(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】炎症を処置および予防するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/705 20060101AFI20221214BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20221214BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221214BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20221214BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221214BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221214BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20221214BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221214BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20221214BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221214BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221214BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
C07K14/705
C12N15/12 ZNA
C12N15/63 Z
A61K38/17
A61K39/395 N
A61K31/7088
A61K31/713
A61P29/00
A61P37/06
A61P27/02
A61P25/00
A61K45/00
(21)【出願番号】P 2020070982
(22)【出願日】2020-04-10
(62)【分割の表示】P 2017531928の分割
【原出願日】2015-09-08
【審査請求日】2020-04-22
(32)【優先日】2014-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517077669
【氏名又は名称】アールエスイーエム,リミティド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】プシェミスワフ サピエハ
(72)【発明者】
【氏名】ノルマン ボーリュー
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/055550(WO,A1)
【文献】JBC,2002,Vol.277,No.20,p.18069-18076
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
C12N
C07K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューロピリン-1(NRP1)
ポリペプチドトラップであって、当該NRP1
ポリペプチドトラップは、天然ヒトニューロピリン-1のa1、a2及びb1ドメインに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる可溶性NRP1ポリペプチドを含み、そして当該可溶性NRP1ポリペプチドは、天然ヒトニューロピリン-1のb2ドメイン及びcドメインを欠く、前記NRP1
ポリペプチドトラップ。
【請求項2】
前記可溶性NRP1ポリペプチドが、天然ヒトNPR1のa1、a2及びb1ドメインに対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載のNRP1
ポリペプチドトラップ。
【請求項3】
前記可溶性NRP1ポリペプチドが、天然ヒトNPR1のa1、a2及びb1ドメインに対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、請求項2に記載のNRP1
ポリペプチドトラップ。
【請求項4】
前記可溶性NRP1ポリペプチドが、天然ヒトNPR1のa1、a2及びb1のアミノ酸配列を含んでなる、請求項3に記載のNRP1
ポリペプチドトラップ。
【請求項5】
前記NRP1
ポリペプチドトラップが、断片結晶化可能(fragment crystallizable(FC))ドメインを更に含んで成る、請求項1~4のいずれか1項に記載のNRP1ト
ポリペプチドラップ。
【請求項6】
前記FCドメインが、配列番号:37のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載のNRP1
ポリペプチドトラップ。
【請求項7】
前記FCドメインが、可溶性NRP1ポリペプチドのカルボキシ末端に連結されている、請求項5又は6に記載のNRP1
ポリペプチドトラップ。
【請求項8】
Fcドメインンと可溶性NRP1ポリペプチドとの間にポリペプチドリンカーを更に含む、請求項5~7のいずれか1項に記載のNRP1
ポリペプチドトラップ。
【請求項9】
自然免疫応答の過剰活性化を伴う免疫性疾患又は状態の予防又は処置において使用するための、請求項1~8のいずれか1項に記載のNRP1
ポリペプチドトラップ。
【請求項10】
前記免疫性疾患又は状態が、神経炎症性状態である、請求項9に記載のNRP1
ポリペプチドトラップ。
【請求項11】
前記免疫性疾患又は状態が、炎症性腸疾患(IBD)、皮膚炎症、糖尿病、ぶどう膜炎、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性(AMD)、未熟児網膜症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、加齢性認知機能低下、アルツハイマー病または脳卒中である、請求項9又は10に記載のNRP1
ポリペプチドトラップ。
【請求項12】
前記NRP1
ポリペプチドトラップが、(i)浮腫を減少させ、(ii)単核貪食細胞を活性化/動員を減少させ、(iii)炎症性サイトカイン産生若しくは分泌を減少させ、または(iv)病的血管新生を減少させ、および/または(v)血管変性を減少させる、請求項9~11のいずれか1項に記載のNRP1
ポリペプチドトラップ。
【請求項13】
前記NRP1
ポリペプチドトラップが、眼投与用であ
る、請求項1~8のいずれか1項に記載のNRP1
ポリペプチドトラップ。
【請求項14】
前記NRP1
ポリペプチドトラップが、医薬として許容されるキャリアまたは賦形剤と共に医薬組成物として製剤化される、請求項1~8のいずれか1項に記載のNRP1
ポリペプチドトラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年9月5日に出願された米国特許仮出願第62/046,459号の優先性を主張する。この特許仮出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、「12810_513_ST25」という名称で2015年9月8日に作成された580キロバイトのサイズを有するコンピュータ可読形式の配列表を含む。このコンピュータ可読形式配列表は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
連邦政府支援研究または開発に関する記載
該当なし。
【0004】
発明の分野
本発明は、炎症に関する。より具体的には、本発明は、炎症の予防または処置のためのNRP1経路の阻害に関する。
【背景技術】
【0005】
局所的急性炎症反応は、ほとんどが有益であり、宿主の感染に対する身体の最前線の防御である。逆に、敗血性ショックなどの急性の全身性炎症は、罹患率および死亡率の主要な原因である(58)。慢性で低悪性度の炎症が持続する場合、2型糖尿病から、関節炎、癌、いくつかの神経炎症性疾患、さらにその他の疾患に及ぶいくつかの全身性疾患の始まりである可能性がある。
【0006】
全サイトカイン、炎症プロセスに寄与すると考えられる受容体およびその他の関与物質の中で、まったく見落とされてきた1つのパラダイムは、古典的な神経ガイダンスキューおよびそれらの受容体の影響である。これらには、セマフォリン3A(SEMA3A、例えば、mRNA:NM_006080;およびタンパク質:NP_006071および
図21)およびそれらの受容体ニューロピリン-1(NRP1、例えば、mRNA:NM_001024628;およびタンパク質:NP_001019799、NM_003873および
図22(アイソフォーム2またはb、分泌型)および
図26(アイソフォーム1))が含まれる。NRP1は、リンパ系および骨髄細胞の両方上に発現する(59、31)。炎症におけるその役割は、特に、サイトカイン産生との関係に関しては、未だにほとんどわかっていない。
【0007】
最初、セマフォリンは、胚形成中の軸索ガイダンスの中心的存在として特徴付けられた。現在では、セマフォリンの役割は軸索ガイダンスを超えて広がり、血管系、腫瘍増殖および免疫応答に影響を与えることが明らかになっている。セマフォリンファミリーは、少なくとも21個の脊椎動物遺伝子および8個の追加の無脊椎動物遺伝子の数になっている。全てのセマフォリンは、シグナル伝達に必要な約500個のアミノ酸のセマドメインを含む。クラス3セマフォリン(SEMA3Aなど)は、唯一分泌型ファミリーメンバーである。SEMA3Aは、ジスルフィド結合ホモダイマーとして合成され、二量体化はシグナル伝達に不可欠である。
【0008】
ニューロンでは、SEMA3Aのその同族受容体ニューロピリン-1(NRP1)への結合により、プレキシンを介して細胞骨格崩壊が誘発される(60)。内皮細胞中の伝達機序は不明確なままである。NRP1は、細胞外ドメイン上の別個の部位を介して、構造的に異なる2つのリガンドに結合する特殊な能力を有している(27~29)。NRP1は、SEMA3Aに結合して細胞骨格崩壊を誘発する(46、47)のみでなく、VEGF165にも結合して(28、29、47、61)VEGFR2への結合を促進し、その結果として、血管新生の潜在能力を高める(62)。結晶学的エビデンスにより、VEGF165およびSEMA3Aは、NRP1に対して直接競合することはなく、むしろ、別個の重複しない部位でNRP1に同時に結合できることが示されている(63)。さらに、遺伝子研究では、NRP1が神経細胞および血管発生に関するVEGFとSEMA3Aの作用を個別に調節していることも示されている(64)。最終的に、NRP1は、TGF-β1に結合し、その不活性型を調節することもわかっている。
【0009】
NRP1は、1回膜貫通型受容体であり、大きな860個のアミノ酸の細胞外ドメインおよび短い40個のアミノ酸の細胞内ドメインを有し、大きなドメインは、3個のサブドメイン(a1a2、b1b2およびc)に細分される(65)。ニューロンでは、SEMA3AのNRP1への結合により、プレキシンが動員され、これが細胞内シグナルを伝達し(60)、細胞骨格崩壊を誘発する。内皮細胞での伝達機序は、不明確のまま残されている。NRP1は、主に、そのa1a2(しかし、おそらくb1も)ドメインを介してSEMA3Aに結合し(細胞骨格崩壊を誘発する)(46、47)、およびそのb1b2ドメインを介して、VEGF165(28、29、47、61)(VEGFR2への結合を促進し、その結果として、その血管新生の潜在能力を高める(62))に結合する。虚血性網膜中のレベルが高くなったSEMA3Aは、その結果として、前進する端細胞を崩壊させ、反発キュー源から端細胞をずらすことにより、硝子体中へ新生血管を押し込むのを支援し得る(21)。
【0010】
CNSは、長い間、免疫特権を有するシステムであると見なされてきたが、しかし、現在では、脳、網膜および脊髄は、複雑な免疫監視を受けていることが明らかになっている(1、2)。CNSにおける免疫学的作用は、自然免疫応答に大きく依存しており、健康時に存在し、糖尿病性網膜症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症およびアルツハイマー病などの疾患時に強くなっている。これは網膜で明らかであり、網膜における強化された、主にミクログリア/マクロファージに基づく免疫応答は、いくつかの視力を脅かす疾患、例えば、糖尿病性網膜症(DR)(3~5)、加齢黄斑変性(AMD)(6~8)および未熟児網膜症(ROP)(9、10)の進行と関連している。合わせて、これらの網膜症は、工業先進国における失明の主要な原因を占める(6、11、12)。
【0011】
多くの現状の炎症性疾患および状態の処置は、重大な副作用および不十分な長期安全性プロファイルに悩まされている。したがって、新規医薬品標的および処置方法に対する必要性が残されている。
【0012】
本発明の説明では、多数の文献に言及する。これらの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0013】
本発明者らは、自然免疫応答の存在下における骨髄常在性NRP1の機能を明確にしようとしてきた。
【0014】
本発明者らは、SEMA3A、VEGFおよびTGF-βは、NRP1受容体を発現している単核貪食細胞(MP、例えば、ミクログリアおよびマクロファージ)に対する強力な誘引剤としての役割を果たすと結論付けた。自然免疫細胞におけるNRP1シグナル伝達の阻害は、自然免疫応答の過剰活性化を伴う、増殖網膜症、敗血性ショックおよび脳虚血/脳卒中などの種々の状態下で、MP依存性炎症および組織損傷に対する保護を生ずることが示された。さらに、本発明者らは、SEMA3Aシグナル伝達を阻害する種々の可溶性NRP1由来トラップを設計し、SEMA3Aの阻害が種々の状態の炎症反応を著しく減らすことを示した。
【0015】
したがって、本発明は、自然免疫応答の過剰活性化(すなわち、病理学的活性化)を伴う炎症性疾患および状態の予防または処置のための、NRP1細胞内シグナル伝達(例えば、NRP1およびそのリガンド)の阻害に関する。このような疾患および状態の非限定的例には、敗血症、脳卒中、脳虚血、および種々の増殖網膜症が挙げられる。
【0016】
より具体的には、一態様において、本発明は、炎症を処置または予防する方法に関し、該方法は、NRP1依存性細胞内シグナル伝達を阻害することを含む。
【0017】
別の態様では、本発明は、自然免疫応答の過剰活性化を防止または低減する方法に関し、該方法は、NRP1依存性細胞内シグナル伝達を阻害することを含む。一実施形態では、自然免疫応答の過剰活性化は、i)IL-1βおよびTNFαの分泌および/または単核貪食細胞(MP)の活性化/動員を含む。
【0018】
一実施形態では、NRP1依存性細胞内シグナル伝達の阻害は、a)NRP1発現または活性の低減;および/またはb)NRP1リガンド発現または活性の低減を含む。一実施形態では、NRP1リガンドはSEMA3A、VEGF165またはTGF-βである。特定の実施形態では、NRP1リガンドはSEMA3Aである。
【0019】
一実施形態では、NRP1活性の低減は、NRP1の少なくとも1つのNRP1リガンドへの結合を阻害することからなる。一実施形態では、NRP1の少なくとも1つのNRP1リガンドへの結合の阻害は、NRP1抗体(例えば、SEMA3A抗体)を投与することを含む。
【0020】
上記方法の別の実施形態では、NRP1活性を減らすことは、可溶性NRP1ポリペプチドまたはその機能性断片を含む有効量のNRP1トラップを投与することを含む。特定の実施形態では、NRP1トラップは
図19または20に示されている。
【0021】
特定の実施形態では、本発明のNRP1トラップは、SEMA3AのNPR-1への結合を阻害するが、VEGFのNRP1への結合を実質的に阻害しない。一実施形態では、このようなNRP1トラップは、NRP1のa1a2ドメインを含むが、NRP1のb1および/またはb2サブドメイン(単一または複数)を含まない。別の実施形態では、このようなトラップは、
図22に示すように、ドメインb1中のNRP1アミノ酸配列のチロシン297に対応する位置に変異を含み、これは、VEGFのこのトラップへの結合を減らすかまたは抑止する。特定の実施形態では、この変異は、位置297のチロシンをアラニンに変える。
【0022】
特定の実施形態では、本発明のNRP1トラップは、a)NRP1のドメインa1、a2、b1、b2およびcを含む;b)NRP1のドメインa1、a2、b1およびb2を含む;c)NRP1のドメインa1、a2およびb1を含む;d)NRP1のドメインa1およびa2を含む;e)NRP1のドメインb1を含み、このb1ドメインがNRP1のチロシン297に対応するアミノ酸の変異を含み、この変異がVEGFへの結合を減らすかまたは抑止する;f)NRP1のドメインb1を含み、このb1ドメインが、NRP1のチロシン297に対応するアミノ酸の変異を含み、この変異がチロシンをアラニンに変える;g)NRP1のドメインcを含まない;h)NRP1のドメインb1を含まない;i)NRP1のドメインb1およびb2を含まない;またはj)NRP1のドメインb1、b2およびcを含まない。
【0023】
上記方法の一実施形態では、NRP1リガンド発現または活性を阻害することは、SEMA3A発現またはSEMA3AのNRP1への結合を特異的に阻害することを含む。特定の実施形態では、SEMA3AのNRP1への結合を阻害することは、SEMA3A抗体を投与することを含む。
【0024】
特定の実施形態では、本発明の方法は、NRP1アンチセンス、shRNAまたはsiRNAを投与することにより、NRP1発現を減らすことを含む。
【0025】
別の実施形態では、本方法は、SEMA3Aアンチセンス、shRNAまたはsiRNAを投与することによりSEMA3A発現を減らすことを含む。
【0026】
さらなる態様では、本発明は、炎症の予防または処置のための化合物に関し、該化合物は、a)NRP1発現または活性を減らす;またはb)NRP1リガンド発現または活性を減らす。
【0027】
別の態様では、本発明は、自然免疫応答の過剰活性化を防止または低減するための化合物に関し、該化合物は、a)NRP1発現または活性を減らす;またはb)NRP1リガンド発現または活性を減らす。
【0028】
一実施形態では、化合物は、i)SEMA3A抗体、ii)NRP1抗体、iii)NRP1トラップ、iv)SEMA3Aアンチセンス、shRNAまたはsiRNA、またはv)NRP1アンチセンス、shRNAまたはsiRNAである。別の特定の実施形態では、化合物は、NRP1抗体またはNRP1トラップであり、前記化合物は、VEGFのNRP1への結合を実質的に減らさない。
【0029】
特定の実施形態では、化合物はNRP1トラップである。一実施形態では、NRP1トラップは
図19、20、27および表1に示されている通りである。
【0030】
別の実施形態では、本発明のNRP1トラップは、SEMA3AのNPR-1への結合を阻害するが、VEGFのNRP1への結合を実質的に阻害しない。一実施形態では、このようなNRP1トラップは、NRP1のa1a2ドメインを含むが、NRP1のb1および/またはb2サブドメイン(単一または複数)を含まない。別の実施形態では、このようなトラップは、
図22に示すように、ドメインb1中のNRP1アミノ酸配列のチロシン297に対応する位置に変異を含み、これは、VEGFのこのトラップへの結合を減らすかまたは抑止する。特定の実施形態では、この変異は、位置297のチロシンをアラニンに変える。
【0031】
特定の実施形態では、本発明のNRP1トラップは、a)NRP1のドメインa1、a2、b1、b2およびcを含む;b)NRP1のドメインa1、a2、b1およびb2を含む;c)NRP1のドメインa1、a2およびb1を含む;d)NRP1のドメインa1およびa2を含む;e)NRP1のドメインb1を含み、このb1ドメインがNRP1のチロシン297に対応するアミノ酸の変異を含み、この変異がVEGFへの結合を減らすかまたは抑止する;f)NRP1のドメインb1を含み、このb1ドメインが、NRP1のチロシン297に対応するアミノ酸の変異を含み、この変異がチロシンをアラニンに変える;g)NRP1のドメインcを含まない;h)NRP1のドメインb1を含まない;i)NRP1のドメインb1およびb2を含まない;またはj)NRP1のドメインb1、b2およびcを含まない。
【0032】
一実施形態では、本発明のNRP1トラップは、(i)
図26(配列番号69)に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸1~856(好ましくは22~856);(ii)
図26(配列番号69)に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸1~583(好ましくは22~583);(iii)
図26(配列番号69)に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸1~424(好ましくは22~424);(iv)
図26(配列番号69)に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸1~265(好ましくは22~265);(v)
図26(配列番号69)に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸1~430および584~856(好ましくは22~430および584~856);(vi)
図26(配列番号69)に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸1~274および584~856(好ましくは22~274および584~856);(vii)
図26(配列番号69)に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸1~430および584(好ましくは22~430および584~856)を含む。特定の実施形態では、上述のトラップは、1つまたは複数の変異を含み、上述のように、VEGFまたはSEMA3A結合を減らす。
【0033】
別の態様では、本発明は、i)炎症の処置および予防またはii)自然免疫応答の過剰活性化の防止または低減のための組成物を提供し、該組成物は、医薬キャリアと一緒に本発明の1種または複数の化合物を含む。
【0034】
本発明はまた、i)炎症の処置および予防またはii)自然免疫応答の過剰活性化の防止または低減のための、薬物の製造における本発明の1種または複数の化合物の使用に関する。
【0035】
関連する態様では、本発明は、i)炎症の処置および予防またはii)自然免疫応答の過剰活性化の防止または低減のための本発明の1種または複数の化合物の使用に関する。
【0036】
特定の実施形態では、本発明の方法、化合物(例えば、NRP1ポリペプチドトラップ、これをコードする核酸、ベクター、ベクターを含む細胞、など)、組成物および使用は、敗血性ショック、関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、皮膚炎症、糖尿病、ぶどう膜炎、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性(AMD)、未熟児網膜症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、加齢性認知機能低下/アルツハイマー病または脳卒中からなる群より選択される炎症性疾患および状態を処置または予防するためである。
【0037】
一実施形態では、本発明の方法、化合物、組成物および使用は、敗血性ショック、脳虚血または脳卒中を処置または予防するためである。
【0038】
より具体的には、本発明では、次の項目が提供される。
【0039】
1.対象のNRP1依存性細胞内シグナル伝達を阻害することを含む炎症を処置または予防する方法。
【0040】
2.対象のNRP1依存性細胞内シグナル伝達を阻害することを含む、自然免疫応答の過剰活性化を防止するまたは減らす方法。
【0041】
3.前記自然免疫応答の過剰活性化が、i)IL-6、IL-1βおよびTNFαの分泌および/または単核貪食細胞(MP)の動員を含む、項目2に記載の方法。
【0042】
4.NRP1依存性細胞内シグナル伝達の阻害が、(a)NRP1発現または活性を減らすこと、および/または(b)NRP1リガンド発現または活性を減らすことを含み、前記NRP1リガンドがSEMA3A、VEGFおよび/またはTGF-βである、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
【0043】
5.(i)NRP1の少なくとも1つのNRP1リガンドへの前記結合を阻害することによるNRP1活性の低減を含む、項目4に記載の方法。
【0044】
6.前記NRP1リガンドがSEMA3A、VEGFまたはTGF-βである、項目5に記載の方法。
【0045】
7.NRP1の少なくとも1つのNRP1リガンドへの前記結合の阻害が、抗NRP1抗体またはNRP1トラップを投与することを含み、前記トラップがNRP1ポリペプチドまたはその機能性断片もしくは変異体を含む、項目5または6に記載の方法。
【0046】
8.前記NRP1ポリペプチドが、可溶性NRP1アイソフォーム2に対応する、項目7に記載の方法。
【0047】
9.前記可溶性NPR1アイソフォーム2が、シグナルペプチドを含まない
図22に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むかまたは基本的にそれから構成される、項目8に記載の方法。
【0048】
10.前記NRP1ポリペプチドが、NRP1アイソフォーム1ポリペプチドの細胞外ドメインに対応する、項目7に記載の方法。
【0049】
11.前記NRP1アイソフォーム1ポリペプチドが、
図26に示す通りであり、前記細胞外ドメインが、
図26(配列番号66)に示すNRP1ポリペプチドに対応するアミノ酸22~859を含む、項目10に記載の方法。
【0050】
12.前記NRP1トラップが、(i)配列番号65で示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸22~609;(ii)配列番号66で示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸22~859;(iii)配列番号69で示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸22~859、または(iv)(i)、(ii)または(iii)の機能性断片もしくは機能性変異体を含むNRP1ポリペプチドを含む、項目7~11のいずれか1項に記載の方法。
【0051】
13.前記抗NRP1抗体がSEMA3AのNPR-1への結合を阻害するが、VEGFのNRP1への結合を実質的に阻害せず、前記NRP1トラップがSEMA3Aに結合するが、VEGF165に実質的に結合しないかまたはSEMA3Aの結合親和性に比べてVEGF165に対する低い結合親和性を有する、項目7~12のいずれか1項に記載の方法。
【0052】
14.前記NRP1トラップが、(i)NRP1のドメインb1および/またはb2を完全にまたは部分的に欠いている;または(ii)NRP1へのVEGFの結合を阻害する、少なくとも1つのアミノ酸点変異を含む、項目13に記載の方法。
【0053】
15.前記抗NRP1抗体が、NRP1のドメインb1および/またはb2に結合しない、項目13に記載の方法。
【0054】
16.前記点変異が、(a)
図22または
図26に示すNRP1アミノ酸配列のチロシン297に対応するドメインb1のアミノ酸残基のアミノ酸置換または欠失;(b)
図22または
図26に示すNRP1アミノ酸配列のアスパラギン酸320に対応するドメインb1のアミノ酸残基のアミノ酸置換または欠失;および/または(c)
図22または
図26に示すNRP1アミノ酸配列のグルタミン酸319に対応するドメインb1のアミノ酸残基のアミノ酸置換または欠失、を含む、項目14に記載の方法。
【0055】
17.前記点変異がY297A置換;D320K置換および/またはE319K置換である、項目16に記載の方法。
【0056】
18.前記NRP1トラップが、(a)前記NRP1ポリペプチドのドメインa1、a2、b1、b2、およびcを含む;(b)前記NRP1ポリペプチドのドメインa1、a2、b1およびb2を含む;(c)前記NRP1ポリペプチドのドメインa1、a2、およびb1を含む;(d)前記NRP1ポリペプチドのドメインa1およびa2を含む;(f)前記NRP1ポリペプチドのドメインb1を含み、前記ドメインb1は、
