(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】苗縦送り機構
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
A01C11/02 360A
A01C11/02 350L
(21)【出願番号】P 2020050616
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2019056604
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹山 智洋
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏典
(72)【発明者】
【氏名】石崎 創
(72)【発明者】
【氏名】早田 裕光
(72)【発明者】
【氏名】坂垣内 貴保
(72)【発明者】
【氏名】大井戸 直幸
(72)【発明者】
【氏名】前川 智史
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-330216(JP,A)
【文献】実公昭47-028124(JP,Y1)
【文献】実公平03-047449(JP,Y2)
【文献】実公平06-027050(JP,Y2)
【文献】特開2003-134908(JP,A)
【文献】特開平05-268814(JP,A)
【文献】特公平03-058687(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗載台に搭載する苗マットを苗取出し側に縦送り移動させる苗縦送りベルトと、
回動して前記苗縦送りベルトを操作する縦送り操作部材と、
前記縦送り操作部材の回動によって揺動する第1揺動部材と、
前記第1揺動部材の揺動角に応じた揺動角で揺動して、前記苗縦送りベルトを駆動するためのベルト駆動軸を送り方向に回動する第2揺動部材と、
前記第1揺動部材と前記第2揺動部材との間に設けられ、前記第1揺動部材の揺動角を増幅させるリンク方式の増幅機構と、を備
え、
前記ベルト駆動軸は、前記苗載台の下端側に配置されている、苗縦送り機構。
【請求項2】
前記増幅機構は、前記第1揺動部材及び前記第2揺動部材をそれぞれ駆動リンク及び従
動リンクとした4節リンク機構である、請求項1に記載の苗縦送り機構。
【請求項3】
前記増幅機構は、前記第2揺動部材の揺動角を調整して前記苗縦送りベルトの縦送り量を調整可能な調整機構を備える、請求項1又は2に記載の苗縦送り機構。
【請求項4】
前記増幅機構は、左右方向に並設した複数の前記苗縦送りベルトの間に配置される、請求項1~3の何れか1項に記載の苗縦送り機構。
【請求項5】
前記苗縦送りベルトは、一定の縦送り量で間欠的に縦送り移動され、
前記苗縦送りベルトが前記縦送り量を縦送り移動されるのに要する縦送り時間は、前記苗マットが前記縦送り量を自然落下するのに要する自然落下時間よりも長い、請求項1~4の何れか1項に記載の苗縦送り機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗縦送り機構に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1及び2には、移植機の苗載装置における苗縦送りベルトの駆動機構に関する事項が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-209276号公報
【文献】実開平5-46219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、田植機のベルト駆動軸を駆動するためのベルト駆動機構を、縦送り駆動カムとベルト駆動カムを直接係止させることによって駆動する構造が記載されているが、縦送り量を多く取れないといった問題があった。また、特許文献2は、苗トレイの縦送りチェーンを駆動する縦送り駆動系中に複数の変速ギヤを介在させることで縦送り量を変更することが記載されているが、変速ギヤを収容する大掛かりなギヤケースが必要なため移植機自体が大きくなるといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、シンプルな構造でありながら苗の縦送り量を増大させることができる苗縦送り機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の苗縦送り機構は、苗載台に搭載する苗マットを苗取出し側に縦送り移動させる苗縦送りベルトと、
回動して前記苗縦送りベルトを操作する縦送り操作部材と、
前記縦送り操作部材の回動によって揺動する第1揺動部材と、
