(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】三環式基を有するトル様受容体7(TLR7)アゴニスト、そのコンジュゲート、ならびにそれらの方法および使用
(51)【国際特許分類】
C07D 473/18 20060101AFI20221214BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20221214BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20221214BHJP
A61K 31/541 20060101ALI20221214BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20221214BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
C07D473/18 CSP
A61K47/68
A61K47/60
A61K31/541
A61P31/00
A61P37/04
(21)【出願番号】P 2020509077
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(86)【国際出願番号】 US2018000244
(87)【国際公開番号】W WO2019035969
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-08-12
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【氏名又は名称】水原 正弘
(72)【発明者】
【氏名】イアン・エス・ヤング
(72)【発明者】
【氏名】サンジーブ・ギャングウォー
(72)【発明者】
【氏名】ショシャナ・エル・ポージー
(72)【発明者】
【氏名】ヤム・ビー・ポウデル
(72)【発明者】
【氏名】プラサンナ・シヴァプラカサム
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-508373(JP,A)
【文献】特表2010-532353(JP,A)
【文献】国際公開第98/006720(WO,A1)
【文献】特表2012-517428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 473/18
A61K 47/68
A61K 47/60
A61K 31/541
A61P 31/00
A61P 37/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I
):
【化1】
[式中、
R
1は、(C
1-C
5アルキル)O、(C
1-C
2アルキル)O(CH
2)
2-3O、(C
1-C
5アルキル)C(=O)O、(C
1-C
5アルキル)NH、(C
1-C
2アルキル)O(CH
2)
2-3NHまたは(C
1-C
5アルキル)C(=O)NHであり;
R
2およびR
3は、各々独立して、H、C
1-C
3アルキル、ハロ、O(C
1-C
3アルキル)、CNまたはNO
2であり、ここで1つのR
3は、(CH
2)
xR
4(式中、下付き文字xは、1、2、3または4である)により置換されていてもよく;
R
4は、H、ハロ、OH、CN、NH
2、NH(C
1-C
5アルキル)、N(C
1-C
5アルキル)
2、NH(C
3-C
6シクロアルキル)、NH(C
4-C
8ビシクロアルキル)、NH(C
6-C
10スピロシクロアルキル)、N(C
3-C
6シクロアルキル)
2、NH(CH
2)
1-3(アリール)、N((CH
2)
1-3(アリール))
2、構造:
【化2】
を有する環状アミン基、6員環の芳香族基またはヘテロ芳香族基、あるいは5員環のヘテロ芳香族基であり;
ここで、アルキル、シクロアルキル、ビシクロアルキル、スピロシクロアルキル、環状アミン、6員環の芳香族基またはヘテロ芳香族基、あるいは5員環のヘテロ芳香族基は、所望により、OH、ハロ、CN、(C
1-C
3アルキル)、O(C
1-C
3アルキル)、C(=O)(Me)、SO
2(C
1-C
3アルキル)、C(=O)(Et)、NH
2、NH(Me)、N(Me)
2、NH(Et)、N(Et)
2およびN(C
1-C
3アルキル)
2から選択される1以上の置換基で置換されていてもよく;および
シクロアルキル、ビシクロアルキル、スピロシクロアルキルまたは環状アミン基は、O、S、NH、N(C
1-C
3アルキル)またはN(Boc)により置換されたCH
2基を有していてもよく;
R
5は、各々独立して、O、SまたはNR
6であり;
R
6は、HまたはC
1-C
3アルキルであり;
X
1は、各々独立して、CR
2またはNであり;
および
X
2は、各々独立して、CR
3またはNであ
る]
の構造を有する、化合物。
【請求項2】
R
4が、OH、NH(CHMe
2)、NHCH
2C
6H
5、NHMe、NHCH
2CH
2OH、
【化3】
である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式(Ia):
【化4】
により示される構造を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
R
4が、OH、NH(CHMe
2)、NHCH
2C
6H
5、NHMe、NHCH
2CH
2OH、
【化5】
である、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
R
1が、n-BuOであり、下付き文字xが1である、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
【化6】
から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
抗体にコンジュゲートされる、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
2kDa~40kDaの大きさのポリ(エチレングリコール)基と共有結合される、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物を含む、トル様受容体7の活性化により治療できる症状を治療するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、35U.S.C.§119(e)のもとに、米国仮出願第62/546,151号(2017年8月16日出願)の優先権を主張し、その内容は引用により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本開示は、トル様受容体7(「TLR7」)アゴニストおよびそのコンジュゲート、ならびに前記アゴニストおよびそれらのコンジュゲートの製造および使用のための方法に関する。
【0003】
トル様受容体(「TLR」)は、病原体関連分子パターン(「PAMPs」)を認識する細胞-表面受容体である。対応するPAMPの結合によりTLRが活性化することにより、病原体感染の可能性が伝達され、免疫系が刺激され、感染に対抗する。ヒトは、11個のTLR、即ちTLR1~TLR11を有している。
【0004】
アゴニストによるTLRの活性化(TLR7が最も研究されているが)は、免疫応答を刺激することにより、実在の病原体感染以外の様々な症状を治療する際に、ワクチンおよび免疫治療剤の作用に対してアジュバンド効果を有し得る。
【0005】
TLR7は、一本鎖RNAウイルスと関連があるPAMPsを認識する。その活性化により、I型インターフェロン、例えばIFNαおよびIFNβの分泌が誘導される(Lund et al. 2004)。TLR7は、2つの結合部位、即ちssRNA40などの一本鎖RNAリガンドに対して1つの結合部位(Berghoefer et al. 2007)およびグアノシンに対して1つの結合部位(Zhang et al. 2016)を有する。
【0006】
TLR7は、1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン骨格をベースとするイミキモド、レシキモドおよびガルジキモドなどのグアノシン様合成アゴニストに結合して、活性化され得る。
【化1】
【0007】
プテリジン分子骨格をベースとした合成TLR7アゴニストもまた知られており、例として、第二相臨床試験中であるベサトリモドが挙げられる(Desai et al. 2015)。ベサトリモドの効力は、IFN-α誘導を測定した場合に、対応するプリン-8-オン化合物の効力と比べて100X未満であることが報告されている(Roethle et al. 2013)。
【化2】
【0008】
その他の合成TLR7アゴニストは、多くは、式(A):
【化3】
(式中、R、R'およびR''は、構造可変基であり、R''は、通常、非置換または置換された芳香環またはヘテロ芳香環を含有している)
に関するプリン様骨格をベースとしている。
【0009】
プリン様骨格を有する生物活性分子、および線維症、炎症性疾患、癌または病原性感染などの症状を治療する際のその使用に関する開示物は、次のものを包含する:Akinbobuyi et al. 2015b and 2016;Barberis et al. 2012;Carson et al. 2014;Ding et al. 2016, 2017a, and 2017b;Graupe et al. 2015;Hashimoto et al. 2009;Holldack et al. 2012;Isobe et al. 2009a and 2012;Jin et al. 2017a and 2017b;Peterson 2014;Pryde 2010;and Seifert 2015。
【0010】
基R''は、ピリジルであり得る:Bonfanti et al. 2015a and 2015b;Halcomb et al. 2015;Hirota et al. 2000;Isobe et al. 2000, 2002, 2004, 2006, 2009a, 2011, and 2012;Kasibhatla et al. 2007;Koga-Yamakawa et al. 2013;Musmuca et al. 2009;Nakamura 2012;Ogita et al. 2007;and Yu et al. 2013。
【0011】
Bonfantiら(2015b)は、プリン基部分の2つの環に跨って、一つのマクロ環を形成するTLR7モジュレーターを開示している:
【化4】
【0012】
TLR7アゴニストは、パートナー分子、例えばリン脂質、ポリ(エチレングリコール)(「PEG」)または別のTLR(一般的にはTLR2)と結合され得る。開示物の例としては、次のものを包含する:Carson et al. 2013, 2015, and 2016, Chan et al. 2009 and 2011, Lioux et al. 2016, Maj et al. 2015, Ban et al. 2017;Vernejoul et al. 2014, およびZurawski et al. 2012。抗体とのコンジュゲーションも開示されている:Akinbobuyi et al. 2013 and 2015a, and Gadd et al. 2015。コンジュゲーション部位は、高頻度で式(A)のR''基である。
【0013】
5H-ピロロ[3,2-d]ピリミジンの母核をベースとしたTLR7アゴニストも開示されている(Cortez et al. 2017a and 2017b, McGowan et al. 2017, and Li et al. 2018を参照されたい)。
【0014】
Jensenら(2015)は、TLR7アゴニストを送達するために、カチオン性脂質ビヒクルの使用を開示している。
【0015】
レシキミドなどの幾つかのTLR7アゴニストは、二重TLR7/TLR8アゴニストである(例えば、Beesu et al. 2017;Lioux et al. 2016;およびVernejoul et al. 2014を参照されたい)。
【0016】
5H-ピロロ[3,2-d]ピリミジンの母核をベースとしたTLR7アゴニストも開示されている(Cortez et al. 2017a and 2017b, McGowan et al. 2017, and Li et al. 2018を参照されたい)。
【0017】
本明細書に引用した文献についての全ての引例は、第一著者または発明者および発行年により、本明細書末部に列挙される。
【発明の概要】
【0018】
(発明の概要)
一態様において、本明細書は、式(I)、(II)または(III):
【化5】
[式中、
R
1は、(C
1-C
5アルキル)O、(C
1-C
2アルキル)O(CH
2)
2-3O、(C
1-C
5アルキル)C(=O)O、(C
1-C
