(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】塗布器、塗布装置、及び、塗布方法
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20221214BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20221214BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/10
B05D1/26 Z
(21)【出願番号】P 2020134670
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2019164171
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀内 展雄
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-212492(JP,A)
【文献】特開2006-122884(JP,A)
【文献】特開2000-334354(JP,A)
【文献】特開2003-190859(JP,A)
【文献】特開2015-062850(JP,A)
【文献】特開2016-175052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液が吐出される吐出口が一方向に延びるスリット形状に形成されたスリットノズルを有する塗布器であって、
前記塗布器は、前記スリットノズルで分割される半割形状の半口金を合体させて形成されており、
一定の厚みで形成され、前記半口金の間に介在させることにより前記吐出口の塗布方向におけるスリット幅を調節するシム部材と、
前記半口金の間に介在された前記シム部材の寸法を検出するシム検出部と、
を備え
、
前記シム検出部は、前記スリットノズルの長手方向延長上に形成され、前記スリット幅よりも大きく形成される開口部と、この開口部内に延伸された前記シム部材が露出されることによって形成され、露出されたシム部材の一部が前記開口部を形成する壁面から離れた状態で前記シム部材が保持されていることを特徴とする塗布器。
【請求項2】
前記シム部材は、前記吐出口から吐出される塗布液の塗布幅を調節可能に形成されており、前記シム検出部で検出されるシム部材の深さ寸法が前記塗布幅と対応させて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塗布器。
【請求項3】
前記開口部内は、黒色に形成されていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の塗布器。
【請求項4】
塗布液が吐出される吐出口が一方向に延びるスリット形状に形成されたスリットノズルを有する塗布器であって、
前記塗布器は、前記スリットノズルで分割される半割形状の半口金を合体させて形成されており、
一定の厚みで形成され、前記半口金の間に介在させることにより前記吐出口の塗布方向におけるスリット幅を調節するシム部材と、
前記半口金の間に介在された前記シム部材の寸法を検出するシム検出部と、
を備える塗布器と、
基板が載置されるステージと、
を備え、塗布器のスリットノズルから塗布液を吐出した状態で、前記塗布器と前記ステージとを相対的に移動させることにより基板上に塗布膜を形成する塗布装置であって、
前記シム検出部に露出したシム部材の寸法を検出するシム計測部を備えており、
前記シム計測部により計測されたシム部材の寸法に基づいて、塗布器とステージ上の基板との相対位置が補正されることを特徴とする塗布装置。
【請求項5】
塗布液が吐出される吐出口が一方向に延びるスリット形状に形成されたスリットノズルを有する塗布器であって、
前記塗布器は、前記スリットノズルで分割される半割形状の半口金を合体させて形成されており、
一定の厚みで形成され、前記半口金の間に介在させることにより前記吐出口の塗布方向におけるスリット幅を調節するシム部材と、
前記半口金の間に介在された前記シム部材の寸法を検出するシム検出部と、
を備える塗布器と、
基板が載置されるステージと、
を備え、塗布器のスリットノズルから塗布液を吐出した状態で、前記塗布器と前記ステージとを相対的に移動させることにより基板上に塗布膜を形成する塗布方法であって、
前記シム検出部に露出したシム部材の寸法をシム計測部で検出し、
