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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】移動誘導装置及び移動誘導方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20221214BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20221214BHJP
   G06F 3/0488 20220101ALI20221214BHJP
【FI】
G06F3/041 480
G06F3/01 560
G06F3/0488
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020203441
(22)【出願日】2020-12-08
(62)【分割の表示】P 2016208672の分割
【原出願日】2016-10-25
(65)【公開番号】P2021047897
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
【審査官】木村 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0268515(US,A1)
【文献】特開2016-110424(JP,A)
【文献】国際公開第2015/151380(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/01
G06F 3/0488
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の接触位置を検出するパネルと、
前記パネルの表面を振動させる第1振動部と、
前記パネルを前記パネルの表面に沿った方向に振動させる第2振動部と、
前記第1振動部および前記第2振動部を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1振動部により生じる前記パネルの表面に触れる前記物体と前記パネルとの摩擦抵抗の高低と、前記第2振動部により生じる前記パネルの表面に沿った方向への前記パネルの振動と、を制御し、
前記制御装置は、表示装置によって表示されて前記物体の接触位置を表すカーソルが前記表示装置によって表示される所定の図形に対して所定範囲以上離れている場合に、前記パネルが第1方向に移動する期間中は、前記摩擦抵抗を高くして、前記パネルへの前記物体の接触位置を移動させないようにすることで、前記カーソルと前記所定の図形との距離を変化させず、前記パネルが前記第1方向とは逆方向に移動する期間中は、前記摩擦抵抗を低くして、前記パネルへの前記物体の接触位置を前記第1方向に移動させることで、前記カーソルが前記所定の図形に近づくように制御し、
前記制御装置は、前記摩擦抵抗を高くするときに前記第1振動部を動作させず、前記摩擦抵抗を低くするときに前記第1振動部を動作させる、又は、前記摩擦抵抗を高くするときと前記摩擦抵抗を低くするときの双方で前記第1振動部を動作させ前記摩擦抵抗を高くするときと前記摩擦抵抗を低くするときで前記パネルの表面の振動を異ならせる、移動誘導装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1振動部による振動の振幅、及び前記第2振動部による振動の振幅の少なくとも一つを可変させて前記物体の前記パネルに対する相対移動量を調整する、請求項1に記載の移動誘導装置。
【請求項3】
物体の接触位置を検出するパネルの表面を振動させる第1振動工程と、
前記パネルを前記パネルの表面に沿った方向に振動させる第2振動工程と、
前記第1振動工程により生じる前記パネルの表面に触れる前記物体と前記パネルとの摩擦抵抗の高低と、前記第2振動工程により生じる前記パネルの表面に沿った方向への前記パネルの振動と、を制御し、表示装置によって表示されて前記物体の接触位置を表すカーソルが前記表示装置によって表示される所定の図形に対して所定範囲以上離れている場合に、前記パネルが第1方向に移動する期間中は、前記摩擦抵抗を高くして、前記パネルへの前記物体の接触位置を移動させないようにすることで、前記カーソルと前記所定の図形との距離を変化させず、前記パネルが前記第1方向とは逆方向に移動する期間中は、前記摩擦抵抗を低くして、前記パネルへの前記物体の接触位置を前記第1方向に移動させることで、前記カーソルが前記所定の図形に近づくように制御し、前記摩擦抵抗を高くするときに前記第1振動工程を実施せず、前記摩擦抵抗を低くするときに前記第1振動工程を実施する、又は、前記摩擦抵抗を高くするときと前記摩擦抵抗を低くするときの双方で前記第1振動工程を実施し前記摩擦抵抗を高くするときと前記摩擦抵抗を低くするときで前記パネルの表面の振動を異ならせる制御工程と、