図26に示すアミノ酸配列を含むNRP1ポリペプチドの(i)チロシン297、(ii)アスパラギン酸320および/または(iii)グルタミン酸319に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つの点変異を含み、前記少なくとも1つの変異がVEGF
165への結合を減らすかまたは抑止する;(g)前記NRP1ポリペプチドのドメインcを完全にまたは部分的に欠いている;(h)前記NRP1ポリペプチドのドメインb1を完全にまたは部分的に欠いている;(i)前記NRP1ポリペプチドのドメインb2を完全にまたは部分的に欠いている;(j)前記NRP1ポリペプチドのドメインb1およびb2を欠いている;または(k)前記NRP1ポリペプチドのドメインb1、b2およびcを欠いている、項目7~12のいずれか1項に記載の方法。
【0057】
19.(i)前記ドメインa1が
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸27~141に対応するアミノ酸配列を含むかまたは基本的にそれから構成される;(ii)前記ドメインa2が
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸147~265に対応するアミノ酸配列を含む;(iii)前記ドメインb1が
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸275~424に対応するアミノ酸配列を含む;(iv)前記ドメインb2が
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸431~583に対応するアミノ酸配列を含む;および/または(v)前記ドメインcが
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸645~811に対応するアミノ酸配列を含む、項目18に記載の方法。
【0058】
20.(i)前記ドメインa1が
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸22~148に対応するアミノ酸配列を含むかまたは基本的にそれから構成される;(ii)前記ドメインa2が
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸149~275に対応するアミノ酸配列を含む;(iii)前記ドメインb1が
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸276~428に対応するアミノ酸配列を含む;(iv)前記ドメインb2が
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸429~589に対応するアミノ酸配列を含む;および/または(v)前記ドメインcが
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸590~859に対応するアミノ酸配列を含む、項目18に記載の方法。
【0059】
21.前記方法が、表1に示すトラップから本質的になるNRP1トラップまたはその機能性変異体を投与することによる、NRP1の少なくとも1つのNRP1リガンドへの前記結合を阻害することを含む、項目7に記載の方法。
【0060】
22.前記NRP1トラップが、タンパク質精製ドメインをさらに含む、項目7~20のいずれか1項に記載の方法。
【0061】
23.前記精製ドメインがポリヒスチジンタグである、項目22に記載の方法。
【0062】
24.前記NRP1トラップがFCドメインをさらに含む、項目7~20のいずれか1項に記載の方法。
【0063】
25.前記NRP1トラップが、前記タンパク質精製ドメインまたはFCドメインを前記NRP1トラップから取り除くことを可能とするプロテアーゼまたはペプチダーゼ切断部位を含む、項目22~24のいずれか1項に記載の方法。
【0064】
26.前記プロテアーゼまたはペプチダーゼ切断部位が、TEVプロテアーゼ切断部位である、項目25に記載の方法。
【0065】
27.前記TEVプロテアーゼ切断部位が、アミノ酸配列GSKENLYFQGを含む、項目26に記載の方法。
【0066】
28.NRP1リガンドの発現または活性を減らすことを含み、NRP1リガンドがSEMA3Aである、項目4に記載の方法。
【0067】
29.SEMA3Aのセマドメインに結合する抗SEMA3A抗体を投与することによるSEMA3AのNRP1への結合を阻害することにより、SEMA3A活性を減らすことを含む、項目28に記載の方法。
【0068】
30.NRP1アンチセンス、shRNAまたはsiRNAを投与することにより、NRP1発現を減らすことを含む、項目4に記載の方法。
【0069】
31.SEMA3Aアンチセンス、shRNAまたはsiRNAを投与することにより、SEMA3A発現を減らすことを含む、項目4に記載の方法。
【0070】
32.SEMA3A、VEGF165および/またはTGF-βに結合する、NRP1ポリペプチドまたはその機能性断片もしくは変異体を含むNRP1ポリペプチドトラップ。
【0071】
33.可溶性NRP1アイソフォーム2に対応する、項目32に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0072】
34.前記可溶性NPR1アイソフォーム2が、シグナルペプチドを含まない
図22に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むかまたは基本的にそれから構成される、項目33のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0073】
35.前記NRP1ポリペプチドが、NRP1アイソフォーム1ポリペプチドの細胞外ドメインに対応する、項目34に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0074】
36.前記NRP1アイソフォーム1ポリペプチドが、
図26に示す通りであり、前記細胞外ドメインがアミノ酸22~859に対応する、項目35に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0075】
37.前記NRP1トラップが、(i)配列番号65で示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸22~609;(ii)配列番号66で示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸22~859;(iii);配列番号69で示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸22~859、または(iv)(i)、(ii)または(iii)の機能性断片もしくは機能性変異体を含むNRP1ポリペプチドを含む、項目32~36のいずれか1項に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0076】
38.NRP1トラップがSEMA3Aに結合するが、VEGF165に実質的に結合しないかまたはSEMA3Aとの結合親和性に比べて、VEGF165に対し低い結合親和性を有する、項目32~37のいずれか1項に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0077】
39.前記NRP1トラップが、(i)NRP1のドメインb1および/またはb2を完全にまたは部分的に欠いている;または(ii)NRP1へのVEGFの結合を阻害する、少なくとも1つのアミノ酸点変異を含む、項目38に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0078】
40.前記点変異が、(a)
図22または
図26に示すNRP1アミノ酸配列のチロシン297に対応するドメインb1のアミノ酸残基のアミノ酸置換または欠失;(b)
図22または
図26に示すNRP1アミノ酸配列のアスパラギン酸320に対応するドメインb1のアミノ酸残基のアミノ酸置換または欠失;および/または(c)
図22または
図26に示すNRP1アミノ酸配列のグルタミン酸319に対応するドメインb1のアミノ酸残基のアミノ酸置換または欠失を含む、項目39に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0079】
41.前記点変異がY297A置換;D320K置換および/またはE319K置換である、項目40に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0080】
42.前記トラップが、(a)前記NRP1ポリペプチドのドメインa1、a2、b1、b2、およびcを含む;(b)前記NRP1ポリペプチドのドメインa1、a2、b1およびb2を含む;(c)前記NRP1ポリペプチドのドメインa1、a2、およびb1を含む;(d)前記NRP1ポリペプチドのドメインa1およびa2を含む;(e)前記NRP1ポリペプチドのドメインb1を含み、前記ドメインb1は、
図26に示すアミノ酸配列を含むNRP1ポリペプチドの(i)チロシン297、(ii)アスパラギン酸320および/または(iii)グルタミン酸319に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つの点変異を含み、前記少なくとも1つの変異がVEGF165への結合を減らすかまたは抑止する;(f)前記NRP1ポリペプチドのドメインcを完全にまたは部分的に欠いている;(g)前記NRP1ポリペプチドのドメインb1を完全にまたは部分的に欠いている;(h)前記NRP1ポリペプチドのドメインb2を完全にまたは部分的に欠いている;(i)前記NRP1ポリペプチドのドメインb1およびb2を欠いている;または(j)前記NRP1ポリペプチドのドメインb1、b2およびcを欠いている、項目32~38のいずれか1項に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0081】
43.(i)前記ドメインa1が
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸27~141に対応するアミノ酸配列を含むかまたは基本的にそれから構成される;(ii)前記ドメインa2が
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸147~265に対応するアミノ酸配列を含む;(iii)前記ドメインb1が
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸275~424に対応するアミノ酸配列を含む;(iv)前記ドメインb2が
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸431~583に対応するアミノ酸配列を含む;および/または(v)前記ドメインcが
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸645~811に対応するアミノ酸配列を含む、項目42に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0082】
44.(i)前記ドメインa1が
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸22~148に対応するアミノ酸配列を含むかまたは基本的にそれから構成される;(ii)前記ドメインa2が
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸149~275に対応するアミノ酸配列を含む;(iii)前記ドメインb1が
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸276~428に対応するアミノ酸配列を含む;(iv)前記ドメインb2が
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸429~589に対応するアミノ酸配列を含む;および/または(v)前記ドメインcが
図26に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸590~859に対応するアミノ酸配列を含む、項目42に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0083】
45.前記トラップが表1に示すトラップまたはその機能性変異体から本質的になる、項目32に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0084】
46.前記トラップが、タンパク質精製ドメインをさらに含む、項目32~44のいずれか1項に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0085】
47.前記精製ドメインがポリヒスチジンタグである、項目46に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0086】
48.前記NRP1トラップが、FCドメインをさらに含む、項目32~47のいずれか1項に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0087】
49.前記NRP1トラップが、前記タンパク質精製ドメインまたはFCドメインを前記NRP1トラップから取り除くことを可能とするプロテアーゼまたはペプチダーゼ切断部位を含む、項目46~48のいずれか1項に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0088】
50.前記プロテアーゼまたはペプチダーゼ切断部位が、TEVプロテアーゼ切断部位である、項目49に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0089】
51.前記TEVプロテアーゼ切断部位が、アミノ酸配列GSKENLYFQGを含む、項目50に記載のNRP1ポリペプチドトラップ。
【0090】
52.項目32~51のいずれか1項に記載のNRP1ポリペプチドトラップをコードする核酸。
【0091】
53.項目52に記載の核酸を含む発現ベクター。
【0092】
54.項目53に記載のベクターを含む宿主細胞。
【0093】
55.項目32~51のいずれか1項に記載のNRP1ポリペプチドトラップ、項目52に記載の核酸、項目53に記載のベクターまたは項目54に記載の宿主細胞および適切なキャリアを含む組成物。
【0094】
56.(ii)炎症を予防または処置するための、または(ii)自然免疫応答の過剰活性化を防止するまたは減らすための、項目55に記載の組成物。
【0095】
57.炎症を予防または処置するための化合物であって、(a)NRP1発現または活性を減らし、および/または(b)NRP1リガンド発現または活性を減らす、化合物。
【0096】
58.自然免疫応答の過剰活性化を防止するまたは減らすための化合物であって、(a)NRP1発現または活性を減らし、および/または(b)NRP1リガンド発現または活性を減らす、化合物。
【0097】
59.(i)抗SEMA3A抗体、(ii)抗VEGF165抗体、(iii)抗NRP1抗体、(iv)NRP1トラップ、(v)SEMA3Aアンチセンス、shRNAまたはsiRNA、(vi)NRP1アンチセンス、shRNAまたはsiRNA、または(vii)VEGFアンチセンス、shRNAまたはsiRNAである、項目57または58に記載の化合物。
【0098】
60.前記化合物がNRP1ポリペプチドトラップである、項目59に記載の化合物。
【0099】
61.項目57~60のいずれか1項に定められる化合物および適切なキャリアを含む炎症を処置または予防するための組成物。
【0100】
62.項目57~60のいずれか1項に定められる化合物および適切なキャリアを含む自然免疫応答の過剰活性化を防止するまたは減らすための組成物。
【0101】
63.項目32~51のいずれか1項に記載のNRP1ポリペプチドトラップ、項目52記載の核酸、項目53に記載のベクター、項目54に記載の宿主細胞、項目57~60のいずれか1項に記載の化合物または項目55、61および62のいずれか1項に記載の組成物の、炎症を予防または処置するための薬物の製造における使用。
【0102】
64.項目32~51のいずれか1項に記載のNRP1ポリペプチドトラップ、項目52記載の核酸、項目53に記載のベクター、項目54に記載の宿主細胞、項目57~60のいずれか1項に記載の化合物または項目55、61および62のいずれか1項に記載の組成物の、炎症を予防または処置するための薬物の製造における使用。
【0103】
65.項目32~51のいずれか1項に記載のNRP1ポリペプチドトラップ、項目52記載の核酸、項目53に記載のベクター、項目54に記載の宿主細胞、項目57~60のいずれか1項で定められる化合物または項目55、61および62のいずれか1項で定められる組成物の、自然免疫応答の過剰活性化を防止または処置するための使用。
【0104】
66.項目32~51のいずれか1項に記載のNRP1ポリペプチドトラップ、項目52記載の核酸、項目53に記載のベクター、項目54に記載の宿主細胞、項目57~60のいずれか1項で定められる化合物または項目55、61および62のいずれか1項で定められる組成物の、自然免疫応答の過剰活性化を防止または減らすための使用。
【0105】
67.前記対象が、敗血性ショック、関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、皮膚炎症、糖尿病、ぶどう膜炎、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性(AMD)、未熟児網膜症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、加齢性認知機能低下/アルツハイマー病または脳卒中に罹患しているかまたは罹患する可能性がある、項目1~31のいずれか1項に記載の方法。
【0106】
68.前記方法、NRP1ポリペプチドトラップ、核酸、ベクター、宿主細胞、化合物、組成物または使用が、敗血性ショック、関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、皮膚炎症、糖尿病、ぶどう膜炎、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性(AMD)、未熟児網膜症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、加齢性認知機能低下/アルツハイマー病または脳卒中を処置または予防するためである、項目1~31のいずれか1項に記載の方法、項目32~51のいずれか1項に記載のNRP1ポリペプチドトラップ、項目52記載の核酸、項目53に記載のベクター、項目54に記載の宿主細胞、項目57~60のいずれか1項で定められる化合物または項目55、61および62のいずれか1項で定められる組成物。
【0107】
69.前記方法、NRP1ポリペプチドトラップ、核酸、ベクター、宿主細胞、化合物、組成物または使用が、敗血性ショックまたは脳卒中を処置または予防するためである、項目1~31のいずれか1項に記載の方法、項目32~51のいずれか1項に記載のNRP1ポリペプチドトラップ、項目52記載の核酸、項目53に記載のベクター、項目54に記載の宿主細胞、項目57~60のいずれか1項で定められる化合物または項目55、61および62のいずれか1項で定められる組成物。
【0108】
本発明の他の目的、利点および特徴は、例示のみを目的として示す、以下の特定の実施形態に関する非限定的な説明を添付の図面を参照して解釈することにより、一層明らかになるであろう。
【0109】
特許または特許出願ファイルは、少なくとも1つのカラー図面を含む。このカラー図面(単一または複数)を含む特許または特許出願公開公報のコピーは、要求があり、必要な手数料を支払えば米国特許商標局より提供される。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【
図1A】NRP1が血管傷害に続いて動員されるミクログリア集団を特定することを示す図である。(A)酸素誘導網膜症(OIR)のマウスモデルの概略図。第1期(生後7~12日(P7~P12))、75%酸素下で、血管喪失を誘導する。第2期(室内気下)生後12日から17日(P7~P17)では、最大網膜前血管新生が可能となる。(B、EおよびH)は、P10(B)、P14(E)およびP17(H)でWT OIRおよび正常酸素圧対照マウスから集められた網膜中のCD11b+/F4-80+/Gr-1
-細胞(ミクログリア)の代表的FACSプロットを示す。(C、FおよびI)は、P10(C)、P14(F)およびP17(I)の正常酸素圧(N)およびOIRでの網膜ミクログリアの数の倍率変化を示す。網膜ミクログリアの数は、分析した全ての時点でOIR中で大きく増加した(C、FおよびI);n=7~8(正常酸素圧(N))、n=7~8(OIR)(条件当たり合計28~32個の網膜;各「n」は4個の網膜を含む)。(D、GおよびJ)は、P10(D)、P14(G)およびP17(J)のNRP1陽性MPの数の倍率変化を示す。OIR網膜でNRP1陽性ミクログリア数の比例的増加が観察された(D、GおよびJ);n=3~5(正常酸素圧(N))、n=3~5(OIR)(条件当たり合計12~20個の網膜;各「n」は4個の網膜から構成される)。(K)MP常在性NRP1の役割を調べるために、網膜ミクログリア中の大きく損なわれたNRP1を発現しているLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスを生成した;n=3(WT)、n=4(LysM-Cre/Nrp1
fl/fl、条件当たり合計12~16個の網膜)。左パネルは、FACS(右パネル)により測定した、WT中のNPR-1陽性MP(LysM-Cre/NRP1
+/+)およびそれらの骨髄細胞中のNRP1欠損マウス(LysM-Cre/Nrp1
fl/fl)の%を示す。(L、NおよびP)は、正常酸素圧およびOIRでのLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス網膜中のMPの数を定量化するための、P10(L)、P14(N)およびP17(P)のFACS分析である。(M、OおよびQ)は、正常酸素圧およびOIRでのLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス網膜中のMPの数の倍率変化を示す。OIR(L、N)の増殖期中のP10およびP14のFACS分析により、LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスは、これらの時点(M、O)でOIR中でCD11b+/F4-80+/Gr-1
-細胞数の増加を示さなかったので、MP常在性NRP1は、虚血性網膜中へのMP浸潤のためには不可欠であることが明らかである。P17で、MPはNRP1と関係なく浸潤する(P、Q)。n=7~8(N)、n=7~9(OIR)(条件当たり合計28~36個の網膜;各「n」は4個の網膜を含む)。(R)WTおよびLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスにおけるOIR期間の網膜中のMP蓄積のまとめのグラフである。(S、T)Gr1
-/CD11b
+/F4/80
+細胞が高レベルのCX3CR1および中/低レベルのCD45を発現することを示す代表的FACSプロットである。WT網膜(S)中でCX3CR1highおよびCD45low細胞は、NRP1を発現し、LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス(T)由来の網膜中ではNRP1を発現しない。データは、対照と比較した倍率変化±SEMとして表される。*P<0.05、**P<0.001、***P>0.0001。
【
図1-1】B-J。NRP1が血管傷害に続いて動員されるミクログリア集団を特定することを示す図である。(A)酸素誘導網膜症(OIR)のマウスモデルの概略図。第1期(生後7~12日(P7~P12))、75%酸素下で、血管喪失を誘導する。第2期(室内気下)生後12日から17日(P7~P17)では、最大網膜前血管新生が可能となる。(B、EおよびH)は、P10(B)、P14(E)およびP17(H)でWT OIRおよび正常酸素圧対照マウスから集められた網膜中のCD11b+/F4-80+/Gr-1
-細胞(ミクログリア)の代表的FACSプロットを示す。(C、FおよびI)は、P10(C)、P14(F)およびP17(I)の正常酸素圧(N)およびOIRでの網膜ミクログリアの数の倍率変化を示す。網膜ミクログリアの数は、分析した全ての時点でOIR中で大きく増加した(C、FおよびI);n=7~8(正常酸素圧(N))、n=7~8(OIR)(条件当たり合計28~32個の網膜;各「n」は4個の網膜を含む)。(D、GおよびJ)は、P10(D)、P14(G)およびP17(J)のNRP1陽性MPの数の倍率変化を示す。OIR網膜でNRP1陽性ミクログリア数の比例的増加が観察された(D、GおよびJ);n=3~5(正常酸素圧(N))、n=3~5(OIR)(条件当たり合計12~20個の網膜;各「n」は4個の網膜から構成される)。(K)MP常在性NRP1の役割を調べるために、網膜ミクログリア中の大きく損なわれたNRP1を発現しているLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスを生成した;n=3(WT)、n=4(LysM-Cre/Nrp1
fl/fl、条件当たり合計12~16個の網膜)。左パネルは、FACS(右パネル)により測定した、WT中のNPR-1陽性MP(LysM-Cre/NRP1
+/+)およびそれらの骨髄細胞中のNRP1欠損マウス(LysM-Cre/Nrp1
fl/fl)の%を示す。(L、NおよびP)は、正常酸素圧およびOIRでのLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス網膜中のMPの数を定量化するための、P10(L)、P14(N)およびP17(P)のFACS分析である。(M、OおよびQ)は、正常酸素圧およびOIRでのLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス網膜中のMPの数の倍率変化を示す。OIR(L、N)の増殖期中のP10およびP14のFACS分析により、LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスは、これらの時点(M、O)でOIR中でCD11b+/F4-80+/Gr-1
-細胞数の増加を示さなかったので、MP常在性NRP1は、虚血性網膜中へのMP浸潤のためには不可欠であることが明らかである。P17で、MPはNRP1と関係なく浸潤する(P、Q)。n=7~8(N)、n=7~9(OIR)(条件当たり合計28~36個の網膜;各「n」は4個の網膜を含む)。(R)WTおよびLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスにおけるOIR期間の網膜中のMP蓄積のまとめのグラフである。(S、T)Gr1
-/CD11b
+/F4/80
+細胞が高レベルのCX3CR1および中/低レベルのCD45を発現することを示す代表的FACSプロットである。WT網膜(S)中でCX3CR1highおよびCD45low細胞は、NRP1を発現し、LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス(T)由来の網膜中ではNRP1を発現しない。データは、対照と比較した倍率変化±SEMとして表される。*P<0.05、**P<0.001、***P>0.0001。
【
図1K】NRP1が血管傷害に続いて動員されるミクログリア集団を特定することを示す図である。(A)酸素誘導網膜症(OIR)のマウスモデルの概略図。第1期(生後7~12日(P7~P12))、75%酸素下で、血管喪失を誘導する。第2期(室内気下)生後12日から17日(P7~P17)では、最大網膜前血管新生が可能となる。(B、EおよびH)は、P10(B)、P14(E)およびP17(H)でWT OIRおよび正常酸素圧対照マウスから集められた網膜中のCD11b+/F4-80+/Gr-1