5アルキル)NH、(C
1-C
2アルキル)O(CH
2)
2-3NHまたは(C
1-C
5アルキル)C(=O)NHであり;
R
2およびR
3は、各々独立して、H、C
1-C
3アルキル、ハロ、O(C
1-C
3アルキル)、CNまたはNO
2であり、ここで1つのR
3は、(CH
2)
xR
4(式中、下付き文字xは、1、2、3または4である)により置換されていてもよい;
R
4は、H、ハロ、OH、CN、NH
2、NH(C
1-C
5アルキル)、N(C
1-C
5アルキル)
2、NH(C
3-C
6シクロアルキル)、NH(C
4-C
8ビシクロアルキル)、NH(C
6-C
10スピロシクロアルキル)、N(C
3-C
6シクロアルキル)
2、NH(CH
2)
1-3(アリール)、N((CH
2)
1-3(アリール))
2、構造:
【化6】
を有する環状アミン基、6員環の芳香族基またはヘテロ芳香族基、あるいは5員環のヘテロ芳香族基であり;
ここで、アルキル、シクロアルキル、ビシクロアルキル、スピロシクロアルキル、環状アミン、6員環の芳香族基またはヘテロ芳香族基、または5員環のヘテロ芳香族基は、所望により、OH、ハロ、CN、(C
1-C
3アルキル)、O(C
1-C
3アルキル)、C(=O)(Me)、SO
2(C
1-C
3アルキル)、C(=O)(Et)、NH
2、NH(Me)、N(Me)
2、NH(Et)、N(Et)
2およびN(C
1-C
3アルキル)
2から選択される1以上の置換基で置換されていてもよく;および
シクロアルキル、ビシクロアルキル、スピロシクロアルキルまたは環状アミン基は、O、S、NH、N(C
1-C
3アルキル)またはN(Boc)により置換されたCH
2基を有していてもよく;
R
5は、各々独立して、O、SまたはNR
6であり;
R
6は、HまたはC
1-C
3アルキルであり;
X
1は、各々独立して、CR
2またはNであり;
X
2は、各々独立して、CR
3またはNであり;および
X
3は、O、S、NH、N(C
1-C
3アルキル)、C=OまたはN(C=O)(C
1-C
3アルキルである]
の構造を有する化合物を提供する。
【0019】
式(I)の化合物は、TLR7アゴニストとしての活性を有しており、それらの幾つかのものは、標的組織または臓器へ、所望の作用に関するターゲティング送達のためにコンジュゲートされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の化合物を製造するための代表的なスキームを示す。
【
図2】
図2は、アゴニスト-リンカー化合物の製造のためのスキームを示す。
【
図3】
図3は、アゴニスト-リンカー化合物の製造のためのスキームを示す。
【
図4】
図4は、本発明の化合物のTLR7アゴニズム活性を示す代表的なグラフを示す。
【発明の詳細な説明】
【0021】
(定義)
「抗体」は、抗体全体およびあらゆる抗原結合フラグメント(即ち、「抗原結合部分」)またはその単鎖変異体を意味する。抗体全体は、ジスルフィド結合により相互に連結された少なくとも2つの重鎖(H)および2つの軽鎖(L)を含むタンパク質である。各重鎖は、3つのドメインCH1、CH2およびCH3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに重鎖定常領域を含んでいる。各軽鎖は、1つのシングルドメインCLを含む軽鎖可変領域(VLまたはVk)および軽鎖定常領域を含む。VHおよびVL領域は、高度に保存されたフレームワーク領域(FR)と共に散在し得る超可変性領域、いわゆる相補性決定領域(CDRs)に更に細分化され得る。各々VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRを含み、アミノ末端からカルボキシ末端へと次の順番で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4。可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。定常領域は、宿主の組織または因子[例えば、エフェクター細胞などの免疫系の様々な細胞および古典的補体系の第一成分(Clq)]への抗体の結合を媒介し得る。抗体が、5x10-8M未満のKD、より好ましくは1x10-8M未満のKD、より好ましくはKD、6x10-9M未満のKD、より好ましくは3x10-9M未満のKD、更により好ましくは2x10-9M未満のKDにて抗原Xに結合するならば、該抗体は、抗原Xに「特異的に結合する」といえる。抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体または好ましくはヒト抗体であり得る。重鎖定常領域を、グリコシル化の型またはその程度に影響を及ぼすように遺伝子設計して、抗体の半減期を延長させること、エフェクター細胞または補体系との相互作用を増強または低下させること、または別のある性質を調節することができる。遺伝子設計は、1以上のアミノ酸の置換、付加または削除によるか、あるドメインを別のイムノグロブリン型由来のドメインに置き換えるか、または前記組合せにより達成され得る。
【0022】
抗体の「抗原結合フラグメント」および「抗原結合部分」(または、単純に「抗体部分」または「抗体フラグメント」)とは、抗原に特異的に結合する能力を保持する1以上の抗体フラグメントを意味する。抗体の抗原-結合機能は、完全長抗体のフラグメント、例えば(i)Fabフラグメント、即ちVL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab')2フラグメント、即ちヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)主にヒンジ領域の部分を有するFabであるFab'フラグメント(例えば、Abbas et al., Cellular and Molecular Immunology, 6th Ed., Saunders Elsevier 2007を参照されたい);(iv)VHおよびCH1ドメインから成るFdフラグメント;(v)抗体の1つのアームのVLおよびVHドメインから成るFvフラグメント;(vi)VHドメインから成るdAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);(vii)単離された相補性決定領域領域(CDR);および(viii)ナノボディ、すなわち1つの可変ドメインおよび2つの定常ドメインを含有する重鎖可変領域により発揮されることが示されている。好ましい抗原結合フラグメントは、Fab、F(ab')2、Fab'、FvおよびFdフラグメントである。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVLおよびVHは、別の遺伝子にコードされているが、組み換え手法を用いて、それらを合成リンカーにより連結させて、VLおよびVH領域が対になり一価の分子を形成する1つのタンパク質鎖(1本鎖Fv(scFv)として知られる)として作製できる;例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426;およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい。このような1本鎖抗体もまた、用語、抗体の「抗原結合部位」に含まれる。
【0023】
別段の記載が無ければ-例えば、配列表における線形の行上のナンバリングに関して-抗体の重鎖または軽鎖の可変領域(VHまたはVL)におけるアミノ酸の位置に関するナンバリングは、Kabatシステム(Kabat et al., "Sequences of Proteins of immunological interest, 5th ed., Pub. No. 91-3242, U.S. Dept. Health & HumanServices, NIH, Bethesda, Md., 1991, 以後「Kabat」という)に従い、抗体の重鎖または軽鎖の定常領域(CH1、CH2、CH3またはCL)におけるアミノ酸の位置に関するナンバリングは、Kabatに示されたようなEUインデックスに従う(Lazar et al., US 2008/0248028 A1を参照されたい;この開示内容は、出典明示により本明細書の一部に含まれる(例えば、この使用法など)。さらに、ImMunoGeneTics Information System(IMGT)は、そのウェブサイトにて"IMGT Scientific Chart:Correspondence between C Numberings"の表題にて、重鎖定常領域についてEUナンバリングシステムおよびKabatナンバリングの対応を示している。
【0024】
「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を意味する(例えば、抗原Xを特異的に結合する単離された抗体とは、抗原X以外の抗原を特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、抗原Xを特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原(例えば、別の種由来の抗原X分子)との交差反応性を有する。特定の実施態様において、単離された抗体は、ヒト抗原Xに特異的に結合し、別の(非ヒト)抗原Xの抗原とは交差反応しない。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含んでいない可能性がある。
【0025】
「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、特定のエピトープについて1つの結合特異性および親和性を提示する単分子組成物である抗体分子の調製物を意味する。
【0026】
「ヒト抗体」は、フレームワークおよびCDR領域(および定常領域、もし存在する場合)の双方が、ヒト生殖細胞系のイムノグロブリン配列から得られる可変領域を有する抗体を意味する。ヒト抗体は、後の修飾、例えば天然または合成の修飾を含み得る。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列イムノグロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムまたは部位特異的突然変異が導入される突然変異またはインビボでの体細胞突然変異)を包含し得る。しかし、「ヒト抗体」は、別の哺乳類の種、例えばマウスから得られたCDR配列がヒトのフレームワーク配列に組み込まれた抗体を含まない。
【0027】
「ヒトモノクローナル抗体」は、フレームワークおよびCDR領域の両方が、ヒト生殖細胞系のイムノグロブリン配列から得られる可変領域を有する単結合特異性を提示する抗体を意味する。一実施態様において、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合されたヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する遺伝子組み換え非ヒト動物、例えば、遺伝子組み換えマウスから得られたB細胞を包含するハイブリドーマにより提供される。
【0028】
「脂肪族」とは、特定数の炭素原子(例えば、「C3脂肪族」、「C1-5脂肪族」、「C1-C5脂肪族」または「C1~C5脂肪族」のように、この後者3つのフレーズは、1~5個の炭素原子を有する脂肪族基と同義である)を有するか、または炭素原子の数が明確に特定されていない場合は、1~4個の炭素原子(不飽和脂肪族基の例では2~4個の炭素)を有する直鎖または分枝鎖の飽和または不飽和の非芳香族炭化水素基を意味する。同様に、C2-4アルケン、C4-C7脂環式化合物のような別の形式で炭素数を用いられることも理解される。同様に、「(CH2)1-3」などの用語は、下付き文字としての略記が1、2または3であって、前記単語が、CH2、CH2CH2およびCH2CH2CH2を示すことは理解される。
【0029】
「アルキル」とは、飽和脂肪族基を意味しており、炭素原子数を表すために同様の慣習が適用できる。例としては、C1-C4アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、t-ブチル、1-ブチル、2-ブチルなどを包含するが、これに限定するものではない。「アルキレン」は、アルキル基の二価のカウンターパート、例えばCH2CH2、CH2CH2CH2およびCH2CH2CH2CH2を意味する。
【0030】
「アルケニル」とは、少なくとも一つの炭素-炭素の二重結合を有する脂肪族基を意味しており、炭素原子数を表すために同様の慣習が適用できる。例としては、C2-C4アルケニル基は、エテニル(ビニル)、2-プロペニル(アリルまたはプロパ-2-エニル)、cis-1-プロペニル、trans-1-プロペニル、E-(またはZ-)2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタジエニル(ブタ-1,3-ジエニル)などを包含するが、これに限定されるものではない。
