(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】改良型腐食減肉検出器具および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/265 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
G01N29/265
(21)【出願番号】P 2020523754
(86)(22)【出願日】2018-08-14
(86)【国際出願番号】 US2018046602
(87)【国際公開番号】W WO2019083592
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-08-04
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ブリニャック、ジャックス
(72)【発明者】
【氏名】ローランド、ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ボールドウィン、ジェイ、エム
(72)【発明者】
【氏名】ハート、グレン
(72)【発明者】
【氏名】ファーヴァ、ブルース
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-081376(JP,A)
【文献】特開2012-173068(JP,A)
【文献】特開昭63-038157(JP,A)
【文献】特開2001-349845(JP,A)
【文献】実公昭49-003029(JP,Y1)
【文献】実開昭53-102686(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0067539(KR,A)
【文献】特開平04-161848(JP,A)
【文献】特開2009-186375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
H04R 1/00 - H04R 31/00
A61B 8/00 - A61B 8/15
G01B 17/00 - G01B 17/08
G01B 15/00 - G01B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
さまざまな直径を有する種々の配管の一部分の超音波評価を行うための
システムであって、当該
システムは、
柔軟性のあるフェイズドアレイプローブと、
複数のフレーム組立体(22)とを含み、
当該複数のフレーム組立体の各々は、当該種々の配管のうちの1つの配管の外部表面(24)に当該表面と協働するように係合する構造のフレーム(23)であって、当該フレームが当該配管と係合したときに当該配管の中心長手軸(A)とほぼ一致する軸(A’)を中心とし、当該配管の外部半径(R)にほぼ等しい半径(R’)によってほぼ画定される曲面(26)を有し、当該フレーム内で当該曲面から一定の距離離隔した位置に当該柔軟性のあるフェイズドアレイプローブを取り外し可能に保持する構造であり、且つ当該柔軟性のあるフェイズドアレイプローブが当該フレーム内に取り外し可能な状態で挿入されるのに応じて、当該柔軟性のあるフェイズドアレイプローブを当該配管の外部表面と実質的に同じである形状に変形させるように構成されているフレームを具備し、
当該複数のフレーム組立体のうちのいずれか1つのフレーム組立体の
当該曲面(26)の半径(R’)は、当該複数のフレーム組立体のうちの他の1つのフレーム組立体の
当該曲面の半径とは異なり、
当該
柔軟性のあるフェイズドアレイプローブは、当該複数のフレーム組立体のうちの任意のフレーム組立体の当該フレームと選択的に結合できることを特徴とする
システム。
【請求項2】
前記フレーム
の各々には、前記
柔軟性のあるフェイズドアレイプローブが前記フレーム内に
取り外し可能に保持されると前記
柔軟性のあるフェイズドアレイプローブと前記曲面との間に位置するように、主伝搬路(30)が画定されていることを特徴とする、請求項1の
システム。
【請求項3】
前記曲面から外方へ延び、前記曲面に画定された主伝搬路の開口を取り囲むように配置された柔軟性のある材料製のスカート(32)をさらに具備する請求項2の
システムであって、
前記主伝搬路と当該スカートとは、フレーム組立体を配管の外部表面(24)上に配置すると形成される貯蔵域(36)の第1の側面が
柔軟性のあるフェイズドアレイプローブによって、また、その反対側の第2の側面が配管の外部表面と、当該第1の側面と当該第2の側面の間を延びる主伝搬路およびスカートによって画定されるような位置関係にあることを特徴とする、請求項2の
システム。