-細胞(ミクログリア)の代表的FACSプロットを示す。(C、FおよびI)は、P10(C)、P14(F)およびP17(I)の正常酸素圧(N)およびOIRでの網膜ミクログリアの数の倍率変化を示す。網膜ミクログリアの数は、分析した全ての時点でOIR中で大きく増加した(C、FおよびI);n=7~8(正常酸素圧(N))、n=7~8(OIR)(条件当たり合計28~32個の網膜;各「n」は4個の網膜を含む)。(D、GおよびJ)は、P10(D)、P14(G)およびP17(J)のNRP1陽性MPの数の倍率変化を示す。OIR網膜でNRP1陽性ミクログリア数の比例的増加が観察された(D、GおよびJ);n=3~5(正常酸素圧(N))、n=3~5(OIR)(条件当たり合計12~20個の網膜;各「n」は4個の網膜から構成される)。(K)MP常在性NRP1の役割を調べるために、網膜ミクログリア中の大きく損なわれたNRP1を発現しているLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスを生成した;n=3(WT)、n=4(LysM-Cre/Nrp1
fl/fl、条件当たり合計12~16個の網膜)。左パネルは、FACS(右パネル)により測定した、WT中のNPR-1陽性MP(LysM-Cre/NRP1
+/+)およびそれらの骨髄細胞中のNRP1欠損マウス(LysM-Cre/Nrp1
fl/fl)の%を示す。(L、NおよびP)は、正常酸素圧およびOIRでのLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス網膜中のMPの数を定量化するための、P10(L)、P14(N)およびP17(P)のFACS分析である。(M、OおよびQ)は、正常酸素圧およびOIRでのLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス網膜中のMPの数の倍率変化を示す。OIR(L、N)の増殖期中のP10およびP14のFACS分析により、LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスは、これらの時点(M、O)でOIR中でCD11b+/F4-80+/Gr-1
-細胞数の増加を示さなかったので、MP常在性NRP1は、虚血性網膜中へのMP浸潤のためには不可欠であることが明らかである。P17で、MPはNRP1と関係なく浸潤する(P、Q)。n=7~8(N)、n=7~9(OIR)(条件当たり合計28~36個の網膜;各「n」は4個の網膜を含む)。(R)WTおよびLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスにおけるOIR期間の網膜中のMP蓄積のまとめのグラフである。(S、T)Gr1
-/CD11b
+/F4/80
+細胞が高レベルのCX3CR1および中/低レベルのCD45を発現することを示す代表的FACSプロットである。WT網膜(S)中でCX3CR1highおよびCD45low細胞は、NRP1を発現し、LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス(T)由来の網膜中ではNRP1を発現しない。データは、対照と比較した倍率変化±SEMとして表される。*P<0.05、**P<0.001、***P>0.0001。
【
図1-2】L-Q。NRP1が血管傷害に続いて動員されるミクログリア集団を特定することを示す図である。(A)酸素誘導網膜症(OIR)のマウスモデルの概略図。第1期(生後7~12日(P7~P12))、75%酸素下で、血管喪失を誘導する。第2期(室内気下)生後12日から17日(P7~P17)では、最大網膜前血管新生が可能となる。(B、EおよびH)は、P10(B)、P14(E)およびP17(H)でWT OIRおよび正常酸素圧対照マウスから集められた網膜中のCD11b+/F4-80+/Gr-1
-細胞(ミクログリア)の代表的FACSプロットを示す。(C、FおよびI)は、P10(C)、P14(F)およびP17(I)の正常酸素圧(N)およびOIRでの網膜ミクログリアの数の倍率変化を示す。網膜ミクログリアの数は、分析した全ての時点でOIR中で大きく増加した(C、FおよびI);n=7~8(正常酸素圧(N))、n=7~8(OIR)(条件当たり合計28~32個の網膜;各「n」は4個の網膜を含む)。(D、GおよびJ)は、P10(D)、P14(G)およびP17(J)のNRP1陽性MPの数の倍率変化を示す。OIR網膜でNRP1陽性ミクログリア数の比例的増加が観察された(D、GおよびJ);n=3~5(正常酸素圧(N))、n=3~5(OIR)(条件当たり合計12~20個の網膜;各「n」は4個の網膜から構成される)。(K)MP常在性NRP1の役割を調べるために、網膜ミクログリア中の大きく損なわれたNRP1を発現しているLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスを生成した;n=3(WT)、n=4(LysM-Cre/Nrp1
fl/fl、条件当たり合計12~16個の網膜)。左パネルは、FACS(右パネル)により測定した、WT中のNPR-1陽性MP(LysM-Cre/NRP1
+/+)およびそれらの骨髄細胞中のNRP1欠損マウス(LysM-Cre/Nrp1
fl/fl)の%を示す。(L、NおよびP)は、正常酸素圧およびOIRでのLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス網膜中のMPの数を定量化するための、P10(L)、P14(N)およびP17(P)のFACS分析である。(M、OおよびQ)は、正常酸素圧およびOIRでのLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス網膜中のMPの数の倍率変化を示す。OIR(L、N)の増殖期中のP10およびP14のFACS分析により、LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスは、これらの時点(M、O)でOIR中でCD11b+/F4-80+/Gr-1
-細胞数の増加を示さなかったので、MP常在性NRP1は、虚血性網膜中へのMP浸潤のためには不可欠であることが明らかである。P17で、MPはNRP1と関係なく浸潤する(P、Q)。n=7~8(N)、n=7~9(OIR)(条件当たり合計28~36個の網膜;各「n」は4個の網膜を含む)。(R)WTおよびLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスにおけるOIR期間の網膜中のMP蓄積のまとめのグラフである。(S、T)Gr1
-/CD11b
+/F4/80
+細胞が高レベルのCX3CR1および中/低レベルのCD45を発現することを示す代表的FACSプロットである。WT網膜(S)中でCX3CR1highおよびCD45low細胞は、NRP1を発現し、LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス(T)由来の網膜中ではNRP1を発現しない。データは、対照と比較した倍率変化±SEMとして表される。*P<0.05、**P<0.001、***P>0.0001。
【
図1-3】R-T。NRP1が血管傷害に続いて動員されるミクログリア集団を特定することを示す図である。(A)酸素誘導網膜症(OIR)のマウスモデルの概略図。第1期(生後7~12日(P7~P12))、75%酸素下で、血管喪失を誘導する。第2期(室内気下)生後12日から17日(P7~P17)では、最大網膜前血管新生が可能となる。(B、EおよびH)は、P10(B)、P14(E)およびP17(H)でWT OIRおよび正常酸素圧対照マウスから集められた網膜中のCD11b+/F4-80+/Gr-1
-細胞(ミクログリア)の代表的FACSプロットを示す。(C、FおよびI)は、P10(C)、P14(F)およびP17(I)の正常酸素圧(N)およびOIRでの網膜ミクログリアの数の倍率変化を示す。網膜ミクログリアの数は、分析した全ての時点でOIR中で大きく増加した(C、FおよびI);n=7~8(正常酸素圧(N))、n=7~8(OIR)(条件当たり合計28~32個の網膜;各「n」は4個の網膜を含む)。(D、GおよびJ)は、P10(D)、P14(G)およびP17(J)のNRP1陽性MPの数の倍率変化を示す。OIR網膜でNRP1陽性ミクログリア数の比例的増加が観察された(D、GおよびJ);n=3~5(正常酸素圧(N))、n=3~5(OIR)(条件当たり合計12~20個の網膜;各「n」は4個の網膜から構成される)。(K)MP常在性NRP1の役割を調べるために、網膜ミクログリア中の大きく損なわれたNRP1を発現しているLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスを生成した;n=3(WT)、n=4(LysM-Cre/Nrp1
fl/fl、条件当たり合計12~16個の網膜)。左パネルは、FACS(右パネル)により測定した、WT中のNPR-1陽性MP(LysM-Cre/NRP1
+/+)およびそれらの骨髄細胞中のNRP1欠損マウス(LysM-Cre/Nrp1
fl/fl)の%を示す。(L、NおよびP)は、正常酸素圧およびOIRでのLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス網膜中のMPの数を定量化するための、P10(L)、P14(N)およびP17(P)のFACS分析である。(M、OおよびQ)は、正常酸素圧およびOIRでのLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス網膜中のMPの数の倍率変化を示す。OIR(L、N)の増殖期中のP10およびP14のFACS分析により、LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスは、これらの時点(M、O)でOIR中でCD11b+/F4-80+/Gr-1
-細胞数の増加を示さなかったので、MP常在性NRP1は、虚血性網膜中へのMP浸潤のためには不可欠であることが明らかである。P17で、MPはNRP1と関係なく浸潤する(P、Q)。n=7~8(N)、n=7~9(OIR)(条件当たり合計28~36個の網膜;各「n」は4個の網膜を含む)。(R)WTおよびLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスにおけるOIR期間の網膜中のMP蓄積のまとめのグラフである。(S、T)Gr1
-/CD11b
+/F4/80
+細胞が高レベルのCX3CR1および中/低レベルのCD45を発現することを示す代表的FACSプロットである。WT網膜(S)中でCX3CR1highおよびCD45low細胞は、NRP1を発現し、LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス(T)由来の網膜中ではNRP1を発現しない。データは、対照と比較した倍率変化±SEMとして表される。*P<0.05、**P<0.001、***P>0.0001。
【
図2-1】A-F。NRP1
+骨髄細胞が網膜中で病理学的血管新生部位に局在化することを示す画像である。P14の新生血管出芽タフトを有するWT(A)およびLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス(G)中の、ならびにP17の成熟タフトを有するWT(D)およびLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス(J)中のイソレクチンB4(血管およびミクログリア染色)およびNRP1染色網膜のフラットマウントの共焦点画像である。高倍率画像は、WTマウス中の3次元再構成(C、D)により確認された、NRP1陽性ミクログリア(IBA1)と、発生期タフト(B)および成熟タフト(E)の両方との共局在を示す。(C、F、I、L)は、組織の3次元再構成を示す。(A、右パネル)の白色矢印は、新芽形成タフトを示す。(B、E)の白色矢印は、タフトと結合したNRP1
+MPを示す。LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスは、MPおよびタフト形成が少なかった(G~K)。全てのIHCに対し、3回の独立した実験の代表的画像を示している。スケールバー(A、D、G、J):100μM、(B、E、H、K):50μm。
【
図2-2】G-L。NRP1
+骨髄細胞が網膜中で病理学的血管新生部位に局在化することを示す画像である。P14の新生血管出芽タフトを有するWT(A)およびLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス(G)中の、ならびにP17の成熟タフトを有するWT(D)およびLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス(J)中のイソレクチンB4(血管およびミクログリア染色)およびNRP1染色網膜のフラットマウントの共焦点画像である。高倍率画像は、WTマウス中の3次元再構成(C、D)により確認された、NRP1陽性ミクログリア(IBA1)と、発生期タフト(B)および成熟タフト(E)の両方との共局在を示す。(C、F、I、L)は、組織の3次元再構成を示す。(A、右パネル)の白色矢印は、新芽形成タフトを示す。(B、E)の白色矢印は、タフトと結合したNRP1
+MPを示す。LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスは、MPおよびタフト形成が少なかった(G~K)。全てのIHCに対し、3回の独立した実験の代表的画像を示している。スケールバー(A、D、G、J):100μM、(B、E、H、K):50μm。
【
図3】NRP1リガンドのSEMA3Aは、増殖糖尿病網膜症を罹患している患者において誘導されることを示す図である。血管造影、眼底検査、スペクトル領域光干渉断層撮影(SD-OCT)および3次元(3D)網膜マップを、調査のために選択された患者から取得した。対照患者は、非血管病態とし、増殖糖尿病網膜症(PDR)の患者と比較した。対照ERM患者は、線維性組織(C)(白色矢印)に続発する脈管構造(矢印)上の牽引張力(A、B)、後部硝子体剥離(矢頭)および斑状隆起(血管造影および3Dマップ)などの糖尿病に関連しない網膜損傷の徴候を示す。PDR患者由来の網膜は、蛍光染料の漏出(挿入図)からも明らかな高度に透過性の微小血管(D)を含む血管新生(E)(挿入図)、毛細血管瘤(F)(挿入図矢印)および繊維状瘢痕組織(G)(矢印)を有し、進行した網膜症を示す。(H)PDR患者は、血管外漏出液の局所的合体による嚢胞形成(白色矢頭)を含む黄斑浮腫のいくつかの証拠を示す。(I)ELISAによる硝子体液分析は、PDR患者の5倍増加レベルのSEMA3Aタンパク質を示す。n=17(対照)および17(PDR患者)。(J)等体積の硝子体のウェスタンブロット分析は、対照に比較して、PDR患者でのSEMA3A(約125KDaおよび95KDa)の増加を裏付けている。
【
図4】OIR中に、NRP1のリガンドが網膜神経節細胞層中で誘導されることを示す図である。(A、B)正常酸素圧条件またはOIR中の、WTおよび骨髄NRP1欠損ノックアウトマウス(LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス)由来の網膜を、P10~P17に集め、RT-qPCRにより分析した(使用したオリゴヌクレオチドは実施例11、表2に開示の通りとした)。WTおよびLysM-Cre/Nrp1fl/fl網膜の両方で、SEMA3A mRNA(A)発現がOIR期間中誘導されたが、WT網膜(星印)に比べて、ノックアウトマウス(LysM-Cre/Nrp1
fl/fl)ではVEGF(B)の誘導が極めて少なかった。データは、各時点に対するそれぞれの正常酸素圧対照に比較した倍率変化±SEMとして表される;n=4~7;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。(C)OIR中で無血管性網膜ゾーンを選択するように注意して、P14マウスに対しレーザー・キャプチャー・マイクロダイセクション(LCM)を行った。(D、E)対照およびOIR無血管ゾーン中の網膜層のLCMに対するRT-qPCRは、正常酸素圧網膜に比べて、OIR中網膜の神経節細胞層(GCL)中でSEMA3A(D)およびVEGF(E)mRNAの誘導を示した。VEGFはまた、OIR網膜の内顆粒層中でも誘導された(E)。データは、正常酸素圧に比較した倍率変化±SEMとしGCLて表される。
【
図5】NRP1
+MPが血管傷害後に網膜中で増殖しないことを示す図である。P13でBrdUを注射したWT OIR(右パネル)および正常酸素圧(左パネル)対照マウスからP14で集めた網膜(A)および脾臓(B)から得たCD11b+/F4-80+/Gr-1
-細胞の代表的FACSヒストグラムである。BrdU
+細胞の数は、脾臓中で極めて多かったが、OIRマウスと正常酸素圧マウスの間で大きく変化しなかった(C)。n=4(正常酸素圧、N)、n=4(OIR)(条件あたり合計16個の網膜、各「n」は4個の網膜からなる)。データは、BrdU+ Gr-1
-/CD11b+/F4-80+細胞±SEMのパーセンテージとして表される。
【
図6-1】A-B。SEMA3AおよびVEGFが、NRP1を介してマクロファージに対し化学誘引性であることを示す図である。(A、B)一次マクロファージをWTまたは骨髄NRP1欠損ノックアウトマウス(LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス)から単離し、下段チャンバーに添加した、ビークル、MCP-1(100ng/ml)、SEMA3A(100ng/ml)またはVEGF(50ng/ml)と共にトランスウェル遊走アッセイに供した。DAPI染色した遊走細胞の代表的画像を示す(A)。SEMA3AまたはVEGFは、陽性対照MCP-1と同程度マクロファージ遊走を促進した(B)。SEMA3AおよびVEGFがマクロファージ走化性を刺激していたことを確認するために、細胞を、走化性を消滅させる選択的ROCK阻害剤Y-27632(100μg/ml)で前処理した(B)。LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス由来のマクロファージは、SEMA3AまたはVEGFに無応答性であるが、MCP-1には応答する(C)。データは、対照(非処置細胞)に比較した倍率変化として表される;n=6~22;**p<0.01、***p<0.001。スケールバー:100μm(A)。
【
図6C】SEMA3AおよびVEGFが、NRP1を介してマクロファージに対し化学誘引性であることを示す図である。(A、B)一次マクロファージをWTまたは骨髄NRP1欠損ノックアウトマウス(LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス)から単離し、下段チャンバーに添加した、ビークル、MCP-1(100ng/ml)、SEMA3A(100ng/ml)またはVEGF(50ng/ml)と共にトランスウェル遊走アッセイに供した。DAPI染色した遊走細胞の代表的画像を示す(A)。SEMA3AまたはVEGFは、陽性対照MCP-1と同程度マクロファージ遊走を促進した(B)。SEMA3AおよびVEGFがマクロファージ走化性を刺激していたことを確認するために、細胞を、走化性を消滅させる選択的ROCK阻害剤Y-27632(100μg/ml)で前処理した(B)。LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス由来のマクロファージは、SEMA3AまたはVEGFに無応答性であるが、MCP-1には応答する(C)。データは、対照(非処置細胞)に比較した倍率変化として表される;n=6~22;**p<0.01、***p<0.001。スケールバー:100μm(A)。
【
図7】エクスビボで脈絡膜層外植片において、Nrp1
+マクロファージが毛細血管の増殖を促進することを示す図である。(A)LysM-Cre/Nrp1
+/+およびLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスから単離した脈絡膜層外植片の定量化および代表的画像である(n=6;p=0.018)。(B、C)クロドロン酸リポソーム処理(マクロファージを枯渇させるための)およびその後の外来性のマクロファージ(Ma)の添加後のLysM-Cre/Nrp1
+/+(B)およびLysM-Cre/Nrp1
fl/fl(C)マウス由来の脈絡膜層外植片の代表的画像である。(D、E)BおよびCに示されたLysM-Cre/Nrp1
+/+(D)およびLysM-Cre/Nrp1
fl/fl(E)由来の脈絡膜層毛細血管の新芽形成の定量化(n=6、n.s.:有意差なし、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
【
図8】骨髄常在性NRP1の欠損は、網膜症での血管変性および病理学的血管新生を減らすことを示す図である。野性型、LysM-Cre/Nrp1
+/+およびLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスをOIRに晒し、網膜をP12およびP17で集め、フラットマウントし、イソレクチンB4で染色した。対照WT(#1)または対照LysM-Cre/Nrp1
+/+マウス(#2)の両方に比較して、LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスは、P12では血管喪失が少なく(A、Bの#3)、また、P17では無血管領域(C、Dの#3)および網膜前の血管新生(E、Fの#3)が減少した。結果は、全網膜領域に対する無血管または新生血管領域のパーセンテージとして表している。n=5~19。スケールバー:BとD:1mmおよびF:500μm。**p<0.01、***p<0.001。
【
図9】硝子体内への可溶性NRP1の治療投与が、網膜症におけるMP浸潤および病理学的血管新生を減らすことを示す図である。OIR誘導NRP1リガンドを捕捉するために、WTマウスをOIRに晒し、P12で、可溶性組換えマウスNRP1(ドメインa1、a2、b1、b2およびcを含むrmNRP1、
図19Cおよび20Rも参照)をトラップとして硝子体内に注入した。P14でのFACS分析は、rmNRP1注入される網膜中の30%を超える網膜MP数の減少を示した(A)。データは、対照(ビークル注射網膜)と比較した倍率変化±SEMとして表される。n=3~4(条件あたり合計12~16個の網膜;各「n」は4個の網膜を含む)。P17で、ビークル注射眼に比べて、rmNRP1を使った処置により病理学的血管新生が効果的に減少した(B、C)。結果は、全網膜領域に対する新生血管領域のパーセンテージとして表している。n=11。スケールバー:500μm。*p<0.05、**P<0.01。
【
図10】糖尿病、などの虚血性網膜症の間の、網膜の無血管ゾーン、虚血性ニューロンおよび神経組織がNRP1のリガンド(SEMA3AおよびVEGF)を産生し、これが次に、血管新生促進ミクログリアに対する強力な化学誘引剤として機能すること示す本発明の知見の模式図である。NRP1
+ミクログリアはその後、増殖網膜症の発病に関与する。
【
図11】SEMA3Aは、敗血性ショック中にいくつかの器官で発現上昇していることを示す図である。LPS(15mg/kg)によりマウスに敗血症を誘導後、SEMA3A(左パネル)およびVEGF(右パネル)のmRNAレベルをqRT-PCRにより評価した。SEMA3AおよびVEGF mRNAレベルをβ-アクチン発現で正規化し、LPS投与後、0、6、12および24時間のmRNAレベルの倍率変化を測定した。A.マウス脳中のSEMA3A(左パネル)およびVEGF(右パネル)の倍率変化。B.マウス腎臓中のSEMA3A(左パネル)およびVEGF(右パネル)の倍率変化。C.マウス肺中のSEMA3A(左パネル)およびVEGF(右パネル)の倍率変化。D.マウス肝臓中のSEMA3A(左パネル)およびVEGF(右パネル)の倍率変化。
【
図12】LPS誘導敗血症後のサイトカイン発現を示す図である。LPS(15mg/kg)によりマウスに敗血症誘導後、TNF-αおよびIL-1βのmRNAレベルを、qRT-PCRにより評価した。mRNAレベルをβ-アクチン発現で正規化し、LPS投与後、0、6、12および24時間のmRNAレベルの倍率変化を測定した。A.マウス脳中のTNF-α(左パネル)およびIL-1β(右パネル)の倍率変化。B.マウス腎臓中のTNF-α(左パネル)およびIL-1β(右パネル)の倍率変化。C.マウス肺中のTNF-α(左パネル)およびIL-1β(右パネル)の倍率変化。D.マウス肝臓中のTNF-α(左パネル)およびIL-1β(右パネル)の倍率変化。
【
図13】SEMA3Aが骨髄細胞中でNRP1を介して炎症促進性サイトカインの分泌を誘導することを示す図である。野性型およびNRP1ノックアウト(LyzM/NRP1
fl/fl)骨髄細胞をSEMA3A(100ng/nml)またはビークルで処置し、IL-6(A)、TNF-α(B)およびIL-1β(C)タンパク質分泌を細胞数測定ビーズアレイ(CBA)により分析した。
【
図14】NRP1欠損骨髄は、敗血症中に炎症性サイトカインのインビボ産生を減らすことを示す図である。NRP1ノックアウトマウス(LyzM/NRP1
fl/fl)および対照野生型マウスにビークルまたはLPS(15mg/kg)を投与し、敗血症を誘導した。LPS注射の6時間後、脳および肝臓を採取し、mRNAを抽出した。TNF-α(A、C)およびIL-1β(B、D)発現をリアルタイムRT-PCRで分析し、レベルをβ-アクチン発現レベルで正規化した。
【
図15】NRP1活性のインビボ阻害が、敗血症誘導バリア機能破壊を防ぐことを示す図である。マウスに、i)ビークル、ii)LPS(15mg/kg)、またはiii)LPS(15mg/kg)およびNRP1トラップ(トラップ-1、
図19Cおよび20R(但し、FCドメイン不含)、NP_032763、4ug/0.2mg/kg、静注)を投与した。その後、Evan blue透過性アッセイ(EBP)を使って、脳(A)、腎臓(B)および肝臓(C)の血管透過性を評価した。
【
図16】NRP1活性のインビボ阻害が、敗血症から保護することを示す図である。(A)i)高用量のLSP(腹腔内、25mg/kg);またはii)NRP1トラップ(静注、0.2mg/kgのトラップ-1、
図19Cおよび20R(但し、FCドメイン不含)、NP_032763)続けて、高用量のLPS(腹腔内、25mg/kg)を投与した対照マウスの生存率。(B)高用量のLPS(腹腔内、25/mg/kg)を投与した、骨髄常在性NRP1ノックアウトマウス(LyzM/NRP1
fl/fl)と対照マウスとの間の生存率の比較。
【
図17】NRP1由来トラップまたはNRP1欠損骨髄の投与は、敗血性ショックにおける炎症性サイトカイン産生を低下させることを示す図である。野性型マウスに、i)ビークル(n=3)、ii)LPS(15mg/kg、n=3)またはiii)LPSおよびNRP1トラップ(トラップ-1、
図19Cおよび20R(但し、FCドメイン不含)、NP_032763)を投与した。NRP1欠損骨髄細胞を有するマウス(LyzM-Cre/Nrp
fl/fl)にLPS(15mg/kg、n=3)を投与した。LPS注射の6時間後、脳を集め、TNF-α(A)およびIL-6(B)の産生を測定した。
【
図18】NRP1由来トラップの投与が、虚血性脳卒中から保護することを示す図である。マウスを一時的な中大脳動脈閉塞(MCAO)にして、ビークルまたはNRP1トラップを投与し、梗塞(卒中)のサイズを、クレシルバイオレットで染色した冠状大脳切片上で測定した。未染色領域は、損傷領域に対応する。(A)ビークルで処置したMCAOマウスの冠状大脳切片。(B)NRP1トラップ-1(
図19Cおよび20R(但し、FCドメイン不含、NP_032763)参照)で処置したMCAOマウスの冠状大脳切片。(C)MCAO後にビークルまたはNRP1トラップで処置したマウスの平均梗塞サイズのグラフ。(D)MCAOの1時間後、ビークルまたはNRP1トラップで処置したマウスの神経学的障害(ニューロスコア)。(E)MCAOの24時間後、ビークルまたはNRP1トラップで処置したマウスの神経学的障害(ニューロスコア)。
【
図19-1】A-C。NRP1タンパク質および本発明のNRP1-トラップの実施形態の模式図である。(A)SEMA3A結合ドメイン(主にa1a2で、わずかにb1が関与)およびVEGF結合ドメイン(b1b2)を示すWT NRP1の図式表現。cドメインは、その他の共受容体とのNRP二量体化に寄与すると考えられているMEMドメインである。(B、D、E)ヒト由来NRP1(C)およびマウス由来NRP1トラップの模式図。
