(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】積層装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20221214BHJP
H01M 10/0585 20100101ALN20221214BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0585
(21)【出願番号】P 2020107312
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 竜太
(72)【発明者】
【氏名】前川 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】細谷 直人
(72)【発明者】
【氏名】工原 孝博
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-013744(JP,A)
【文献】特開2012-106370(JP,A)
【文献】特開2002-170737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M 4/00- 4/62
H01G11/00-13/06
B65H29/00-31/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータと電極板とが積層された単位積層体を積層ステージ上に排出して複数の単位積層体を積層する積層装置であって、
前記単位積層体を保持する複数の積層ヘッドと、
前記複数の積層ヘッドが配列されるとともに各積層ヘッドを支持軸を介して揺動可能に保持し、回転して各積層ヘッドを前記積層ステージと対向する積層位置に進行させるドラム部と、
各積層ヘッドに接触し、前記ドラム部の回転による各積層ヘッドの移動にともなって、前記支持軸周りに各積層ヘッドを揺動させ
、前記積層位置において、前記ドラム部の回転による前記積層ヘッドの移動を相殺して前記積層ヘッドを停止させるカム部と、
各積層ヘッドを前記ドラム部の半径方向に付勢する付勢部材と、を備える、
積層装置。
【請求項2】
前記カム部は、前記ドラム部の回転に対して追従せず、前記ドラム部の円周方向に延びるカム溝を有し、
各積層ヘッドは、前記カム溝に係合する突起部を有し、前記ドラム部の回転により前記突起部が前記カム溝に沿って移動することで前記支持軸周りに揺動し、
前記付勢部材は、前記突起部を前記カム溝の側面に押し付ける、
請求項1に記載の積層装置。
【請求項3】
各積層ヘッドに設けられる第1吸引部と、
前記ドラム部における、各積層ヘッドが前記積層位置にある状態で当該積層ヘッドの前記第1吸引部と重なる位置に設けられる第2吸引部と、を備え、
前記積層位置にある積層ヘッドの前記第1吸引部と、当該第1吸引部に対応する前記第2吸引部とが互いに引きつけ合う、
請求項1または2に記載の積層装置。
【請求項4】
各積層ヘッドに設けられる第1反発部と、
前記ドラム部における、各積層ヘッドが前記積層位置にある状態で当該積層ヘッドの前記第1反発部とずれた位置に設けられる第2反発部と、を備え、
前記積層位置にある積層ヘッドの前記第1反発部と、当該第1反発部に対応する前記第2反発部とが互いに反発し合う、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層装置。
【請求項5】
各積層ヘッドに設けられる第3吸引部と、
前記積層ステージに設けられる第4吸引部と、を備え、
前記積層位置にある積層ヘッドの前記第3吸引部と、前記第4吸引部とが互いに引きつけ合う、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層装置。
【請求項6】
前記第3吸引部は、磁石、電磁石または強磁性体であり、
前記第4吸引部は、電磁石であり、
前記第4吸引部は、各積層ヘッドが前記積層位置から離間する際に磁力を低下させる、
請求項5に記載の積層装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用等の電池として、積層ラミネートタイプの電池が開発されている。この電池は、複数の正極板および複数の負極板がセパレータを挟んで交互に積層された積層電極体と、電解液とが容器に収容された構造を有する。このような電池では、高容量化、高エネルギー密度化といった電池性能向上の観点から、電極板のずれを極力減らすことが望まれる。これに対し、例えば特許文献1には、各電極板に設けた積層ずれ防止用の貫通孔に位置決めボスを挿通することで、各電極板を位置合わせすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極板に貫通孔を設けた場合、貫通孔が設けられる部分には電極活物質が存在しないため、少なからず電池容量が減少してしまう。また、位置決めボスと電極板との干渉によって電極板の損傷や活物質の剥離等が発生し、電池性能の低下を引き起こし得る。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、電池性能の向上を図る技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様は、セパレータと電極板とが積層された単位積層体を積層ステージ上に排出して複数の単位積層体を積層する積層装置である。この装置は、単位積層体を保持する複数の積層ヘッドと、複数の積層ヘッドが配列されるとともに各積層ヘッドを支持軸を介して揺動可能に保持し、回転して各積層ヘッドを積層ステージと対向する積層位置に進行させるドラム部と、各積層ヘッドに接触し、ドラム部の回転による各積層ヘッドの移動にともなって、支持軸周りに各積層ヘッドを揺動させるカム部と、各積層ヘッドをドラム部の半径方向に付勢する付勢部材と、を備える。