を備える、移動誘導方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルの振動を利用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パネルの振動を利用する技術として、パネルの表面を振動させて触感を与える技術(ハプティクス技術)がある。ハプティクス技術は、例えば、タッチパネルの表面を振動させてタッチパネルを操作する操作者の指先に触感を与えて操作者にスイッチ操作感を与える用途等で用いられている(特許文献1参照)。また、タッチパネルの表面を高速で振動させることにより、タッチパネルの表面と操作者の指先との摩擦抵抗を減少させて操作者にツルツルと滑らかに滑る触感を与えることもできる(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-29590号公報
【文献】特開2016-110421号公報(段落0046-0048)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、技術の豊富化の観点から、パネルの振動を利用する技術はハプティクス技術以外にも展開できることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、パネルの振動を利用してパネルの表面に触れている物体の移動を誘導する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る移動誘導装置は、パネル装置と、制御装置と、を備える移動誘導装置であって、前記パネル装置は、パネルと、前記パネルの表面を振動させる第1振動部と、前記パネルを前記パネルの表面に沿った方向に振動させる第2振動部と、を備え、前記制御装置は、前記第1振動部を制御する第1振動制御部と、前記第2振動部を制御する第2振動制御部と、を備える構成(第1の構成)である。
【0007】
また、上記第1の構成の移動誘導装置において、前記第1振動制御部は、第1周波数範囲で前記パネルの表面が振動するように前記第1振動部を制御し、前記第2振動制御部は、第2周波数範囲で前記パネルが振動するように前記第2振動部を制御し、前記第1周波数範囲は前記第2周波数範囲より高い構成(第2の構成)であってもよい。
【0008】
また、上記第1又は第2の構成の移動誘導装置において、前記第2振動部が前記パネルを第1方向に移動させている場合と、前記第2振動部が前記パネルを前記第1方向の逆方向に移動させている場合とで、前記第1振動制御部が異なる制御を行う構成(第3の構成)であってもよい。
【0009】
また、上記第3の構成の移動誘導装置において、前記第2振動部が前記パネルを第1方向に移動させている場合に、前記第1振動制御部が前記第1振動部を動作させ、前記第2振動部が前記パネルを前記第1方向の逆方向に移動させている場合に、前記第1振動制御部が前記第1振動部を動作させない構成(第4の構成)であってもよい。
【0010】
また、上記第1~第4いずれかの構成の移動誘導装置において、前記第1周波数範囲、前記第2周波数範囲、前記第1振動部による振動の振幅、及び前記第2振動部による振動の振幅の少なくとも一つが可変する構成(第5の構成)であってもよい。
【0011】
また、上記第1~第5いずれかの構成の移動誘導装置において、前記パネルは、タッチされた位置を検出するタッチパネルであり、前記第1振動制御部及び前記第2振動制御部の少なくとも一方は、前記タッチパネルの検出結果に基づく制御を行う構成(第6の構成)であってもよい。
【0012】
また、上記第6の構成の移動誘導装置において、前記制御装置は、表示画像データに基づく画像を表示装置に表示させる表示制御部をさらに備え、前記第1振動制御部及び前記第2振動制御部の少なくとも一方は、前記表示画像データ及び前記タッチパネルの検出結果に基づく制御を行う構成(第7の構成)であってもよい。
【0013】
また、上記第7の構成の移動誘導装置において、前記表示装置をさらに備える構成(第8の構成)であってもよい。
【0014】