前記第1揺動部材の揺動角に応じた揺動角で揺動して、前記苗縦送りベルトを駆動するためのベルト駆動軸を送り方向に回動する第2揺動部材と、
前記第1揺動部材と前記第2揺動部材との間に設けられ、前記第1揺動部材の揺動角を増幅させるリンク方式の増幅機構と、を備える。
【0007】
本発明の苗縦送り機構によれば、シンプルな構造でありながら、苗の縦送り量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5A】苗縦送り機構の構成を説明するための左側面図である。
【
図5B】第1揺動部材が最高点まで回動した状態を示す図である。
【
図6A】他の実施形態に係る植付部の周辺を拡大して示す左側面図である。
【
図6B】他の実施形態に係る植付部の周辺を拡大して示す底面図である。
【
図6C】他の実施形態に係る植付部の周辺を拡大して示す背面図である。
【
図7A】他の実施形態に係る苗縦送り機構の構成を説明するための左側面図である。
【
図7B】他の実施形態に係る第1揺動部材が最高点まで回動した状態を示す図である。
【
図8】他の実施形態に係る苗縦送りベルトの縦送り速度と苗マットの自然落下速度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、走行機体2の進行方向(
図1の左方向)を前方とし、進行方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0010】
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る移植機1は、走行機体2と、走行機体2を支持する前車輪1a及び後車輪1bと、走行機体2に搭載される駆動源(エンジン)1cと、駆動源1cの駆動を各部に伝達する伝達部1dとを備えている。また、移植機1は、苗を植え付けるための苗植付装置3を走行機体2よりも後方に備えている。そして、移植機1は、苗を植える際に、前方に向けて走行する。
【0011】
走行機体2は、操縦者が座るための座席2aと、操縦者に操作される操作部2bと、予備の苗マットを載せるための予備載部2cとを備えている。例えば、操作部2bは、走行する方向を操作するための操縦ハンドルと、走行する速度を操作するための変速レバーと、苗植付装置3を操作するための作業レバーとを備えている。
【0012】
苗植付装置3は、苗マットから一部の苗を掻き取って植え付ける植付部4と、植付部4に苗マットを供給するために、苗マットが載せられる苗載装置5とを備えている。なお、苗植付装置3は、走行機体2に回動可能に接続されているため、走行機体2に対して昇降動する。
【0013】
植付部4は、苗載装置5よりも下方側に配置されている。そして、植付部4は、回転する植付爪40を備えており、植付爪40は、公転されることで、苗載装置5の下端部に位置する苗マットから一部の苗を掻き取って、圃場に植え付ける。
【0014】
植付部4は、駆動源1cから伝達部1dを経由した動力が伝達される植付入力ケース41と、植付入力ケース41に連結する6条用3組(2条で1組)の植付伝動ケース42と、各植付伝動ケース42の後端側に設けられた苗植機構43と、を備えている。苗植機構43には、二本の植付爪40を有するロータリケース44が設けられている。ロータリケース44の一回転によって、二本の植付爪40が各々一株ずつの苗を切り取ってつかみ、圃場に植え付ける。また、植付部4は、覆土後の土を押さえる覆土輪45を備えている。
【0015】
苗載装置5は、苗載台51と、苗載台51の左右方向の横送りを行う苗台横送り機構79と、苗載台51上の苗マットの上下方向の縦送りを行う苗縦送り機構80とを備えている。苗台横送り機構79により苗載台51が左右方向に往復で横送り移動されるため、苗載台51上の苗マットは、連続的に往復で横送り搬送される。一方、苗載台51が往復移動端に到達すると、苗縦送り機構80の苗縦送りベルト155により苗載台51上の苗マットが間欠的に縦送り搬送される。
【0016】
苗植付装置3は、6条用3組の植付伝動ケース42の前端間を連結する植付フレーム111を備えている。植付フレーム111は左右方向に延設されている。植付フレーム111の中央部に植付入力ケース41が取り付けられている。植付入力ケース41は、苗載台51の左右方向の横送りを行う苗台横送り機構79の横送り軸と、苗載台51上の苗の縦送りを行う苗縦送り機構80の縦送り駆動軸80aと、苗植機構43の植付出力軸を回転させる。
【0017】
植付入力ケース41には苗台横送り機構79と苗縦送り機構80が接続されている。苗台横送り機構79の送り体79aは苗載台51の裏面下部側に連結されており、上部レール151及び下部レール152に沿った左右方向に苗載台51を横送り移動させる。このため、苗載台51上の苗マットは連続的に往復で横送り搬送される。