【0007】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電池性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施の形態に係る積層装置を模式的に示す正面図である。
【
図3】積層ヘッドの位置および姿勢の遷移を模式的に示す図である。
【
図4】付勢部材を用いた保持面の振動抑制機構を模式的に示す図である。
【
図5】第1吸引部および第2吸引部を用いた保持面の振動抑制機構を模式的に示す図である。
【
図6】第1反発部および第2反発部を用いた保持面の振動抑制機構を模式的に示す図である。
【
図7】第3吸引部および第4吸引部を用いた保持面の振動抑制機構を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、本開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
図1は、積層電極体製造装置1の模式図である。積層電極体製造装置1は、一例として複数のドラムを組み合わせた連続ドラム式の製造装置である。電極体やセパレータの切断、加熱、接着、積層等の各工程をドラムで実行することで、高速且つ連続的に積層電極体を製造することができる。積層電極体は、例えばリチウムイオン二次電池に用いられる。なお、積層電極体製造装置1の構造は、連続ドラム式に限定されない。
【0012】
積層電極体製造装置1は、第1極切断ドラム2と、第1極加熱ドラム4と、第2極切断ドラム6と、第2極加熱ドラム8と、接着ドラム10と、セパレータ切断ドラム12と、積層ドラム14と、を備える。
【0013】
第1極切断ドラム2は、複数の第1極板の連続体を切断し、複数の第1極板に個片化して搬送するドラムである。本実施の形態では、第1極は負極である。第1極切断ドラム2には、複数の第1極板の連続体である、帯状の第1極連続体Nが供給される。第1極連続体Nは、第1極集電体と、第1極活物質層とを有する。第1極活物質層は、第1極集電体上に積層される。本実施の形態では、第1極集電体の両面に第1極活物質層が積層されるが、第1極集電体の一方の面のみに第1極活物質層が積層されてもよい。
【0014】
第1極集電体および第1極活物質層は、いずれも公知の材料で構成することができ、いずれも公知の構造を有する。第1極集電体は、例えば銅やアルミニウム等からなる、箔や多孔体で構成される。第1極活物質層は、例えば第1極活物質、結着材および分散剤等を含む第1極合材スラリーを第1極集電体の表面に塗布し、塗膜を乾燥、圧延することで形成される。第1極集電体の厚さは、例えば3μm以上50μm以下である。第1極活物質層の厚さは、例えば10μm以上100μm以下である。
【0015】
第1極切断ドラム2は、ドラムの円周方向に配置される複数の保持ヘッドと、第1極連続体Nを切断する切断刃とを有する。複数の保持ヘッドは、第1極連続体Nを吸着保持する保持面を有する。各保持ヘッドの保持面は、第1極切断ドラム2の外側を向く。第1極切断ドラム2に供給される第1極連続体Nは、複数の保持ヘッドの保持面に吸着保持された状態で、第1極切断ドラム2の回転によって搬送される。
【0016】
複数の保持ヘッドは、それぞれ第1極切断ドラム2の中心軸回りに回転するとともに、他の保持ヘッドに対して互いに独立にドラムの円周方向に移動することができる。各保持ヘッドの相対的な移動は、第1極切断ドラム2を回転させるモータとは別のモータが各保持ヘッドに搭載されることで実現される。保持ヘッドの独立駆動により、切断刃による第1極連続体Nの切断位置の調整や、個片化された第1極板の位置調整等が可能となる。
【0017】
第1極切断ドラム2は、供給される第1極連続体Nを吸着保持して回転搬送し、
図1に模式的に示す切断位置16において第1極連続体Nを切断する。第1極連続体Nは、隣り合う保持ヘッドの間の位置で切断刃により切断されて、複数の第1極板に個片化される。得られた各第1極板は、各保持ヘッドに吸着保持された状態で搬送される。生成される複数の第1極板の位置は、カメラ等で監視される。
【0018】
第1極加熱ドラム4は、第1極切断ドラム2に近接配置される。第1極切断ドラム2の保持ヘッドは、第1極加熱ドラム4との近接位置の手前において、第1極加熱ドラム4の線速度と略同一になるまで一時的に増速または減速する。これにより、保持ヘッドは、第1極加熱ドラム4との相対速度が略ゼロになる。保持ヘッドは、相対速度が略ゼロになったタイミングで、吸着保持していた第1極板を第1極加熱ドラム4側に排出する。
【0019】
第1極加熱ドラム4は、第1極切断ドラム2から排出された第1極板を吸着保持しながら回転し、内蔵するヒータで第1極板を予備加熱する。予備加熱は、後の接着工程においてセパレータと第1極板とを熱接着するために実施される。本実施の形態では、加熱位置18において第1極板を加熱するが、これに限らず、例えば第1極加熱ドラム4の円周方向の全域で第1極板を加熱してもよい。
【0020】
第2極切断ドラム6は、複数の第2極板の連続体を切断し、複数の第2極板に個片化して搬送するドラムである。本実施の形態では、第2極は正極である。第2極切断ドラム6には、複数の第2極板の連続体である、帯状の第2極連続体Pが供給される。第2極連続体Pは、第2極集電体と、第2極活物質層とを有する。第2極活物質層は、第2極集電体上に積層される。本実施の形態では、第2極集電体の両面に第2極活物質層が積層されるが、第2極集電体の一方の面のみに第2極活物質層が積層されてもよい。
【0021】