【0031】
「アルキニル」とは、少なくとも一つの炭素-炭素三重結合を有する脂肪族基を意味しており、炭素原子数を表すために同様の慣習が適用できる。例としては、C2-C4アルキニル基は、エチニル(アセチレニル)、プロパルギル(プロパ-2-イニル)、1-プロピニル、ブタ-2-イニルなどを包含する。
【0032】
「脂環式」とは、1~3個の環を有する飽和または不飽和の非芳香族炭化水素基を意味しており、各環は3~8個(好ましくは、3~6個)の炭素原子を有するものである。「シクロアルキル」は、各環が飽和である脂環式基を意味する。「シクロアルケニル」は、少なくとも一つの環が、少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を有する脂環式基を意味する。「シクロアルキニル」は、少なくとも一つの環が、少なくとも一つの炭素-炭素三重結合を有する脂環式基を意味する。例としては、脂環式基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロオクチルおよびアダマンチルを包含するが、これに限定するものではない。好ましい脂環式基は、シクロアルキル基、特にシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルである。「シクロアルキレン」は、シクロアルキル基の二価のカウンターパートを意味する。
【0033】
「ヘテロ脂環式」は、少なくとも一つのその環において3個まで(好ましくは、1~2個)の炭素が、N、OまたはSから独立して選択されるヘテロ原子により置換されている(このNおよびSは所望により酸化されていてもよく、かつNが所望により四級化されてもよい)脂環式基を意味する。好ましい脂環式基は、5~6員である1つの環から成る。同様に、「ヘテロシクロアルキル」、「ヘテロシクロアルケニル」および「ヘテロシクロアルキニル」とは、少なくとも一つのその環が上記のように修飾されているシクロアルキル、シクロアルケニルまたはシクロアルキニル基の各々を意味する。ヘテロ脂環式基の例は、アジリジニル、アゼチジニル、1,3-ジオキサニル、オキセタニル、テトラヒドロフリル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロチオピラニルスルホン、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニルスルホキシド、チオモルホリニルスルホン、1,3-ジオキソラニル、テトラヒドロ-1,1-ジオキソチエニル、1,4-ジオキサニル、チエタニルなどを包含する。「ヘテロシクロアルキレン」は、ヘテロシクロアルキルの二価のカウンターパートを意味する。
【0034】
「アルコキシ」、「アリールオキシ」、「アルキルチオ」および「アリールチオ」は、-O(アルキル)、-O(アリール)、-S(アルキル)および-S(アリール)を各々意味する。この例は、各々メトキシ、フェノキシ、メチルチオおよびフェニルチオである。
【0035】
「ハロゲン」または「ハロ」は、より狭義の意味が示されない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0036】
「アリール」は、単環、二環または三環系(好ましくは、単環式)を有する炭化水素基を意味し、ここで各環は、3~7個の炭素原子を有しており、少なくとも一つの環が芳香族である。該環系の環は、互いに縮合され得るか(ナフチルのように)、または互いに結合され得るか(ビフェニルのように)、非芳香族環(インダニルまたはシクロヘキシルフェニルのように)と縮合され得るか、または結合され得る。更なる例示しては、アリール基は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナントリル、アントラセニルおよびアセナフチルを包含するが、これに限定するものではない。「アリーレン」は、アリール基の二価のカンウターパートを意味し、例えば1,2-フェニレン、1,3-フェニレンまたは1,4-フェニレンである。
【0037】
「ヘテロアリール」は、各環が3~7個の炭素原子を有しており、かつ少なくとも一つの環が、N、OまたはSから独立して選択される1~4個のヘテロ原子を含有する芳香族環(ここで、NおよびSは、所望により酸化されていてもよく、Nは所望により四級化されてもよい)である単環、二環または三環系(好ましくは、5員~7員の単環)を有する基を意味する。芳香族環を含有する少なくとも一つのヘテロ原子は、別の環と縮合され得るか(ベンゾフラニルまたはテトラヒドロイソキノリルのように)、または別の環と直接結合され得る(フェニルピリジルまたは2-シクロペンチルピリジルなど)。更なる例としては、ヘテロアリール基は、ピロリル、フラニル、チオフェニル(チエニル)、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、N-オキソピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、シンノリニル、キノザリニル、ナフチリジニル、ベンゾフラニル、インドリル、ベンゾチオフェニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フェノチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ジベンゾフラニル、カルバゾリル、ジベンゾチオフェニル、アクリジニルなどを包含する。「ヘテロアリーレン」は、ヘテロアリール基の二価のカウンターパートを意味する。
【0038】
ある部分が置換されていてもよいことを、例えば「置換されていない、または置換されたC1-C5アルキル」または「所望により置換されていてもよいヘテロアリール」にあるように、「置換されていない、または置換された」または「所望により置換されていても」のフレーズを用いて示す場合、そのような部分は、1以上の、好ましくは1~5、より好ましくは1または2の、独立して選択される置換基を有し得る。置換基および置換パターンにより、置換基が結合する部分を考慮して当業者により選択され、化学的に安定で、かつ当該分野の技術および本明細書に記載した方法により合成できる化合物が提供される。好ましい実施態様において、「置換されていない、または置換された」または「所望により置換されていてもよい」として、基が規定されている場合、かかる基は置換されていない。
【0039】
「アリールアルキル(ヘテロ脂環式)アルキル」、「アリールアルケニル」、「アリールアルキニル」、「ビアリールアルキル」などは、場合により、アリール、ヘテロ脂環式、ビアリール基などで置換されていてもよいアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を意味し、この基は、場合により、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基でオープンな(満たされていない)原子価であってもよく、例えば、ベンジル、フェネチル、N-イミダゾイルエチル、N-モルホリノエチルなどでもよい。逆に、「アルキルアリール」、「アルケニルシクロアルキル」などは、アルキル、アルケニルなどの基で置換されたアリール、シクロアルキルなどの基を意味し、例えばメチルフェニル(トリル)またはアリルシクロヘキシルであり得る。「ヒドロキシアルキル」、「ハロアルキル」、「アルキルアリール」、「シアノアリール」などは、アルキル、アリールなどの基を意味し、場合により、1以上の同定された置換基(場合により、ヒドロキシル、ハロなどで)で置換されていてもよい。
【0040】
例えば、許容され得る置換基は、アルキル(特に、メチルまたはエチル)、アルケニル(特に、アリル)、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、脂環式基、ヘテロ脂環式基、ハロ(特に、フルオロ)、ハロアルキル(特に、トリフルオロメチル)、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル(特に、ヒドロキシエチル)、シアノ、ニトロ、アルコキシ、-O(ヒドロキシアルキル)、-O(ハロアルキル)(特に、-OCF3)、-O(シクロアルキル)、-O(ヘテロシクロアルキル)、-O(アリール)、アルキルチオ、アリールチオ、=O、=NH、=N(アルキル)、=NOH、=NO(アルキル)、-C(=O)(アルキル)、-C(=O)H、-CO2H、-C(=O)NHOH、-C(=O)O(アルキル)、-C(=O)O(ヒドロキシアルキル)、-C(=O)NH2、-C(=O)NH(アルキル)、-C(=O)N(アルキル)2、-OC(=O)(アルキル)、-OC(=O)(ヒドロキシアルキル)、-OC(=O)O(アルキル)、-OC(=O)O(ヒドロキシアルキル)、-OC(=O)NH2、-OC(=O)NH(アルキル)、-OC(=O)N(アルキル)2、アジド、-NH2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)2、-NH(アリール)、-NH(ヒドロキシアルキル)、-NHC(=O)(アルキル)、-NHC(=O)H、-NHC(=O)NH2、-NHC(=O)NH(アルキル)、-NHC(=O)N(アルキル)2、-NHC(=NH)NH2、-OSO2(アルキル)、-SH、-S(アルキル)、-S(アリール)、-S(シクロアルキル)、-S(=O)アルキル、-SO2(アルキル)、-SO2NH2、-SO2NH(アルキル)、-SO2N(アルキル)2などを包含するが、これに限定するものではない。
【0041】
置換される基が脂肪族基である場合、好ましい置換基は、アリール、ヘテロアリール、脂環式基、ヘテロ脂環式基、ハロ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アルコキシ、-O(ヒドロキシアルキル)、-O(ハロアルキル)、-O(シクロアルキル)、-O(ヘテロシクロアルキル)、-O(アリール)、アルキルチオ、アリールチオ、=O、=NH、=N(アルキル)、=NOH、=NO(アルキル)、-CO2H、-C(=O)NHOH、-C(=O)O(アルキル)、-C(=O)O(ヒドロキシアルキル)、-C(=O)NH2、-C(=O)NH(アルキル)、-C(=O)N(アルキル)2、-OC(=O)(アルキル)、-OC(=O)(ヒドロキシアルキル)、-OC(=O)O(アルキル)、-OC(=O)O(ヒドロキシアルキル)、-OC(=O)NH2、-OC(=O)NH(アルキル)、-OC(=O)N(アルキル)2、アジド、-NH2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)2、-NH(アリール)、-NH(ヒドロキシアルキル)、-NHC(=O)(アルキル)、-NHC(=O)H、-NHC(=O)NH2、-NHC(=O)NH(アルキル)、-NHC(=O)N(アルキル)2、-NHC(=NH)NH2、-OSO2(アルキル)、-SH、-S(アルキル)、-S(アリール)、-S(=O)アルキル、-S(シクロアルキル)、-SO2(アルキル)、-SO2NH2、-SO2NH(アルキル)および-SO2N(アルキル)2を包含する。より好ましい置換基は、ハロ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アルコキシ、-O(アリール)、=O、=NOH、=NO(アルキル)、-OC(=O)(アルキル)、-OC(=O)O(アルキル)、-OC(=O)NH2、-OC(=O)NH(アルキル)、-OC(=O)N(アルキル)2、アジド、-NH2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)2、-NH(アリール)、-NHC(=O)(アルキル)、-NHC(=O)H、-NHC(=O)NH2、-NHC(=O)NH(アルキル)、-NHC(=O)N(アルキル)2および-NHC(=NH)NH2である。特に好ましいものは、フェニル、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、C1-C4アルクオキシ、O(C2-C4アルキレン)OHおよびO(C2-C4アルキレン)ハロである。
【0042】