また、上記第8の構成の移動誘導装置において、前記パネルは、タッチされた位置を検出するタッチパネルであり、前記表示装置の表示面側に配置される構成(第9の構成)であってもよい。
【0015】
また、上記第7又は第8の構成の移動誘導装置において、前記画像が、所定の図形と、前記タッチされた位置を表すカーソルと、を含み、前記カーソルが前記所定の図形に近づくように、前記第1振動制御部及び前記第2振動制御部の少なくとも一方は、前記表示画像データ及び前記タッチパネルの検出結果に基づく制御を行う構成(第10の構成)であってもよい。
【0016】
また、上記第9の構成の移動誘導装置において、前記画像が、所定の図形を含み、前記タッチされた位置が前記所定の図形に近づくように、前記第1振動制御部及び前記第2振動制御部の少なくとも一方は、前記表示画像データ及び前記タッチパネルの検出結果に基づく制御を行う構成(第11の構成)であってもよい。
【0017】
本発明に係るパネル装置は、パネルと、前記パネルの表面を振動させる第1振動部と、前記パネルを前記パネルの表面に沿った方向に振動させる第2振動部と、を備える構成(第12の構成)である。
【0018】
また、上記第12の構成のパネル装置において、表示装置をさらに備え、前記パネルは、タッチされた位置を検出するタッチパネルであり、前記表示装置の表示面側に配置される構成(第13の構成)であってもよい。
【0019】
本発明に係る制御装置は、上記第12の構成のパネル装置を制御する制御装置であって、前記パネル装置が備える前記第1振動部を制御する第1振動制御部と、前記パネル装置が備える前記第2振動部を制御する第2振動制御部と、を備える構成(第14の構成)である。
【0020】
また、上記第14の構成の制御装置において、表示画像データに基づく画像を表示装置に表示させる表示制御部をさらに備え、前記パネル装置が備える前記パネルは、タッチされた位置を検出するタッチパネルであり、前記第1振動制御部及び前記第2振動制御部の少なくとも一方は、前記表示画像データ及び前記タッチパネルの検出結果に基づく制御を行う構成(第15の構成)であってもよい。
【0021】
本発明に係る移動誘導方法は、パネルの表面を振動させる工程と、前記パネルを前記パネルの表面に沿った方向に振動させる工程と、を備える構成(第16の構成)である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、パネルの表面を振動させることにより、パネルの表面に触れている物体とパネルの表面との摩擦抵抗を低減することができる。また、本発明によれば、パネルをパネルの表面に沿った方向に振動させることで、パネルの表面に触れている物体とパネルの表面との摩擦抵抗が低い状態におけるパネルの表面に触れている物体とパネルとの相対移動が可能になる。したがって、本発明によれば、パネルの振動を利用してパネルの表面に触れている物体の移動を誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る移動誘導装置の概略構成を示す図
図2】第1実施形態に係る移動誘導装置が搭載される車両内の様子を車室内後方から視た部分概略図
図3】タッチパネルの概略正面図
図4】パネル装置の概略正面図
図5】制御装置の処理の流れを示す図
図6】表示装置によって表示される画像の例を示す図
図7】タッチパネルの移動方向、摩擦抵抗、及びタッチ位置のタイムチャート
図8A】パネル装置の縦断面模式図
図8B】パネル装置の縦断面模式図
図8C】パネル装置の縦断面模式図
図8D】パネル装置の縦断面模式図
図9】第2実施形態に係る移動誘導装置の概略構成を示す図
図10】第2実施形態に係る移動誘導装置が搭載される車両内の様子を車室内後方から視た部分概略図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
<<1.第1実施形態>>
<1-1.移動誘導装置の構成>
図1は、第1実施形態に係る移動誘導装置100の概略構成を示す図である。図2は、移動誘導装置100が搭載される車両内の様子を車室内後方から視た部分概略図である。
【0026】
図1に示すように、移動誘導装置100は、パネル装置1と、制御装置2と、を備えている。制御装置2は、パネル装置1及び表示装置3を制御する。
【0027】
パネル装置1は、車両の運転者が操作可能な位置に設けられる。具体的には、パネル装置1は、図2に示すように運転席と助手席との間に設けられる。表示装置3は、車両の運転者が視認可能な位置に設けられる。具体的には、表示装置3は、図2に示すようにダッシュボードの中央に設けられる。表示装置3を図2に示すように車両の比較的前方に設置することで、車両の運転者が運転中に表示装置3の表示を確認するときの視点移動が少なくなる。