第2極集電体および第2極活物質層は、いずれも公知の材料で構成することができ、いずれも公知の構造を有する。第2極集電体は、例えばステンレス鋼やアルミニウム等からなる、箔や多孔体で構成される。第2極活物質層は、例えば第2極活物質、結着材および分散剤等を含む第2極合材スラリーを第2極集電体の表面に塗布し、塗膜を乾燥、圧延することで形成される。第2極集電体の厚さは、例えば3μm以上50μm以下である。第2極活物質層の厚さは、例えば10μm以上100μm以下である。
【0022】
第2極切断ドラム6は、ドラムの円周方向に配置される複数の保持ヘッドと、第2極連続体Pを切断する切断刃とを有する。複数の保持ヘッドは、第2極連続体Pを吸着保持する保持面を有する。各保持ヘッドの保持面は、第2極切断ドラム6の外側を向く。第2極切断ドラム6に供給される第2極連続体Pは、複数の保持ヘッドの保持面に吸着保持された状態で、第2極切断ドラム6の回転によって搬送される。
【0023】
複数の保持ヘッドは、それぞれ第2極切断ドラム6の中心軸回りに回転するとともに、他の保持ヘッドに対して互いに独立にドラムの円周方向に移動することができる。各保持ヘッドの相対的な移動は、第2極切断ドラム6を回転させるモータとは別のモータが各保持ヘッドに搭載されることで実現される。保持ヘッドの独立駆動により、切断刃による第2極連続体Pの切断位置の調整や、個片化された第2極板の位置調整等が可能となる。
【0024】
第2極切断ドラム6は、供給される第2極連続体Pを吸着保持して回転搬送し、
図1に模式的に示す切断位置20において第2極連続体Pを切断する。第2極連続体Pは、隣り合う保持ヘッドの間の位置で切断刃により切断されて、複数の第2極板に個片化される。得られた各第2極板は、各保持ヘッドに吸着保持された状態で搬送される。生成される複数の第2極板の位置は、カメラ等で監視される。
【0025】
第2極加熱ドラム8は、第2極切断ドラム6に近接配置される。第2極切断ドラム6の保持ヘッドは、第2極加熱ドラム8との近接位置の手前において、第2極加熱ドラム8の線速度と略同一になるまで一時的に増速または減速する。これにより、保持ヘッドは、第2極加熱ドラム8との相対速度が略ゼロになる。保持ヘッドは、相対速度が略ゼロになったタイミングで、吸着保持していた第2極板を第2極加熱ドラム8側に排出する。
【0026】
第2極加熱ドラム8は、第2極切断ドラム6から排出された第2極板を吸着保持しながら回転し、内蔵するヒータで第2極板を予備加熱する。予備加熱は、後の接着工程においてセパレータと第2極板とを熱接着するために実施される。本実施の形態では、加熱位置22において第2極板を加熱するが、これに限らず、例えば第2極加熱ドラム8の円周方向の全域で第2極板を加熱してもよい。
【0027】
接着ドラム10は、複数の単位積層体が連続する連続積層体26を形成するドラムである。各単位積層体は、第1セパレータ、第1極板、第2セパレータおよび第2極板で構成される。接着ドラム10は、第1極加熱ドラム4および第2極加熱ドラム8に近接配置される。接着ドラム10には、複数の第1セパレータが連続する、帯状の第1セパレータ連続体S1と、複数の第2セパレータが連続する、帯状の第2セパレータ連続体S2とが供給される。第1セパレータ連続体S1および第2セパレータ連続体S2のそれぞれの表面には、熱接着層が設けられる。熱接着層は、室温では接着性を発現しないが、加熱により接着性を発現する性質を有する。例えば熱接着層は、熱可塑性ポリマーを含有する熱可塑性層であり、加熱による熱可塑性ポリマーの塑性変形に基づいて接着性を発現する。
【0028】
また、接着ドラム10には、第1極加熱ドラム4を介して第1極切断ドラム2から複数の第1極板が供給され、第2極加熱ドラム8を介して第2極切断ドラム6から複数の第2極板が供給される。第1極板は、第1極加熱ドラム4で予備加熱されながら回転搬送され、第1極加熱ドラム4と接着ドラム10との近接位置において接着ドラム10側に排出される。第2極板は、第2極加熱ドラム8で予備加熱されながら回転搬送され、第2極加熱ドラム8と接着ドラム10との近接位置において接着ドラム10側に排出される。
【0029】
接着ドラム10に対する第1セパレータ連続体S1、第1極板、第2セパレータ連続体S2および第2極板の供給位置は、接着ドラム10の回転方向の上流側から、列挙した順に並ぶ。したがって、まず所定位置において、接着ドラム10に第1セパレータ連続体S1が供給される。第1セパレータ連続体S1は、接着ドラム10に吸着保持されて、回転搬送される。続いて、第1セパレータ連続体S1の供給位置よりも下流側において、第1極加熱ドラム4から接着ドラム10に第1極板が供給され、第1セパレータ連続体S1の上に載置される。複数の第1極板は、第1セパレータ連続体S1の搬送方向に所定の間隔をあけて第1セパレータ連続体S1の上に配列される。
【0030】
続いて、第1極板の供給位置よりも下流側において、接着ドラム10に第2セパレータ連続体S2が供給され、複数の第1極板の上に載置される。続いて、第2セパレータ連続体S2の供給位置よりも下流側において、第1セパレータ連続体S1、複数の第1極板および第2セパレータ連続体S2が熱圧着ローラ24によって加圧され、これらが互いに接着される。続いて、熱圧着ローラ24による圧着位置よりも下流側において、第2極加熱ドラム8から接着ドラム10に第2極板が供給され、第2セパレータ連続体S2の上に載置される。複数の第2極板は、第2セパレータ連続体S2の搬送方向に所定の間隔をあけて第2セパレータ連続体S2の上に配列される。また、第2極加熱ドラム8の押圧力によって、複数の第2極板は第2セパレータ連続体S2に接着される。
【0031】