前記シム計測部により計測されたシム部材の寸法に基づいて、塗布器とステージ上の基板との相対位置が補正されることを特徴とする塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリットノズルの開口面積を調節するシム部材を有する塗布器、この塗布器を備える塗布装置、及び、塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、ガラス等の基板上にレジスト液等の塗布液が塗布されたもの(塗布基板という)が使用されている。この塗布基板は、塗布膜が均一に形成されている必要があり、塗布液を均一に塗布する塗布装置によって形成されている。このような塗布装置は、
図9に示すように、基板Wを載置するステージ100と、塗布液を吐出する塗布器101を有する塗布ユニット102とを有しており、塗布器101のスリットノズル103から塗布液を吐出させながら、基板Wと塗布器101とを相対的に移動させることにより、基板W上に塗布膜が形成されるようになっている。
【0003】
近年では、このような塗布装置が様々な用途で用いられるようになり、塗布液の粘度に対応することが望まれている。一般に、粘度が大きくなるとスリットノズル103の圧損が大きくなるためスリットノズル103の開口幅(塗布方向における開口幅。スリット幅Sともいう。
図10参照。)を大きくする必要がある。通常、スリット幅Sの調節は、塗布器101を作り替えるとコストがかかるため、塗布器101内にシム部材105を介在させることにより調節する。すなわち、
図10に示すように、塗布器101は、それぞれスリットノズル103で分割される半割形状の半口金104を合体させることにより形成されており、それぞれの半口金104の間にシム部材105を介在させて、シム部材105の厚みを変えることによりスリット幅Sを調節する(
図10(b)参照)。通常、このようなシム部材105は、0.1mm単位で用意されており、塗布液の粘度によってスリット幅Sが適切に調節される。これにより、塗布器101を作り替えることなく、1つの塗布器101で多品種の塗布液に対応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記塗布器101では、塗布器101に取り付けられたシム部材105の厚みを把握するのが困難という問題があった。すなわち、塗布器101にシム部材105を介在させた状態では、外側から確認できない。仮にスリットノズル103を通じて確認しようとしても、スリットノズル103のスリット幅Sが極めて微小な隙間で形成されているため、スリットノズル103を通じてシム部材105の寸法を計測するのは困難であった。
【0006】
また、塗布器101にシム部材105を介在させると、シム部材105の厚みに応じてスリット幅Sの中心がずれるため、塗布器101内に設けられているシム部材105の厚みを常に把握しておく必要がある。そのため、塗布器101内に介在させるシム部材105が選定された際に、選定されたシム部材105を記録しておく必要があるが、その作業が煩わしく、記録するのを失念したり、人為的なミスで誤った寸法を記録してしまう虞がある。仮に、シム部材105の寸法把握に誤りがあった場合には、スリット幅Sの中心位置がずれてしまうため、塗布開始位置がずれ、製品の品質が低下してしまう。このような問題を回避するため、塗布工程が開始される直前に、塗布器101にシム部材105を介在させた状態で、シム部材105の厚みを確認したいという要望があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、塗布器にシム部材が介在した状態であっても、シム部材の寸法を正確に把握することができる塗布器、塗布装置、及び、塗布方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の塗布器は、塗布液が吐出される吐出口が一方向に延びるスリット形状に形成されたスリットノズルを有する塗布器であって、前記塗布器は、前記スリットノズルで分割される半割形状の半口金を合体させて形成されており、一定の厚みで形成され、前記半口金の間に介在させることにより前記吐出口の塗布方向におけるスリット幅を調節するシム部材と、前記半口金の間に介在された前記シム部材の寸法を検出するシム検出部と、を備え、前記シム検出部は、前記スリットノズルの長手方向延長上に形成され、前記スリット幅よりも大きく形成される開口部と、この開口部内に延伸された前記シム部材が露出されることによって形成され、露出されたシム部材の一部が前記開口部を形成する壁面から離れた状態で前記シム部材が保持されていることを特徴としている。
【0009】
上記塗布器によれば、シム部材の寸法を検出するシム検出部を設けているため、シム検出部を通じて、塗布器内に設けられたシム部材の寸法を計測することができる。したがって、塗布器にシム部材が介在した状態であっても、塗布器を分解することなく、シム検出部を通じてスリットノズルの吐出口に介在するシム部材の種類を正確に把握することができる。また、この構成によれば、開口部内のシム部材が開口部を形成する壁面から離れているため、シム部材と壁面との区別が明確になり、シム部材の寸法を光学的に精度よく計測することができる。
