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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0282 20160101AFI20221214BHJP
   H01M 8/0215 20160101ALI20221214BHJP
   C25B 13/02 20060101ALI20221214BHJP
   C25B 13/04 20210101ALI20221214BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20221214BHJP
【FI】
H01M8/0282
H01M8/0215
C25B13/02 302
C25B13/04 302
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020175839
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067233
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 暁
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-088264(JP,A)
【文献】特開2015-135807(JP,A)
【文献】特開2015-022892(JP,A)
【文献】特開2020-113503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
C25B 1/00- 9/77
C25B 13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む電気化学反応単セルと、
前記燃料極と前記空気極との一方である特定電極に面するガス室と、
前記第1の方向に貫通する貫通孔が形成され、前記第1の方向視で前記貫通孔を取り囲む部分である貫通孔周囲部が前記電気化学反応単セルの周縁部と接合され、前記ガス室を画定するセパレータと、
前記セパレータの前記貫通孔周囲部と、前記電気化学反応単セルの前記周縁部とを接合するロウ付け部であって、金属と金属酸化物とを含有するロウ付け部と、
を備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記ロウ付け部は、前記第1の方向視において、前記電気化学反応単セルと前記セパレータとの重複部分に重ならない部分であって、前記ガス室に露出する部分である露出部分と、前記露出部分よりも内側に位置する内側部分と、を有し、
前記露出部分と前記内側部分とは、共通の金属酸化物を含有し、
前記露出部分における前記共通の金属酸化物の量は、前記内側部分における前記共通の金属酸化物の量と比較して、多く、
前記金属が、Ag、Au、Pt、Cu、およびNiからなる群から選択され、
前記共通の金属酸化物が、Al 、SiO 、Cr 、MgO、CaO、およびY からなる群から選択され、前記金属よりも融点が高い金属酸化物である、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記セパレータは、前記セパレータの表面のうちの前記ロウ付け部に接する部分である周辺部分の少なくとも一部分が、前記共通の金属酸化物で形成されている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記金属は、Agであり、
前記共通の金属酸化物は、アルミナである、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記特定電極は、前記燃料極であり、
前記セパレータの貫通孔周囲部は、前記セパレータにおける前記電気化学反応単セルに対向する表面において、前記電気化学反応単セルの周縁部と接合されており、
前記露出部分は、前記第1の方向視において、前記電気化学反応単セルの外側に位置している、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という)が知られている。SOFCは、一般に、燃料電池発電単位(以下、「発電単位」という。)が所定の方向(以下、「第1の方向」という。)に複数並べて配置された積層体(以下、「発電ブロック」という。)を備える燃料電池スタックの形態で利用される。発電単位は、燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という。)を備える。単セルは、電解質層と、電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む。
【0003】
上記構成の発電単位は、更に、セパレータと、フレーム部材(例えば、周辺部材)とを備える。フレーム部材には、燃料極(または空気極)に面するガス室を構成するガス室用孔が形成されている。セパレータには、第1の方向に貫通する貫通孔が形成されている。セパレータは、第1の方向視で貫通孔を取り囲む部分である貫通孔周囲部が、単セルの周縁部と、ロウ材を含むロウ付け部を介して接合されることにより、燃料極(または空気室)に面するガス室を画定する。ロウ付け部は、例えば、AgとAlとを含有している。また、ロウ付け部は、例えば、第1の方向視において、単セルの外周より外側に張り出した部分と、セパレータの貫通孔の内周より内側に張り出した部分とを有している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-135807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池スタックは、比較的高温(例えば、700℃から1000℃)で発電が行われる。一方、ロウ付け部に含まれるAgの融点は、比較的低い。このため、燃料電池スタックの運転中において、ロウ付け部に含まれるAgがガス室へと蒸散して、燃料極や空気極を汚染するおそれがある(燃料極または空気極の被毒)。このように燃料極や空気極の被毒が発生すると、発電単位の性能が低下し、ひいては、燃料電池スタックの性能が低下するおそれがある。
【0006】