以上の工程により、第1セパレータ連続体S1、複数の第1極板、第2セパレータ連続体S2および複数の第2極板がこの順に積層され、接着されて、連続積層体26が形成される。連続積層体26は、第1セパレータ、第1極板、第2セパレータおよび第2極板で構成される単位積層体が、第1セパレータ連続体S1および第2セパレータ連続体S2でつながれて連続する構造を有する。連続積層体26は、接着ドラム10からセパレータ切断ドラム12に搬送される。なお、第2極切断ドラム6側から第2極板が供給されないことで、一定個数毎に、第2極板を含まない3層構造の単位積層体が生成されてもよい。また、供給されない電極板は第1極板であってもよい。
【0032】
セパレータ切断ドラム12は、連続積層体26の第1セパレータ連続体S1および第2セパレータ連続体S2を切断して、複数の単位積層体に個片化するドラムである。セパレータ切断ドラム12は、ドラムの円周方向に配置される複数の保持ヘッドと、連続積層体26を切断する切断刃とを有する。複数の保持ヘッドは、連続積層体26を吸着保持する保持面を有する。各保持ヘッドの保持面は、セパレータ切断ドラム12の外側を向く。セパレータ切断ドラム12に供給される連続積層体26は、複数の保持ヘッドの保持面に吸着保持された状態で、セパレータ切断ドラム12の回転によって搬送される。
【0033】
複数の保持ヘッドは、それぞれセパレータ切断ドラム12の中心軸回りに回転するとともに、他の保持ヘッドに対して互いに独立にドラムの円周方向に移動可能であってもよい。各保持ヘッドの相対的な移動は、セパレータ切断ドラム12を回転させるモータとは別のモータが各保持ヘッドに搭載されることで実現される。保持ヘッドの独立駆動により、切断刃による連続積層体26の切断位置の調整や、個片化された単位積層体の位置調整等が可能となる。
【0034】
セパレータ切断ドラム12は、供給される連続積層体26を吸着保持して回転搬送し、
図1に模式的に示す切断位置28において連続積層体26を切断する。連続積層体26は、隣り合う保持ヘッドの間の位置で切断刃により切断されて、複数の単位積層体に個片化される。このとき、連続積層体26の第1セパレータ連続体S1および第2セパレータ連続体S2は、連続積層体26の搬送方向で隣り合う電極板の間において切断される。得られた各単位積層体は、各保持ヘッドに吸着保持された状態で搬送される。保持ヘッドは、吸着保持していた単位積層体を積層ドラム14側に排出する。生成される複数の単位積層体の位置は、カメラ等で監視される。
【0035】
積層ドラム14は、複数の単位積層体を積層ステージ30に積層して積層電極体を形成するドラムである。積層ドラム14は、ドラムの円周方向に配置される複数の積層ヘッドを有する。各積層ヘッドは、単位積層体を吸着保持する保持面を有する。各積層ヘッドの保持面は、積層ドラム14の外側を向く。複数の積層ヘッドは、それぞれ積層ドラム14の中心軸回りに回転して、積層ステージ30と対向する積層位置に順次進行する。積層位置に到達した積層ヘッドは、保持している単位積層体を積層ステージ30に排出する。
【0036】
積層ステージ30は、積層ドラム14の直下に配置される。積層ステージ30には、積層ドラム14の各積層ヘッドから排出される単位積層体が順次積層される。これにより、積層電極体が形成される。積層ステージ30は、互いに直交するX軸方向およびY軸方向に駆動可能である。また、積層ステージ30は、X―Y平面上における傾き角を調整可能である。これにより、積層ステージ30に既に積層されている単位積層体に対する、積層ドラム14から排出される単位積層体のX軸方向およびY軸方向の位置、および傾き角が調整される。
【0037】
積層ドラム14は、本実施の形態に係る積層装置100で構成される。
図2は、実施の形態に係る積層装置100を模式的に示す正面図である。なお、
図2では、後述する付勢部材120、第1吸引部122、第2吸引部124、第1反発部126、第2反発部128、第3吸引部130および第4吸引部132の図示を省略している。
【0038】
積層装置100は、セパレータと電極板とが積層された単位積層体Wを積層ステージ30上に排出して、複数の単位積層体Wを積層する装置である。積層装置100は、複数の積層ヘッド102と、ドラム部104と、を備える。各積層ヘッド102は、単位積層体Wを保持する保持面106を有する。例えば、保持面106は、空気などの雰囲気ガスを吸引する吸引機構を有し、単位積層体Wを吸着保持することができる。
【0039】
ドラム部104は円盤状であり、複数の積層ヘッド102が円周上に略等間隔に配列される。
図2に示すドラム部104には10個の積層ヘッド102が配列されているが、積層ヘッド102の配列数は限定されない。ドラム部104に配列された状態で、各積層ヘッド102の保持面106は、ドラム部104の半径方向の外側を向く。ドラム部104は、中心軸にモータ等の駆動機構(図示せず)が連結され、中心軸周りに回転することができる。各積層ヘッド102は、ドラム部104の回転にともなって移動し、積層ステージ30と対向する積層位置Aに順次進行する。
【0040】
積層位置Aに到達した積層ヘッド102から積層ステージ30に単位積層体Wを排出する際、単位積層体Wを高い位置精度で積層ステージ30に排出するためには、各積層ヘッド102を積層位置Aで停止させることが望ましい。これを実現する方法としては、各積層ヘッド102が積層位置Aに到達する度に、ドラム部104の回転を止めることが考えられる。しかしながら、ドラム部104の回転を繰り返し停止させると、積層装置のスループットが低下し、電池生産のリードタイムが延びてしまう。
【0041】
これに対し、本実施の形態の積層装置100は、積層位置Aにおける積層ヘッド102の瞬間的な停止をカム機構によって実現している。すなわち、ドラム部104は、各積層ヘッド102を支持軸108を介して揺動可能に保持する。また、積層装置100は、カム部110を備える。カム部110は、各積層ヘッド102に接触し、ドラム部104の回転による各積層ヘッド102の移動にともなって、支持軸108周りに各積層ヘッド102を揺動させる。つまり、カム部110は原動節であり、各積層ヘッド102は従動節である。