【請求項4】
前記フレーム
の各々は、前記フレームの外部表面に位置する流体供給口(42)から前記貯蔵域に位置する流体流出口(44)へ延びる流体供給管(40)をさらに含み、当該流体供給管は当該貯蔵域に超音波伝達性流体を供給するように構成されている、請求項3の
システム。
【請求項5】
前記スカートは、前記フレームとは反対側の表面に施された被膜を含む、請求項3の
システム。
【請求項6】
前記フレーム
の各々は、前記貯蔵域にある流入口(52)から前記フレームの外面に画定された流出口(54)へ延びる空気除去管(50)をさらに含む、請求項3の
システム。
【請求項7】
前記フレームの各々は、前記フレーム組立体の前記配管沿いの位置を追跡するように構成された、前記フレーム内に画定されたキャビティ(60)内に位置するエンコーダ装置(58)をさらに具備する、請求項3の
システム。
【請求項8】
前記エンコーダ装置は、エンコーダ軸(64)を中心として回転可能なエンコーダホイール(62)を含み、当該エンコーダホイールは、前記フレームに画定された開口(68)から突出して前記配管の外部表面に係合するように構成された外部表面(66)を有することを特徴とする、請求項7の
システム。
【請求項9】
前記エンコーダ装置は前記フレームに枢着されており、前記フレームは、前記エンコーダ装置に係合して前記エンコーダホイールの前記外部表面を前記フレームから外方へ付勢する付勢機構(70)を含むことを特徴とする、請求項8の
システム。
【請求項10】
前記フレーム
の各々は、前記配管と磁気的に相互作用するように構成された、前記曲面またはその周囲に配置された多数の磁気要素(80)を含む、請求項3の
システム。
【請求項11】
前記フレーム
の各々の上には、多数のインデックスボタン(102、104)が設けられている、請求項3の
システム。
【請求項12】
配管の一部分の非破壊評価を行うためのシステム(15)であって、
処理装置(16)と、
当該処理装置と通信関係にある出力装置(18)と、
前記
柔軟性のあるフェイズドアレイプローブが当該処理装置と通信関係にある請求項
1の
システムと
を具備するシステム(15)。
【請求項13】
前記処理装置に情報を入力するための、前記処理装置と通信関係にある入力装置をさらに具備する、請求項
12のシステム。
【請求項14】
請求項
12に記載されたシステム(15)
を用いて配管の一部分の超音波評価を行う方法であって、
配管(P)の外部表面(24)上で前記
柔軟性のあるフェイズドアレイプローブを取り外し可能に保持するフレーム組立体(22)を位置決めするステップと、
主流体供給口(42)に超音波伝達性流体を流し込むステップと、
当該
柔軟性のあるフェイズドアレイプローブを取り外し可能に保持するフレーム組立体を、当該配管の当該外部表面に沿って当該配管の長手軸(A)に平行な方向へ摺動させるステップとを含む方法。
【請求項15】
前記
柔軟性のあるフェイズドアレイプローブを取り外し可能に保持するフレーム組立体を前記外部表面の上で位置決めするステップに先立って、前記配管の前記外部表面に走査領域の左右の境界を示す印(100)を付けるステップをさらに含む、請求項
14の方法。
【請求項16】
前記
柔軟性のあるフェイズドアレイプローブを取り外し可能に保持するフレーム組立体は前記処理装置(16)と通信関係にある多数のインデックスボタン(102、104)を備えている請求項
15の方法であって、
前記
柔軟性のあるフェイズドアレイプローブを取り外し可能に保持するフレーム組立体を摺動させたあと、前記配管の前記外部表面上の、前記
柔軟性のあるフェイズドアレイプローブを取り外し可能に保持するフレーム組立体を摺動させたところに隣接する位置に前記
柔軟性のあるフェイズドアレイプローブを取り外し可能に保持するフレーム組立体を再度位置決めするステップと、
前記インデックスボタンのうちの1つを作動させるステップと
を含む、請求項
15の方法。
【請求項17】
配管の一部分の超音波評価を行うためのシステムであって、当該システムは、
柔軟性のあるフェイズドアレイプローブと、
複数のフレーム組立体とを含み、
当該複数のフレーム組立体は、
第1の曲率半径を有する第1の曲面を具備し、第1の配管の外部表面に当接するように構成されている第1のフレーム組立体であって、当該第1の曲面は当該第1の配管の外部表面と一致する、第1のフレーム組立体と、
当該第1の曲率半径とは異なる第2の曲率半径を有する第2の曲面を具備し、第2の配管の外部表面に当接するように構成されている第2のフレーム組立体であって、当該第2の曲面は当該第2の配管の外部表面と一致する、第2のフレーム組立体とを含み、
