の成分の中でもリパーゼがある。しかし、リパーゼの活性は、含まれる他の成分の存在に影響を受ける場合がある。特に、ある種の漂白触媒を導入すると、特定の酵素を不活性化することが判明している。この適合性の問題は、配合だけによって必ずしも十分に解決することができない課題となっている。
【0004】
国際公開第07/001262号パンフレットは、向上した酵素適合性を有する有機触媒を含む洗浄組成物、ならびにこうした組成物を製造および使用する方法に関し、ここで、前記触媒は、3,4-ジヒドロイソキノリンの双性イオン硫酸誘導体である。この触媒は、向上したアミラーゼ適合性を有するが、リパーゼ適合性はないことが判明している。
【0005】
従って、3,4-ジヒドロイソキノリンの双性イオン硫酸誘導体などの有機触媒との向上した適合性を有するリパーゼおよびこれらを製造する方法が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、リパーゼ変異体を取得する方法に関し、この方法は、親リパーゼに、配列番号2の成熟ポリペプチドの位置T37、N39、またはG91に対応する1つまたは複数の位置で置換を導入するステップであって、変異体が、リパーゼ活性を有し、親リパーゼと比較して、下記式:
【化1】
【化2】
または
c)これらの混合物、
(式中、各R1は、独立して、3~24個の炭素を含む分枝状アルキル基または1~24個の炭素を含む直鎖状アルキル基である)
を有する有機触媒、これらの混合物からなる群から選択される有機触媒の存在下で向上した性能を有するステップと;前記変異体を回収するステップを含む。
【0007】
本発明はまた、配列番号2の成熟ポリペプチドの位置T37A、D、E、F、G、H、I、L、N、P、Q、R、S、V、W、Y、N39A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、P、Q、R、T、V、W、Y、およびG91D、H、I、P、Qに対応する1つまたは複数の位置で置換を含むリパーゼ変異体にも関し、ここで、変異体は、リパーゼ活性を有する。
【0008】
本発明はまた、変異体をコードする単離されたポリヌクレオチド;ポリヌクレオチドを含む核酸構築物、ベクター、および宿主細胞;ならびに変異体を生成する方法にも関する。
【0009】
定義
リパーゼ:「リパーゼ」または「脂肪分解酵素」または「脂質エステラーゼ」という用語は、酵素命名法によって定義されている、クラスEC3.1.1に属する酵素である。これは、リパーゼ活性(トリアシルグリセロールリパーゼ、EC3.1.1.3)、クチナーゼ活性(EC3.1.1.74)、ステロールエステラーゼ活性(EC3.1.1.13)および/またはワックス-エステルヒドロラーゼ活性(EC3.1.1.50)を有し得る。本発明の目的のために、リパーゼ活性は、実施例に記載する手順に従い決定される。一態様では、本発明の変異体は、配列番号2の成熟ポリペプチドのリパーゼ活性の少なくとも20%、例えば、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%を有する。
【0010】
突然変異体:「突然変異体」という用語は、同一の染色体座を占める遺伝子の2つ以上の代替形態のいずれかを意味する。突然変異体は突然変異を介して自然に生じ、個体群において多型性をもたらし得る。遺伝子突然変異は、非表現性(コードされるポリペプチドに変化無し)であることが可能であり、または、異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドがコードされ得る。ポリペプチドの突然変異体は、遺伝子の突然変異体によってコードされたポリペプチドである。
【0011】
cDNA:「cDNA」という用語は、真核細胞または原核細胞から得られたスプライスされた成熟mRNA分子から逆転写によって調製可能であるDNA分子を意味する。cDNAは、対応するゲノムDNA中に存在し得るイントロン配列を欠いている。元の一次RNA転写物は、スプライスされた成熟mRNAとして出現する前にスプライシングを含む一連のステップを介して処理されるmRNAに対する前駆体である。
【0012】
コード配列:「コード配列」という用語は、変異体のアミノ酸配列を直接的に特定するポリヌクレオチドを意味する。コード配列の境界は、一般にオープンリーディングフレームによって判定されるが、これは、ATG、GTGもしくはTTGなどの開始コドンで始まり、TAA、TAGもしくはTGAなどの終止コドンで終わる。コード配列は、DNA、cDNA、合成DNA、またはこれらの組合せであってよい。
【0013】
制御配列:「制御配列」という用語は、本発明の変異体をコードするポリヌクレオチドの発現に必要なすべての核酸配列を意味する。各制御配列は、変異体をコードするポリヌクレオチドに対して自生(すなわち、同じ遺伝子由来)であっても外来性(すなわち、異なる遺伝子由来)であっても、相互に自生もしくは外来性であってもよい。このような制御配列としては、これらに限定されないが、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモータ、シグナルペプチド配列、および、転写ターミネータが挙げられる。制御配列としては、プロモータ、ならびに、転写および翻訳停止シグナルが最低限挙げられる。制御配列は、変異体をコードするポリヌクレオチドのコード領域との制御配列の連結反応を促進させる特定の制限部位を導入するために、リンカーと共に提供され得る。
【0014】
発現:「発現」という用語は、変異体の生成に関与するいずれかのステップを含み、特にこれらに限定されないが、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾および分泌が挙げられる。
【0015】
発現ベクター:「発現ベクター」という用語は、変異体をコードするポリヌクレオチドを含み、また、発現をもたらす制御ヌクレオチドに作動可能に結合している直線状または環状のDNA分子を意味する。
【0016】
断片:「断片」という用語は、成熟ポリペプチドのアミノおよび/またはカルボキシル末端から1つまたは複数(例えばいくつか)のアミノ酸が存在しないポリペプチドを意味し;ここで、断片は、リパーゼ活性を有する。一態様では、断片は、成熟ポリペプチドのアミノ酸の数の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、および少なくとも95%を有する。
【0017】
高ストリンジェンシー条件:「高ストリンジェンシー条件」という用語は、長さが少なくとも100ヌクレオチドのプローブについて、5×SSPEにおける42℃、0.3% SDS、200マイクログラム/ml断片化および修飾サケ精子DNA、ならびに、50%ホルムアミドでのプレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション、これに続く、12~24時間の標準的なサザンブロッティング法を意味する。キャリア材料は、最終的に、2×SSC、0.2% SDSを用いて、15分間ずつかけて65℃で3回洗浄される。
【0018】
宿主細胞:「宿主細胞」という用語は、本発明のポリヌクレオチドを含む核酸構築物または発現ベクターを伴う形質転換、形質移入、形質導入等に対する感受性を有するいずれかの細胞型を意味する。「宿主細胞」という用語は、複製の最中に生じる突然変異によって親細胞とは異なっている親細胞のいずれかの子孫を包含する。
【0019】
向上した特性:「向上した特性」という用語は、親と比較して、向上した変異体に関連する特徴を意味する。このような向上した特性としては、有機触媒の存在下での向上した性能が挙げられる。ある実施形態において、本発明は、下記の式:
【化3】
【化4】
または
c)これらの混合物、
(式中、各R1は、独立して、3~24個の炭素を含む分枝状アルキル基または1~24個の炭素を含む直鎖状アルキル基であり、特に、Rは、2-ブチルオクチルである)
を有する有機触媒、これらの混合物からなる群から選択される有機触媒に関し、好ましくは、向上した安定性は、Rが2-ブチルオクチルである式2の存在下で達成される。
【0020】
単離された:「単離された」という用語は、天然では存在しない形態または環境にある物質を意味する。単離された物質の非制限的例として、(1)任意の非天然型物質、(2)これらに限定されないが、天然では関連している天然に存在する成分の1つまたは複数または全部から少なくとも部分的に取り出された任意の酵素、変異体、核酸、タンパク質、ペプチドもしくは補因子;(3)天然に存在する物質に対して、人為的に修飾された任意の物質;または(4)天然では関連している他の成分と比較して物質の量を増加すること(例えば、物質をコードする遺伝子の複数のコピー;物質をコードする遺伝子と天然で関連するプロモータより強力なプロモータの使用)によって修飾された任意の物質が挙げられる。単離された物質は、発酵ブロスサンプル中に存在し得る。
【0021】
低ストリンジェンシー条件:「低ストリンジェンシー条件」という用語は、長さが少なくとも100ヌクレオチドのプローブについて、5×SSPEにおける42℃、0.3% SDS、200マイクログラム/ml断片化および修飾サケ精子DNA、ならびに、25%ホルムアミドでのプレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション、これに続く、12~24時間の標準的なサザンブロッティング法を意味する。キャリア材料は、最終的に、2×SSC、0.2% SDSを用いて、15分間ずつかけて50℃で3回洗浄される。
【0022】
成熟ポリペプチド:「成熟ポリペプチド」という用語は、N-末端処理、C-末端切断、グリコシル化、リン酸化などのような、翻訳および任意の翻訳後修飾後のその最終形態でのポリペプチドを意味する。一態様において、成熟ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸1~269である。
【0023】
成熟ポリペプチドコード配列:「成熟ポリペプチドコード配列」という用語は、リパーゼ活性を有する成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。一態様において、成熟ポリペプチドコード配列は、配列番号1のヌクレオチド67~873である。
【0024】
中ストリンジェンシー条件:「中ストリンジェンシー条件」という用語は、長さが少なくとも100ヌクレオチドのプローブについて、5×SSPEにおける42℃、0.3% SDS、200マイクログラム/ml断片化および修飾サケ精子DNA、ならびに、35%ホルムアミドでのプレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション、これに続く、12~24時間の標準的なサザンブロッティング法を意味する。キャリア材料は、最終的に、2×SSC、0.2% SDSを用いて、15分間ずつかけて55℃で3回洗浄される。
【0025】
中-高ストリンジェンシー条件:「中-高ストリンジェンシー条件」という用語は、長さが少なくとも100ヌクレオチドのプローブについて、5×SSPEにおける42℃、0.3% SDS、200マイクログラム/ml断片化および修飾サケ精子DNA、ならびに、35%ホルムアミドでのプレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション、これに続く、12~24時間の標準的なサザンブロッティング法を意味する。キャリア材料は、最終的に、2×SSC、0.2% SDSを用いて、15分間ずつかけて60℃で3回洗浄される。
【0026】
ミュータント:「ミュータント」という用語は、変異体をコードするポリヌクレオチドを意味する。
【0027】
核酸構築物:「核酸構築物」という用語は、一本鎖もしくは二本鎖である核酸分子を意味し、これは、天然遺伝子から単離されるか、または、本来自然には存在し得ないような核酸のセグメント、もしくは、合成された核酸のセグメントを含有するよう修飾されており、1つまたは複数の制御配列を含む。
【0028】
作動可能に結合:「作動可能に結合」という用語は、制御配列がコード配列の発現をもたらすよう、ポリヌクレオチドのコード配列と比して制御配列が適切な位置に位置されている構成を意味する。
【0029】
親または親リパーゼ:「親」または「親リパーゼ」という用語は、本発明の酵素変異体をもたらすよう改変が行われたリパーゼを意味する。親は、天然に存在する(野生型)ポリペプチドまたはその変異体であり得る。
【0030】
配列同一性:2つのアミノ酸配列間または2つのヌクレオチド配列間の関連性が、「配列同一性」というパラメータによって記載される。本発明の目的のために、2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、好ましくはバージョン5.0.0以降のEMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276-277)のNeedleプログラムにおいて実装されている、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443-453)を用いて判定される。用いられるパラメータは、10のギャップオープンペナルティ、0.5のギャップエクステンションペナルティおよびEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSボージョン)置換マトリックスである。Needle標識された「最長の同一性」(-nobriefオプションを用いて得られる)の出力が同一性割合として用いられ、以下のとおり算出される。
(同等の残基×100)/(アラインメントの長さ-アラインメント中のギャップの総数)
【0031】
本発明の目的のために、2つのデオキシリボヌクレオチド配列間の配列同一性は、EMBOSS package(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,supra)、好ましくはバージョン5.0.0以降のNeedle programに実装されているNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,supra)を用いて判定される。用いられるパラメータは、10のギャップオープンペナルティ、0.5のギャップエクステンションペナルティ、および、EDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。Needle標識された「最長の同一性」(-nobriefオプションを用いて得られる)の出力が同一性割合として用いられ、以下のとおり算出される:
(同一のデオキシリボヌクレオチド×100)/(アラインメントの長さ-アラインメント中のギャップの総数)
【0032】
サブ配列:「サブ配列」という用語は、成熟ポリペプチドコード配列の5’および/または3’末端から1つまたは複数(例えばいくつか)のヌクレオチドが存在しないポリペプチドを意味し;ここで、サブ配列は、リパーゼ活性を有する断片をコードする。一態様では、本発明のサブ配列は、成熟ポリペプチドコード配列のヌクレオチドの数の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、および少なくとも95%を有する。
【0033】
変異体:「変異体」という用語は、1つまたは複数(例えばいくつか)の位置に置換を含むリパーゼ活性を有するポリペプチドを意味する。置換とは、ある位置を占めるアミノ酸を異なるアミノ酸で置き換えることを意味する。本発明の変異体は、配列番号2の成熟ポリペプチドのリパーゼ活性の少なくとも20%、例えば、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%を有する。
【0034】
超高ストリンジェンシー条件:「超高ストリンジェンシー条件」という用語は、長さが少なくとも100ヌクレオチドのプローブについて、5×SSPEにおける42℃、0.3% SDS、200マイクログラム/ml断片化および修飾サケ精子DNA、ならびに、50%ホルムアミドでのプレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション、これに続く、12~24時間の標準的なサザンブロッティング法を意味する。キャリア材料は、最終的に、2×SSC、0.2% SDSを用いて、15分間ずつかけて70℃で3回洗浄される。
【0035】
超低ストリンジェンシー条件:「超低ストリンジェンシー条件」という用語は、長さが少なくとも100ヌクレオチドのプローブについて、5×SSPEにおける42℃、0.3% SDS、200マイクログラム/ml断片化および修飾サケ精子DNA、ならびに、25%ホルムアミドでのプレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション、これに続く、12~24時間の標準的なサザンブロッティング法を意味する。キャリア材料は、最終的に、2×SSC、0.2% SDSを用いて、15分間ずつかけて45℃で3回洗浄される。
【0036】
野生型リアーゼ:「野生型」リパーゼという用語は、自然界において見出されるバクテリア、酵母、糸状真菌などの天然に存在する微生物により発現されるリパーゼを意味する。
【0037】
従来の変異体の決定
本発明の目的のために、配列番号2において開示されている成熟ポリペプチドは、他のリパーゼ中の対応するアミノ酸残基の判定に用いられる。別のリパーゼのアミノ酸配列を配列番号2に開示した成熟ポリペプチドとアラインメントし、アラインメントに基づいて、配列番号2に開示した成熟ポリペプチドにおける任意のアミノ酸残基に対応するアミノ酸位置番号を、EMBOSSパッケージのNeedleプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276-277)で実行されているようなNeedleman-Wunschアルゴリズム(NeedlemanおよびWunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443-453)、好ましくはバージョン5.0.0以降を用いて決定する。用いるパラメータは、ギャップ開始ペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ0.5、およびEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。
【0038】
他のリパーゼにおける対応するアミノ酸残基の同定は、特にこれらに限定されないが、MUSCLE(multiple sequence comparison by log‐expectation;バージョン3.5以降;Edgar,2004,Nucleic Acids Research 32:1792-1797)、MAFFT(バージョン6.857以降;Katoh and Kuma,2002,Nucleic Acids Research 30:3059-3066;Katoh et al.,2005,Nucleic Acids Research 33:511-518;Katoh and Toh,2007,Bioinformatics 23:372-374;Katoh et al.,2009,Methods in Molecular Biology 537:39-64;Katoh and Toh,2010,Bioinformatics 26:1899-1900)、および、ClustalWを採用するEMBOSS EMMA(1.83以降;Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Research 22:4673-4680)を含むいくつかのコンピュータプログラムを、それぞれのデフォルトパラメータで用いることによる複数のポリペプチド配列のアライメントにより判定可能である。
【0039】