【0018】
次に、
図4、
図5A、及び
図5Bを参照して、苗縦送り機構80の構成について説明する。苗縦送り機構80の縦送り駆動軸80aには一対の縦送り駆動カム80b(縦送り操作部材に相当)が固着されている。縦送り駆動カム80bは縦送り駆動軸80aと一体として常時回転しており、苗載台51が往復移動端(往復移動の折返し点)に到達すると、各縦送り駆動カム80bが第1揺動部材153に当接される。これによって後述する増幅機構154を介して苗縦送りベルト155が駆動され、苗載台51上の苗マットが間欠的に縦送り搬送される。
【0019】
増幅機構154は、第1揺動部材153と、第2揺動部材156と、第1揺動部材153と第2揺動部材156を連結する連結ロッド157とを有する4節リンク機構で構成される。第1揺動部材153、第2揺動部材156、及び連結ロッド157は、それぞれ駆動リンク(原動リンク)、従動リンク、及び中間リンクとして機能する。
【0020】
苗縦送りベルト155は、ベルト駆動軸155aによって駆動される。ベルト駆動軸155aは、苗載台51の下端側の裏面に下部軸受体155bを介して配置されている。ベルト駆動軸155aの外周には、苗縦送りベルト155が巻き付けられる駆動側ローラ155cが固定されている。
【0021】
ベルト駆動軸155aの外周には、不図示の一方向クラッチを介して第2揺動部材156が取り付けられている。第2揺動部材156がベルト駆動軸155aを中心として上方へ回動すると、一方向クラッチとともにベルト駆動軸155aも回動し、ベルト駆動軸155a上の駆動側ローラ155cも回動し、駆動側ローラ155cによって苗縦送りベルト155が送り方向に駆動される。第2揺動部材156は、
図5Aに示す初期位置から上方へ所定角度だけ回動した後、後述する戻しバネ159の付勢力によって下方へ回動して初期位置へ戻る。第2揺動部材156が下方へ回動するとき、一方向クラッチの機能によりベルト駆動軸155aは回動しない。これにより、苗縦送りベルト155は、苗マットを苗載台51の下端の苗取出し側に略一定だけ間欠的に縦送りすることになる。
【0022】
第1揺動部材153は、上部ブラケット158の第1揺動軸158a回りに揺動する。上部ブラケット158は、左右方向に並設した複数の苗縦送りベルト155の間の苗載台51の裏面であって、ベルト駆動軸155aの上方に固定されている。第1揺動軸158aの外周側には、第1揺動部材153を下方に回動する向きに付勢する戻しバネ159が設けられている。縦送り駆動カム80bが上方へ回動して第1揺動部材153の先端側に当接すると、縦送り駆動カム80bに押圧されて第1揺動部材153も上方へ回動する(
図5B参照)。その後、回動する縦送り駆動カム80bが第1揺動部材153と非接触となると、第1揺動部材153は、戻しバネ159の付勢力によって下方へ回動して、
図5Aに示す初期位置に戻る。
【0023】
第1揺動部材153と第2揺動部材156は、連結ロッド157で連結されている。連結ロッド157は、第1連結ピン157aを介して第1揺動部材153に回転可能に連結され、第2連結ピン157bを介して第2揺動部材156に回転可能に連結されている。
【0024】
第1揺動軸158aと第1連結ピン157aの中心間距離L1は、ベルト駆動軸155aと第2連結ピン157bの中心間距離L2よりも長くなっている。そのため、第2揺動部材156の揺動角は、第1揺動軸158aの揺動角よりも大きくなる。これにより、増幅機構154は、第1揺動部材153の揺動角を増幅させることができる。その結果、第2揺動部材156の揺動角が大きくなり、ベルト駆動軸155aの回転角も大きくなるため、苗縦送りベルト155の縦送り量を大きくすることができる。
【0025】
図5Aに示す第1揺動部材153、第2揺動部材156、及び連結ロッド157の初期位置は、連結ロッド157に設けられた規制部材160によって設定される。規制部材160は、下部レール152に固定されるストッパ取付部161に設けられたストッパゴム162に当接することで、連結ロッド157を初期位置に維持する。
【0026】
規制部材160は、連結ロッド157の端部に固定された長ナット160aと、長ナット160aに螺合する規制ボルト160bと、規制ボルト160bを固定するロックナット160cと、を備えている。規制ボルト160bを回転することで、長ナット160aからの規制ボルト160bの突出量が変わるため、規制部材160の長さを変更することができる。これにより、連結ロッド157の初期位置を変更することができ、同時に第2揺動部材156の初期位置を変更することができる。第2揺動部材156の初期位置を変更することで、第2揺動部材156の揺動角(初期位置から最高点までの回転角)を変更することができる。よって、規制部材160の長さを調整することで、第2揺動部材156の揺動角を調整することができる。すなわち、規制部材160は、第2揺動部材156の揺動角を調整可能な調整機構として機能する。第2揺動部材156の揺動角を調整することで、ベルト駆動軸155aの回転角も調整され、苗縦送りベルト155の縦送り量を調整することができる。