置換される基が、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基またはヘテロアリール基である場合、好ましい置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、シアノ、ニトロ、アルコキシ、-O(ヒドロキシアルキル)、-O(ハロアルキル)、-O(アリール)、-O(シクロアルキル)、-O(ヘテロシクロアルキル)、アルキルチオ、アリールチオ、-C(=O)(アルキル)、-C(=O)H、-CO2H、-C(=O)NHOH、-C(=O)O(アルキル)、-C(=O)O(ヒドロキシアルキル)、-C(=O)NH2、-C(=O)NH(アルキル)、-C(=O)N(アルキル)2、-OC(=O)(アルキル)、-OC(=O)(ヒドロキシアルキル)、-OC(=O)O(アルキル)、-OC(=O)O(ヒドロキシアルキル)、-OC(=O)NH2、-OC(=O)NH(アルキル)、-OC(=O)N(アルキル)2、アジド、-NH2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)2、-NH(アリール)、-NH(ヒドロキシアルキル)、-NHC(=O)(アルキル)、-NHC(=O)H、-NHC(=O)NH2、-NHC(=O)NH(アルキル)、-NHC(=O)N(アルキル)2、-NHC(=NH)NH2、-OSO2(アルキル)、-SH、-S(アルキル)、-S(アリール)、-S(シクロアルキル)、-S(=O)アルキル、-SO2(アルキル)、-SO2NH2、-SO2NH(アルキル)および-SO2N(アルキル)2である。より好ましい置換基は、アルキル、アルケニル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、シアノ、ニトロ、アルコキシ、-O(ヒドロキシアルキル)、-C(=O)(アルキル)、-C(=O)H、-CO2H、-C(=O)NHOH、-C(=O)O(アルキル)、-C(=O)O(ヒドロキシアルキル)、-C(=O)NH2、-C(=O)NH(アルキル)、-C(=O)N(アルキル)2、-OC(=O)(アルキル)、-OC(=O)(ヒドロキシアルキル)、-OC(=O)O(アルキル)、-OC(=O)O(ヒドロキシアルキル)、-OC(=O)NH2、-OC(=O)NH(アルキル)、-OC(=O)N(アルキル)2、-NH2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)2、-NH(アリール)、-NHC(=O)(アルキル)、-NHC(=O)H、-NHC(=O)NH2、-NHC(=O)NH(アルキル)、-NHC(=O)N(アルキル)2および-NHC(=NH)NH2である。特に好ましいものは、C1-C4アルキル、シアノ、ニトロ、ハロおよびC1-C4アルコキシである。
【0043】
範囲が「C1-C5アルキル」または「5~10%」のように記載されている場合、この範囲は、最初の例ではC1およびC5の通りに、また二番目の例では5%および10%の通りに、その範囲のエンドポイントを包含する。
【0044】
特定の立体異性体が、具体的に示されない限り(例えば、構造式において相応するキラル中心で太字または点線で書いた結合により、構造式においてEまたはZ配置を有するような二重結合の記載により、または立体化学を指定する命名法を用いて)、全ての立体異性体は、純粋な化合物ならびにその混合物として、本発明の範囲内に包含される。別段の記載が無ければ、個々のエナンチオマー、ジアステレオマー、幾何異性体ならびにその組合せおよび混合物の全てが、本発明に包含される。
【0045】
当業者は、化合物が、互変異性体(例えば、ケトおよびエノール形態)、共鳴構造および双性イオン形体を有し得ること、またこれらが本明細書で使用される構造式に示されるものと等価であること、該構造式が、かかる互変異性体、共鳴構造体または双性イオン形体を包含することは理解されよう。
【0046】
「医薬的に許容し得るエステル」は、インビボ(例えば、ヒトの体内で)で加水分解して、親化合物またはその塩を提供するか、またはそれ自体親化合物と同等の活性を有するエステルを意味する。適切なエステルは、C1-C5アルキル、C2-C5アルケニルまたはC2-C5アルキニルエステル、特にメチル、エチルまたはn-プロピルである。
【0047】
「医薬的に許容される塩」は、医薬組成物として適切な化合物の塩を意味する。化合物が1以上の塩基性基を有する場合、該塩は、酸付加塩、例えば硫酸塩、ヒドロブロミド、酒石酸塩、メシル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、塩酸塩、乳酸塩、硫酸メチル、フマル酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、メシル酸塩、ラクトビオン酸塩、スベリン酸塩、トシル酸塩などであってもよい。化合物が1以上の酸性基である場合、該塩は、塩、例えばカルシウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、アンモニウム塩、亜鉛塩、ピペラジン塩、トロメタミン塩、リチウム塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、4-フェニルシクロヘキシルアミン塩、ベンザチン塩、ナトリウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などであり得る。多形結晶形態および溶媒和物は、本発明の範囲内に包含される。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本明細書の式eにおいて、結合に対して直角となる波線
【化7】
または結合手の末端にあるアスタリスク(*)は、共有結合部位を表している。例えば、式:
【化8】
において、Rが、
【化9】
であるか、またはRが、
【化10】
であるという記載は、
【化11】
を意味する。
【0049】
本明細書の式において、芳香族環の2つの炭素原子の間を横切る結合手は、この結合手に結合された基が、環に当然存在している水素が除かれることにより利用できるようになる芳香族環のいずれかの位置に存在し得ることを意味する。例示すると、式:
【化12】
は、
【化13】
を表す。
【0050】
別の例においては、
【化14】
は、
【化15】
を表す。
【0051】
通常、互変異性体構造は、一貫性かつ利便性のために、本明細書においてはエノール形態で示されている:
【化16】
【0052】
当業者には、それらが等量のケト体となり得る、即ち2つの互変異性体平衡となることは理解されよう。
【0053】
TLR7アゴニスト
式(I)中のR1は、好ましくは、n-BuO、n-BuNH、EtO、MeOまたはMeOCH2CH2Oであり;より好ましくは、n-BuOまたはMeOCH2CH2Oであり;および最も好ましくは、n-BuOである。
【0054】
式(I)において、好ましくは、各R2はHであり、1つのR3は(CH2)xR4により置換されており、もう一方のR3は、各々Hである。
【0055】
一実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ia)(式中、好ましくは、R
1はn-BuOであり、下付き文字xは好ましくは1である)により示される。
【化17】
【0056】
式(I)および(Ia)において、R
4は、好ましくは、OH、NH(CHMe
2)、NHCH
2C
6H
5、NHMe、NHCH
2CH
2OH、
【化18】
である。
【0057】
式(I)の化合物の例は、
【化19】
を包含する。
【0058】
表Aは、本明細書に開示した化合物についての生物学的活性データを示す。データの内の1セットは、本明細書の以下に記載したとおり、HEK-Blue(登録商標)TLR7レポーターアッセイを用いるTLR7アゴニズム活性に関する。別のデータセットは、インターロイキン6(IL-6)、即ちTLR7経路に重要な役割を果たすサイトカインの誘導に関する。比較のために、レシキモド(Resiquimod)、ベサトリモド(Vesatolimod)、ガーディキモド(Gardiquimod)および化合物B(CAS Reg.No.226906-84-9)の活性も示される。
【0059】
【0060】
コンジュゲート
概要
本明細書に開示されたTLR7アゴニストは、局所投与またはターゲティング送達によるか、あるいはターゲティング基を含むコンジュゲートにより目的の作用部位に送達され得る。好ましくは、ターゲティング基とは、抗体またはその抗原結合部分であり、その抗原は目的とする作用付近に存在しており、例えば、目的とする作用部位が腫瘍(癌)であるならば腫瘍関連抗原である。好ましくは、腫瘍関連抗原は、正常細胞と比べると、癌細胞により特異的または過剰に発現される。腫瘍関連抗原は、癌細胞の表面に存在し得るか、その癌細胞周辺に癌細胞により分泌され得る。
【0061】
一態様において、式(IV):
【数1】
[式中、Zは、ターゲティング基であり、Dは、本発明のアゴニストであり、-(X
D)
aC(X
Z)
b-は、ZおよびDを連結するという理由から、それらをまとめて「リンカー基」または「リンカー」と称される。リンカー内にて、Cは、Dの目的とする生物学的作用部位または部位付近で開裂されるように設計された開裂可能な基である;X
DおよびX
Zは、DとCおよびCとZを、夫々空間的に分離するスペーサー基(または「スペーサー」)である;下付き文字a、bおよびcは、独立して、0または1(即ち、X
D、X
ZおよびCの存在は任意である)である]
により示される本発明の化合物およびリガンドを含むコンジュゲートが提供される。下付き文字mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10(好ましくは、1、2、3または4)である。D、X
D、C、X
ZおよびZは、より詳細に後述される。
【0062】
抗原または受容体が存在している標的組織または細胞に結合することにより、Zは、その場所にコンジュゲートを導く。標的組織または細胞で基Cが開裂することで、Dを放出して、その効果を局所的に発揮させる。この方法において、Dの正確な送達が、目的の作用部位で達成されて、必要な投薬量を低下することができる。またDは、通常、コンジュゲートされた状態では生物学的に不活性(または、かなり活性が低い)であるので、これによりオフターゲット作用を低減できる。
【0063】
下付き文字mに示されるように、各Zは、結合に利用できる部位Zの数および用いる実験条件によって、1以上のDとコンジュゲートできる。個々のZが、Dの数までコンジュゲートされるが、コンジュゲートの調製物は、統計学的平均値を反映しているD:Zの非整数比として判定されることは当業者には理解されよう。この比は、置換比(「SR」)または薬剤-抗体比(「DAR」)として示される。
【0064】
ターゲティング基Z
好ましくは、ターゲティング基Zは抗体である。便宜上かつ簡潔化のために、限定するものではないが、Zおよびそのコンジュゲートについての本明細書における詳細な説明は、それらが抗体であるという文脈で書かれているが、所望により変更して、Zの別のタイプをコンジュゲートし得ることも当業者には理解されよう。例えば、ターゲティング基として葉酸を含むコンジュゲートは、その表面上に葉酸受容体を有する細胞を標的とし得る(Leamon et al., Cancer Res. 2008, 68 (23), 9839)。同じ理由から、本明細書における詳細な説明は、主に、ZとD(m=1)が1:1の比として記載されている。
【0065】
本発明のコンジュゲートに使用され得る抗体は、以下の抗原を認識するものを包含する:メソテリン、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD19、CD22、CD30、CD70、B7H3、B7H4(O8Eとしても知られる)、タンパク質チロシンキナーゼ7(PTK7)、グリピカン-3、RG1、フコシル-GM1、CTLA-4およびCD44。抗体は、動物(例えば、マウス)の抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または好ましくはヒト抗体であってもよい。抗体は、好ましくは、モノクローナル、特にモノクローナルヒト抗体である。前記抗原の幾つかに対するヒトモノクローナル抗体の製造は、Korman et al., US 8,609,816 B2 (2013;B7H4、08Eとしても知られる;特に、抗体2A7、1G11および2F9);Rao-Naik et al., 8,097,703 B2 (2012;CD19;特に、抗体5G7、13F1、46E8、21D4、21D4a、47G4、27F3および3C10);King et al., US 8,481,683 B2(2013;CD22;特に、抗体12C5、19A3、16F7および23C6);Keler et al., US 7,387,776 B2 (2008;CD30;特に、抗体5F11、2H9および17G1);Terrett et al., US 8,124,738 B2 (2012;CD70;特に、抗体2H5、10B4、8B5、18E7および69A7);Korman et al., US 6,984,720 B1 (2006;CTLA-4;特に、抗体10D1、4B6および1E2);Korman et al., US 8,008,449 B2 (2011;PD-1;特に、抗体17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および5F4);Huang et al., US 2009/0297438 A1 (2009;PSMA、特に、抗体1C3、2A10、2F5、2C6);Cardarelli et al., US 7,875,278 B2 (2011;PSMA;特に、抗体4A3、7F12、8C12、8A11、16F9、2A10、2C6、2F5および1C3);Terrett et al., US 8,222,375 B2 (2012;PTK7;特に、抗体3G8、4D5、12C6、12C6aおよび7C8);Harkins et al., US 7,335,748 B2(2008;RG1;特に、抗体A、B、CおよびD);Terrett et al., US 8,268,970 B2 (2012;メソテリン;特に、抗体3C10、6A4および7B1);Xu et al., US 2010/0092484 A1 (2010;CD44;特に、抗体14G9.B8.B4、2D1.A3.D12および1A9.A6.B9);Deshpande et al., US 8,258,266 B2 (2012;IP10;特に、抗体1D4、1E1、2G1、3C4、6A5、6A8、7C10、8F6、10A12、10A12Sおよび13C4);Kuhne et al., US 8,450,464 B2 (2013;CXCR4;特に、抗体F7、F9、D1およびE2);およびKorman et al., US 7,943,743 B2 (2011;PD-L1;特に、抗体3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7および13G4);に開示され、これらの開示内容は、出典明示により本明細書に組み込まれる。好ましくは、前記抗体は、抗メソテリン抗体である。