配列番号2の成熟型ポリペプチドから他の酵素が分化して、従来からの配列に基づく比較による関係の検出ができない場合(Lindahl and Elofsson,2000,J.Mol.Biol.295:613-615)、他の対配列比較アルゴリズムを用いることが可能である。配列に基づくサーチにおける感度は、データベースのサーチにポリペプチドファミリー(プロファイル)の確率表現を利用するサーチプログラムを用いることで高めることが可能である。例えば、PSI-BLASTプログラムは、反復データベースサーチプロセスを介してプロファイルを生成し、離れた相同体を検出することが可能である(Atschul et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389-3402)。ポリペプチドに係るファミリーまたはスーパーファミリーがタンパク質構造データベースにおいて1つまたは複数の表現を有する場合には、感度をさらに高めることが可能である。GenTHREADER(Jones,1999,J.Mol.Biol.287:797-815;McGuffin and Jones,2003,Bioinformatics 19:874-881)などのプログラムは、問い合わせ配列に係るフォールド構造を予想するニューラルネットワークに対する入力として、多様なソース(PSI-BLAST、二次構造予測、構造アラインメントプロファイルおよび溶媒和ポテンシャル)からの情報を利用する。同様に、Gough et al.,2000,J.Mol.Biol.313:903-919による方法が、未知の構造の配列とSCOPデータベースに存在するスーパーファミリーモデルとのアラインに用いられることが可能である。次いで、これらのアラインメントを用いてポリペプチドに係る相同性モデルを生成することが可能であり、このようなモデルは、その目的のために開発された多様なツールを用いて正確に評価可能である。
【0040】
公知の構造のタンパク質に関して、数々のツールおよびリソースが、構造アラインメントの検索および生成のために使用可能である。例えばタンパク質のSCOPスーパーファミリーが構造的にアラインされており、これらのアラインメントはアクセスおよびダウンロードが可能である。2つ以上のタンパク質構造は距離アラインメントマトリックス(Holm and Sander,1998,Proteins 33:88-96)または組み合わせ拡張法(Shindyalov and Bourne,1998,Protein Engineering 11:739-747)などの多様なアルゴリズムを用いてアラインすることが可能であり、これらのアルゴリズムを、可能性のある構造相同体を発見するために、対象の構造と共に問い合わせ構造データベースに対して追加的に実行することが可能である(例えば、Holm and Park,2000,Bioinformatics 16:566-567)。
【0041】
本発明の変異体の記載において、以下の命名法が参照を容易とするために採用される。公認されているIUPACの1文字または3文字のアミノ酸略記が利用されている。
【0042】
置換.アミノ酸置換に関しては以下の命名法が用いられている:元のアミノ酸、位置、置換されたアミノ酸。従って、位置226でのスレオニンのアラニンでの置換は、「Thr226Ala」または「T226A」と示される。複数の突然変異は加算記号(「+」)によって分けられており、例えば、「Gly205Arg+Ser411Phe」または「G205R+S411F」とされ、それぞれ、グリシン(G)のアルギニン(R)による、および、セリン(S)のフェニルアラニン(F)による位置205および411での置換が表されている。
【0043】
複数の置換.複数の置換を含む変異体は、加算記号(「+」)によって区切られており、例えば、「Arg170Tyr+Gly195Glu」または「R170Y+G195E」はそれぞれ、位置170および195のアルギニンおよびグリシンのチロシンおよびグルタミン酸による置換を表す。
【0044】
異なる置換.異なる改変を1つの位置に導入することが可能である場合、これらの異なる改変はコンマによって区切られ、例えば、「Arg170Tyr,Glu」または「R170Y,E」は、位置170におけるアルギニンのチロシンまたはグルタミン酸による置換を表す。ゆえに、「Tyr167Gly,Ala+Arg170Gly,Ala」は以下の変異体を表す:「Tyr167Gly+Arg170Gly」、「Tyr167Gly+Arg170Ala」、「Tyr167Ala+Arg170Gly」、および「Tyr167Ala+Arg170Ala」。
【発明を実施するための形態】
【0045】
変異体
本発明は、配列番号2の成熟ポリペプチドの位置T37A、D、E、F、G、H、I、L、N、P、Q、R、S、V、W、Y、N39A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、P、Q、R、T、V、W、Y、およびG91D、H、I、P、Qに対応する1つまたは複数(例えばいくつか)の位置で置換を含む、単離されたリパーゼ変異体に関し、ここで、変異体はリパーゼ活性を有する。
【0046】
一実施形態において、変異体は、親リパーゼのアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%であるが、100%未満の配列同一性を有する。
【0047】
別の実施形態において、変異体は、配列番号2の成熟ポリペプチドに対して、少なくとも60%、例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%であるが、100%未満の配列同一性を有する。
【0048】
一態様では、本発明の変異体の置換数は、1~20、例えば、1~10および1~5、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の置換である。
【0049】
別の態様において、変異体は、配列番号2の成熟ポリペプチドの位置T37A、D、E、F、G、H、I、L、N、P、Q、R、S、V、W、Y、N39A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、P、Q、R、T、V、W、Y、およびG91D、H、I、P、Qに対応する1つまたは複数(例えばいくつか)の位置で置換を含む。別の実施形態において、変異体は、配列番号2の成熟ポリペプチドの位置T37A、D、E、F、G、H、I、L、N、P、Q、R、S、V、W、Y、N39A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、P、Q、R、T、V、W、Y、およびG91D、H、I、P、Qのいずれかに対応する2つの位置で改変を含む。別の実施形態において、変異体は、配列番号2の成熟ポリペプチドの位置T37A、D、E、F、G、H、I、L、N、P、Q、R、S、V、W、Y、N39A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、P、Q、R、T、V、W、Y、およびG91D、H、I、P、Qのいずれかに対応する3つの位置で改変を含む。
【0050】
別の態様において、変異体は、配列番号2の成熟ポリペプチドの位置T37に対応する位置に置換を含むか、またはこれから成り、上記の位置は、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはVal、好ましくはAla、Arg、Asn、Asp、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Phe、Pro、Ser、Trp、Tyr、またはValで置換されている。別の態様において、変異体は、配列番号2の成熟ポリペプチドの置換T37A、T37D、T37E、T37F、T37G、T37H、T37I、T37L、T37N、T37P、T37Q、T37R、T37S、T37V、T37W、もしくはT37Yを含むか、またはこれから成る。
【0051】
別の態様において、変異体は、配列番号2の成熟ポリペプチドの位置N39に対応する位置に置換を含むか、またはこれから成り、上記の位置は、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはVal、好ましくはAla、Arg、Asp、Gln、Glu、Gly、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Thr、Trp、Tyr、またはValで置換されている。別の態様において、変異体は、配列番号2の成熟ポリペプチドの置換N39A、N39C、N39D、N39E、N39F、N39G、N39I、N39K、N39L、N39M、N39P、N39Q、N39R、N39T、N39V、N39W、N39Yを含むか、またはこれから成る。
【0052】
別の態様において、変異体は、配列番号2の成熟ポリペプチドの位置G91に対応する位置に置換を含むか、またはこれから成り、上記の位置は、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはVal、好ましくはAsp、Gln、His、Ile、またはProで置換されている。別の態様において、変異体は、配列番号2の成熟ポリペプチドの置換G91D、G91H、G91I、G91P、G91Q、あるいはまたG91Aを含むか、またはこれから成る。好ましい態様では、変異体は、G91AであるG91に対応する位置に置換を含むか、またはこれから成る。
【0053】
別の態様において、位置37、39および/または91での任意のこうした1つまたは複数の置換を、T231RおよびN233Rの1つまたは複数、好ましくは両方と組み合わせる。
【0054】
別の態様において、変異体は、上に記載したような位置T37およびN39に対応する位置に置換を含むか、またはこれから成る。
【0055】
別の態様において、変異体は、上に記載したような位置T37およびG91に対応する位置に置換を含むか、またはこれから成る。
【0056】
別の態様において、変異体は、上に記載したような位置N39およびG91に対応する位置に置換を含むか、またはこれから成る。
【0057】
別の態様において、変異体は、上に記載したような位置T37、N39およびG91に対応する位置に置換を含むか、またはこれから成る。
【0058】
変異体は、1つまたは複数(例えば、いくつか)の他の位置に1つまたは複数の追加の置換をさらに含み得る。
【0059】
アミノ酸の変更は軽微なものであり得、すなわち、タンパク質の折り畳みおよび/または活性に顕著に影響しない保存的アミノ酸置換または挿入;典型的には1~30アミノ酸の微小な欠失;アミノ末端メチオニン残基などの微小なアミノ-またはカルボキシル-末端延伸;20~25残基以下の小リンカーペプチド;または、正味の電荷または他の機能を変えることにより精製を容易とする、ポリヒスチジン配列、抗原エピトープもしくは結合ドメインなどの微小な延伸であり得る。
【0060】
保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リシンおよびヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸およびアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミンおよびアスパラギン)、疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシンおよびバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシン)、ならびに、低分子アミノ酸(グリシン、アラニン、セリン、スレオニンおよびメチオニン)の群に含まれるものによる。
【0061】
あるいは、アミノ酸変更は、ポリペプチドの物理化学的性質が改変されるような性質のものである。例えば、アミノ酸変更は、ポリペプチドの熱安定性を向上させ、基質特異性を改変し、最適pHを変更するようなものなどであってよい。
【0062】
例えば、変異体は、配列番号2の成熟ポリペプチドの位置D96、T143、A150、E210、G225、T231、N233およびP250に対応する位置に置換を含んでもよい。ある実施形態では、置換は、D96G、T143A、A150G、E210Q、G225R、T231R、N233RおよびP250Rから選択される。
【0063】
ある実施形態において、本発明は、以下から選択される変異体に関する:
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
ポリペプチド中の必須アミノ酸は、部位特異的突然変異誘発またはアラニンスキャニング突然変異誘発などの技術分野において公知である手法に準拠して同定することが可能である(Cunningham and Wells,1989,Science 244:1081-1085)。後者の技術においては、単一のアラニン突然変異が分子中のすべての残基に導入され、得られるミュータント分子は、分子の活性に重要であるアミノ酸残基を同定するためにリパーゼ活性についてテストされる。また、Hilton et al.,1996,J.Biol.Chem.271:4699-4708を参照のこと。酵素の活性部位または他の生物学的相互作用はまた、推定される接触部位アミノ酸の突然変異との組み合わせにより、核磁気共嗚、結晶構造解析、電子回折、または、光親和性標識などの技術によって測定される構造の物理的分析によって判定可能である。例えば、de Vos et al.,1992,Science 255:306-312;Smith et al.,1992,J.Mol.Biol.224:899-904;Wlodaver et al.,1992,FEBS Lett.309:59-64を参照のこと。必須アミノ酸の同一性はまた、関連するポリペプチドとのアライメントから推定可能である。
【0067】
変異体は、成熟ポリペプチドのアミノ酸の数の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、および少なくとも95%から成るものであってよい。
【0068】
一実施形態において、変異体は、1種の漂白成分または2種以上の漂白成分の混合物の存在下で性能を向上させた。好適な漂白成分としては、漂白触媒、光漂白剤、漂白活性化剤、過酸化水素、過酸化水素源、事前に形成した過酸およびこれらの混合物が挙げられる。一般に、漂白成分は、洗浄組成物の重量に対し、約0.00001~約90重量%、好ましくは約0.0001~約50%、あるいはまた約0.001~約25%の漂白成分として存在してよい。好適な漂白成分は、以下のものを含む:
(1)事前に形成した過酸:好適な事前に形成した過酸としては、これらに限定されないが、事前に形成した過酸もしくはその塩からなる群から選択される化合物、典型的には、ペルオキシカルボン酸もしくはその塩、またはペルオキシスルホン酸もしくはその塩のいずれかが挙げられる。
【0069】
事前に形成した過酸もしくはその塩は、好ましくはペルオキシカルボン酸もしくはその塩であり、これは、典型的には、下記の化学式に対応する化学構造:
【化5】
を有し、
式中、R14は、アルキル、アラルキル、シクロアルキル、アリールもしくは複素環式基から選択され;R14基は、直鎖または分岐状の、置換もしくは非置換であってよく;Yは、電荷中性を達成する任意の好適な対イオンであり、好ましくは、Yは、水素、ナトリウムもしくはカリウムから選択される。好ましくは、R14は、直鎖または分岐状の、置換もしくは非置換C6~9アルキルである。好ましくは、過酸もしくはその塩は、ペルオキシヘキサン酸、ペルオキシヘプタン酸、ペルオキシオクタン酸、ペルオキシノナン酸、ペルオキシデカン酸、それらの任意の塩、またはそれらの任意の組合せから選択される。特に好ましい過酸は、フタルイミド-ペルオキシ-アルカン酸、とりわけ、ε-フタルイミド-ペルオキシ-ヘキサン酸(PAP)である。好ましくは、過酸もしくはその塩は、30℃~60℃の範囲の融点を有する。
【0070】
事前に形成した過酸もしくはその塩はペルオキシスルホン酸もしくはその塩であってもよく、これは、典型的には、下記の化学式に対応する化学構造:
【化6】
を有し、
式中、R15は、アルキル、アラルキル、シクロアルキル、アリールもしくは複素環式基から選択され;R15基は、直鎖または分岐状の、置換もしくは非置換であってよく;Zは、電荷中性を達成する任意の好適な対イオンであり、好ましくは、Zは、水素、ナトリウムもしくはカリウムから選択される。好ましくは、R15は、直鎖または分岐状の、置換もしくは非置換C6~9アルキルである。好ましくはこのような漂白成分は、0.01~50%、最も好ましくは0.1%~20%の量で組成物中に存在してよい。
【0071】
(2)過酸化水素源としては、例えば、過ホウ酸(通常は一水和物または四水和物)、過炭酸、過硫酸、過リン酸、過ケイ酸のナトリウム塩およびこれらの混合物などのアルカリ金属塩を含む無機過酸化水和物塩類が挙げられる。本発明の一態様では、無機過酸化水和物塩類、例えば、過ホウ酸、過炭酸およびこれらの混合物からなる群から選択されるものなど。使用する場合には、無機過酸化水和物塩類は、組成物全体の0.05~40重量%、または1~30重量%の量で存在し、典型的に、結晶性固体のような組成物に含有させるが、この固体をコーティングしてもよい。好適なコーティングは、アルカリ金属ケイ酸塩、炭酸塩もしくはホウ酸塩またはこれらの混合物などの無機塩、あるいは、水溶性もしくは分散性ポリマー、ワックス、油または脂肪酸石鹸などの有機材料を含む。
【0072】
好ましくは、このような漂白成分は、0.01~50%、最も好ましくは0.1%~20%の量で組成物中に存在してよい。
【0073】
(3)好適な漂白活性化剤は、R-(C=O)-Lを有するものであり、Rは、任意選択で分岐状の、漂白活性化剤が疎水性である場合、6~14個の炭素原子、または8~12個の炭素原子、ならびに漂白活性化剤が親水性である場合、6個未満の炭素原子、あるいはまた4個未満の炭素原子を有するアルキル基であり;Lは、脱離基である。好適な脱離基の例は、安息香酸およびその遊離基、特にベンゼンスルホン酸塩である。好適な漂白活性化剤としては、ドデカノイルオキシベンゼンスルホン酸塩、デカノイルオキシベンゼンスルホン酸塩、デカノイルオキシ安息香酸またはこれらの塩、3,5,5-トリメチルヘキサノイルオキシベンゼンスルホン酸塩、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)およびノナノイルオキシベンゼンスルホン酸塩(NOBS)が挙げられる。また、好適な漂白活性化剤は国際公開第98/17767号パンフレットにも開示されている。あらゆる好適な漂白活性化剤を用いてよいが、本発明の一態様では、対象の洗浄組成物は、NOBS、TAEDまたはこれらの混合物を含んでもよい。これらが存在する場合、過酸および/または漂白活性化剤は、一般に、布地およびホームケア製品に対して、約0.1~約60重量%、約0.5~約40重量%、あるいはまた約0.6~約10重量%の量で消費者製品に存在する。1種または複数種の疎水性過酸またはその前駆体を、1種または複数種の親水性過酸またはその前駆体と組み合わせて用いてもよい。好ましくは、このような漂白成分は、0.01~50%、最も好ましくは0.1%~20%の量で組成物中に存在してよい。
【0074】
過酸化水素源および過酸または漂白活性化剤の量は、利用可能な酸素(過酸化物源から):過酸のモル比が1:1~35:1、あるいはまた2:1~10:1であるように選択してよい。
【0075】
(4)ジアシル過酸化物-好ましいジアシル過酸化物漂白種としては、一般式:
1-C(O)-OO-(O)C-R2
(式中、R1は、少なくとも5個の炭素原子を含み、任意選択で1個または複数個の置換基(例えば、-N+(CH33、-COOHもしくは-CN)および/またはアルキルラジカルの隣接する炭素原子間に挿入された1つまたは複数の割り込み部分(例えば、-CONHもしくはCH=CH-)を含む、C6~C18アルキル、好ましくはC6~C12アルキル基を示し;R2は、過酸化物部分と適合性の脂肪族基を示し、ここで、R1およびR2は合わせて計8~30個の炭素原子を含む)のジアシル過酸化物から選択されるものが挙げられる。一態様では、R1およびR2は、直鎖状非置換C6~C12アルキル鎖である。最も好ましくは、R1およびR2は同一である。R1およびR2の両方がC6~C12アルキル基であるジアシル過酸化物は、C6~C12アルキル基であり、これが特に好ましい。好ましくは、R基の少なくとも一方、最も好ましくはその一方のみ(R1またはR2)は、α位置、または好ましくはαおよびβ位置のいずれにも、あるいは最も好ましくはαまたはβまたはγ位置のいずれにも分岐もしくはペンダント環を含まない。1つのさらに好ましい実施形態において、好ましくは、R1アシル基の加水分解は高速で、過酸を生成するが、R2アシル基の加水分解は低速であるように、DAPが非対称であってもよい。
【0076】
テトラアシル過酸化物漂白種は、好ましくは、下記の一般式:
3-C(O)-OO-C(O)-(CH2n-C(O)-OO-C(O)-R2