【0027】
以上のように、本実施形態の苗縦送り機構80は、苗載台51に搭載する苗マットを苗取出し側に縦送り移動させる苗縦送りベルト155と、回動して苗縦送りベルト155を操作する縦送り駆動カム80bと、縦送り駆動カム80bの回動によって揺動する第1揺動部材153と、第1揺動部材153の揺動角に応じた揺動角で揺動して、苗縦送りベルト155を駆動するためのベルト駆動軸155aを送り方向に回動する第2揺動部材156と、第1揺動部材153と第2揺動部材156との間に設けられ、第1揺動部材153の揺動角を増幅させるリンク方式の増幅機構154と、を備える。
【0028】
また、本実施形態の苗縦送り機構80において、増幅機構154は、第1揺動部材153及び第2揺動部材156をそれぞれ駆動リンク及び従動リンクとした4節リンク機構である。
【0029】
本実施形態の苗縦送り機構80によれば、シンプルな構造でありながら、苗の縦送り量を増大させることができる。その結果、野菜苗のように植付爪40で掻き取り量が多い苗マットの場合にも一株ずつ確実に掻き取ることができる。
【0030】
また、本実施形態の苗縦送り機構80において、増幅機構154は、第2揺動部材156の揺動角を調整して苗縦送りベルト155の縦送り量を調整可能な規制部材160(調整機構)を備えるようにしてもよい。この構成によれば、苗の種類によって苗縦送りベルト155の縦送り量を変更できるので、汎用性が向上する。
【0031】
また、本実施形態の苗縦送り機構80において、増幅機構154は、左右方向に並設した複数の苗縦送りベルト155の間に配置されるようにしてもよい。この構成によれば、苗植付装置3をコンパクトにすることができる。
【0032】
図6A~
図6Cは、他の実施形態に係る植付部4の周辺を拡大して示す図である。前述の実施形態の覆土輪45に代えて、植付爪40の左右両側方には、板状の覆土部材140がそれぞれ設けられている。覆土部材140を植付爪40の近傍に配置することで、植え付け後に速やかに覆土ができ、植付姿勢が安定する。また、植付爪40による苗の持ち上げを抑制することができる。覆土部材140を板状とすることで、コンパクトなうえに面圧を抑制できる。
【0033】
覆土部材140は、板材を板金加工することで形成される。覆土部材140の底面は、樹脂部材が貼り付けられ、又は樹脂コーティングが施され、圃場の土等が固着するのを抑制する。
【0034】
覆土部材140は、植付フレーム111に固定された取付ブラケット141に回動可能に取り付けられている。覆土部材140の回動支点140aは、植付爪40よりも前方に位置している。これにより、覆土荷重が安定し、覆土性能も向上する。
【0035】
覆土部材140の前部140bは、荷重調節ばね142により上方へ回転する向きに付勢されている。荷重調節ばね142は、一端が覆土部材140の前部140bに接続され、他端が取付ブラケット141に接続されている。荷重調節ばね142の付勢力を適宜設定することで、覆土部材140が付与する荷重を調節することができる。左右の覆土部材140は、独立して取付ブラケット141に支持され、かつ荷重調節ばね142でそれぞれ付勢されており、土塊があっても一方の覆土部材140のみが作用し、他方の覆土部材140への影響がない。
【0036】
また、回動支点140aよりも前方であって覆土部材140の上方には、ストッパねじ143が設けられている。ストッパねじ143は、取付ブラケット141に固定されている。ストッパねじ143は、覆土部材140の上面に当接することで、覆土部材140の後端の高さの下限位置を規定する。
【0037】
覆土部材140の後部140cは、平面視で植付爪40の下死点よりも後方において植付爪40側に突出しており、覆土部材140同士の間隔が狭くなっている(
図6Bを参照)。これにより、覆土性能や苗の持ち上げ抑制の機能が向上する。
【0038】
また、覆土部材140の後部140cは、底面が植付爪40を向くように傾斜している(
図6Cを参照)。これにより、作物や圃場条件に合わせて、最適な位置に調節ができる。
【0039】
図7Aは、他の実施形態に係る苗縦送り機構80の構成を説明するための左側面図である。
図7Aに示すように、他の実施形態に係る縦送り駆動カム80b、第1揺動部材153及び上部ブラケット158は、前述の実施形態と形状が異なる。そして、他の実施形態に係る苗縦送り機構80は、第1揺動部材153の揺動を規制する上側規制部材170が設けられている。なお、前述の実施形態に係る苗縦送り機構80に上側規制部材170を設けてもよい。