【0010】
また、前記シム部材は、前記吐出口から吐出される塗布液の塗布幅を調節可能に形成されており、前記シム検出部で検出されるシム部材の深さ寸法が前記塗布幅と対応させて形成されている構成にしてもよい。
【0011】
この構成によれば、シム検出部からシム部材の深さ寸法を計測することにより、塗布器にシム部材が介在した状態であっても、シム部材により調節された塗布幅を正確に把握することができる。
【0014】
また、前記開口部内は、黒色に形成されている構成にしてもよい。
【0015】
この構成によれば、シム部材の寸法を光学的に計測する場合、開口部内の乱反射が抑えられるため、計測精度を向上させることができる。
【0020】
また、上記課題を解決するために本発明の塗布装置及び塗布方法は、塗布液が吐出される吐出口が一方向に延びるスリット形状に形成されたスリットノズルを有する塗布器であって、前記塗布器は、前記スリットノズルで分割される半割形状の半口金を合体させて形成されており、一定の厚みで形成され、前記半口金の間に介在させることにより前記吐出口の塗布方向におけるスリット幅を調節するシム部材と、前記半口金の間に介在された前記シム部材の寸法を検出するシム検出部と、を備える塗布器と、基板が載置されるステージと、を備え、塗布器のスリットノズルから塗布液を吐出した状態で、前記塗布器と前記ステージとを相対的に移動させることにより基板上に塗布膜を形成する塗布装置であって、前記シム検出部に露出したシム部材の寸法を検出するシム計測部を備えており、前記レーザ計測部により計測されたシム部材の寸法に基づいて、塗布器とステージ上の基板との相対位置が補正されることを特徴としている。
【0021】
上記塗布装置、塗布方法によれば、シム計測部によりシム検出部を通じて塗布器に設けられたシム部材の寸法を精度よく計測することができる。そして、その計測された寸法に基づいて、塗布開始位置等の基板との相対的な位置情報が補正されるため、シム部材の種類に応じて位置情報が補正され高度な塗布精度を維持することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の塗布器、塗布装置、及び、塗布方法によれば、塗布器にシム部材が介在した状態であっても、シム部材の寸法を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】塗布器を基板対向面側から見た斜視図である。
【
図4】塗布器とシム部材を示す図であり、(a)は、シム部材を示す図、(b)は、シム部材が介在していない状態の塗布器を示す図、(c)はシム部材が介在した状態の塗布器を示す図である。
【
図6】シム検出部の断面を示す図であり、シム部材に対しレーザ光が照射された状態で塗布器とレーザ光とが相対的に移動している状態を示す図である。
【
図7】シム検出部の断面(上段)と介在されるシム部材(下段)を示す図であり、(a)は通常の塗布幅に対応するシム部材を示す図、(b)は(a)よりも塗布幅を小さくするシム部材を示す図である。
【
図8】シム部材の厚みを計測する状態を示す図であり、(a)はシム部材とレーザ光との位置関係を示す図、(b)は受光されたレーザ光により計測されたシム部材の厚み寸法を示す図である。
【
図10】従来の塗布器を示す図であり、(a)はシム部材が介在していない状態の塗布器を示す図、(b)はシム部材が介在した状態の塗布器を示す図である。
【
図11】シム検出用部材を有する塗布器を示す図であり、(a)は、シム部材の厚みが所定の厚みである状態を示す図、(b)は、(a)に比べてシム部材の厚みが薄い状態を示す図である。
【
図12】シム検出用部材を示す図であり、(a)は、厚み関連部の高さ位置が平坦基準面と面一に設定されている状態を示す図であり、(b)厚み関連部の高さ位置が平坦基準面よりtだけ高い位置に設定されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の塗布装置について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態における塗布装置を概略的に示す斜視図であり、
図2は、塗布ユニットの脚部付近を示す図であり、
図3は、塗布ユニットの要部を側面側から見た概略図である。
【0025】
図1~
図3に示すように、塗布装置は、基板W上に薬液やレジスト液等の液状物(以下、塗布液と称す)の塗布膜を形成するものであり、基台2と、基板Wを載置するためのステージ21と、このステージ21に対し特定方向に移動可能に構成される塗布ユニット30とを備えている。