(式中、R3は、C1~C9アルキル、好ましくはC3~C7アルキル基を示し;nは、2~12、好ましくは4~10の整数(両端の値を含む)を示す)
のテトラアシル過酸化物から選択される。
【0077】
好ましくは、ジアシルおよび/またはテトラアシル過酸化物漂白種は、洗浄液の重量に対し少なくとも0.5ppm、より好ましくは少なくとも10ppm、さらに好ましくは少なくとも50ppmを提供するのに十分な量で存在する。好ましい実施形態において、漂白種は、洗浄液の重量に対して約0.5~約300ppm、より好ましくは少なくとも約30~約150ppmを提供するのに十分な量で存在する。
【0078】
好ましくは、漂白成分は、漂白触媒(5および6)を含む。
【0079】
(5)好ましい有機(非金属)漂白触媒としては、過酸および/またはその塩から酸素原子を受容して、その酸素原子を酸化可能な基質に輸送することができる漂白触媒がある。好適な漂白触媒として、これらに限定されないが、イミニウムカチオンおよびポリイオン;イミニウム双性イオン;修飾アミン;修飾アミン酸化物;N-スルホニルイミン;N-ホスホニルイミン;N-アシルイミン;チアジアゾール二酸化物;ペルフルオロイミン;環状糖ケトンならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0080】
好適なイミニウムカチオンおよびポリイオンとしては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:Tetrahedron(1992),49(2),423-38(例えば、compound 4,p.433を参照)に記載のように調製される、N-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリニウムテトラフルオロホウ酸塩;米国特許第5360569号明細書(例えば、Column 11,Example 1を参照)に記載のように調製される、N-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリニウムp-トルエンスルホン酸塩;ならびに米国特許第5360568号明細書(例えば、Column 10,Example 3を参照)に記載のように調製される、N-オクチル-3,4-ジヒドロイソキノリニウムp-トルエンスルホン酸塩。
【0081】
好適なイミニウム双性イオンとしては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:米国特許第5576282号明細書(例えば、Column 31,Example IIを参照)に記載のように調製される分子内塩である、N-(3-スルホプロピル)-3,4-ジヒドロイソキノリウム;米国特許第5817614号明細書(例えば、Column 32,Example Vを参照)に記載のように調製される分子内塩である、N-[2-(スルホキシ)ドデシル]-3,4-ジヒドロイソキノリニウム;国際公開第05/047264号パンフレット(例えば、第18頁、Example 8を参照)に記載のように調製される分子内塩である、2-[3-[(2-エチルヘキシル)オキシ]-2-(スルホオキシ)プロピル]-3,4-ジヒドロイソキノリニウム、;ならびに分子内塩である2-[3-[(2-ブチルオクチル)オキシ]-2-(スルホオキシ)プロピル]-3,4-ジヒドロイソキノリニウム。
【0082】
好適な修飾アミン酸素輸送触媒としては、これらに限定されないが、1,2,3,4-テトラヒドロ-2-メチル-1-イソキノリノールがあり、これは、Tetrahedron Letters(1987),28(48),6061-6064に記載の方法に従い製造することができる。好適な修飾アミン酸素輸送触媒としては、これらに限定されないが、ナトリウム1-ヒドロキシ-N-オキシ-N-[2-(スルホキシ)デシル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリンがある。
【0083】
好適なN-スルホニルイミン酸素輸送触媒としては、これらに限定されないが、Journal of Organic Chemistry(1990),55(4),1254-61に記載の方法に従い調製される、3-メチル-1,2-ベンズイソチアゾール1,1-二酸化物がある。
【0084】
好適なN-ホスホニルイミン酸素輸送触媒としては、これらに限定されないが、Journal of the Chemical Society,Chemical Communications(1994),(22),2569-70に記載の方法に従い調製される、「R-(E)]-N-[(2-クロロ-5-ニトロフェニル)メチレン]-P-フェニル-P-(2,4,6-トリメチルフェニル)-ホスフィン酸アミドがある。
【0085】
好適なN-アシルイミン酸素輸送触媒としては、これらに限定されないが、Polish Journal of Chemistry(2003),77(5),577-590に記載の方法に従い調製される、「N(E)]-N-(フェニルメチレン)アセトアミドがある。
【0086】
好適なチアジアゾール二酸化物酸素輸送触媒としては、これらに限定されないが、米国特許第5753599号明細書(Column 9,Example 2を参照)に記載の方法に従い調製される、3-メチル-4-フェニル-1,2,5-チアジアゾール1,1-ジオキシドがある。
【0087】
好適なペルフルオロイミン酸素輸送触媒としては、これらに限定されないが、Tetrahedron Letters(1994),35(34),6329-30に記載の方法に従い製造することができる、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-N-(ノナフルオロブチル)ブタンイミドイルフッ化物がある。
【0088】
好適な環状糖ケトン酸素輸送触媒としては、これらに限定されないが、米国特許第6649085号明細書(Column 12,Example 1)に記載の方法に従い調製される、1,2:4,5-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリスロ-2,3-ヘキソジウロ-2,6-ピラノースがある。
【0089】
好ましくは、漂白触媒は、イミニウムおよび/もしくはカルボニル官能基を含み、典型的に、酸素原子の受容時、特に過酸および/もしくはその塩からの酸素原子の受容時に、オキサジリジウムおよび/もしくはジオキシラン官能基を形成することができる。好ましくは、漂白触媒は、オキサジリジウム官能基を含み、および/または酸素原子の受容時、特に過酸および/もしくはその塩からの酸素原子の受容時に、オキサジリジウム官能基を形成することができる。好ましくは、漂白成分は、環状イミニウム官能基を含み、好ましくは、環状部分は、5~8原子(窒素原子を含む)、好ましくは6原子の環サイズを有する。好ましくは、漂白触媒は、アリリミニウム官能基、好ましくは二環式アリリミニウム官能基、好ましくは3,4-ジヒドロイソキノリニウム官能基を含む。典型的には、イミン官能基は、4級イミン官能基であり、典型的に、酸素原子の受容時、特に過酸および/もしくはその塩からの酸素原子の受容時に、4級オキサジリジウム官能基を形成することができる。別の態様では、洗剤組成物は、0以下のlogPo/w、-0.5以下のlogPo/w、-1.0以下のlogPo/w、-1.5以下のlogPo/w、-2.0以下のlogPo/w、-2.5以下のlogPo/w、-3.0以下のlogPo/w、あるいはまた-3.5以下のlogPo/wを有する漂白成分を含む。logPo/wを決定する方法については、以下に詳しく記載する。
【0090】
典型的に、漂白成分は、0.01~約0.30、0.05~約0.25、あるいはまた約0.10~0.20のXSOを有する漂白種を生成することができる。XSOを決定する方法については、以下に詳しく記載する。例えば、イソキノリニウム構造を有する漂白成分は、オキサジリジウム構造を有する漂白種を生成することができる。この例では、XSOは、オキサジリジウム漂白種のそれである。
【0091】
好ましくは、漂白触媒は、下記の化学式:
【化7】
に対応する化学構造を有し、
式中、nおよびmは、独立して、0~4であり、好ましくは、nおよびmは両方が0であり;各R1は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、融合アリール、複素環、融合複素環、ニトロ、ハロ、シアノ、スルホナト、アルコキシ、ケト、カルボキシルおよびカルボアルコキシラジカルからなる群から選択される置換もしくは非置換ラジカルから選択され;ならびに任意の2つの隣接R1置換基が結合して、融合アリール、融合炭素環もしくは融合複素環を形成してもよく;各R2は、独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、シクロアルキル、アルカリル、アリール、アラルキル、アルキレン、複素環、アルコキシ、アリールカルボニル基、カルボキシアルキル基およびアミド基からなる群から選択される置換もしくは非置換ラジカルから独立して選択され;任意のR2がいずれか他のR2と結合して、共通環の一部を形成してもよく;任意のジェミナルR2が結合してカルボニルを形成してもよく;また、任意の2つのR2が結合して、置換もしくは非置換の融合した不飽和部分を形成してもよく;R3は、C1~C20置換もしくは非置換アルキルであり;R4は、水素または部分Qt-Aであり、ここで、Qは、分岐または非分岐アルキレンであり、t=0または1であり、Aは、OSO3 -、SO3 -、CO2 -、OCO2 -、OPO3 2-、OPO3-およびOPO2 -からなる群から選択されるアニオン基であり;R5は、水素または部分-CR1112-Y-Gb-Yc-[(CR910y-O]k-R8であり;ここで、各Yは、独立して、O、S、N-H、またはN-R8からなる群から選択され;各R6は、独立して、アルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択され、前記部分は、置換もしくは非置換であり、置換もしくは非置換のいずれにかかわらず、前記部分は、21個未満の炭素を有し;各Gは、独立して、CO,SO2、SO、POおよびPO2からなる群から選択され;R9およびR10は、独立して、HおよびC1~C4アルキルからなる群から選択され;R11およびR12は、独立して、Hおよびアルキルからなる群から選択されるか、または合わせて考える場合、結合してカルボニルを形成してもよく;b=0または1;c=0または1であってよいが、b=0であるとき、c=0でなければならない;yは1~6の任意の整数であり;kは0~20の整数であり;R6はH、またはアルキル、アリールもしくはヘテロアリール部分であり;前記部分は、置換もしくは非置換であり;Xは、それが存在すれば、好適な電荷平衡対イオンであり、R4が水素である場合には、Xが存在するのが好ましく、好適なXとしては、これらに限定されないが、塩化物、臭化物、硫酸塩、メトサルフェート、スルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ボロンテトラフルオリドおよびリン酸塩が挙げられる。
【0092】
本発明の一実施形態において、漂白触媒は、下記の一般式:
【化8】
に対応する化学構造を有し
式中、R13は、3~24個の炭素原子(分岐炭素原子を含む)を含む分岐アルキル基および1~24個の炭素原子を含む直鎖アルキル基であり;好ましくは、R13は、8~18個の炭素原子を含む分岐アルキル基または8~18個の炭素原子を含む直鎖アルキル基であり;好ましくは、R13は、2-プロピルへプチル、2-ブチルオクチル、2-ペンチルノニル、2-ヘキシルデシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシル、イソ-ノニル、イソ-デシル、イソ-トリデシルおよびイソ-ペンタデシル;好ましくは、R13は、2-ブチルオクチル、2-ペンチルノニル、2-ヘキシルデシル、イソ-トリデシルおよびイソ-ペンタデシルからなる群から選択される。
【0093】
好ましくは、漂白成分は、漂白触媒以外に、過酸源、特に有機漂白触媒を含む。過酸源は、以下:(a)事前に形成した過酸、(b)好ましくは漂白活性化剤と組み合わせた過炭素塩、過ホウ酸塩または過硫酸塩(過硫酸水素源);および(c)織物または硬質表面処理ステップにおいて、水の存在下、in situで過酸を形成するペルヒドラーゼ酵素およびエステルから選択してもよい。
【0094】
過酸および/または漂白活性化剤が存在する場合、これは、一般に、組成物に対して、約0.1~約60重量%、約0.5~約40重量%、または約0.6~約10重量%存在する。1種または複数種の疎水性過酸またはその前駆体を1種または複数種の親水性過酸またはその前駆体と組み合わせて用いてもよい。
【0095】
過酸化水素源および過酸もしくは漂白活性化剤の量は、利用可能な酸素(過酸化物源から):過酸のモル比が、1:1~35:1、あるいはまた2:1~10:1であるように選択してよい。
【0096】
(6)金属含有漂白触媒-触媒成分は、触媒金属複合体によって提供してもよい。1タイプの金属含有漂白触媒は、例えば、銅、鉄、チタン、ルテニウム、タングステン、モリブデン、もしくはマンガンカチオンなどの規定の漂白触媒活性の遷移金属カチオン、亜鉛もしくはアルミニウムカチオンなどの、漂白触媒活性がほとんどまたは全くない補助金属カチオン、ならびに触媒および補助金属カチオンについて既定の安定定数を有する金属イオン封鎖剤(sequestrate)、特にエチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンリン酸)およびそれらの水溶性塩を含む触媒系である。このような触媒は、米国特許第4430243号明細書に開示されている。好ましい触媒は、国際公開第09/839406号パンフレット、米国特許第6218351号明細書および国際公開第00/012667号パンフレットに記載されている。遷移金属触媒、または架橋多座配位子N-ドナー配位子である配位子が特に好ましい。必要に応じて、本明細書の組成物は、マンガン化合物を用いて、触媒することができる。このような化合物および使用レベルは、当業者には公知であり、例えば、米国特許第5576282号明細書に開示のマンガンベースの触媒がある。
【0097】
本発明で有用なコバルト漂白触媒は公知であり、例えば、米国特許第5597936号明細書;米国特許第5595967号明細書に記載されている。このようなコバルト触媒は、例えば、米国特許第5597936号明細書および米国特許第5595967号明細書に教示されているような公知の方法によって容易に調製される。
【0098】
本発明の組成物は、ビスピドン(米国特許第7501389号明細書)および/または大多環式硬質配位子(略称「MRL」)などの配位子の遷移金属複合体を含むのが好適である。実際に、また非限定的に、水性洗浄媒質中少なくとも1億分の1部前後の活性MRL種、典型的には、洗浄液中約0.005ppm~約25ppm、約0.05ppm~約10ppm、あるいはまた約0.1ppm~約5ppmのMRLを提供するように、本発明の組成物および方法を調節することができる。
【0099】
本発明の遷移金属漂白触媒中の好適な遷移金属としては、例えば、マンガン、鉄およびクロミウムがある。好適なMRLには、5,12-ジエチル-1,5,8,12-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカンが含まれる。好適な遷移金属MRLは、例えば、米国特許第6225464号明細書および国際公開第00/32601号パンフレットに教示されているような公知の手順により容易に調製される。
【0100】
(7)光漂白剤-好適な光漂白剤としては、例えば、スルホン化亜鉛フタロシアン スルホン化アルミニウムフタロシアン、キサンテン染料およびこれらの混合物が挙げられる。本発明の組成物に用いるのに好ましい漂白成分には、過酸化水素源、漂白活性化剤および/または有機過酸(任意選択で、過酸化水素源と漂白活性化剤の反応によりin situで生成する)が、漂白触媒と組み合わせて含まれる。好ましい漂白成分は、前述したように、漂白触媒、好ましくは有機漂白触媒を含む。
【0101】
特に好ましい漂白成分は、漂白触媒、特に有機漂白触媒である。
【0102】
組成物は、固体もしくは液体洗浄および/または治療組成物、あるいは、単一または多コンパートメント単位用量形態(multi-compartment unit dose form)を取る組成物であってもよい。
【0103】
一実施形態において、変異体は、下記の式:
【化9】
【化10】
または
c)これらの混合物
(式中、各R1は、独立して、3~24個の炭素を含む分枝状アルキル基または1~24個の炭素を含む直鎖状アルキル基である)
を有する有機触媒からなる群から選択される有機触媒の存在下で、向上した性能を有する。
【0104】
いくつかの実施形態において、R1は、独立して、8~18個の炭素を含む分枝状アルキル基または8~18個の炭素を含む直鎖状アルキル基である。ある実施形態では、R1は、独立して、2-プロピルへプチル、2-ブチルオクチル、2-ペンチルノニル、2-ヘキシルデシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシル、イソ-ノニル、イソ-デシル、イソ-トリデシル、およびイソ-パンタデシルからなる群から選択される。好ましくは、R1は、独立して、2-ブチルオクチル、2-ペンチルノニル、2-ヘキシルデシル、イソ-トリデシル、およびイソ-パンタデシルからなる群から選択される。好ましい変異体は、Rが2-ブチルオクチルである式b)の触媒の存在下で向上した性能を有する。
【0105】
有機触媒は、典型的に、洗浄液1リットル当たり0.001~0.02gの活性物質を提供する量、または洗浄液1リットル当たり0.01~4.5、0.5~4.0、1.0~3.5、1.5~3.0、または2.0~2.5ppmの活性物質を提供する量で用いられる。
【0106】
ある実施形態では、有機過酸源は漂白剤として存在する。有機過酸源は、事前に形成された過酸またはジアシル過酸化物であってよく、または過酸化水素源および漂白活性化剤を含んでもよい。好適な漂白剤としては、ジアシル過酸化物、漂白活性化剤、過酸化水素、過酸化水素源、事前に形成された過酸およびこれらの混合物が挙げられる。
【0107】
一般に、漂白剤を用いる場合、本発明の組成物は、対象の洗浄組成物の重量に対して、約0.1%~約50%、あるいはまた約0.1%~約25%の漂白剤を含んでよい。漂白剤は、典型的に、有機過酸源または活性化過酸素源である。過酸および/または漂白活性化剤が存在する場合、これは、一般に、組成物に対して、約0.1~約60重量%、約0.5~約40重量%、あるいはまた約0.6~約10重量%存在する。1種または複数種の疎水性過酸またはその前駆体を1種または複数種の親水性過酸またはその前駆体と組み合わせて用いてもよい。過酸化水素源および過酸もしくは漂白活性化剤の量は、利用可能な酸素(過酸化物源から):過酸のモル比が、1:1~35:1、あるいはまた2:1~10:1となるように選択してよい。
【0108】
リパーゼ変異体の酸化的分解反応に対する安定性を評価するために、相対性能(Relative Performance)(RPwash)の値、すなわち、試験しようとするリパーゼ変異体の洗浄性能(P)を決定し、これを配列番号2のリパーゼの洗浄性能で割る。ゆえに、RPwash=P(本発明のリパーゼ変異体)/P(配列番号2リパーゼ)。酸化的分解反応に対して向上した安定性を有するリパーゼ変異体は、少なくとも1.01、好ましくは少なくとも1.1、あるいはまた少なくとも1.5のRPwashを有する。
【0109】
親リパーゼ
親リパーゼは、(a)配列番号2の成熟ポリペプチドに対し少なくとも60%の配列同一性を有するポリペプチド;(b)低ストリンジェンシー条件下で(i)配列番号1の成熟ポリペプチドコード配列もしくは(ii)(i)の完全長補体とハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド;または(c)配列番号1の成熟ポリペプチドコード配列に対し少なくとも60%の配列同一性を有するポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドであってよい。
【0110】