【
図19D】NRP1タンパク質および本発明のNRP1-トラップの実施形態の模式図である。(A)SEMA3A結合ドメイン(主にa1a2で、わずかにb1が関与)およびVEGF結合ドメイン(b1b2)を示すWT NRP1の図式表現。cドメインは、その他の共受容体とのNRP二量体化に寄与すると考えられているMEMドメインである。(B、D、E)ヒト由来NRP1(C)およびマウス由来NRP1トラップの模式図。
【
図19E-1】NRP1タンパク質および本発明のNRP1-トラップの実施形態の模式図である。(A)SEMA3A結合ドメイン(主にa1a2で、わずかにb1が関与)およびVEGF結合ドメイン(b1b2)を示すWT NRP1の図式表現。cドメインは、その他の共受容体とのNRP二量体化に寄与すると考えられているMEMドメインである。(B、D、E)ヒト由来NRP1(C)およびマウス由来NRP1トラップの模式図。
【
図19E-2】NRP1タンパク質および本発明のNRP1-トラップの実施形態の模式図である。(A)SEMA3A結合ドメイン(主にa1a2で、わずかにb1が関与)およびVEGF結合ドメイン(b1b2)を示すWT NRP1の図式表現。cドメインは、その他の共受容体とのNRP二量体化に寄与すると考えられているMEMドメインである。(B、D、E)ヒト由来NRP1(C)およびマウス由来NRP1トラップの模式図。
【
図20A-1】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(A)トラップ1/TrappeA-完全NRP1-FCアミノ酸(配列番号114)およびヌクレオチド(配列番号2)配列。
【
図20A-2】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(A)トラップ1/TrappeA-完全NRP1-FCアミノ酸(配列番号114)およびヌクレオチド(配列番号2)配列続き。
【
図20B】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(B)トラップ2-NRP1-FC-Δc-アミノ酸配列(配列番号115)。
【
図20C】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(C)トラップ2-NRP1-FC-Δc-ヌクレオチド配列(配列番号4)。
【
図20D】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(D)トラップ3-NRP1-FC-Δb2c-アミノ酸配列(配列番号116)。
【
図20E】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(E)トラップ3-NRP1-FC-Δb2c-核酸配列(配列番号6)。
【
図20F】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(F)トラップ4-NRP1-FC-Δb1b2c-アミノ酸配列(配列番号117)。
【
図20G】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(G)トラップ4-NRP1-FC-Δb1b2c-核酸配列(配列番号8)。
【
図20H-1】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(H)トラップ5/トラップI-NRP1-FCΔc-short-アミノ酸配列(配列番号118)およびヌクレオチド(配列番号10)配列。
【
図20H-2】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(H)トラップ5/トラップI-NRP1-FCΔc-short-アミノ酸配列(配列番号118)およびヌクレオチド(配列番号10)配列続き。
【
図20I-1】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(I)トラップ6/トラップD-NRP1-FCΔb2c-short-アミノ酸配列(配列番号119)およびヌクレオチド(配列番号12)配列。
【
図20I-2】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(I)トラップ6/トラップD-NRP1-FCΔb2c-short-アミノ酸配列(配列番号119)およびヌクレオチド(配列番号12)配列続き。
【
図20J】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(J)トラップ7/トラップC-NRP1-FCΔb1b2c-short-アミノ酸配列(配列番号120)およびヌクレオチド(配列番号14)配列。
【
図20K-1】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(K)トラップ8/トラップJ-完全NRP1-FC-VEGF low-アミノ酸配列(配列番号121)およびヌクレオチド(配列番号16)配列。
【
図20K-2】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(K)トラップ8/トラップJ-完全NRP1-FC-VEGF low-アミノ酸配列(配列番号121)およびヌクレオチド(配列番号16)配列続き。
【
図20L】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(L)トラップ9-NRP1-FC-Δc-VEGF low-アミノ酸配列(配列番号122)。
【
図20M】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(M)トラップ9-NRP1-FC-Δc-VEGF low-核酸配列(配列番号18)。
【
図20N】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(N)トラップ10-NRP1-FC-Δb2c-VEGF low-アミノ酸配列(配列番号123)。
【
図20O】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(O)トラップ10-NRP1-FC-Δb2c-VEGF low-核酸配列(配列番号20)。
【
図20P-1】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(P)トラップ11/トラップL-NRP1-FC-Δc-VEGF low-Short-アミノ酸(配列番号124)およびヌクレオチド(配列番号22)配列。
【
図20P-2】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(P)トラップ11/トラップL-NRP1-FC-Δc-VEGF low-Short-アミノ酸(配列番号124)およびヌクレオチド(配列番号22)配列続き。
【
図20Q-1】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(Q)トラップ12/トラップK-NRP1-FC-Δb2c-VEGF low-Short-アミノ酸(配列番号125)およびヌクレオチド(配列番号24)配列。
【
図20Q-2】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(Q)トラップ12/トラップK-NRP1-FC-Δb2c-VEGF low-Short-アミノ酸(配列番号125)およびヌクレオチド(配列番号24)配列続き。
【
図20R-1】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(R)マウストラップ1-完全Nrp1-mFCアミノ酸(配列番号126)およびヌクレオチド(配列番号26)配列。
【
図20R-2】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(R)マウストラップ1-完全Nrp1-mFCアミノ酸(配列番号126)およびヌクレオチド(配列番号26)配列続き。
【
図20S-1】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(S)マウストラップ2-Nrp1-mFCΔc-shortアミノ酸(配列番号127)およびヌクレオチド(配列番号28)配列。
【
図20S-2】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(S)マウストラップ2-Nrp1-mFCΔc-shortアミノ酸(配列番号127)およびヌクレオチド(配列番号28)配列続き。
【
図20T-1】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(T)マウストラップ3-Nrp1-FCΔb2c-shortアミノ酸(配列番号128)およびヌクレオチド(配列番号30)配列。
【
図20T-2】
図19BおよびCに示したNRP1トラップの核酸およびタンパク質配列を示す図である。(T)マウストラップ3-Nrp1-FCΔb2c-shortアミノ酸(配列番号128)およびヌクレオチド(配列番号30)配列続き。
【
図21】ヒトSEMA3A前駆体タンパク質配列(配列番号31)を示す図である。この配列は、成熟型にさらに処理される。残基1~20はシグナルペプチドに対応する。
【
図22】ヒト可溶性ニューロピリン-1(NRP1)受容タンパク質配列(例えば、ジェンバンク受入番号AAH07737.1-配列番号
65)を示す図である。ドメインa1、a2、b1、b2およびcが示されている。ドメインa1は、アミノ酸23~148からなる;ドメインa2は、アミノ酸149~270からなる;ドメインb1は、アミノ酸271~428からなる;ドメインb2は、アミノ酸429~590からなる;およびドメインcは、アミノ酸591~609からなる。
【
図23】酸素誘導された網膜症モデルにおいて、SEMA3Aトラップが血管再生を加速し、虚血性マウス網膜中の病理学的血管新生を減らすことを示す図である。(A)網膜症の4つの主な段階、すなわち、正常酸素圧、血管減少/血管喪失、増殖/血管新生および新生血管(NV)退縮を示す酸素誘導網膜症(OIR)のマウスモデルの模式図。(B)P17での、ヒスチジンタグを付けたトラップGまたはトラップM(トラップG-HIS(配列番号38)およびトラップM-HIS(配列番号42))の硝子体内注射後の無血管領域の平均パーセンテージ(%)(対ビークル)。各群の無血管領域を示す代表的網膜の写真を示す。(C)P17での、ヒスチジンタグを付けたトラップGおよびトラップMの硝子体内注射後の新生血管領域の平均パーセンテージ(%)(対ビークル)。各群の新生血管領域を示す代表的網膜の写真を示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。n=8~13匹/群。
【
図24】SEMA3Aトラップが、糖尿病性網膜の血管漏出および浮腫を防ぐことを示す図である。(A)ストレプトゾトシン(STZ)処置前(第0週目)およびSTZ処置後3週目(糖尿病性状態)のマウスの血糖値。(B)0.5ug/mlのトラップG、トラップMまたは80μg(1ul)の抗VEGF
164抗体(AF-493-NA、R&D)を、STZ投与後6および7週目に硝子体内に注射したマウス網膜の網膜Evans Blue透過性アッセイ(8週目に測定)。(C)0.5ug/mlのトラップG、トラップMまたは抗VEGF
164抗体(AF-493-NA、Novus Biologicals)を、STZ処置後12および13週目に硝子体内に注射したマウス網膜の網膜Evans Blue透過性アッセイ(14週目に測定)。*p<0.05、n=4、12匹の動物由来。
【
図25】加齢黄斑変性(AMD)のモデルで、NRP1由来トラップ(抗SEMA3AおよびVEGF)が、脈絡膜新生血管を減らすことを示す図である(A)マウスの眼に脈絡膜新生血管を誘導するために使用される方法の模式図である。(B)レーザー照射14日後の脈絡膜新生血管(灌流後の平均FITC/レクチン領域)。レーザー照射直後、マウスの眼の硝子体内にトラップGを注射した。
【
図26-1】NRP1コンセンサス配列(配列番号69)と一緒に、ラット(受入番号EDL96784、NP_659566)、ヒト(配列番号68、受入番号NM003873)およびマウス(配列番号67、受入番号NP_032763)間の配列アラインメントを示す図である。NRP1シグナルドメイン(アミノ酸1~21)、SEMA3a結合ドメインa1(アミノ酸22~148、配列番号78)、a2(アミノ酸149~175、配列番号79)、VEGF結合ドメインb1(アミノ酸276~428、配列番号80)およびb2(アミノ酸429~589、配列番号81)、ドメインc(アミノ酸590~859、配列番号82)、膜貫通ドメイン(アミノ酸860~883、配列番号77)および細胞質ドメイン(アミノ酸884~923)が確認される。
【
図26-2】
図26-1の続き。NRP1コンセンサス配列(配列番号69)と一緒に、ラット(受入番号EDL96784、NP_659566)、ヒト(配列番号68、受入番号NM003873)およびマウス(配列番号67、受入番号NP_032763)間の配列アラインメントを示す図である。NRP1シグナルドメイン(アミノ酸1~21)、SEMA3a結合ドメインa1(アミノ酸22~148、配列番号78)、a2(アミノ酸149~175、配列番号79)、VEGF結合ドメインb1(アミノ酸276~428、配列番号80)およびb2(アミノ酸429~589、配列番号81)、ドメインc(アミノ酸590~859、配列番号82)、膜貫通ドメイン(アミノ酸860~883、配列番号77)および細胞質ドメイン(アミノ酸884~923)が確認される。
【
図27A-1】
図19に示される(但し、いずれのヒスチジンまたはFCタグも含まない)本発明の代表的トラップ間のタンパク質配列の配列アラインメントを示す図である。(A)6Xヒスチジンタグ精製ドメインを含む本発明の代表的トラップ(G(配列番号100)、R(配列番号101)、Z(配列番号102)、AB(配列番号103)、AC(配列番号104)、O(配列番号105)、Q(配列番号106)、M(配列番号107)、P(配列番号108)、N(配列番号109)、W(配列番号110)、X(配列番号111)およびY(配列番号112))間のタンパク質配列(但し、6Xヒスチジンタグ精製ドメインを欠く)の配列アラインメント。
【
図27A-2】
図27A-1の続き。
図19に示される(但し、いずれのヒスチジンまたはFCタグも含まない)本発明の代表的トラップ間のタンパク質配列の配列アラインメントを示す図である。(A)6Xヒスチジンタグ精製ドメインを含む本発明の代表的トラップ(G(配列番号100)、R(配列番号101)、Z(配列番号102)、AB(配列番号103)、AC(配列番号104)、O(配列番号105)、Q(配列番号106)、M(配列番号107)、P(配列番号108)、N(配列番号109)、W(配列番号110)、X(配列番号111)およびY(配列番号112))間のタンパク質配列(但し、6Xヒスチジンタグ精製ドメインを欠く)の配列アラインメント。
【
図27A-3】
図27A-2の続き。
図19に示される(但し、いずれのヒスチジンまたはFCタグも含まない)本発明の代表的トラップ間のタンパク質配列の配列アラインメントを示す図である。(A)6Xヒスチジンタグ精製ドメインを含む本発明の代表的トラップ(G(配列番号100)、R(配列番号101)、Z(配列番号102)、AB(配列番号103)、AC(配列番号104)、O(配列番号105)、Q(配列番号106)、M(配列番号107)、P(配列番号108)、N(配列番号109)、W(配列番号110)、X(配列番号111)およびY(配列番号112))間のタンパク質配列(但し、6Xヒスチジンタグ精製ドメインを欠く)の配列アラインメント。
【
図27A-4】
図27A-3の続き。
図19に示される(但し、いずれのヒスチジンまたはFCタグも含まない)本発明の代表的トラップ間のタンパク質配列の配列アラインメントを示す図である。(A)6Xヒスチジンタグ精製ドメインを含む本発明の代表的トラップ(G(配列番号100)、R(配列番号101)、Z(配列番号102)、AB(配列番号103)、AC(配列番号104)、O(配列番号105)、Q(配列番号106)、M(配列番号107)、P(配列番号108)、N(配列番号109)、W(配列番号110)、X(配列番号111)およびY(配列番号112))間のタンパク質配列(但し、6Xヒスチジンタグ精製ドメインを欠く)の配列アラインメント。
【
図27B-1】
図19に示される(但し、いずれのヒスチジンまたはFCタグも含まない)本発明の代表的トラップ間のタンパク質配列の配列アラインメントを示す図である。(B)本発明の代表的トラップ((A(配列番号100)、I(配列番号105)、D(配列番号107)、C(配列番号109)、J(配列番号101)、L(配列番号106)、K(配列番号108)、S(配列番号113)、U(配列番号111)、V(配列番号112))間のタンパク質配列(但し、FCドメインを欠く)の配列アラインメント。
【
図27B-2】
図27B-1の続き。
図19に示される(但し、いずれのヒスチジンまたはFCタグも含まない)本発明の代表的トラップ間のタンパク質配列の配列アラインメントを示す図である。(B)本発明の代表的トラップ((A(配列番号100)、I(配列番号105)、D(配列番号107)、C(配列番号109)、J(配列番号101)、L(配列番号106)、K(配列番号108)、S(配列番号113)、U(配列番号111)、V(配列番号112))間のタンパク質配列(但し、FCドメインを欠く)の配列アラインメント。
【
図27B-3】
図27B-2の続き。
図19に示される(但し、いずれのヒスチジンまたはFCタグも含まない)本発明の代表的トラップ間のタンパク質配列の配列アラインメントを示す図である。(B)本発明の代表的トラップ((A(配列番号100)、I(配列番号105)、D(配列番号107)、C(配列番号109)、J(配列番号101)、L(配列番号106)、K(配列番号108)、S(配列番号113)、U(配列番号111)、V(配列番号112))間のタンパク質配列(但し、FCドメインを欠く)の配列アラインメント。
【
図27B-4】
図27B-3の続き。
図19に示される(但し、いずれのヒスチジンまたはFCタグも含まない)本発明の代表的トラップ間のタンパク質配列の配列アラインメントを示す図である。(B)本発明の代表的トラップ((A(配列番号100)、I(配列番号105)、D(配列番号107)、C(配列番号109)、J(配列番号101)、L(配列番号106)、K(配列番号108)、S(配列番号113)、U(配列番号111)、V(配列番号112))間のタンパク質配列(但し、FCドメインを欠く)の配列アラインメント。
【発明を実施するための形態】
【0111】
本発明者らは、中枢神経、血管と免疫細胞との間に保存されるSEMA3Aなどの局所的走化作用キューに応答する単核貪食細胞(MP)のサブセットを特定した。NRP1発現MPは、傷害部位に入り、種々の形態の炎症、増殖網膜症(例えば、増殖糖尿病網膜症、未熟児網膜症および加齢黄斑変性)、敗血性ショックおよび脳虚血/脳卒中を含む炎症状態のモデルの(i)組織損傷および/または(ii)自然免疫応答の病理学的活性化に寄与することが明らかになった。
【0112】
発明者らは、ストレスを受けた網膜ニューロンおよび神経組織が、特殊な走化性物質を介して、局所的自然免疫応答を調節する固有の能力を有することを示した。ミクログリア上のNRP1は、SEMA3AおよびVEGFに対する強力な化学誘引性受容体であることが明らかになり、自然免疫細胞におけるNRP1シグナル伝達の阻害(例えば、NRP1由来トラップまたはNRP1もしくはSEMA3A抗体を使った)により、MP誘導炎症および組織損傷からの保護がもたらされる。
【0113】
後期の増殖糖尿病網膜症(PDR)に罹患している患者は、直感に反して、ニューロピリン-1(NRP1)陽性MPに対する強力な誘引剤として作用する、高レベルのSEMA3Aを産生することが示された。これらの血管新生促進MPは、局所的に産生されたSEMA3AならびにVEGFおよびTGF-βに応答して、病理学的血管新生部位に選択的に動員される。さらに、SEMA3Aは、敗血性ショック中にいくつかの器官で発現上昇し、MPによる炎症性サイトカインの分泌を誘導することが示された。NRP1の阻害はまた、敗血症における炎症促進性のサイトカインの産生を減らした。
【0114】
最終的に、NRP1陽性MPは、炎症性疾患の進行に重要な役割を果たすことが明らかになった。NRP1骨髄依存性活性の阻害/抑止は、新生血管網膜症(血管変性および病理学的血管新生)、敗血性ショックおよび脳虚血/脳卒中に続発する神経損傷から保護することが示された。
【0115】
合わせて、これらの知見は、NRP1陽性MPおよびそれらのリガンドの炎症(および特に、神経炎症)における役割を強調し、自然免疫応答の過剰活性化(例えば、ミクログリア/マクロファージの動員によるおよび/または炎症促進性のサイトカインの産生および/または分泌の誘導による傷害部位の組織損傷、および/または血管漏出/浮腫)を制限するNRP1細胞内シグナル伝達の阻害の治療効果を示す。本知見により、持続型(例えば、慢性、持続性)炎症またはMP動員および炎症促進性のサイトカイン産生および分泌を伴う過剰/病理学的炎症を特徴とする疾患および状態、例えば、敗血性ショック、関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、皮膚炎症、糖尿病、ぶどう膜炎、糖尿病性網膜症などの神経炎症状態、加齢黄斑変性(AMD)、未熟児網膜症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、加齢性認知機能低下/アルツハイマー病および脳卒中、などの予防および処置に適用されるようになる。
【0116】
NRP1媒介細胞活性の阻害
本発明者らは、NRP1依存性細胞内シグナル伝達(および特に、SEMA3A媒介細胞内シグナル伝達)の阻害により、自然免疫応答の過剰活性化を伴うものなどの炎症性疾患および状態から保護(予防または処置)することが可能であることを見出した。特に、NRP1媒介細胞内シグナル伝達の阻害は、単核貪食細胞(MP、例えば、ミクログリア、マクロファージ)の望ましくない(病理学的)動員および組織損傷(例えば、増加した血管変性、病的な血管新生、細胞死または細胞損傷)、炎症および浮腫の一因となる炎症促進性サイトカインの産生/分泌を減らす。
【0117】
したがって、一態様では、本発明は、炎症を処置または予防する方法に関し、該方法は、NRP1依存性細胞内シグナル伝達を阻害することを含む。特定の態様では、炎症は神経炎症である。
【0118】
本明細書で使用される場合、「炎症」という用語は、i)炎症または傷害部位でNRP1受容体を発現している単核貪食細胞(例えば、ミクログリアまたはマクロファージ)の動員;および/またはii)炎症促進性サイトカイン(例えば、IL-1β、TNF-α、IL-6)のNRP1依存性産生/分泌を含む自然免疫応答の活性化を伴う疾患または状態を意味する。急性炎症の古典的な兆候は、疼痛、発熱、発赤、腫脹、および機能消失である。炎症は急性と慢性に分類できる。急性炎症は、有害な刺激に対する身体の初期反応であり、血液から傷ついた組織への血漿および白血球(特に顆粒球)の移動の増加により達成される。続発する生化学的イベントが伝播し、炎症反応を成熟させて、損傷組織内の局所的血管系、免疫系、および種々の細胞を巻き込む。慢性炎症として知られる長期の(持続する)炎症は、炎症部位に存在する細胞型の徐々に進行する変化に繋がり、炎症プロセスによる組織の同時進行性の破壊と治癒を特徴とする。本発明の方法に従って処置または予防し得る炎症状態の非限定的例には、敗血性ショック、関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、皮膚炎症、糖尿病、ぶどう膜炎および糖尿病性網膜症(増殖糖尿病網膜症(PDR)を含む)などの神経炎症状態、加齢黄斑変性(AMD)、未熟児網膜症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、加齢性認知機能低下/アルツハイマー病および脳卒中が挙げられる。
【0119】
特定の実施形態では、炎症性疾患または状態は、網膜症ではない。別の実施形態では、炎症性疾患または状態は、糖尿病性網膜症ではない。別の実施形態では、炎症性疾患または状態は、黄斑浮腫ではない。別の実施形態では、炎症性疾患または状態は、糖尿病性黄斑浮腫ではない。
【0120】
関連態様では、本発明は、自然免疫応答の過剰活性化(または病理学的活性化)を抑制する方法に関し、該方法は、NRP1依存性細胞内シグナル伝達を阻害することを含む。このような自然免疫応答の過剰活性化は通常、免疫系のいずれか特定の細胞集団の組織恒常性を維持するのに必要なレベルを超える、急性または慢性活性化(自然および獲得免疫系の、例えば、器官/組織での単核細胞動員)に関連している。これは、多くの場合、高まったサイトカイン(例えば、TNF-α、IL-6)産生、増加した血管透過性を伴い、組織機能が損なわれることもある。
【0121】
別の態様では、本発明は、血管変性を処置または予防する方法に関し、該方法は、NRP1依存性細胞内シグナル伝達を阻害することを含む。
【0122】
さらなる態様では、本発明は、病理学的血管新生を処置または予防する方法に関し、該方法は、NRP1依存性細胞内シグナル伝達を阻害することを含む。
【0123】
別の態様では、本発明は、敗血性ショックを処置または予防する方法に関し、該方法は、NRP1依存性細胞内シグナル伝達を阻害することを含む。
【0124】
さらに別の態様では、本発明は、脳虚血/脳卒中に続発する神経損傷を処置または予防する方法に関し、該方法は、NRP1依存性細胞内シグナル伝達を阻害することを含む。
【0125】
NRP1媒介細胞内シグナル伝達(例えば、MP動員および炎症促進性サイトカインの産生/分泌)は、NRP1のそのリガンド(例えば、SEMA3A、VEGFおよび/またはTGF-β)への結合に依存するので、NRP1媒介細胞内シグナル伝達の阻害は、少なくとも2種の方法:i)NRP1の発現または活性を直接的に標的にすることにより(NRP1抗体、NRP1由来トラップなどの使用により);またはii)1つまたは複数のそのリガンド(例えば、SEMA3A、VEGFおよび/またはTGF-β)の発現または活性を標的にすることにより、達成することができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、上記方法は、SEMA3A媒介細胞内シグナル伝達を優先的にまたは特異的に阻害することを含む。「優先的に阻害すること」は、SEMA3A媒介細胞内シグナル伝達の阻害のレベルが、その他のNRP1リガンド(例えば、VEGF165およびTGF-β)の阻害のレベルより大きいことを意味する。特定の態様では、本発明の方法は、NRP1との相互作用により起こるVEGF(例えば、VEGF165)および/またはTGF-β媒介細胞内シグナル伝達を減らすまたは阻害することは実質的に行わない。いくつかの実施形態では、本発明の化合物(例えば、NRP1トラップ)は、ある1つのリガンドに対し、その他のリガンドよりも「優先的に結合する」(例えば、VEGFよりもSEMA3Aに優先的に結合する)。このような優先的相互作用は、各リガンドに対する解離定数(Kd)を決定することにより求め得る。いくつかの実施形態では、ある1つのリガンド(例えば、SEMA3A)に対する相互作用が、他のリガンド(例えば、VEGF)よりも、少なくとも、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、28、20、22、25、30、35、40、45、50、60、75、80、100、200、300、400、500、1000倍以上大きい。いくつかの実施形態では、ある1つのリガンドに対するkD(例えば、nM単位で)が、その他のリガンド(例えば、VEGF)の1つまたは複数に対するkDよりも、少なくとも、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、28、20、22、25、30、35、40、45、50、60、75、80、100、200、300、400、500、1000倍小さい。
【0127】