なお、このような課題は、Ag以外の金属を含有するロウ付け部を備える燃料電池スタックにも共通の課題である。また、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解単セルを複数備える電解セルスタックにも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼び、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックと呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応セルスタックにも共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む電気化学反応単セルと、前記燃料極と前記空気極との一方である特定電極に面するガス室と、前記第1の方向に貫通する貫通孔が形成され、前記第1の方向視で前記貫通孔を取り囲む部分である貫通孔周囲部が前記電気化学反応単セルの周縁部と接合され、前記ガス室を画定するセパレータと、前記セパレータの前記貫通孔周囲部と、前記電気化学反応単セルの前記周縁部とを接合するロウ付け部であって、金属と金属酸化物とを含有するロウ付け部と、を備える電気化学反応セルスタックにおいて、前記ロウ付け部は、前記第1の方向視において、前記電気化学反応単セルと前記セパレータとの重複部分に重ならない部分であって、前記ガス室に露出する部分である露出部分と、前記露出部分よりも内側に位置する内側部分と、を有し、前記露出部分と前記内側部分とは、共通の金属酸化物を含有し、前記露出部分における前記共通の金属酸化物の量は、前記内側部分における前記共通の金属酸化物の量と比較して、多い。本電気化学反応セルスタックでは、ロウ付け部における露出部分と、内側部分とは、共通の金属酸化物(以下、「特定金属酸化物」という)を含有している。また、露出部分における特定金属酸化物の量は、内側部分における特定金属酸化物の量と比較して多い。特定金属酸化物の融点は、金属の融点と比較して、比較的高い。このように、ガス室に露出する露出部分に、融点が比較的高い特定金属酸化物を配置することにより、電気化学反応セルスタックの運転中において、内側部分に含有される融点の比較的低い金属が、ガス室へと蒸散することを抑制することができる。従って、本電気化学反応セルスタックによれば、ロウ付け部に含まれる金属が燃料極や空気極を被毒することを抑制し、ひいては、電気化学反応セルスタックの性能が低下することを抑制することができる。
【0010】
(2)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記セパレータは、前記セパレータの表面のうちの前記ロウ付け部に接する部分である周辺部分の少なくとも一部分が、前記共通の金属酸化物で形成されている構成としてもよい。換言すれば、本電気化学反応セルスタックでは、セパレータの周辺部分の上記一部分がロウ付け部に含まれる特定金属酸化物と同じ金属酸化物で形成されている。これにより、セパレータの周辺部分の上記一部分とロウ付け部との接着性が向上し、ロウ付け部によるシール性を向上させることができる。
【0011】
(3)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記金属は、Agであり、前記共通の金属酸化物は、アルミナである構成としてもよい。ロウ付け部に含有される特定金属酸化物を、比較的融点の高いアルミナとすることにより、電気化学反応セルスタックの運転中において、ロウ付け部中の金属が、ガス室へと蒸散することをより効率的に抑制することができる。また、Agを含有するロウ材(Agロウ)は、大気雰囲気でもロウ付け温度で酸化しにくい。すなわち、ロウ付け部に含有される金属をAgとすることにより、電気化学反応単セルとセパレータとを大気雰囲気で接合することができ、工程の効率が向上する。
【0012】
(4)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記特定電極は、前記燃料極であり、前記セパレータの貫通孔周囲部は、前記セパレータにおける前記電気化学反応単セルに対向する表面において、前記電気化学反応単セルの周縁部と接合されており、前記露出部分は、前記第1の方向視において、前記電気化学反応単セルの外側に位置している構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、電気化学反応セルスタックの運転中において、ロウ付け部に含有される金属が、燃料室へと蒸散して、燃料極を被毒することを抑制し、ひいては、電気化学反応セルスタックの性能が低下することを抑制することができる。
【0013】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、複数の電気化学反応単セル(燃料電池単セルまたは電解単セル)を備える電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、その製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図である。
図2図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。
図3図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。
図4図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。
図5図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
図6】接合部124の詳細構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.実施形態:
A-1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。また、本明細書では、Z軸に直交する方向を、面方向と呼ぶ。
【0016】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。
【0017】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ軸方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0018】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿通されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図2および図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0019】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0020】
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0021】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0022】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0023】