当該柔軟性のあるフェイズドアレイプローブは当該第1のフレーム組立体と当該第2のフレーム組立体とに選択的に挿入可能であり、当該第1のフレーム組立体は当該柔軟性のあるフェイズドアレイプローブが当該第1のフレーム組立体に取り外し可能な状態で挿入されるのに応じて、当該柔軟性のあるフェイズドアレイプローブの表面を変形させて当該第1のフレーム組立体の第1の曲面と一致させるように構成されており、当該第2のフレーム組立体は当該柔軟性のあるフェイズドアレイプローブが当該第2のフレーム組立体に取り外し可能な状態で挿入されるのに応じて、当該柔軟性のあるフェイズドアレイプローブの表面を変形させて当該第2のフレーム組立体の第2の曲面と一致させるように構成されているシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)の下で、参照により本願に組み込まれる2017年10月27日出願の米国仮特許出願第62/577,834号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、配管の一部分を非破壊評価するための器具に関する。本発明はさらに、配管の一部分を非破壊評価するための器具に使用されるフレーム組立体に関する。
【背景技術】
【0003】
気体や液体の送出に使用する配管は、内部および外部の腐食やひび割れに弱く、当事者以外による損傷や製造時の欠陥の影響を受けやすい。水を運ぶ配管に急な漏洩や破裂が生じると問題になる可能性があるが、通常は環境に害を及ぼすことはない。しかし、石油または化学品を運ぶ配管が漏洩したり破裂したりすると、環境災害になりうる。原子炉の冷却材系のような重要な系統の配管が破損すると、はるかに過酷な災害が起きる可能性がある。配管を安全に使用し続けられるように、欠陥と損傷が懸念要因となる前に検出するための定期検査が行われる。そのような定期検査は、さまざまな方法で行うことができる。配管を布設した後、検査員が目視、X線、磁粉、超音波および他の検査方法を用いて溶接部を評価し、溶接部が高品質であることを確認する。露出した配管を、供用開始後にも所定のインターバルで、同様な方法により検査するのが一般的である。
【0004】
超音波によるそのような配管の検査は、通常、約.049平方インチの領域をカバーする直径約0.250インチの円形の超音波センサを用いて行われる。典型的には、技術者が計画した所定間隔のグリッド上のさまざまな位置にセンサを配置し、その後にセンサの測定値を得る。
図1は、そのような先行技術による90°エルボ管10の超音波検査の準備段階の一例を示す。この例では、エルボ管10の表面全体にグリッド12(一部のみを
図1に示す)を割り付け(例えばペイントマーカーを使用)たあと、グリッド12のさまざまな点14(2点のみを
図1に表示)で測定値を得る。このような例では、通常、エルボ管10の表面にグリッド12を割り付けるのに少なくとも2工数、そのあと、グリッド上のすべての点に前述のセンサを配置し、測定値を得て記録するのに少なくとも45分必要である。したがって、そのような90°エルボ管1本の管壁の限られた一部の検査に3時間近くまたはそれ以上の時間を要する。このような方法は、比較的広い減肉領域の検出には効果的かもしれないが、局所的な腐食を検出できない可能性がある。また、必要とされる時間とコストから、そのような検査の頻度が抑えられる可能性がある。
【0005】
したがって、そのような検査を行うための器具および方法には改良の余地がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の実施態様は、従来の方法に比べて、配管の広い領域をより高い分解能で評価できるだけでなく、かかる評価をはるかに短時間で達成できる、配管の非破壊評価を行うための器具および方法を提供する。
【0007】
本発明の一局面では、配管の一部分の超音波評価を行う器具に使用されるフレーム組立体が提供される。当該フレーム組立体は、当該配管の外部表面に当該表面と協働するように係合する構造のフレームを具備し、当該フレームは、当該配管と係合したときに当該配管の中心長手軸とほぼ一致する軸を中心とし、当該配管の外部半径にほぼ等しい半径によってほぼ画定される曲面を有し、当該曲面から一定の距離離隔した位置にある複数の超音波センサを収容する構造である。
【0008】
前記フレームには、前記フレーム内に収容された前記複数の超音波センサと前記曲面との間に位置するように、主伝搬路が画定されている。
【0009】
当該フレーム組立体は、前記曲面から外方へ延び、前記曲面に画定された主伝搬路の開口を取り囲むように配置された柔軟性のある材料製のスカートをさらに具備し、前記主伝搬路と当該スカートとは、フレーム組立体を配管の外部表面上に配置すると形成される貯蔵域の第1の側面が複数の超音波センサによって、また、その反対側の第2の側面が配管の外部表面と、当該第1の側面と当該第2の側面の間を延びる主伝搬路およびスカートによって画定されるような位置関係にある。