一実施形態では、本発明の方法は、炎症に苦しむ可能性のある(例えば、炎症性疾患または状態に罹患する可能性のある)対象に対する投与を含む。他の実施形態では、本発明の方法は、炎症と診断された(例えば、炎症性疾患または状態に罹患する可能性のある)対象に対する投与を含む。一実施形態では、対象は、哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0128】
NRP1トラップ
NRP1媒介細胞内シグナル伝達の阻害は、本発明のNRP1トラップを使って達成することができる。本明細書で使用される場合、「NRP1トラップ」または「NRP1ポリペプチドトラップ」という用語は、天然の可溶性NRP1ポリペプチド(例えば、NRP1分泌アイソフォームb(
図22、配列番号65))、および合成(例えば、組換えにより産生)NRP1ポリペプチドトラップを包含し、これらには、内在性NRP1とリガンド結合に関し競合する任意のNRP1の機能性可溶断片(例えば、NRP1アイソフォーム1または2)または任意のNRP1の機能性変異体が含まれる。一実施形態では、本発明のNRP1トラップは、自然界に存在しない(すなわち、天然ではない)が、天然NRP1ポリペプチドから「誘導」される(すなわち、それらは合成であり、例えば、NRP1アイソフォーム1またはその断片もしくは変異体の細胞外ドメインを含む)。本発明のNRP1トラップは、最初は、そのN末端にシグナルペプチドを含み(例えば、
図26に示すNRP1(例えば、配列番号69)のアミノ酸1~21(配列番号70))、これは細胞による分泌時に切断される。したがって、本発明のNRP1ポリペプチドトラップは、精製ポリペプチドとして投与される場合、または精製されたまたは実質的に純粋な形態を含む医薬組成物として調製される場合、アミノ酸1~21を欠いている。本発明のNRP1トラップをコードする核酸(例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、34、32、34、36、39、41、43、45、47、など。表1も参照されたい)は、NRP1トラップが細胞により合成され、分泌されるのを可能とするシグナルペプチド(N末端の最初の21アミノ酸をコードする最初の63ヌクレオチド)をコードするポリヌクレオチド配列を5’に含む。特定の実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号65(
図22)または配列番号69(
図26)で示されるNRP1ポリペプチドの最初の20アミノ酸に対応する。本発明のNRP1トラップは、対応する「野性型」NRP1ポリペプチドまたはその断片(例えば、集団中で天然に見つかる多形変異体)の機能性変異体を包含する。
【0129】
本発明のNRP1トラップは、さらなるポリペプチドドメイン(例えば、精製ドメイン)を含んでも、または含まなくてもよい。精製ドメインを欠く、およびNRP1由来配列のみを含む代表的トラップを
図27に示す。本発明により使用してよいNRP1トラップの非限定的例は、
図19B~
E、
図20、
図27に、および下表1に挙げられている。
【表1】
【0130】
NRP1がそのリガンドのシグナル伝達および細胞応答に与える影響を個別に調節することを考えれば、1つの特定のリガンドのNRP1への結合を特異的に阻害するが、他のリガンドへの結合を阻害しないことは有利であろう。例えば、本明細書で示すように、SEMA3Aレベルが上昇している網膜症の初期の時点で、VEGFレベルを低いままにして、非糖尿病性対照に比べて相対的に不変のままにする。また、敗血性ショックでは、SEMA3Aは、長期効果を有し、敗血症誘導後、24時間を超えて発現上昇のままとどまった唯一のNRP1リガンドであった。したがって、それぞれのリガンドに対する発現動力学の差異および1つのリガンド(例えば、VEGF)の中和が特定の状態下では効果的でない(または望ましくない副作用と関連する)可能性があるという事実を考慮すると、NRP1に対する1つのリガンド(例えば、SEMA3A)結合の特異的阻害(しかし、他のリガンド(単一または複数)(例えば、VEGF)の結合は阻害しない)は好都合である。したがって、本発明の方法の特定の態様では、SEMA3A媒介細胞内シグナル伝達の阻害は、VEGFより大きなSEMA3に対する親和性を有する、またはVEGF(例えば、VEGF165)が結合しないもしくは実質的に結合しないNRP1トラップを提供することにより達成される。
【0131】
したがって、一実施形態では、本発明の可溶性NRP1ポリペプチドまたはその機能性断片もしくは変異体(NRP1トラップ)は、全てのNRP1の天然リガンド(例えば、SEMA3A、VEGFおよびTGF-β、例えば、細胞外ドメイン(例えば、配列番号66または69のアミノ酸22~856または22~959)を含む可溶性NRP1トラップ、トラップ1(配列番号1)またはトラップG(配列番号38)-また、
図19および27ならびに表1も参照されたい)に結合する。一実施形態では、本発明のNRP1由来トラップは、SEMA3AおよびVEGFの両方に結合することにより、SEMA3およびVEGFシグナル伝達を阻害する。
【0132】
別の実施形態では、本発明のNRP1トラップは、SEMA3Aに結合するがVEGFには結合しないポリペプチドである。例えば、NRP1トラップは、SEMA3Aに結合するa1(例えば、配列番号71)および/またはa2サブドメイン(単一または複数)(例えば、配列番号72)を含んでよいが、VEGFへの結合に必要なb1(例えば、配列番号73)および/またはb2(例えば、配列番号74)サブドメイン(単一または複数)を含んではいけない(例えば、トラップM(配列番号42)、トラップN(配列番号44)、トラップ12/トラップK(配列番号23)、トラップ4(配列番号7)、トラップ7/C(配列番号13)、
図19および27ならびに表1も参照されたい)。一実施形態では、NRP1由来トラップは、
図26(例えば、配列番号66のアミノ酸22~275または配列番号69のアミノ酸22~275)に示すNRP1アミノ酸配列のアミノ酸22~275に対応するドメインa1およびa2を含む。NRP1トラップはまた、変異(例えば、欠失または置換)を含んでよく、これは、VEGFのNRP1への結合を顕著に抑止または低減するが、SEMA3AのNRP1への結合は抑止または低減しない(例えば、トラップ8/トラップJ(配列番号15)、トラップ9(配列番号17)、トラップ10(配列番号19)、トラップ11/L(配列番号21)、トラップ12/K(配列番号23)、トラップU(配列番号34)、トラップR(配列番号46)、トラップQ(配列番号48)、トラップP(配列番号50、トラップX(配列番号54、トラップAC(配列番号60)、トラップZ(配列番号62)、
図19および27ならびに表1も参照されたい)。このような変異の非制限的一例は、NRP1のb1ドメインのチロシン297の置換である(例えば、Y297A、
図19B~D、
図27および表1、例えば、トラップ8、9、10、11、12、V、R、Q、PおよびX)。このような変異のその他の例には、NRP1の位置319のグルタミン酸の置換および位置320のアスパラギン酸の置換(例えば、トラップACおよびZ(配列番号60、62)の場合などのE319KおよびD320K)が含まれる。
【0133】
別の実施形態では、NRP1トラップは、可溶性NRP1ポリペプチドまたはその機能性断片もしくは変異体であり、これはVEGFに結合するがSEMA3Aには結合しない。例えば、NRP1トラップは、VEGFに結合するb1(例えば、配列番号73)および/またはb2(例えば、配列番号74)ドメイン(単一または複数)を含んでよいが、SEMA3Aに結合するa1(例えば、配列番号71)および/またはa2(例えば、配列番号72)サブドメイン(単一または複数)を含んではいけない。一実施形態では、NRP1トラップは、
図26(例えば、配列番号66のアミノ酸276~589または配列番号69のアミノ酸276~289)に示すNRP1アミノ酸配列のアミノ酸276~589に対応するドメインb1b2を含む。別の実施形態では、NRP1トラップは変異を含んでよく、これは、SEMA3A結合を低減または抑止するが、VEGF結合は低減または抑止しない。このような変異の非限定的一例は、NRP1のセリン346および/またはグルタミン酸348の置換である(例えば、トラップAB(配列番号58)の場合などのS346AおよびE348K変異-
図19および
図27も参照されたい)。
【0134】
一実施形態では、可溶性NRP1ポリペプチドまたはその機能性断片は、
図19B~
E、20、27および表1に示されているトラップを含むまたはそれからなる。
【0135】
好ましい実施態様では、本発明のNRP1トラップは、例えば、NRP1アイソフォーム1で認められる、膜貫通ドメイン(例えば、
図26(配列番号66および69など)に示されるNRP1ポリペプチド配列のアミノ酸残基860~883に対応するドメイン)および細胞質ドメイン(例えば、
図26(配列番号66および69など)に示されるNRP1ポリペプチドアイソフォーム1配列のアミノ酸残基884~923に対応するドメイン)を欠いている。いくつかの実施形態では、本発明のNRP1トラップは、NRP1のドメインcを完全にまたは部分的に欠いている。NRP1アイソフォーム1は、より大きなcドメインを含む(
図26参照)が、アイソフォーム2は、より短い(例えば、
図22に示すアミノ酸配列VLATEKPTVIDSTIQSGIK(配列番号99))。特に、ドメインcは、SEMA3AおよびVEGF結合に不可欠ではなく、したがって、NRP1依存性細胞内シグナル伝達(またはSEMA3A媒介細胞内シグナル伝達)を阻害するために使用されるNRP1トラップから除外してよい。一実施形態では、NRP1トラップは、
図26(例えば、配列番号66または配列番号69のアミノ酸590~859)に示すNRP1アミノ酸配列のアミノ酸590~859に対応するドメインcを欠いている。一実施形態では、本発明のNRP1トラップは、
図22(例えば、配列番号99)に示すアイソフォーム2のcドメインを完全にまたは部分的に欠いている。一実施形態では、本発明のNRP1トラップは、NRP1アイソフォーム2のドメインcを含む。別の実施形態では、NRP1由来トラップは、配列番号75で示されるアミノ酸に対応するドメインcの一部を欠いている。
【0136】
本発明の可溶性NRP1ポリペプチドまたはその機能性断片もしくは変異体は、1つまたは複数の追加のポリペプチドドメイン(単一または複数)を含めて、インビボ安定性を高めてもおよび/または精製を容易にしてもよい。例えば、本発明のNRP1トラップは、FCドメイン(または配列番号37で示されるヒトFCドメインなどのその一部)または精製タグ(例えば、6Xヒスチジンタグ)を含めてもよい。このような追加のポリペプチドドメイン(単一または複数)は、可溶性NRP1ポリペプチドまたはその機能性断片に直接的にまたは間接的に(リンカーを介して)結合し得る。
【0137】
本発明の可溶性NPR1ポリペプチドまたはその機能性断片は、1つまたは複数のポリペプチドリンカーを任意に含んでもよい。このようなリンカーを使って、1つまたは複数の追加のポリペプチドドメイン(単一または複数)を本発明の可溶性ポリペプチドに結合してもよい(例えば、ポリペプチドのインビボ安定性を高めるポリペプチドドメインおよび/またはポリペプチドの精製を容易にするドメイン)。リンカー配列は、1つまたは複数のポリペプチド断片またはドメインを取り外すために(例えば、可溶性NRP1ポリペプチドまたはその機能性断片のインビボ投与の前に精製タグを取り外すために)使用可能なペプチダーゼまたはプロテアーゼ切断部位を任意に含んでもよい。ポリペプチド切断および例えば、ポリペプチドドメイン(単一または複数)(例えば、6Xヒスチジンタグ精製ドメイン)の取り外しを可能とするリンカーまたはドメインの非限定的一例には、TEVプロテアーゼ切断部位(例えば、GSKENLYFQ’G、配列番号76)を含むポリペプチドが挙げられる。当業者には、多くのその他のTEV切断部位が知られており、また、多くのその他のプロテアーゼ/ペプチダーゼ切断部位が知られており、それらを本発明のポリペプチド中に導入して、1つまたは複数のポリペプチドドメインまたは断片を任意に取り外してもよい。
【0138】
また、ポリペプチドリンカーを使って、野性型のNRP1ポリペプチドに通常認められるが、本発明の可溶性NRP1ポリペプチドまたはその機能性断片には存在しないドメインを全体的にまたは部分的に置き換えてもよい。例えば、本発明のNRP1トラップ中で、合成リンカーがドメインa1、a2、b1、b2およびcに全体的にまたは部分的に置き換わってもよい。リンカーの長さは、取り除かれたドメインの全長またはその一部に対応してよい。このようなリンカーは、タンパク質折り畳み、安定性またはNRP1リガンドへの結合を増強し得る。リンカーを含むNRP1トラップの非限定的例は、
図19および20(例えば、表1にリストされているトラップ2、トラップ3、トラップ4、トラップ9およびトラップ10)に示されている。有用なポリペプチドリンカーの非限定的一例は、ポリアルギニンポリペプチドである。その他のリンカーが当技術分野において既知であり、本発明で使用し得る。
【0139】
一実施形態では、本発明のNRP1トラップは、(i)
図26(配列番号69)に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸1~856(好ましくは22~856);(ii)
図26(配列番号69)に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸1~583(好ましくは22~583);(iii)
図26(配列番号69)に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸1~424(好ましくは22~424);(iv)
図26(配列番号69)に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸1~265(好ましくは22~265);(v)
図26(配列番号69)に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸1~430および584~856(好ましくは22~430および584~856);(vi)
図26(配列番号69)に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸1~274および584~856(好ましくは22~274および584~856);(vii)
図26(配列番号69)に示すNRP1ポリペプチドのアミノ酸1~430および584(好ましくは22~430および584~856)を含む。特定の実施形態では、上述のトラップは、1つまたは複数の変異を含み、上述のように、VEGFまたはSEMA3A結合を減らす。
【0140】
関連態様では、本発明はNRP1トラップ(例えば、表1にリストされ、
図19、20および27に示されるトラップ)をコードする核酸を提供する。このような核酸は、細胞での発現のために発現ベクター中に含まれてよい。したがって、本発明は、可溶性NRP1ポリペプチドまたはその機能性断片をコードする核酸を含むベクターおよびこのような発現ベクターを含む細胞にさらに関する。本発明の可溶性NRP1ポリペプチドまたはその機能性断片(すなわち、NRP由来トラップ)をコードする核酸は、細胞による分泌のためのシグナル配列をコードする(例えば、配列番号65、66または69、または配列番号70のアミノ酸1~21をコードする)ポリヌクレオチド部分を含んでもよい。さらに、本発明の核酸は、3’末端に翻訳終結「停止」コドンを有するおよび有さない核酸を含む。翻訳終結停止コドンは、例えば、本発明の核酸をクローニング可能な発現ベクターにより提供してよい。
【0141】
本明細書で使用する場合、NRP1の「機能性断片」または「機能性変異体」(例えば、NRP1などの本発明の可溶性NRP1ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの機能性断片)は、元の分子と同じ望ましい活性を実質的に保持するが、何らかの修飾、および/またはアミノ酸/ヌクレオチドの置換、欠失もしくは付加(例えば、別のポリペプチドとの融合)がある点で異なる分子を意味する。修飾は、ポリペプチド/ポリヌクレオチド骨格を含むいずれの部分にも生じ得る(例えば、アミノ酸配列、アミノ酸側鎖、およびアミノ末端またはカルボキシ末端)。このような置換、欠失または付加には1つまたは複数のアミノ酸が関与し得、またはポリヌクレオチドの場合には1つまたは複数のヌクレオチドが関与し得る。置換は、保存的であることが好ましく、すなわち、当業者によく知られているように、あるアミノ酸が、類似の物理化学的特性(大きさ、疎水性、電荷/極性など)を有する別のアミノ酸によって置き換えられるのが好ましい。可溶性NRP1の機能性断片には、可溶性NRP1ポリペプチド(例えば、a1および/またはa2ドメイン(単一または複数))の断片もしくは一部、または阻害活性を維持する(すなわち、SEMA3A、VEGFおよび/またはTGF-βに結合し、NRP1媒介細胞活性の伝達を阻害する)NRP1のホモログ変異体もしくはアレル変異体の断片もしくは一部が挙げられる。NRP1媒介細胞活性の非限定的例には、i)血管透過性亢進、ii)MP活性化および動員、iii)アポトーシスの誘導、iv)炎症促進性サイトカイン(例えば、TNF-α、IL-1β)の産生および/または分泌の誘導、が挙げられる。一実施形態では、NRP1ポリペプチドは、
図22(NRP1アイソフォーム2、配列番号65)のポリペプチド配列または
図26(配列番号66および69)に示されるNRP1アイソフォーム1のアミノ酸1~859もしくは22~859と、少なくとも80、85、88、90、95、98または99%同一である。一実施形態では、NRP1機能性断片は、
図22または26(それぞれ配列番号65および66)に示されるNRP1のサブドメイン(単一または複数)a1(例えば、配列番号71、または配列番号66のアミノ酸22~148)、a2(例えば、配列番号72、または配列番号66のアミノ酸149~275)、b1(例えば、配列番号73、またはアミノ酸)、b2(例えば、配列番号74、または配列番号66のアミノ酸429~589)および/またはc(例えば、配列番号75、または配列番号66のアミノ酸590~859)に、少なくとも80、85、88、90、95、98または99%同一であるサブドメインa1、a2、b1、b2および/またはcを含む。一実施形態では、NRP1は、ラット、マウスおよびヒトのNRP1の間で保存されていないアミノ酸の変異(保存的または非保存的置換(単一または複数)および/または欠失(単一または複数))を含む、機能性変異体である(
図26および配列番号69に示すコンセンサス配列を参照されたい)。好ましくは、NRP1ポリペプチド/ポリヌクレオチドまたはその断片は、ヒトである。
【表2】
【0142】
抗体
NRP1細胞活性は、NRP1の1つまたは複数のそのリガンド(例えば、SEMA3A、VEGFおよび/またはTGF-β)との結合を遮断する薬剤を使用して阻害することができる。このような薬剤の一例は、NRP1に結合し、NRP1のSEMA3A、VEGFおよび/またはTGF-βとの結合を遮断する抗体である。
【0143】
あるいは、NRP1媒介細胞内シグナル伝達の阻害は、NRP1リガンドのNRP1ポリペプチドとの結合を遮断する薬剤を使用することにより達成することができる。このような薬剤の非限定的例には、SEMA3A、VEGFまたはTGF-βに結合し、それらそれぞれのNRP1への結合を遮断する抗体が挙げられる。
【0144】
本発明の特定の態様では、NRP1を標的にする抗体は、SEMA3Aの受容体への結合を阻止するが、VEGFおよび/またはTGF-βのNRP1への結合を実質的に妨げない。一実施形態では、抗NRP1抗体は、NRP1ポリペプチドのa1a2ドメインに結合する。別の実施形態では、抗NRP1抗体は、NRP1ポリペプチドのa1またはa2サブドメインに結合する。
【0145】
上述のように、抗SEMA3A抗体を使って、NRP1へのSEMA3A結合を遮断することにより、NRP1媒介細胞内シグナル伝達を阻害(すなわち、完全にまたは部分的に低減)し得る。有用な抗SEMA3A抗体は、SEMA3Aのセマドメインに結合し、NRP1との相互作用を遮断する。いくつかの実施形態では、本発明により使用される抗SEMA3A抗体は、SEMA3Aのアミノ酸残基252~260、359~366または363~380を含むSEMA3Aポリペプチドドメインに結合する抗体を含む。SEMA3AのNRP1への結合を阻害するSEMA3A抗体は、当技術分野において既知であり、本発明で使用し得る。
【0146】
本明細書で使用する場合、「抗NRP1抗体」という表現は、NRP1タンパク質に特異的に結合(相互作用)し、NRP1タンパク質と同じ抗原決定基を共有する天然タンパク質以外の他の天然タンパク質に実質的に結合しない抗体を意味する。同様に、「抗SEMA3A抗体」、「抗VEGF抗体」または「抗TGF-β抗体」という表現は、それぞれ、SEMA3A、VEGFまたはTGF-βタンパク質に特異的に結合(相互作用)し、標的SEMA3A/VEGF/TGF-βタンパク質と同じ抗原決定基を共有する天然タンパク質以外の他の天然タンパク質に実質的に結合しない抗体を意味する。
【0147】
本発明で使用することができる抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体ならびにキメラ抗体が含まれる。抗体または免疫グロブリンという用語は、最も広い意味で使用され、所望の生物活性を示す限り、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体および抗体断片を包含する。抗体断片は、完全長抗体の一部、一般的には、その抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片、ディアボディ、直鎖抗体、一本鎖抗体分子、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ科由来)、ナノボディ、サメNAR単一ドメイン抗体、ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。抗体断片はまた、CDRまたは抗原結合ドメインを含有する結合部分も意味し、VH領域(VH、VH-VH)、アンチカリン、PepBodies(商標)、抗体-T細胞エピトープ融合体(Troybody)またはペプチボディを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0148】
抗ヒトNRP1/sem3A/VEGF/TGF-β抗体は、これまでに調製されており、Santa Cruz、AbCam、およびCell Signalingなどの種々供給業者からも市販されている。
【0149】
一般に、抗体(配列が既知の場合の、モノクローナル抗体、ハイブリドーマおよびヒト化抗体を含む)を調製するための技術および抗体を使用して抗原を検出する技術は、当該技術分野においてよく知られており、また、各種プロトコルもよく知られており、入手可能である。
【0150】
NRP1またはNRP1リガンドの発現の阻害
NRP1またはそのリガンド(例えば、SEMA3A、VEGFまたはTGF-β)の発現を低下させて(mRNAレベルまたはタンパク質レベルで)、NRP1媒介細胞内シグナル伝達を阻害し、それにより、炎症および自然免疫応答の過剰活性化(すなわち、i)炎症促進性サイトカインの産生および/または分泌;ii)単核貪食細胞(MP)の動員;iii)血管透過性亢進化;および/またはiv)浮腫;v)神経損傷、脈絡膜新生血管など)を減らすための種々の手法を利用可能である。非限定的な例には、NRP1、SEMA3A、VEGFまたはTgf-βプロモーターなどを標的にする低分子ヘアピンshRNA(RNAi)、アンチセンス、リボザイム、TALエフェクタの使用が挙げられる。
【0151】
細胞におけるshRNA、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどの発現は、プラスミドの送達またはウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)もしくは細菌ベクターを介して行うことができる。
【0152】
したがって、代替実施形態では、本発明は、目的のmRNAの分解および/または翻訳の阻害を行うための外因性投与用アンチセンス、shRNA分子およびリボザイムを提供する。アンチセンス、shRNA分子およびリボザイムが、ヒトNRP1、SEMA3A、VEGFおよび/またはTGF-β発現を標的にするのが好ましい。治療用アンチセンスオリゴヌクレオチド用途の例には、1992年8月4日出願の米国特許第5,135,917号;1992年3月24日出願の米国特許第5,098,890号;1992年2月11日出願の米国特許第5,087,617号;1992年11月24日出願の米国特許第5,166,195号;1991年4月2日出願の米国特許第5,004,810号;1993年3月16日出願の米国特許第5,194,428号;1989年2月21日出願の米国特許第4,806,463号;1994年2月15日出願の米国特許第5,286,717号;米国特許第5,276,019号、および米国特許第5,264,423号;BioWorld Today,Apr.29,1994,p.3が挙げられる。
【0153】
好ましくは、アンチセンス分子では、目的のmRNAとの相補性の程度は、特異的結合が望まれる状況下、例えば、インビボアッセイもしくは治療処置の場合の生理学的条件下、またはインビトロアッセイの場合のアッセイが実施される条件下で、アンチセンス分子の非標的配列への非特異的な結合を十分に回避するものである。アンチセンス結合のための標的mRNAは、タンパク質をコードするための情報だけでなく、関連するリボヌクレオチド、例えば、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、5’キャップ領域およびイントロン/エキソン連結リボヌクレオチドを形成するものも含み得る。本発明のShc阻害剤などの分子を得るために使用できるアンチセンスおよびリボザイム核酸の選別方法は、米国特許第5,932,435号に開示されている。
【0154】
本発明のアンチセンス分子(オリゴヌクレオチド)には、糖間骨格結合、例えば、ホスホトリエステル、ホスホン酸メチル、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルの糖間結合、または短鎖ヘテロ原子もしくはヘテロ環式糖間結合、ホスホロチオエートなどを含むもの、ならびにCH2-NH-O-CH2、CH2-N(CH3)-O-CH2(メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られる)、CH2-O-N(CH3)-CH2、CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2およびO-N(CH3)-CH2-CH2骨格(式中のホスホジエステルはO-P-O-CH2)を有するものを含めてよい。モルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドを用いてもよい(米国特許第5,034,506号)。代替実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ペプチド核酸(PNA、時に「タンパク質核酸」とも呼ばれる)骨格を有し得る。この場合、オリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格がポリアミド骨格により置き換えられ得、ヌクレオシド塩基がポリアミド骨格中のアザ窒素原子またはメチレン基に直接的または間接的に結合している(Nielsen et al.,1991,Science 254:1497および米国特許第5,539,082号)。ホスホジエステル結合は、キラルおよび鏡像異性的に特異である構造で置換されてもよい。当業者であれば、本発明の実施に使用するための他の結合を選択できるであろう。
【0155】