【0028】
<1-2.パネル装置の構成>
図1に示すように、パネル装置1は、タッチパネル11と、第1振動部12と、第2振動部13と、を備えている。
【0029】
タッチパネル11は、タッチされた位置(以下、「タッチ位置」と略すことがある。)を検出する。タッチパネル11の表面は、例えば車両の運転者の指等によってタッチされる。すなわち、タッチパネル11の表面は操作面である。
【0030】
第1振動部12は、タッチパネル11の表面を振動させる。具体的には、第1振動部12は図3に示す振動子12a~12dによって構成され、振動子12a~12dは図3に示すようにタッチパネル11の表面11aの四隅に固定される。なお、振動子の個数や配置は図3に示す例に限定されるものではない。振動子としては、例えば、ピエゾ素子などの圧電素子を用いることができる。
【0031】
第2振動部13は、タッチパネル11をタッチパネル11の表面に沿った方向に振動させる。具体的には、第2振動部13は図4に示すソレノイドアクチュエータ13a~13dによって構成される。
【0032】
ソレノイドアクチュエータ13a~13dはそれぞれ、可動鉄心と、図示しないコイルを有する本体部と、を備えている。ソレノイドアクチュエータ13a及び13cの可動鉄心は、軸方向がタッチパネル11の短手方向に沿うように、タッチパネル11の長手方向中央部に固定される。ソレノイドアクチュエータ13b及び13dの可動鉄心は、軸方向がタッチパネル11の長手方向に沿うように、タッチパネル11の短手方向中央部に固定される。
【0033】
図4に示すように、パネル装置1は、弾性部材14a~14dと、筐体15と、をさらに備えている。ソレノイドアクチュエータ13a~13dの本体部はそれぞれ、筐体15に固定される。弾性部材14a~14dは、タッチパネル11と筐体15とを連結し、タッチパネル11を弾性支持する。弾性部材14a~14dは、バネに限定されるものではなく、例えばスポンジやゴム等を用いてもよい。タッチパネル11は、ソレノイドアクチュエータ13a及び13cが駆動することでタッチパネル11の短手方向に振動し、ソレノイドアクチュエータ13b及び13dが駆動することでタッチパネル11の長手方向に振動する。なお、タッチパネル11の短手方向及びタッチパネル11の長手方向ともにタッチパネル11の表面に沿った方向である。
【0034】
パネル装置1は、図示しない枠体をさらに備えている。この枠体は、振動子12a~12d、ソレノイドアクチュエータ13a~13d、及び弾性部材14a~14dを覆い隠す。
【0035】
<1-3.制御装置の構成>
図1に示すように、制御装置2は、制御部21と、記憶部22と、を備えている。
【0036】
制御部21は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を備えるコンピュータである。制御部21は、制御装置2が備える記憶部22等と接続され、記憶部22に記憶されたプログラム22aに基づいて情報の処理及び送受信を行い、パネル装置1及び表示装置3を制御する。
【0037】
制御部21は、第1振動制御部21aと、第2振動制御部21bと、位置情報生成部21cと、表示制御部21dと、を備えている。記憶部22に記憶されたプログラム22aにしたがってCPUが演算処理を実行することにより、第1振動制御部21a等の制御部21の各種機能が実現される。
【0038】
第1振動制御部21aは第1振動部12を制御する。具体的には、第1振動制御部21aは、タッチパネル11の表面が振動するように第1振動部12を制御する。この表面の振動によって、タッチパネル11の表面に触れている物体とタッチパネル11の表面との間に高圧の空気膜が発生すると、タッチパネル11の表面に触れている物体とタッチパネル11の表面との摩擦抵抗が低減する。なお、タッチパネル11の表面を高速で振動させると、タッチパネル11の表面に触れている物体とタッチパネル11の表面との間に高圧の空気膜が発生する確実性を高めることができる。この高速での振動とは例えば超音波振動である。
【0039】