【0066】
抗体であることに加えて、Zはまた、抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、FdまたはFv)または抗体擬体、例えばアフィボディ、ドメイン抗体(dAb)、ナノボディ、ユニボディ、DARPin、アンチカリン、バーサボディ(versabody)、デュオカリン、リポカリンまたはアビメールでもあり得る。
【0067】
Z上の異なる幾つかの反応基のいずれか1つは、例えばリジン残基内のε-アミノ基、ペンダント炭水化物基、アスパラギン酸またはグルタミン酸側鎖上のカルボン酸基、システイン-システインジスルフィド基およびシステインチオール基を含めたコンジュゲーション部位であり得る。コンジュゲーションに適切な抗体の反応基についてのレビューは、例えば、Garnett, Adv. Drug Delivery Rev. 2001, 53, 171-216およびDubowchik and Walker, Pharmacology & Therapeutics 1999, 83, 67-123を参照されたい、これらの開示内容は、出典明示により本明細書に組み込まれる。
【0068】
殆どの抗体は、複数のリジン残基を有しており、リジンのε-アミノ基により、アミド、ウレア、チオウレアまたはカルバメート結合を介してコンジュゲートされ得る。
【0069】
システイン側鎖中のチオール(-SH)基を用いて、いくつかの方法によりコンジュゲートを形成できる。前記チオール基は、この基とリンカー上のチオール基の間にジスルフィド結合を形成するために使用できる。別の方法は、リンカー上のマレイミド基へのマイケル付加反応である。
【0070】
通常、抗体は、システイン残基を有しているが、それらの全てのシステインが鎖間または鎖内のジスルフィド結合に関与しており、遊離のチオール基は存在しない。遊離のチオール基を生成させるために、元々のジスルフィド基を還元することができる。例えば、Packard et al., Biochemistry 1986, 25, 3548;King et al., Cancer Res. 1994, 54, 6176;and Doronina et al., Nature, Biotechnol. 2003, 21, 778を参照されたい。あるいは、抗体を突然変異させることにより、システインを別のアミノ酸に代えて置き換えることにより、またはシステインをポリペプチド鎖中に導入することにより、遊離の-SH基を有するシステインを導入することができる。例えば、Eigenbrot et al., US 7,521,541 B2 (2009);Chilkoti et al., Bioconjugate Chem. 1994, 5, 504;Urnovitz et al., US 4,698,420 (1987);Stimmel et al., J. Biol. Chem. 2000, 275, 30445;Bam et al., US 7,311,902 B2 (2007);Kuan et al., J. Biol. Chem. 1994, 269, 7610;Poon et al., J. Biol. Chem. 1995, 270, 8571;Junutula et al., Nature Biotechnology 2008, 26, 925 and Rajpal et al., US Provisional Application No. 62/270245, filed Dec. 21, 2015を参照されたい。また別の手法としては、システインは、重鎖または軽鎖のC末端に加えられる。例えば、Liu et al., US 8,865,875 B2 (2014);Cumber et al., J. Immunol. 1992, 149, 120;King et al, Cancer Res. 1994, 54, 6176;Li et al., Bioconjugate Chem. 2002, 13, 985;Yang et al., Protein Engineering 2003, 16, 761;and Olafson et al., Protein Engineering Design & Selection 2004, 17, 21を参照されたい。このパラグラフに引用された文献の開示内容は、出典明示により本明細書の一部に組み込まれる。
【0071】
リンカーおよびそれらの成分
上記の通り、リンカーは、3つまでの要素:開裂可能な基Cおよび任意のスペーサーXZおよびXDを含む。
【0072】
基Cは、生理学的条件下において開裂できる。好ましくは、基Cは、コンジュゲートが血中で循環している間は比較的安定であるが、コンジュゲートが目的とするその作用部位に到達した時点で容易に開裂される。
【0073】
好ましい基Cは、血清中のプロテアーゼによる開裂とは異なり、標的細胞内部のプロテアーゼにより選択的に開裂されるペプチドである。通常、該ペプチドは、1~20個のアミノ酸、好ましくは1~6個のアミノ酸、より好ましくは2~3個のアミノ酸を含む。アミノ酸は、天然および/または非天然のα-アミノ酸であってもよい。天然アミノ酸は、遺伝子コードによりコードされたアミノ酸、加えてそれらから誘導されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、シトルリンおよびO-ホスホセリンである。この明細書において、用語「アミノ酸」とは、アミノ酸アナログおよびアミノ酸擬体も包含する。アナログとは、R基が天然アミノ酸の中に存在する基ではないこと以外、天然アミノ酸の一般構造H2N(R)CHCO2Hと同じ構造を有する化合物である。アナログの例示は、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニン-スルホキシドおよびメチオニンメチルスルホニウムが挙げられる。アミノ酸擬体は、α-アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、α-アミノ酸と類似した様式で機能する化合物である。アミノ酸は、遺伝子的にコードされたアミノ酸の「L」立体化学として、同様にエナンチオマーの「D」立体化学としても存在し得る。
【0074】
好ましくは、Cは、プロテアーゼに対して開裂認識配列であるアミノ酸配列を含有する。多くの開裂認識配列は、当業者には知られている。例えば、Matayoshi et al. Science 247:954 (1990);Dunn et al. Meth. Enzymol. 241:254 (1994);Seidah et al. Meth. Enzymol. 244:175 (1994);Thornberry, Meth. Enzymol. 244:615 (1994);Weber et al. Meth. Enzymol. 244:595 (1994);Smith et al. Meth. Enzymol. 244:412 (1994);and Bouvier et al. Meth. Enzymol. 248:614 (1995)を参照されたい;これらの内容は、出典明示により、本明細書にその内容が組み込まれる。
【0075】
基Cは、癌近傍において細胞外マトリックスに存在するプロテアーゼ、例えば、死亡癌細胞周辺で放出されたプロテアーゼまたは癌細胞により分泌された腫瘍関連プロテアーゼにより開裂されるように選択され得る。細胞外の腫瘍関連プロテアーゼの例は、プラスミン、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、チメット(thimet)オリゴペプチダーゼ(TOP)およびCD10である。例えば、Trouet et al., US 7,402,556 B2 (2008);Dubois et al., US 7,425,541 B2 (2008);およびBebbington et al., US 6,897,034 B2 (2005)を参照されたい。カテプシンDは、通常、細胞内部に存在するリソソーマル酵素であるが、腫瘍環境内に存在することもあり、これはおそらく死亡癌細胞により放出されるのであろう。
【0076】
酵素によるものとして設計されたコンジュゲートのために、Cは、好ましくは、カテプシンB、C、D、H、LおよびSなどのプロテアーゼ、特にカテプシンBによる開裂のために選択されたアミノ酸配列を含む。カテプシンBの開裂可能なペプチドの例は、Val-Ala、Val-Cit、Val-Lys、Lys-Val-Ala、Asp-Val-Ala、Val-Ala、Lys-Val-Cit、Ala-Val-Cit、Val-Gly、Val-GlnおよびAsp-Val-Cit(ここで、アミノ酸配列は、前後関係が別段明確に記載されていない限り、H2N-AA2-AA1-CO2Hのように、N-から-C方向に記載される)。Dubowchik et al., Biorg. Med. Chem. Lett. 1998, 8, 3341;Dubowchik et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 1998, 8, 3347;およびDubowchik et al., Bioconjugate Chem. 2002, 13, 855を参照されたい;これらの開示内容は、出典明示により本明細書の一部に組み込まれる。
【0077】
ペプチジルリンカーを開裂するために利用し得る別の酵素は、Ala-Ala-Asnで優先的に開裂するレグマイン、リソソーマルシステインプロテアーゼである。
【0078】
一実施態様において、基Cは、2つのアミノ酸配列、-AA2-AA1-(式中、AA1はリジン、アルギニンまたはシトルリンであり、AA2はフェニルアラニン、バリン、アラニン、ロイシンまたはイソロイシンである)を含むペプチドである。別の実施態様において、Cは、Val-Cit、Ala-Val、Val-Ala-Val、Lys-Lys、Ala-Asn-Val、Val-Leu-Lys、Cit-Cit、Val-Lys、Ala-Ala-Asn、Lys、Cit、SerおよびGluからなる群から選択される1~3つのアミノ酸の配列から構成される。より好ましくは、Cは前記基から選択される2~3つのアミノ酸ペプチドである。
【0079】
1つのアミノ酸からなる開裂可能な基Cの製造および設計は、Chenら(US 8,664,407 B2(2014))に開示されており、これらの開示内容は、出典明示により本明細書に組み込まれる。
【0080】
基Cは、ZまたはDに直接結合され得る;即ち、スペーサーXZまたはXDは、場合により非存在であり得る。
【0081】
存在する場合、スペーサーX
Zは、CおよびZの間の空間的分離を提供して、前者が後者による抗原結合と立体的に干渉するか、または後者が前者の開裂を立体的に干渉することを防ぐ。さらに、スペーサーX
Zを用いて、コンジュゲートに高い溶解性または低い凝集性という特性を与えることができる。スペーサーX
Zは、あらゆる数の組合せでアセンブルされ得る1以上のモジュラーセグメントを含み得る。スペーサーX
Zとして適切なセグメントの例は、以下:
【化20】
(ここで、下付き文字gは、0または1であり、下付き文字hは、1~24であり、好ましくは2~4である)
およびその組合せである。これらのセグメントを、下記に図示したように合わせることもできる:
【化21】
【0082】
スペーサーXDは、もし存在するならば、CおよびDの間の空間的分離を提供して、後者が、前者の開裂と立体的または電気的に干渉することを防ぐ。スペーサーXDは、追加の分子量および化学的官能基をコンジュゲートに導入するようにも役立ち得る。一般的には、追加の質量および官能基は、コンジュゲートの血清半減期およびその他の特性に影響を及ぼす。このように、スペーサー基の適正な選択により、コンジュゲートの血清半減期を調節することができる。スペーサーXDもまた、スペーサーXZについて上記したものと同様に、モジュラーセグメントからアセンブルされ得る。
【0083】
スペーサーXZおよび/またはXDは、存在している場合、各々ZとCの間またはDとCの間に、好ましくは4~25個の原子、より好ましくは4~20個の原子の直線状の間隔を提供する。
【0084】
リンカーは、抗体および薬剤の共有結合に加えて、別の機能を果たし得る。例えば、リンカーは、ポリ(エチレングリコール)(「PEG」)基を含有し得る。コンジュゲーション工程には、通常、水性媒体中での薬剤-リンカーおよび抗体のカップリング工程が含まれるので、PEG基の多くは、薬剤-リンカーの水溶性を増強する。また、PEG基は、溶解度を増強し得るか、または得られるADCの凝集を減少し得る。PEG基が存在する場合、PEG基は、スペーサーXZまたはXD、あるいは両方のいずれかに組み込まれ得る。PEG基中のリピート単位数は、2~20、好ましくは4~10であり得る。
【0085】
スペーサーXZまたはXD、あるいは両方のいずれかは、自己崩壊基を含み得る。自己崩壊基とは、(1)C、およびZまたはDのいずれかに結合される基、かつ(2)基Cからの開裂により、場合によってはZまたはDからの開裂により、自己崩壊基自体の結合を開裂させる反応経路が開始されるような構造を有する基である。言い換えると、ZまたはDとは遠い部位(基Cからの開裂)での反応は、XZ-ZまたはXD-Dの結合を同じ様に開裂させる。自己崩壊基の存在は、スペーサーXDの場合には望まれる。この理由は、コンジュゲートの開裂後に、スペーサーXDまたはその部分がDとの結合を維持していた場合、Dの生物学的活性が損なわれる可能性があるためである。自己崩壊基の使用は、特に、開裂可能な基Cがポリペプチドである場合に必要であり、この場合、ペプチド開裂と立体的または電気的な干渉からDを保護するために、自己崩壊基は、通常、ポリペプチドに隣接して置かれる。
【0086】
Dのヒドロキシル基またはアミノ基に結合された自己崩壊基(i)-(v)の例を、以下に示す:
【化22】
【0087】
自己崩壊基は、点線aおよびb(または点線bおよびc)の間にある構造であり、隣接する構造的特徴は文脈に示される。自己崩壊基(i)および(v)は、D-NH
2(即ち、コンジュゲーションはアミノ基を介する)と結合され、一方で自己崩壊基(ii)、(iii)および(iv)は、D-OH(即ち、コンジュゲーションは、ヒドロキシル基またはカルボキシル基による)と結合される。酵素[構造(i)-(v)の例においてはペプチダーゼ、および構造(vi)の例においてはβ-グルクロニダーゼ]による点線bでの結合の開裂により、点線aで結合の開裂をもたらす自己崩壊の反応経路が開始され、その結果、この場合はD-OHまたはD-NH
2の放出へと至る。例として、構造(i)~(iv)についての自己崩壊メカニズムを、以下に示す:
【化23】
【0088】
言い換えれば、自己崩壊基の一部分にて、最初の化学結合の開裂がおこり、自己崩壊基の異なる部分で、第二の化学結合(自己崩壊基と薬剤とを連結する結合)の開裂へと至る工程経路が順に開始されて、薬剤が放出される。
【0089】
幾つかの例において、自己崩壊基は、構造(vii)に示されるように、縦一列に用いられ得る。そのような場合、点線cでの開裂により、点線bとcとの間の1,6-排除反応により、基の自己崩壊が始まり、その後に環化排除反応により点線aとbとの間に基の自己崩壊がおこる。自己崩壊基に関する更なる開示については、Carl et al., J. Med. Chem. 1981, 24, 479;Carl et al., WO 81/01145 (1981);Dubowchik et al., Pharmacology & Therapeutics 1999, 83, 67;Firestone et al., US 6,214,345 B1 (2001);Toki et al., J. Org. Chem. 2002, 67, 1866;Doronina et al., Nature Biotechnology 2003, 21, 778(erratum, p. 941);Boyd et al., US 7,691,962 B2;Boyd et al., US 2008/0279868 A1;Sufi et al., WO 2008/083312 A2;Feng, US 7,375,078 B2;Jeffrey et al., US 8,039,273;およびSenter et al., US 2003/0096743 A1を参照されたい;これらの開示内容は、出典明示により本明細書に組み込まれる。
【0090】
別の実施態様において、ZおよびDは、開裂出来ないリンカーにより結合される(即ち、Cは存在しない)。Dの代謝により、最終的には、リンカーをDの生物学的活性と干渉しない小分子の別の基にまで分解される。
【0091】
コンジュゲーション技術
本明細書において開示されたTLR7アゴニストのコンジュゲートは、好ましくは、Dおよびリンカー(X
D)
a(C)
c(X
Z)
b(式中、X
D、C、X
Z、a、bおよびcは、式(II)に定義された通りである)を含む化合物を最初に製造して、
式(V):
【数2】
(式中、R
31は、Z上の相補的官能基と反応するために適切な官能基である)
により示される薬剤-リンカー化合物を形成して、コンジュゲートを形成することにより製造される。適切な基R
31の例は、アミノ、アジド、チオール、シクロオクチン、
【化24】
(式中、R
32は、Cl、Br、F、メシレートまたはトシレートであり、R
33は、Cl、Br、I、F、OH、-O-N-スクシンイミジル、-O-(4-ニトロフェニル)、-O-ペンタフルオロフェニルまたは-O-テトラフルオロフェニルである)
が包含される。適切な基:D-(X
D)
aC(X
Z)
b-R
31を製造するために広く使用できる化学的手法は、Ng et al., US 7,087,600 B2 (2006);Ng et al., US 6,989,452 B2 (2006);Ng et al., US 7,129,261 B2 (2006);Ng et al., WO 02/096910 A1;Boyd et al., US 7,691,962 B2;Chen et al., US 7,517,903 B2 (2009);Gangwar et al., US 7,714,016 B2 (2010);Boyd et al., US 2008/0279868 A1;Gangwar et al., US 7,847,105 B2 (2010);Gangwar et al., US 7,968,586 B2 (2011);Sufi et al., US 8,461,117 B2 (2013);およびChen et al., US 8,664,407 B2 (2014)に開示されており、これらの開示内容は、出典明示によりその内容は本明細書に組み込まれる。
【0092】
好ましい反応性官能基-R
31は、-NH
2、-OH、-CO
2H、-SH、マレイミド、シクロオクチン、アジド(-N
3)、ヒドロキシルアミノ(-ONH
2)またはN-ヒドロキシスクシンイミドである。特に好ましい官能基-R
31は、
【化25】
である。
【0093】
-OH基は、抗体上のカルボキシ基(例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸側鎖上の)とエステル化され得る。
【0094】
-CO2H基は、-OH基とエステル化され得るか、または抗体上のアミノ基(例えば、リジン側鎖上で)とアミド化され得る。
【0095】
N-ヒドロキシスクシンイミド基は、官能基的に活性化されたカルボキシル基であり、アミノ基(例えば、リジンからの)との反応により好都合にアミド化され得る。
【0096】
マレイミド基は、マイケル付加反応において、抗体上の-SH基(例えば、システインによるか、またはスルフィドリル官能基を導入するような抗体の化学修飾による)とコンジュゲートされ得る。
【0097】
抗体がコンジュゲーションに利用できるシステイン-SHを有しない場合、リジン残基の側鎖内のε-アミノ基を、2-イミノチオランまたはN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(「SPDP」)と反応させて、遊離チオール(-SH)基を導入して、いわばシステイン代用物を作出することができる。チオール基を、マレイミドまたは他の求核試薬アクセプター基と反応させて、コンジュゲーションを行うことができる。2-イミノチオランを用いた場合のこのメカニズムを下記に示した。
【化26】
【0098】
通常、抗体あたりに2~3つのチオールのチオール化レベルが達成される。代表的な方法については、Cong et al., US 8,980,824 B2 (2015)を参照されたい;出典明示により、その内容は本明細書に組み込まれる。
【0099】
逆の配置では、抗体Zを、N-スクシンイミジル 4-(マレイミドメチル)-シクロヘキサンカルボキシレート(「SMCC」)またはそのスルホン化バリアントであるスルホ-SMCC(これらの両方は、Sigma-Aldrichから購入できる)で修飾して、それらにマレイミド基を導入することができる。その後、コンジュゲーションを、リンカー上の-SH基を有する薬剤-リンカー化合物を用いて行い得る。
【0100】
別のコンジュゲーション方法は、銅不含の「クリック・ケミストリー」を用いるものであり、アジド基が直線状シクロオクチンと付加環化して、1,2,3-トリアゾール環を形成する。例えば、Agard et al., J. Amer. Chem. Soc. 2004, 126, 15046;Best, Biochemistry 2009, 48, 6571を参照されたい;この開示内容は、出典明示により本明細書に組み込まれる。アジドは、抗体上に存在していても、あるいは逆に、薬剤-リンカー基上のシクロオクチンに存在していてもよい。好ましいシクロオクチン基は、ジベンゾシクロオクチン(DIBO)である。DIBO基を有する様々な試薬は、Invitrogen/Molecular Probes, Eugene, Oregonから購入できる。この反応は、例としてクリック・ケミストリー・コンジュゲーションを以下に示したもので、この反応では、DIBO基は、抗体(Ab):
【化27】
に結合されている。
【0101】
また別のコンジュゲーション技術は、非天然アミノ酸を抗体に導入することを含んでおり、この非天然アミノ酸は、薬剤基中の反応性官能基とのコンジュゲーションのための官能基を提供する。例えば、非天然アミノ酸であるp-アセチルフェニルアラニンは、Tian et al.,WO 2008/030612 A2(2008)に教示された通り、抗体または他のポリペプチドに導入され得る。p-アセチルフェニルアラニン内のケトン基は、リンカー-薬剤基上のヒドロキシルアミノ基とオキシムを形成することによるコンジュゲーション基として存在し得る。あるいは、非天然アミノ酸であるp-アジドフェニルアラニンを、抗体に組み込んで、上記に説明したようにクリック・ケミストリーによるコンジュゲーションのためのアジド官能基を提供できる。非天然アミノ酸もまた、Goerke et al., US 2010/0093024 A1 (2010) and Goerke et al., Biotechnol. Bioeng. 2009, 102 (2), 400-416に教示されている通り、細胞不含法を用いて抗体または他のポリペプチド中に組み込まれ得る。前記開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。即ち、一実施態様において、コンジュゲートを作成するために使用される抗体は、非天然アミノ酸により置き換えられた1以上のアミノ酸を有しており、これは、好ましくは、p-アセチルフェニルアラニンまたはp-アジドフェニルアラニン、より好ましくは、p-アセチルフェニルアラニンである。
【0102】