オリゴヌクレオチドはまた、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド塩基を含む種を含み得る。したがって、天然に通常みられないプリンおよびピリミジンも使用できる。同様に、ヌクレオチドサブユニットのペントフラノシル部分の修飾も行ってよい。このような修飾の例は、2’-O-アルキル-置換および2’-ハロゲン置換のヌクレオチドである。本発明で有用な糖部分の2’位における修飾のいくつかの具体例は、OH、SH、SCH3、F、OCN、O(CH2)nNH2またはO(CH2)nCH3(式中nは1~約10);C1~C10の低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリルまたはアラルキル;Cl;Br;CN;CF3;OCF3;O-、S-またはN-アルキル;O-、S-またはN-アルケニル;SOCH3;SO2CH3;ONO2;NO2;N3;NH2;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA切断基;レポーター基;インターカレータ;オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を改善する基;またはオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善する基および類似の特性を有する他の置換基である。1つまたは複数のペントフラノシル基が、別の糖、シクロブチルなどの糖類似体、または糖に代わる別の部分と置き換わってもよい。
【0156】
いくつかの実施形態では、本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、約5~約100の核酸単位を含んでよい。核酸単位が、ホスホジエステルまたは骨格構造を形成する他の結合を介して、隣接するヌクレオチド単位に適切に結合した塩基-糖の組み合わせ(または類似構造物の組み合わせ)であることは理解されよう。
【0157】
さらなる実施形態では、目的のポリペプチド(例えば、SEMA3AまたはNRP1)をコードする核酸またはその断片の発現を、転写後遺伝子サイレンシングの一種であるRNA干渉(RNAi)技術を用いて阻害または妨害してよい。RNAiを使用して、疑似「ノックアウト」、すなわち、目的の遺伝子またはコード領域がコードする産物の発現を減少させる系を作製し、系内の当該コード産物の活性を全体的に減少させてもよい。このように、RNAiは、目的の核酸またはその断片もしくは変異体を標的にし、そのコードする産物の発現および活性レベルを低減するために実施することができる。このような系は、当該産物の機能研究に使用し得るだけでなく、このような産物の活性に関する疾患の処置にも用いることができる。RNAiについては、例えば、米国特許出願公開第20020173478号(Gewirtz;2002年11月21日公開)および同20020132788号(Lewis et al.;2002年11月7日公開)に記載されている。RNAiを実施するための試薬およびキットは、例えば、Ambion Inc.(Austin,TX,USA)およびNew England Biolabs Inc.(Beverly,MA,USA)から市販されている。
【0158】
一部の系において、RNAiの最初の試薬は、標的核酸に対応するdsRNA分子である。次いで、dsRNA(例えば、shRNA)が、21~23のヌクレオチド長である低分子干渉RNA(siRNA)(19~21塩基対の二重鎖、各々2ヌクレオチド3’オーバーハングを有する)に切断されると考えられる。この最初の切断段階をもたらすと思われる酵素は、「ダイサー」と呼ばれており、dsRNA特異的リボヌクレアーゼのRNアーゼIIIファミリーの1つのメンバーに分類されている。あるいは、このようなsiRNAもしくはsiRNA様分子を細胞に直接導入することによって、またはこのようなsiRNAもしくはsiRNA様分子の適切な前駆体(例えば、前駆体(単一または複数)をコードするベクターなど)を細胞に導入して細胞内で生成させることによって、RNAiの機能を発揮させてもよい。その後、siRNAは、他の細胞内成分と結合し、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を形成し得る。このようにして形成されたRISCは、その後、相同性に基づき、siRNA部分と標的転写産物との間の塩基対相互作用を介して、目的の標的転写産物を標的にし得る。これにより、標的転写産物がsiRNAの3’末端から約12ヌクレオチドで切断されることになる。このように、標的mRNAが切断され、mRNAがコードするタンパク質産物のレベルが減少する。
【0159】
RNAiは、適切にインビトロ合成されたsiRNA(shRNA)またはsiRNA様分子の細胞内導入により機能を発揮させ得る。例えば、化学合成されたRNAを用いてRNAiを行ってもよい。あるいは、適切な発現ベクターを用いて、このRNAをインビトロまたはインビボのいずれかで転写してもよい。センス鎖およびアンチセンス鎖(同じベクターまたは別のベクター上に存在する配列によってコードされるもの)のインビトロ転写は、例えば、T7 RNAポリメラーゼを用いて行い得る。この場合、ベクターは、T7プロモーターに操作可能なように連結された適切なコード配列を含んでよい。いくつかの実施形態では、インビトロ転写されたRNAを、RNAiになる大きさに(例えば、E.coli RNアーゼIIIを用いて)インビトロ処理してよい。センスおよびアンチセンスの転写産物を組み合わせて、RNA二重鎖を形成し、これを目的の標的細胞に導入する。siRNA様分子に処理可能な低分子ヘアピンRNA(shRNA)を発現する、他のベクターを使用してもよい。ベクターをベースにした各種方法およびこのようなベクターをインビトロまたはインビボ(例えば、遺伝子治療)のいずれかで細胞に導入するための各種方法は、当技術分野において知られている。
【0160】
したがって、一実施形態では、目的のポリペプチド、例えば、可溶性NRP1、NRP1由来トラップをコードする核酸またはその断片の発現は、目的のポリペプチド(例えば、SEMA3AまたはNRP1)をコードする核酸もしくはその断片、またはこれらに相同の核酸に対応するsiRNAもしくはsiRNA様分子を細胞に導入すること、または細胞内で生成させることによって阻害し得る。「siRNA様分子」は、siRNAに類似し(例えば、大きさおよび構造)、siRNA活性を誘発できる、すなわち、RNAiを介した発現の阻害の機能を発揮する核酸分子を意味する。各種実施形態では、このような方法には、siRNAまたはsiRNA様分子の細胞への直接投与、または上述のベクターをベースにした方法の使用が必要となり得る。一実施形態では、siRNAまたはsiRNA様分子は約30未満のヌクレオチド長である。さらなる実施形態では、siRNAまたはsiRNA様分子は、約21~23のヌクレオチド長である。一実施形態では、siRNAまたはsiRNA様分子は、19~21塩基対の二重鎖部分を含み、各鎖は2ヌクレオチド3’オーバーハングを有する。いくつかの実施形態では、siRNAまたはsiRNA様分子は、目的のポリペプチドをコードする核酸またはその断片もしくは変異体(または変異体の断片)と実質的に同一である。このような変異体は、目的のポリペプチドに類似した活性を有するタンパク質をコードすることができる。
【0161】
細胞内でのshRNA/RNAi発現を得るために、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルスおよびレンチウイルスを含む、各種のウイルスベクターを使用することができる。アデノ随伴ウイルスおよびアデノウイルスを用いる場合、ゲノムはエピソームとして残る。これは、挿入変異が回避されるので、有利である。不利な点は、細胞が非常にゆっくり分裂しない限り、細胞の子孫が細胞分裂によってウイルスをすぐに失うことである。AAVは、ウイルス遺伝子が除去され、詰め込み能力が小さくなっている点で、アデノウイルスとは異なる。レンチウイルスは、転写活性のあるクロマチン部分に統合されるため、子孫細胞に受け継がれる。この方法では挿入変異のリスクが高まるが、インテグラーゼ欠損レンチウイルスを使用することによってこのリスクを軽減することができる。
【0162】
医薬組成物およびキット
本発明のNRP1依存性細胞内シグナル伝達を阻害する薬剤(すなわち、NRP1阻害剤)は、単独でまたは医薬組成物として、ヒト対象に投与することができる。医薬組成物の場合、標的疾患または状態を処置または予防するまたは所望の細胞の反応を生じる用量で、適切なキャリアまたは賦形剤(単一または複数)と、それらの薬剤を混合する。
【0163】
これら化合物の混合物(例えば、NRP1トラップ、抗体、ドミナントネガティブペプチド、低分子阻害性ペプチド、など)もまた、単純な混合物として、または適切に処方された医薬組成物として、対象に投与することができる。さらに、治療有効量は、標的炎症性疾患または状態(例えば、敗血性ショック、関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、皮膚炎症、糖尿病、ぶどう膜炎および糖尿病性網膜症などの神経炎症状態、加齢黄斑変性(AMD)、未熟児網膜症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、加齢性認知機能低下/アルツハイマー病、など)の予防または処置をもたらすために、または所望の細胞の反応または生理的な反応を得るために、十分な化合物または複数化合物の量(例えば、i)浮腫を低減する、ii)単核貪食細胞(例えば、ミクログリアまたはマクロファージ)の活性化/動員を減らす、iii)炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、TNF-α、IL-6、など)の産生または分泌を減らす、iv)病理学的血管新生を減らす、v)血管変性を減らすために十分な量)を意味する。
【0164】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容可能なキャリア」または「賦形剤」は、生理学的に適合性のある任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤、抗真菌剤、生理的媒体などを含む。いくつかの実施形態では、キャリアは眼投与に適するものである。他の実施形態では、キャリアは全身投与に適するものである。他の実施形態では、キャリアは経口投与に適するものである。
【0165】
薬学的に許容可能なキャリアは、滅菌水溶液または滅菌分散液、および注入可能な滅菌溶液または滅菌分散液をその場で調製するための滅菌粉末を含む。例えば、眼、全身または経口適用などのための、このような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野においてよく知られている。任意の従来の媒体または薬剤が本発明の化合物と相いれない場合を除き、本発明の組成物におけるこれらの使用が意図されている。また、補助的な活性化合物も、組成物中に組み込むことができる。
【0166】
本出願の化合物の処方技術および投与技術は、”Remington’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Publishing Co.,Easton,PA,latest edition中に見出され得る。
【0167】
本発明はまた、本発明の方法で使用するためのキットまたは市販パッケージにも関する。このようなキットは、このキットを使用するための説明書と一緒に、本発明の化合物(例えば、SEMA3A媒介細胞内シグナル伝達を含むNRP1細胞内シグナル伝達を阻害する化合物、例えば、トラップ、抗体、shRNA、細胞、ベクター、核酸)を含んでよい。
【0168】
投与経路/製剤
好適な投与経路には、例えば、全身、経口および経眼(点眼薬または眼内注射)を含めてよい。好ましい投与経路としては、眼疾患に対しては点眼薬および眼内注射、慢性炎症状態に対しては経口投与、および敗血症および脳卒中などの特定の神経細胞疾患に対しては全身投与を含む。製剤はまた、持続放出製剤の形態であってもよい。
【0169】
したがって、本発明による使用のための医薬組成物は、活性化合物の薬学的に使用可能な製剤への処理を容易にする賦形剤および助剤を含む、1つまたは複数の生理学的に許容可能なキャリアを使用して従来の方法で処方することができる。適切な処方は、選ばれた投与経路に依存する。注射の場合、本発明の薬剤を、水溶液、好ましくは生理学的に適合性のある緩衝液、例えば、ハンクス液、リンゲル液、または生理食塩水緩衝液で処方してよい。
【0170】
化合物は、眼投与用、例えば、点眼薬または眼内注射用に処方してよい。注射用の製剤は、単位剤形、例えば、アンプル、または防腐剤を添加した複数回投与用容器で提供してよい。組成物は、懸濁液、溶液または油性もしくは水性ビークル中の乳剤などの形態を取ってよく、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤を含めてもよい。さらに、標的化薬物送達システム、例えば、細胞特異的な抗体をコーティングしたリポソームで、またはその他の送達システム(例えば、特異的組織(例えば、脳)または細胞型(例えば、ミクログリアまたはマクロファージ)を標的として)で薬剤を投与してもよい。ナノシステムおよびエマルジョンは、薬剤用の送達ビークルまたはキャリアのよく知られている追加例である。別の例は、眼疾患のための、Neurotechのカプセル化細胞療法(ECT)送達システム由来のものである。ECTは、2年間にわたり、眼用の治療用タンパク質の連続的産生を可能とする遺伝子組み換えされた眼インプラントである。さらに、治療は、インプラントを除去するだけで、元に戻せる。ECTインプラントは、20分の外来患者外科手術により、単一の切開部位を通って硝子体中に挿入され、所定位置で縫合される。
【0171】
有効投与量
本発明での使用に適する医薬組成物には、活性成分がその使用目的を達成するための有効量で含まれる組成物が挙げられる。より具体的には、治療有効量は、治療対象の既存の症状の進行防止または緩和に対する有効量を意味する。有効量の決定は、当業者の能力の範囲内で適切に行うことができる。
【0172】
有効量の化合物は、大きな副作用を生じることなく、1つまたは複数の生理的または細胞応答(例えば、血管透過性亢進、血液網膜関門漏出、浮腫、MP活性化および/または動員、炎症促進性サイトカイン産生および/または分泌、血管新生、神経損傷、など)を減らすもしくは防ぐまたは所定の炎症性疾患または状態を予防もしくは処置するのに十分にNRP1の細胞シグナル伝達機能を阻害する。このような活性を有する特定の化合物は、NRP1媒介細胞内シグナル伝達阻害剤(例えば、NRP1の発現もしくは活性を直接標的にする薬剤またはNRP1のリガンドの発現もしくは活性(例えば、結合活性)を標的にする薬剤)の用量依存的阻害を測定するインビトロアッセイにより特定することができる。
【0173】
本発明の方法で使用されるいずれの化合物に対しても、治療的有効量を、初めに細胞アッセイから推定することができる。例えば、細胞および動物モデルにおいて、細胞アッセイで決定されたIC50(すなわち、通常、IL-1βなどの炎症メディエーター、または低酸素、虚血、細胞ストレス、ERストレスなどの他の活性化刺激に対して、NRP1の細胞内シグナル伝達機能の最大半量阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む血中濃度範囲を達成するように、投与量を処方することができる。
【0174】
治療的有効量は、対象の症状に改善をもたらす化合物の量を意味する。同様に、予防有効量は、患者の症状(例えば、NRP1媒介血管透過性亢進、飛蚊症および/またはかすみ目、毛細血管周皮細胞喪失、黄斑浮腫、網膜腫脹、血液網膜関門漏出、単核貪食細胞動員、炎症促進性サイトカインの産生および分泌、血管変性、病理学的血管新生、神経損傷、など)を予防するまたは進行を遅らせるのに必要な量を意味する。このような化合物の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法、例えば、最大耐量(MTD)およびED(最大反応の50%の有効量)を求めることによって決定することができる。毒性効果と治療効果を示す用量の比率は、治療指数であり、MTDとED50の比率で表され得る。治療指数の高い化合物が好ましい。的確な処方、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して、個々の医師によって選択することができる。
【0175】
投与量および投与間隔は、NRP1調節効果を維持するのに十分な活性化合物のレベル、または最小有効濃度(MEC)を可能とするために、個々に調整してよい。MECは、化合物ごとに変動するであろうが、インビトロデータ、例えば、SEMA3A発現または活性(例えば、NRP1受容体への結合)の実質的な阻害を達成するのに必要な濃度から推定することができる。MECを達成するのに必要な投与量は、個々の特徴および投与経路による。
【0176】
組成物の投与量は、当然のことながら、治療対象、対象の体重、病気の重症度、投与方法および処方医師の判断に依存するであろう。
【0177】
定義
分かりやすくするために、本発明において、次の用語の定義が適用される。
【0178】
本明細書で使用する場合、「ニューロピリン-1受容体」または「NRP1」受容体という用語は、ニューロピリン-1およびそのアイソフォーム、ならびにアレル/多形を意味する(例えば、HGNC:8004;Entrez Gene:8829;Ensembl:ENSG00000099250;OMIM:602069;およびUniProtKB:O14786;ジェンバンク受入番号AAH07737.1、
図22、配列番号65)。NRP1は、細胞外ドメイン上の別々の部位を介して、構造的に異なる3つのリガンドに結合する特殊な能力を有する非チロシンキナーゼ多機能受容体である。NRP1は、SEMA3Aに結合し(18、19)(例えば、細胞骨格崩壊を誘発する)、また、VEGF
165に結合してVEGFR2への結合を促進する(例えば、その血管新生潜在能力を高める)。NRP1は、TGF-βにも結合する。さらに、遺伝子研究では、NRP1が神経細胞および血管発生に対するVEGFとSEMA3Aの作用を個別に調節していることも示されている。したがって、リガンドに応じて、NRP1媒介細胞反応が変化する。
【0179】
ニューロピリン-1の基本構造は、5個のドメイン:3個の細胞外ドメイン(a1a2(CUB)、b1b2(FV/FVIII)およびc(MAM)、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む(
図19Aおよび22ならびに配列番号65、66および68を参照されたい)。a1a2ドメインは、ジスルフィド架橋を形成する4個のシステイン残基を通常含有する、補体成分C1rおよびC1s(CUB)と相同である。このドメインがSEMA3Aと結合する。ドメインb1b2(FV/FVIII)はVEGFに結合する。サブドメインb1のアミノ酸Y297は、VEGFへの結合にとって重要である。理由は、Y297のアラニンへの置換により、NRP1へのVEGFの結合が顕著に減少するためである。NRP1にはいくつかのスプライスバリアントアイソフォームおよび可溶型が存在し、これらはすべて本発明に包含される。
【0180】
「相同性」および「相同」は、2つのペプチド間または2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性は、整列させた配列のそれぞれの位置を比較することによって決定することができる。核酸配列間またはアミノ酸配列間の相同性の程度は、配列の共有する位置で、ヌクレオチドまたはアミノ酸が同一である数もしくは一致した数の関数である。本明細書でその用語を使用する場合、2つの配列が実質的に同一であり、その配列の機能活性が保存されている場合、核酸/ポリヌクレオチド配列は、他方の配列と「相同」である(本明細書で使用する場合、「相同」という用語は進化的関係を意味するものではない)。最適に整列された場合(ギャップ許容あり)、少なくとも約50%の配列類似性または同一性を共有するか、または定義した機能モチーフを配列が共有していれば、2つの核酸配列は実質的に同一であるとみなされる。代替実施形態では、最適に整列された実質的に同一の配列における配列類似性は、少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であり得る。本明細書で使用する場合、配列間の相同性を示す一定の割合は、最適に整列された配列における配列同一性の程度を示す。「無関係」または「非相同」の配列は、本明細書で開示のいずれかの核酸およびポリペプチドと、40%未満の同一性を共有するが、好ましくは約25%未満の同一性を共有する。
【0181】
実質的に相補的な核酸は、一方の分子の相補配列が他方の分子と実質的に同一である核酸である。2つの核酸配列またはタンパク質配列は、最適に整列された場合に、少なくとも約70%の配列同一性を共有すれば、実質的に同一であるとみなされる。代替実施形態では、配列同一性は、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であり得る。同一性を比較するための配列の最適アラインメントは、SmithおよびWatermanの局所的相同性アルゴリズム(1981、Adv.Appl.Math2:482)、NeedlemanおよびWunschの相同性アラインメントアルゴリズム(1970,J.Mol.Biol.48:443)、PearsonおよびLipmanの類似性検索方法(1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:2444)、ならびにこれらのアルゴリズムのコンピュータ処理(例えば、GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,Madison,WI,U.S.A.)などの各種アルゴリズムを用いて行うことができる。配列同一性はまた、Altschulらが記述したBLASTアルゴリズム(1990,J.Mol.Biol.215:403-10)を用いて決定することもできる(発表されたデフォルト設定を使用)。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、米国国立生物工学情報センターより(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/からインターネットを介して)入手可能である。BLASTアルゴリズムは、まず、データベース配列中の同じ長さのワードと整列化を行ったときに、ある正の値の閾値スコアTと一致するかまたは満足させる、検索配列中の長さWの短いワードを特定することにより、高スコアの配列ペア(HSP)を特定することを含む。Tは、隣接ワードスコア閾値と呼ばれる。最初の隣接ワードヒットは、より長いHSPを見出すための検索を開始するシードとして作用する。ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に拡張される。ワードヒットの両方向への拡張は、次のパラメータが満たされるときに停止する。累積アラインメントスコアが最大到達値から量Xだけ低下した場合、1つまたは複数の負のスコア残基アラインメントが蓄積したことにより累積スコアがゼロ以下になった場合、またはいずれかの配列の末端に達した場合。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W)11、BLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:10915-10919)アラインメント(B)50、期待値(E)10(または1または0.1または0.01または0.001または0.0001)、M=5、N=4、および両鎖の比較を用いることができる。BLASTアルゴリズムを用いる2つの配列間の統計的類似性の一つの尺度は、最小和確率(P(N))である。これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸の配列間の一致が偶然により生じ得る確率の指標を提供する。本発明の代替実施形態では、試験配列の比較における最小和確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、実質的に同一とみなされる。
【0182】
2つの核酸配列が実質的に相補的であることの代替指標は、中程度にストリンジェントな条件下、または好ましくはストリンジェントな条件下で、2つの配列が互いにハイブリダイズすることである。中程度にストリンジェントな条件下でのフィルタ結合配列に対するハイブリダイゼーションは、例えば、0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中65℃で行い、0.2xSSC/0.1%SDSで42℃で洗浄することで実施できる(Ausubel,et al.(eds),1989,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.1,Green Publishing Associates,Inc.,and John Wiley & Sons,Inc.,New York,at p.2.10.3参照)。あるいは、ストリンジェントな条件下でのフィルタ結合配列に対するハイブリダイゼーションは、例えば、0.5M NaHPO4、7%SDS、1mM EDTA中65℃にて行い、0.1×SSC/0.1%SDSで68℃にて洗浄することで実施できる(Ausubel,et al.(eds),1989、上述、参照)。ハイブリダイゼーションの条件は、目的の配列に応じて、既知の方法に従って変更してよい(Tijssen,1993,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acid Probes,Part I,Chapter 2 “Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays”,Elsevier,New York参照)。一般に、ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度およびpHでの特定の配列に対する熱的融点よりも約5℃低くなるように選択される。例えば、一実施形態では、本発明の化合物は、NRP1またはSEMA3A核酸配列(好ましくはヒト配列)にハイブリダイズするアンチセンス/RNAiまたはshRNAである。
【0183】
本明細書で使用される場合、炎症性疾患または状態(例えば、網膜症、脳虚血、脳卒中、敗血症、など)に関連して、「処置すること」または「処置」という用語は、前記疾患または状態に関連する1つまたは複数の症状または病理学的、生理的反応の低減/改善を意味することが意図されている。非限定的例には、浮腫、腫脹、そう痒、疼痛、血管透過性亢進、血液網膜関門の完全性、SEMA3A、VEGFおよび/またはTGF-β発現の増加、単核貪食細胞動員/走化性、炎症促進性サイトカインの産生および/または分泌、血管または神経細胞変性、などが挙げられる。
【0184】
本明細書で使用する場合、炎症性疾患または状態に関連して、「予防すること」または「予防」という用語は、疾患または状態に関連する少なくとも1つの症状の進行の低減または発症の遅延を意味することが意図されている。
【0185】
冠詞「a」、「an」、および「the」は、本明細書では、1または2以上(すなわち、少なくとも1)の文法上の目的語たる物品を意味するものとして使用される。
【0186】
本明細書では、用語の「含む(including)」および「含む(comprising)」は、「限定されるものではないが、以下が含まれる(including but not limited to)」および「限定されるものではないが、以下が含まれる(comprising but not limited to)」なる語句を意味するように使用され、およびこれらの語句と同義に使用される。
【0187】
本明細書で使用される場合、用語の「などの」は、「限定されないが、~などの(such as but not limited to)」なる語句を意味するように使用され、およびこの語句と同義に使用される。
【0188】
本発明を以下の非限定的な実施例によりさらに詳細に説明する。
【0189】
実施例1
材料と方法(実施例2~9および12)
LyzM-cre/Nrpfl/flマウスの生成。
C57Bl/6野生型(WT)マウスをThe Jackson Laboratoryから購入した。LyzM-Cre(Lyz2tm1(cre)Ifo/J;no.004781)およびNRP1 floxedマウス(Nrp1tm2Ddg/J;no.005247)を、The Jackson Laboratoryから購入し、交配して、NRP1欠損骨髄細胞を有するLyzM-cre/Nrpfl/flマウスを得た。
【0190】
O2誘導網膜症。