第2振動制御部21bは第2振動部13を制御する。具体的には、第2振動制御部21bは、タッチパネル11がタッチパネル11の表面に沿った方向に振動するように第2振動部13を制御する。例えば、タッチパネル11の表面が平面である場合には、その平面の法線方向に略垂直な方向がタッチパネル11の表面に沿った方向となる。この表面に沿った方向の振動によって、タッチパネル11の表面に触れている物体とタッチパネル11の表面との摩擦抵抗が低い状態におけるタッチパネル11の表面に触れている物体とタッチパネル11との相対移動が可能になる。したがって、タッチパネル11の振動を利用してタッチパネル11の表面に触れている物体の移動を誘導することができる。タッチパネル11をタッチパネル11の表面に沿った方向に低速で振動させると、上記の相対移動が発生する確実性を高めることができる。この低速での振動とは例えば数十Hz~数百Hzでの振動である。以上により、タッチパネル11の振動を利用してタッチパネル11の表面に触れている物体の移動を誘導する確実性を高めるためには、第1振動部12がタッチパネル11の表面を振動させる際の振動周波数範囲は、第2振動部13がタッチパネル11をタッチパネル11の表面に沿った方向に振動させる際の振動周波数範囲より高いことが望ましい。
【0040】
位置情報生成部21cは、タッチパネル11から検出結果を受け取り、タッチパネル11の検出結果に基づいて、タッチ位置に関する位置情報(例えば、タッチ位置の座標情報)を作成し、表示制御部21dに出力する。なお、タッチパネル11が感圧式タッチパネルである場合には、位置情報生成部21cは、位置情報に加えて、タッチ位置に与えられた圧力に関する圧力情報も作成し、表示制御部21dに出力する。
【0041】
表示制御部21dは、位置情報生成部21cから出力される位置情報に基づいて表示画像データを作成し、その表示画像データに基づく画像を表示装置3に表示させる。なお、タッチパネル11が感圧式タッチパネルである場合には、表示制御部21dは、位置情報生成部21cから出力される位置情報及び圧力情報に基づいて表示画像データを作成し、その表示画像データに基づく画像を表示装置3に表示させる。
【0042】
<1-4.制御装置の処理>
図5は、制御装置2の処理の流れを示す図である。制御装置2が起動すると、タッチパネル11はタッチされた位置を検出し、位置情報生成部21cはタッチ位置に関する位置情報を作成する(ステップS1)。
【0043】
次に、表示制御部21dは、位置情報生成部21cから出力される位置情報に基づいて表示画像データを作成し、その表示画像データに基づく画像を表示装置3に表示させる(ステップS2)。本実施形態では、表示装置3によって表示される画像は、図6に示すように、アイコン等の所定の図形3aと、タッチ位置を表すカーソル3bとを含んでいる。
【0044】
次に、第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bは、タッチ位置の移動を誘導する必要があるか否かを判定する(ステップS3)。例えば、カーソル3bが所定の図形3aに対して所定範囲以上離れている場合に、タッチ位置の移動を誘導する必要があると判定され、後述するステップS4において、カーソル3bが所定の図形3aに近づくように第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bが振動の制御を行うとよい。これにより、所定の図形3aを選択する操作が楽になり、タッチパネル11の操作性が向上する。なお、所定の図形3aを選択する操作は、タッチパネル11が感圧式タッチパネルである場合には、例えば、所定の図形3aとカーソル3bとが重なった状態でタッチ位置に与えられる圧力が閾値を超えるようにタッチ位置を押すようにすればよく、タッチパネル11が感圧式タッチパネルでない場合には、例えば、所定の図形3aとカーソル3bとが重なった状態が一定時間を超えるようにタッチ位置を固定するようにすればよい。
【0045】
タッチ位置の移動を誘導する必要がないと判定された場合には、ステップS1の処理に戻る。一方、タッチ位置の移動を誘導する必要があると判定された場合には、第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bが表示画像データ及びタッチパネル11の検出結果に基づく振動の制御を行う(ステップS4)。これにより、表示装置3の表示内容及びタッチ位置に適したタッチ位置の移動を誘導することができる。
【0046】
ここで、図7及び図8A図8Dを用いてタッチ位置の移動を右方向に誘導する場合を例に挙げて第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bが行う振動の制御について説明する。図7は、タッチパネル11の移動方向、タッチパネル11の表面と操作者の指F1との摩擦抵抗、及びタッチ位置のタイムチャートである。図8A図8Dは、パネル装置1の縦断面模式図である。