【0042】
カム部110は、ドラム部104の回転に対して追従しない。つまり、カム部110の姿勢は固定されており、ドラム部104が回転してもカム部110は回転しない(不動である)。したがって、ドラム部104は、カム部110に対して相対的に変位する。また、カム部110は、ドラム部104の円周方向に延びるカム溝112を有する。したがって、カム部110は、正面カムである。なお、カム部110の構造は、これに限定されない。カム溝112は、ドラム部104と同心で且つドラム部104よりも半径の小さい円を基調とした形状を有する。ただし、カム溝112は、積層ヘッド102が積層位置Aに近づいていく際に通過する進入領域Bにおいて、基調円よりも円の中心から離れる方向に湾曲している。また、カム溝112は、積層ヘッド102が積層位置Aから離間していく際に通過する退出領域Cにおいて、基調円よりも円の中心に近づく方向に湾曲している。カム溝112は、互いに対向する内側面112aおよび外側面112bを有する。内側面112aは、外側面112bよりもドラム部104の半径方向内側に位置し、外側面112bは、内側面112aよりもドラム部104の半径方向外側に位置する。
【0043】
各積層ヘッド102は、ドラム部104の半径方向に長いアーム部114を有する。アーム部114におけるドラム部104の半径方向外側に位置する端部には、保持面106が設けられる。また、半径方向内側に位置する端部には、突起部116が設けられる。突起部116は、カム溝112に係合する。突起部116は、カム溝112に係合した状態で、内側面112aおよび外側面112bに摺動可能に挟まれる。アーム部114における保持面106と突起部116との間には、支持軸108が設けられる。
【0044】
ドラム部104は、支持軸108と重なる位置に長穴118を有する。支持軸108は、長穴118に挿通されることで、ドラム部104に揺動可能に保持される。各長穴118は、ドラム部104の半径方向に長い。これにより、各積層ヘッド102が揺動した際に、支持軸108がドラム部104の半径方向に変位することが許容される。
【0045】
カム溝112の形状と、ドラム部104による積層ヘッド102の保持構造(長穴118の形状を含む)との組み合わせによって、一定の角速度でのドラム部104の回転を維持しつつ、積層位置Aにおいて各積層ヘッド102を停止させることが可能となる。これにより、単位積層体Wを高い位置精度で積層して高品質な積層電極体を生産できるとともに、電池生産のリードタイムの延長も抑制することができる。また、積層ヘッド102の増設やドラム部104の回転速度の増加等にも対応しやすくなる。
【0046】
図3は、積層ヘッド102の位置および姿勢の遷移を模式的に示す図である。
図3では、後述する付勢部材120、第1吸引部122、第2吸引部124、第1反発部126、第2反発部128、第3吸引部130および第4吸引部132の図示を省略している。また、
図3では、カム部110が設けられなかった場合に積層ヘッド102がとる姿勢(以下では適宜、基準姿勢という)を破線で部分的に図示している。
【0047】
図3に示すように、各積層ヘッド102は、ドラム部104の回転により突起部116がカム溝112に沿って移動することで、支持軸108周りに揺動する。すなわち、進入領域Bおよび退出領域Cにおいて、カム溝112の軌跡がドラム部104の半径方向にずれているため、突起部116の移動が支持軸108の移動に対して遅くなったり早くなったりする。したがって、ドラム部104の円周方向において、突起部116および支持軸108の位置がずれる。ドラム部104の円周方向で突起部116および支持軸108の位置がずれると、積層ヘッド102は支持軸108を支点として揺動する。
【0048】
以下では、ドラム部104の円周方向における各部の位置を円周方向位置という。突起部116および支持軸108の円周方向位置が揃った状態は、ドラム部104の中心および突起部116を通る直線と、ドラム部104の中心および支持軸108を通る直線とが重なった状態である。一方、突起部116および支持軸108の円周方向位置がずれた状態は、当該2つの直線が互いにずれた状態である。積層ヘッド102が基準姿勢をとるとき、突起部116および支持軸108の円周方向位置が揃う。
【0049】
カム溝112の進入領域Bに進入した突起部116は、進入領域Bの凸部の頂点112cに到達するまで(
図3において矢印Iで示す移動)、支持軸108の移動に対して徐々に遅れていく。つまり、突起部116の円周方向位置は、支持軸108の円周方向位置から積層ヘッド102の進行方向とは逆方向にずれる。このため、保持面106は、積層ヘッド102の進行方向に変位する。
【0050】
その後、突起部116の円周方向位置は、凸部の頂点112cから積層位置Aに移動する間に(
図3において矢印IIで示す移動)、支持軸108の円周方向位置に徐々に近づいていく。そして、積層位置Aにおいて、突起部116および支持軸108の円周方向位置が揃う。したがって、積層ヘッド102は基準姿勢となる。突起部116の円周方向位置が支持軸108の円周方向位置に近づいていく過程で、保持面106は積層ヘッド102の進行方向とは逆方向に変位する。この逆方向の変位により、ドラム部104の回転による保持面106の移動量の一部を相殺して、保持面106を減速させることができる。
【0051】