【0040】
縦送り駆動カム80bは、外周部に第1揺動部材153と当接する第1当接部800bを備える。縦送り駆動カム80bは、略扇状であるが、斯かる形状に限定するものではない。
【0041】
第1当接部800bは、後端側に配置された第1当接端部801bと、前端側に配置された第2当接端部802bと、を備える。そして、第1当接部800bは、第1当接端部801bから第2当接端部802bに進むにつれて、縦送り駆動軸80aの中心からの距離が長くなっている。
【0042】
第1揺動部材153は、第1当接部800bと当接する第2当接部153aを備える。そして、第2当接部153aは、第1当接端部801bから第2当接端部802bまで当接している間で且つ上側規制部材170に近接するまでの間、第1揺動部材153が上方に回動させることができる形状となっている。
【0043】
図7Bは、他の実施形態に係る第1揺動部材153が最高点まで回動した状態を示す図である。
図7Bに示すように、第1当接端部801bが第2当接部153aと当接する初期位置から第2当接端部802bが第2当接部153aと当接する位置までの縦送り駆動カム80bの回転角度は、カム当接角度θ1である。縦送り駆動カム80bがカム当接角度θ1の範囲内を回転している間、第1揺動部材153が上方に回動される。
【0044】
図8は、他の実施形態に係る苗縦送りベルト155(
図4参照)の縦送り速度V1と苗マットの自然落下速度V2との関係を示す図である。
図8に示すグラフにおいて、縦軸が苗縦送りベルト155の縦送り量(距離)を示し、横軸が時間を示す。そして、縦送り時間T1は、苗縦送りベルト155が縦送り量W1を縦送り移動されるのに要する時間(縦送り駆動カム80bに押圧されて第1揺動部材153が上方に回動する時間)であり、自然落下時間T2は、苗マットが縦送り量W1を自然落下するのに要する時間である。
【0045】
縦送り駆動軸80aの最大回転速度が300rpm、縦送り量W1が30mmの場合、カム当接角度θ1は、200°以上であることが好ましい。なお、斯かる数値は例示であり、適宜選択が可能である。そして、自然落下速度V2は、苗縦送りベルト155の傾斜に沿って苗マットが落下する速度(摩擦、空気抵抗などを考慮せず)である。
【0046】
斯かる縦送り駆動カム80b及び第1揺動部材153によれば、縦送り駆動軸80aが最大速度で回転している場合でも、縦送り時間T1は、自然落下時間T2よりも長くすることができる。これにより、苗縦送りベルト155の縦送り速度V1が苗マットの自由落下速度V2を大きく超えることを防止することができ、苗マットが苗縦送りベルト155の上を滑ることを防止することができる。その結果、例えば、苗マットが縦送り量W1よりも短い距離しか縦送り移動されず、植付爪40(
図6A~C参照)によって、苗が傷つけられることを防止できる。
【0047】
なお、上記構成に限定されず、例えば、他の実施形態に係る苗縦送り機構80は、駆動源1c(
図1参照)と独立して縦送り駆動軸80aを駆動する縦送りモータ(不図示)を備え、縦送りモータを制御することによって、縦送り時間T1を自然落下時間T2よりも長くする、という構成であってもよい。
【0048】
上側規制部材170は、上部ブラケット158の上側に固定される上側ストッパ取付部171と、上側ストッパ取付部171の前側に設けられた上側ストッパゴム172と、を備える。これにより、第1揺動部材153が縦送り駆動カム80bに押圧され上方に回動した際、戻しバネ159(
図5A、B参照)の付勢力によって
図7Aに示す初期位置に戻ることができる回動範囲内に第1揺動部材153の回動を規制することができる。
【0049】
以上のように、他の実施形態の苗縦送り機構80は、苗縦送りベルト155は、一定の縦送り量W1で間欠的に縦送り移動され、苗縦送りベルト155が縦送り量W1を縦送り移動されるのに要する縦送り時間T1は、苗マットが縦送り量W1を自然落下するのに要する自然落下時間T2よりも長い。これにより、苗マットが苗縦送りベルト155の上を滑ることを防止することができる。
【0050】
以上、本発明及び他の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 移植機
3 苗植付装置
40 植付爪
51 苗載台
80 苗縦送り機構
80b 縦送り駆動カム
153 第1搖動部材
154 増幅機構
156 第2搖動部材
155 苗縦送りベルト
155a ベルト駆動軸
155c 駆動側ローラ
160 規制部材
W1 縦送り量
T1 縦送り時間
T2 自然落下時間