【0047】
第2振動制御部21bは、第2振動部13を制御して、タッチパネル11をタッチパネル11の長手方向に振動させ、タッチパネル11の移動方向を右方向と左方向とに交互に切り替えている。そして、タッチパネル11が右方向に移動している期間(期間P1、P3等)とタッチパネル11が左方向に移動している期間(期間P2等)とで第1振動制御部21aが異なる制御を行うことで、タッチ位置の移動を右方向又は左方向に誘導することができる。ここでは、タッチパネル11が右方向に移動している期間(期間P1、P3等)において上記の摩擦抵抗を高くし、タッチパネル11が左方向に移動している期間(期間P2等)において上記の摩擦抵抗を低くして、タッチ位置の移動を右方向に誘導している。
【0048】
例えば、タッチパネル11が右方向に移動している期間(期間P1、P3等)において第1振動制御部21aが第1振動部1を動作させないことで、上記の摩擦抵抗を高くし、タッチパネル11が左方向に移動している期間(期間P2等)において第1振動制御部21aが第1振動部12を動作させることで、上記の摩擦抵抗を低くすることができる。このような第1振動部12の間欠動作を実施した場合、第1振動制御部21aの制御処理が簡単になる。
【0049】
図8Aは期間P1の開始時点でのパネル装置1と操作者の指F1との位置関係を示している。期間P1では摩擦抵抗が高いため、操作者の指F1はタッチパネル11に対して滑らずにタッチパネル11とともに右方向に移動する。したがって、期間P1ではタッチ位置は移動せず、タッチパネル11の左端からタッチ位置までの距離はL1のままである。そして、期間P1の終了時点及び期間P2の開始時点では、パネル装置1と操作者の指F1との位置関係は図8Bに示すようになる。
【0050】
期間P2では摩擦抵抗が低いため、操作者の指F1はタッチパネル11に対して滑りタッチパネル11だけが左方向に移動する。したがって、期間P2ではタッチ位置は移動し、タッチパネル11の左端からタッチ位置までの距離はL1より長くなる。そして、期間P2の終了時点及び期間P3の開始時点では、パネル装置1と操作者の指F1との位置関係は図8Cに示すようになり、タッチパネル11の左端からタッチ位置までの距離はL2(>L1)になる。
【0051】
期間P3では再び摩擦抵抗が高くなり、操作者の指F1はタッチパネル11に対して滑らずにタッチパネル11とともに右方向に移動する。したがって、期間P3ではタッチ位置は移動せず、タッチパネル11の左端からタッチ位置までの距離はL2のままである。そして、期間P3の終了時点では、パネル装置1と操作者の指F1との位置関係は図8Dに示すようになる。
【0052】
以上のような振動制御を繰り返すことにより、タッチ位置の右方向への移動を誘導することができる。なお、第1振動制御部21aは、タッチパネル11の表面の振動周波数及び振動振幅の少なくとも一つを可変することで、上記の摩擦抵抗を調整することができる。また、第2振動制御部21bは、タッチパネル11の表面に沿った方向の振動の振動周波数及び振動振幅の少なくとも一つを可変することで、上記の摩擦抵抗が低いときにおけるパネル装置1と操作者の指F1との相対移動量を調整することができる。したがって、タッチパネル11の表面の振動周波数、タッチパネル11の表面の振動振幅、タッチパネル11の表面に沿った方向の振動の振動周波数、及びタッチパネル11の表面に沿った方向の振動の振動振幅の少なくとも一つを可変することで、タッチ位置の移動の誘導力を調整することできる。このため、第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bの一方が表示画像データ及びタッチパネル11の検出結果にかかわらず定型の振動制御を行い、第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bの他方が表示画像データ及びタッチパネル11の検出結果に基づく振動制御を行うようにしてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、第2振動部13が2軸(タッチパネル11の長手方向、タッチパネル11の短手方向)の振動を行うので、各軸の誘導力を調整することで、タッチパネル11の表面に沿った任意の方向にタッチ位置の移動を誘導できる。なお、第2振動部13における2軸の振動は、一方の軸の振動と他方の軸の振動とを時分割で実施しても、2軸同時に実施してもよい。時分割の場合は、タッチパネル11の長手方向への誘導力とタッチパネル11の短手方向への誘導力とが交互に発生する。2軸同時の場合は、一方の軸の振動振幅と他方の軸の振動振幅との比率に応じた方向への誘導力が発生する。