【0010】
当該スカートは、当該開口を完全に取り囲むのがよい。
【0011】
当該スカートの一部は、当該曲面に画定された溝の中に位置するのがよい。
【0012】
当該フレームは、当該フレームの外部表面上の流体供給口から当該貯蔵域にある流体流出口へ延びる流体供給管をさらに含むことができ、当該流体供給管は当該貯蔵域に超音波伝達性流体を供給する構造である。
【0013】
当該スカートの、当該フレームとは反対側の表面に被覆を施すとよい。
【0014】
当該フレームは、当該貯蔵域にある流入口から当該フレームの外面に画定された流出口へ延びる空気除去管をさらに含むとよい。
【0015】
当該フレームは、当該空気除去管に設けられた弁をさらに具備するとよい。
【0016】
当該フレーム組立体は、当該フレーム組立体の当該配管沿いの位置を追跡するように構成された、当該フレーム内に画定されたキャビティ内に位置するエンコーダ装置をさらに具備するとよい。
【0017】
当該エンコーダ装置は、エンコーダ軸を中心として回転可能なエンコーダホイールを含み、当該エンコーダホイールは、当該フレームに画定された開口を介して当該フレームから突出して当該配管の外部表面に係合するように構成された外部表面を含むとよい。
【0018】
当該エンコーダ装置は当該フレームに枢着され、当該フレームは、当該エンコーダ装置に係合して当該エンコーダホイールの当該外部表面を当該フレームから外方へ付勢する付勢機構を含むとよい。
【0019】
当該フレーム組立体のユーザが、当該付勢機構により当該エンコーダ装置に作用する付勢力を選択的に調節できるように、当該付勢機構を調節自在に当該フレームに結合するとよい。
【0020】
当該フレームは、当該配管と磁気的に相互作用するように構成された、当該曲面またはその周辺に位置する多数の磁気要素を含むとよい。
【0021】
各磁気要素は、調節機構を介して調節自在に当該フレームに結合するとよい。当該調節機構は、当該フレームに対する各磁気要素の相対的位置を調節することにより、各磁気要素と当該配管との間に働く磁気相互作用の強度を調節可能にする。
【0022】
当該フレームの外面に多数のマークを付けることができる。当該マークは、当該超音波センサの位置を指示する位置に配置された棒状の浮出しマークがよい。
【0023】
当該フレームは、当該曲面に隣接する多数の面取り部を含むとよい。
【0024】
当該フレームに、多数のインデックスボタンを設けるとよい。
【0025】
本発明の別の局面では、配管の一部分の超音波評価を行うための器具が提供される。当該器具は、前述のようなフレーム組立体と、当該フレーム組立体の中に位置する複数の超音波センサとを具備する。
【0026】
当該複数の超音波センサは、64個の要素から成り柔軟性のあるフェイズドアレイプローブで構成するとよい。
【0027】
本発明のさらに別の局面では、配管の一部分の非破壊評価を行うためのシステムが提供される。当該システムは、処理装置、当該処理装置と通信関係にある出力装置、および当該処理装置と通信関係にある当該複数の超音波センサを有する、前述のような器具より成る。
【0028】
当該システムは、当該処理装置に情報を入力するための、当該処理装置と通信関係にある入力装置をさらに具備するとよい。
【0029】
当該入力装置および出力装置は、単一のタッチスクリーン機構として提供してもよい。
【0030】
本発明のさらに別の局面では、さまざまな直径を有する異なる配管の一部分の超音波評価を行うために使用するキットが提供される。当該キットは、複数の超音波センサを有するセンサアレイと、前述のような複数のフレーム組立体とを具備し、当該複数のフレーム組立体のうちのいずれか1つのフレーム組立体の当該曲面の半径は、当該複数のフレーム組立体のうちの他の1つのフレーム組立体の当該曲面の半径とは異なり、当該センサアレイは、当該複数のフレーム組立体のうちの任意のフレーム組立体の当該フレームと選択的に結合することができる。
【0031】
当該複数のフレーム組立体は、少なくとも5つのフレーム組立体より成る。
【0032】
本発明のさらに別の局面では、前述のようなシステムを用いて配管の一部分の超音波評価を行う方法が提供される。この方法は、当該器具を配管の外部表面上で位置決めするステップと、超音波伝達性流体を主流体供給口に流し込むステップと、当該器具を当該配管の当該外部表面に沿って当該配管の長手軸と平行な方向に摺動させるステップとを含む。
【0033】