【0026】
なお、以下の説明では、塗布ユニット30が移動する方向(塗布方向)をX軸方向、これと水平面上で直交する方向をY軸方向、X軸およびY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることとする。
【0027】
前記基台2には、その中央部分にステージ21が配置されている。このステージ21は、搬入された基板Wを載置するものである。このステージ21には、基板保持手段が設けられており、この基板保持手段により基板Wが保持されるようになっている。具体的には、ステージ21の表面には、複数の吸引孔が形成されており、この吸引孔に吸引力を発生させることにより基板Wをステージ21の表面に吸着させて保持できるようになっている。
【0028】
また、ステージ21には、基板Wを昇降動作させる基板昇降機構が設けられている。具体的には、ステージ21の表面には上記吸引孔とは別に複数のピン孔が形成されており、このピン孔にはZ軸方向に昇降動作可能なリフトピン(不図示)が埋設されている。すなわち、ステージ21の表面からリフトピンを突出させた状態で基板Wが搬入されるとリフトピンの先端部分に基板Wを当接させて基板Wを保持することができる。そして、その状態からリフトピンを下降させてピン孔に収容させることにより、基板Wをステージ21の表面に載置することができるようになっている。
【0029】
また、塗布ユニット30は、基板W上に塗布液を吐出するものである。具体的には、後述する塗布器5から塗布液を吐出することにより、基板W上に均一厚さの塗布膜が形成できるようになっている。すなわち、基板Wに所定量の塗布液を吐出し、基板Wと塗布器5のスリットノズル51とが塗布液で連結される状態を形成し、その後、塗布器5を一定速度で走行させることにより、基板W上に一定膜厚の塗布膜を形成することができる。
【0030】
この塗布ユニット30は、
図2、
図3に示すように、脚部31と塗布器5を支持するビーム部39を有しており、これらが門型形状を有するように基台2に取付けられている。すなわち、両脚部31にビーム部39がステージ21をY軸方向に跨ぐ状態で取付けられている。そして、脚部31は、X軸方向に移動可能に取り付けられており、脚部31が移動することにより、ビーム部39がステージ21上を走査できるようになっている。具体的には、基台2のY軸方向両端部分にはそれぞれX軸方向に延びるレール22が設置されており、脚部31がこのレール22にスライド自在に取り付けられている。そして、脚部31にはリニアモータ33が取り付けられており、このリニアモータ33を駆動制御することにより、ビーム部39は塗布器5がステージ21と対向する状態でX軸方向に移動し、任意の位置で停止できるようになっている。
【0031】
また、ビーム部39は、塗布器5が撓み変形を生じるのを抑えることにより、塗布器5のスリットと基板との距離が長手方向において一定となるように支持するものである。そして、ビーム部39の長手方向端部は、Y軸方向両端部に配置された両脚部31にそれぞれ取付けられており、取付けられた状態では塗布器5が長手方向に亘って同一高さとなるように配置されている。すなわち、ビーム部39に支持される塗布器5とステージ21との距離が長手方向に亘って同一になるように配置されている。
【0032】
また、ビーム部39は、脚部31に昇降動作可能に取付けられている。具体的には、この脚部31にはZ軸方向に延びるレール37と、このレール37に沿ってスライドするスライダ35が設けられており、これらのスライダ35とビーム部39とが連結されている。そして、スライダ35にはサーボモータにより駆動されるボールねじ機構が取り付けられており、このサーボモータを駆動制御することにより、スライダ35がZ軸方向に移動するとともに、任意の位置で停止できるようになっている。すなわち、塗布器5が、ステージ21に保持された基板Wに対して接離可能に支持されている。
【0033】
また、塗布器5は、塗布液を吐出して基板W上に塗布膜を形成するものである。この塗布器5は、一方向に延びる形状を有する柱状部材であり、長手方向がY軸方向に沿う状態で設けられている。この塗布器5には、基板Wと対向する基板対向面52に長手方向に延びるスリット状に形成されたスリットノズル51が形成されており、塗布器5に供給された塗布液がスリットノズル51から長手方向に亘って一様に吐出されるようになっている。すなわち、スリットノズル51で決定される塗布幅(Y軸方向幅)全体に亘って一様に吐出される。したがって、このスリットノズル51から塗布液を吐出させた状態で塗布ユニット30をX軸方向に走行させることにより、スリットノズル51の長手方向に亘って基板W上に一定厚さの塗布膜が形成されるようになっている。