【0054】
上述したステップS4の処理が終わると、第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bは、図5に示すように、タッチ位置の移動を誘導することを完了するか否かを判定する(ステップS5)。例えば、第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bは、カーソル3bが所定の図形3aに対して所定距離未満にまで近づいた場合に、タッチ位置の移動を誘導することを完了すると判定する。タッチ位置の移動を誘導することを完了しないと判定された場合には、ステップS4に戻る。一方、タッチ位置の移動を誘導することを完了すると判定された場合には、第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bの振動制御を終了してから、ステップS1に戻る。
【0055】
<1-5.変形例>
以上、第1実施形態について説明したが、本発明は第1実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。以下では、第1実施形態の変形例について説明する。なお、第1実施形態及びその変形の全ての要素と、後述する第2実施形態及びその変形の全ての要素とは、矛盾のない限り適宜組み合わせて実施することができる。
【0056】
制御部21は、上記の第1実施形態で説明した機能以外の機能を有してもよい。例えば、制御部21は、目的地までの走行経路を案内するナビゲーション機能を有してもよい。制御部21がナビゲーション機能を有する場合、例えば、記憶部22が全国又は一定の広域の道路情報を含む地図情報を記憶し、GPS(Global Positioning System)受信部等の位置情報取得部を制御装置2に設け、その位置情報取得部が移動誘導装置100の現在位置を示す位置情報を制御部21に出力するようにすればよい。
【0057】
上記の第1実施形態では、移動誘導装置100が表示装置3を備えていない構成であったが、表示装置3を移動誘導装置100に含めてもよい。
【0058】
上記の第1実施形態では、プログラムに従ったCPUの演算処理によってソフトウェア的に各種の機能が実現されていると説明したが、これらの機能のうちの一部は電気的なハードウェア回路により実現されてもよい。また逆に、ハードウェア回路によって実現されるとした機能のうちの一部は、ソフトウェア的に実現されてもよい。
【0059】
上記の第1実施形態では、移動誘導装置100が表示制御部21dを備えている構成であったが、表示制御部21dを移動誘導装置100に含めなくてもよい。
【0060】
上記の第1実施形態では、タッチパネル11の表面に沿った任意の方向にタッチ位置の移動を誘導できるように第2振動部13による振動を2軸の振動としたが、直線上の移動を誘導できるだけでよい場合には第2振動部13による振動を1軸の振動としてもよい。
【0061】
上記の第1実施形態では、第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bの少なくとも一つが表示画像データ及びタッチパネル11の検出結果に基づく振動制御を行ったが、第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bのいずれもが表示画像データに基づく振動制御を行わずに、第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bの少なくとも一つがタッチパネル11の検出結果に基づく振動制御を行ってもよい。例えば、タッチパネル11の定位置(例えばタッチパネル11の表面中央)にタッチ位置の移動を誘導するように、第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bの少なくとも一つがタッチパネル11の検出結果に基づいて振動制御を行ってもよい。これにより、操作者がタッチ位置の移動の誘導力に抗してタッチパネル11を操作しない限り、タッチ位置がタッチパネル11の定位置に収まり、その結果、図6に示すカーソル3bも表示装置3の表示画面の定位置に収まる。