この方法は、当該器具を当該外部表面上で位置決めするステップに先立って、当該配管の当該外部表面に走査領域の左右の境界を示す印を付けるステップをさらに含むのがよい。
【0034】
当該フレームに、当該処理装置と通信関係にある多数のインデックスボタンを設けることができ、当該方法はさらに、当該器具を摺動させるステップに次いで、当該配管の当該外部表面上の、当該器具を摺動させたところに隣接する位置に当該器具を再度位置決めするステップと、当該インデックスボタンのうちの1つを作動させるステップとを含むとよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0036】
【
図1】先行技術の非破壊検査法による90°エルボ管の超音波検査の準備段階の一例を示す図である。
【0037】
【
図2】配管の一部分を非破壊評価する本発明のシステムの一実施例を示す部分概略図である。
【0038】
【
図3】配管の一区間の外部表面上の走査位置にある
図2の本発明の一実施例による器具の正面立面図である。
【0039】
【
図4】
図3に示すように配管の一区間上に配置された
図2の器具の上面図である。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【
図8】先行技術の方式による超音波センサの走査領域と、本発明の一実施例に使用されるような超音波センサアレイの走査領域を横並びに比較する図である。
【0044】
【
図9】
図1に関連して論じた先行技術の方式による一配管区間の一部分の測定結果と、本発明の一実施例による結果の概観を横並びに比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下で、実施例を示す添付図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態で実施することができ、本願に示す例に限定されると解釈するべきではない。これらの例はむしろ、本発明を詳細かつ完全に開示し、本発明の範囲を十分に当業者に伝えるために提供するものである。同じ参照番号は、本願を通して同じ構成要素を指している。
【0046】
本願で用いる用語「多数」は、1または1より大きい整数(すなわち複数)を意味する。
【0047】
本願で使用する用語「選択的に配置」は、「選択的に配置」された要素を容易に取り外せること、および/または選択的に配置される別の要素に容易に交換できることを意味する。
【0048】
前述のように、本発明の実施態様は、従来の方法に比べて、所与の配管区間のうちのはるかに広い領域を評価できるだけでなく、かかる評価をはるかに短時間で達成可能な、配管の非破壊評価を行う器具および方法を提供する。そのような改良は、複数のセンサを、当該センサを配管に沿って予測可能且つ信頼度の高い様式で移動させるように設計された新規で薄型のフレームと組み合わせて使用することによって実現できる。この組み合わせによって、広い配管区間を従来の方法より迅速に走査することが可能となる。
【0049】
図2は、配管の一部分を非破壊評価する本発明のシステム15の一実施例を示す部分概略図である。システム15は、出力装置18と通信関係にある処理装置16と、検査対象の配管と相互作用する器具20とを含む。システム15はまた、処理装置16に情報を入力するための、処理装置16と通信関係にある入力装置(図示せず)を含む。代案として、出力装置18を、処理装置16への情報入力と処理装置16からの情報受信の両方を行える入出力兼用装置(非限定的な例としてタッチスクリーン)で構成してもよい。
【0050】
処理装置16は、例えばマイクロプロセッサ、マイクロコントローラまたは他の適切な処理装置のような処理部と、当該処理部に内蔵されているかまたは当該処理部に作動的に接続されてシステム15の動作を制御するために当該処理部によって実行可能なデータおよびソフトウェアの記憶媒体を提供する記憶部とを含む。当該記憶部は、さまざまな種類の内部および/または外部記憶媒体のうちの任意の1つ以上のもので、非限定的な例として、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、FLASH、ならびにコンピュータの内部記憶領域のようにデータを記憶する記憶レジスタ(すなわち機械可読媒体)を構成するようなものが挙げられ、揮発性メモリや不揮発性メモリでもよい。
【0051】
出力装置18は、システム15からの出力を視認するための任意適当な装置でよい。非限定的な例として、出力装置18は、電子ディスプレイ画面、有形の出力を生成する装置(例えばプリンタ)、または処理装置16から受信する情報を任意適当な通信手段を介して1つ以上の他のローカルまたはリモート装置に伝達する装置のうちの1つ以上でよい。