マウスの仔(WTまたはLyzM-Cre(Jackson Laboratory)またはLysM-Cre/Nrp1fl/fl)およびそれらの里親(CD1、Charles River)を生後7日(P7)~12日まで75%O2に暴露し、室内気に戻した(52)。このモデルは、ヒトの眼の新生血管疾患、例えば、後期の有害な病理学的血管新生を特徴とする糖尿病性網膜症の代用としての役割をする(53、54)。室内気に戻すと、P14から以降に、低酸素駆動血管新生(NV)が発生する(26)。種々の時点で眼を摘出し、記載のFACS分析またはmRNA分析用に網膜を切開した。他の実験では、切開した網膜をフラットマウントし、1mMのCaCl2中の蛍光標識イソレクチンB4(1:100)と共に一晩インキュベートし、ImageJおよびSWIFT-NV法を使ってP17での無血管領域または血管新生領域の広さを測定した(55)。
【0191】
消化網膜および脾臓のFACS。
WTまたはLysM-Cre/Nrp1fl/flマウス由来の網膜をホモジナイズし、750U/mLのDNアーゼI(Sigma)および0.5mg/mLのコラゲナーゼD(Roche)の溶液中、緩やかな振盪を加えながら、37℃で15分間インキュベートした。その後、ホモジネートを70μmのセルストレーナーで濾過し、PBS+3%ウシ胎仔血清中で洗浄した。脾臓試料をホモジナイズし、1mg/mLのコラゲナーゼDと共に37℃で10分間インキュベートした。ホモジネートをPBS+3%ウシ胎仔血清中で洗浄し、ペレットを再懸濁し、リシスバッファー(10mM KCHO3;150mM NH4Cl;0.1mM EDTA)中で室温下、5分間インキュベートした。細胞懸濁液(網膜または脾臓)を、LEAF(商標)精製抗マウスCD16/32(Biolegend)と共に室温で15分間インキュベートして、Fc受容体をブロッキングした。その後、下記の抗体と共に、細胞を室温で30分間インキュベートした。FITC抗マウス/ヒトCD11b(Biolegend)、PE/CY7抗マウスLy-6G/Ly-6C(Gr-1;Biolegend)、Pacific Blue(商標)抗マウスF4/80(Biolegend)、7AAD(BD Biosciences)およびアロフィコシアニン標識抗mNeuropilin-1ラットIgG2A(R&D Systems)またはアロフィコシアニン標識ラットIgG2Aアイソタイプ対照(R&D Systems)。
【0192】
CX3CR1およびCD45発現の分析のために、Alexa Fluor700抗マウスCD45.2(Biolegend)およびフィコエリトリン標識抗マウスCX3CR1ヤギIgG(R&D Systems)またはヤギIgGアイソタイプを補充した上述の抗体を使って追加の細胞外染色を行った。LSRII(BD Biosciences)装置でフィコエリトリン標識対照のFACSを行い、データをFlowJo(商標)ソフトウェア(バージョン7.6.5)を使って解析した。
【0193】
BrdU注射。OIRに晒されたまたは正常酸素圧条件に保持された野性型マウスに、P13で、5-ブロモ-2-デオキシウリジン(BrdU:Sigma)を、PBS中に溶解した1mg/マウスの用量で腹腔内に注射した。
【0194】
BrdU取り込みの分析。
P14 WTマウス由来の網膜細胞に染色を行った。上述のようにして試料を得た。細胞外染色を上述のように行った(CD45.2(中/低);Gr-1-;CD11b+、F4/80+;7AAD)。次に、細胞をCytofix/Cytoperm(商標)緩衝液(BD Biosciences)で30分間固定し、Perm/Wash(商標)緩衝液(BD Biosciences)で10分間透過処理した。次に、細胞を300ug/mLのDNアーゼで37℃、1時間処理し、Perm/Wash(商標)で洗浄した。抗BrdU-PE抗体(Ebioscience)またはPE標識マウスIgGκアイソタイプ対照(Ebioscience)を使って、4℃で25分間、BrdUの細胞内染色を行った。その後、細胞をPerm/Wash(商標)で洗浄し、PBS+3%ウシ胎仔血清に再懸濁後、LSRII(BD Biosciences)でFACS分析を行った。
【0195】
硝子体切除。
以前にPDRと診断された全患者を追跡調査し、単独の硝子体網膜外科医により手術を行った(FAR)。対照患者は非血管病変(ERM(網膜上膜)またはMH(黄斑円孔))に対して同じ外科医により外科的処置を受けた。手術室の設定で、患者は、局所的後方/眼球周囲麻酔下で手術を受けた。5%のポビドン-ヨウ素溶液を使って、眼周囲皮膚を洗浄し、眼中へのおよび結膜嚢内への局所的点滴を所定位置で5分間保持した。25ゲージバルブ付きカニューレ(Acon)を介して、3ポート25ゲージ経結膜経扁平部硝子体切除術を行った。顕微鏡可視化下で、広角目視装置(Resight(商標)、Zeiss)を使って、25ゲージ硝子体切除装置で無希釈硝子体を収集した。硝子体生検後、糖尿病性硝子体出血および牽引性網膜剥離を処置する通常の方式で、インフュージョンラインを開いて、硝子体切除術および膜剥離を行った。この後続けて、汎網膜眼内レーザー光凝固、液空気置換、および硝子体内抗VEGF注射を行った。
【0196】
ELISAによるSEMA3Aタンパク質の定量化。
生検の直後に硝子体試料をドライアイス上で凍結し、-80℃で貯蔵した。分析前に、試料を15000xg、4℃で5分間遠心分離した。製造業者のインストラクション(USCN Life Science Inc.)に従い、酵素結合免疫吸着測定アッセイ(ELISA)を使って、上清中のSEMA3Aレベルを定量化した。
【0197】
ウェスタンブロットによるSEMA3Aタンパク質レベルの評価。
標準的SDS-PAGE技術により、SEMA3Aの存在に関し、PDRおよび対照患者由来の同体積の硝子体液(20uL)を評価した(Abcam)。
【0198】
リアルタイムPCR分析。
GenElute(商標)Mammalian Total RNA Miniprep Kit(Sigma)を用いてRNAを単離し、ゲノムDNAの増幅を防ぐためにDNアーゼIで消化した。M-MLV逆転写酵素(Life Technologies)を使って逆転写を実施し、ABI BiosystemsリアルタイムPCR装置でSybr(商標)Green(BioRad)を使って遺伝子発現を解析した。β-アクチンをリファレンス遺伝子として使用した(使用したオリゴヌクレオチド配列の詳細に関しては、実施例10の表2を参照されたい)。
【0199】
免疫組織化学。
汎網膜脈管構造を視覚化するために、フラットマウント網膜を、PBS中の1mMのCaCl2中のローダミン標識Griffonia(Bandeiraea)Simplicifolia Lectin I(Vector Laboratories,Inc.)を使って網膜脈管構造染色用として染色し、さらに、抗ラットニューロピリン-1抗体(ヤギIgG;R&D Systems)およびIBA1(ウサギポリクローナル;Wako)を使って染色した。
【0200】
腹膜マクロファージの初代培養。
成体WTまたはLyzMcre/NRP1fl/flマウスを酸素2L/分中の2%イソフルランで麻酔し、その後、頸部脱臼により安楽死させた。その後、マウスの腹部皮膚の小切開を行った。皮膚をマウスのそれぞれのサイズに引っ張り、腹膜腔を5mlのPBS+3%FBSで2分間洗浄した。その後、採取した細胞を1000rpmで5分間遠心分離し、培地(DMEM F12+10%FBSおよび1%ストレプトマイシン/ペニシリン)中に再懸濁し、平板培養した。5%のCO2雰囲気下、37℃で1時間の培養後、培地を交換し、同じ条件中で細胞をさらに24時間培養した後、サイトカインまたはトランスウェル遊走アッセイに使用した。
【0201】
トランスウェル遊走アッセイ。
8μmのポアインサートを備えた24ウエルプレート中で遊走アッセイを行った。200μlの培地(DMEM F12+10%FBSおよび1%ストレプトマイシン/ペニシリン)中に再懸濁した初代腹膜マクロファージ(5x105細胞)を上段チャンバーに添加した。遊走性因子:MCP-1(100ng/ml)、SEMA3A(100ng/ml)、およびVEGF165(50ng/ml)を含有または非含有の800μlの培地を下段チャンバーに添加した。5%CO2雰囲気下、37℃で、細胞をインサート膜を通して一晩遊走させた。いくつかの実験では、細胞を最初に、Y-27632(Sigma):選択的ROCK(Rho結合コイルドコイル形成タンパク質セリン/トレオニンキナーゼ)阻害剤(100μg/ml)を使って、37℃で1時間前処理した。その後、インサートをPBSで洗浄し、インサート膜の上面から非遊走性細胞を綿棒で拭き取った。次いで、遊走細胞を有する膜を4%パラホルムアルデヒド(PFA)で20分間固定し、PBSで2回洗浄し、スライドにマウントした。細胞をDAPI(Vector Laboratories,Inc.)を含む封入剤を用いて染色した。その後、各膜9個の無作為視野を倒立蛍光顕微鏡を用いて20xの倍率で撮影し、ImageJソフトウェアを用いて細胞を計数した。
【0202】
脈絡膜外植片および毛細血管の新芽形成アッセイ。
エクスビボ脈絡膜層外植片および毛細血管新芽形成の定量化を前述の通り行った(56)。簡単に説明すると、LysM-Cre/Nrp1+/+およびLysM-Cre/Nrp1fl/flマウス(各条件n=6)由来の脈絡膜層を眼の摘出直後に切開した。分割した脈絡膜層を24ウエル組織培養皿に播種し、マトリゲル(商標)(BD Biosciences)でカバーした後、試料をEGM(商標)-2培地、PBSを入れたリポソーム(リポソーム-PBS)を含むEGM-2培地、またはジクロロメチレンジホスホン酸二ナトリウム塩を入れたリポソーム(リポソーム-クロドロン酸)(Sigma)を含むEGM(商標)-2培地で処理した。リポソームのパッケージングは、(57)に従って行った。12時間後、パッセンジャー化合物を含むリポソームをウエルから取り出し、続けてPBSで洗浄した。(LysM-Cre/Nrp1+/+またはLysM-Cre/Nrp1fl/flマウスの)初代腹膜マクロファージ培養由来のマクロファージを脈絡膜外植片培養液に加え、マクロファージの毛細血管新芽形成に与える影響を調べた。
【0203】
可溶性組換えNRP1。
OIRに晒された野性型マウスに、P12で、プラスミド(29)またはR&D Systems由来のrmNRP1トラップ-1(
図19Cおよび20R、配列番号25)を硝子体内に注射した。
【0204】
使用した組換えタンパク質。
組換えマウスCCL2/JE/MCP-1(大腸菌由来)(R&D Systems)、インビトロで使用した濃度:100ng/ml。組換えヒトSEMA3A Fcキメラ(マウス骨髄腫細胞株、NS0由来)(R&D Systems)、インビトロで使用した濃度:100ng/ml。組換えヒトVEGF165(PeproTech)、インビトロで使用した濃度:50ng/ml。
【0205】
統計解析。
データは平均値±s.e.m.で表される。異なる群を比較するために、適切な場合には、スチューデントのT検定およびANOVAを用いた。P<0.05を統計的に異なると見なした。ELISAに対しては、ノンパラメトリックマン・ホイットニー検定を使って統計分析を行った(GraphPad Prism)。
【0206】
試験承認:ヒト試料。我々は、Maisonneuve-Rosemont Hospital(HMR)倫理委員会(Ref.CER:10059)によるヒト臨床的プロトコルおよびインフォームドコンセントの承認、ならびにT1DMまたはT2DM罹患患者からの局所的コア硝子体生検標本を得るための患者募集の承認を得た。Maisonneuve-Rosemont Hospitalの眼科の変更可能な医院内の簡単な処置ルームにおける外来患者処置として全体の処置を行った。全装置は開放され、無菌状態で取り扱われる。試験はヘルシンキ宣言の主張に従う。
【0207】
試験承認:動物。
すべての研究は、視覚と眼科学研究協会会議(ARVO)の眼科視覚研究における動物使用に関する記載に従って実施し、カナダ動物管理協会により規定されたガイドラインに従ってモントリオール大学動物保護委員会による承認を受けた。C57Bl/6野生型(WT)マウスをThe Jackson Laboratoryから購入した。LyzM-Cre(Lyz2tm1(cre)Ifo/J;no.004781)およびニューロピリン1 floxedマウス(Nrp1tm2Ddg/J;no.005247)を、The Jackson Laboratoryから購入した。
【表3】
【0208】
実施例2
NRP1が血管傷害に続いて動員される単核貪食細胞(MP)集団を特定する
ミクログリアまたはマクロファージなどのMP(単核貪食細胞)が増殖網膜症に関連する血管病変形成に加わるかどうかを判定するために、マウス全網膜に対し最初にFACS分析を行い、酸素誘導網膜症の進展全体(OIR、
図1A、P7~P12(生後7~12日)に75%酸素下で血管喪失を誘導し、P17まで室内気下で最大網膜前血管新生を得る(26、33))(
図1B、E、H)にわたるマクロファージ/ミクログリア蓄積の動力学を明らかにした。結果から、OIR中の解析した全時点で、P10(P=0.0004)(
図1C)での血管喪失期中の36%の増加、P14での新生血管期中の63%の上昇(P<0.0001)(
図1F)およびP17での最大血管新生中の172%の急増(P=0.0006)(
図1I)を含む著しく高い数の網膜マクロファージ/ミクログリア細胞(Gr-1-、F4/80+、CD11b+細胞、データは示さず)が明らかになった。
【0209】
重要なのは、それぞれの調査時点で、我々は、OIR中にNRP1陽性MPの比例的増大、すなわち、P10での37%の上昇(P=0.0240)(
図1D)、P14での61%の上昇(P=0.0196)(
図1G)およびP=17での155%の上昇(P=0.0058)(
図1J)を観察し、これは、疾患の進行中に、このNRP1陽性MPの亜集団が神経網膜へ動員されたことを示唆していることである。全てのOIR実験に関し、十分に正常代謝(35)であることを確認するためにマウスの仔の体重を記録した(データは示さず)。
【0210】
網膜症におけるMP常在性NRP1の役割を確定するために、Nrp1 floxedマウスをLysM-Creマウスと交雑させて(36)LysM-Cre/Nrp1
fl/fl子孫を得ることにより、骨髄特異的NRP1ノックアウトを生成した。得られたマウスは、LysM-Cre/Nrp1
+/+同腹仔対照に比べて、網膜MP中のNRP1発現の約80%の減少を示した(P=0.0004)(
図1K)。注目すべきことに、マウスは、Crb1遺伝子のrd8変異に対する試験結果は陰性であった(37)。LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスは、同腹仔と比較した場合、実験の全期間(P1~P17)を通して、体重、サイズ、またはオープンフィールド活性の差異は何ら認められず(データは示さず)、類似の数の常在性網膜ミクログリアが存在した(データは示さず)。注目すべきことは、P10およびP14のOIR(
図1L~O)で、骨髄細胞上のNRP1の欠失がマクロファージ/ミクログリアの侵入を完全に抑止し、虚血性網膜傷害の初期段階の間のMP走化性におけるこの受容体の重要な役割を示していることである。P17で、最大病理学的血管新生後、NRP1にほとんど関係なく、MP浸潤が発生する(
図1P、QおよびR)。潜在的ミクログリア固有の特性に一致して、上記で特定されたNRP1発現Gr1-/CD11b+/F4/80+細胞は、高レベルのCX3CR1および中/低レベルのCD45を発現する(
図1S、データは示さず)。予想通り、LysM-Cre/Nrp1
fl/fl網膜中で、CD45low/CX3XR1 high MPは、NRP1を欠いている(
図1T)。
【0211】
実施例3
NRP1
+骨髄細胞は網膜中で病理学的血管新生部位に局在化する
OIR中のNRP1
+マクロファージ/ミクログリアの顕著な流入を考慮して、疾患の進行中のこれらの細胞の局在化を次に測定した。網膜フラットマウントへの免疫蛍光法により、NRP1陽性マクロファージ/ミクログリア(IBA1およびNRP1で同時標識)は、OIRのP14での発生期病理学的タフト(
図2A~C)ならびにOIRのP17での成熟タフト(
図2D~F)と完全に結合することが明らかになった。
図2Bおよび2E白色矢印は、網膜前タフトと結合したNRP1陽性MPを指す。以前に報告したように(21)、NRP1はまた、新生血管タフトの内皮上の内皮細胞にも発現した。
図1に示すデータと一致して、LysM-Cre/Nrp1fl/flマウスは、より小さい数のマクロファージ/ミクログリア、およびそれほど多くない血管新生を有した(全体の定量化については下記を参照されたい)(
図2G~K)。
【0212】
実施例4
SEMA3Aは活動性増殖糖尿病網膜症に罹患している患者の硝子体中で上昇している
我々の知見と、網膜症でのMP走化性におけるNRP1の必須の役割との臨床的関連性を確かめるために、活動性PDRに罹患している患者の硝子体の内部のSEMA3Aの濃度をじかに決定した。17個の無希釈硝子体試料をPDRに罹患している患者から、および17個を非血管病変を有する対照患者から採取した。患者の詳細特徴は表1(実施例1)に含まれている。対照患者(20)は、非血管病変を呈し、線維性組織および斑状隆起(
図3C)に続発する脈管構造への牽引張力(
図3A、B(白色矢印))などの糖尿病に関連しない網膜損傷の徴候を示す。対照的に、PDR患者由来の全ての網膜は、乳頭(
図3D)または網膜前血管新生(
図3F)の徴候を示し、高度に透過性微小血管(蛍光染料の漏出)(
図3D、G挿入図)、毛細血管瘤(
図3D~G)および繊維状瘢痕組織を有し、進行した網膜症を示す(
図3G)。さらに、患者は、血管外漏出液の局所的合体による嚢胞形成(白色矢頭)を含む、損なわれた血管障壁機能が原因の黄斑浮腫のいくつかの証拠を示す(
図3H)。
【0213】
PDRにおける役割と一致して、SEMA3AのELISAベース検出により、対照患者由来の硝子体に比べて、PDR患者の硝子体液中の5倍高い濃度のタンパク質が明らかになった(P=0.0132)(
図3I)。結果は、PDRの患者中でSEMA3A(125および95kDaアイソフォーム)(38、39)が増加している同体積の硝子体に対するウェスタンブロット分析により確証された(
図3J)。したがって、硝子体中のSEMA3Aの発現上昇は、糖尿病性眼病変において誘導される。
【0214】
実施例5
NRP1のリガンドは、OIR中に、網膜神経節細胞層中で誘導される
増殖網膜症での2つの主要なNRP1リガンド発現の正確な動力学的プロファイルを得るために、OIRマウスモデルにおけるSEMA3AおよびVEGFメッセージのレベルを測定した。全網膜に対するリアルタイム定量的PCR(RT-qPCR)は、SEMA3Aが、P10での高酸素圧(血管退行性)期およびP12~P17での虚血/新生血管段階の両方の間に、OIRにおいて確実に誘導されたことを明らかにした(
図4A)。観察された誘導は、野性型およびLysM-Cre/Nrp1fl/fl網膜の両方で発生した。逆に、予測したように、VEGF転写物は、P12~P17のOIRの虚血性期においてのみ上昇した(
図4B)。重要なのは、野性型網膜に比べて、VEGFのLysM-Cre/Nrp1fl/flにおける誘導が著しく少く、P12でわずかに増加し(P=0.0451)、P14で野性型OIRに比べて約55%低く(P=0.0003)(
図4B)、これは、より健康な網膜であることを示すことである。
【0215】
次に、無血管ゾーン中の網膜層に対しレーザー・キャプチャー・マイクロダイセクション(LCM)、続けて、RT-qPCRを行い、OIRにおけるSEMA3AおよびVEGFメッセージの発生源を特定した(
図4C)。SEMA3AおよびVEGFの両方が神経節細胞層中で確実に誘導され、VEGFは内顆粒層中でも増加している(
図4D、E)。したがって、両リガンドの発生源は、網膜MPの局在化(
図2)と位置的に一致している。
【0216】
実施例6
単核貪食細胞(MP)は血管傷害後、網膜中で増殖しない
NRP1+ MPの顕著な上昇が体循環からの流入によるのか、または網膜内のMP増殖の増加によるのかを明らかにするために、これらの細胞の局所的網膜増殖を調査した。マウスに、P13でBrdUを全身注入し(屠殺の24時間前)、網膜(
図5A)および脾臓(
図5B)のFACS分析を行った。網膜内で、Gr1-/CD11b+/F4/80+ MPは、顕著な増殖を示さなかった(P=0.4708)。脾臓中では、かなり多い増殖が観察された。正常酸素圧とOIRとの間では大きな差異は観察されなかった(
図5C)。網膜中でのMPの増殖の欠除は、網膜症の間の顕著な付着物NRP1+ MPが、全身起原を有することを示唆している。
【0217】
実施例7
SEMA3AおよびVEGF
165はNRP1を介してMPを動員する
骨髄細胞の血管病変の部位への動員(
図1)のためのNRP1の要件ならびに網膜症におけるNRP1の主なリガンドの誘導(
図3~4)およびこれらの細胞の考えられる全身起原(
図5)を考慮して、MP走化性を誘発するこれらのキューの性質を明確にした。初代マクロファージ培養物を野性型マウスから単離し、トランスウェルボイデンチェンバ遊走アッセイに供した。SEMA3A(100ng/ml)(p<0.0001)およびVEGF
165(50ng/ml)(P=0.0027)の両方は、陽性対照MCP-1(100ng/ml)(p<0.0001)と類似の程度にマクロファージ走化性を誘発した(
図6A、B)。これらのデータを、Y-27632:選択的阻害剤ROCK(Rho結合コイルドコイル形成タンパク質セリン/トレオニンキナーゼ)がそれらの走化特性を消滅させることを示して検証した。ROCKは、NRP1シグナル伝達の下流にあり(40)、単球遊走を媒介することが知られている(41)。VEGF遊走を、部分的に減少させ、それほど著しく減少させてはいないことは、最近報告されたVEGFR1などの別の受容体からの寄与を示唆している(33)。SEMA3AおよびVEGF媒介走化性におけるNRP1に対する役割と一致して、LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス由来のマクロファージはMCP-1に特異的に応答し、SEMA3AまたはVEGFによっては動員されない(
図6C)。
【0218】
実施例8
NRP1+マクロファージは、エクスビボ毛細血管新芽形成を増強する
NRP1発現マクロファージの毛細血管の血管新生に対する影響を調査するために、LysM-Cre/Nrp1
+/+マウスまたはLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス由来の脈絡膜層組織を単離し、マトリゲル(商標)中で増殖させて、毛細血管の新芽形成を評価した。LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス由来の脈絡膜層は、LysM-Cre/Nrp1
+/+マウスと比較して、約20%少ない微小血管を発芽する(P=0.018)(
図7A)。毛細血管の新芽形成の促進におけるNRP1
+マクロファージの役割を調査するために、クロドロン酸リポソームを使って、内在性マクロファージを単離脈絡膜層組織から除去した。LysM-Cre/Nrp1
fl/flおよびLysM-Cre/Nrp1
+/+マウスの両方由来の外植片では、リポソーム含有PBS(すなわち、ビークル対照)は、血管の新芽形成に対し影響を与えなかったが、クロドロン酸リポソームは、毛細血管の新芽形成を約60%低減させた(LysM-Cre/Nrp1
+/+脈絡膜層ではP=0.0114、LysM-Cre/Nrp1
fl/fl脈絡膜層ではP=0.0007)(
図7B~E)。NRP1
+マクロファージが血管新生を促進する性質を有するかどうかを検証するために、腹膜マクロファージをLysM-Cre/Nrp1
+/+またはLysM-Cre/Nrp1
fl/flマウスから抽出し、前もってクロドロン酸リポソームで処理し、洗浄した脈絡膜層外植片培養液中に導入した。LysM-Cre/Nrp1
+/+マクロファージは、LysM-Cre/Nrp1
fl/flマウス由来のマクロファージに比べて、毛細血管の新芽形成を50~100%確実に増強し(LysM-Cre/Nrp1
+/+脈絡膜層ではP=0.0068、LysM-Cre/Nrp1
fl/fl脈絡膜層ではP=0.0491)(
図7DおよびE)、脈絡膜外植片の遺伝子型には無関係であった。
【0219】
実施例9
骨髄常在性NRP1の欠損は、網膜症における血管変性および病理学的血管新生を減らす
OIRの初期段階中のMP浸潤におけるNRP1細胞内シグナル伝達に必須の役割(
図1)を考慮して、NRP1の骨髄細胞特異的除去の疾患の進行に与える影響を次に明確にした。P12で、75%O
2から出す際に、LysM-Cre/Nrp1fl/flマウスは、野性型(P=0.0011)およびLysM-Cre/Nrp1+l+(P<0.0001)対照に比べて、著しく低レベルの網膜血管喪失を示した(8A、B)。これは、LysM-Cre/Nrp1fl/flマウスの網膜中に存在する、より低いレベルのIL-1βが原因である可能性がある(データは示さず)。重要なのは、P17で、病理学的血管新生ピークの場合(26)、骨髄常在性NRP1の欠失が無血管領域を大きく低減させたことである(野性型と比較した場合に約35%(P<0.0001)およびLysM-Cre/Nrp1
+l+マウスと比較した場合に約30%(P=0.0008))(
図8C、D)。さらには、虚血性網膜症と関連する有害な網膜前血管新生の大きな低減が観察された(野性型と比較した場合に約36%(P=0.0008)およびLysM-Cre/Nrp1+l+マウスと比較した場合に約34%(P=0.0013))(
図8E、F)。
【0220】
実施例10
可溶性SEMA3A中和トラップの調製
SEMA3Aを阻害/中和するための高親和性トラップを生成した。これらのトラップは、ニューロピリン1(NRP1)から誘導し、任意選択で、6XヒスチジンタグまたはFCタンパク質と結合した(
図19、20および27、および表1を参照)。SEMA3A結合を維持することができる全NRP1細胞外ドメインまたは機能性変異体を含む種々の変異体を生成した。b1ドメイン(これは、VEGFに結合する)を含み、中和VEGF165変異を含むトラップを生成した。トラップは高度に発現し、形質転換ヒト細胞中で分泌されることが示された。簡単精製および処方プロトコルを開発し、後ほど行うSARおよびインビボ効力調査用のトラップ試料を産生した。
方法
【0221】
細胞培養および材料。ヒトニューロピリン1(ジェンバンク(商標)受入番号NM_003873、配列番号66)をOrigene Inc.から取得した。Origenクローンは、アミノ酸140に保存的変異を含み、これはロイシンをイソロイシンと交換する。293T(ATCC)細胞を、10%ウシ胎仔血清を補充したダルベッコ変法イーグル培地中で増殖させた。pFUSE-hIgG1-Fc1ベクターをInvivoGen Inc.から購入した。
【0222】
クローニング。ニューロピリン-1の細胞外ドメイン(残基1~856)、またはその一部を、Phusion(商標)高忠実度ポリメラーゼ(New England Biolabs)を使ってOrigeneクローンRC217035からPCRで増幅し、pFUSE-hIgG1-Fc1のEcoR1-BglIIにヒトFC-1コード配列とインフレームでクローニングした。TEVプロテアーゼ切断部位とそれに続く6X His残基および対応するFC構築物のFCコード部分の上流に停止コドンをコードする配列を挿入することにより、可溶性タイプのトラップをコードする構築物を生成した。追加の欠失(b1、b1b2)またはVEGF165結合変異(例えば、Y297A)を、Q5部位特異的変異誘発キット(NEB)を使って導入した。全構築物配列をSangerシーケンシング(Genome Quebec)により実証した。組み立てたトラップのヌクレオチドおよびアミノ酸配列を
図20及び27に示す。
【0223】
ヒト細胞中のトラップの発現の評価。マウスおよびヒトトラップをコードする構築物を293T細胞に遺伝子導入した。FreeStyle(商標)293培地(Invitrogen)中で形質導入後、細胞を48時間増殖した。形質導入の48時間後、細胞ライセートを293T細胞から調製した。細胞をPBSで十分に洗浄し、標準的量のプロテアーゼ阻害剤(AEBSF、TPCK、TLCK、アプロチニン、ロイペプチン、ペプスタチンおよびE64、Sigma)を補充した氷冷リシスバッファー(50mMヘペス pH7.5、150mM NaCL、1.5mM MgCl2、1%トリトンX-100および10%グリセロール)で溶解した。細胞ライセートを微量遠心分離(12000g、20分)で清澄化した。ライセート濃度は、標準的マイクロBCA(Sigma)により測定した。等量のタンパク質を5~20%PAGE-SDS勾配ゲルにロードし、PVDF(Amersham)に転写した。遺伝子導入細胞からの清澄化した培養上清を、FCまたは6xヒスチジンタグ用のプロテインAセファロース(Pharmacia)またはTalonレジン(Clontech)と共にインキュベートした。レジンをPBSで洗浄し、2X PAGE-SDS試料緩衝液に希釈後、ゲル分離および転写を行った。イムノブロッティングに使用した抗体は、抗ヒトニューロピリン-1(Cell signaling)、マウスモノクローナル抗6X-HIS(InVitrogen)およびレポーターHRP結合抗ヒト、マウスおよびウサギIgG(BioRad)であった。全抗体を1/2000の希釈で使用した。膜をECL(Amersham)と共にインキュベーション後、化学発光シグナルをFujiイメージングシステムを使って取得した。