また別のコンジュゲーション技術は、酵素トランスグルタミナーゼ(好ましくは、Streptomyces mobaraensis由来のバクテリアトランスグルタミナーゼまたはBTG)を使用する技術である(Jeger et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 9995)。BTGは、グルタミンの側鎖のカルボキサミド(アミンアクセプター)およびアルキレンアミノ基(アミンドナー)(例えば、リジンまたは5-アミノ-n-ペンチル基のε-アミノ基であり得る)との間にアミド結合を形成する。典型的なコンジュゲーション反応において、グルタミン残基は、抗体上に存在しており、一方でアルキレンアミノ基は、下記に示したようなリンカー-薬剤基上に存在する:
【化28】
【0103】
ポリペプチド鎖上のグルタミン残基の位置は、BTG媒介性のアミド基転移への感受性に対して大きな影響を及ぼす。抗体上のグルタミン残基は、通常BTG基質ではない。しかし、抗体が脱グリコシル化されれば[該グリコシル化部位は、重鎖のアスパラギン297(N297;EUインデックスによるナンバリング、Kabat et al., "Sequences of proteins of immunological interest." 5th ed., Pub. No. 91-3242, U.S. Dept. Health & Human Services, NIH, Bethesda, Md., 1991;以後「Kabat」に記載した通り)である]、グルタミン295(Q295)付近がBTG感受性となる。抗体は、PNGase F(ペプチド-N-グリコシダーゼF)を用いる処理により、酵素的に脱グリコシル化され得る。あるいは、定常領域にN297A突然変異を導入することにより、N297グリコシル化部位を排除して、グリコシドを含まずに抗体を合成できる。さらに、N297Q置換は、グリコシル化を排除するのみならず、アミンアクセプターでもある第二のグルタミン残基を(位置297で)誘導できることも判っている。そのため、一実施態様において、抗体は脱グリコシル化される。別の実施態様において、抗体はN297Q置換を有する。合成後の修飾またはN297A突然変異の導入による脱グリコシル化によって、2つのBTG反応性グルタミン残基/抗体(重鎖あたりに1ヶ所、295位置で)が生成されるが、一方で、N297Q置換を有する抗体は、4つのBTG-反応性グルタミン残基(重鎖あたりに2ヶ所、位置295および297で)を有することは当業者には理解されるであろう。
【0104】
抗体は、グルタミン含有ペプチドまたは「タグ(tag)」(例えば、Pons et al., US 2013/0230543 A1(2013)およびRao-Naik et al., WO 2016/144608 A1教示されている通り)を抗体に導入することにより、BTG媒介性のコンジュゲーションに感受性となり得る。
【0105】
補完的手法において、BTGの基質特異性は、Rao-Naik et al., WO 2017/059158 A1 (2017)に教示された通り、そのアミノ酸配列を改変することにより、非修飾抗体中のグルタミン295と反応できるように変わり得る。
【0106】
一方で、最も広く利用可能なバクテリアのトランスグルタミナーゼは、S. mobaraensis由来のものであるが、多少異なる基質特異性を有するその他のバクテリア由来のトランスグルタミナーゼも、例えばStreptoverticillium ladakanum由来のトランスグルタミナーゼなども検討され得る(Hu et al., US 2009/0318349 A1 (2009), US 2010/0099610 A1 (2010)およびUS 2010/0087371 A1 (2010))。
【0107】
第一級または第二級アルキルアミンを有する本発明のTLR7アゴニストは、特に、コンジュゲートに使用するために適切であり、第二級アミンはリンカーに結合するための官能基を提供する。かかるTLR7アゴニスト-リンカー化合物の例は、化合物8であって、これは酵素的に開裂可能なリンカーを含有する。
図2は、化合物8を製造し得るスキームを示す。
【化29】
【0108】
非酵素的に開裂可能なリンカーを含有するTLR7アゴニスト-リンカー化合物の例は、化合物10である。
図3は、化合物10を合成するためのスキームを示す。
【化30】
【0109】
化合物8および10はどちらも、第一級アルキルアミノ基を含有しており、これによりトランスグルタミナーゼを用いてコンジュゲーションすることが可能である。適切なコンジュゲーション方法は、下記の実施例に記述される。
【0110】
コンジュゲーションは、Levary et al., PLoS One 2011, 6(4), e18342;Proft, Biotechnol. Lett. 2010, 32, 1-10;Ploegh et al., WO 2010/087994 A2 (2010);およびMao et al., WO 2005/051976 A2(2005)に教示される通り、酵素ソルターゼAを用いても実施され得る。ソルターゼAの認識モチーフ(通常LPXTGであって、Xは任意の天然アミノ酸である)は、リガンドZに存在していてもよく、また求核性アクセプターモチーフ(通常、GGG)は、式(III)中の基R31であってもよい;あるいは、その逆であってもよい。
【0111】
TLR7アゴニストコンジュゲート
前記技術を用いて、TLR7アゴニストコンジュゲート、例えば下記に示されるコンジュゲートが、製造され得る:
【化31】
(式中、mは、1、2、3または4であり、Abは抗体である)。
【0112】
ペグ化
ポリ(エチレングリコール)(PEG)鎖および薬剤(「PEG化」)の結合により、後者の薬物動態特性を改善することができる。薬剤の循環半減期は、時には一桁以上も増長されると同時に、目的とする治療効果を達成するのに必要な投薬量を低下することができる。また、PEG化により、薬剤の代謝分解を減らし、その免疫原性を低下させることもできる。概要として、Kolate et al., J. Controlled Release 2014, 192, 167を参照されたい。
【0113】
当初PEG化は生物製剤に適用された。2016年の時点では、10以上のPEG化生物製剤が承認されていた(Turecek et al., J. Pharmaceutical Sci. 2016, 105, 460.)。最近では、生物製剤に対するこのコンセプトの適用が成功したことが刺激となって、低分子薬のペグ化が注目されている。前記した利点に加えて、PEG化低分子薬は、溶解度を増加させて、毒性効果を低下させ得る(Li et al. Prog. Plymer Sci. 2013, 38, 421)。
【0114】
本明細書に開示された化合物は、PEG化され得る。化合物が、脂肪族ヒドロキシルまたは脂肪族第一級または第二級アミン、例えば化合物Ia-01またはIa-02(矢印)の場合に、化合物は、従来技術を利用して、カルボキシ含有PEG分子、エステル、アミド、カーボネートまたはカルバメート基(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、HATU、N-ヒドロキシスクシンイミドエステルなど)を介してPEG化され得る。医薬分子をPEG化するための様々な別の方法は、Alconcel et al., Polymer Chem. 2011, 2, 1442に開示されており、この開示内容は、出典明示によりその内容を本明細書の一部に組み込まれる。
【化32】
【0115】
必要であれば、本明細書に開示されたTLR7アゴニストを、自己崩壊基を含む酵素的に開裂可能なリンカーを介してPEG化して、所望の様式にて非PEG化アゴニストを放出させることができる。さらに、PEG含有分子が、タンパク質に結合するための適切な官能基、例えばアミンを持っている場合は、PEG化は、抗体などのタンパク質とのコンジュゲーションと組み合わすことができる。このタンパク質は、更なる治療的機能を提供できるか、または、このタンパク質が抗体であれば、ターゲティング機能を提供できる。これらの概念は、以下の反応手順に示され、TLR7-NH-Rは、一般的に、TLR7アゴニスト:
【化33】
【化34】
を示す。
【0116】
上記した反応手順において、バリン-シトルリン(Val-Cit)ジペプチドは、自己崩壊スペーサーとして機能するp-アミノベンジルオキシカルボニル(PABC)基を有する酵素カテプシンBにより開裂され得る。コンジュゲーションのための官能基はアミン基であり、Fmoc基により一時的に保護される。コンジュゲーションは、アシルアクセプターとして作用するグルタミン(Gln)側鎖を有する酵素トランスグルタミナーゼにより実施される。下付き文字xは、PEGのリピート単位数を示しているが、以下に説明するようにPEG化の目的に依って大きく変わり得る。ある目的のためには、xは比較的小さい数、例えば2、4、8、12または24であり得る。別の目的のためには、xは大きい数、例えば約45~約910である。
【0117】
この手順が例示であって、当業者には周知のその他の要因-ペプチド、自己崩壊基、コンジュゲーション方法、PEGの長さなど-を用い得ることは、当業者には理解されよう。上記の手順は、PEG化およびコンジュゲーションを組み合わせるが、PEG化はコンジュゲーションを必要としない(または必要としてもよい)ことは当業者には理解されよう。
【0118】
化合物Ia-09の場合のように、化合物に脂肪族ヒドロキシル基または脂肪族の第一級または第二級アミンが無い場合、化合物は芳香族アミン(矢印)で更にPEG化されることができる。この部位でPEG化するための方法は、Zarraga,US 2017/0166384 A1(2007)に開示されており、この開示内容は、出典明示により本明細書の一部に組み込まれる。
【化35】
【0119】
ある実施態様において、一つの分子内に連結された複数のPEG化されたアゴニストを有することが望まれ得る。例えば、4つのPEG化アームを、ペンタエリトリトール(C(CH2OH)4)で構築することができ、TLR7アゴニストは、各PEG化アームに結合され得る(Gao et al., US 2013/0028857 A1(2013)を参照されたい;この開示内容は、出典明示により、その内容を本明細書の一部として組み込まれる。
【0120】
薬物動態を改変するために、一般的には、PEG基は、約2kDa(約45の-(CH2CH2O)-リピート単位に相当する)~約40kDa(約910の-(CH2CH2O)-リピート単位に対応する)の間、より好ましくは約5kDa~約20kDaの間の式量を有するものが好ましい。即ち、上記式中の下付き文字xの範囲は、約45~約910である。PEG組成物は100%同質ではなく、むしろ分子量の分布を提示することは理解されよう。即ち、参照として、例えば「20kDa PEG」とは、20kDaの平均分子量を有するPEGを意味する。
【0121】
PEG化は、アゴニストの溶解度を改善するために使用され得ることもできる。この例においては、短いPEG鎖(例えば、2、4、8、12または24のリピート単位を含むもの)が、使用され得る。
【実施例】
【0122】
本発明の実施は、以下の実施例を参照してさらに理解され得る;その内容は、説明を目的としており、限定を意味するものではない。
【0123】
実施例1-TLR7アゴニストの合成
本実施例および
図1は、本発明の化合物の合成に関する。
【0124】
MeOH(30mL)およびTHF(15mL)中において、Synthesis[1998, 1107]に従って製造した10-メチル-10H-フェノチアジン-3,7-ジカルバルデヒド1(2.00g,7.43mmol)の懸濁液を、0℃で、NaBH4(0.562g,14.85mmol)で少量ずつ処理して、次いで、冷却しつづけながら45分間攪拌した。LCMSにより、その反応が完了したことが示された。この反応を、水でクエンチして、EtOAc(3x100mL)で抽出した。有機抽出物をNa2SO4上で乾燥させて、濾過して、濃縮して、ジメタノール2(2.03g,94%収率)を得た。LCMS ESI:C15H15NO2Sとしての計算値=274.1(M+H+),実測値274.0(M+H+)。
【0125】
ジメタノール2(2.43g,8.89mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF,30mL)に溶解した。イミダゾール(2.421g,35.6mmol)を加えて、次いでt-ブチルジメチルシリルクロリド(TBS-Cl,DMF(5ml)中で0.804g,5.33mmol)を0℃で滴加した。0℃で3時間攪拌した後に、LCMSにより反応の完了が示された。この反応を水でクエンチして、EtOAc(4x50mL)で抽出した。有機抽出物をNa2SO4上で乾燥させて、濾過して、濃縮した。粗生成物を、EtOAc:ヘキサン(0~100%グラジエント)で溶出する80gシリカカラムで精製して、化合物3(1.57g,45.6%収率)を得た。LCMS ESI:C21H29NO2SSiとしての計算値=388.2(M+H+),実測値388.0(M+H+).