【0052】
例示的な器具20のさらなるさまざまな図面を
図3~7に示す。器具20は、フレーム組立体22の中に選択的に配置される、複数の超音波センサ21(
図5)とそれらのセンサと通信関係(例えば適当なケーブルを介する、付番なし)にある処理装置16とを含む。フレーム組立体22は、検査対象の配管の非破壊評価を実施する間、超音波センサ21を当該配管から一定の距離に保持しながら当該配管に沿って迅速に且つ予測および反復可能な態様で移動させるために使用される。本願に詳述する一実施例の複数の超音波センサ21は、64個の要素(すなわち64個のセンサ)から成り柔軟性のあるフェイズドアレイプローブ(例えばOlympus NDT Division製)であるが、本発明の範囲から逸脱せずに、他の適当なセンサ装置を使用できることを理解されたい。
図8は、そのようなフェイズドアレイプローブの走査領域Bを、「背景技術」の節で前述したようなポイントセンサの走査領域Aと比較したものである。
【0053】
フレーム組立体22は、後述するように、フレーム23の内部またはその上にセンサ21のほかに多数の構成機器を配置した構成である。本発明の一実施例において、フレーム23は、積層造形法を用いてABS材料から形成される。ただし、フレーム23は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の適当なプロセスおよび/または材料を用いて形成できることも理解されたい。
図3、4に示すように、フレーム23は、評価・検査対象となる配管P(一部のみを図示)の外部表面24にそれと概して協働するように係合させたあと、さらに以下に詳述するが、
図4のブロック矢印D
1、D
2に示すように配管Pの外部表面24に沿って(すなわち配管Pの長手軸Aと平行方向に)摺動させる構成である。
図3を見ると容易に理解できるように、器具20は、概して狭い空間で使用できるように一般的に薄型である。
【0054】
フレーム23が配管Pにそのように係合して協働できるように、フレーム23には、配管Pとほぼ係合した状態で配管Pの中心長手軸Aとほぼ一致する長手軸A’を中心とする曲面26がある。曲面26は、配管Pの外半径Rにほぼ等しい半径R’によって概ね画定される。
【0055】
図6、7を参照して、複数の超音波センサ21と配管Pの外部表面24との間で超音波の送受信を可能にするために、フレーム23には、超音波センサ21と曲面26との間の主伝搬路30が画定されている。柔軟性のある材料(例えばシリコーンスポンジゴム、軟質フォームまたは他の適当な材料)製のスカート32が、曲面26から外方へ延び、曲面26の主伝搬路30の開口(付番なし)を完全に取り囲むように配置されている。本願の一実施例において、スカート32の一部は曲面26に設けられた溝34(
図7)の中にあるが、本発明の範囲から逸脱せずにスカート32を他の構成にしてもよいことを理解されたい。主伝搬路30とスカート32とは、
図3、4に示すように器具20を配管Pの外部表面24上に配置すると形成される貯蔵域36の第1の側面(付番なし)が超音波センサ21によって、また、その反対側の第2の側面(付番なし)が配管Pの外部表面24と、当該第1の側面と当該第2の側面の間を延びる主伝搬路30およびスカート32によって概ね画定されるような位置関係にある。
【0056】
器具を使用するときは、貯蔵域36に適当な超音波伝達性流体(図示しないが、非限定的な例として水がある)を供給する。この流体の供給は、フレーム23の外部表面(付番なし)に位置する主流体供給口42から貯蔵域36に開口する多数の流出口44へ延びる多数の流体供給管40(1本の供給管の一部を
図7に示す)を介して行う。本発明の一実施例では、スカート32の境界領域内の曲面26にある3つの流出口44を使用するが(例えば
図6を参照)、本発明の範囲から逸脱せずに、これら流出口44の数および/または配置を変えてもよいことを理解されたい。
【0057】
スカート32と配管Pの外部表面24との間の封止性を改善するために、および/または両者間の摩擦を減らすために、スカート32の配管接触面46に被膜(付番なし)を施すことができる。本発明の一実施例はポリエチレンテープの層を使用するが、本発明の範囲から逸脱せずに他の適当な材料を使用できることを理解されたい。
【0058】
図7の断面図に示すように、貯蔵域36に当初捕捉されていた空気または器具使用時に発生する可能性のある気泡(すなわちセンサ21と配管Pとの間の超音波の送受信を確実に妨げる)を除去するために、多数の空気除去管50が貯蔵域36の1つ以上の流入口52からフレーム23の外面に設けられた1つ以上の流出口54へ延びている。そのような空気除去管50に、器具20のユーザが所望により選択的に開閉できる適当な逆止弁を設けてもよい。