一態様において、親は、リパーゼ活性を有する、配列番号2の成熟ポリペプチドに対して、少なくとも60%、例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。一態様では、親のアミノ酸配列は、配列番号2の成熟ポリペプチドと、20以下のアミノ酸、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のアミノ酸が異なる。
【0111】
別の態様において、親は、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、またはこれから構成される。別の態様において、親は、配列番号2の成熟ポリペプチドを含むか、またはこれから構成される。別の態様において、親は、配列番号2のアミノ酸1~269を含むか、またはこれから構成される。
【0112】
別の態様において、親は、成熟ポリペプチドのアミノ酸の数の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%を含む配列番号2の成熟ポリペプチドの断片である。
【0113】
別の態様において、親は、配列番号2の成熟ポリペプチドの対立遺伝子変異体である。
【0114】
別の態様において、親は、超低ストリンジェンシー条件、低ストリンジェンシー条件、中ストリンジェンシー条件、中-高ストリンジェンシー条件、高ストリンジェンシー条件、または超高ストリンジェンシー条件下で、(i)配列番号1の成熟ポリペプチドコード配列、もしくは(ii)(i)の完全長補体とハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされる(Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d edition,Cold Spring Harbor,New York)。
【0115】
配列番号1のポリヌクレオチドまたはそのサブ配列、ならびに、配列番号2のポリペプチドまたはその断片は、技術分野において周知である方法に従って異なる属もしくは種の菌株から親をコードするDNAを同定およびクローン化するよう核酸プローブを設計するために用いられ得る。特に、このようなプローブは、その対応する遺伝子を同定および単離ために、標準的なサザンブロッティング法に続いて、対象細胞のゲノムDNAまたはcDNAを伴うハイブリダイゼーションのために用いられることが可能である。このようなプローブは、配列全体よりもかなり短いことが可能であるが、少なくとも15、例えば、少なくとも25、少なくとも35または少なくとも70ヌクレオチドの長さであるべきである。好ましくは、核酸プローブは、例えば、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチドまたは少なくとも900ヌクレオチドの長さなどの、少なくとも100ヌクレオチドの長さである。DNAおよびRNAプローブの両方が用いられることが可能である。プローブは、典型的には、対応する遺伝子を検出するために標識化される(例えば、32P、3H、35S、ビオチンまたはアビジンで)。このようなプローブは本発明によって包含される。
【0116】
このような他の株から調製したゲノムDNAもしくはcDNAライブラリは、上記のプローブとハイブリダイズし、親をコードするDNAについてスクリーニングされ得る。このような他の株由来のゲノムまたは他のDNAは、アガロースもしくはポリアクリルアミドゲル電気泳動、または、他の分離技術によって分離され得る。ライブラリからのDNAまたは分離されたDNAは、ニトロセルロースまたは他の好適なキャリア材料に移されて固定され得る。配列番号1またはそのサブ配列とハイブリダイズするクローンまたはDNAを同定するために、キャリア材料がサザンブロッティングにおいて用いられる。
【0117】
本発明の目的のために、ハイブリダイゼーションは、ポリヌクレオチドが、(i)配列番号1;(ii)配列番号1の成熟ポリペプチドコード配列;(iii)これらの完全長補体;または(iv)これらのサブ配列に対応する標識化核酸プローブと、超低~超高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズすることを意味する。これらの条件下で核酸プローブがハイブリダイズする分子は、例えば、X線フィルム、または、当該技術分野において公知であるいずれかの他の検出手段を用いて検出が可能である。
【0118】
一態様において、核酸プローブは、配列番号1の成熟ポリペプチドコード配列である。別の態様において、核酸プローブは、配列番号1のヌクレオチド67~873である。他の態様において、核酸プローブは、配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;その成熟ポリペプチド;または、その断片である。他の態様において、核酸プローブは、配列番号1である。
【0119】
別の実施形態において、親は、配列番号1の成熟ポリヌクレオチドコード配列に対して、少なくとも60%、例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる。
【0120】
ポリペプチドは、あるポリペプチドの領域が他のポリペプチドの領域のN末端またはC末端で融合したハイブリッドポリペプチドであり得る。
【0121】
親は、他のポリペプチドが本発明のポリペプチドのN末端またはC末端に融合した融合ポリペプチドまたは切断可能な融合ポリペプチドであり得る。融合ポリペプチドは、他のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを本発明のポリヌクレオチドに融合させることにより生成される。融合ポリペプチドを生成する技術は技術分野において公知であり、フレーム中にあるよう、また、融合ポリペプチドの発現が同一のプロモータおよびターミネータの制御下にあるよう、ポリペプチドをコードするコード配列を結合することなどである。融合ポリペプチドはまた、融合ポリペプチドが翻訳後に形成されるインテインテクノロジーを用いて構築され得る(Cooper et al.,1993,EMBO J.12:2575-2583;Dawson et al.,1994,Science 266:776-779)。
【0122】
融合ポリペプチドは、2つのポリペプチド間に切断部位をさらに含んでいることが可能である。融合タンパク質を分泌すると、この部位が切断されて、2つのポリペプチドが放出される。切断部位の例としては、これらに限定されないが、Martin et al.,2003,J.Ind.Microbiol.Biotechnol.3:568-576;Svetina et al.,2000,J.Biotechnol.76:245-251;Rasmussen-Wilson et al.,1997,Appl.Environ.Microbiol.63:3488-3493;Ward et al.,1995,Biotechnology 13:498-503;および、Contreras et al.,1991,Biotechnology 9:378-381;Eaton et al.,1986,Biochemistry 25:505-512;Collins-Racie et al.,1995,Biotechnology 13:982-987;Carter et al.,1989,Proteins:Structure,Function,and Genetics 6:240-248;および、Stevens,2003,Drug Discovery World 4:35-48において開示されている部位が挙げられる。
【0123】
親は、すべての種類の微生物から得られてもよい。本発明の目的のために、「~から得られる」という用語は、本明細書において用いられるところ、所与のソースに関連して、ポリヌクレオチドによってコードされる親は、ソースによって生成されるか、または、ソースからのポリヌクレオチドが挿入された系統によって生成されることを意味すべきである。一態様において、親は、細胞外で分泌される。
【0124】
親は、細菌性リパーゼであってよい。例えば、親は、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ゲオバチルス属(Geobacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、オセアノバチルス属(Oceanobacillus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、サーモビフィダ・フスカ・アリアス(Thermobifida fusca alias) サーモモノスポラ・フスカ(Thermomonospora fusca)リパーゼなどのグラム陽性細菌性ポリペプチド、または、カムピロバクター属(Campylobacter)、大腸菌(E.coli)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、イリオバクター属(Ilyobacter)、ネイッセリア属(Neisseria)、シュードモナス属(Pseudomonas)、サルモネラ属(Salmonella)、もしくはウレアプラズマ属(Ureaplasma)リパーゼなどのグラム陰性細菌性ポリペプチドであってもよい。
【0125】
一態様において、親は、バチルス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・シルクランス(Bacillus circulans)、バチルス・クラウシイ(Bacillus clausii)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・ラウツス(Bacillus lautus)、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、またはバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)リパーゼである。
【0126】
別の態様において、親は、ストレプトコッカス・エクイシミリス(Streptococcus equisimilis)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・ウベリス(Streptococcus uberis)、またはストレプトコッカス・エクイ亜種ゾエピデミカス(Streptococcus equi subsp.Zooepidemicus)リパーゼである。
【0127】
別の態様において、親は、ストレプトマイセス・アクロモゲネス(Streptomyces achromogenes)、ストレプトマイセス・アベルミチリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトマイセス・コエリカラー(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、またはストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)リパーゼである。
【0128】
親は、真菌性リパーゼであってもよい。例えば、親は、カンジダ属(Candida)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、ピチア属(Pichia)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、もしくはヤロウィア属(Yarrowia)リパーゼなどの酵母性リパーゼ;またはアクレモニウム属(Acremonium)、アガリクス属(Agaricus)、アルテルナリア属(Alternaria)、アスペルギルス属(Aspergillus)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium)、ボトリオスパエリア属(Botryospaeria)、セリポリオプシス属(Ceriporiopsis)、カエトミジウム属(Chaetomidium)、クリソスポリウム属(Chrysosporium)、クラビセプス属(Claviceps)、コクリオボラス属(Cochliobolus)、コプリノプシス属(Coprinopsis)、コプトテルメス属(Coptotermes)、コリナスカス属(Corynascus)、クリホネクトリア属(Cryphonectria)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、ジプロディア属(Diplodia)、エキシディア属(Exidia)、フィリバシジウム属(Filibasidium)、フサリウム属(Fusarium)、ギベレラ属(Gibberella)、ホロマスチゴトイデス属(Holomastigotoides)、フミコラ属(Humicola)、イルペックス属(Irpex)、レンチヌラ属(Lentinula)、レプトスパエリア属(Leptospaeria)、マグナポルテ属(Magnaporthe)、メラノカルパス属(Melanocarpus)、メリピラス属(Meripilus)、ムコル属(Mucor)、ミセリオフソラ属(Myceliophthora)、ネオカリマスチックス属(Neocallimastix)、ネウロスポラ属(Neurospora)、パエシロミセス属(Paecilomyces)、ペニシリウム属(Penicillium)、ファネロカエテ属(Phanerochaete)、ピロミセス属(Piromyces)、ポイトラシア属(Poitrasia)、シュードプレクタニア属(Pseudoplectania)、シュードトリコニンファ属(Pseudotrichonympha)、リゾムコル属(Rhizomucor)、シゾフィラム属(Schizophyllum)、シタリジウム属(Scytalidium)、タラロミセス属(Talaromyces)、サーモアスカス属(Thermoascus)、チエラビア属(Thielavia)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)、トリコデルマ属(Trichoderma)、トリコファエア属(Trichophaea)、ベルチシリウム属(Verticillium)、ボルバリエラ属(Volvariella)、もしくはキシラリア属(Xylaria)リパーゼなどの糸状真菌性リパーゼであってもよい。
【0129】
別の形態では、親は、サッカロミセス・カルスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ジアスタチカス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ドウグラシ(Saccharomyces douglasii)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、またはサッカロミセス・オビホルミス(Saccharomyces oviformis)リパーゼである。
【0130】
別の形態では、親は、アクレモニウム・セルロリチカス(Acremonium cellulolyticus)、アスペルギルス・アキュレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ホエチダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、クリソスポリウム・イノプス(Chrysosporium inops)、クリソスポリウム・ケラチノフィラム(Chrysosporium keratinophilum)、クリソスポリウム・ルクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、クリソスポリウム・メルダリウム(Chrysosporium merdarium)、クリソスポリウム・パニコラ(Chrysosporium pannicola)、クリソスポリウム・クイーンズランジカム(Chrysosporium queenslandicum)、クリソスポリウム・トプロピカム(Chrysosporium tropicum)、クリソスポリウム・ゾナタム(Chrysosporium zonatum)、フサリウム・バクトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フサリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フサリウム・クロックウェレンズ(Fusarium crookwellense)、フサリウム・クルモラム(Fusarium culmorum)、フサリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)、フサリウム・グラミナム(Fusarium graminum)、フサリウム・ヘテロスポラム(Fusarium heterosporum)、フサリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フサリウム・レチキュラタム(Fusarium reticulatum)、フサリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フサリウム・サムブシヌム(Fusarium sambucinum)、フサリウム・サルコロウム(Fusarium sarcochroum)、フサリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フサリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フサリウム・トルロサム(Fusarium torulosum)、フサリウム・トリコセシオイデス(Fusarium trichothecioides)、フサリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、フミコラ・グリセア(Humicola grisea)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)、イプレックス・ラクテウス(Irpex lacteus)、ムコル・ミエヘイ(Mucor miehei)、ミセリオプソラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ネウロスポラ・クラサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・フニクロサム(Penicillium funiculosum)、ペニシリウム・プルプロゲナム(Penicillium purpurogenum)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、チエラビア・アクロマチカ(Thielavia achromatica)、チエラビア・アルボミセス(Thielavia albomyces)、チエラビア・アルボピロサ(Thielavia albopilosa)、チエラビア・アウストラレインシス(Thielavia australeinsis)、チエラビア・フィメチ(Thielavia fimeti)、チエラビア・ミクロスポラ(Thielavia microspora)、チエラビア・オビスポラ(Thielavia ovispora)、チエラビア・ペルビアナ(Thielavia peruviana)、チエラビア・セトサ(Thielavia setosa)、チエラビア・スペデドニウム(Thielavia spededonium)、チエラビア・サブサーモフィラ(Thielavia subthermophila)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンジブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)、またはトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)リパーゼである。
【0131】
別の態様では、親は、フミコラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)リパーゼ、例えば、配列番号2のリパーゼまたはその成熟ポリペプチドである。
【0132】
上に挙げた種に関して、本発明が、完全および不完全な状態の両方を含み、また、それらが知られている種の名称にかかわらず、他の分類学上の均等物、例えば、アナモルフを包含することは理解されよう。当業者であれば、適切な均等物の同一性を容易に認識されよう。