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【0024】
図4および図5に示すように、発電単位102は、燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という。)110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ軸方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿通される連通孔108に対応する孔が形成されている。
【0025】
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2および図3参照)。
【0026】
単セル110は、空気極(カソード)114と、燃料極(アノード)116と、空気極114と燃料極116との間に配置された電解質層112とを備える。本実施形態では、燃料極116の厚さ(上下方向のサイズ)が空気極114や電解質層112の厚さより厚く、燃料極116が単セル110を構成する他の層を支持している。すなわち、本実施形態の単セル110は、燃料極支持型の単セルである。
【0027】
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))を含むように構成されている。すなわち、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、例えばペロブスカイト型酸化物(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))を含むように構成されている。燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。燃料極116は、特許請求の範囲における特定電極に相当する。
【0028】
図4および図5に示すように、セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔121が形成されたフレーム状の部材である。本実施形態において、セパレータ120は、Al(アルミナ)で形成されている。セパレータ120の板厚は、比較的薄く、例えば0.05mm以上、0.2mm以下程度である。セパレータ120における貫通孔121を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、単セル110(電解質層112)の周縁部における上側の表面に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、単セル110(電解質層112)と接合されている。すなわち、セパレータ120は、燃料室176を画定している。このように、セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が抑制される。燃料室176は、特許請求の範囲におけるガス室に相当する。
【0029】
本実施形態では、単セル110とセパレータ120とを接合する接合部124は、Agを含有するロウ材により形成されている。接合部124を構成するロウ材としては、例えば、Agと金属酸化物との混合体(例えば、Ag-Al(AgとAl(アルミナ)との混合体)、Ag-CuO、Ag-TiO、Ag-Cr、Ag-SiO等)を用いることができる。接合部124におけるAg濃度は、90wt%以上、98wt%以下であることが好ましい。Agを含有するロウ材(Agロウ)は大気雰囲気でもロウ付け温度で酸化し難いため、接合部124としてAgロウを用いると、単セル110とセパレータ120とを大気雰囲気で接合することができ、工程の効率上好ましい。接合部124は、特許請求の範囲におけるロウ付け部に相当する。また、Agは、特許請求の範囲における金属に相当する。接合部124の構成については、後にさらに詳述する。
【0030】
また、本実施形態では、接合部124は、セパレータ120の貫通孔121の全周にわたって配置されている。図4および図5に示すように、接合部124は、燃料極116に供給されるガス(燃料ガスFG)の流路に面しており、より具体的には燃料室176に面している。本実施形態では、面方向(Z軸に直交する方向)の位置に関し、接合部124における外周側(燃料室176に面する側)の端部の位置が、単セル110(電解質層112)の端部の位置より外周側に位置している。すなわち、接合部124が、単セル110(電解質層112)とセパレータ120との間の空間から外周側に突出している。換言すれば、接合部124は、Z軸方向視において、単セル110とセパレータ120との重複部分OPと、重複部分OPに重ならない部分NP(以下、「非重複部分NP」という)とを有している(図4の部分拡大図参照)。接合部124のZ軸方向視での幅(重複部分OPと非重複部分NPとの合計長さ)は、例えば3mm~12mmであることが好ましく、接合部124の厚さ(Z軸方向のサイズ)は、例えば10μm~100μmであることが好ましい。また、接合部124の非重複部分NPの長さは、例えば1mm~4mmであることが好ましい。
【0031】
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0032】
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0033】
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。なお、燃料極側集電体144は、燃料極116における燃料極側集電体144に対向する表面の全領域の内、合計10~50%の面積の領域に接していることが好ましい。
【0034】
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として構成されていてもよい。また、空気極側集電体134が導電性のコートによって覆われていてもよく、また、空気極114と空気極側集電体134との間に両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。
【0035】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0036】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0037】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図2および図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図3および図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0038】