【0126】
化合物3(510mg,1.316mmol)を、ジクロロメタン(DCM,7.5mL)に溶解して、次いでジ-イソプロピルエチルアミン(DIPEA,0.483mL,2.76mmol)を加えて、次いでメタンスルホニルクロリド(MsCl,0.133mL,1.710mmol)を0℃で加えた。0℃で1時間攪拌した後に、反応が完了したLCMSにより。DCM(10mL)および水(10mL)を加えて、混合した。水を除去して、反応混合物を1回水で洗った。有機層をNa2SO4上で乾燥させて、濾過して、濃縮して、粗製クロロメチル化合物4(582mg)を得たが、初めに形成したメシレートはクロロメチル化合物へとインサイチュで変換されていた。
【0127】
クロロメチル化合物4を、炭酸セシウムの存在下において、化合物5(CAS Reg.No.866268-31-7)と反応させて、化合物6を得た。
【0128】
化合物6をHClで処理することにより、ヒドロキシメタノールIa-01を得て、次いで、これを、塩化チオニルを用いる処理により、クロロメチル化合物Ia-09へと変換した。
【0129】
最後に、化合物Ia-09とシクロブタンアミンとの反応により、化合物Ia-06を得た。LCMS ESI:C28H33N7O2Sとしての計算値=532.2(M+H+),実測値532.0(M+H+).1H NMR(DMSO-d6) 7.16-7.07 (m, 4 H), 6.86 (dd, J = 12.5, 8.5 2 H), 6.56 (s, 2 H), 4.76 (s, 2 H), 4.18 (t, J = 6.5 Hz, 2 H), 3.51 (s, 2 H), 3.12 (p, J = 7.5 Hz, 1 H), 2.07-2.02 (m, 2 H), 1.70-1.50 (m, 6 H), 1.40 (h, J = 7.5 Hz, 2 H), 0.93 (t, J = 7.5 Hz, 3 H). フェノチアジン環のN-Meに対応するシグナルは、水の抑制のために存在しなかった。
【0130】
一般的には、前記方法に従って、別のアミンを用いて、以下の表B:
【表2】
に示した通りに、式(I)の別の化合物を製造した。
【0131】
当業者は、本明細書の他の化合物を、必要な変更を加えて、上記方法に従って製造できることは理解されよう。例えば、化合物:
【化36】
(即ち、例えば、式(I)中の各R
2およびR
3がHである)
を、出発物質としてモノアルデヒド(CAS Reg.No.4997-36-8):
【化37】
を用いて製造できる。
【0132】
R
3基がMeである化合物を、化合物Ia-09:
【化38】
の還元的脱ハロゲン化により製造され得る。
【0133】
実施例2-TLR7アゴニスト活性のアッセイ
本実施例は、本明細書に開示した化合物のTLR7アゴニスト活性をアッセイするための方法を記述するものである。
【0134】
ヒトTLR7分泌型胎児アルカリホスファターゼ(SEAP)リポーター転移遺伝子を担持する改変型ヒト胎児腎臓のブルー細胞(HEK-Blue(登録商標)TLR細胞;Invivogen)を、非選択的培養培地[10%ウシ胎児血清(Sigma)を加えたDMEM高グルコース(Invitrogen)]に懸濁した。HEK-Blue(登録商標)TLR7細胞を、384ウェルの組織培養プレート(15,000細胞/ウェル)の各ウェルに加えて、37℃で5%CO2にて16~18時間インキュベートした。化合物(100nl)を、HEK-Blue(登録商標)TLR細胞を含有するウェルに分配して、処理済み細胞を、37℃で5%CO2にてインキュベートした。18時間処理後に、10μlの新たに調整したQuanti-Blue(登録商標)試薬(Invivogen)を各ウェルに加えて、30分間(37℃,5%CO2)インキュベートして、Envisionプレートリーダー(OD=620nm)を用いてSEAPレベルを測定した。半数効果濃度(EC50;アッセイのベースラインと最大反応値の間の半分の反応強度を誘導した化合物濃度)を計算した。
【0135】
図4は、化合物Ia-04についてのデータを示す代表図である。
【0136】
実施例3-トランスグルタミナーゼ-媒介性コンジュゲーション
以下の方法を、アゴニスト-リンカー化合物(リンカーは、アミンドナーとして作用できるアミン基を有する)に関するトランスグルタミナーゼ媒介性コンジュゲーションのために用い得る。抗体は、トランスグルタミナーゼ反応性グルタミン、例えばN297AまたはN297Q置換を有する抗体であり得る。コンジュゲーションは、抗体:酵素の5:1のモル比にて組み換えバクテリアトランスグルタミナーゼにより行われる。コンジュゲーションは、50mM Tris緩衝液(pH8.0)中にて標準的プロトコールを用いて行い、終夜37℃でインキュベートした。得られるコンジュゲートを、50mM Tris(pH8.0)を用いて事前平衡化したタンパク質Aカラムで精製した。コンジュゲートを、0.1M クエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)で溶出した。溶出画分を、1M Tris(pH9.0)で中和した。コンジュゲートを、20mg/mLソルビトール、10mg/mLグリシン(pH5.0)中で製造され得る。
【0137】
実施例4-インターロイキン6誘導アッセイ
この実施例は、本明細書に開示した化合物により、インターロイキン6の誘導をアッセイするための方法を記述したものである。
【0138】
DMSO中で希釈した化合物を、ECHOアコースティック液体分注技術(25nL/ウェル)を用いて透明なV底の384ウェルプレートの個々のウェル(Matrix Technologies)に移した。ヒト全血試料(25uL)を、CyBio FeliX液体分注器を用いて各ウェルに加えた。プレートを3分間プレートシェーカー上で振盪した後、反応混合物を、37℃で20時間インキュベートした。Basel RPMI 1640培地(L-グルタミンを加えた)を各ウェル(25uL/ウェル)に加えて、次いで遠心分離(450xg,5分間,周囲温度)により、各試料から溶出した血漿を得た。処理済血漿試料(3uL)を、次にFeliX液体分注器を用いて白色の浅底384ウェル ProxiPlate(Perkin Elmer)の個々のウェルに移して、それらのインターロイキン6のレベルを、AlphaLISA technology(PerkinElmer;説明書に従う)を用いて実測した。データ分析用ソフトウェアを用いて、化合物EC50値を決定した(ベースラインは、平均DMSO値を用いて決定し、100%の誘導は試験した最大濃度の参照化合物の値を用いて決定した)。EC50は、Graphpad Prism(登録商標)などのソフトウェアを用いて決定し得る。
【0139】
当業者は、本実施例における条件および方法は、例示であり、限定するものではないこと、そのバリエーションまたはコンジュゲーションのための別の手法は当分野では既知であり、また本発明に使用できることは理解されよう。
【0140】
前記した本発明の詳細な説明は、主に、または専ら本発明の特定の部分または態様に関連する文章を包含する。これは、明確化のため、または便宜上のためであって、特定の態様は、その態様が開示されている文章だけに関連しておらず、本明細書の開示は、様々な文章に存在する情報についての全ての適切な組み合わせを含むことを理解されたい。同様に、本明細書の様々な図および記載は、本発明の特定の実施態様に関連しているが、特定の態様が特定の図または実施態様の文章に開示されている場合、そのような特徴も、別の図または実施態様の文脈において、別の態様を組み合わせるか、または本発明において、適切な範囲に使用され得ることは理解されよう。
【0141】
さらに、本発明は、ある好ましい実施態様に関して特に記載されているが、本発明は、かかる好ましい実施態様に限定するものではない。むしろ、発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により規定される。
【0142】
引用文献
第一著者(または発明者)および本明細書より過去の日付により省略形式で引用された以下の参考文献に対する全引用文献を以下に示します。これらの各参考文献は、参照によりすべての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0143】