【0034】
また、塗布器5は、スリットノズル51で分割される半割形状の半口金50を合体させることによって形成されている。これらの半口金50を合体させることによりスリットノズル51が形成され、スリット幅S(スリットノズル51のX軸方向寸法)が決定されることにより、スリットノズル51の開口面積に応じた塗布液が吐出されるようになっている。
【0035】
また、塗布器5は、シム部材6を取り付け可能に形成されている。このシム部材6を取り付けることにより、スリットノズル51のスリット幅S、塗布幅寸法を調節することができる。これにより、塗布器5を作り替えることなく、粘度を含めた様々な特性の塗布液に対応することができる。シム部材6は、具体的には、
図4(a)に示すように、平板状に形成されており、全体が一定の厚みになるように精度よく形成されている。このシム部材6を半口金50の間に挟んで取り付けることにより、スリット幅Sを調節することができる。すなわち、
図4の例では、シム部材6がない状態(
図4(b))に対して、シム部材6を介在させることにより、シム部材6の厚み分だけスリット幅Sを大きくすることができる(
図4(c))。
【0036】
このシム部材6は、長手方向中央部分に切欠部61が形成されている。この切欠部61は、通常、スリットノズル51の塗布幅に形成されていることにより、半口金50の間に介在させると、切欠部61の幅寸法が塗布器5の塗布幅に一致し、シム部材6を介在させた場合でもスリットノズル51の塗布幅を変えることなく塗布液を吐出することができる。
【0037】
このシム部材6は、スリット幅Sだけでなく、
図7に示すように、切欠部61の幅を調節することにより、塗布幅を調節することができる。すなわち、
図7(a)は、切欠部61の幅寸法を通常の塗布器5の塗布幅αにしたものであり、
図7(b)では、切欠部61の幅寸法を塗布器5の塗布幅よりも小さい寸法β(β<α)に形成されている。このように切欠部61の幅寸法を調節することにより、スリットノズル51のスリット幅Sを調節しつつ、塗布幅についても調節することができる。
【0038】
この塗布幅を調節できるシム部材6については、本実施形態では、シム部材6の両端部分に塗布幅を調節する切欠部61とは別の端部切欠部62が形成されている。この端部切欠部62は、調節される塗布幅に応じて形状を変えて設けられている。本実施形態では、端部切欠部62の深さ方向(Z軸方向)寸法が塗布幅に応じて設定されており、切欠部61の幅寸法(塗布幅)が小さくなるほど、端部切欠部62の深さ方向寸法γが大きくなるように形成されている。
【0039】
また、塗布器5には、介在するシム部材6の寸法を検出するためのシム検出部7が設けられている(
図3、
図5参照。)。本実施形態では、シム検出部7は、スリットノズル51の長手方向延長上の基板対向面52に設けられており、スリット幅Sの寸法よりも幅広に形成される開口部71と、この開口部71にシム部材6が露出することにより形成されている。本実施形態では、
図3、
図5に示すように、スリットノズル51の長手方向延長上に円径の開口部71の中心が配置されるように形成されており、この開口部71内に半口金50の間に介在されたシム部材6が、開口部71を横切るように固定されている。すなわち、開口部71を形成する半口金50の壁面72によりシム部材6が挟まれることによって固定されることにより、シム部材6の一部は開口部71中心を横切る姿勢で壁面72に触れることなく固定されている。すなわち、開口部71内に半口金50の壁面72から離れた部位が形成されるようにシム部材6が固定され、この壁面72から離れる部位が、後述するように、シム部材6の寸法を計測するために用いられる。
【0040】
また、シム部材6が半口金50間に固定された状態では、端部切欠部62の形成位置が開口部71の形成位置に対応するように形成されているため、塗布幅が調節されていないシム部材6(
図7(a))は、開口部71内のシム部材6は開口部71の壁面72(基板対向面52)と面一になるように固定される。一方、塗布幅が調節されるシム部材6(
図7(b))では、開口部71内のシム部材6は基板対向面52から深さ方向に離れた所に位置するように固定される。すなわち、本実施形態では、切欠部61の幅寸法(塗布幅)が小さくなるほど、端部切欠部62の深さ寸法が大きくなるため、塗布幅が小さくなるほど、基板対向面52から深さ方向に離れた位置に固定される。
【0041】
また、ステージ21には、シム検出部7内のシム部材6の寸法を検出するシム計測部8が設けられている(
図1、
図2参照)。このシム計測部8は、本実施形態では、レーザ光B(