【0133】
これらの種の系統は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC:American Type Culture Collection)、ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ:Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)、オランダ微生物株保存センター(CBS:Centraalbureau Voor Schimmelcultures)、および、農業研究局特許培養物コレクション(Agricultural Research Service Patent Culture Collection)、北方リサーチセンター(NRRL:Northern Regional Research Center)などの多数の微生物保存機関において公共に容易に利用可能である。
【0134】
親は、上記のプローブを用いて、自然(例えば、汚染物、コンポスト、水等)から単離された微生物、または、天然材料(例えば、汚染物、コンポスト、水等)から直接的に得られたDNAサンプルを含む他のソースから同定および得られ得る。微生物およびDNAを自然環境から直接的に単離する技術は技術分野において周知である。次いで、親をコードするポリヌクレオチドは、他の微生物または混合DNAサンプルのゲノムDNAもしくはcDNAライブラリを同じようにスクリーニングすることにより得られ得る。一旦、親をコードするポリヌクレオチドがプローブで検出されたら、ポリヌクレオチドは、当業者に公知の技術(例えば、前述のSambrook et al.,1989を参照のこと)を利用することにより単離またはクローン化され得る。
【0135】
変異体の調製
本発明はまた、リパーゼ変異体を得るための方法に関し、この方法は、親リパーゼに、配列番号2の成熟ポリペプチドの位置T37、N39、またはG91に対応する1つまたは複数の位置で置換を導入するステップであって、変異体が、リパーゼ活性を有し、親リパーゼと比較して、下記の式:
【化11】
【化12】
または
c)これらの混合物、
(式中、各R1は、独立して、3~24個の炭素を含む分枝状アルキル基または1~24個の炭素を含む直鎖状アルキル基である)
を有する有機触媒からなる群から選択される有機触媒の存在下で、向上した性能を有するステップと;前記変異体を回収するステップを含む。
【0136】
ある実施形態において、本発明は、R1が、独立して、8~18個の炭素を含む分枝状アルキル基または8~18個の炭素を含む直鎖状アルキル基である、方法に関する。
【0137】
ある実施形態では、本発明は、R1が、独立して、2-プロピルへプチル、2-ブチルオクチル、2-ペンチルノニル、2-ヘキシルデシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシル、イソ-ノニル、イソ-デシル、イソ-トリデシルおよびイソ-ペンタデシルからなる群から選択される。好ましくは、R1は、2-ブチルオクチル、2-ペンチルノニル、2-ヘキシルデシル、イソ-トリデシルおよびイソ-ペンタデシルからなる群から選択される。
【0138】
有機触媒は、典型的に、洗浄液1リットル当たり0.001~0.02gの活性物質を提供する量、または洗浄液1リットル当たり0.01~4.5、0.5~4.0、1.0~3.5、1.5~3.0、または2.0~2.5ppmの活性物質を提供する量で用いられる。
【0139】
ある実施形態では、本発明は、有機過酸源が漂白剤として存在する方法に関する。有機過酸源は、事前に形成された過酸またはジアシル過酸化物であってよく、または過酸化水素源および漂白活性化剤を含んでもよい。
【0140】
好適な漂白剤としては、ジアシル過酸化物、漂白活性化剤、過酸化水素、過酸化水素源、事前に形成された過酸およびこれらの混合物が挙げられる。
【0141】
一般に、漂白剤を用いる場合、本発明の組成物は、対象の洗浄組成物の重量に対して、約0.1%~約50%、あるいはまた約0.1%~約25%の漂白剤を含んでよい。漂白剤は、典型的に、有機過酸源または活性化過酸素源である。
【0142】
過酸および/または漂白活性化剤が存在する場合、これは、一般に、組成物に対して、約0.1~約60重量%、約0.5~約40重量%、あるいはまた約0.6~約10重量%の量で存在する。1種または複数種の疎水性過酸またはその前駆体を1種または複数種の親水性過酸またはその前駆体と組み合わせて用いてもよい。
【0143】
過酸化水素源および過酸もしくは漂白活性化剤の量は、利用可能な酸素(過酸化物源から):過酸のモル比が、1:1~35:1、あるいはまた2:1~10:1となるように選択してよい。
【0144】
ある実施形態において、本発明は、親リパーゼが、配列番号2の成熟ポリペプチドに対して少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;配列番号2の成熟ポリペプチドのアミノ酸配列、またはリパーゼ活性を有するその断片から構成される、方法に関する。
【0145】
ある実施形態において、本発明は、変異体が、(a)配列番号2の成熟ポリペプチドに対して少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;(b)低ストリンジェンシー条件下で(i)配列番号1の成熟ポリペプチドコード配列、もしくは(ii)(i)の完全長相補鎖とハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド;または(c)配列番号1の成熟ポリペプチドコード配列に対して少なくとも60%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである、方法に関する。
【0146】
ある実施形態において、本発明は、置換が、T37A、D、E、F、G、H、I、L、N、P、Q、R、S、V、W、Y、N39A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、P、Q、R、T、V、W、Y、およびG91D、H、I、P、Qから選択される、方法に関する。
【0147】
ある実施形態において、本発明は、変異体が、配列番号2の成熟ポリペプチドの位置D96、T143、A150、E210、G225、T231、N233およびP250に対応する1つまたは複数の位置に置換をさらに含む、方法に関する。
【0148】
ある実施形態では、本発明は、置換が、D96G、T143A、A150G、E210Q、G225R、T231R、N233RおよびP250Rから選択される、方法に関する。
【0149】
変異体は、部位特異的突然変異誘発、合成遺伝子構築、半合成遺伝子構築、無作為突然変異誘発、シャッフリング等などの技術分野において公知であるいずれかの突然変異誘発法を用いて調製可能である。
【0150】
部位特異的突然変異誘発は、親をコードするポリヌクレオチドにおける1つまたは複数の規定の部位で1つまたは複数(例えば、いくつか)の突然変異を導入する技術である。
【0151】
部位特異的突然変異誘発は、所望の突然変異を含有するオリゴヌクレオチドプライマーが使用されるPCRによってインビトロで達成されることが可能である。部位特異的突然変異誘発はまた、親をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドにおける部位が制限酵素により切断され、および、その後、ポリヌクレオチドに突然変異を含有するオリゴヌクレオチドが連結されるカセット式突然変異誘発によってインビトロで行われることが可能である。通常、プラスミドおよびオリゴヌクレオチドを消化する制限酵素は同一であり、プラスミドの付着末端と挿入断片とを互いに連結させる。例えば、Scherer and Davis,1979,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:4949-4955;および、Barton et al.,1990,Nucleic Acids Res.18:7349-4966を参照のこと。
【0152】
部位特異的突然変異誘発はまた、技術分野において公知である方法によってインビボで達成可能である。例えば、米国特許出願公開第2004/0171154号明細書;Storici et al.,2001,Nature Biotechnol.19:773-776;Kren et al.,1998,Nat.Med.4:285-290;および、Calissano and Macino,1996,Fungal Genet.Newslett.43:15-16を参照のこと。
【0153】
いずれかの部位特異的突然変異誘発法が本発明において用いられることが可能である。変異体の調製に用いられることが可能である多くの市販のキットが入手可能である。
【0154】
合成遺伝子構築には、対象のポリペプチドをコードするための設計されたポリヌクレオチド分子のインビトロ合成が伴う。遺伝子合成は、Tian et al.(2004,Nature 432:1050-1054)により記載されている多重マイクロチップ系テクノロジー、ならびに、オリゴヌクレオチドが合成されると共に光による制御が可能なマイクロ流体チップにアセンブルされる同様のテクノロジーなどの多数の技術を利用して行うことが可能である。
【0155】
単一もしくは複数のアミノ酸置換、欠失、および/または挿入は、Reidhaar-Olson and Sauer,1988,Science 241:53-57;Bowie and Sauer,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2152-2156;国際公開第95/17413号パンフレット;または、国際公開第95/22625号パンフレットにより開示されているものなどの公知の突然変異誘発方法、組換え法、および/または、シャッフリング法、これに続く関連するスクリーニング法を用いて行い、テストすることが可能である。用いられることが可能である他の方法としては、エラープローンPCR、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al.,1991,Biochemistry 30:10832-10837;米国特許第5,223,409号明細書;国際公開第92/06204号パンフレット)、および、領域特異的突然変異誘発(Derbyshire et al.,1986,Gene 46:145;Ner et al.,1988,DNA 7:127)が挙げられる。
【0156】
突然変異誘発/シャッフリング法は、宿主細胞によって発現されたクローン化突然変異誘発ポリペプチドの活性を検出するために、高スループット自動スクリーニング法と組み合わせることが可能である(Ness et al.,1999,Nature Biotechnology 17:893-896)。活性ポリペプチドをコードする突然変異誘発DNA分子は、宿主細胞から回収可能であり、技術分野における標準的な方法を用いて直ぐに配列決定されることが可能である。これらの方法では、ポリペプチドにおける個別のアミノ酸残基の重要性を直ぐに判定することが可能である。
【0157】
半合成遺伝子構築は、合成遺伝子構築および/または部位特異的突然変異誘発および/またはランダム突然変異誘発および/またはシャッフリングの態様を組み合わせることにより達成される。半合成構築は、PCR技術と組み合わされる、合成されたポリヌクレオチド断片を利用するプロセスに代表される。それ故、遺伝子の定義された領域が新たに合成され得、一方で、他の領域が部位特異的突然変異誘発性プライマーを用いて増幅され得、一方で、さらに他の領域がエラープローンPCRまたは非エラープローンPCR増幅に供され得る。次いで、ポリヌクレオチドサブ配列がシャッフルされ得る。
【0158】
ポリヌクレオチド
本発明はまた、本発明の変異体をコードする単離されたポリヌクレオチドにも関する。
【0159】
核酸構築物
本発明はまた、制御配列と適合性のある条件下で好適な宿主細胞においてコード配列の発現をもたらす1つまたは複数の制御配列と作動可能に結合した本発明の変異体をコードするポリヌクレオチドを含む核酸構築物に関する。
【0160】
ポリヌクレオチドは、変異体の発現をもたらすために多様な方法で操作され得る。ベクターへの挿入に先立つポリヌクレオチドの操作が、発現ベクターに応じて望ましいか、必要であり得る。組換えDNA法を利用するポリヌクレオチドの改変技術が技術分野において周知である。
【0161】
制御配列は、ポリヌクレオチドの発現のために宿主細胞によって認識されるポリヌクレオチドである、プロモータであり得る。プロモータは、変異体の発現を媒介する転写制御配列を含有する。プロモータは、ミュータント、切断型および雑種プロモータを含む宿主細胞において転写活性を示すいずれかのポリヌクレオチドであり得、ならびに、宿主細胞に対して相同性または非相同性である細胞外または細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られ得る。
【0162】
細菌性宿主細胞における本発明の核酸構築物の転写をもたらす好適なプロモータの例は、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)α-アミラーゼ遺伝子(amyQ)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)α-アミラーゼ遺伝子(amyL)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)ペニシリナーゼ遺伝子(penP)、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)マルトース生成アミラーゼ遺伝子(amyM)、古草菌(Bacillus subtilis)レバンスクラーゼ遺伝子(sacB)、古草菌(Bacillus subtilis)xylAおよびxylB遺伝子、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)cryIIIA遺伝子(Agaisse and Lereclus,1994,Molecular Microbiology 13:97-107)、大腸菌(E.coli)lacオペロン、大腸菌(E.coli)trcプロモータ(Egon et al.,1988,Gene 69:301-315)、ストレプトマイセス・コエリコロル(Streptomyces coelicolor)アガラーゼ遺伝子(dagA)および原核β-ラクタマーゼ遺伝子(Villa-Kamaroff et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:3727-3731)、ならびに、tacプロモータ(DeBoer et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21-25)から得られるプロモータである。さらなるプロモータが、“Useful proteins from recombinant bacteria”,Gilbert et al.,1980,Scientific American 242:74-94;および、Sambrook et al.,1989,supraに記載されている。タンデムプロモータの例が国際公開第99/43835号パンフレットに開示されている。
【0163】
糸状真菌宿主細胞において本発明の核酸構築物の転写をもたらす好適なプロモータの例を以下に挙げる:アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)アセトアミダーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)中性α-アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)酸性安定性α-アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)もしくはアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)グルコアミラーゼ(glaA)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)アルカリ性プロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)トリオースリン酸イソメラーゼ、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼ(国際公開第96/00787号パンフレット)、フサリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)アミログルコシダーゼ(国際公開第00/56900号パンフレット)、フサリウム・ベネナツム・ダリア(Fusarium venenatum Daria) (国際公開第00/56900号パンフレット)、フサリウム・ベネナツム・クイン(Fusarium venenatum Quinn) (国際公開第00/56900号パンフレット)、リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ、リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼ、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)β-グルコシダーゼ、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドラーゼI、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドラーゼII、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼI、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼII、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼIII、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼIV、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼV、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)キシラナーゼI、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)キシラナーゼII、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)β-キシロシダーゼ、ならびにNA2-tpiプロモータ(非翻訳リーダーが、アスペルギルス(Aspergillus)トリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子由来の非翻訳リーダーにより置換されたアスペルギルス(Aspergillus)中性α-アミラーゼ遺伝子;非制限的例として、非翻訳リーダーが、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)またはアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)トリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子由来の非翻訳リーダーにより置換されたアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)中性α-アミラーゼがある);ならびにこれらのミュータント、切断型、およびハイブリットプロモータ。
【0164】