A-3.接合部124の詳細構成:
次に、接合部124の構成について、図6を参照して、さらに詳細に説明する。図6は、接合部124の詳細構成を示す説明図である。図6には、接合部124(より詳しくは、非重複部分NP)の一部分(図4のX1部)のXZ断面構成が拡大して示されている。上述したように、本実施形態における接合部124は、Agと金属酸化物(本実施形態では、Al)とを含んでいる。図6には、接合部124に含まれるAgの粒子(以下、「Ag粒子」という)PA1と、金属酸化物(Al)の粒子(以下、「金属酸化物粒子」という)PA2とが、模式的に示されている。
【0039】
図6に示すように、接合部124の非重複部分NPは、燃料室176に露出する露出部分310と、露出部分310よりも内側に位置する内側部分320と、を有している。本実施形態において、露出部分310は、Z軸方向視において、単セル110の外側に位置している。図4の部分拡大図に示すように、露出部分310は、非重複部分NPの側面S124sと、下面S124uとから構成されている。
【0040】
上述のように、接合部124の非重複部分NPは、Agと金属酸化物(より具体的には、Al)とを含んでいる。換言すれば、露出部分310と内側部分320とは、ともに、Alを含有している。また、本実施形態の接合部124では、露出部分310に含まれるAlの量は、内側部分320に含まれるAlの量と比較して多い。より具体的には、例えば、単位体積当たりのAlの含有率は、露出部分310において20wt%以上、100wt%以下であり、内側部分320において2wt%以上、10wt%以下である。また、Z軸方向における厚みは、例えば、露出部分310において1μm以上、20μm以下であり、内側部分320において10μm以上、100μm以下である。また、上述のように、本実施形態のセパレータ120は、Alで形成されている。すなわち、セパレータ120は、接合部124に含まれる金属酸化物と同じ金属酸化物で形成されている。なお、本実施形態では、燃料電池スタック100が備えるすべてのセパレータ120および接合部124において、上述のような構成が採用されている。
【0041】
A-4.セパレータ120を備える単セル110の製造方法:
本実施形態におけるセパレータ120を備える単セル110の製造方法は、例えば以下の通りである。
【0042】
まず、周知の方法により、貫通孔121が形成されたセパレータ120と、単セル110とを作製する。一方、接合部124を構成するためのペースト状のAgロウ材(例えば、3wt%のAlを含むAgロウ材)およびペースト状のAlを準備する。
【0043】
次に、セパレータ120の表面のうち、単セル110(電解質層112)の周縁部における上側の表面に対向する表面(以下、「セパレータ120の下面」ともいう)において、接合部124(重複部分OPおよび非重複部分NP)が形成される部分に上記Agロウ材をスクリーン印刷する。
【0044】
次に、単セル110(電解質層112)の周縁部を、セパレータ120の下面におけるAgロウ材が印刷された部分へと配置する。このとき、非重複部分NPが形成されるよう位置合わせして、単セル110(電解質層112)をセパレータ120へと配置する。
【0045】
次に、非重複部分NPが形成される部分において、上記Agロウ材の表面にペースト状のAlを塗布する。ペースト状のAlの塗布は、例えば、スクリーン印刷により行うことができる。その後、所定の温度(例えば、1000℃)に加熱して、ロウ付けを行う。以上により、セパレータ120を備える単セル110を製造することができる。
【0046】
A-5.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、電解質層112と、空気極114と、燃料極116とを含む単セル110と、燃料極116に面する燃料室176と、貫通孔121が形成されたセパレータ120とを備えている。セパレータ120の貫通孔周囲部は、単セル110の周縁部と接合され、燃料室176を画定している。また、燃料電池スタック100は、セパレータ120の貫通孔周囲部と、単セル110の周縁部とを接合する接合部124を有している。接合部124は、金属と金属酸化物とを含有している。本実施形態の燃料電池スタック100では、接合部124は、非重複部分NPにおいて、露出部分310と、内側部分320とを有している。露出部分310と、内側部分320とは、ともに、共通の金属酸化物(より具体的には、Al)を含有しており、露出部分310におけるAlの量は、内側部分320におけるAlの量と比較して多い。Alの融点は、金属(より具体的には、Ag)の融点と比較して、比較的高い。このように、燃料室176に露出する露出部分310に、融点が比較的高いAlを配置することにより、燃料電池スタック100の運転中において、内側部分320に含有される融点の比較的低いAgが、燃料室176へと蒸散することを抑制することができる。従って、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、接合部124に含まれるAgが燃料極116を被毒することを抑制し、ひいては、燃料電池スタック100の性能が低下することを抑制することができる。
【0047】
また、接合部124に含有される金属酸化物を、比較的融点の高いアルミナとすることにより、燃料電池スタック100の運転中において、接合部124中のAgが、燃料室176へと蒸散することをより効率的に抑制することができる。また、Agを含有するロウ材(Agロウ)は、大気雰囲気でもロウ付け温度で酸化しにくい。すなわち、接合部124に含有される金属をAgとすることにより、単セル110とセパレータ120とを大気雰囲気で接合することができ、工程の効率が向上する。
【0048】
本実施形態の燃料電池スタック100において、セパレータ120は、Alで形成されている。換言すれば、燃料電池スタック100では、セパレータ120が、接合部124に含有されている金属酸化物と同じ金属酸化物で形成されている。これにより、セパレータ120と接合部124との接着性が向上し、接合部124によるシール性を向上させることができる。
【0049】
A-6.接合部124におけるAlの含有率の特定方法:
接合部124におけるAlの含有率の特定方法は、以下の通りである。接合部124の露出部分310および内側部分320におけるAg/Alを測定する。この測定は、例えば、SEM-EDS分析により行うことができる。具体的には、露出部分310については、その表面部分を、内側部分320については、例えば、燃料電池スタック100のXZ断面において、Z軸方向における接合部124の中央部分を、測定することとすることができる。Alの含有率は、上記分析結果で得られたAg重量とAl重量との合計に占めるAl重量を計算することにより特定することができる。