図6参照)を照射し、その反射光を受光するレーザセンサ81が使用されており、本実施形態では、ステージ21の側面にY軸方向に離れた位置に2カ所設けられている。これらレーザセンサ81は、制御装置と接続されており、レーザ光Bが照射されて反射光が受光される時間を計測することにより、レーザ光Bが照射される対象物の高さ位置を計測することができる。そして、これらレーザセンサ81は、Y軸方向において、塗布器5のシム検出部7それぞれの形成位置に配置されており、レーザ光Bが上方に向かって照射されるように配置されている。したがって、塗布ユニット30がX軸方向に移動し塗布器5がシム計測部8を通過すると、シム検出部7がレーザセンサ81上を通過することにより、シム検出部7内に露出するシム部材6の寸法を計測できるようになっている。なお、本実施形態では、開口部71がスリット幅Sよりも幅広(大径)に形成されているため、レーザセンサ81のレーザ光径を安価な大径のものを使用することができる。
【0042】
ここで、
図6は、シム検出部7の断面を示す図であり、半口金50に挟まれたシム部材6に対しレーザ光Bが照射された状態で塗布器5とレーザ光B(レーザセンサ81位置)とが相対的に移動した状態を示している(説明の都合上、シム検出部7とレーザ光Bが上下逆さまに記載されている。)。
図6に示すように、最初に、レーザセンサ81からのレーザ光B(
図6において一番左側のレーザ光B)が開口部71の底面に照射され、その反射光が受光される。なお、この開口部71は、スリット幅Sよりも大きく形成されており、レーザ光Bが開口部71を形成する壁面72、及び、シム部材6に照射されずに開口部71の底面を照射できる程度に形成されている。そして、開口部71の底面及び側壁面72は黒色に着色されており、レーザセンサ81からのレーザ光Bが乱反射することによる誤検知を低減するようになっている。
【0043】
そして、そのまま塗布器5とレーザセンサ81が相対的に移動し、レーザ光Bがシム部材6に照射され、その反射光が受光されると、反射光が受光される時間が短くなることにより、シム部材6が検出される。そして、そのまま塗布器5とレーザセンサ81が相対的に移動し、レーザ光Bが開口部71の底面に照射されると、反射光が受光される時間が長くなることにより、シム部材6の検出が終了する。このように、シム部材6にレーザ光Bが照射される時間、すなわち、シム部材6が検出される時間を計測することにより、塗布器5内に設けられたシム部材6の厚み寸法を計測することができる。これにより、スリット幅Sを演算することができる。
【0044】
また、
図7(b)に示すように、シム部材6に端部切欠部62が形成されている場合には、上述したレーザセンサ81の計測により、シム部材6の厚み寸法だけでなく、端部切欠部62の深さ寸法(γ)が同時に計測される。そして、計測された深さ寸法からシム部材6の種類が特定され、塗布幅(β)が把握される。このように、塗布器5を分解することなく、シム検出部7から塗布器5に設けられたシム部材6の種類を検出し、塗布幅、スリット幅Sを把握することができる。
【0045】
また、塗布装置には、リニアモータやサーボモータなどの駆動装置を統括的に制御する制御装置を有しており、これらの駆動装置が制御装置を通じて駆動制御されるようになっている。
【0046】
また、制御装置は、上述したようにシム計測部8で計測されたレーザ光Bの時間変化から、シム部材6の厚み寸法d、端部切欠部62の深さ寸法を算出することができる。そして、本実施形態では、シム部材6の厚み寸法dについて、真のシム部材6の厚み寸法dを求めることができるようになっている。ここで、
図8は、シム部材6の厚みを計測する状態を示す図であり、(a)はシム部材6とレーザ光Bとの位置関係を示す図、(b)は受光されたレーザ光Bにより計測されたシム部材6の厚み寸法dを示す図である。すなわち、
図8に示すように、レーザセンサ81の計測では、介在されるシム部材6の寸法(
図8では寸法d)が、実際の寸法dよりも大きい寸法(寸法d’)として計測される。これは、レーザ光Bが開口部71の底面からシム部材6にさしかかる際に、レーザ光Bの中心は開口部71の底面を照射しているにもかかわらず、シム部材6を照射した光の反射光にシム計測部8が反応することにより、実際のシム部材6の厚み寸法dよりも大きい厚み寸法d’として認識されるためである。この厚み寸法d’の誤差は、レーザ光Bが計測時に移動する速度、レーザ光径に依存して一定であり、さらに開口部71の底面及び側壁面72が黒色に着色されているため、誤差のバラツキが極力抑えられる。したがって、制御装置では、計測された寸法d’に対応する寸法dが予め記憶されており、実際に計測された寸法d’が寸法dとして補正されるようになっている。これにより、塗布器5に介在しているシム部材6の厚み寸法dを正確に把握できるようになっている。