カム機構により積層ヘッド102が積層位置Aに停止した際、保持面106はイナーシャによって振動し得る。上述のようにドラム部104の停止によって積層ヘッド102を停止させる場合にも、同様に保持面106は振動し得る。保持面106が振動すると、単位積層体Wの位置ずれが生じ、積層電極体の品質が低下してしまう。また、保持面106の振動が収まるまで積層ヘッド102を積層位置Aで停止させると、積層電極体の生産性が低下してしまう。これに対し、積層位置Aに到達する際の保持面106の移動速度を低下させることで、積層ヘッド102が停止した際の保持面106の振動を低減することができる。これにより、積層電極体の品質および生産性の両立を図ることができる。
【0052】
積層位置Aから退出領域Cに進入した突起部116は、退出領域Cの凹部の底点112dに到達するまで(
図3において矢印IIIで示す移動)、支持軸108の移動に対して徐々に先行していく。つまり、突起部116の円周方向位置は、支持軸108の円周方向位置から積層ヘッド102の進行方向にずれる。このため、保持面106は、積層ヘッド102の進行方向とは逆方向に変位する。
【0053】
その後、突起部116が凹部の底点112dを通過すると(
図3において矢印IVで示す移動)、突起部116の円周方向位置は、支持軸108の円周方向位置に徐々に近づいていく。そして、退出領域Cの終端において、突起部116および支持軸108の円周方向位置が揃う。突起部116の円周方向位置が支持軸108の円周方向位置に近づいていく過程で、保持面106は積層ヘッド102の進行方向に変位する。この順方向の変位により、保持面106を加速させることができる。なお、カム溝112の軌跡は、
図3に示したものに限定されない。
【0054】
図4は、付勢部材120を用いた保持面106の振動抑制機構を模式的に示す図である。カム機構によって積層ヘッド102を揺動させる場合、支持軸108、突起部116、長穴118およびカム溝112を含む各部材の寸法公差等が積み重なって、保持面106が振動しやすくなる。これに対し、積層装置100は、各積層ヘッド102をドラム部104の半径方向に付勢する付勢部材120を備える。付勢部材120としては、例えば公知の弾性部材を用いることができる。弾性部材としては、コイルスプリング等のばねが例示される。
【0055】
付勢部材120によって積層ヘッド102がドラム部104の半径方向に付勢されることで、各部の寸法公差等に起因する保持面106のがたつきを抑制することができる。よって、保持面106の振動を抑制することができる。また、本実施の形態では、付勢部材120によって、突起部116がカム溝112の側面に押し付けられる。これにより、突起部116ひいては積層ヘッド102全体の姿勢を安定化させることができる。よって、保持面106の振動をより抑制することができる。
【0056】
付勢部材120の一端側は、積層ヘッド102の任意の位置に連結される。付勢部材120の他端側は、ドラム部104の任意の位置に連結される。本実施の形態では、一例として付勢部材120の一端がアーム部114に連結され、付勢部材120の他端がドラム部104の円盤表面に連結されている。また、本実施の形態の付勢部材120は、積層ヘッド102との連結位置が、ドラム部104との連結位置よりもドラム部104の半径方向内側に位置する。このため、積層ヘッド102は、ドラム部104に対して半径方向外側に向けて付勢される。したがって、付勢部材120は、突起部116を外側面112bに押し付ける。
【0057】
なお、付勢部材120の積層ヘッド102との連結位置をドラム部104との連結位置よりも半径方向外側に配置して、突起部116を内側面112aに押し付けてもよい。また、付勢部材120の他端はカム部110に連結されてもよいし、ドラム部104およびカム部110の両方に連結されてもよい。
【0058】
図5は、第1吸引部122および第2吸引部124を用いた保持面106の振動抑制機構を模式的に示す図である。上述のように、積層位置Aに接近する保持面106を減速させることで、積層ヘッド102が停止した際の保持面106の振動を抑制することが可能である。一方で、積層装置100のスループットをさらに向上させるために、ドラム部104の回転速度をより上げたいという要求がある。ドラム部104の回転速度を上げると、積層位置Aで停止した際に積層ヘッド102にはより大きな力がかかる。このため、保持面106はより振動しやすくなる。
【0059】
これに対し、本実施の形態の積層装置100は、互いに引きつけ合う第1吸引部122および第2吸引部124を備える。第1吸引部122は、各積層ヘッド102に設けられる。第1吸引部122は、一例としてアーム部114に固定される。第2吸引部124は、ドラム部104における、各積層ヘッド102が積層位置Aにある状態で当該積層ヘッド102に設けられる第1吸引部122と重なる(対向する)位置に設けられる。ドラム部104には複数の第2吸引部124が設けられ、各第2吸引部124は各積層ヘッド102に対応する位置に固定される。したがって、各積層ヘッド102が基準姿勢をとるとき、各第1吸引部122と各第2吸引部124とが互いに重なる。前記「重なる位置」とは、ドラム部104の中心軸方向(円盤の法線方向)から見て重なる位置である。
【0060】
例えば、第1吸引部122および第2吸引部124は、磁石(永久磁石)または電磁石である。また、第1吸引部122および第2吸引部124は、互いに異なる磁極を有する。積層位置Aにおいて重なり合った第1吸引部122および第2吸引部124は、磁気吸引力によって互いに引き寄せ合う。これにより、積層ヘッド102が停止した際の積層ヘッド102の姿勢を安定化させることができる。よって、保持面106の振動をより抑制することができる。
【0061】
なお、第2吸引部124が磁石または電磁石であれば、第1吸引部122は強磁性体であってもよい。この場合、積層ヘッド102自体が第1吸引部122として機能し得る。同様に、第1吸引部122が磁石または電磁石であれば、第2吸引部124は強磁性体であってもよい。この場合、ドラム部104自体が第2吸引部124として機能し得る。