【0050】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0051】
上記実施形態における燃料電池スタック100の構成や燃料電池スタック100を構成する各部分の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。上記実施形態では、燃料電池スタック100が備えるすべてのセパレータ120および接合部124において、上記構成が採用されているとしたが、これに限定されず、燃料電池スタック100が備える少なくとも一のセパレータ120および接合部124において、上記構成が採用された構成であってもよい。
【0052】
また、上記実施形態における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。例えば、上記実施形態では、接合部124に含有される金属として、Agを採用しているが、Au,Pt,Cu,Ni等の他の金属を利用可能である。また、上記実施形態では、接合部124に含有される金属酸化物として、Alを採用しているが、SiO,TiO,Cr,MgO,MnO,CaO,Y等の他の金属酸化物を利用可能である。また、例えば、上記実施形態では、燃料極116に含まれる酸化物イオン伝導性セラミックスとして、YSZを採用しているが、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)やGDC(ガドリニウムドープセリア)等の他の酸化物イオン伝導性セラミックスを利用可能である。
【0053】
また、上記実施形態におけるセパレータ120は、Al(アルミナ)で形成されているが、これに限定されず、フェライト系ステンレス等の金属からなる基材の表面にアルミナ被膜が形成されている構成であってもよい。また、このような構成において、アルミナ被膜は、少なくとも接合部124と接する部分に形成されていればよく、セパレータ120の全面または部分的に形成されうる。また、セパレータ120の形成材料は、アルミナに限定されず、他の金属酸化物であってもよいが、接合部124との接着性の向上の観点から、接合部124に含まれる金属酸化物と共通の金属酸化物であることが好ましい。
【0054】
また、上記実施形態において、接合部124の非重複部分NPは、燃料室176に面して位置しており、露出部分310は、燃料室176に露出しているが、このような形態に限定されない。すなわち、接合部124の非重複部分が空気室166に面して位置し、露出部分が空気室166に露出する構成であってもよい。このような構成において、露出部分は、Z軸方向視において、単セル110の内側に位置することとなる。このような構成においては、接合部124に含まれるAgが空気極114を被毒することを抑制し、ひいては、燃料電池スタックの性能が低下することを抑制することができる。
【0055】
また、上記実施形態におけるセパレータ120を備える単セル110の製造方法は、あくまで一例であり、種々変更可能である。
【0056】
また、上記実施形態では、電気化学反応単位として、クロスフロータイプの発電単位102を例示したが、これに限らず、酸化剤ガスの主たる流れ方向と燃料ガスの主たる流れ方向とが略反対方向(互いに対向する方向)であるカウンタフロータイプの構成や、酸化剤ガスの主たる流れ方向と燃料ガスの主たる流れ方向とが同じ方向であるコフロータイプの構成でもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、燃料電池スタック100は複数の平板形の単セル110が積層された構成であるが、本発明は、他の構成、例えば国際公開第2012/165409号に記載されているように、複数の略円筒形の燃料電池単セルが直列に接続された構成にも同様に適用可能である。
【0058】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルや、複数の電解単セルを備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号公報に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解単セルにおいて水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セルスタックにおいても、セパレータ120と単セル110とを接合する接合部124を有し、接合部124のうち、燃料室176(空気室166)に露出する部分である非重複部分NPに、上記構成を採用すれば、接合部124に含まれるAgが燃料極116(空気極114)を被毒することを抑制し、ひいては、燃料電池スタック100の性能が低下することを抑制することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本発明は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
22:ボルト 22A:ボルト 22B:ボルト 22D:ボルト 22E:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 100:燃料電池スタック 102:発電単位 104:エンドプレート 106:エンドプレート 108:連通孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 120:セパレータ 121:貫通孔 124:接合部 130:空気極側フレーム 131:孔 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電体 135:集電体要素 140:燃料極側フレーム 141:孔 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144:燃料極側集電体 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:インターコネクタ 161:酸化剤ガス導入マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス導入マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 310:露出部分 320:内側部分 FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス NP:非重複部分 OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス OP:重複部分 S124s:側面 S124u:下面
図1
図2
図3
図4
図5
図6