【0047】
また、制御装置では、計測されたシム部材6の厚み寸法からスリット幅Sの中心位置を算出し、スリット幅Sの中心位置のずれが補正されるようになっている。すなわち、シム部材6が介在していない場合のスリット幅Sが寸法sとした場合、シム部材6が介在した場合のスリット幅Sはs+dであり、スリット幅Sの中心位置は(s+d)/2となる。これにより、シム部材6が介在している場合の塗布開始位置が補正され、いずれのシム部材6が介在している場合であっても、精度よく塗布開始位置から塗布動作を開始することができるようになっている。
【0048】
このように、上記塗布器5、塗布装置、及び、塗布方法によれば、シム部材6の寸法を検出するシム検出部7を設けているため、シム検出部7を通じて、塗布器5内に設けられたシム部材6の寸法を計測することができる。したがって、塗布器5にシム部材6が介在した状態であっても、塗布器5を分解することなく、シム検出部7を通じてスリットノズル51の吐出口に介在するシム部材6の種類を正確に把握することができる。そして、シム計測部8によりシム検出部7を通じて塗布器5に設けられたシム部材6の寸法を精度よく計測することができ、その計測された寸法に基づいて、塗布開始位置等の基板との相対的な位置情報が補正されるため、シム部材6の種類に応じて位置情報が補正され高度な塗布精度を維持することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、シム検出部7がスリットノズル51の延長上に配置される例について説明したが、塗布器5の側面や、上面に形成されるものであってもよい。なお、上記実施形態のように、スリットノズル51の延長上に配置されていることにより、レーザセンサ81をステージに配置することができるため、シム検出部7を塗布器5の側面や上面に形成される場合に比べてスペース的に有利に構成することができる。また、シム検出部7がスリットノズル51の延長上に配置されているため、塗布器5内に塗布液が充填されているか否かを問わずに、シム検出部7にレーザ光を照射してシム部材6の寸法を計測することができる。すなわち、塗布器5に充填された塗布液が感光する材質であった場合、仮に塗布器5に塗布液が充填された状態で、光径が小径の高価なレーザ光を用いてスリットノズル51を通じてシム部材6の寸法を計測することはできないが、上記実施形態のようにシム検出部7がスリットノズル51の延長上に配置されていることにより、レーザ光が塗布器5内の塗布液に照射されることがない。したがって、塗布器5内の塗布液の充填状態にかかわらず、シム部材6の寸法を計測することができる。
【0050】
また、上記実施形態では、レーザセンサ81を2カ所設ける例について説明したが、1つでもよく、3つ以上設けるものであってもよい。レーザセンサ81を複数設けることにより、塗布器5を搭載した場合のずれを確認、把握することができ、塗布器5の搭載精度の貢献に寄与することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、シム計測部8として、レーザセンサ81を用いる例について説明したが、接触式変位センサで直接シム部材6の寸法を計測するものでもよく、光学式カメラを用いて画像からシム部材6の寸法を計測するものであってもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、シム検出部7が塗布器5に開口部71を設け、その開口部71から直接、シム部材6の厚みの寸法を計測する例について説明したが、シム部材6の代わりになるものを検出し、その寸法情報によりシム部材の寸法を検出するものであってもよい。具体的には、
図11、
図12に示すように、半口金50にシム検出用部材9を設け、このシム検出用部材9の寸法を検出することにより、シム部材6の厚み寸法、塗布幅を検出するものであってもよい。
【0053】
シム検出用部材9は、半口金50に接離可能に取り付けられている。このシム検出用部材9は、厚み関連部91と外壁部92とを有しており、厚み関連部91が外壁部92に挟まれた状態で一体的に形成されている。具体的には、シム検出用部材9は、
図11の例では、塗布方向(
図11において左右方向)に外壁部92、厚み関連部91、外壁部92の順に配列された状態で固定されて設けられている。そして、シム検出用部材9は、厚み関連部91によりシム部材6の厚み寸法が得られ、厚み関連部91と外壁部92との高さ寸法の差から塗布幅の寸法が得られるようになっている。
【0054】