酵母宿主において、有用なプロモータは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)エノラーゼ(ENO-1)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ガラクトキナーゼ(GAL1)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH1、ADH2/GAP)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)メタロチオネイン(CUP1)、およびサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)3-ホスホグリセリン酸キナーゼの遺伝子から得られる。酵母宿主のその他の有用なプロモータは、Romanos et al.,1992,Yeast 8:423-488に記載されている。
【0165】
制御配列は転写ターミネータであってもよく、これは、宿主細胞によって転写の終止と認識される。ターミネータ配列は、変異体をコードするポリヌクレオチドの3’末端に作動可能に結合する。宿主細胞において機能的であるすべてのターミネータが用いられ得る。
【0166】
細菌性宿主細胞について好ましいターミネータは、バチルス・クラウシイ(Bacillus clausii)アルカリプロテアーゼ(aprH)、バチルスリケニホルミス(Bacillus licheniformis)α-アミラーゼ(amyL)および大腸菌(Escherichia coli)リボソームRNA(rrnB)に係る遺伝子から得られる。
【0167】
糸状真菌宿主細胞の好ましいターミネータは、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)アントラニレート・シンターゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)α-グルコシダーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、およびフサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得られる。
【0168】
酵母宿主細胞の好ましいターミネータは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)エノラーゼ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)シトクロムC(CYC1)、およびサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼの遺伝子から得られる。酵母宿主細胞のその他の有用なターミネータは、Romanos et.al.,1992(前掲)によって記載されている。
【0169】
制御配列はまた、プロモータの下流側であって、遺伝子の発現を高める遺伝子のコード配列の上流側のmRNAスタビライザ領域であり得る。
【0170】
好適なmRNAスタビライザ領域の例は、バチルスチューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)cryIIIA遺伝子(国際公開第94/25612号パンフレット)および古草菌(Bacillus subtilis)SP82遺伝子(Hue et al.,1995,Journal of Bacteriology 177:3465-3471)から入手される。
【0171】
制御配列はまた、リーダー、すなわち、宿主細胞による翻訳に重要なmRNAの非翻訳領域であってもよい。リーダー配列は、変異体をコードするポリヌクレオチドの5’末端に作動可能に結合される。宿主細胞において機能性である任意のリーダーを用いてよい。
【0172】
糸状真菌宿主細胞の好ましいリーダーは、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼおよびアスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)トリオースリン酸イソメラーゼの遺伝子から得られる。
【0173】
酵母宿主細胞の好適なリーダーは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)エノラーゼ(ENO-1)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)3-ホスホグリセリン酸キナーゼ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)α因子、およびサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH2/GAP)の遺伝子から得られる。
【0174】
制御配列はまた、ポリアデニル化配列であってもよく、これは、変異体コード配列の3’末端に作動可能に結合し、転写されると、転写されたmRNAにポリアデノシン残基を付加するためのシグナルとして宿主細胞に認識される配列である。宿主細胞において機能性である任意のポリアデニル化配列を用いてよい。
【0175】
糸状真菌宿主細胞の好ましいポリアデニル化配列は、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)アントラニレート・シンターゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)α-グルコシダーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、およびフサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得られる。
【0176】
酵母宿主細胞に有用なポリアデニル化配列が、GuoおよびSherman,1995,Mol.Cellular Biol.15:5983-5990に記載されている。
【0177】
制御配列はまた、変異体のN-末端にリンクしたシグナルペプチドをコードし、および、変異体を細胞の分泌経路に送るシグナルペプチドコード領域であり得る。ポリヌクレオチドのコード配列の5’-末端は、変異体をコードするコード配列のセグメントと共に、翻訳読み枠に元々リンクしたシグナルペプチドコード配列を本質的に含有し得る。または、コード配列の5’-末端は、コード配列に対して外来性のシグナルペプチドコード配列を含有し得る。コード配列がシグナルペプチドコード配列を元々含有していない場合には、外来性のシグナルペプチドコード配列が必要とされる場合がある。または、外来性のシグナルペプチドコード配列は単に、変異体の分泌を増強するために天然シグナルペプチドコード配列を置き換えてもよい。しかしながら、発現変異体を宿主細胞の分泌経路に送るいずれかのシグナルペプチドコード配列がもちいられてもよい。
【0178】
細菌宿主細胞の効果的なシグナルペプチドコード配列は、バチルス属(Bacillus)NCIB11837マルトジェニックアミラーゼ、バチルスリケニホルミス(Bacillus licheniformis)サブチリシン、バチルスリケニホルミス(Bacillus licheniformis)β-ラクタマーゼ、バチルスステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)α-アミラーゼ、バチルスステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)中性プロテアーゼ(nprT、nprS、nprM)および古草菌(Bacillus subtilis)prsAの遺伝子から得られるシグナルペプチドコード配列である。さらなるシグナルペプチドが、Simonen and Palva,1993,Microbiological Reviews 57:109-137に記載されている。
【0179】
糸状真菌宿主細胞の有効なシグナルペプチドコード配列は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)中性アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)セルラーゼ、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)エンドグルカナーゼV、フミコラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)リパーゼ、およびリゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼの遺伝子から得られる。
【0180】
酵母宿主細胞に有用なシグナルペプチドは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)α因子およびサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)インベルターゼの遺伝子から得られる。その他の有用なシグナルペプチドコード配列は、Romanos et.al.,1992(前掲)によって記載されている。
【0181】
制御配列はまた、変異体のN末端に位置するプロペプチドをコードするプロペプチドコード配列であり得る。得られるポリペプチドは、酵素原またはプロポリペプチド(または、いくつかの場合においてヂモーゲン)として知られる。プロポリペプチドは一般に不活性であり、プロポリペプチドからのプロペプチドの触媒または自己触媒切断によって活性ポリペプチドに転換されることが可能である。プロペプチドコード配列は、古草菌(Bacillus subtilis)アルカリプロテアーゼ(aprE)、古草菌(Bacillus subtilis)天然プロテアーゼ(nprT)、ミセリオフトラテルモフィラ(Myceliophthora thermophila)ラッカーゼ(国際公開第95/33836号パンフレット)、リゾムコールミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼおよびサッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)α-因子に係る遺伝子から得られ得る。
【0182】
シグナルペプチドとプロペプチド配列との両方が存在する場合、プロペプチド配列は変異体のN末端の隣に位置され、シグナルペプチド配列は、プロペプチド配列のN末端の隣に位置される。
【0183】
宿主細胞の増殖に比した変異体の発現を制御する制御配列を加えることが望ましい場合もある。制御系の例は、化学的刺激または物理的刺激に対して応答して遺伝子の発現をオンオフさせるものであり、制御化合物の存在が含まれる。原核系中の制御系は、lac、tacおよびtrpオペレーター系を含む。酵母では、ADH2系またはGAL1系を用いてよい。糸状真菌では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼプロモータ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAα-アミラーゼプロモータ、およびアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)グルコアミラーゼプロモータを用いてよい。制御配列のその他の例は、遺伝子増幅を可能にする配列である。真核細胞系では、このような制御配列として、メトトレキサートの存在下で増幅されるジヒドロ葉酸還元酵素、および重金属で増幅されるメタロチオネイン遺伝子が挙げられる。こうしたケースでは、変異体をコードするポリヌクレオチドを、制御配列と作動可能に結合する。
【0184】
発現ベクター
本発明はまた、本発明の変異体をコードするポリヌクレオチド、プロモータ、ならびに、転写および翻訳終止シグナルを含む組換え発現ベクターに関する。種々のヌクレオチドおよび制御配列が一緒になって、このような部位で変異体をコードするポリヌクレオチドの挿入または置換を可能とするために1つまたは複数の好都合な制限部位を含み得る組換え発現ベクターが生成される。または、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む核酸構築物を発現に適切なベクターに挿入することにより発現され得る。発現ベクターの形成において、コード配列は、コード配列が、発現に適切な制御配列と作動可能にリンクするようベクター中に位置されている。
【0185】
組換え発現ベクターは、組換えDNA法に簡便に供されることが可能であり、ポリヌクレオチドの発現をもたらすことが可能であるいずれかのベクター(例えば、プラスミドまたはウイルス)であり得る。ベクターの選択は、典型的には、ベクターが導入される宿主細胞に対するベクターの親和性に応じることとなる。ベクターは、直鎖または閉鎖された環状プラスミドであり得る。
【0186】
ベクターは、例えばプラスミド、染色体外要素、微小染色体または人工染色体などの、自己複製ベクター(すなわち、染色体外のエンティティとして存在し、その複製が染色体複製とは無関係なベクター)であり得る。ベクターは、自己複製を確実とするための何らかの手段を含有し得る。または、ベクターは、宿主細胞に導入された際に、ゲノム中に統合され、および、中に統合された染色体と一緒に複製されるものであり得る。しかも、単一のベクターもしくはプラスミド、または、一緒になって、宿主細胞のゲノムに導入される全DNAを含有する2つ以上のベクターもしくはプラスミド、または、トランスポゾンが用いられてもよい。
【0187】
ベクターは、形質転換、形質移入、形質導入等された細胞の選択を容易とする1つまたは複数の選択マーカを含有することが好ましい。選択マーカは、その生成物が、殺生剤またはウイルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求体に対する原栄養性等をもたらす遺伝子である。
【0188】
細菌性選択マーカの例は、バチルスリケニホルミス(Bacillus licheniformis)もしくは古草菌(Bacillus subtilis)dal遺伝子、または、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、ネオマイシン、スペクチノマイシンまたはテトラサイクリン耐性などの抗生物質耐性を与えるマーカである。酵母宿主細胞の好適なマーカは、これらに限定されないが、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、MET3、TRP1、およびURA3である。糸状真菌宿主細胞で使用される選択マーカとしては、これらに限定されないが、amdS(アセトアミダーゼ)、argB(オルニチンカルボモイルトランスフェラーゼ)、bar(ホスフィノスリシン・アセチルトランスフェラーゼ)、hph(ハイグロマイシンホスフォトランスフェラーゼ)、niaD(硝酸レダクターゼ)、pyrG(オロチジン-5’-リン酸デカルボキシラーゼ)、sC(硫酸アデニルトランスフェラーゼ)、およびtrpC(アントラニレート・シンターゼ)、ならびにこれらの均等物が挙げられる。アスペルギルス(Aspergillus)細胞での使用に好適なのは、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)またはアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)amdSおよびpyrG遺伝子、ならびにストレプトマイセス・ヒグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)bar遺伝子である。
【0189】
ベクターは、宿主細胞のゲノムへのベクターの統合、または、ゲノムとは無関係の細胞中のベクターの自律複製を許容する要素を含有することが好ましい。
【0190】
宿主細胞ゲノムへの統合に関して、ベクターは、変異体をコードするポリヌクレオチドの配列、または、相同的もしくは非相同的組換えによるゲノムへの統合に係るベクターのいずれかの他の要素に依存し得る。または、ベクターは、染色体における正確な位置での宿主細胞のゲノムへの相同的組換えによる統合をもたらす追加のポリヌクレオチドを含有していてもよい。正確な位置で統合される可能性を高めるために、統合要素は、相同的組換えの確率を高めるために対応する標的配列に対して高度の配列同一性を有する、100~10,000塩基対、400~10,000塩基対および800~10,000塩基対などの十分な数の核酸を含有しているべきである。統合要素は、宿主細胞のゲノム中の標的配列と相同的であるいずれかの配列であり得る。さらに、統合要素は、非コーディングまたはコーディングポリヌクレオチドであり得る。他方で、ベクターは、非相同的組換えにより宿主細胞のゲノムに統合され得る。
【0191】
自律複製に関して、ベクターは、対象の宿主細胞におけるベクターの自律的な複製を可能とする複製起点をさらに含んでいてもよい。複製起点は、細胞において機能する自律複製を媒介するいずれかのプラスミドレプリケータであり得る。「複製起点」または「プラスミドレプリケータ」という用語は、インビボでのプラスミドまたはベクターの複製を可能とするポリヌクレオチドを意味する。
【0192】
細菌性複製起点の例は、大腸菌(E.coli)における複製を許容するプラスミドpBR322、pUC19、pACYC177およびpACYC184の複製起点、ならびに、バチルス属(Bacillus)における複製を許容するpUB110、pE194、pTA1060およびpAMβ1の複製起点である。
【0193】
酵母宿主細胞で用いられる複製起点の例としては、2μ複製起点、ARS1、ARS4、ARS1とCEN3の組合せ、およびARS4とCEN6の組合せがある。
【0194】
糸状真菌宿主細胞で有用な複製起点の例は、AMA1およびANS1である(Gems et al.,1991,Gene 98:61-67;Cullen et al.,1987,Nucleic Acids Res.15:9163-9175;国際公開第00/24883号パンフレット)。AMA1遺伝子の単離および当該遺伝子を含むプラスミドまたはベクターの構築は、国際公開第00/24883号パンフレットに開示の方法に従って達成することができる。
【0195】
本発明のポリヌクレオチドの2つ以上のコピーが宿主細胞に挿入されて、変異体の生成が高められてもよい。ポリヌクレオチドのコピーの数は、配列の少なくとも1つの追加のコピーを宿主細胞ゲノムに統合することにより、または、増幅可能な選択マーカ遺伝子をポリヌクレオチドに含めることにより増加させることが可能であり、ここで、選択マーカ遺伝子の増幅されたコピー、従って、ポリヌクレオチドの追加のコピーを含有する細胞は、適切な選択可能な薬剤中で細胞を培養することにより選択可能である。
【0196】
上記の要素を連結して本発明の組換え発現ベクターを構築するために用いられる手法は、当業者に周知である(例えば、前述のSambrook et al.,1989を参照のこと)。
【0197】
宿主細胞
本発明はまた、本発明の変異体の生成をもたらす1つまたは複数の制御配列に作動可能にリンクした本発明の変異体をコードするポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞に関する。ポリヌクレオチドを含む構築物もしくはベクターは、構築物もしくはベクターが染色体性組み込み体として、もしくは、既述の自己複製余剰-染色体性ベクターとして維持されるよう宿主細胞に導入される。「宿主細胞」という用語は、複製の最中に生じる突然変異により親細胞と同等ではない親細胞のいずれかの子孫を包含する。宿主細胞の選択は、変異体をコードする遺伝子およびそのソースに大きく依存することとなる。
【0198】
宿主細胞は、例えば、原核生物または真核生物などの、変異体の組換え生成において有用ないずれかの細胞であり得る。
【0199】
原核宿主細胞は、グラム陽性またはグラム陰性バクテリアのいずれかであり得る。グラム陽性バクテリアとしては、これらに限定されないが、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ゲオバチルス属(Geobacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、オセアノバチルス属(Oceanobacillus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)およびストレプトマイセス属(Streptomyces)が挙げられる。グラム陰性バクテリアとしては、これらに限定されないが、カムピロバクター属(Campylobacter)、大腸菌(E.coli)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、イリオバクター属(Ilyobacter)、ネイッセリア属(Neisseria)、シュードモナス属(Pseudomonas)、サルモネラ属(Salmonella)およびウレアプラズマ属(Ureaplasma)が挙げられる。