【0062】
積層ヘッド102は、カム機構によって第1吸引部122および第2吸引部124の吸引力に抗して揺動することが可能である。したがって、第1吸引部122および第2吸引部124の間に吸引力が発生しても、積層ヘッド102はカム機構によって定められる任意の姿勢をとることができる。なお、第1吸引部122が電磁石で構成される場合、積層位置Aにある積層ヘッド102の第1吸引部122のみに磁力を発生させてもよい。第2吸引部124が電磁石で構成される場合も同様に、積層位置Aにある第2吸引部124のみに磁力を発生させてもよい。これにより、各積層ヘッド102をよりスムーズに移動させることができる。
【0063】
図6は、第1反発部126および第2反発部128を用いた保持面106の振動抑制機構を模式的に示す図である。保持面106の振動抑制機構としては、第1吸引部122および第2吸引部124の吸着を利用するものに代えて、あるいは加えて、第1反発部126および第2反発部128の反発を利用するものを採用することができる。
【0064】
すなわち、本実施の形態の積層装置100は、互いに反発し合う第1反発部126および第2反発部128を備える。第1反発部126は、各積層ヘッド102に設けられる。第1反発部126は、一例としてアーム部114に固定される。第2反発部128は、ドラム部104における、各積層ヘッド102が積層位置Aにある状態で当該積層ヘッド102に設けられる第1反発部126とずれた位置に設けられる。ドラム部104には複数の第2反発部128が設けられ、各第2反発部128は各積層ヘッド102に対応する位置に固定される。前記「ずれた位置」とは、ドラム部104の中心軸方向から見て重ならない位置である。好ましくは、第1反発部126および第2反発部128は、互いの円周方向位置がずれる。また、互いに対応する第1反発部126および第2反発部128は、各積層ヘッド102が積層位置Aにある状態で、互いの間に斥力が生じる距離に位置が定められる。
【0065】
例えば、第1反発部126および第2反発部128は、磁石または電磁石である。また、第1反発部126および第2反発部128は、互いに同じ磁極を有する。積層位置Aにある積層ヘッド102に設けられた第1反発部126と、この第1反発部126に対応する第2反発部128とは、磁気反発力によって互いに反発し合う。一方、積層ヘッド102の可動範囲は、カム機構によって制限されている。したがって、第1反発部126および第2反発部128が互いに反発し合うことで、積層ヘッド102は可動範囲の限界位置に押し付けられる。これにより、積層ヘッド102が停止した際の積層ヘッド102の姿勢を安定化させることができる。よって、保持面106の振動をより抑制することができる。
【0066】
なお、第2吸引部124が磁石または電磁石であれば、第1吸引部122は反磁性体であってもよい。同様に、第1吸引部122が磁石または電磁石であれば、第2吸引部124は反磁性体であってもよい。
【0067】
積層ヘッド102は、カム機構によって第1反発部126および第2反発部128の反発力に抗して揺動することが可能である。したがって、第1反発部126および第2反発部128の間に反発力が発生しても、積層ヘッド102はカム機構によって定められる任意の姿勢をとることができる。なお、第1反発部126が電磁石で構成される場合、積層位置Aにある積層ヘッド102の第1反発部126のみに磁力を発生させてもよい。第2反発部128が電磁石で構成される場合も同様に、対応する第1反発部126が積層位置Aにある第2反発部128のみに磁力を発生させてもよい。これにより、各積層ヘッド102をよりスムーズに移動させることができる。
【0068】
図7は、第3吸引部130および第4吸引部132を用いた保持面106の振動抑制機構を模式的に示す図である。保持面106の振動抑制機構としては、第1吸引部122および第2吸引部124の吸着を利用するものや、第1反発部126および第2反発部128の反発を利用するものに代えて、あるいは加えて、第3吸引部130および第4吸引部132の吸引を利用するものを採用することができる。
【0069】
すなわち、本実施の形態の積層装置100は、互いに引きつけ合う第3吸引部130および第4吸引部132を備える。第3吸引部130は、各積層ヘッド102に設けられる。第4吸引部132は、積層ステージ30に設けられる。好ましくは、第4吸引部132は、積層ステージ30における、各積層ヘッド102が積層位置Aにある状態で当該積層ヘッド102に設けられる第3吸引部130と重なる(対向する)位置に設けられる。前記「重なる位置」とは、積層装置100と積層ステージ30とが並ぶ方向から見て重なる位置である。
【0070】
例えば、第3吸引部130および第4吸引部132は、磁石または電磁石である。また、第3吸引部130および第4吸引部132は、互いに異なる磁極を有する。積層位置Aにある積層ヘッド102に設けられる第3吸引部130と第4吸引部132とは、磁気吸引力によって互いに引きつけ合う。これにより、積層ヘッド102が停止した際の積層ヘッド102の姿勢を安定化させることができる。よって、保持面106の振動をより抑制することができる。なお、第4吸引部132が磁石または電磁石であれば、第3吸引部130は強磁性体であってもよく、第3吸引部130が磁石または電磁石であれば、第4吸引部132は強磁性体であってもよい。
【0071】