すなわち、厚み関連部91は、シム部材6の寸法に応じた板状部材に形成されており、本実施形態では、厚み関連部91の厚み寸法mがシム部材6の厚み寸法と同じ寸法に形成されている。そして、この厚み方向が外壁部92、厚み関連部91の配列方向と一致する状態で固定されている。
【0055】
また、外壁部92は、厚み関連部91を挟持しつつ、基準高さ位置を設定するものである。具体的には、
図12に示すように、外壁部92は、平坦基準面921と傾斜面922とを有しており、平坦基準面921により基準高さ位置が設定される。すなわち、シム検出用部材9は、外壁部92の傾斜面922が互いに対向する状態で厚み関連部91を挟持することにより、両傾斜面922の間に厚み関連部91を位置させることができ、厚み関連部91を外壁部92から離した状態で保持することができるようになっている。
【0056】
これにより、上述したシム計測部8のレーザセンサ81により厚み関連部91の厚み寸法mと、厚み関連部91と外壁部92との高さ寸法の差を計測することができる。すなわち、塗布方向に塗布器5とシム計測部8とが相対的に移動すると、レーザ光が外壁部92の平坦基準面921に照射され、平坦基準面921の高さ位置が検出される。その後、傾斜面922に照射されるが、上述の開口部71の構成と同様に傾斜面922を黒色に着色することにより反射光が抑えられる。そして、厚み関連部91に照射されることにより厚み関連部91が検出され、その高さ位置が検出される。これにより、平坦基準面921(外壁部92)と厚み関連部91との高さ寸法の差が算出される。ここで、厚み関連部91の高さ寸法(
図11、
図12において上下方向)は、塗布幅と関連して形成されており、例えば、シム検出用部材9を構成した際に、シム部材6に形成される塗布幅が塗布器5の塗布幅と同じ塗布幅αの場合は、
図12(a)に示すように、厚み関連部91が平坦基準面921と面一に形成し、塗布幅αよりも小さい塗布幅βの場合は、
図12(b)に示すように、厚み関連部91が平坦基準面921よりもtだけ高い位置に形成されている。これにより、平坦基準面921(外壁部92)と厚み関連部91との高さ寸法の差が算出されることにより、現在、半口金50の間に使用されているシム部材6の塗布幅を得ることができる。
【0057】
また、厚み関連部91の厚み寸法mは、上述した実施形態と同様に、厚み関連部91の検知時間、又は、検知位置を演算することによって求められる。このようにして、厚み関連部91の厚み寸法mがシム部材6の厚み寸法と対応して形成され、平坦基準面921(外壁部92)と厚み関連部91との高さ寸法の差が塗布幅と対応するように厚み関連部91の高さ寸法が設定されていれば、シム検出用部材9の寸法を計測することにより、直接、シム部材6の寸法を計測することなく、塗布器5にシム部材6が介在した状態でスリットノズル51の吐出口に介在するシム部材6の種類を正確に把握することができる。
【0058】
なお、本実施形態のシム検出用部材9は、シム部材6からオフセットされた位置に設けられている。仮に、シム検出用部材9を検出した位置からシム部材6の中心位置(塗布の基準となる位置)を算出しようする場合、シム検出用部材9の厚み寸法mの違いによりズレが発生する(
図11におけるp)。この場合、シム検出用部材9の厚み寸法mに応じてシム部材6の中心位置を補正する必要がある。
【0059】
以上、本実施形態のようにシム部材6とは別にシム検出用部材9を使用することにより、シム部材6に対応したシム検出用部材9を取り付ける煩わしさがあるものの、上述した実施形態と同様にシム部材6の種類を把握することができる。
【0060】
なお、上記実施形態では、シム検出用部材9が厚み関連部91と外壁部92とを有する例について説明したが、シム部材6の厚み寸法のみを検知すればよい場合には、シム検出用部材9が厚み関連部91のみで形成されているものであってもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、シム検出用部材9の厚み関連部91がシム部材6の厚み寸法と同じ寸法を有する例について説明したが、シム部材6の厚み寸法に関連する寸法であればよく、厚み関連部91の厚み寸法mとシム部材6の厚み寸法とが相関関係のある寸法であればよい。
【0062】
また、上記実施形態では、シム検出用部材9が半口金50のX軸方向側面に下向きに形成される例について説明したが、
図11の破線で示されるように、上向きに形成してもよく、基板対向面52に下向きに形成されていてもよく、シム検出用部材9の寸法が計測できる位置であれば特に限定しない。
【符号の説明】
【0063】
5 塗布器
6 シム部材
7 シム検出部
8 シム計測部
30 塗布ユニット
50 半口金
51 スリットノズル
61 切欠部
71 開口部
81 レーザセンサ
W 基板