【0200】
細菌宿主細胞は、特にこれらに限定されないが、バチルス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・シルクランス(Bacillus circulans)、バチルス・クラウシイ(Bacillus clausii)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・ラウツス(Bacillus lautus)、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バチルスメガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、古草菌(Bacillus subtilis)、およびバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)細胞を含むいずれかのバチルス属(Bacillus)細胞であり得る。
【0201】
細菌宿主細胞はまた、特にこれらに限定されないが、ストレプトコッカス・エクイシミリス(Streptococcus equisimilis)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・ウベリス(Streptococcus uberis)、およびストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus equi subsp.Zooepidemicus)細胞のいずれかのストレプトコッカス属(Streptococcus)細胞を含むいずれかのストレプトコッカス属(Streptococcus)細胞であり得る。
【0202】
細菌宿主細胞はまた、特にこれらに限定されないが、ストレプトマイセス・アウロモゲネス(Streptomyces achromogenes)、ストレプトマイセス・アベルミチリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトマイセス・コエリコロル(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、およびストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)細胞を含むいずれかのストレプトマイセス属(Streptomyces)細胞であり得る。
【0203】
バチルス属(Bacillus)細胞へのDNAの導入は、プロトプラスト形質転換(例えば、Chang and Cohen,1979,Mol.Gen.Genet.168:111-115を参照のこと)、コンピテント細胞の形質転換(例えば、Young and Spizizen,1961,J.Bacteriol.81:823-829、または、Dubnau and Davidoff-Abelson,1971,J.Mol.Biol.56:209-221を参照のこと)、エレクトロポレーション(例えば、Shigekawa and Dower,1988,Biotechniques 6:742-751を参照のこと)、または、接合(例えば、Koehler and Thorne,1987,J.Bacteriol.169:5271-5278を参照のこと)により実施され得る。大腸菌(E.coli)細胞へのDNAの導入は、プロトプラスト形質転換(例えば、Hanahan,1983,J.Mol.Biol.166:557-580を参照のこと)またはエレクトロポレーション(例えば、Dower et al.,1988,Nucleic Acids Res.16:6127-6145を参照のこと)により実施され得る。ストレプトマイセス属(Streptomyces)細胞へのDNAの導入は、プロトプラスト形質転換、エレクトロポレーション(例えば、Gong et al.,2004,Folia Microbiol.(Praha)49:399-405を参照のこと)、接合(例えば、Mazodier et al.,1989,J.Bacteriol.171:3583-3585を参照のこと)、または、形質導入(例えば、Burke et al.,2001,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:6289-6294を参照のこと)により実施され得る。シュードモナス属(Pseudomonas)細胞へのDNAの導入は、エレクトロポレーション(例えば、Choi et al.,2006,J.Microbiol.Methods 64:391-397を参照のこと)、または、接合(例えば、Pinedo and Smets,2005,Appl.Environ.Microbiol.71:51-57を参照のこと)により実施され得る。ストレプトコッカス属(Streptococcus)細胞へのDNAの導入は、自然の受容能(例えば、Perry and Kuramitsu,1981,Infect.Immun.32:1295-1297を参照のこと)、プロトプラスト形質転換(例えば、Catt and Jollick,1991,Microbios 68:189-207を参照のこと)、エレクトロポレーション(例えば、Buckley et al.,1999,Appl.Environ.Microbiol.65:3800-3804を参照のこと)または接合(例えば、Clewell,1981,Microbiol.Rev.45:409-436を参照のこと)により実施され得る。しかしながら、DNAを宿主細胞に導入するための技術分野において公知であるいずれかの方法を用いることが可能である。
【0204】
宿主細胞はまた、哺乳動物、昆虫、植物、または真菌細胞などの真核細胞であってもよい。
【0205】
宿主細胞は真菌細胞であってもよい。本明細書で用いる「真菌」には、子嚢菌門(Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、ツボカビ門(Chytridiomycota)、および接合菌門(Zygomycota)、ならびに卵菌門(Oomycota)ならびにあらゆる栄養胞子形成菌が含まれる(以下によって定義されている通り:Hawksworth et al.,In,Ainsworth and Bisby’s Dictionary of The Fungi,8th edition,1995,CAB International,University Press,Cambridge,UK)。
【0206】
真菌宿主細胞は、酵母細胞であってもよい。本明細書で用いる「酵母」には、子嚢菌酵母(エンドミセス目(Endomycetales))、担子菌酵母、および不完全菌類(Fungi Imperfecti)(ブラストミセス属(Blastomycetes))に属する酵母が含まれる。酵母の分類は将来変わる可能性があるため、本発明の目的に関して、酵母は、Biology and Activities of Yeast(Skinner,Passmore,and Davenport,editors,Soc.App.Bacteriol.Symposium Series No.9,1980)に記載されているとおり定義する。
【0207】
酵母宿主細胞は、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、サッカロミセス・カルスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ジアスタチカス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ドウグラシ(Saccharomyces douglasii)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、サッカロミセス・オビホルミス(Saccharomyces oviformis)、もしくはヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)細胞などのカンジダ属(Candida)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ピチア属(Pichia)、サッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、またはヤロウィア属(Yarrowia)の細胞であってよい。
【0208】
真菌宿主細胞は、糸状真菌宿主細胞であってもよい。「糸状真菌」には、真菌類(Eumycota)および卵菌門(Oomycota)のあらゆる糸状形態が含まれる(Hawksworth et al.,1995(前掲)により定義されているとおり)。糸状真菌は、一般に、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、および他の複雑な多糖類から構成される菌糸壁を特徴とする。栄養成長は、菌糸伸長によって行われ、炭素異化作用は、必ず好気的である。対照的に、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの酵母による栄養成長は、単細胞性葉状体の発芽によるものであり、また炭素異化作用は発酵性であり得る。
【0209】
糸状真菌宿主細胞は、アクレモニウム属(Acremonium)、アスペルギルス属(Aspergillus)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium)、ヤケイロタケ属(Bjerkandera)、セリポリオプシス属(Ceriporiopsis)、クリソスポリウム属(Chrysosporium)、コプリナス属(Coprinus)、カワラタケ属(Coriolus)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、フィリバシジウム属(Filibasidium)、フサリウム属(Fusarium)、フミコラ属(Humicola)、マグナポルテ属(Magnaporthe)、ムコル属(Mucor)、ミセリオフソラ属(Myceliophthora)、ネオカリマスチックス属(Neocallimastix)、ネウロスポラ属(Neurospora)、パエシロミセス属(Paecilomyces)、ペニシリウム属(Penicillium)、ファネロカエテ属(Phanerochaete)、フレビア属(Phlebia)、ピロミセス属(Piromyces)、ヒラタケ属(Pleurotus)、シゾフィラム属(Schizophyllum)、タラロミセス属(Talaromyces)、サーモアスカス属(Thermoascus)、チエラビア属(Thielavia)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)、ホウロクタケ属(Trametes)、またはトリコデルマ属(Trichoderma)の細胞であってよい。
【0210】
例えば、糸状真菌宿主細胞は、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ホエチダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、ヤケイロタケ(Bjerkandera adusta)、セリポリオプシス・アネイリナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・カレジエア(Ceriporiopsis caregiea)、セリポリオプシス・ギルベッセンス(Ceriporiopsis gilvescens)、セリポリオプシス・パノンシンタ(Ceriporiopsis pannocinta)、セリポリオプシス・リブロサ(Ceriporiopsis rivulosa)、セリポリオプシス・サブルファ(Ceriporiopsis subrufa)、セリポリオプシス・サベルミスポラ(Ceriporiopsis subvermispora)、クリソスポリウム・イノプス(Chrysosporium inops)、クリソスポリウム・ケラチノフィラム(Chrysosporium keratinophilum)、クリソスポリウム・ルクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、クリソスポリウム・メルダリウム(Chrysosporium merdarium)、クリソスポリウム・パニコラ(Chrysosporium pannicola)、クリソスポリウム・クイーンズランジカム(Chrysosporium queenslandicum)、クリソスポリウム・トプロピカム(Chrysosporium tropicum)、クリソスポリウム・ゾナタム(Chrysosporium zonatum)、コプリヌス・シネレウス(Coprinus cinereus)、コリオラス・ハースタス(Coriolus hirsutus)、フサリウム・バクトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フサリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フサリウム・クロックウェレンズ(Fusarium crookwellense)、フサリウム・クルモラム(Fusarium culmorum)、フサリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)、フサリウム・グラミナム(Fusarium graminum)、フサリウム・ヘテロスポラム(Fusarium heterosporum)、フサリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フサリウム・レチキュラタム(Fusarium reticulatum)、フサリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フサリウム・サムブシヌム(Fusarium sambucinum)、フサリウム・サルクロウム(Fusarium sarcochroum)、フサリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フサリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フサリウム・トルロサム(Fusarium torulosum)、フサリウム・トリコセシオイデス(Fusarium trichothecioides)、フサリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)、ムコル・ミエヘイ(Mucor miehei)、ミセリオプソラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ネウロスポラ・クラサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・プルプロゲナム(Penicillium purpurogenum)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、フレビア・ラジアータ(Phlebia radiata)、プレウロツス・エリンギ(Pleurotus eryngii)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、トラメテス・ビロサ(Trametes villosa)、トラメテス・ベルシカラー(Trametes versicolor)、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンジブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)、またはトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)の細胞であってよい。
【0211】
真菌細胞は、それ自体知られている方法において、プロトプラストの形成、プロトプラストの形質転換、および細胞壁の再生を含む方法により形質転換することができる。アスペルギルス属(Aspergillus)およびトリコデルマ属(Trichoderma)の形質転換のための好適な手順は、次の文献に記載されている:欧州特許第238023号明細書、Yelton et al.,1984、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1470-1474、およびChristensen et al.,1988,Bio/Technology 6:1419-1422。フサリウム属(Fusarium)種を形質転換する好適な方法は、次の文献に記載されている:Malardier et al.1989 Gene 78 147-156、および国際公開第96/00787号パンフレット。酵母は、次の文献に記載されている手順を用いて形質転換することができる:BeckerおよびGuarente,In Abelson,J.N.and Simon,M.I.,editors,Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology,Methods in Enzymology,Volume 194,pp 182-187,Academic Press,Inc.,New York;Ito et al.,1983,J.Bacteriol.153:163;ならびにHinnen et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1920。
【0212】
生成方法
本発明はまた:(a)変異体の発現に好適な条件下で本発明の宿主細胞を培養するステップ;および、(b)変異体を回収するステップを含む変異体の生成方法に関する。
【0213】
宿主細胞は、技術分野において公知である方法を用いる変異体の生成に好適な栄養培地中で培養される。例えば、細胞は、好適な培地中に、変異体の発現および/または単離が許容される条件下で行われる実験用または産業用発酵槽において、フラスコ振盪培養、または、小規模もしくは大規模発酵(連続、回分、流加または固相発酵を含む)により培養され得る。培養は、技術分野において公知である手法を用いて、炭素および窒素源、および、無機塩を含む好適な栄養培地において行われる。好適な培地は、商業的供給者から入手可能であるか、または、公開されている組成物に従って調製され得る(例えば、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collectionのカタログ中)。変異体が栄養培地に分泌される場合、変異体は培地から直接回収可能である。変異体が分泌されない場合、変異体は細胞可溶化物から回収可能である。
【0214】
変異体は、変異体に特異的である技術分野において公知である方法を用いて検出され得る。これらの検出法としては、これらに限定されないが、特定の抗体の使用、酵素生成物の形成、または、酵素基質の消失が挙げられる。例えば、酵素アッセイを用いて変異体の活性を判定し得る。
【0215】
変異体は技術分野において公知である方法を用いて回収され得る。例えば、変異体は、特にこれらに限定されないが、採取、遠心分離、ろ過、抽出、噴霧乾燥、蒸発または沈殿を含む従来の手法によって栄養培地から回収され得る。
【0216】
変異体は、特にこれらに限定されないが、実質的に純粋な変異体を得るための、クロマトグラフィ(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシングおよびサイズ排除)、電気泳動法(例えば、分取等電点電気泳動)、吸収率較差溶解度(例えば、硫酸アンモニウム析出)、SDS-PAGE、または、抽出(例えば、Protein Purification,Janson and Ryden,editors,VCH Publishers,New York,1989を参照のこと)を含む技術分野において公知である多様な手法によって精製され得る。
【0217】
代替的な態様において、変異体は回収されず、変異体を発現する本発明の宿主細胞が変異体ソースとして用いられる。
【0218】
組成物