【0059】
図5の断面図を参照して、配管Pに沿う器具20の位置を追跡し、後で評価するための再現性を与えるために、フレーム組立体22は、フレーム23内に画定されたキャビティ60に配置されたエンコーダ装置58をさらに含む。エンコーダ装置58は、適当なケーブル(付番なし)を介して処理装置16に電気接続されている。共通の構成として、エンコーダ装置58は、エンコーダ軸64を中心として回転可能なエンコーダホイール62を含む。エンコーダホイール62の外部表面66は、
図3に示すように、フレーム23に画定される開口またはスロット68を介してフレーム23から若干突出し、配管Pの外部表面24と係合するように構成されている。エンコーダホイール62の外部表面66が配管Pの外部表面24に確実に一貫して係合するよう支援するために、エンコーダ装置58をフレーム23に枢着し、エンコーダホイール62の外部表面66を概して配管Pの外部表面24の方へ付勢させるばね70のような付勢機構または他の適当な機構をフレーム23上にまたはその内部に設けることができる。そのような付勢機構を調節自在にフレーム23に結合することにより、器具20のユーザが付勢機構によりエンコーダ装置58に掛かる、すなわちエンコーダ装置のエンコーダホイール62の外部表面66に作用する付勢力を選択的に調節できるようにしてもよい。エンコーダ装置58を、概してフレーム23の端部またはその近辺に配置した状態で示すが、フレーム23に対する別の相対位置に配置してもよいことを理解されたい。また、エンコーダ装置58がエンコーダホイール62を利用する場合を示しているが、は、本発明の範囲から逸脱せずに、フレーム23の位置を追跡するための任意適当な構成を使用できることを理解されたい。
【0060】
フレーム組立体22を配管Pの外部表面24に確実に一貫して係合させるために、フレーム23の曲面26またはその周辺(例えば曲面26の凹部の上または内部)に多数(例示する実施態様では4つ)の磁気要素80が配置されている。本発明の一実施例は、磁気要素80として、磁極が平坦な端部にある軸状リング磁石を使用しているが、本発明の範囲から逸脱せずに、別の適当な磁石または磁気構造を使用できることを理解されたい。各磁気要素80は、適当な調節機構(非限定的な例として六角穴付ボルト82)を介してフレーム23に調節自在に結合することができるが、この機構は、配管Pに対する各磁気要素80の相対位置を変えることにより、各磁気要素80と配管Pとの間に働く磁気吸引力を選択的に調節するのを可能にする。そのような磁気要素80を組み込むと、器具20を配管Pの外部表面24に確実に一貫して係合させるとともに、器具20を磁力で配管Pに吸着させた状態を保てるので、技術者は、必要なら両手を使って作業しながら、配管P上の器具20の位置を追跡することができる。
【0061】
器具20内における複数の超音波センサ21の位置をユーザが容易に特定できるようにするために、多数のマークを、フレーム23に一体化して、または別体の要素を追加する形で設けることができる。本発明の一実施例のフレーム23は、超音波アレイ21の両端を指示する棒状の浮出しマーク84と、超音波アレイ21の中心を指示する短い棒状の浮出しマーク86を有する。本発明の一実施例には、そのような位置を指示するものだけでなく、複数の超音波センサ21のうちの一部のセンサの番号を示す数字88などの英数字のマークもある。
【0062】
器具20の基本的な構成部品(すなわち複数の超音波センサ21、フレーム組立体22およびその構成部品)を上述したが、以下において、器具20の基本動作を
図3、4、9を参照して説明する。器具20による配管の検査に先立つ最初のステップとして、配管Pの外部表面24に、走査領域の左右の境界を示す印100を付けるのが好ましい。一般的には、そのような印100の位置は、配管Pの外周を、複数の超音波センサ21によってカバーされる領域の幅に等しい複数の区間に分割するように定める。そのような印100を付けた後、器具20を配管Pの外部表面24上に配置し、超音波伝達性流体を主流体供給口42に流し込み(例えば、適当なポンプを用いて貯蔵器または他の供給源から液体を供給する)、次に、器具20を配管Pの外部表面24上で配管Pの長手軸Aと平行な方向(
図4のブロック矢印D
1またはD
2で示す)に、配管Pの所望の長さを走査し終えるまで摺動させる。
【0063】
図9のBは、器具20による数秒間の1つの走査行程で得られたデータ(約8000データ点)のグラフ出力200(例えば
図2の出力装置18に現れる)の一例を示す部分概略図である。