【0224】
トラップ発現および精製。293-T細胞に、種々のトラップをコードしたプラスミドを、ポリエチルアミン(PEI)またはリン酸カルシウム沈殿による標準的遺伝子導入法により遺伝子導入した。翌日、細胞を無血清培地で2回洗浄し、無血清完全培地(Free style293培地、InVitrogen)を加えた。無血清培地中で60~72時間の増殖後、培養上清を採取し、スイングバケットでの遠心分離により壊死細胞片を清澄化した(2000RPM、20分)。プロテインAまたはGセファロース(Pharmacia)を通過させ、続けて、PBSで十分に洗浄し、0.1Mのグリシン(pH3.0)で溶出することにより、FCトラップを遺伝子導入293T細胞の培養上清から精製した。1/10体積の1M トリス(pH8)および1/10体積の10X PBS(pH7.4)の添加により、溶出画分を直ちに中和した。Talonアガロース(Clontech)上を通過させ、続けて、PBSで十分に洗浄し、段階的にイミダゾール溶出(通常、10~150uMの範囲)することにより、可溶性6Xヒスチジンタグトラップを遺伝子導入293T細胞の培養上清から精製した。トラップの精製画分の試料を、5~15%または5~20%勾配PAGE-SDSゲルで分析した。ゲルをSafely Blue染色キット(InVitrogen)を使って染色した。
【0225】
インビボ注入用の精製トラップの無菌処方。40mlの培養上清からの精製溶出画分をプールし、PBSで10mlの全体積に希釈した。希釈トラップタンパク質を0.2uMの低タンパク質結合フィルタ(Progene)を通してろ過することで滅菌した。タンパク質溶液を濃縮し、無菌のPES濃縮装置(Pierce、名目MWCO 30KD)によりPBSで緩衝液交換した。無菌濃縮トラップ試料(約30~50ul)を、上述のようにPAGE-SDSで分析および染色した。
【0226】
実施例11
SEMA3AおよびVEGFに対するトラップの親和性
AP-VEGF165の産生。ヒトVEGF165変異体1(NM_001025366)のコード配列を、pAPtag5ベクター(GenHunter)に、アルカリフォスファターゼドメインとインフレームで、サブクローニングした(AP-VEGF165)。ポリエチレンイミン(PEI)遺伝子導入法を使って、HEK293T細胞にAP-VEGF165構築物を遺伝子導入した。一晩の形質導入段階後、無血清培地(In vitrogen)中で細胞をさらに60時間培養した。細胞培地を集め、PES装置(Pierce)で濃縮した。濃縮したAP-VEGF165リガンドをPAGE-SDSで分析し、SimplyBlue safe stain(Life technologies)を使って定量化した。
【0227】
Sema3AおよびAP-VEGF165結合アッセイ。SEMA3AまたはVEGF165に対する結合KDの決定用の飽和曲線を下記のようにして取得した。高タンパク質結合96ウエルプレート(Maxisorp,Nunc)ウエルをPBS中希釈精製トラップでコートし、その後、結合バッファー(2%カゼインおよび0.05%ツイーン20を含むPBS)でブロッキングした。SEMA3A-FC(R&D systems)またはAP-VEGF165リガンドを広範囲の濃度にわたり結合バッファーで希釈し、ウエルに加えた。一晩のインキュベーション後、ウエルを0.05%のツイーンを含むPBSで洗浄した。結合SEMA3a-FCをHRP結合抗ヒトIgG(Biorad)およびECL基質(Pierce)を使って検出した。あるいは、結合AP-VEGF165をCPDスター基質(Roche)で検出した。化学発光シグナルをTECANリーダーで取得した。Graph Pad prism softwareを使って、解離定数(KD)を非線形曲線フィッティングにより決定した。
【0228】
本発明のSEMA3AおよびVEGFに対するトラップの相対的親和性を評価した。トラップを実施例10に記載のように調製した。試験したトラップの模式図も
図19に示す。
【表4】
【0229】
本発明の可溶性NRP1トラップは、VEGFよりSEMA3Aに対し、より効率的に結合する。このようなSEMA3Aに対する選択性は、意外であった。理由は、SEMA3AおよびVEGFは通常、NRP1に対し、同じ全体的親和性を有すると考えられているためである。SEMA3Aに対し増加した親和性は、SEMA3A阻害がVEGFの阻害よりも好ましく、VEGF阻害に関連する副作用を減らし得る条件下では、有利であろう。
【0230】
実施例12
硝子体内への可溶性NRP1の治療投与が、網膜症におけるMP浸潤および病理学的血管新生を減らす
上記知見の技術移転の可能性を明確にするために、可溶性組換えマウス(rm)NRP1 mTrap1ポリペプチド(配列番号25のドメインa1、a2、b1、b2およびcを含む
図19Cおよび20R)をOIR誘導NRP1リガンドを捕捉するためのトラップとして、次に採用した。P12でのrmNRP1の単回の硝子体内注射により、P14でのOIRに晒された網膜中に存在するミクログリアの数の30%の低減(P=0.0282)がもたらされる(
図9A)。この知見は、可溶性NRP1(1μlの50μg/ml)のミクログリア動員を損なう効力を立証する。可溶性NRP1の硝子体内投与が、ビークル注射対照に比べて、病理学的網膜前血管新生の約40%の顕著な減少を誘発した(P=0.0025)(
図9B、C)。上記の結果は共に、これらのデータが、NRP1のリガンドの中和が網膜症における有害な血管新生の低減に効果的な戦略であることを示唆している。
【0231】
実施例13
敗血症モデル-実施例14~19に対する材料と方法
敗血症マウスモデル。研究は、カナダ動物管理協会による研究における動物使用に関するカナダのガイドラインによる規制に従って行われた。LPS注射を6~8週齡のC57BL/6マウスの腹腔内(i.p)に行った。
【0232】
生存アッセイ。生存データの生成のために、25mg/kgのLPSを、マウス重量に調節されたほぼ100ulの体積で、腹腔内単回注射することによりマウスを刺激した。その後、カナダ動物管理協会により定められた危険限界点に達するまで、マウスをモニターした。
【0233】
炎症促進性サイトカインの測定。炎症促進性サイトカインの評価のために、マウスを15mg/kgのLPSの単回腹腔内注射により、i.p刺激し、24時間までの種々の時点で屠殺した。組織(脳、肝臓、腎臓)を取り出し、GenElute(商標)Mammalian Total RNA Miniprep Kit(Sigma)を用いてmRNA単離し、ゲノムDNAの増幅を防ぐためにDNアーゼIで消化した。M-MLV逆転写酵素を使って逆転写を行い、ABI BiosystemsリアルタイムPCR装置でSybr Greenを使って遺伝子発現を解析した。βアクチンをリファレンス遺伝子として使用した。
【0234】
初代腹膜マクロファージ培養。成体WTまたはLyzMcre/NRP1fl/flマウスを酸素2L/分中の2%イソフルランで麻酔し、その後、頸部脱臼により安楽死させた。その後、マウスの腹部皮膚の小切開を行った。皮膚をマウスのそれぞれのサイズに引っ張り、腹膜腔を5mlのPBS+3%FBSで2分間洗浄した。その後、採取した細胞を1000rpmで5分間遠心分離し、培地(DMEM F12+10%FBSおよび1%ストレプトマイシン/ペニシリン)中に再懸濁し、平板培養した。5%のCO2雰囲気下、37℃で1時間の培養後、培地を交換した。
【0235】
細胞数測定ビーズアレイ(CBA)。製造業者(BD Bioscience)のガイドラインに従ってCBAを行った。マクロファージを、野生型またはLyzMcre/NRP1fl/flマウスから単離し、SEMA3A(100ng/ml)またはビークルに12時間晒し、CBAにより処理した。
【0236】
トラップおよび抗VEGF抗体投与。マウスの敗血症実験モデルをヒトまたはマウスNRP1トラップ-1(
図19B、Cおよび20A、20R、配列番号25または配列番号83)またはVEGF中和抗体(R&D Systems、AF-493-NA)で処置した。
【0237】
実験設計:群当たり3匹のマウス。群:1-ビークル、2-LPS、および3-LPS+NRP1トラップ;1-ビークル:NaCl、2-LPS:15mg/kg、および3-LPS+NRP1-トラップ:マウスは、LPS注射の数分後、4ug(100uLの体積中の)の組換えマウスNRP1トラップ(0.2mg/kgに相当)の単回静注を受けた。
【0238】
透過性試験。透過性アッセイのために、15mg/kgのLPSの単回腹腔内の注射によりマウスをi.p刺激し、24時間後、組織サンプリングのために屠殺した。組織中のEvans Blue(EB)血管外漏出を定量化することにより、肝臓、腎臓、および脳血管透過性の変化を評価した。24時間後、EBの10mg/mlの溶液を静脈内に注入した(55mg/kg)。2時間後、マウスを屠殺し、心臓を通してPBSで潅流した。その後、組織を取り出し、室温で24時間乾燥させ、乾燥重量を測定した。EBをフォルムアミド中、65℃で一晩抽出した。その後、分光光度計を用いて、620nmおよび740nmでEBを測定した。
【0239】
リアルタイムPCR分析。GenElute(商標)Mammalian Total RNA Miniprep Kit(Sigma)を用いてRNAを単離し、ゲノムDNAの増幅を防ぐためにDNアーゼIで消化した。M-MLV逆転写酵素を使って逆転写を実施し(Life Technologies)、ABI BiosystemsリアルタイムPCR装置でSybrGreen(BioRad)を使って遺伝子発現を解析した。βアクチンをリファレンス遺伝子として使用した。使用したオリゴヌクレオチド配列の詳細に関しては、下表3を参照されたい。
【表5】
【0240】
実施例14
セマフォリン3Aは、敗血性ショック中にいくつかの器官で発現上昇している
OIRにおけるSEMA3A、NRP1および自然免疫応答の間の関連(上記実施例2~9で示すように)を考慮して、全身性炎症におけるNRP1依存性細胞応答の意味を次に評価した。これは、最初、敗血性ショック中のSEMA3A発現の動力学を測定することにより調査した。
【0241】
LPSを6~8週齡のC57BL/6マウス(n=5)に投与(15mg/kg)し、マウスを、LPS投与の0、4、8、12および24時間後に屠殺し、脳、腎臓、肺および肝臓などの重要な器官を集め、mRNAを単離した。LPS注射後既に6時間で、全ての解析された器官において、いくつかのレベルのSEMA3A mRNAが確実に誘導され、24時間持続した(
図11A~D)。同様に、別のNRP1リガンド、VEGFの発現レベルも、敗血性ショックの最初の6時間以内に、腎臓(
図11B)、肺(
図11C)および肝臓(
図11D)において極めて増加した。古典的な炎症促進性サイトカインのTNF-αおよびIL1-βの増加は、LPS投与6時間後に上昇し、VEGF mRNAと同様に減少した(
図12)。したがって、炎症調査した全てのメディエーター中で、SEMA3Aが長期動力学的プロファイルを有し、敗血症誘導後、少なくとも24時間にわたり上昇のままでとどまった。このSEMA3Aの特定の発現プロファイルは、その敗血性ショックに対する寄与が、その他のサイトカインに比べて、長く続き得ることを示唆している。
【0242】
実施例15
SEMA3Aは骨髄細胞中でNRP1を介して炎症促進性サイトカインの分泌を誘導する
単球および骨髄細胞の急性炎症反応に対する寄与および骨髄細胞上のNRP1の存在を考慮して、炎症性サイトカインの産生におけるSEMA3Aおよび骨髄常在性NRP1の寄与を明らかにした。
【0243】
単離マクロファージをSEMA3A(100ng/ml)またはビークルに暴露し、細胞数測定ビーズアレイ(CBA)によりサイトカインの産生を分析した。
図13に示す結果は、SEMA3Aが、IL-6(
図13A)およびTNF-α(
図13B)などの、敗血性ショックに寄与することが知られている炎症促進性サイトカインの産生/分泌を誘導することができることを示す。特に重要なのは、骨髄細胞中のNRP1の特異的ノックアウト(LyzM/NRP1
fl/fl)が、SEMA3A誘導IL-6およびTNF-αの産生を抑止したことである。特に、ビークル処置対照LyzM/NRP1
fl/flマクロファージは、野性型対照より少ないIL-6、TNF-αおよびIL-1βの産生を示し、骨髄常在性NRP1の敗血症誘導炎症における役割を明確にした。
【0244】
実施例16
骨髄常在性NRP1の欠損は、敗血症における炎症促進性サイトカインのインビボ産生を減らす
骨髄常在性NRP1はIL-6およびTNF-αなどのインビトロでの炎症促進性サイトカインの放出にとって重要であったので、インビボでのその寄与を次に調査した。LyzM/NRP1
fl/flおよび対照野性型マウスにビークルまたはLPS(15mg/kg)を投与し、脳および肝臓をLPS注射の6時間後に集めた。TNF-α(
図14A、C)およびIL-1b(
図14B、D)レベルのリアルタイムPCR分析は、LyzM/NRP1
fl/fl中のこれらのサイトカインの比較的大きい低下を示した。これらの結果は、敗血症のインビボ発生に対するNRP1およびそのリガンドの大きな寄与を明確に示す。
【0245】
実施例17
NRP1シグナル伝達の阻害が、敗血症誘導バリア機能破壊を防ぐ
しかし、臓器不全の一因となると思われる、重篤な敗血性ショックの病理学的機構の1つは、血液関門(肺の血液と空気、腎臓の血液と尿、肝臓の血液と胆汁、および脳中の体液分子)の損傷である。血液網膜関門の破壊におけるSEMA3Aの役割(46)および敗血症中のSEMA3Aの発現に関する本件の新規データを考慮して、ヒトNRP1の細胞外ドメイン由来のトラップによるSEMA3Aの中和の効果を評価した(トラップ-1(FC含まず)、
図19B、配列番号83)。Evans Blue透過性(EBP)アッセイを使って、我々は、マウスが4ugのNRP1由来トラップ(0.2mg/kg、i.v.)で処置された場合、調査した全器官、すなわち、脳(
図15A)、腎臓(
図15B)および肝臓(
図15C)において、LPS誘導バリア機能破壊の顕著な減少が観察されることを見出した。これらの結果は、可溶性NRP1およびその誘導体のトラップが敗血症を阻止するための注目すべき治療薬であることを強く示唆している。
【0246】
実施例18
NRP1由来トラップは、敗血症から保護する
敗血症中のNRP1リガンドの中和またはNRP1阻害の治療効果を明らかにするために、生存調査を行った。高用量のLPS(25mg/kg)をマウスに投与した。その後、マウスをモニターし、適切な終了点に到達すると、倫理的に屠殺した。第2の群では、マウスに4ugの組換えトラップ-1(FC含まず)(0.2mg/kg、
図19Bおよび20A、配列番号83)をi.v.注射し、続いて、LPS腹腔内の注射を行った。対照群では、LPS注射後の最初の30時間以内に、5/5マウス(100%)が死亡した(
図16A)。逆に、トラップで処置した全てのマウスが、30時間後でもまだ生存し、大きく改善された60時間後の生存率(3/5)を示した。したがって、死亡率は、30時間後の100%(対照群の)から、60時間後の40%(
図16A)まで低下した。さらに、40%のトラップ処置マウスは、LPS注射の80時間後に生存したままであった。したがって、生存時間は、NRP1を通る細胞内シグナル伝達を阻害した場合、60%の場合で少なくとも2倍、40%の場合でほぼ3倍であった。
【0247】
類似の結果は、骨髄細胞中のNPR1の特異的ノックアウトを含むマウスでも得られた(
図16B)。骨髄細胞中のNRP1の非存在は、生存時間を延長し、敗血症誘導死亡率(3/5)を30時間後で100%から40%に減らし(
図16B)、60時間後で100%から40%に減らした。さらに、40%のNRP1ノックアウトマウスは、LPS注射の80時間後に生存したままであった。
【0248】
まとめると、これらの結果は、敗血症処置におけるNRP1依存性細胞内シグナル伝達の阻害による治療効果を明らかにしている。
【0249】
実施例19
NRP1由来トラップは、敗血性ショックにおける炎症性サイトカインの産生を低下させる
NRP1-トラップの敗血性ショックにおける生存率に対する治療効果を考慮して、敗血性ショック中の炎症性サイトカインの産生に与えるNRP1リガンドの中和の影響を、次に明らかにした。野性型マウスに、i)ビークル(n=3)、ii)LPS(15mg/kg、n=3)またはiii)LPSおよびNRP1マウストラップ1(FC不含、
図19C、配列番号25(FC領域不含))を投与し、LPS注射6時間後に脳を採集した。NRP1トラップ-1の注射は、TNF-α(
図17A)およびIL-6(
図17B)の産生を顕著に低減させた。同様に、NRP1欠損骨髄細胞(LyzM-Cre/Nrp
fl/fl)を有するマウス(n=3)は、大幅に少ないTNF-αおよびIL-6を産生し、この細胞経路の敗血性ショックの進行に対する寄与を明らかにした。
【0250】
実施例20
実施例21に記載の脳虚血/脳卒中モデルの材料と方法
この調査で使用したマウスは、2~3月齢の雄C57Bl/6マウス(22~28g)であった。
【0251】
MCAOモデル。Rousselet et al.(66)により記載の腔内縫合技術を使用してMCAOマウスモデルを機能させた。簡単に説明すると、酸素(1L/分)中の3%イソフルランを含むチャンバー中でマウスを麻酔し、ブプレノルフィン(皮下に、0.1mg/kg体重)で鎮痛化した。顔マスク経由で供給された酸素中の1.5%のイソフルランを使用して、手術中に麻酔を維持した。直腸温を記録し、加温パッドを使って、37±0.5℃で安定に保持した。頸部の正中切開後、右頸動脈分岐部を露出させ、5-0絹縫合糸を使って総頸動脈(CCA)を一時的に閉塞した。右内総頸動脈(ICA)および外総頸動脈(ECA)の分岐部を分離した。永続的な縫合糸をECAのまわりで、可能な限り遠位に配置し、わずかに堅く締め付けた別の一時的縫合糸を分岐の遠位のECA上に配置した。右ICAを5-0絹縫合糸で一時的に閉塞し、出血を回避した。その後、ECAの永続的な縫合糸と一時的縫合糸との間に小孔を形成し、それを通して12mm長さの6-0シリコンコート(約9~10mmをシリコンでコートした)モノフィラメント縫合糸を導入した。このフィラメントをECAからICAの管腔中を、ウィリス動脈輪中の中大脳動脈(MCA)の起始部を封鎖するまで前進させた。モノフィラメントをCCA中に挿入しているが、MCAまでは前進させないことにより、シャム動物を得た。ECA上の縫合糸を堅く結び、モノフィラメントを適切な位置に固定した。MCAO後30分で、モノフィラメントを完全に取り出し、再灌流を可能とした。CCA上の一時的縫合糸を同様に取り出し、血液再循環を可能とした。創傷が閉じた後、1mlの食塩水を皮下に注射し、手術後脱水を回避した。マウスをケージに置き、加温パッド上で1時間保持した。その間に、マウスが完全に麻酔から目覚めると、そのマウスのいくつかの基本的運動障害を調べ(歩行中の回旋および尾を保持中の屈曲;手術の成功の指標)、NRP1-トラップ-1(FC不含)(
図19B、配列番号83)を125ulのPBS中0.4ugの用量で尾静脈に投与した(再灌流開始の約15分後)。対照動物は、MCAO後にビークル(PBS)を受けたNRP1処置動物と同じ方法で手術された。手術後重量減少が通常観察されるので、すりつぶした食物をペトリ皿上に置いて、摂食を促進した。
【0252】
梗塞体積の測定。MCAO後に24時間行われた神経学的評価(下記セクション参照)後、酸素(1L/分)中の3%イソフルランで動物を深く麻酔し、断頭した。脳を直ちに単離し、ドライアイス上の冷却イソペンタン中に移した後、-80℃で貯蔵した。その後、凍結脳を-22℃のクライオスタット中で冠状に20μm切片に切断し、15スライス毎に正に帯電したスライドガラス上にマウントした。脳切片をクレシルバイオレットで15分間染色した。各切片を撮影した。虚血領域中の梗塞領域を相対的染色欠除に基づいて描写し、NIH ImageJソフトウェアを使って測定した。各断面の梗塞領域を、反対側半球の総面積-同側半球の無影響領域、として決定した。
【0253】
神経学的評価。手術の1時間後、ならびにMCAOの24時間後、動物を一連の運動テストに供した。試験およびスコアリングは、以下の通りとした:0、正常;1、尾で動物全身を持ち上げた時に反対側に起こる前肢または後肢の屈曲;2、歩行中の反対側への回旋および尾を保持中のC形状横曲げ;4、歩行中の反対側への回旋および尾を保持中の四肢屈曲を伴うC形状横曲げ;5、昏睡状態または瀕死。得られたニューロスコアの大きさは、障害の重症度に直接正比例する。
【0254】
実施例21
NRP1-トラップは、脳虚血および脳卒中から保護する
SEMA3A中和が脳虚血または脳卒中に与える結果を評価するために、成体(8~12週齢)マウスを一時的な中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルとした。実験の詳細は、実施例20で提供される。簡単に説明すると、MCAOの終了後、マウスNRP1-トラップ(トラップ-1(FC不含))の125ulのPBS中の0.4ug(
図19C、
図20R、配列番号25)を尾静脈に投与した(再灌流開始の約15分後)。MCAOにより誘導された脳損傷を可視化するために、冠状大脳切片をクレシルバイオレットで染色した。それぞれの切片上で、未染色領域は、脳の虚血領域に対応する(
図18A)。連続冠状大脳切片のこれらの領域の測定により、MCAOの24時間後に、梗塞ゾーンは、脳が損傷されていないシャム手術動物に比べて、閉塞マウスにおける同側半球の48%になることが明らかになった。NRP1処置は、脳損傷を低減した;同側半球の梗塞体積を80%低減した(
図18B、C)。
【0255】
身体の四肢屈曲、C形状横曲げおよび回旋運動の存在の神経学的スコアリングにより神経学的障害を評価した。手術の1時間後に回旋および屈曲挙動を示さなかったMCAOマウスを以降の調査から除外した(
図18D)。MCAOを受けたマウスの前肢または後肢屈曲、身体のC形状横曲げ、回旋運動を、シャム手術動物と比較して観察した。手術後24時間で評価した場合、NRP1処置は、非処置MCAOマウスと比べて、虚血性マウスの神経学的スコアを劇的に60%も改善した(
図18E)。
【0256】
まとめると、これらの結果は、NRP1経路の阻害が、脳虚血および脳卒中から保護し、脳虚血および脳卒中に関連する神経学的障害を低減することを示している。
【0257】
実施例22
糖尿病性網膜症および未熟児網膜症のマウスモデルで、虚血性網膜におけるニューロピリン由来トラップは、血管再生を強化し、病理学的血管新生を防ぐ
酸素誘導された増殖網膜症(OIR)のよく確立されたマウスモデル(Smith et al.,1994)を使って病理学的血管変性ならびに網膜前血管増殖を調査した。このモデルは、未熟児網膜症(ROP)を基準にしており、増殖性(血管新生期)の糖尿病性網膜症およびROPの代用として、度々使われる。
【0258】
乳母およびそれらの仔を、P7~P12にわたり75%酸素に暴露した。血管退行性(P12で評価)および血管増殖性(P17で評価)期の両方が存在し、高度に再現可能であり、疾患進行に対する介入評価を正確かつ迅速にする。トラップG(配列番号38)、またはトラップM(b2およびcドメインを欠く、配列番号42)をP12の硝子体に注射した(0.5ug/ulの1ul)。切開した網膜をフラットマウントし、1mMのCaCl2中の蛍光標識イソレクチンB4(1:100)と共に一晩インキュベートし、P17での無血管領域または血管新生領域の広さを測定した。レクチン染色網膜中の無血管領域を、染色を欠くゾーンとして測定した。血管新生を、網膜前タフトを囲む、飽和レクチン染色の領域として測定した(54、55)。
【0259】
トラップGは、ビークル対照と比較して、血管再生を40%を超えて効果的に高めることが示された(
図23B)。同様に、トラップGは、病理学的血管新生を約45%抑制することが示された(
図23C)。トラップ-Mは、ビークル対照と比較して、血管再生を約60%高め(
図23B)、病理学的血管新生を約60%抑制した(
図23C)。したがって、トラップMは、損なわれたVEGF結合により、虚血性網膜における病理学的血管新生をより効果的に防ぎ、また、向上した血管再生をより容易にもたらす。
【0260】
実施例23
ニューロピリン由来トラップは、糖尿病性網膜における血管漏出を減らす
糖尿病性網膜症におけるトラップの血管漏出/透過性に対する効果は、1型糖尿病のストレプトゾトシン(STZ)モデルにおいても調査された。STZ(55mg/kg)を約6週齢のC57BL/6Jマウスに連続5日間にわたって投与し、血糖をモニターした。マウスは、非絶食状態での血糖が17mM(300mg/dL)より高い場合に糖尿病とみなした。マウスに、0.5ug(0.5ug/ul)のトラップG(配列番号38)またはトラップM(配列番号42)を、またはマウス抗VEGF抗体(AF-493-NA、R&Dから入手)を、STZ投与の6および7週後に、硝子体内に投与した。あるいは、STZ投与後12および13週目にマウスの硝子体内に注射し、血管透過性を14週目に評価した。マウスは、SEMAトラップ(
図24A参照)または抗VEGF抗体の硝子体内注射の少なくとも3週前には、高血糖性/糖尿病性であった。STZ注射の8週後に、Evans Blueアッセイにより網膜血管漏出を以下のように測定した。網膜Evans Blue(EB)透過性を、読み当たり3個の網膜を使って実施した。45mg/kgのEvan Blueを静脈内に注射し、網膜抽出の前に、2時間にわたり循環させた。網膜におけるEvans Blue透過性を、TECAN Infinite(登録商標)M1000PROを使って、蛍光定量法(620nm最大吸光度-740nm最小吸光度(バックグラウンド))により定量化した。Evan Blue透過性(EBP)[uL/(グラム*時間)として測定]を次のように計算した:[EB(ug)/湿潤網膜重量(g)]/[血漿EB(ug/uL)*循環時間(時間)]。Evans Blue透過性を対照と比較して示した。
【0261】
トラップ-G(配列番号38)およびトラップ-M(配列番号42)の両方が、血管透過性を40%を超えて著しく低減させた(
図24B)。マウス抗VEGF抗体(AF-493-NA)は、この初期段階では、血管透過性を防止しなかった。トラップGは、P17で、抗VEGF中和抗体と同様に、血管漏出の低減に効果的であった(
図24C)、*P<0.05、12匹の動物からn=4。
【0262】
実施例24
ニューロピリン由来トラップは、加齢黄斑変性モデルの脈絡膜新生血管を低減する
NRP1トラップG(配列番号38)の脈絡膜新生血管(CNV)に対する効果を、加齢黄斑変性(AMD)のマウスモデルで測定した。マウスのCNV、したがって、模倣湿潤AMDを誘導するために、6~8週齡のマウス(1~2乳頭直径)に、コヒーレントスリットランプ(400mW、50msおよび50μm)上にマウントしたアルゴンレーザー(532nm)を使って乳頭からレーザー凝固術を行った(Combadiere et al.,2007)。レーザー照射後、処置マウスに0.5ugのトラップGを硝子体内に注射した。14日(P14)後、脈絡膜層を半径方向に切開し、フラットマウントし、内皮細胞マーカーの蛍光標識イソレクチンB4で染色し(また、動物を任意選択で、フルオレセインデキストランで潅流し、管腔内血管を可視化した)、レーザー走査型共焦点顕微鏡によりCNVの体積を測定した(Takeda et al.,2009)。
【0263】
トラップGは、レーザー照射14日後に脈絡膜新生血管を著しく低減することが示された(
図25B)。
【0264】
請求項の範囲は、実施例で示された好ましい実施形態に限定されるべきではなく、全体としての記載と一致する最も広い解釈を与えられるべきである。
【0265】
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