本発明は、リパーゼ変異体を含む欧州特許第11170520号明細書に記載の微粒子組成物にも関し、この変異体は、配列番号2の成熟ポリペプチドの位置T37A、D、E、F、G、H、I、L、N、P、Q、R、S、V、W、Y、N39A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、P、Q、R、T、V、W、Y、およびG91D、H、I、P、Qに対応する1つまたは複数の位置で置換を含み、変異体は、リパーゼ活性を有する。
【0219】
ある実施形態において、本発明は、以下:(a)有機過酸源を含む粒子;および(b)漂白触媒を含む粒子;および(c)(ii)徐放性コーティングに取り囲まれる(i)酵素を含有するコアを含む粒子を含む微粒子組成物に関し、ここで、酵素は、配列番号2の成熟ポリペプチドの位置T37A、D、E、F、G、H、I、L、N、P、Q、R、S、V、W、Y、N39A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、P、Q、R、T、V、W、Y、およびG91D、H、I、P、Qに対応する1つまたは複数の位置で置換を含むリパーゼ変異体であり、この変異体は、リパーゼ活性を有する。
【0220】
ある実施形態において、本発明は、以下:(a)有機過酸源を含む粒子;および(b)漂白触媒を含む粒子;および(c)(ii)徐放性コーティングに取り囲まれる(i)第1洗浄脂肪溶解酵素である酵素を含有するコアを含む粒子を含む微粒子組成物に関し、ここで、リパーゼ変異体は、配列番号2の成熟ポリペプチドの位置T37A、D、E、F、G、H、I、L、N、P、Q、R、S、V、W、Y、N39A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、P、Q、R、T、V、W、Y、およびG91D、H、I、P、Qに対応する1つまたは複数の位置で置換を含み、この変異体は、リパーゼ活性を有する。
【0221】
使用
本発明は、欧州特許第11170520号明細書に記載のリパーゼ粒子を製造するための、配列番号2の成熟ポリペプチドの位置T37A、D、E、F、G、H、I、L、N、P、Q、R、S、V、W、Y、N39A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、P、Q、R、T、V、W、Y、およびG91D、H、I、P、Qに対応する1つまたは複数の位置で置換を含むリパーゼ変異体の使用にも関し、ここで、変異体は、リパーゼ活性を有する。
【0222】
いくつかの実施形態において、本発明は、リパーゼ粒子を調製する方法にも関し、この方法は、以下:(a)漂白触媒感受性酵素を同定するために、酵素と漂白触媒および有機過酸源の組合せについて洗浄性能を決定した後、漂白触媒なしの性能と比較することにより、少なくとも1種の酵素の漂白触媒感受性を試験するステップ;(b)感受性酵素を含むコアを用意し、コアを徐放性コーティングで取り囲むステップを含み、ここで、少なくとも1種の酵素は、配列番号2の成熟ポリペプチドの位置T37A、D、E、F、G、H、I、L、N、P、Q、R、S、V、W、Y、N39A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、P、Q、R、T、V、W、Y、およびG91D、H、I、P、Qに対応する1つまたは複数の位置で置換を含むリパーゼ変異体である。
【0223】
本発明のリパーゼをカプセル化してもよい。一態様において、カプセルは、コア、内側および外側面を有するシェルを含み、このシェルは前記コアを被包している。前記カプセルの一態様において、前記コアは、香料;増白剤;染料;防虫剤;シリコーン;ワックス;香味料;ビタミン類;布地柔軟剤;スキンケア剤を含み、一態様では、パラフィン;酵素;抗菌剤;漂白剤;皮膚感覚剤(sensates);およびこれらの混合物を含み、前記シェルは、ポリエチレン;ポリアミド;ポリビニルアルコール(任意選択で他のコモノマーを含有する);ポリスチレン;ポリイソプレン;ポリカーボネート;ポリエステル;ポリアクリレート;アミノプラストを含んでもよく、一態様では、前記アミノプラストは、ポリ尿素、ポリウレタン、および/またはポリ尿素ウレタンを含んでもよく、一態様において、前記ポリ尿素は、ポリオキシメチレン尿素および/またはメラミンホルムアルデヒド;ポリオレフィン;多糖を含んでもよく、一態様では、前記多糖は、アルギニン酸塩および/またはキトサン;ゼラチン;シェラック;エポキシ樹脂;ビニルポリマー;水不溶性無機物;シリコーン;ならびにこれらの混合物を含んでもよい。
【0224】
いくつかの実施形態において、リパーゼは、0.00001%~2%、より好ましくは0.0001%~0.02%、最も好ましくは0.001%~0.01%重量%の量で組成物に用いる。典型的に、洗浄および/または処理組成物は、水性処理ステップにおける好ましいリパーゼ変異体レベルが、0.000001~1000ppmであるように、0.001~5%の量で水に存在する。
【0225】
植物
本発明はまた、回収可能な量で変異体を発現および生成するように、本発明のポリヌクレオチドを含む植物、例えば、トランスジェニック植物、植物部分、または植物細胞に関する。変異体は、植物または植物部分から回収することができる。あるいは、変異体を含む植物または植物部分は、食品または飼料の品質を改善する、例えば、栄養価、嗜好性および流体学的性質を高めるように、または非栄養因子を破壊するために用いられる。
【0226】
トランスジェニック植物は、双子葉(dicot)または単子葉(monocot)であってよい。単子葉植物の例としては、牧草(ブルーグラス、ポア(Poa))などのイネ科牧草、フェツカ(Festuca)、ドクムギ(Lolium)などの飼料草、ヌカボ(Argostis)などの寒地型牧草、ならびに例えば、コムギ、オーツムギ、ライムギ、オオムギ、イネ、モロコシ、およびトウモロコシ(コーン)が挙げられる。
【0227】
双子葉植物の例としては、タバコ、ルピナスなどのマメ科、ジャガイモ、テンサイ、エンドウマメ、インゲンマメおよびダイズ、ならびに例えば、カリフラワー、ナタネなどのアブラナ科植物(アブラナ科(Brassicaceae))、およびごく近縁のモデル生物:シロイロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)がある。
【0228】
植物部分の例としては、茎、カルス、葉、根、果実、種子、および塊茎、ならびにこれらの部分を含む個々の組織、例えば、表皮、葉肉、柔組織、維管束組織、分裂組織が挙げられる。また、葉緑体、アポプラスト、ミトコンドリア、液胞、ペルオキシソームおよび細胞質も植物部分であると考えられる。さらに、組織起源にかかわらず、あらゆる植物細胞が植物部分であると考えられる。同様に、本発明の使用を容易にするために単離された特定の組織および細胞などの植物部分も、植物部分と考えられ、例えば、胚、胚乳、アリューロンおよび種皮がある。
【0229】
さらに、このような植物、植物部分および植物細胞の子孫も本発明の範囲に含まれる。
【0230】
当分野では公知の方法により、変異体を発現するトランスジェニック植物または植物細胞を構築してもよい。手短には、変異体をコードする1つまたは複数の発現構築物を、植物宿主ゲノムまたは葉緑体ゲノムに組み込み、得られた修飾植物または植物細胞をトランスジェニック植物または植物細胞に繁殖させることによって、植物または植物細胞を構築する。
【0231】
発現構築物は、選択植物または植物部分のポリヌクレオチドの発現に必要な適切な調節配列と作動可能に結合した変異体をコードするポリヌクレオチドを含む核酸構築物であるのが好都合である。さらに、発現構築物は、発現構築物が組み込まれた植物細胞を同定するのに有用な選択マーカと、この構築物を対象植物に導入するのに必要なDNA配列を含み得る(後者は、用いようとするDNA導入方法に応じて異なる)。
【0232】
プロモータおよびターミネータ配列ならびに任意選択でシグナルもしくは輸送配列などの調節配列の選択は、例えば、変異体をいつ、どこで、どのように発現したいのかに基づいて決定される。例えば、変異体をコードする遺伝子の発現は、構成性もしくは誘導性のいずれでもよく、または発生過程、ステージもしくは組織特異的であってもよく、種子もしくは葉などの特定の組織または植物部分に遺伝子構築物をターゲティングすることができる。調節配列は、例えば、Tague et al.,Plant Physiology 86:506に記載されている。
【0233】
構成性発現の場合、35S-CaMV、トウモロコシユビキチン1、またはイネアクチン1プロモータを用いてよい(Franck et al.,1980,Cell 21:285-294;Christensen et al.,1992,Plant Mol.Biol.18:675-689;Zhang et al.,1991,Plant Cell 3:1155-1165)。器官特異的プロモータとしては、例えば、以下のものが挙げられる:種子、ジャガイモ塊茎、および果実などの貯蔵シンク組織由来のプロモータ(EdwardsおよびCoruzzi,1990,Ann.Rev.Genet.24:275-303)、または分裂組織などの代謝シンク組織由来のプロモータ(Ito et al.,1994,Plant Mol.Biol.24:863-878)、グルテリン、プロラミン、グロブリンなどの種子特異的プロモータ、またはイネ由来のアルブミンプロモータ(Wu et al.,1998,Plant Cell Physiol.39:885-889)、レグミンB4由来のソラマメ(Vicia faba)プロモータおよびソラマメ(Vicia faba)由来の未知の種子タンパク質遺伝子(Conrad et al.,1998,J.Plant Physiol.152:708-711)、種子オイルボディタンパク質由来のプロモータ(Chen et al.,1998,Plant Cell Physiol.39:935-941)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)由来の貯蔵タンパク質napAプロモータ、または例えば国際公開第91/14772号パンフレットに記載されているような当分野では公知のいずれか他の種子特異的プロモータ。さらに、プロモータは、葉特異的プロモータであってもよく、例えば、イネもしくはタバコ由来のrbcsプロモータ(Kyozuka et al.,1993,Plant Physiol.102:991-1000)、クロレラウイルスアデニンメチルトランスフェラーゼ遺伝子プロモータ(MitraおよびHiggins,1994,Plant Mol.Biol.26:85-93)、イネ由来のaldP遺伝子プロモータ(Kagaya et al.,1995,Mol.Gen.Genet.248:668-674)、またはジャガイモpin2プロモータなどの創傷誘導性プロモータ(Xu et al.,1993,Plant Mol.Biol.22:573-588)がある。同様に、プロモータは、温度、乾燥もしくは塩分の変化などの非生物処理によって誘導しても、プロモータを活性化する外部適用の物質、例えば、エタノール、エストロゲン、エチレン、アブシジン酸、およびジベレリン酸のような植物ホルモン、ならびに重金属により誘導してもよい。
【0234】
さらに、植物における変異体のさらに高度の発現を達成するために、プロモータエンハンサーエレメントを用いてもよい。例えば、プロモータエンハンサーエレメントは、イントロンであってもよく、これは、プロモータと、変異体をコードするポリヌクレオチドとの間に配置される。例えば、Xu et al.,1993(前掲)は、発現を増大するためのイネアクチン1遺伝子の第1イントロンの使用を開示している。
【0235】
選択マーカ遺伝子および発現構築物の任意の他の部分は、当分野で入手可能なものから選択してよい。
【0236】
アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換、ウイルス媒介形質転換、マイクロインジェクション、パーティクルガン、微粒子銃形質転換、およびエレクトロポレーションなどの当分野では公知の従来の方法(Gasser et al.,1990,Science 244:1293;Potrykus,1990,Bio/Technology 8:535;Shimamoto et al.,1989,nature 338:274)により、核酸構築物を植物ゲノムに組み込む。
【0237】
アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)媒介遺伝子移入は、トランスジェニック双子葉植物を作製し(内容については、HooykasおよびSchilperoort、1992,Plant Mol.Biol 19:15-38を参照のこと)、また、単子葉植物を形質転換する方法であるが、他の形質転換方法をこれらの植物に用いてもよい。トランスジェニック単子葉植物を作製する方法は、胚形成能を有するカルスまたは発生過程の胚のパーティクルガン(形質転換DNAをコーティングした微細な金またはタングステン粒子)である(Christou,1992,Plant J.2:275-281;Shimamoto,1994,Curr.Opin.Biotechnol.5:158-162;Vasil et al.,1992,Bio/Technology 10:667-674)。単子葉植物を形質転換する別の方法は、Omirulleh et al.,1993,Plant Mol.Biol.21:415-428により記載されているように、原形質体形質転換に基づくものである。別の形質転換方法としては、米国特許第6,395,966号明細書および同第7,151,204号明細書(いずれも、参照として本明細書にその全文を組み込む)に記載されているものがある。
【0238】
形質転換の後、発現構築物が組み込まれた形質転換体を選択して、当分野では公知の方法により全植物に再生させる。多くの場合、形質転換手順は、例えば、2つの個別のT-DNA構築物を用いた同時形質転換、または特定のリコンビナーゼにより選択遺伝子の部位特異的切除を用いることにより、再生中、または続く生成中のいずれかで、選択遺伝子の選択的排除を達成するように設計する。
【0239】
本発明の構築物による特定の植物遺伝子型の直接形質転換以外に、構築物を有する植物を、構築物が欠失した第2植物と交雑させることにより、トランスジェニック植物を作製してもよい。例えば、変異体をコードする構築物を、交雑により植物変種に導入することができ、この場合、対象の変種の植物を直接形質転換する必要は全くない。ゆえに、本発明は、本発明により形質転換された細胞から直接再生させた植物だけではなく、そのような植物の子孫も包含する。本明細書で用いる場合、子孫とは、本発明により作製した親植物のあらゆる世代の子孫を意味し得る。このような子孫は、本発明により作製したDNA構築物を含み得る。交雑は、ドナー植物系統で出発系統を他家受粉することにより、ある植物系統へのトランスジーンの導入を達成する。このようなステップの非制限的例が、米国特許第7,151,204号明細書に記載されている。
【0240】
植物は、戻し交雑変換法により作製することもできる。例えば、植物は、戻し交雑変換遺伝子型、系統、同系繁殖体、またはハイブリッドと呼ばれる植物を包含する。
【0241】
ある遺伝的背景から別の背景への本発明の1つまたは複数のトランスジーンの侵入を補助するために、遺伝子マーカを用いてもよい。マーカ補助による選択は、表現型変化によって起こったエラーを回避するのに用いることができるため、従来の育種と比較して利点をもたらす。さらに、遺伝子マーカは、特定の交雑の個々の子孫におけるエリート遺伝資源の相対度に関するデータを提供しうる。例えば、別の状況では非農業的に望ましい遺伝的背景を有する所望の特徴を備えた植物をエリート親と交雑する場合、遺伝子マーカを用いて、目的の特徴を有するだけではなく、所望の遺伝資源を比較的高い割合で備える子孫を選択することができる。このようにして、1つまたは複数の特徴を特定の遺伝的背景に侵入させるのに必要な世代数を最小限にする。
【0242】
本発明はまた、本発明の変異体を生成する方法にも関し、この方法は、(a)変異体の生成を可能にする条件下で、変異体をコードするポリヌクレオチドを含むトランスジェニック植物もしくは植物部分を培養するステップ;および(b)変異体を回収するステップを含む。
【0243】
以下の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例を本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例
【0244】
実施例1:洗濯についての自動機械的応力分析
洗濯における洗浄性能を評価するために、自動機械的応力分析(AMSA)を用いて、洗浄実験を実施する。AMSAで、多量の少容量リパーゼ-洗剤溶液の洗浄性能を試験することができる。AMSAプレートは、試験溶液のための多くのスロットと、汚れた繊維製品をすべてのスロット開口部にしっかりと締め付けるリッドを有する。洗浄時間中、プレート、試験溶液、繊維製品およびリッドを激しく振ることにより、試験溶液を繊維製品に接触させて、規則的、周期的振動方式で機械的応力を加える。さらに詳しい説明については、国際公開第02/42740号パンフレット、特に第23~24頁のパラグラフ“Special method embodiments”を参照のこと。
【0245】
以下に指定する実験条件で洗濯実験を行う:
【0246】
【表3】
【0247】
モデル洗剤および試験材料は以下のとおりであった:
【0248】
【表4】
【0249】
水の硬度は、試験システムにCaCl2、MgCl2、およびNaHCO3(Ca2+:Mg2+=4:1:7.5)の添加により、18odHに調節した、洗浄後、繊維製品を水道水で洗い流し、加熱室にて85℃で5分乾燥させた。
【0250】
洗浄した繊維製品の色の白色度として、洗浄性能を測定する。白色度はまた、サンプルを白色光で照らしたとき、サンプルから反射する光の強度として表すこともできる。サンプルが汚れていると、反射光の強度は、清浄なサンプルの強度より低い。従って、洗浄性能を測定するのに、反射光の強度を用いることができる。
【0251】
洗浄済み繊維製品の画像を捉えるのに用いる、プロ仕様のフラットベッドスキャナー(Kodak iQsmart,Kodak,Midtager 29,DK-2605 Brondby,Denmark)で色測定を実施する。
【0252】
スキャン画像の光強度値を抽出するため、画像からの24ビットピクセル値を、赤、緑および青(RGB)値へと変換する。ベクターとしてRGB値を一緒に加え、次に、得られたベクターの長さを計算することにより強度値(Int)を算出する:
【数1】
【0253】
リパーゼ変異体の洗浄性能(P)を次の式に従って計算する:P=ΔInt=Int(v)-Int(r)(式中、Int(v)は、リパーゼ変異体で洗浄した繊維製品表面の光強度値であり、Int(r)は、リパーゼ変異体を用いずに洗浄した繊維製品表面の光強度値である)。
【0254】
相対的性能スコア(RPwash)の計算:相対的性能スコアは、下記の定義に従い、フルスケールで洗浄した結果として与えられる:
相対性能スコア(RPwash)は、従来のリパーゼに対する本発明のリパーゼ変異体の性能(P)を与える:RP=P(本発明のリパーゼ変異体)/P(従来のリパーゼ)。従来のリパーゼより良好に実施すれば、リパーゼ製剤は、向上した洗浄性能を示すと考えられる。
【0255】
実施例2:漂白触媒の存在下で向上した性能を有するG91変異体
【0256】
【表5】
【0257】
実施例3:漂白触媒の存在下で向上した性能を有するT37変異体
【0258】
【表6】
【0259】
実施例4:漂白触媒の存在下で向上した性能を有するN39変異体
【0260】
【表7】
【0261】
実施例5:2つ以上の突然変異を有し、かつ漂白触媒の存在下で向上した性能を有する変異体
【0262】
【表8】
【0263】
本明細書に記載され、特許請求されている本発明は、本明細書に開示されている特定の態様によって範囲が限定されるべきではなく、これは、これらの態様は本発明の数々の態様の例示であることが意図されているためである。いずれかの同等の態様は本発明の範囲内であることが意図されている。実際に、本明細書に示され、記載されているものに追加した本発明の種々の改変形態が、前述の記載から当業者には明らかとなるであろう。このような改変形態もまた、添付の特許請求の範囲の範囲内に属することが意図されている。競合する場合には、定義を含む本開示が優先されることとなる。
【配列表】
0007194134000001.app