図9に示す例の様々な種類の斜線は、スケール202に示すように様々な厚さに対応する様々な色(例えば赤、橙、黄、緑、青など)を表現したものである。好ましい実施態様では、厚さの変化をより的確に表すために、スペクトルが連続する一連の色(虹のように赤から橙、黄、緑へ遷移する、明瞭な欠落のない一連の色)を用いる。したがって、出力200は概して気象レーダーマップのような見かけになるが、様々な強さの嵐でなく様々な厚さを色の違いによって表す。
【0064】
図9のAは、本願の「背景技術」の節で説明したような方法による、データの取得に約45分かかった配管区間のデータ210(39データ点)を、本発明の実施態様で得られた同様の配管区間の例示的な出力200と比較対照するために示す。こうした比較から、本発明のほうが、はるかに高分解能の結果がより迅速に得られ、配管Pの壁厚のバラツキを視認し易いことが容易に理解できる。
【0065】
器具20によって隣接する行程を次々に走査し易くするために、フレーム組立体23は、ユーザが所与の行程の完了後に次の行程の位置を容易に指示できるように、処理装置16に電気接続された1つ以上のインデックスボタンを具備することができる。本願の一実施例において、フレーム組立体23は、ユーザが左手または右手により容易に作動できるように、器具20の端部付近に左インデックスボタン102と右インデックスボタン104を具備する。その使い方は、器具20による一つの走査行程完了後に、ユーザはいずれかの適当なインデックスボタンを作動させることにより、次の走査行程が、完了したばかりの行程の右側か(ボタン104を作動させる)、それとも左側か(ボタン102を作動させる)を指示する。いずれかのボタン102、104を作動させると、信号が処理装置16へ送られ、処理装置16がその信号を、前回の走査データと関連させて、これから受信する走査データを並べる出力表のカラムを指示する信号と認識する。
【0066】
上記より、本発明の実施態様は、従前の解決策に比べて、配管区間の超音波走査をより迅速かつ詳細に実施でき、より分かりやすい結果を得られることを容易に理解できるであろう。また、本発明の実施態様は、配管の直線区間と屈曲区間の両方の検査に容易に利用できることが容易に理解できるであろう。屈曲区間の内弧面を検査できるように、
図4に示すような厚さTを最小化して、走査時にスカート32が配管Pの外部表面24から離脱しないようにすることができる。用途に応じた追加策または代替策として、フレーム23を配管の屈曲区間の内弧面に密着させ易くするように、
図7に示す面取り部110のような1つ以上の面取り部をフレーム23に設けることができる。
【0067】
さまざまな直径の配管を検査するための費用対効果の高い解決策を提供するためには、複数の超音波センサ21を、フレーム組立体22のフレーム23のサイズが第1の直径の配管に適合する第1の器具20から簡単に取り外せるだけでなく、フレーム組立体22のフレーム23のサイズが第1の直径とは異なる第2の直径の別の配管に適合する第2の器具20に簡単に設置できるとよい。したがって、本発明の実施態様は、複数の超音波センサ21より成る単一のセンサアレイと、各フレーム23のサイズがそれぞれ異なる直径の配管に適合する複数の(非限定的な例として5つ)のフレーム組立体22とを含むキットとして提供される。したがって、そのようなキットのユーザは、フレーム23のサイズが検査対象の配管に適合するフレーム組立体22に単一のセンサアレイを選択的に設置すればよい。
【0068】
本発明を、現時点でもっとも実際的で好ましいと考えられる実施態様に基づいて詳細に説明してきたが、そのような詳細事項は説明のみを目的としており、本発明は、開示した実施態様によって制限されるものではなく、むしろ、本明細書に添付する特許請求の思想および範囲内の変更および同等の構成を含むものと理解されたい。例えば、本発明は、所与の実施態様の1つ以上の特徴物を、可能な範囲で他の実施態様の1つ以上の特徴物と組み合わせることを企図している。
【0069】
本願の請求項において、カッコで囲われた参照符号は請求項を制約するものと解釈するべきではない。「具備する」または「含む」という用語は、請求項に記載されていない要素またはステップの存在を排除するものではない。複数の手段を列挙した装置の請求項において、それらの手段のうちのいくつかは、同じ1つのハードウェア項目によって具現化されることがある。或る要素が「a」または「an」という語に先導される場合、かかる要素が複数存在することを排除するものではない。複数の手段を列挙した装置の請求項において、それらの手段のうちのいくつかは、同じ1つのハードウェア項目によって具現化されることがある。いくつかの要素が互いに異なる従属請求項で言及されているという事実は、それらの要素を組み合わせて使用できないことを示すものではない。