【0062】
上記の第1実施形態では、パネル装置1がタッチパネル11を備える構成であったが、パネル装置1がタッチパネル以外のパネルを備える構成であってもよい。パネル装置1が備えるパネルは特別な機能を有さないパネルであってもよく、この場合、例えば、パネルの上に軽量物(例えば紙製の工作物等)を載せて、その軽量物をパネルの上で移動させる玩具として移動誘導装置100を利用することができる。
【0063】
<<2.第2実施形態>>
図9は、第2実施形態に係る移動誘導装置200の概略構成を示す図である。図10は、移動誘導装置200が搭載される車両内の様子を車室内後方から視た部分概略図である。
【0064】
移動誘導装置200の大部分は移動誘導装置100と同様の構成であるため、以下では移動誘導装置200が移動誘導装置100と異なっている部分について説明し、移動誘導装置200が移動誘導装置100と同様である部分については説明を省略する。
【0065】
図9に示すように、移動誘導装置200は、パネル装置1と、制御装置2と、を備えている。移動誘導装置200においては、パネル装置1が表示装置3を備えている。タッチパネル11は表示装置3の表示面側に配置される。本実施形態におけるパネル装置1は、いわゆるタッチパネルディスプレイと称されるものである。
【0066】
パネル装置1は、車両の運転者が視認可能であって尚且つ操作可能な位置に設けられる。具体的には、パネル装置1は、図10に示すように車両のセンターコンソールに設けられる。
【0067】
本実施形態では、タッチ位置に対応する表示装置3の表示領域はタッチパネル11をタッチする指等によって隠れるので、表示装置3によって表示される画像は、図6に示すアイコン等の所定の図形3aを含むが、図6に示すタッチ位置を表すカーソル3bを含まない。
【0068】
そのため、第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bは、タッチ位置の移動を誘導する必要があるか否かを判定する際に、例えば、タッチ位置が所定の図形3aに対して所定範囲以上離れている場合に、タッチ位置の移動を誘導する必要があると判定し、タッチ位置が所定の図形3aに近づくように第1振動制御部21a及び第2振動制御部21bが振動の制御を行うようにする。これにより、所定の図形3aを選択する操作が楽になり、タッチパネル11の操作性が向上する。なお、所定の図形3aを選択する操作は、タッチパネル11が感圧式タッチパネルである場合には、例えば、所定の図形3aとタッチ位置が重なった状態でタッチ位置に与えられる圧力が閾値を超えるようにタッチ位置を押すようにすればよく、タッチパネル11が感圧式タッチパネルでない場合には、例えば、所定の図形3aとタッチ位置とが重なった状態が一定時間を超えるようにタッチ位置を固定するようにすればよい。
【0069】
以上、第2実施形態について説明したが、本発明は第2実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。以下では、第2実施形態の変形例について説明する。なお、第1実施形態と同様の変形例については説明を省略する。
【0070】
上記の第2実施形態では、タッチパネル11が操作装置として用いられているが、タッチパネル11を操作以外の用途で利用してもよい。
【0071】
例えば、タッチパネル11をタッチしている指等を移動させるためにタッチ位置の移動の誘導力を用いるのではなく、タッチパネル11の表面の仮想的な傾きや凹凸をタッチパネル11の表面をタッチしている指等に感じさせるためにタッチ位置の移動の誘導力を用いることができる。この利用法によれば、タッチパネル11に触れることで仮想的な立体形状を体感することができる。
【0072】
また例えば、表示装置2に文字や図形を表示させ、タッチパネル11の表面をタッチしている指等がその文字や図形をなぞるようにタッチ位置の移動の誘導力を用いることができる。これにより、文字を書いたりや図形を描いたりする練習を支援することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 パネル装置
2 制御装置
3 表示装置
3a 所定の図形
3b カーソル
11 タッチパネル
12 第1振動部
13 第2振動部
21 制御部
21a 第1振動制御部
21b 第2振動制御部
21d 表示制御部
100、200 移動誘導装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10