積層ヘッド102は、カム機構によって第3吸引部130および第4吸引部132の吸引力に抗して揺動することが可能である。したがって、第3吸引部130および第4吸引部132の間に吸引力が発生しても、積層ヘッド102はカム機構によって定められる任意の姿勢をとることができる。一方で、より好ましい構成として、第3吸引部130は磁石、電磁石または強磁性体であり、第4吸引部132は電磁石である。そして、第4吸引部132は、各積層ヘッド102が積層位置Aから離間する際に磁力を低下させる。これにより、各積層ヘッド102をよりスムーズに積層位置Aから離間させることができる。また、消磁と励磁とを切り替える対象は1つの第4吸引部132のみであるため、簡単な制御構造で各積層ヘッド102のスムーズな移動を実現することができる。
【0072】
第4吸引部132の磁力の調整、つまり第4吸引部132への通電と非通電との切り替えは、制御部134によって実行することができる。
図7では、制御部134を機能ブロックとして描いている。この機能ブロックは、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。これらの機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。制御部134は、予め設定された動作プログラムに基づいて、第4吸引部132への通電を制御することができる。なお、上述した第1吸引部122、第2吸引部124、第1反発部126あるいは第2反発部128が電磁石で構成される場合も、制御部134によって通電と非通電とを切り替えることができる。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態に係る積層装置100は、単位積層体Wを保持する複数の積層ヘッド102と、複数の積層ヘッド102が配列されるとともに各積層ヘッド102を支持軸108を介して揺動可能に保持し、回転して各積層ヘッド102を積層ステージ30と対向する積層位置Aに進行させるドラム部104と、各積層ヘッド102に接触し、ドラム部104の回転による各積層ヘッド102の移動にともなって、支持軸108周りに各積層ヘッド102を揺動させるカム部110と、各積層ヘッド102をドラム部104の半径方向に付勢する付勢部材120と、を備える。
【0074】
これにより、積層ヘッド102を積層位置Aで停止させた際に生じる保持面106の振動を抑制することができる。この結果、単位積層体Wの位置ずれを抑制できるため、積層電極体の品質を向上させることができる。また、積層ずれ防止用の貫通孔を電極板に設ける場合と比較して、電池容量の減少を抑制できる。また、電極板の損傷や活物質の剥離等に起因する電池性能の低下も回避することができる。よって、電池性能の向上を図ることができる。また、ドラム部104の回転を停止させることなく単位積層体Wを高い位置精度で積層ステージ30に排出できるため、電池の品質向上とともにリードタイムの向上を図ることができる。
【0075】
また、本実施の形態のカム部110は、ドラム部104の回転に対して追従せず、ドラム部104の円周方向に延びるカム溝112を有する。各積層ヘッド102は、カム溝112に係合する突起部116を有し、ドラム部104の回転により突起部116がカム溝112に沿って移動することで支持軸108周りに揺動する。付勢部材120は、突起部116をカム溝112の一方の側面に押し付ける。これにより、保持面106の振動をより抑制することができる。
【0076】
また、本実施の形態の積層装置100は、各積層ヘッド102に設けられる第1吸引部122と、ドラム部104における、各積層ヘッド102が積層位置Aにある状態で当該積層ヘッド102の第1吸引部122と重なる位置に設けられる第2吸引部124と、を備え、積層位置Aにある積層ヘッド102の第1吸引部122と、これに対応する第2吸引部124とが互いに引きつけ合う。これにより、保持面106の振動をより抑制することができる。
【0077】
また、本実施の形態の積層装置100は、各積層ヘッド102に設けられる第1反発部126と、ドラム部104における、各積層ヘッド102が積層位置Aにある状態で当該積層ヘッド102の第1反発部126とずれた位置に設けられる第2反発部128と、を備え、積層位置Aにある積層ヘッド102の第1反発部126と、これに対応する第2反発部128とが互いに反発し合う。これにより、保持面106の振動をより抑制することができる。
【0078】
また、本実施の形態の積層装置100は、各積層ヘッド102に設けられる第3吸引部130と、積層ステージ30に設けられる第4吸引部132と、を備え、積層位置Aにある積層ヘッド102の第3吸引部130と、第4吸引部132とが互いに引きつけ合う。これにより、保持面106の振動をより抑制することができる。また、好ましくは、第3吸引部130は、磁石、電磁石または強磁性体であり、第4吸引部132は、電磁石である。そして、第4吸引部132は、各積層ヘッド102が積層位置Aから離間する際に磁力を低下させる。これにより、積層ヘッド102をよりスムーズに積層位置Aから離間させることができる。
【0079】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本開示の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された本開示の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本開示の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【符号の説明】
【0080】
30 積層ステージ、 100 積層装置、 102 積層ヘッド、 104 ドラム部、 108 支持軸、 110 カム部、 112 カム溝、 116 突起部、 120 付勢部材、 122 第1吸引部、 124 第2吸引部、 126 第1反発部、 128 第2反発部、 130 第3吸引部、 132 第4吸引部。